日本看護科学会誌
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原著
小児対象病棟に勤務する看護師の病棟の患児に対する口腔アセスメントの実態とその関連要因の検討
工藤 広大朗飯野 英親中島 富有子青野 広子上野 ふじ美晴佐久 悟
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2024 年 44 巻 p. 841-852

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Abstract

目的:小児対象病棟に勤務する看護師の患児に対する口腔アセスメントの実態とその関連要因を明らかにし,普及を図る上での示唆を得る.

方法:6大学病院の小児病棟,NICU・GCUに勤務する看護師を対象に,口腔アセスメントの実施に関する自記式質問紙調査を実施した.分析は,記述統計,相関分析及び2項ロジスティック回帰分析を行った.

結果:看護師380名に配布し,280名の回答が得られた.観察部位別の口腔アセスメントの実施率は,小児病棟では,39.3%~97.9%,NICU・GCUでは,5.8%~94.2%であった.口腔アセスメントは,口腔アセスメントに関する知識・自信・情報の必要性の認識,歯科医療従事者との連携,環境因子として歯学部併設の有無と関連していた.

結論:小児病棟では,口腔アセスメントの知識,自信を高める教育を図る事.NICU・GCUでは口腔アセスメントの情報を提供する事が実施率改善に寄与する可能性が示唆された.

Translated Abstract

Objective: This study aimed to investigate the status of nurses’ oral assessment performances and associated factors in pediatric-related hospital wards to determine their oral assessment performances.

Method: A self-administered questionnaire regarding oral assessment performance was distributed among the nurses working at pediatric wards, neonatal intensive care units (NICU), and growing care units (GCU) in six hospitals. Descriptive statistics, correlation analysis, and binomial logistic regression analysis were used for data analysis.

Results: Of 380 nurses who received the questionnaire, 280 nurses responded (response rate: 73.6%). The percentages of oral assessment performance based on the site of observation were 39.3%–97.9% in pediatric wards and 5.8%–94.2% in NICU/GCU. The associated factors included knowledge and confidence regarding oral assessment, willingness to acquire information regarding oral assessment, collaboration with dental health professionals, and the presence of an affiliated dental hospital as an environmental factor.

Conclusion: It was suggested that education to increase knowledge, confidence, and NICU/GCU awareness of oral assessment in pediatric wards may contribute to improved implementation rates.

Ⅰ. 緒言

全身疾患と口腔状態の関連の強さから医療施設で治療を受けるすべての患者に対する口腔ケアの看護支援は重要である(Kudoh & Shibayama, 2022).現代の口腔の代表的な問題には,齲蝕と歯周病がある.齲蝕は,全国の5歳~10歳の子どもの約40%が罹患し,小学生において最も高い罹患率の疾患である(文部科学省,2021).歯周病では,5歳~9歳児の歯肉炎罹患率は35%,10歳~14歳では45%に達し,以降増齢的に増加傾向が見られる(厚生労働省,2011).保護者の口腔ケアへの認識は,子どもへの仕上げ磨きや確認を大多数の保護者は実施しているもの,食べたら必ず磨く必要性は認識していない(丸山・飯塚,2010).一方,健康障害の子どもをもつ家族は全身疾患を重視するため,口腔ケアが軽視される事がある(Blevins, 2011).病院においても,口腔の問題に比べると,全身疾患の治療を優先する事が多い(Blevins, 2013).歯科疾患を放置すると,疼痛や,永久歯の齲蝕,咀嚼機能の低下などの悪影響を及ぼす(三輪,2011).また,てんかんの治療(Morgan et al., 2019)や,化学療法中の子ども(Wang et al., 2021)では,口腔内の健康障害が生じている.乳児期においても,乳歯の未萌出(三穂ら,2003)や,先天性歯による舌下部に潰瘍を形成するRiga-Fede病のリスクがある患児が存在する(新谷,2011).さらに,新生児・乳児は,嚥下機能の未熟性や,人工呼吸器装着により,誤嚥性肺炎や人工呼吸器関連肺炎(以下VAP)のリスクがある.従って,小児病棟だけではなく,新生児・乳児が対象のNICU(Neonatal Care Unit),GCU(Growing Care Unit)においても看護師が乳児期から口腔を適切にアセスメントし,口腔ケアを実施する事は重要である.

