日本看護科学会誌
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原著
ギャンブル問題の1年以上の非再発を可能にした家族員の関わりなどの要因
吉井 ひろ子鶴身 孝介
著者情報
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2024 年 44 巻 p. 55-66

詳細
Abstract

目的:ギャンブル問題の1年以上の非再発を可能にした家族員の関わりをはじめとする要因を明らかにする.

方法:家族会員17名への半構造化面接の内容を質的記述的に分析した.

結果:家族員への聞き取りの結果から11のカテゴリが抽出された.家族支援が認知行動療法に基づき認知・行動の変容を促していることを参考に抽出されたカテゴリを1.現実認識2.基礎的な行動の変化3.発展的な行動の変化4.意識の変化の4つのグループに整理した.家族が共依存の悪影響を認識し,家族への支援を受け入れ,当事者との境界線を明確にし,共依存関係から脱していく行動変化の中で,当事者の成長の受容や,家族と当事者の回復の相互作用の認識などの意識の変化にも繋る様子が見てとれた.

考察:家族員が問題点を認識し行動や意識における変化の表れが非再発に影響していた.本結果は,ギャンブル障害治療における家族支援の重要性を支持する.

Translated Abstract

Aim: This study aims to identify factors such as family involvement that enabled the abstinence of gambling problems for more than one year.

Method: We conducted semi-structured interviews with 17 members of the mutual-support group for families of gambling disorder (GD) patients and administered a qualitative descriptive analysis.

Result: We extracted eleven categories from the results of interviews with family members. We organised these categories into four groups: 1. Recognition of reality, 2. Fundamental behavioural modifications, 3. Advanced behavioural adjustments, and 4. Shifts in awareness, based on the fact that family support promotes the change in cognition and behaviour through the concept of cognitive-behavioural therapy. We observed that the families of GD patients not only recognised the codependency situation and its adverse consequences but also accepted support for themselves and delineated clear boundaries with the patients. Moreover, in the process of behavioural changes to get out of the codependence, they accepted the patients’ growth and recognised the interaction between the recovery of families and patients.

Discussion: The family’s recognition of the problem and the manifestation of changes in their behaviour and awareness contributed to abstinence from domestic gambling problems. These findings support the importance of family support in the treatment of GD.

Ⅰ. 緒言

ギャンブル障害の発症には,生物学的因子,遺伝因子,環境因子などが関与する(松下,2018).環境要因には,小児期の逆境体験(Adverse Childhood Experiences.以下,ACE)も含まれる.4つ以上のACEの経験者は,経験していない人に比べて,喫煙歴,身体疾患歴,自殺企図歴が多いなど幅広い項目に悪影響を及ぼすことが報告されている(Felitti et al., 1998).ギャンブル問題に関してもACEとの関連(Stoltenborgh et al., 2015松下ら,2001Bristow et al., 2022)が報告されている.

また,ACEが多いと,他者を信じることや愛着関係を結ぶことの困難さが感情調節の障害につながり(大村,2023),自己価値を高める事のできる拠り所をあまり持てずに自尊心の低下にもつながる(Spencer et al., 1993).一方,ACEの中の家庭内要因による影響を捉えた概念として,「機能不全家庭」という概念があり,嗜癖分野では以前からよく知られている.機能不全家庭で育つと様々な嗜癖を発症するリスクが高まることが知られている(斉藤,2018).こういった背景がギャンブル障害患者の心理的メカニズムや治療を複雑にしている一因(松下,2018)と考えられる.

ギャンブル障害の再発状況を調査した研究によると12ケ月の間に完全にギャンブル行動をやめられたのはわずか8%(Hodgins & El-Guebaly, 2004)と報告されており,実際に嗜癖をやめることは容易ではない.しかも,当事者にとって単に嗜癖している対象や行動をやめることだけでは十分な回復にはならないことも知られている(Vasiliadis & Thomas, 2018).上述の不安定な他者関係も(大村,2023)治療を困難にしている.

これらから,治療は多面的に行っていく必要があると考えられる.治療を求める当事者への社会的支援として,重要な他者を参加させることは治療結果にプラスの影響を与える可能性があり(Ingle et al., 2008),実際にコミュニケーションスキルや認知行動療法などを組み込んだCRAFTといった家族支援なども嗜癖分野では有効なオプションとされている(Meyers et al., 1998).

また,ギャンブル障害の診断基準DSM-5(American Psychiatric Association, 2013;日本精神神経学会監修,2014)によるとギャンブルをするための嘘や借金を隠す傾向が病状として扱われている.そのため,当事者は,自身のギャンブルに関連した問題を否認する傾向があり(Hing et al., 2014)治療に繋がりにくい.こうした背景もあってか,本人からの電話相談が約3割に留まる一方,家族からの相談は6割以上となっており,家族の相談の割合が本人の倍以上を占めている.ギャンブル問題が表面化した場合,あるいは本人が問題を抱えていると周囲が感じた場合に,まず家族員が相談することが多いことがわかる(根井・小泉,2020).

このように,ギャンブルに関連した問題は当事者の自己申告では病状の変化を捉えることが難しいことも多く,家族などの周囲からの情報の方が,より鋭敏に病状の変化や状況を捉えている可能性がある.このため,病状の経過を客観的に陳述可能である家族員を対象とし,その視点から現実を明らかにする必要があると考えた.

