目的:嗜癖問題をもつ人と共依存関係にある家族のリカバリーの概念を分析し,定義づける.
方法:41文献を抽出し,Rogersの手法で分析した.
結果:7つの属性【自分にあった支援につながり心の居場所をもつ】【依存症や共依存を理解し受容する】【当事者の責任問題に入り込まずかかわり方を変える】【当事者と適切な心理的距離を維持する】【自分の内面に向き合うためのセルフケアに取り組む】【信頼や肯定感を伝え家族関係を再構築する】【新たな自分を肯定し生き直す】と8つの先行要件,2つの帰結【当事者と家族の回復過程が相互作用する家族機能の改善】【新たな自尊心の確立】を抽出した.
結論:「家族が自分にあった支援につながり心の居場所をもつ中で,当事者を一人の成人として尊重し,適切な心理的距離を維持する一方,自分の内面に向き合うためのセルフケアに取り組み,新たな自分を肯定し生き直していく回復過程」とする.
Purpose: To conduct a conceptual analysis of, and provide a definition for, the recovery of family members in codependent relationships with people with addiction problems.
Methods: We analyzed 41 references using Rogers’ method.
Results: The seven attributes included: “connecting to support which suits oneself and finding a place to belong;” “understanding and accepting addiction and codependence;” “changing the way one is involved without taking on responsibility for the person concerned;” “practicing self-care to protect one’s inner self;” “maintaining an appropriate psychological distance from the person concerned;” “communicating trust and affirmation and rebuilding family relationships;” and “affirming one’s new self and new life.” Eight antecedent requirements and two consequences were extracted—including: “Improved family function, in which the recovery process of the family and the person interact” and “the establishment of new self-esteem.”
Conclusion: We defined that, while family members were connected to the support that suited them, and had a place in their hearts, they were respected as adults and maintained an appropriate psychological distance while working on the self-care needed to face their inner selves and in affirming their new selves and live again.
嗜癖(Addiction)は,社会問題である.嗜癖とは,DSM-5(American Psychiatric Association, 2013)によると,アルコール,薬物などの物質使用障害と,ギャンブル,ゲーム等の行動嗜癖を含むものである.
嗜癖問題の現状として,わが国のアルコール依存者は約57万人であり,ギャンブル等依存が疑われる人は約70万人に及ぶ.また,アルコール相談(保健所)は18,573件(前年度比+1,783件),薬物は3,621件(前年度比+521件),ギャンブルは2,350件(前年度比+773件)と年々増加している(厚生労働省,2015).
加えて,2020年,COVID-19による自粛生活に伴うストレスから嗜癖問題の悪化だけでなく,家族への暴言暴力や虐待などの影響が懸念された(WHO, 2020)中でも,特にギャンブル問題の再発者の増加や,インターネット使用時間やゲーム使用時間が増加したことを背景に,オンラインカジノへの移行が危惧された(松下ら,2021;ギャンブル依存症問題を考える会,2020;吉井,2022).このように,ギャンブル問題は,やめられないために当事者が借金を繰り返すなど家族に与える影響が多大なことから,家族支援が必要(森田ら,2015)といわれている.
家族支援は1980~1990年代に諸外国に広がった自助グループに始まる.自助グループでは嗜癖の種類別にわかれており,その種類ごとに当事者と家族向けがある.家族向けの自助グループでは,同じ境遇の仲間と悩みをわかちあうためのミーティングを通して,回復プログラムに取り組む中で共依存の問題を抱えていることを学び,仲間と共に共依存からの回復を目指すといったピアサポートによって支えられる(McQ, 2015).
また,家族教室では,家族がいかに世話焼きを自分の人生の生きがいにしてきたかといった対人関係の問題に気づき,今後の人生を発展的に見直す(遠藤,1990)支援が必要となる.つまり,家族が当事者に与える影響として共依存の問題があるからである.
共依存とは,1940年代の米国で戦争のトラウマを自己治癒するためにアルコール依存が増加した当時の妻たちの行動に由来する(Price, 1945;MacDonald, 1956).共依存症的な行動(心配すること,支配すること)は当たり前の行為でもあるが,歯止めがかからないことが問題(Beattie, 1987)になる.しかし,共依存はアメリカの診断基準DSM-III(American Psychiatric Association, 1980)の時代にパーソナリティ障害として記載されたが,多くの批判を受け議論された後のDSM-IV(American Psychiatric Association, 1994)において削除された.この共依存を社会学的見地からみると,支配的関係と認識されていた時代から近代化した“純粋な関係”へと移行させ,自己について語ることで再構成していくといった回復を含めて定義されるべき(Giddens, 1992)点と,国内では共依存の概念をそのまま日本に導入したため文化差を考慮していない(加藤,1993)点が指摘されたままで衰退した.
一方,1990年以降のアメリカではリカバリーという概念が精神保健福祉政策の骨格と位置づけられた.リカバリーは,精神疾患患者から派生したストレングスとゴールを支援するモデル(Substance Abuse and Mental Health Services Administration, 2012)であり,病気や障害の有無にかかわらず新しい自分の人生を生きる希望をもつプロセス(Anthony, 1993)といわれている.そのため,日本語では「リカバリー」を回復と訳すが疾病や障害と向き合いながら希望を持って生きていくプロセスという意味を含む場合とを使い分ける必要がある(稗田,2016).
しかし,共依存の問題に特化した家族向けの自助グループ(Coda Japan, 2018)で用いられている12ステッププログラムの中には,共依存は共依存症(メロディ,1990/2016)と表されていることや,その他の嗜癖問題をもつ家族向けの自助グループのプログラムには共依存の言葉を用いてはいないが,参考図書として共依存を説明した書籍(アスク・ヒューマン・ケア,1993,1997)を活用していたり,ピアサポートの間で共依存の言葉を用いて支援を行ったりしているのが実際である.この12ステッププログラムの教えは,初版のまま内容が変わることはないが,その有効性は他の家族支援よりも高い(宮岡,2016).
そのため,共依存がDSM-IVから削除され疾患ではなくなった今でも,自助グループ内では共依存の言葉が用いられる一方,その他の家族支援では他者を巻き込んだり巻き込まれたりするといった対人関係の問題があると説明されているが,家族が当事者との関係性に依存している問題が嗜癖問題に悪影響を及ぼすことに変わりはない.
これらの背景から,リカバリーが主流の現代において,嗜癖問題をもつ人と共依存関係にある家族を支援するにあたり,DSM-III(American Psychiatric Association, 1980)の診断基準に記載されていた当時の引用のままに学ぶことによって,共依存が疾患であるといったスティグマ(烙印)を生みかねないこと,さらに,共依存の海外の概念分析では,共依存は回復を含めて定義されるべきという指摘(Giddens, 1992)が残されたままであることことから,共依存関係の問題をもつ家族のリカバリーをあらたに定義づける必要があると考えた.
したがって,本概念分析では,嗜癖問題を持つ人の家族が家族支援につながることで,共依存関係からリカバリーしていく概念を明らかにすることを目的とする.
当事者家族:当事者とは嗜癖問題をもつ人.当事者家族とはその人の配偶者・親または重要他者.
共依存:Schaef(1987)を参考に「家族が当事者の責任問題の範疇に入りこみ,当事者に変わって借金返済や後始末をするといった自己犠牲的な世話が,かえって,嗜癖問題を助長させるが,家族はその当事者と心理的に離れることが不可能な状態」とする.