歯科医療者以外が簡便に使用できる口腔アセスメントツールとして,OHAT(Oral Health Assessment Tool)があり(Chalmers et al., 2005),わが国では日本語版のOHAT-Jが開発され,アセスメントの信頼性と妥当性が証明され(松尾・中川,2016),利用されている.OAG(Oral Assessment Guide)は,癌化学療法の口腔内アセスメントツールとして開発され(Eilers et al., 1988),わが国でも利用されている(Haresaku et al., 2018貝川ら,2023).

口腔アセスメントツール利用に関する研究では,OHATやOAGを用いた口腔ケアのプロトコルで,患者の口腔衛生状態の改善が報告されている(荒井ら,2020安里ら,2021稲垣ら,2017).また,口腔内の評価に応じた口腔ケアプロトコルにより,口腔粘膜炎の発症や,疼痛の抑制が示唆されている(Kartin et al., 2014).これらからも,看護師の口腔アセスメントは重要であり,実態や関連要因の調査がなされている.Haresaku et al.(2018)による高齢者施設の看護師を対象にした調査では,口腔アセスメントを実施すべきと認識があり,口腔アセスメントの自信が実施と関連していた.紙谷ら(2020)の複数病棟の看護師を対象とした調査では,病棟による口腔アセスメント実施率の違いや看護師経験,年齢,歯科医・歯科衛生士との連携が,アセスメントの実施と関連がみられた.

従って,小児においても,口腔疾患に加え,誤嚥性肺炎やVAP等の全身疾患の予防,化学療法における健康障害の予防のため口腔ケアが重要であり(伊藤,2017加藤,2018美島,2013Wang et al., 2021),口腔ケアのプロトコルの作成には口腔アセスメントの実施が必要である(Ames et al., 2011).また,口腔アセスメントの実施により,口腔の問題点を把握し,歯科医療従事者との連携のツールともなる(荒井ら,2020).しかしながら,小児を対象とした看護師による口腔ケアの実施と多職種連携に関する報告は少なく(Blevins, 2013渡邊,2021),先行研究を概観した結果,小児を対象とした看護師の口腔アセスメントの実態や口腔アセスメントシートの開発に関する報告はない.

小児の口腔疾患・口腔発達の異常は,摂食・嚥下,栄養摂取,身体活動能力に重大な影響を及ぼすだけではなく,成人期以降の口腔・全身の健康に大きな影響を及ぼす事から(朝田,2021三輪,2011関野,2020田村,2022Yoneyama et al., 2002),生涯にわたる重要な健康問題であると考えられる.従って,小児対象病棟の看護師の口腔アセスメントの問題点を抽出し,その関連要因を明らかにする事ができれば,看護師の小児用口腔アセスメントツールの開発や口腔アセスメント教育の充実化に貢献し,将来的に口腔アセスメント・口腔ケア技術の質向上や多職種連携促進の一助になる可能性がある.加えてそれらの質の向上は,患児の生涯にわたる口腔・全身の健康増進に貢献すると考えられる.

看護師の成人患者への口腔アセスメントの実施は,歯科医療従事者との連携が関連しているとの報告がある(紙谷ら,2020山中ら,2020).また,Kuramoto et al.(2011)の調査結果から,病床数の多さと口腔ケアの関心に相関があると報告されており,わが国の小児対象病棟で,病床数が多く,さらに歯科医療従事者と連携が図れる病院において,看護師の口腔ケアが普及している可能性がある.わが国には小児対象の専門歯科を有する29の歯学部付属大学病院があり,それらの附属病院において,歯学部と小児病棟との医科歯科連携について報告している(小西ら,2015大谷ら,2010).従って,歯科医療従事者との連携や歯学部併設は,小児対象病棟の口腔アセスメント実施の重要な要因の1つになる可能性がある.