また,当事者とのつながりに執着する家族員は,自己犠牲的な世話焼きによって自分の存在意義を高めようするといった共依存的な行動をする傾向があり,こういった家族の関わりがエスカレートすると当事者の病状悪化に繋る(Schaef, 1987/1993)ことが明らかにされている.

そのため,本研究においては問題を否認する傾向のある当事者がどのようにして一定期間の非再発を可能にしたのかに着目し,当事者のギャンブル問題をより客観的に把握していると考えられる家族員を対象に,非再発に影響したと思われる家族員の関わりをはじめとした状況について,具体的示唆を得ることを目的とした.

なお,上述のように12ケ月の間に完全にギャンブル行動をやめられたのはわずか8%(Hodgins & El-Guebaly, 2004)であり,これらの層は自己概念の変化(Reith & Dobbie, 2012)を伴う質的に良好な回復を示している者である可能性が高い.このため非再発期間の目安として,1年間と設定した.

Ⅱ. 目的

ギャンブル問題の1年以上の非再発を可能にした家族員の関わりをはじめとする要因の内容を明らかにする.

Ⅲ. 研究方法

1. 研究デザイン

本研究では,家族員がギャンブル障害に起因する問題を感知しなかったことを非再発の客観的指標として扱い,それに寄与した家族の関与をはじめとする要因を探ることを目的とした.このため,家族員を対象とし非再発に寄与した要因を家族員の発言から分析した.このようなテーマの先行研究はなく,今後の研究の足掛かりとして全体像を捉えるために,半構造化面接を用いて家族員の視点からみた,意味世界を自由に語ってもらった.これら個別性のある事象を掘り下げ,その構成要素を見出すため,質的記述的手法(グレッグ,2016)を用いた.

2. 用語の定義

1)当事者:アメリカの診断基準DSM-5(American Psychiatric Association, 2013;日本精神神経学会監修,2014)のギャンブル障害の中核症状を参考に,「ギャンブルが原因で借金の返済を繰り返すといった家族員を含む日常生活への支障を及ぼしながらも,ギャンブルをやめることができない者」とする.

2)家族員:「当事者の配偶者(妻もしくは夫,内縁含む18歳以上,同居,別居不問),または,当事者を子どもとするその親(同居,別居不問),もしくは,重要他者」とする.

3)再発した状態:当事者が家族員に感情的な苦痛(97.5%),関係への影響(95.9%),社会生活(92.1%),財政(91.3%),雇用問題(83.6%)の影響を及ぼす(森田ら,2015)を参考に「当事者のギャンブルに関する問題が家族員に精神的・経済的・社会的影響を与え家族員の日常生活の維持に支障をきたす状態」とする.

4)再発していない状態(非再発):「当事者の家族員が知る範囲において,再発した状態になく,ギャンブルに関する問題が家族員の日常生活に支障がない状態」とする.

5)共依存:(Schaef, 1987/1993)を参考に「家族員が当事者の責任問題の範疇に入りこみ,当事者に変わって借金返済や後始末をするといった自己犠牲的な世話が,かえって,嗜癖問題を助長させるが,家族員はその当事者と心理的に離れることが不可能な状態」とする.

3. 対象

対象:A県のギャンブル問題をもつ当事者家族員向けの自助グループ(家族員会)会員

・選択基準:家族会会員で,かつ,その家族員の当事者が最低1年以上,再発していない状態を保つ者で研究協力に同意が得られた者.

・除外基準:家族会代表者が知る範囲で心身の健康問題に支障が懸念される者.

4. 研究期間

2021年10月~2022年3月

5. 調査方法

対象となる自助グループの代表者に研究協力への同意を得てから,機縁法で紹介を受けた各々に研究協力の説明を文書と口頭で行い同意を確認した.半構造的面接(最大60分)は,インタビューガイドを用いて実施し,その内容を録音した.また,そのデータから逐語録を作成し分析を行い,データが飽和に達したと判断するまで面接を継続し終了した.

6. インタビューガイド

1)ギャンブル問題が再発していない状態を最低1年以上継続できるようになったことに関与した家族員の関わりをはじめとした状況はどのようなものか.

2)家族員からみてギャンブル問題が再発していない状態を維持できるようになったことに影響したことは何か.

7. 分析

インタビュー内容は録音し,その内容を基に逐語録を作成し読み込みを行った.目的に関わる部分を研究対象者の言葉を使用しながら,1つの内容毎に抽出しコード化をした.また,その意味の類似性や相違による分類や集約をする中で共通点を見いだし,サブカテゴリ,カテゴリへと抽象度を上げ,そのまとまり毎に共通の意味内容を表すネーミングをつけるといったカテゴリ化を行った.これらは質的記述的分析(グレッグ,2016)を参考に行った.なお,この過程において,ギャンブル問題に精通した大学教員1名からのスーパーバイズと,研究対象者2名のメンバーチェックを受け厳密性を担保した.

Ⅳ. 倫理的配慮

研究協力は自由意志によるもので同意を得た後や面接後に撤回しても,何ら不利益を被らないこと,学会発表や論文投稿の際は個人が特定されないよう加工し録音データと逐語録は消去することなどを説明文書に記載し口頭でも説明を行った.面接場所は,プライバシー保持に留意し個室かオンライン面接の二択とした.なお,本研究は,関西医科大学医学倫理審査委員会(No. 2020067)の承認を得て行った.

Ⅴ. 結果

1. 対象の概要

データの内容が目的を達成し飽和状態と捉えられたため17名でサンプリングを終了した(Creswell, 2016).