リカバリーの概念が主流の現代において,共依存の言葉を用いて家族支援を行う場合,DSM-IIIに記載された当時の認識と現代との時代差や,当時のアメリカの定義をそのまま日本に導入したという文化差を考慮されないまま活用している.そのため,本概念分析では,概念は意味の獲得によって発展し時代によって変化すると捉えているRodgers(Rodgers & Knafl, 2000)の手法を用いて分析を行う.
2. 文献の選択サンプリングは,Rodgers & Knafl(2000)の関連分野の文献数30件以上,総数の約20%を参考に国内外を対象にした.使用したデータベースはPubMed,CINAHL Complete,Google Scholar,医学中央雑誌(以下,医中誌)である.対象年度や論文の種類は指定せず,タイトルとアブストラクトを精読し,目的に沿ったフルテキストを選択し,重複を除外した.
英文献は,PubMedを使用(2023年3月19日検索)し‘addict*’ and ‘depend*’ and ‘family*’ and ‘codependen*’ and ‘recovery*’でヒットした11件のうち3件を抽出した.CINAHL Completeを使用(2023年3月21日検索)し‘addict*’ and ‘depend*’ and ‘family*’ and ‘codependen*’ and ‘recovery*’では0件であったため,‘addict*’ and ‘depend*’ and ‘family*’ and ‘recovery*’でヒットした61件から重複を除いた5件を抽出した.Google Scholarを使用(2023年3月21日検索)し,‘addict*’ and ‘depend*’ and ‘family*’ and ‘codependen*’ and ‘recovery*’では7,630件だったため,‘codependen*’ and ‘recovery*’の62件から重複を除き15件を,さらにハンドリサーチ2件を加え合計25件を選択した.
和文献は,医中誌を使用(2023年3月19日検索)し,(物質関連障害/TH or依存/AL)and(物質関連障害/TH or嗜癖/AL)and(家族/TH or家族/AL)and(共依存/TH or共依存/AL)では118件がヒットし5件を選択,(物質関連障害/TH or依存/AL)and(物質関連障害/TH or嗜癖/AL)and(家族/TH or家族/AL)and(共依存/TH or共依存/AL)or(精神障害からの回復/TH orリカバリー/AL)では3件から1件を抽出し,計6件を選択した.Google Scholar(2023年3月19日検索)で(依存)and(嗜癖)and(家族)and(共依存)or(リカバリー)の62件から重複を除いた7件と,ハンドリサーチ3件を加え合計16件を選択した.これら取捨選択は単独で行い合計41文献(英文献25件,和文献16件)を対象にした(表1).
「嗜癖問題をもつ人と共依存関係にある家族のリカバリー」の文献一覧
No. | 著者 | 発行年 | 題名 | 掲載雑誌名,(巻),頁 |
---|---|---|---|---|
1 | Beattie, M. | 1987 | Codependent no more: How to stop controlling others and start caring for yourself. | Harper & Row, New York. |
2 | Mendenhall, W. | 1989 | Co-dependency treatment. | Alcoholism Treatment Quarterly, 6(1), 75–86. |
3 | Whitfield, C. L. | 1989 | Co-dependence: Our most common addiction-some physical, mental, emotional and spiritual perspectives. | Alcoholism Treatment Quarterly, 6(1), 19–36. |
4 | Potter-Efron, R. T., & Potter-Efron, P. S. | 1989 | Assessment of codependency with individuals from alcoholic and chemically dependent families. | Alcoholism Treatment Quarterly, 16(4), 37. |
5 | Cermak, T. L. | 1986 | Diagnostic criteria for codependency. | J Psychoactive Drugs, 18(1), 15–20. |
6 | Krestan, J. A., Bepko, C. | 1990 | Codependency: The social reconstruction of female experience. | Smith College Studies in Social Work, 60(3), 216–232. |
7 | Fischer, J. L., Spann, L. | 1991 | Measuring codependency. | Alcoholism Treatment Quarterly, 8(1), 87–100. |
8 | O’Gorman, P. | 1993 | Codependency explored: A social movement in search of definition and treatment. | Psychiatric Quarterly, 64(2), 199–212. |
9 | Fitzgerald, P. D. | 1994 | Hope for recovery: correlations among codependency, internalized shame, and spiritual well-being. | https://place.asburyseminary.edu/cgi/viewcontent.cgi?article=1086&context=ecommonsatsdissertations |
10 | Anderson, S. C. | 1994 | A critical analysis of the concept of codependency | Social work, 39(6), 677–685. |
11 | Dear, G. E., Roberts, C. M. | 2005 | Validation of the Holyoake codependency index. | J Psychology, 139(4), 293–314. |
12 | O’Farrell, J., Fals-Stewart, W. | 2002 | Behavioral couples and family therapy for substance abusers. | Curr Psychiatry Rep, 4(5), 371–376. |
13 | Lee, B. K. | 2002 | Well-being by choice not by chance: An integrative, system-based couple treatment model for problem gambling. | Ontario Problem Gambling Research Centre. |
14 | Fals-Stewart, O’Farrell, Birchler, et al. | 2005 | Behavioral couples therapy for alcoholism and drugabuse: Wherewe’vebeen, whereweare, and where we are going. | J Cognitive Psychotherapy: An International Quarterly, 19, 229–246. |
15 | Petry, N. M. et al. | 2005 | Childhood maltreatment in men and women pathological gamblers | Psychology of Addictive Behaviors, 19, 226–229. |
16 | Hodgins., Shead., Makarchuk. | 2007 | Relationship satisfaction and psychological distress among concerned significant others of pathological gamblers. | The Journal of nervous and mental disease, 195(1), 65–71. |
17 | McComb, J. L. | 2009 | Conceptualizing and treating problem gambling as a family issue. | J Marital & Family Therapy, 35(4), 415–431. |