本研究では,小児対象病棟に勤務する看護師の勤務する病棟の患児に対する口腔アセスメントの実態とその関連要因を明らかにし,普及を図る上での示唆を得る事を目的とした.

Ⅱ. 方法

1. 研究デザイン

横断的観察研究である.

2. 用語の定義

口腔アセスメントを「口腔の状態・機能について客観的情報と主観的情報を収集し,整理・吟味し,口腔の状態・機能を判断する過程」と定義した.

3. 研究対象者

歯科医療従事者との連携や歯学部併設は,小児対象病棟の口腔アセスメント実施の重要な要因の1つになる可能性があると考え,大学病院診療科における歯科・口腔外科を有する又は,歯学部が併設する大学病院を選択した.また,小児病棟だけではなく,新生児・乳児が対象のNICUやGCUにおいても看護師が乳児期から口腔を適切にアセスメントし,口腔ケアを実施する事は重要であるため,小児病棟,NICU・GCUに勤務する看護師を対象とした.

4. 調査期間

2022年10月~12月であった.

5. 調査方法

対象施設の看護部を通じ,施設ごとの対象人数の確認を行い,無記名自記式質問紙の配布を依頼し,小児病棟,NICU・GCUの看護師に対して調査を行った.質問紙は2週間の留め置き法にて回収を行った.

6. 調査項目

1) 基本属性

性別,年齢,看護師経験年数,小児対象病棟経験年数,勤務病棟について調査した.

2) 口腔アセスメントについての認識

(1) 口腔アセスメントの知識,自信

口腔アセスメントについてどの程度の知識があるか,口腔アセスメントについてどの程度自信があるかをそれぞれ,1(全くない)~10(とてもある)のリッカート尺度(10尺法)で調査し,口腔アセスメントに関する知識レベル(以下,知識レベルとする),口腔アセスメントに関する自信レベル(以下,自信レベル)とそれぞれをスコア化した(1~10点).

(2) 口腔アセスメントの情報の必要性

口腔アセスメントに関する情報の必要性の認識についても同様に,1(全く必要ない)~10(とても必要である)のリッカート尺度(10尺法)で調査し,口腔アセスメントでの情報の必要性認識レベル(以下,認識レベル)をスコア化した(1~10点).

3) 口腔アセスメントの実態

(1) 口腔のアセスメントの各項目の実施状況

小児用の口腔アセスメントの評価ツールは存在しないため,Chalmerset al.(2005)のOHATを参考にした.OHATは,要介護高齢者の口腔問題をスクリーニングするために,開発されたアセスメントシートである.評価項目は,口唇,舌,歯肉・粘膜,唾液,残存歯,義歯,口腔清掃,歯痛の8項目であり,それらの項目が健全から病的の3段階に分けられている.信頼性と妥当性が示され,日本語版OHATの信頼性と妥当性も報告されている(松尾・中川,2016).本調査では,OHATの項目を小児に該当するように変更し使用した.調査項目は,「口唇の状態」,「舌・舌苔」,「歯肉・口腔粘膜」,「唾液の質・量」,「歯の状況」,「口腔内の清掃状態」,「歯の痛み」,「口腔機能」の8項目とした.観察の実施状況は,「ほとんど観察しない(10%未満)」,「あまり観察しない(10%~50%未満)」,「まあまあ観察する(50%~90%)」,「ほとんどで観察する(90%~100%)」の4件法で調査した.乳歯は生後6~8か月頃から生え始めるため,小児対象病棟に入院している中で,6か月未満の子どもが入院しているため,「歯の状況」,「歯の痛み」の項目は,4件法に「歯がない」を追加し,5件法で調査した.これらの観察の実施状況は「歯がない」,「10%未満」,「10%~50%未満」を「50%未満実施群」とし,山中ら(2020)の先行研究より,口腔アセスメントの実施状況の「まあまあ観察する(50%~90%)」,「ほとんどで観察する(90%~100%)」の合計を「50%以上実施群」とした.また,「歯がない」と「10%未満」を0点,「10%~50%未満」1点,「50%~90%未満」2点,「90%~100%」3点とスコア化を行い,口腔アセスメント実施レベルとした(0~24点).