属性は当事者の親が2名と,当事者の配偶者14名,当事者の親かつ配偶者1名であった.対象者の年齢は40歳~60歳代,会員歴は3年~10年であった.

2. 家族員の関わりなどの状況

132個のコードから31個のサブカテゴリと11個のカテゴリを抽出し,カテゴリを【 】サブカテゴリを[ ]で表記した(表1).以下にそれぞれのカテゴリに分類された家族員の発言を「 」内に示す.また,抽出したカテゴリを筆者がその内容から4つのグループに分類した.

表1 家庭内ギャンブル問題の非再発が1年以上継続できるようになったことに影響した家族の関わり

カテゴリ サブカテゴリ 代表的なコード
家族が当事者に代わり奔走しても空回りする現実に気づく 当事者に代わり借金の後始末を繰り返しても回復しない 本人が“助けて”と言ってもいないうちに借金を肩代わりしてきたが回復しなかった
私が貯金を全部おろして借金を返済した半年後に新たな借金を見つけることを繰り返していた
借金先からの督促状が届いたことで家族が気づき,貯金をおろして借金の返済を繰り返してきた
当事者を支援につなげても本人の回復意欲が続かない 本人を自助グループにつなげようとしても,家族がついていかないと一人ではいかない
施設に入所させたが本人の回復意欲がないと続かなかった
支援につなげても空回りしていることに気づく 夫婦だけで相談にいったら愛情の問題だと言われ問題の解決にならなかった
多重債務の相談に子どもを連れて夫と3人で行ったがやめさせることに繋がる回答はなかった
専門クリニックに家族だけで行くと息子に来させなさいと言われ連れて行ったが変わらなかった
家族が本人に代わって金銭管理しないといけないと言われて行ったが,結局勤め先の金を横領された
依存は疾患であり,家族には共依存問題があることを学ぶ 依存症が疾患であることを学ぶ 依存症は,やめたい気持ちとやりたい気持ちの両方をもちスリップ(再発)しながら進むと理解したから,口出しをやめないといけないとわかった
ギャンブル依存症の本をみつけて依存は病気だとわかった
子どもが調べてくれてギャンブル依存は病気だから病院につれていかないといけないといわれた
家族に共依存の問題があることを学ぶ 家族が夫を何とかして回復させようとすることは不可能だとわかった
家族が本人の世話をしてもしなくても本人の行動は変わらないとわかった
家族も支援を受け入れる さまざまな支援情報からつながる必要性を理解する ネットで調べ病院や行政の精神医療センターが相談先とわかった
いろいろ調べると専門の外来や自助グループ支援の情報を得ることができた
ネットで調べて病気とわかったし家族の自助グループがあるのも知った
当事者だけでなく家族も支援につながることを受け入れる 医療業界の知人から本人に自助グループを勧められ,そこから家族の自助グループをすすめられ参加した
多重債務の相談の人から家族には家族の自助グループをすすめられ言われたとおりにした
自助グループの人から家族は家族の方へと言われ,何でと思ったが行くことにした
夫が何十年も信頼している医者から私も行くように言われて家族の自助グループにつながった
当事者との共依存関係をやめる 当事者への共依存に相当するこれまでの行動に気づく 私が人にどう思われるかが気になるから夫や子どもを責めがちだった
彼も私も共依存の根っこがあるけど私の共依存の方が彼よりひどいことに気づけた
夫婦喧嘩はののしりあってお互い発病したみたいになっていたと振り返れることができた
今まで夫を一人の大人と見ていなかったし,夫の問題は私の問題だから私が解決すべきと思っていた
借金を繰り返すので,私が代わりにやってあげないといけないと思っていた
息子の借金の尻拭いをした分,本人の尊厳を認めないというか,言うことをきかせるという思いがあった
夫がギャンブルをして借金を作ったら,他人のことではなく私のことに受け止めてしまう
夫の全部を把握していたかったから夫にGPSや監視カメラをつけていた
夫がお金をめちゃくちゃにしたのは俺だが泣いてせめてきたのはおまえだと言われて気づかされた
夫婦の中でうそは絶対いけないというのが私にあって,毎日携帯をチェックしあっていた
共依存がよくないと理解できるようになる 共依存のことをテキストで読んでいたり他の人の話を聞くと,自分もよくない行動をしていたと思った
私に経済力があったから夫をあてにしてなかったのが悪かったと思う
当事者に近づきすぎたり言い過ぎたりするのはよくないとわかった
共依存っていったい何なのか,最初はしっくりこなかったけどじわじわとわかるようになってきた
共依存に相当する行動をやめる決心をする 夫をコントロールしがちだったけどそれは意味がないということを知った
家族支援の仲間から教えられ,夫は脳の病気で私は共依存を治さないといけないと理解できた
回復プログラムをやり続けていると,家族が本人を回復させることに無力だったということがわかった
当事者たちの話をきいていると,家族が態度を変えないとこちらの提案も聞いてもらえないことがわかった
ギャンブルの問題は当事者自身で向き合ってもらう 当事者の責任問題に入らないよう心理的・物理的距離をあける 私は家族の自助グループに行って夫には施設にもいってもらい2年は離れた
夫の回復よりも家族でいることが大事だと思い込んでいたが回復の邪魔をしてはいけないと仲間に言われそうした
素行不良の息子をほうり出した
私の方が,夫を傷つけてしまうので一旦離れた
借金を肩代わりしたらダメとわかって借金返済しないままに出ていってもらった
当事者自身で問題に向き合うための決断を迫る 家を出るか施設に入るかを本人に選ばせた
本人への世話焼きをやめて本人が問題に向き合うための選択を迫る
私のカードで20万くらい夫にとられた時,仲間から“これをチャンスに自助グループか施設に行くかを決めてもらう正念場”と助言を受けそうした
仲間から“回復させたいなら本人に底付き体験をさせた方がいい”と言われそうした
それまでは借金を肩代わりしていたが“家族への返納が遅れたら職場に言うよ”と言ったら本人はそれが一番嫌で返納が滞らなかった
当事者や状況に左右されず家族自身の内面と向き合う まわりの状況に左右されず家族自身の内面に向き合う必要性を理解する 回復プログラムをするごとに他人の事ばかり気にしていたが私のことにするようにした
回復プログラムで家族自身が変わることはできるとわかり楽になっていった
従っていれば波風たたないと思っていたが自分の意見をいうようになった
私自身の生き方の問題に取り組んでいかないと自分の人生はよくならない
自分の感情に蓋をして見ていないふりをしてきたけどみつめて伝えていこうと思う
ギャンブルの問題は解決できても私は異常に怒ってしんどくなるから私の生き方に向き合おうと思う
当事者の行動に左右されず家族自身の感情調節に取り組む 噓をつかせないような威圧的な態度をやめ言いづらい雰囲気にさせないよう気をつけている
主語を相手にせず私にして責めたり昔のことを引き合いに出さないようにする
話は肯定的なメッセージになるよう一旦考えてから話してべらべら話さない
“夫と境界線を引くこと・わたしの考えをおしつけない・昔のことを引き合いにださず肯定的な話ができるようになる”を練習している
当事者がしたことで頭にくることは口から出さずひとりになること
家族支援に支えられながら,家族員は自分の目標をもつ 支援に支えられながら自分を変えようとしている ミーティングで話を聞いてもらえるから薬のようなもの.来ないと調子が悪くなる