18 | Meyers, R. J. | 2011 | The community reinforcement approach: an update of the evidence. | Alcohol research & health: J National Instituteon Alcohol Abuse & Alcoholism, 33(4), 380–388. |
19 | Bradshaw, S. | 2015 | Hope, readiness, and coping in family recovery from addiction. | J Groups Addict Recover, 10(4), 313–336. |
20 | Abadi, F. K. A. | 2015 | Models and interventions of codependency treatment, systematic review. | J UMP Social Sciences and Technology Management, 3(2) |
21 | Peixoto da Silva. | 2019 | Family orientation group as a strategy for care in chemical codependency | Investigación y educación en enfermería, 37(3). |
22 | Bacon, I., McKay, E., Reynolds, F., et al. | 2020 | The lived experience of codependency: An interpretative phenomenological analysis. | Int J Ment Health Addict, 18(3), 754–771. |
23 | Jeffrey, L. | 2019 | Til Debt Do Us Part: Comparing Gambling Harms Between Gamblers and Their Spouses. | J Gambling Studies, 35(3), 1015–1034. |
24 | Dekkers, A. | 2020 | Perspectives on addiction recovery: focus groups with individuals in recovery and family members. | Addiction Research&Theory, 28(6), 526–536. |
25 | Bacon, I. | 2021 | An examination of the lived experience of attending twelve-step groups for co-dependency. | Int J Ment Health Addict, 19(5), 1646–1661 |
26 | 遠藤優子 | 1990 | アルコール依存症に対する保健活動上のアプローチのあり方アルコール依存症家族の治療と回復, | 日公衛会総会抄集49回II,91–92. |
27 | 安田美弥子 | 1999 | 依存症の家族に対する看護の研究(1). | 東京保会誌,2(1), 16–20. |
28 | 平澤多恵子 | 2001 | アルコール依存症の夫を抱える妻が自分を取り戻す過程: 自助グループに参加する妻の周辺問題からの解放. | 日精保看会誌,10(1), 110–117. |
29 | 洪金子 | 2006 | 共依存尺度の開発 | アディクションと家族,23(3), 265–278. |
30 | 高橋たか子 | 2005 | アルコール依存症家族の回復過程妻に面接調査を試みて. | 日ア関問会誌,7, 154–159. |
31 | 猪野亜朗,林竜也,山城一訓,他 | 2005 | 退院前インターベンション法(BDIM)アンケートへの家族の記述回答を中心に | 日ア・薬医会誌,40(1), 47–56. |
32 | 五十嵐愛子 | 2011 | 薬物依存症者を抱える家族の適応過程―家族の当事者活動をフィールドとして探る | 平成20 年度~ 22 年度科学研究費補助金(基盤C)研果報,新潟青陵大. |
33 | 篠原 百合子 | 2012 | アルコール依存症者家族の回復過程の検討 | 東都医大紀,2(1), 25–33. |
34 | 磯野洋一,野嶋佐由美 | 2013 | アルコール依存症者の妻の対処 断酒会会員である夫のインタビューに基づいて | 家族看研,18(2), 73–82. |
35 | 越智百枝,野嶋佐由美,中平洋子,他 | 2016 | アルコール依存症者の家族の支援プログラムに関する文献検討 | 高知女大看会誌,42(1), 2–10. |
36 | 成瀬暢也 | 2016 | 依存症家族支援の基本的な考え方(特集 家族支援). | 日ア関連問題会誌,18(2), 1–6. |
37 | 森田展彰,新井清美,田中紀子 | 2015 | 病的ギャンブラーの家族における精神健康とその関連要因 | 日社精医会誌,24(3), 313–314. |
38 | 森田展彰 | 2018 | 福祉分野に生かす個と家族を支える心理臨床ー福祉分野に生かす個と家族を支える実践ーアディクションのある人の家族の援助 | 家族心理報,36, 84–94 |
39 | 松下年子 | 2019 | アルコール依存症者の家族の回復に関する研究:半構造化面接を通じて. | アディクション看,16(2), 83–103. |
40 | 吉岡 隆 | 2019 | 共依存症からの回復(第 18 回 日本アディクション看護学会学術集会). | アディクション看,16(2), 193–196. |
41 | 近藤あゆみ | 2020 | 薬物依存症からの回復のために―国立精神・神経医療研究センターの取り組み―薬物使用者の家族を対象とした相談支援. | 新薬と臨牀,69(1), 37–40. |
先行文献から概念を構成する「属性」,概念に先立って生じる「先行要件」,概念が発生した結果としてもたらされる「帰結」に該当部分を抽出し,コーディングシートにまとめた.類似したデータをカテゴリ化し,命名し,概念とその概念モデルを示した.
なお,分析は2人の大学教員のスーパーバイズを受け,できるかぎり客観的な視点の保持に努め,全員の議論がなくなるまで行った.
以下,カテゴリは【 】,サブカテゴリは〈 〉,コードは「 」で示す.
1. 属性属性として,7つのカテゴリと27のサブカテゴリを抽出された(表2).
「嗜癖問題をもつ人と共依存関係にある家族のリカバリー」の属性
カテゴリ | サブカテゴリ | コード | No. |
---|---|---|---|
自分にあった支援につながり心の居場所をもつ | 支援につながり安心できる場をもつ | 私たちは人々とつながり本当の自分を明らかにすることができる | 22 |
共依存のグループによるピアサポートがある | 22 | ||
共依存を話すのに安全で強迫性のない相互共有のサポート環境がいる | 25 | ||
心理教育は回復への見通しを提供できる | 38 | ||
家族教室はいろいろな情報が提供される場 | 27 | ||
家族教室は,新しい生き方を学ぶ場 | 27 | ||
自己非難を減らす | 10 | ||
気持ちが楽になれる | 30 | ||
専門医療機関への相談・ネットワークの活用 | 33 | ||
自助グループは自分を無条件に受け入れてくれる十分に安全な環境がある | 25 | ||
感情を吐露できる場をもつ | ミーティングで思いを共有し自分について正直に話せる安全な環境が重要 | 25 | |
はりつめた心の溶解 | 35 | ||
家族教室は何でも相談できる安心できる場 | 27 | ||
家族教室は不満の吐き口にもなるカタルシスの場 | 27 | ||
家族が心に留めてきた気持ちや思いを十分に吐き出すことができる | 35 | ||
自分の辛い思いを表出できる | 30 | ||
自分の思いを見つめ直し伝えられた | 31 | ||
ピアとのつながりで孤独感を癒やす | 回復モデルに会える | 30 | |
家族が家族のグループにつながり孤立せずにストレス状態を改善する | 36 | ||
孤独感から解放される | 35 | ||
家族に帰属意識と安全を切望したが自助グループ仲間との間に見つけた | 25 | ||
自助グループは心理的発達を抱擁してくれるプラットフォームになる | 25 | ||
他の人の語りに共通点をみつけたらグループに帰属感をみつけた | 25 | ||
家族自身が信頼関係を気づき人に癒やされるようになる | 36 | ||
自分にあった家族支援につながる | 他の新たな支援を求めて自助グループを去る場合もある | 25 | |
自助グループは長い回復プロセスにおいて一時的な場合もある | 25 | ||
金銭的な問題に関するアドバイスが必要な場合もある | 38 | ||
つながる | 28 | ||
(人によっては)自助グループは有益性と弊害もある | 39 | ||
依存症や共依存を理解し受容する | 依存症は疾患であることを理解する | アルコール依存症や共依存について理解できる | 30 |