プログラムにつながったのも仲間がいたから.それでないと回復しない
家族の自助グループにいると自分が正しいと思っていた事は違う場合もあると思えてきた
私を支えているのは誰にも言えない言いにくいことを言えるやっぱり仲間かな
家族の自助グループの仲間でうちより大変な状況なのに明るい人を何人も見た時,ここにいた方がいいと思って通い続けている
治療プログラムにつながり何年もかかりながら自分じゃない誰かとつながり練習している
最初は息子が世話になっている義務感だったが今は自分の回復のために変わった
支援やプログラムにつながりながら自分が変える新たな目標をもつ 回復プログラムを通し同じ経験の人の役に立つために自助グループにつながり続けることが大事
回復プログラムで家族は家族自身が変わることはできるとわかり楽になっていった
自分が変わるためにできることはあるといわれて道が広がった
回復プログラムの中の回復を受け渡すスポンサーとして私以外の人とつながっている
他の家族員からの協力や承認を家族員の回復意欲につなげる 他の家族員からの協力や承認に感謝する 夫の後始末をしないように彼の両親が共依存をやめてくれたおかげと思っていたが,両親は“(夫が)回復したのは嫁のおかげ”と言ってくれた
息子がギャンブラーになったのは私のせいと責めていた義理の親が,本人の自助グループにわたしと一緒についてきてくれるようになった
姑は借金を尻拭いするタイプだったが,嫁の私が共依存をやめる方向にあわせて一致団結できたことがよかった
子どもの存在や介入を支えに家族の回復意欲につなげる 子供が支えにもなったし,子供がいるからどうするっていう感じで考えられたと思う
“さぼりたい”と思っても,娘が“何故行かないの?帰ってきた時,いつもニコニコしてるよ”って言われて行くようになった
離婚届けを出す前日に子供が夫に“ギャンブルは病気だから専門病院へ行かないといけない”と言った.
子供に別居はいいが離婚はダメと言われた
“仲間の中にいられるのはすごいね”と言ってくれる子どもの存在や関わりに支えられた
当事者との適切な心理的距離を長期的に維持する 当事者と家族員との間のそれぞれのプライバシーを尊重する 家族ひとつで寝るのが家族だと思って緊張しながら寝ていたけれど,プライバシーを別に部屋も別にしたらゆっくり眠れるようになった
本人の意思を尊重した効果もあると思う
私の優先順位の一番は家庭よりミーティングなので“そっちに行ってくれたらいい”って言ってる
本人が回復してても家族が距離を近づきすぎないようにしている
息子が離れて暮らしているのでいい距離感を保って共倒れしない距離を保つことが一番
同居の親と私の間に挟まれ夫もしんどかったと思うから近づかないようにしている
わたしがせめてしまうから近づきすぎないようにしている
彼を監視することで頭がいっぱいだったが共依存を仲間から教えられて距離をもつのが大切とわかったから夫も楽になったと思う
一緒に旅行から帰ってきたら互いの家で別居生活が楽だし家族全体が回復するのが大事
気をつけていないとついつい近づきすぎてしまうから今もなお意識して維持している
当事者と心理的距離をおくと冷静になれる効果を実感する 私自身も冷静になれた期間だったので大事だった
離婚届を渡し別居したことが大きいかと思う
私が離れることで物理的に夫がひとりになれる時間ができたのもあると思う
当事者と家族員がそれぞれの支援とつながることで心理的距離を保つ 2人とも会合が嫌いなのに毎週それぞれの自助グループに行き続けている
お互いが自助グループにつながったことは計りしれないきっかけになった
お互い7年通い続けていることも大きい
お互い毎週2人ともそれぞれの自助グループに行き続け3年になったことが不思議
当事者の新たな生き直しを認める 新たに生き直している当事者を一人の成人として認める “俺はお父さんの気持ちがわかるからお父さんも施設に行ってみたらどう?”って息子が言えることに感動した
私が感情的になったりした時に息子から教えられることが多くなった
経験談を話す演者として施設の仲間とつながりをもってから目の輝きが変わったと思う
仕事で疲れているのに自助グループに行っているのは感心
息子は施設に入って自分が教える立場にもなった今一人の成人した人として捉えている
本人は施設に入った後,一緒に生活していても私らに巻き込まれることなく本人は自分のやるべきことをやってくれている
合同ミーィングで中心的メンバーとしてのふるまいを見た時,夫としてでなく自由でのびのびしていたし感じのいい人だと思った
底つき体験を契機に当事者の行動が変容していく過程を認める 施設入所してギャンブルや薬・携帯家族ともつながらない環境になって断ち切れたと思う
お金に困って犯罪をして警察につかまって落ちるとこまで落ちたのがきっかけになった
本人の意思でこの生活から抜け出したいと自ら施設入所を決めた
家を出てもらい,家賃を滞納したら職場に言うよといったら滞納しなかった
治療によって支えられていることを見守る 夫は自分に心療内科が必要だし話を聞いてくれる良い先生だからと言い長年通院している
自殺未遂をした時,自分でも発達障害かもと思い医者につながっていった
クリニックにつれていくと息子は話を聞いてくれる人ができて楽になったと言っていた
うつ病を機に病的なギャンブルになったが先生を信頼してるから行っていると思う
当事者自身で職場環境を改善させたことを見守る 夫は,仕事をやめて施設に行ってから止まった感じ
専門職だからそう簡単に辞められないけど配置転換はしてもらっていた
仕事も部署がかわってから人間が変わった感じ
ギャンブル以外の楽しみを見つけた当事者の生活を見守る 当時の仕事は退職して1日中畑仕事にいそしんでいる
自助グループの仲間と共通の趣味でランニングしにいっている
ギャンブルはするけれど勝ったお金で家族旅行してくれるのはある意味回復かと思う
当事者が回復に向かっていることを見守る 仕事を失ってまで自己破産したくないから借金を払い続けて回復したいと言っている
借金返済はギャンブルしないための保険になると本人が言っている
夫は自助グループの仲間を裏切れないからっていう思いで行っていると思う
最後のスリップから8年止まっているのは自助グループに通い続けているからと思う
1回目の自助グループは自分より世代が高く行かなくなったが2回目は自分も世代があがり出会った人もよかったみたい
ミーティングのためというより生活の中に自助グループの濃いつながりが入り込んでいて必要だから行ってると思う
自助グループにつなげた当初は息子は絶対行かないと言ってたが今は治療プログラムで行っていると思う
共依存の手放しと当事者の回復過程が相互作用することを認識する 家族員が共依存を手放すと当事者が回復に向かうことを実感する 家族会につながり夫を手放す意味で自分が家を出たら半年で夫が変わった
夫にとらわれていないことが夫にとってよかったと思う
家族員の関わりやコミュニケーションを改善すると関係性も改善する 共依存は簡単に治せないからたまには後退するけど,その時は“ごめんね”って謝るけど昔と違い感情を伴うごめんねが言えるようになった
仲間から嫌でも夫に謝るべきと言われてやれるようになったら“ありがとうって言えるようになって変わったね”と夫に言われた
当事者が回復に向かうと共依存を手放す勇気になる 夫のギャンブルからの回復を機にわたしも精神的に自立しようと自分の世界を楽しめている
夫が仲間を裏切れないしたとえスリップしても前みたいにはならないと聞いた時私も夫を手放す勇気ができた

1) 【家族員が当事者に代わり奔走しても空回りする現実に気づく】

「本人が助けてと言ってもいないうちに借金を肩代わりしたが回復しなかった」「家族員が金銭管理しないといけないと言われたが結局勤め先の金を横領された」

2) 【依存症は疾患であり,家族員には共依存の問題があることを学ぶ】

「依存症は,やめたい気持ちとやりたい気持ちの両方をもちスリップ(再発)しながら進むと理解したから,口出しをやめないといけない」「回復プログラムをやりだして夫を何とかしようとすることは不可能だとわかった」

これら1)と2)は,対象者の現実の認識に関わるものと考えられた.

3) 【家族員も支援を受け入れる】

「ネットで調べて病気とわかったし,家族員の自助グループがあるのも知った」「夫が何十年も信頼している医者から,私も行くように言われてつながれた」

4) 【当事者との共依存関係をやめる】

「夫を一人の人と見ておらず,夫のことは私の問題だから解決しないと思っていた」「尻拭いをした分,尊厳を認めないというか言うことを聞きなさいがあったかもしれない」「夫は脳の病気と学び私は共依存を治さないといけないと仲間から学んだ」

5) 【ギャンブルの問題は当事者自身で向き合ってもらう】

「私は家族員の自助グループに行って,夫には施設にいってもらい2年は離れた」「本人を回復につなげたかったら,底をつかせた方がいいよっていわれてそうした」「家を出るか,施設に入るかを当事者に選ばせた」

これら3)~5)は対象者の基礎的な行動の変化に関わるものとして,筆者が整理した.