疾病理解 | 33 | ||
依存症について理解する | 36 | ||
合併する障害や問題の統合的な理解や対応 | 38 | ||
依存症の治療を促進のための依存症者への対応を学ぶ | 27 | ||
当事者の使える援助機関や自助グループなど役立つ情報を伝えることや本やビデオを進めることも役立つ | 38 | ||
共依存に気づき受容する | 自助グループの助けを借りて家族が共依存であることが認められると当事者と一緒に暮らすことから生じる困難を特定することができる | 21 | |
自分が共依存であることを認識することで,依存問題に健全かつ積極的に対処することができた | 21 | ||
共依存の自覚と戸惑い | 39 | ||
共依存に気づく | 30 | ||
自分のこれまでの生き方がいかに「他者のため」であったかに気づき,その根源が自分の対人関係障害にあることを認知していく | 26 | ||
当事者の責任問題に入り込まずかかわり方を変える | 当事者へのかかわり方を変える | 家族会につながり,共依存の知識と実行をする | 32 |
依存症患者への望ましい対応を身につける | 36 | ||
回復プログラムは,自分の無力さへの信念をより高い力に強化してくれる | 10 | ||
回復プログラムは共依存の経験と自分についての理解を深められる | 25 | ||
家族の関わり方を変えることで,当事者の治療につながることを学ぶ | 38 | ||
家族教室で共依存が世代連鎖することを学ぶ | 27 | ||
当事者の責任問題に入りこまない | 依存症からの回復の努力は当事者自身が担うべきである | 37 | |
家族のターニングポイントにおける準拠枠の崩壊 | 35 | ||
当事者を家族が突き放すのでなくお互いの自立を促すためである | 32 | ||
たとえ親でも子供の承認欲求を満たす義務はない | 40 | ||
夫を放り出しつつ立て直す | 34 | ||
当事者の問題に対峙できるよう最終手段を切り出す | 34 | ||
これまでの世話焼きをやめる | 家族が無理な要求をことわるなど過干渉から手を引く | 37 | |
依存の問題に対峙する | 35 | ||
家族は,当事者が問題に向かうように,尻拭いはやめる | 37 | ||
当事者に強く説得するのをやめる | 37 | ||
夫の飲酒にとどめを刺す | 34 | ||
断酒会に賭ける | 34 | ||
自分の内面に向き合うためのセルフケアに取り組む | 心理的健康を取り戻す | 家族が十分な支援を受けて健康を取り戻す | 36 |
家族の精神的健康状態を改善する | 41 | ||
怒りの感情調節をする | 冷静さ保ちできるだけ相手を頭ごなしに否定したりしない | 38 | |
カップルセラピーの目標は家族の不安,自己非難,怒りを助けることである | 12 | ||
回復プログラムが内面の感情に焦点あて広げていく | 10 | ||
これまでとは違いストレス対処がうまくなる | 垣根を外す | 28 | |
家族で実行した対処法を振り返りより効果的な方法を検討していく | 35 | ||
介入の成果は自信の向上,対処スキルと意思決定,トラウマの軽減,精神状態の変化,共依存の改善,コミュニケーションスキルにみられた | 20 | ||
当事者から家族が受ける過大なストレスに対処できるようになる | 36 | ||
これまでと違う対人関係,役割,コミュニケーションを行動化していく | 26 | ||
安らぎの空間を求める | 28 | ||
自分の人生をふりかえり,自分の内面の問題に取り組む | 自分と向き合う | 28 | |
人生の棚卸しを書く | 40 | ||
自己洞察できるようになる | 30 | ||
自分の問題は何かを考える | 40 | ||
他人の助けを借りて自分の安定を図る | 34 | ||
自己意思決定ができる | 目標は親密さの開発でなく,自分の世界で独立すること | 10 | |
自分の思考の枠組みの中から対処法を選択する | 35 | ||
主体的になる | 行動の修正ができるようになる | 30 | |
自分がやろうと思うことや相手にやってほしいことをアイメッセージ(私を主語にして)で,率直に丁寧に話す | 38 | ||
家族が飲酒者から目や手を放し自分自身に目をむけられるようになる | 26 | ||
学ぶ義務をしっかりもつ | 40 | ||
精神的な健康状態の改善と個人的な成長に気づけたことがセルフケアの質に反映される | 21 | ||
自己決定する | 28 | ||
自分と他人の間の境界線を大事にする | 習得し手放す | 28 | |
人は間違える権利がある | 40 | ||
自分自身を見つめ自分の世界を大切にする | 34 | ||
あなたと当事者の間の境界線を大事にして無理な要求を断る | 38 | ||
他者からの評価に左右されない | 自分の評価より他人の評価が高ければほめすぎ,低ければいい所を知らないと思えるようになる | 40 | |
他人の評価に一喜一憂しない | 40 | ||
当事者と適切な心理的距離を維持する | 心理的・物理的距離を維持する | 当事者へのかかわりをやめ家族は自分が共依存だったと気づく時期が必要 | 32 |
時間がかかるので焦って押し付けないこと | 38 | ||
当事者と家族それぞれの支援とつながる | 家族外のネットワークの維持 | 33 | |
長期的な回復の支援 | 38 | ||
回復中の当事者と家族の双方に他の人からのサポートが必要 | 24 | ||
当事者を見守る | 家族が自助グループにつながったことによる当事者の変化と家族の安寧 | 39 | |
夫への期待 | 28 | ||
一歩引きながら支える | 34 | ||
家族は見守る姿勢をもつ | 37 | ||
信頼や肯定感を伝え家族関係を再構築する | 家族関係を再構築する | 子どもの回復 | 33 |
治療において家族のダイナミクスを考慮することが重要 | 12 | ||
機能不全の悪循環を断ち切り家族のダイナミクスを再編成する | 21 | ||
家族システムの変化 | 33 | ||
家族の変化は時間がかかる | 41 | ||
(当事者を含む)家族が安定し再生する | 32 | ||
家族の望む解決像を描くことができる | 35 | ||
家族のつながりの再解釈 | 35 | ||
自由で親密な家族関係を再構築していく道のり | 41 | ||
信頼感や肯定感を伝える | コミュニケーションの配慮 | 33 | |
ポジティブフィードバック | 33 | ||
当事者と家族両者のコミュニケーションの改善と信頼関係の構築 | 36 | ||
家族が自分自身と当事者に対する信頼感や肯定感を取り戻す | 41 | ||
当事者なりの回復への努力がみられたら称賛を伝える | 38 | ||
新たな自分を肯定し生き直す | 自分の強みに気づける | 家族自身が内在する自身の力に気づく | 35 |
トラウマへは強みと成果を強調する | 8 | ||
回復していくという新しい希望をもつ | 将来に希望がもてた | 33 | |
回復モデルになる仲間の存在は多くの人の新しい希望になる | 9 | ||
回復モデルに会う | 30 | ||
共依存からの回復には新しい希望が有効である | 22 | ||
あらたな自分に変えていくことを自己申告する | 1 | ||
家族の回復における家族の希望,対処,変化への準備の重要である | 19 | ||
自己成長に目を向ける | 行きつ戻りつしながら進んでいく | 35 | |
家族の起源からの成長が焦点 | 8 | ||
自身の親としての自己成長 | 8 | ||
将来の自分に肯定的なイメージをもつ | 自分にポジティブなイメージを作り自己発見する | 20 | |
新しい見方や考え方に基づいて自分の今後の人生を発展的に見直す | 26 | ||
回復グループを立ち上げる意識をもつことで病気のラベリングを抑圧する | 10 | ||
自分のネガティブなレッテルを剥がし新たな意味がこめられたレッテルを自認する | 1 | ||
新たに生き直す | これまでの自分の物語を書き換え新たに生きられる物語を主張していく | 1 | |
新しい生き方をはじめた日がバースデイになる | 40 |
【自分にあった支援につながり心の居場所をもつ】は,〈支援につながり安心できる場をもつ〉〈感情を吐露できる場をもつ〉〈ピアとのつながりで孤独感を癒やす〉〈自分にあった家族支援につながる〉で構成された.
「自助グループでは無条件に受け入れ自分を表現できる十分に安全な環境がある」ため,「家族が心に留めてきた気持ちや思いを十分に吐き出すことができる」し「孤独感から解放される」.しかし,一部の人にとっては,「他の新たな支援を求めて自助グループを去る場合もある」が,〈自分にあった何らかの家族支援につながり続ける〉ことが重要である.
【依存症や共依存を理解し受容する】は,〈依存症は疾患であることを理解する〉〈共依存に気づき受容する〉で構成された.
「アルコール依存症や共依存について理解できる」ことで,「自分のこれまでの生きづらさの根源が自分の対人関係障害にあることを認知していく」ができるようになっていた.
【当事者と適切な心理的距離を維持する】は,〈心理的・物理的距離を維持する〉〈当事者と家族それぞれの支援とつながる〉〈当事者を見守る〉で構成された.