6) 【当事者や状況に左右されず家族員の内面と向き合う】

「噓をつかせないような威圧的な態度をやめ言いづらい雰囲気にさせないよう気をつけた」「主語を相手にせず私にして,責めたり昔のことを引き合いに出さないようにする」「問題は解決できても,私は異常に怒ってしんどくなるから生き方の問題に向き合おうと思う」

7) 【家族支援に支えられながら,家族員は自分の目標をもつ】

「プログラムにつながったのも仲間がいたからそれでないと回復しない」「自分が変わるためにできることはあるといわれて道が広がった」

8) 【他の家族員からの協力や承認を家族員の回復意欲につなげる】

「夫の後始末をしないように彼の両親が共依存をやめてくれたおかげと思っていたが,息子が回復したのは嫁のおかげと言ってくれた」「自助グループをさぼりたいと思っていても,娘が“何故行かないの?帰ってきた時,いつもニコニコしているよ”って言われてから行くようになった」

9) 【当事者との適切な心理的距離を長期的に維持する】

「家族員ひとつで寝るのが家族員だと思って緊張しながら寝ていたけれどプライバシーを別に部屋も別にしたらゆっくり眠れるようになった」「息子が離れて暮らしているのでいい距離感を保つっていうか共倒れしない距離を保つことが一番だと思う」

これら6)~9)は対象者の発展的な行動の変化に関わるものとして筆者が整理した.

10) 【当事者の新たな生き直しを認める】

「当事者の意思でこの生活から抜け出したいと自ら施設入所を決めた」「自殺未遂をした時,自分でも発達障害かもと思い医者につながっていった」「仕事も部署がかわってから,人間が変わった感じ」「借金返済はギャンブルしないための保険になると本人が言っている」

11) 【共依存の手放しと当事者の回復過程が相互作用することを認識する】

「家族会につながり夫を手放す意味で自分が家を出たら半年で夫が変わった」「仲間から嫌でも夫に謝るべきと言われてやれるようになったら“ありがとうって言えるようになって変わったね”と夫に言われた」

これら10)と11)は対象者の意識の変化に関わるものとして筆者が整理した.

Ⅵ. 考察

家族員の発言から,ギャンブル問題の1年以上の非再発を可能にした家族員の関わりをはじめとする要因として11のカテゴリを抽出した.なお,さまざまな家族支援や家族教室では主に心理教育や家族システム論などを根拠にしている(越智ら,2016)が,嗜癖問題別にかかわらず認知行動療法を基本に認知・行動の変容を促すといった具体的なスキルを推奨しているコミュニティ強化アプローチと家族訓練(CRAFT: Community Reinforcement and Family Training)(Meyers et al., 1998)を参考に4つのグループに整理した.

1. 現実の認識

まず【家族員が当事者に代わり奔走しても空回りする現実に気づく】という項目について述べる.ギャンブル問題は他の物質依存症と異なり,金銭が直接関わるため経済的負担が家族員全体におよぶため,「家族員が当事者に代わって後始末に奔走する」ことは,一見合理的に見える.しかし,良好な経過を辿った家族員の発言内容を鑑みると,当事者の意思や意欲の尊重が伴っていないことがうかがえる.共依存の問題がある人は自身の精神安定のために当事者との間に共依存関係を構築するために当事者の回復に対する視点は乏しく,献身的に見えても,現実には当事者の状態をより悪化させる(Schaef, 1987/1993).

つまり,共依存の問題がある人と当事者の関係は健康で相補的なものではなく,依存対象者である当事者の持つ問題や行動,彼らとの関係性に対する依存に根ざした不健康なものとなっている.このため,共依存の問題がある人が共依存から回復するには,当事者との関係ではなく,共依存している自分自身を変える必要がある(柿澤,2019).このように,家族員が当事者に代わって奔走していても,当事者の回復につながらず空回りする現実に家族員が気づくことが,当事者の回復に寄与していると考えられる.

次に【依存症は疾患であり,家族員には共依存の問題があることを学ぶ】という項目について述べる.家族員は,当事者のギャンブルを止める行動をとらなかったことについて自責の念にかられることがある一方で,自責の念に耐えられず,現実を否定することもある(Azemi et al., 2023).この否定を逆の観点から捉えると,依存症が疾患であることを認識することが突破口につながると考えられた.

また,前述したように共依存状態にある家族員は他者支配的な行動が優位となり(Beattie, 1987),当事者の病状悪化に繋がる(Schaef, 1987/1993)ことが知られている.家族関係のダイナミクスがギャンブル障害の発症に影響を与える(Hammond, 1997)といった報告から窺えるように,当事者の回復意欲が伴わないままに,家族員の共依存的な関わりによって,さらにギャンブル障害を悪化させかねない.このことから,家族員が依存症は疾患であるため専門的な治療を要することや,家族員自身に共依存の問題があることに気づくことが重要であると考えられた.

2. 基礎的な行動の変化

まず,【家族員も支援を受け入れる】という項目について述べる.家族員には支援につながることへの羞恥心から自力で問題を解決したいと考えるために,支援を求めることに否定的である(Hing et al., 2013)といった報告もある.

本研究対象者においては,前述のように共依存的な関わりが空回りする現実を認識できており,家族員自身が支援を求めることに心理的抵抗を感じながらも,支援を受け入れる行動変化につながったと考えられた.