「当事者へのかかわりをやめ家族は自分が共依存だったと気づく時期が必要」なため,「回復中の当事者と家族の両方に他の人からのサポートが必要」を通して,「家族は見守る姿勢をもつ」ようになっていった.
【当事者の責任問題に入り込まずかかわり方を変える】は,〈当事者へのかかわり方を変える〉〈当事者の責任問題に入りこまない〉〈これまでの世話焼きをやめる〉で構成された.
「家族の関わり方を変えることで,当事者の治療につながることを学ぶ」と,「当事者を突き放すのは当事者を放棄することではなくお互いの自立の促しである」ため,「家族は,当事者が問題に向かうように,尻拭いはやめる」ことができるようになっていった.
【自分の内面に向き合うためのセルフケアに取り組む】は,〈心理的健康を取り戻す〉〈怒りの感情調節をする〉〈これまでとは違いストレス対処がうまくなる〉〈自分の人生をふりかえり,自分の内面の問題に取り組む〉〈自己意思決定ができる〉〈主体的になる〉〈自分と他人の間の境界線を大事にする〉〈他者からの評価に左右されない〉で構成された.
「家族が十分な支援を受けて健康を取り戻す」ことで,「冷静さ保ちできるだけ相手を頭ごなしに否定したりしない」や,「当事者から家族が受ける過大なストレスに対処できるようになる」.「目標は親密さの開発でなく自分の世界で独立すること」であり「精神的な健康状態の改善と個人的な成長に気づけたことがセルフケアの質に反映される」ようになると,「自分の評価より他人の評価が高ければほめすぎ,低ければいい所を知らないと思えるようになる」.
【信頼や肯定感を伝え家族関係を再構築する】は,〈家族関係を再構築する〉〈信頼感や肯定感を伝える〉で構成された.
「機能不全の悪循環を断ち切り家族のダイナミクスを再編成する」ことで,「当事者と家族双方のコミュニケーションの改善と信頼関係の構築」につながっていた.
【新たな自分を肯定し生き直す】は,〈自分の強みに気づける〉〈回復していくという新しい希望をもつ〉〈自己成長に目を向ける〉〈将来の自分に肯定的なイメージをもつ〉〈新たに生き直す〉で構成された.
「家族自身が内在する自身の力に気づく」ことや「回復モデルになる仲間の存在は多くの人の新しい希望になる」ことから「自身の親として自己成長」していく中で,「自分のネガティブなレッテルを剥がし新たな意味がこめられているレッテルを自認する」を通し,「新しい生き方をはじめた日がバースデイになる」をしていた.
2. 先行要件先行要件として,8つのカテゴリと26のサブカテゴリが抽出された(表3).
「嗜癖問題をもつ人と共依存関係にある家族のリカバリー」の先行要件
カテゴリ | サブカテゴリ | コード | No. |
---|---|---|---|
機能不全家族由来の生きづらさ | 機能不全家族に由来 | 過剰責任行動や過少責任行動といったアンバランスがある機能不全家族で生活すると共依存的になるのは避けがたい | 6 |
機能不全家族への適応過程で生じる | 2 | ||
ギャンブラーと配偶者のコミュニケーションや承認の欠如は,彼らの出身家族の経験にルーツがある | 13 | ||
精神的・情緒的成長の阻害経験 | 私は虐待歴がある | 29 | |
虐待歴 | 5 | ||
共依存的な誤った自己を築き始める | 3 | ||
成長,精神的,情緒的,霊的の阻害 | 3 | ||
家族に従うしかない生きづらさ | 共依存者は現在,過去にアルコール依存や薬物依存,その他の長期にわたる非常にストレスの多い家族環境から重大な影響を受けている | 4 | |
精神内界における自己のための手がかりの無効化と抑圧 | 3 | ||
共依存者は,恐怖,恥や罪悪感,長期にわたる絶望,危険,否認,硬直性,アイデンティティの発達障害,混乱の影響をうける | 4 | ||
慢性的な精神的不幸感 | 共依存は内面化された恥の程度が高く,精神的な幸福の程度が低い | 9 | |
慢性的不幸感 | 3 | ||
自尊心の喪失 | 本当の自分を圧殺 | 本当の自己を圧殺し始める | 3 |
私は家族の中のマスコットの役割を果たした | 5 | ||
私は家族の中のヒーローの役割も果たした | 5 | ||
自身の感情でものを体験したり,自己を意識したりすることの圧殺された | 2 | ||
私は通常,他の人に本物の私を見せない | 7 | ||
自尊心の喪失 | 恥ずかしさや失敗など自尊心が低い | 1 | |
私は何か始める時,周囲の人の同意がないと自信が持てず不安だ | 29 | ||
恥の感覚の増長と自尊心の喪失 | 3 | ||
問題への否認傾向 | 回復への抵抗感 | 外部の助けを求めず物質依存者と主要な関係を維持している | 5 |
アルコール依存症や共依存その他の状況からの回復に対する抵抗がある | 3 | ||
問題に対する否認傾向 | 家族の秘密に対して否認する傾向がある | 3 | |
「うちの子にかぎって」と悲嘆し,息子の薬物依存にとまどう | 32 | ||
世話焼きを優先にするセルフネグレクト | セルフネグレクト | 自分の欲求を大切にしない | 3 |
褒め言葉を丁寧に受け入れるのは難しい | 7 | ||
私は私自身を十分ケアしていない | 29 | ||
私はしばしば恐怖や運命を妨げる感覚を持っている | 7 | ||
自分のために何か良いことをする時,通常罪悪感を感じる | 7 | ||
世話焼きを優先 | 自己犠牲に他の人々のニーズをより重要視する傾向 | 11 | |
私は自分をケアしないが他人の面倒をみてあげるのは上手だ | 29 | ||
私はいつも彼らのためにそこにいるが彼らは私のためにいない | 7 | ||
私は,自分のことを犠牲にしてもパートナーの世話を焼いてしまう | 29 | ||
好かれるための従順さ | 私は私にとって重要な人の言うことを従順する | 29 | |
私はパートナーの筋道の通らないことでも言いなりになる | 29 | ||
私はほとんどの決定をパートナーに依存する | 29 | ||
私は他人に好かれるようその人の意見に従う | 29 | ||
「いいえ」と言うのは難しい | 7 | ||
他人の行動に影響される傾向がある | 7 | ||
感情調節のアンコントロール | 感情の喪失 | 情緒的苦痛に対する我慢強さと不感症の増大 | 3 |
感情の収縮(劇的な爆発の有無にかかわらず) | 5 | ||
何かが損なわれることに対する悲哀感の喪失 | 3 | ||
恐怖を感じないようにしている | 1 | ||
極端な感情の揺れ動き | 誰かが私を怒らせたら,長い間保持しますが,時々私は爆発する | 7 | |
極端な感情の揺れ動き | 3 | ||
私は自分が気に入らないとパートナーを非難し責めたりガミガミ言う | 29 | ||
ストレスへの脆弱性 | 抑うつ傾向 | 抑うつ状態にあった | 33 |
うつ病 | 5 | ||
不安 | 5 | ||
やりきれない思い | 28 | ||
埋め尽くせない思い | 28 | ||
ストレス関連疾患 | ストレス関連疾患の発生 | 3 | |
私は家族員の飲酒のため眠れないことがある | 29 | ||
ストレス関連の医学的病気 | 5 | ||