続いて【当事者への共依存をやめる】という項目について述べる.家族員の発言によると,家族員が支援を受け入れ同じ境遇の仲間たちとのつながりに支えられるようになると,これまでの共依存的な関わりに気づき,その悪影響を理解できるようになるなどしていた.これらを支えに,共依存をやめる決心に至り,それを実行する行動に変化したと考えられた.

この自助グループに参加し始めた家族員が徐々に自分の共依存的傾向に気づき考えや行動を修正するという心理的変化は,自助グループ参加者の体験談で「回復」の重要な要素として語られている(川口,2017).このように,同じ境遇の仲間の存在が,家族員がこれまでの共依存的な関わりをふりかえり,受容し,やめる決意を固め,実際にやめるに至る行動変化に寄与したと考えられた.

続いて【ギャンブルの問題は当事者自身で向き合ってもらう】という項目について述べる.家族員の発言から,家族員が当事者の責任を肩代わりしないよう適切な心理的・物理的距離をあけている様子がみられた.このことは当事者を見捨てることではなく,お互いの自立と関連することが(五十嵐,2011)知られている.家庭内における家族員からのストレスから逃れることも当事者のギャンブル行動の一因となっている(Fals-Stewart et al., 2005)ことからもわかるように,心理的・物理的距離を取ることが当事者のギャンブル行動のエスカレート防止に寄与する可能性が考えられる.

また,この項目には,当事者自身で問題に向き合うことを促す側面もあった.家族員が当事者と適切な距離をあける(五十嵐,2011)ことが当事者自身で問題に向き合ってもらうといった自己意思決定を促す関わりに関連していると考えられた.

まとめると,家族員は支援を求める事に対して良好な経過を示した家族員は,支援を受け入れることで,これまでの共依存的な関わりに気づき,受容し,それをやめるといった行動に変化したと考えられた.

3. 発展的な行動の変化

まず,家族員が【当事者や状況に左右されず家族員自身の内面と向き合う】といった項目について,家族員が状況に左右されずに自身の内面に向き合う必要性の理解を通して,感情調節に習熟するためのセルフケアに取り組むといった行動変化があった.

英国のアルコール依存症者の家族員における共依存からの回復は,家族員が自分の内面に向き合う中で,共依存の問題が依存症問題の根底にあることの認識につながっていた.さらに彼らは生い立ちに由来した虚無感を埋めるために,共依存的な活動に没頭することで,自尊心を満たし,そうする自分を正当化してきたことの認識があった(Bacon et al., 2020).ギャンブル障害患者の家族員による同様の報告もみられている(土方・森田,2023)ことから,本研究対象者も自身の内面と向き合い内省を深めるに至ったと考えられた.

次に【家族支援に支えられながら,家族員は自分の目標をもつ】といった項目について,家族員の発言から総括すると,家族員が支援を通して,家族員自身が変わろうとするために,自分自身の新たな目標をもつ様子がみられる.家族教室の目標は家族員自身のセルフケアを援助することや,家族関係の再構築,家族員の生活の質の向上である.具体的には,家族員の心の内を吐露し孤立感から解消されることや,家族員自身が内在する自身の力に気づくこと,自分で選択した対処法を実行できるようになること(越智ら,2016)などを通して,家族員は自分の目標をもつことを推奨される.

このように,家族支援が当事者との関係性に依存した共依存の状態からの回復を促すものであり,当事者を回復させようと支援につなげるだけでなく,家族員自身も支援につながることによって,自身の問題に気づき,セルフケアを行い,自身の目標をあらたにもつことが重要であると考えられた.

続いて,【他の家族員からの協力や承認を家族員の回復意欲につなげる】という項目について述べる.家族員の発言から,家族員が子どもや,義理の親から受けた協力や,自身の行動に対する承認を受けたことへの感謝を通して,家族員自身の回復意欲につなげていた.このような家族員の回復を考える時,家族員成員のそれぞれが自分自身の人生に生きる意味を見いだし,将来の希望をもって生きる家族システムの変化が必要になる.しかし,家族支援につながった家族員であっても,つながった当初は受動的に参加していることが多い(篠原ら,2012)といわれている.このため,家族員をよく知る他の家族員からの協力や承認をこころの支えにして,回復意欲の維持を可能にした良好な家族関係のダイナミクスが能動的な支援希求に寄与すると考えられた.

次に,【当事者との適切な心理的距離を長期的に維持する】といった項目について「私自身も冷静になれた期間だったので大事だった」などの家族員の発言から,それぞれのプライバシーを尊重し,互いが感情的にならずに冷静でいられるような形で適切な心理的距離を大事にすることが良好な経過に寄与すると考えられた.また,双方がそれぞれの自助グループにつながり続けることで適切な心理的距離の長期的維持に繋がっていることを示唆する発言もみられた.実際,社会生活において人と親密な関係を構築するには互いに信頼し合える関係が大切であるが,その関係が依存的であれば不安定となり破綻する(Schaef, 1987/1993).逆に,互いに対等であることを認め合う人たちは,他者を尊重する習慣を身につけており,治療の対象にはならない(Schaef, 1987/1993)といわれている.

このように,家族員が当事者との適切な心理的距離を維持するようになるといった変化は,当事者の行動に左右されにくくなり自分主体の生き方ができるようになることから,家族員の回復になり成長に繋がる(太田ら,2019).このことから,当事者との心理的距離の維持は当事者の良好な経過に寄与すると考えられた.