神経症傾向 | パーソナリティ障害との関連 | 5 | |
インナーチャイルド | 3 | ||
ストレスからの回避傾向 | 経験した人生のリフレーミングや再生に対する脆弱性がある | 9 | |
決断するのは難しい | 7 | ||
間違いをすることを恐れる | 1 | ||
私は通常,対立を避けるためにあらゆる方向へ行く | 7 | ||
私は変化に適応することが難しい | 29 | ||
自分を傷つける傾向 | 苦痛のすりかえならびに投射 | 3 | |
薬物乱用 | 5 | ||
強迫傾向 | 強迫的 | 5 | |
苦痛を和らげたり真の自己を垣間見るための強迫的行動 | 3 | ||
恐怖や脅威への脆弱性 | 私は怒りっぽい人や批判的な人を恐れる | 29 | |
私は私のパートナーから殴られたことがある | 29 | ||
自尊心を満たすための関係性への執着 | 他者と自分の境界線が曖昧 | 親密さと分離の周りの不安と境界の歪み | 5 |
私は自分がどう感じているかわからないが相手が何をどう感じているかよくわかる | 29 | ||
私は私の大事な人の感情によく左右される | 29 | ||
私は人を助け理解しようとするため他人が間違っていてもすぐに引き込まれる | 29 | ||
私は人との関係で境界を維持するのが難しい | 29 | ||
私は私自身の境界線がはっきりしていない | 29 | ||
他者との親密な関係維持困難 | 3 | ||
私はパートナーの飲酒をやめさせるため酒を下水に流すなどの経験がある | 29 | ||
私は個人的境界を維持しながら他人と付き合うのは難しい | 29 | ||
自分に行われた不正よりも他人に行われた不正に怒りを感じ表現する方が楽 | 1 | ||
万能感からの支配関係 | 私は私と他人に対し過度な期待感を持つ | 29 | |
私は「あなたは私をあなたの思い通りにしすぎる」とパートナーから言われる | 29 | ||
私はすべてのことに完全でなければ気が済まない | 29 | ||
お酒で物を壊すので話し合いもせずに置かない選択をした | 39 | ||
直面している状況を掌握できない喪失感と状況掌握への欲求 | 3 | ||
当事者に感情的に断酒断薬を求め強要する | 36 | ||
夫とその家族が駄目で間違えていないのは自分だけだと思っていた | 39 | ||
わたしはすべてのことをやろうとする | 5 | ||
人々の問題解決を助けることを強いられていると感じる | 1 | ||
自尊心を満たす世話焼き | 他の人の世話を焼くことで自分の自尊心を高めようとする | 5 | |
他の人を助けることから人工的な価値のある感情を得る | 1 | ||
私は夫への世話が報われなかったり感謝されないと腹が立つ | 29 | ||
私は彼らにとって大切な人にならなければならないと思う | 29 | ||
私は人の世話をやいていないと不安になり物足りなくなる | 29 | ||
私のまわりはとかく手のかかる人が多い私はいつも忙しい | 29 | ||
私は純粋な愛であればどのような犠牲を払ってでも守ろうとする | 29 | ||
外部の焦点:自尊心と承認のために他の人々に依存する傾向がある | 11 | ||
問題がなければ,退屈したり空っぽになったりすることがある | 7 | ||
自ら巻き込まれにいく | 衝動障害のある人との関係に絡みがち | 5 | |
私はパートナーが友達と過ごす時,パートナーから拒絶されたと感じる | 29 | ||
時々私は他の関係や責任を無視して,一人の人に焦点を当てる | 7 | ||
私は個人的な問題を持っている他人に巻き込まれていると思う | 29 | ||
私は他人の口論の中心に巻き込まれることが頻繁にある | 29 | ||
私はパートナーとの問題に巻き込まれやすい | 29 | ||
家族の底付き体験と絶望が悪影響する負のスパイラル | 家族の底付き体験と絶望感 | 思案にくれる思い | 28 |
渦巻く不信感 | 28 | ||
将来への不安・喪失体験 | 33 | ||
子どもへの影響を危惧していた | 33 | ||
薬物の隠蔽など家族も社会から孤立していく | 32 | ||
家族の認識と底つき | 39 | ||
家族も絶望し,家族内除去努力をしなくなる | 32 | ||
親が子の依存をやめさせられず失敗するたび子の怒りは親への暴力になる | 32 | ||
家族全体に悪影響する負のスパイラル | 底付き・身体症状の悪化・家族問題も顕在化・社会的危機に直面する | 33 | |
歯車があわない・世間体を気にする・穴埋めをする | 28 | ||
家族は苦悩,葛藤,恐怖,疑念などの状況を経験するが,家族が失敗すれば薬物使用者も失敗することになる | 21 | ||
カップルのダイナミクスはギャンブル依存の発症に影響する | 17 | ||
薬物乱用者の夫婦それぞれが相手に影響を及ぼし影響を受けるという複雑な相互関係によって悪循環を生み出す | 14 | ||
問題のあるギャンブラーは夫婦間の葛藤や経済的懸念などの家族に関連したストレッサーから逃れるためにギャンブルをするという | 15 | ||
ギャンブラーは金融・仕事/学業・健康・感情/心理・人間関係・社会的逸脱を経験するが,配偶者は人間関係の問題をもつ可能性が5〜6倍高い | 23 | ||
為す術が無くなる | 34 | ||
不健康な家族のダイナミクスは依存症をもつ家族全体の健康に悪影響する | 19 |
【機能不全家族由来の生きづらさ】は,〈機能不全家族に由来〉〈精神的・情緒的成長の阻害経験〉〈家族に従うしかない生きづらさ〉〈慢性的な精神的不幸感〉で構成された.
「当事者と家族のコミュニケーションや承認の欠如は彼らの出身家族(機能不全家族)への適応過程で生じる」.「成長,精神的,情緒的,霊的な阻害」機能不全家族の「成長,精神的・情緒的・霊的な阻害」といった「共依存者は恐怖,恥や罪悪感,長期にわたる絶望,危険,否認,硬直性,アイデンティティの発達障害,混乱の影響を受ける」ため,「共依存は内面化された恥の程度が高く,精神的な幸福の程度が低い」.
【自尊心の喪失】は,〈本当の自分を圧殺〉〈自尊心の喪失〉で構成された.
機能不全家族由来の生きづらさをかかえているため,「本当の自己を圧殺し始める」しかなく「私は何かを始める時,周囲の人の同意がないと自信が持てず不安だ」.
【問題への否認傾向】は,〈回復への抵抗感〉〈問題に対する否認傾向〉で構成された.
嗜癖問題に対して,「アルコール依存症や共依存その他の状況からの回復に対する抵抗がある」ため,「家族の秘密に対して否認する傾向がある」.
【世話焼きを優先にするセルフネグレクト】は,〈セルフネグレクト〉〈世話焼きを優先〉〈好かれるための従順さ〉で構成された.
「自分のために何か良いことをするとき,罪悪感を覚える」ため,「自分の欲求を大切にしない」といった「自己犠牲に他の人々のニーズをより重要視する傾向」がある.「私は,パートナーの筋道の通らないことでも言いなりになる」.
【感情調節のアンコントロール】は,〈感情の喪失〉〈極端な感情の揺れ動き〉で構成された.
「恐怖を感じないようにしている」ことで,「極端な感情の揺れ動きがある」.
【ストレスへの脆弱性】は,〈抑うつ傾向〉〈ストレス関連疾患〉〈神経症傾向〉〈ストレスからの回避傾向〉〈自分を傷つける傾向〉〈強迫傾向〉〈恐怖や脅威への脆弱性〉で構成された.
「埋めつくせない思い」をかかえているため,「ストレス関連疾患の発生」や「パーソナリティ障害との関連」した「心理的苦痛のすりかえや他者に投射する」傾向や「苦痛を和らげたり真の自己を垣間見たりするための強迫行動をする」.「私は変化に適応することが難しい」し,「私は通常,対立をさけるためにあらゆる方向へ行く」傾向がある.
【自尊心を満たすための関係性への執着】は〈他者と自分の境界線が曖昧〉〈万能感からの支配関係〉〈自尊心を満たす世話焼き〉〈自ら巻き込まれにいく〉で構成された.
「私は自分がどう感じているかわからないが,相手がどう感じているかよくわかる」し,「私はすべてのことに完全でなければ気が済まない」.これは,「他の人の世話を焼くことで自分の自尊心を高めようとする」ため,「衝動障害のある人との関係に絡みがち」な傾向がある.
【家族の底付き体験と絶望が悪影響する負のスパイラル】は,〈家族の底付き体験と絶望感〉〈家族全体に悪影響する負のスパイラル〉で構成された.
「当事者への不信感が渦巻き将来に絶望を感じるやりきれない思い」や「世間体を気にして薬物の隠蔽をするなど家族も社会から孤立し途方にくれる」といった「薬物乱用者の夫婦それぞれが相手に影響を及ぼし影響を受けるという複雑な相互関係によって悪循環を生み出す」.また,「問題のあるギャンブラーは夫婦間の葛藤や経済的懸念などの家族に関連したストレッサーから逃れるためにギャンブルをする」など,「不健康な家族のダイナミクスは依存症をもつ家族全体の健康に悪影響する」負のスパイラルに陥っていた.
3. 帰結帰結として,2つのカテゴリと5のサブカテゴリが抽出された(表4).
「嗜癖問題をもつ人と共依存関係にある家族のリカバリー」の帰結
カテゴリ | サブカテゴリ | コード | No. |
---|---|---|---|
当事者と家族の回復過程が相互作用する家族機能の改善 | 家族間の相互理解が不可欠 | 私と当事者と家族で相互理解ができ一体感を感じた | 31 |
回復中の個人と家族の両方が自分の回復プロセスを経るのに必要なサポートをうけ相互理解していくことが不可欠 | 24 | ||
カウンセリングを通し家族とパートナーとの相互作用の改善に焦点をあてていく | 18 | ||
相互理解は認識を獲得し不一致の視点をより適切に調整するために不可欠である | 24 | ||
相互作用がもたらす家族機能の回復 | 家族と当事者との葛藤や家族のイネーブリング行動が減少する | 41 | |
家族の回復や成長と当事者への気持の変化がみられた | 39 | ||
将来の予防的・教育的介入は感情表現の強化であり共依存している個人だけでなくパートナーとの相互作用が焦点となる | 6 | ||
ギャンブル依存症の影響を受けるだけでなく,重要他者(家族)が病的なギャンブル依存症の回復過程において重要である | 16 | ||
治療において家族のダイナミクスを考慮することが重要である | 12 | ||
家族の変化は時間がかかる | 家族の変化は時間がかかる | 41 | |
新たな自尊心の確立 | 新たな自己の発見 | 新たな自己の萌芽 | 35 |
共依存からの回復には恥に対する健康的なスピリチュアリティの開発が必要である | 22 | ||
回復プログラムは参加者に安心感を与え他者との同一性を通し自己認識を獲得する | 25 | ||
自尊心が確立されていく自己認識 | 介入を通して自尊心と意思決定を高めていく | 20 | |
ピアサポートの影響を受けながら,行きつ戻りつし時間をかけて辿っていくものだとわかった | 30 | ||
自己効力感の向上 | 10 | ||
カップルセラピーはコミュニケーション,自尊心,自己認識と癒しの変化を生む | 13 | ||
集団療法と介入はうつ病を減らし自尊心を高めることにつながる | 20 | ||
専門家によるグループ,自助グループがベースのカウンセリングは自己認識,自己啓発,自尊心と表現の向上につながる | 20 | ||
回復プログラムによってアイデンティティが形成されていった | 25 |
【当事者と家族の回復過程が相互作用する家族機能の改善】は,〈家族間の相互理解が不可欠〉〈相互作用がもたらす家族機能の回復〉〈家族の変化は時間がかかる〉で構成された.
「回復中の個人と家族の両方が自分の回復プロセスを経るのに必要なサポートをうけ相互理解していくことが不可欠」であり,「将来の予防的・教育的介入は感情表現の強化であり共依存している個人だけでなくパートナーとの相互作用が焦点となる」が「家族の変化は時間がかかる」ことが示された.
【新たな自尊心の確立】は〈新たな自己の発見〉〈自尊心が確立されていく自己認識〉で構成された.
「共依存からの回復には恥に対する健康的なスピリチュアリティの開発が必要である」ため「自己効力感の向上」を目指す「回復プログラムによってアイデンティティが形成されていった」.家族は「介入を通して自尊心と意思決定を高めていく」ことや「ピアサポートの影響を受けながら,行きつ戻りつし時間をかけて辿っていくもの」だとわかった.
4. 概念モデル本概念の先行要件,属性,帰結の概念モデルを図示した(図1).
「嗜癖問題をもつ人と共依存関係にある家族のリカバリー」の概念図
先行要件には,【機能不全家族由来の生きづらさ】があった.機能不全家族とは,標準家族と異なり,家族システムの中にある強固なルールによって家族を支配し,個々の自己成長や精神的健康の促進を目標としないものである.この〈精神的・情緒的成長の阻害経験〉に適応するしかないと生きづらさがあると,〈本当の自分を圧殺〉するしかなかった.【感情調節のアンコントロール】【ストレスへの脆弱性】【世話焼きを優先にするセルフネグレクト】【問題への否認傾向】や【自尊心を満たすための関係性への執着】といった行動は【自尊心の喪失】と関連していた.これらは,親が子どもの薬物問題の後始末をしてもやめさせられず失敗するたび,子の怒りは親への暴力や暴言になる(32)など,【家族の底付き体験と絶望が悪影響する負のスパイラル】に拡大していた.
家族は【自分にあった支援につながり心の居場所をもつ】を通し【依存症や共依存を理解し受容する】と,たとえ親子でも承認欲求を満たす義務はない(40)ことや,回復の努力は当事者自身が担うべき(37)と理解できるようになっていった.つまり,家族が当事者の世話をやめて突き放す行動は,お互いの自立への促し(32)になる.家族は,【自分の内面に向き合うためのセルフケアに取り組む】中で,〈自己成長に目を向ける〉といった【新たな自分を肯定し生き直す】ことが重要である.
一方で,家族は【当事者と適切な心理的距離を維持する】といった【当事者の責任問題に入り込まずかかわり方を変える】ことや,【信頼や肯定感を伝え家族関係を再構築する】.このような【当事者と家族の回復過程が相互作用する家族機能の改善】になるが,【新しい自尊心の確立】をめざしていくことが帰結になる(図1).
5. モデルケースAは,夫にギャンブル問題に悩んでいた.自分の貯金をくずし夫の借金返済にあて,二度とギャンブルをしない約束をさせ,金銭と行動を管理していた.しかし,夫のギャンブルは止まず,家族関係はさらに悪化した.