4. 意識の変化

まず,家族員が【当事者の新たな生き直しを認める】といった項目について述べる.家族員の発言から,当事者自身がギャンブルの問題に向き合うことを家族員が見守る様子や,当事者が自分でギャンブル以外の楽しみを見つけた生活を見守る様子が観察された.

当事者は,自分の社会的・経済的な義務や役割を果たせないことが多い.このため,自分を病的なギャンブラーであると認識し,自己評価を低下させ再発する者も少なくない.

また,物質依存症患者が,孤独や不安を緩和する目的でアルコールや薬物を使用することにのめりこむ背景には自尊心の低下がある(板橋ら,2020Reith & Dobbie, 2012).これと被虐待との関連が知られており(Bolger et al., 1998),ギャンブル障害の発症に有意な関連が認められている(Lane et al., 2016).

このように,当事者に見られる自尊心喪失は成育歴と関連している可能性があるため,当事者が単に嗜癖している対象や行動をやめることのみでは回復には不十分(Vasiliadis & Thomas, 2018)であり,回復は,社会生活の中でアイデンティティが変化していくため,直線的な単純なものではない(Reith & Dobbie, 2012)といわれている.

つまり,自尊心を回復し,偏見への対処スキルを高めるよう支援する必要があり,周囲の親しい人からのサポートを活用し,再発に備えることも有効である(Hing et al., 2016).これらから,本研究の結果にみられたように,家族員が当事者を一人の成人として認めたり,当事者自身の意思決定を尊重したりといった生き直しの是認は,当事者の自尊心の回復にも寄与すると考えられた.

続いて,【共依存の手放しと当事者の回復過程が相互作用することを認識する】といった項目について述べる.家族員の発言から,家族員が共依存を手放すと当事者が回復に向かうことを実感でき,家族員が共依存を手放す勇気になるといった相互作用を認識している様子が観察された.

実際に,家族員の回復と当事者の回復とは相互作用する(Kourgiantakis et al., 2013Hodgins et al., 2007)という報告もある.共依存から回復した当事者によると,(1)共依存者が自分の「害」を認識するように仕向けること,(2)共依存者が回復を望むように仕向けることが特に重要であり,共依存の害を認識できなければ,再生を促す望みはほとんどない(Beattie, 1987)といわれている.なぜなら,この共依存の特性は,罪悪感といった自己組織的なものよりも,恥辱に基づく低い自尊心や幼少期の子育てに関連している(Wells et al., 1999)ためである.そのため,家族員が共依存を手放すためには,共依存的な関わりが害という認識だけでなく,家族員自身の生い立ちに由来する自尊心の喪失から家族員が回復をめざす認識が必要であると考えられた.

まとめると,家族員が当事者を一人の成人として認め,当事者の意思決定を尊重し,見守るといった生き直しを是認する意識の変化が,当事者の自尊心の回復に寄与すると考えられた.また,家族員は,共依存を手放すと当事者が回復していく様を目の当たりにできると,さらに共依存を手放す勇気につながるといった相互作用を認識できていたと考えられた.この意識の変化が,非再発の長期的維持につながると考えられた.この考えは,当事者支援には家族支援の拡大が必要であることを示した先行研究(Rotunda & Doman, 2001)からも支持される.

したがって,ギャンブル問題を持つ当事者の非再発については,家族支援と並行させることによって,家族員が共依存を手放し当事者を尊重するといったストレッサーにならない関わりなどの変容が長期維持を可能にしていたと考えられた.

研究の限界 研究協力を得られた対象が単一の自助グループであったため一般化が困難である.また,本結果は当事者からのデータとの照合を行っていないため,解釈には注意が必要である.さらに,国内外のギャンブル問題に関連した文献自体が物質依存と比較すると少ないため,追試が必要と考えられる.一方で本研究はギャンブルに関連した問題をもつ家族員の共依存からの回復を含む関わりなどが当事者の回復と相互作用することに言及した本邦初の研究である.

Ⅶ. 結論

ギャンブル問題の1年以上の非再発を可能にした家族員の関わりをはじめとする要因は,1.現実認識,2.基礎的な行動の変化,3.発展的な行動の変化,4.意識の変化の4つに整理できた.1.依存症が疾患であることや家族員には共依存の問題があるといった現実の認識や共依存状態自体の悪影響の認識,2.家族員自身の支援受容,共依存からの脱却などの行動変化,3.内省し他の家族員成員との良好な関係を基盤とした回復意欲の維持,当事者との適切な心理的距離の維持などの行動変化,4.家族員による当事者の尊重や,双方の回復の相互作用の認識といった意識の変化が,非再発の長期的維持につながると考えられた.これらはギャンブル障害治療における家族支援の重要性を支持するものである.

付記:本研究は令和2(2020)年度科学研究費助成事業(科学研究費補助金)奨励研究(20H00723・43万円)の助成を受けて実施した.また,第26回東アジア看護学研究者フォーラムにおいてポスター発表したものに加筆修正をしたものである.

謝辞:本研究にご協力いただいたNPO法人全国ギャンブル依存症を考える会の会員の皆様に深く感謝を申し上げます.

利益相反:本研究における利益相反は存在しない.

著者資格:HYは,本研究の着想から計画実施考察までの一連にわたって行った.KTは,重要な知見に対する修正ならびに最終的な承認を行った.

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