Aは,相談先をインターネットで調べた.家族向けの自助グループがあることを知り参加した.Aは,回復プログラムを通し依存症は疾患であること,家族が後始末を繰り返して管理をしても回復させられないこと,その管理がかえってストレッサーになり悪循環になることを学んだ.Aはサポートを受ける中で,夫自身で自分の責任問題に向き合ってもらうよう促された.Aにとって夫と心理的距離をとることは辛いことであった.夫にとってなくてはならない人になることが自分の人生の生きがいだったからである.
Aは,夫をひとりの成人として尊重してこなかったことをふりかえり,適切な心理的距離をおくように行動を変え,徐々にではあったが家族関係も変化していった.Aは夫の行動や状況に左右されることなく,同じ境遇の仲間のサポートに支えられながら,自分の感情やコミュニケーションを改善させるといったセルフケアに取り組む中で,新たな人生を生き直し,少しずつ自信を取り戻していった.
嗜癖問題における共依存からのリカバリーとは,「家族が自分にあった支援につながり心の居場所をもつ中で,当事者を一人の成人として尊重し,適切な心理的距離を維持する一方,自分の内面に向き合うためのセルフケアに取り組み,新たな自分を肯定し生き直していく回復過程」と定義した.
本概念の先行要件には,嗜癖をやめられず失敗するたび当事者の怒りは家族への暴力や暴言になるといった【家族の底付き体験と絶望が悪影響する負のスパイラル】があった.この当事者と家族とのコミュニケーションや承認の欠如は,彼らが機能不全家族に生育してきた経験にルーツがある(Lee, 2002)といわれている.
機能不全家族が由来となった生きづらさに伴う自尊心の喪失が根底にあるため,依存対象にのめりこむことによって心の拠り所を求める場合や,他者との関係性に執着し他者にとってなくてはならない存在になろうとすることで自分の存在意義を高めようとする(Schaef, 1987)からである.
また,この自尊心の喪失は恥や問題の否認とも関係している.たとえば,当事者が他者に助けを求めることに障壁があることを研究したレビューによると2,000人以上の当事者は共通してプライド,恥,拒否(Pulford et al., 2009)があり,離婚者は助けを求めるが,自分や家族を恥じている者は助けを求める可能性が低い(Gainsbury et al., 2014).これと同様に,家族もまた支援を求めることに恥を感じ相談がしにくい(Hing et al., 2013)ため,嗜癖問題は家族の中でかかえこみ負のスパイラルに陥りやすくなると考えられた.
このように,家族のダイナミクスがギャンブル障害の発症に影響を与える(Askian et al., 2016;Subramaniam et al., 2017;Hodgins et al., 2007)ことと,【家族の底付き体験と絶望が悪影響する負のスパイラル】は合致する.そのため,まずは,家族が【自分にあった支援につながり心の居場所をもつ】ことや【依存症や共依存を理解し受容する】,【自分の内面に向き合うためのセルフケアに取り組む】一方で,家族が【当事者の責任問題に入り込まずかかわり方を変える】ことや,【当事者と適切な心理的距離を維持する】ことが重要である.
ただし,家族が共依存をやめることは,当事者が依存対象や依存している行動を簡単にやめられず何度もドロップアウトを繰り返す現実と同様に,容易ではない.これは長年にわたる生きづらさの根底に喪失してきた自尊心の低さが関連しているため,家族は当事者にとってなくてはならない存在になることで満たしてきたからである.
そのため,家族の自尊心の喪失や恥への対処には,健康的なスピリチュアリティの開発や新しい希望が有効(Bacon et al., 2020)ように,【信頼や肯定感を伝え家族関係を再構築する】環境の中で,【新たな自分を肯定し生き直す】ことが【新たな自尊心の確立】につながると考えられた.
リカバリーは,完全な直線的プロセスとは異なり,成果や結果を目指すものではない.たとえ,症状や障害が続いたとしても,充実した人生を生きていくプロセス)」(Deegan, 1988)といわれているように,家族が単に当事者への共依存をやめることが回復ではなく,セルフケアに取り組みながら新たな自尊心を確立していく回復過程がリカバリーといえる.
なお,帰結にみられた【当事者と家族の回復過程が相互作用する家族機能の改善】は,家族の回復が当事者にとって 3 番目に挙げられる回復の促進剤になる(Hodgins et al., 2002)といった家族の回復が当事者の回復に良い影響をもたらす(Kourgiantakis et al. 2013;Vohs & Finkel, 2006)が,家族総員の個別性や家族背景もさまざまであるため,該当しない場合もあることを考慮する必要がある.
2. 嗜癖問題における共依存からのリカバリーの家族支援での活用家族は自分の状況に応じて自分にあった支援先につながり続けることが重要である.家族支援には,自助グループをはじめ家族教室や家族のためのコミュニティ強化アプローチと家族訓練(Meyers et al., 1998)などがある.たとえば,自助グループが推奨している回復プログラムには,共依存という言葉で家族問題を説明している.その他の家族支援では,対人関係障害の問題として説明しているが,いずれの支援も当事者に左右されずセルフケアを推奨していることが共通点である.
相違点は,自助グループで使用している回復プログラムの中のスポンサーシップという取り組みである.これは,当事者向けの自助グループも同様にある.最初は,仲間からサポートを受けるスポンシィーの立場だが,次は他者の回復をサポートするスポンサーになることで,回復モデルとしての新たな人生の目標や責任・役割を主体的にもち,自分も他者も共に回復し続けるというものである.
リカバリーの全体像には,希望,エンパワメント,自己責任,生活の中の有意義な役割などで構成(Deegan, 1988)されているように,支援を受け身的に受け続けるだけでは成立しない.
したがって,嗜癖問題をもつ家族は,いずれの家族支援先であっても,まずはひとりで問題をかかえこまず,安心して家族支援や家族相談ができるサポートにつながることを土台に,いずれは主体的に新たな人生の目標や希望をもちながら社会とつながり続けることがリカバリーの前提にあるといえる.
概念分析を行った結果,7つの属性【自分にあった支援につながり心の居場所をもつ】【依存症や共依存を理解し受容する】【当事者の責任問題に入り込まずかかわり方を変える】【自分の内面に向き合うためのセルフケアに取り組む】【当事者と適切な心理的距離を維持する】【信頼と肯定感を伝え家族関係を再構築する】【新たな自分を肯定し生き直す】と,8つの先行要件の【機能不全家族由来の生きづらさ】【自尊心の喪失】【問題への否認傾向】【世話焼きを優先にするセルフネグレクト】【感情調節のアンコントロール】【ストレスへの脆弱性】【自尊心を満たすための関係性への執着】【家族の底付き体験と絶望が悪影響する負のスパイラル】と,2つの帰結【当事者と家族の回復過程が相互作用する家族機能の改善】【新たな自尊心の確立】が抽出された.
これらから,「家族が自分にあった支援につながり心の居場所をもつ中で,当事者を一人の成人として尊重し,適切な心理的距離を維持する一方,自分の内面に向き合うためのセルフケアに取り組み,新たな自分を肯定し生き直していく回復過程」と定義した.
謝辞:本概念分析の分析過程において貴重なご助言を下さいました四天王寺大学大学院の上野昌江教授と関西医科大学大学院の三木明子教授に心より感謝をいたします.
利益相反:本研究における利益相反は存在しない.