(2) 口腔アセスメントでの困り事

口腔アセスメントでの困り事は,山中ら(2020)の先行研究を参考に,「口腔アセスメントを拒否される」,「家族の協力を得られない」,「口腔アセスメントツールがない」,「口腔アセスメントの知識がない」,「口腔アセスメントをする時間がない」,「特に困っている事はない」の選択肢から調査した.

(3) 口腔ケアにおける歯科医療従事者との連携

歯科医師,歯科衛生士との口腔ケアでの連携をそれぞれ「ない(10%未満)」,「あまりない(10%~50%未満)」,「まあまあある(50%~90%未満)」,「かなりある(90%~100%)」の4件法で調査した.それらの選択肢を同様に0~3点のスコア化を行い,歯科医師,歯科衛生士のスコアを合計し,歯科医療従事者連携レベル(以下,連携レベル)とした(0~6点).

7. 分析方法

小児対象病棟勤務の看護師の口腔アセスメントにおける各項目の記述統計を行い,全体の把握を行った.歯学部併設の有無の影響を調べるために,調査対象施設を併設有り(2病院)と併設無し(4病院)に分類し,口腔アセスメントの実施状況,口腔アセスメントの困っている内容の割合をχ2検定またはFisherの正確確率検定を用いて比較した.口腔アセスメントの実施状況との関連要因を探るために,口腔アセスメントの実施レベルと年齢,看護師勤務年数,小児対象病棟経験年数,知識レベル,自信レベル,認識レベル,及び連携レベルとの相関関係を分析した.相関関係の分析には,Spearmanの順位相関係数を用いた.口腔アセスメントの各項目の実施状況を「あまり観察しない(50%未満)」と「観察する(50%以上)」の2群を目的変数とし,歯学部の有無,性別,年齢,知識レベル,自信レベル,認識レベル,及び連携レベルを説明変数とし,病棟別に二項ロジスティック回帰分析を行った.モデルχ2検定及びHosmer-Lemeshow検定で適合度を判断した.有意水準は5%とし,分析には SPSS Statistics Ver.28 for Windows(IBM)を使用した.

Ⅲ. 倫理的配慮

対象施設の看護部長へ,研究目的と調査方法,倫理的配慮について文書で同意を得た後,対象者に研究の概要,研究協力の同意と同意の撤回の自由,個人情報保護,研究協力に伴う利益・不利益,研究成果の公表について文章にて説明した.調査用紙は無記名とし,調査用紙に研究参加への同意チェック欄を設け,研究協力者の同意を確認した.本研究は福岡学園倫理委員会の承認を得て実施した(承認番号604).本研究における開示すべき利益相反はない.

Ⅳ. 結果

1. 自記式質問用紙回収状況

6つの施設の小児対象病棟に勤務する看護師計380名に質問紙を配布し311名(回収率:81.8%)から回答を得た.研究参加について「同意する」を選択していない回答,ほとんどの質問に無回答,回答不備のものを除外して,280部(有効回答率 73.6%)のデータを分析対象とした.

2. 基本属性

対象の性別は男性16名(5.7%),女性264名(94.3%)であった.年齢(平均値±SD)は31.0 ± 8.05歳,看護師勤務年数は8.57 ± 7.67歳,小児対象病棟経験年数は5.14 ± 4.58歳であった.勤務病棟は小児病棟勤務看護師が141名(50.4%),NICU・GCU勤務看護師は139名(49.6%)であった.

口腔アセスメントの知識レベル(平均値±SD)は5.16 ± 1.53点,口腔アセスメントの自信レベルは4.92 ± 1.63点,口腔アセスメントの情報の必要性認識レベルは7.98 ± 1.55点であった.口腔アセスメント実施レベルは13.48 ± 4.85点,歯科医療従事者連携レベルは1.41 ± 1.64点であった.各レベルの値は小児病棟の方がNICU・GCUよりも高い傾向にあった.

3. 患児への口腔アセスメントの実施状況(表1

病棟・歯学部併設有無別の口腔アセスメントの実施状況を表1に示す.小児病棟では,50%以上(まあまあ観察/ほとんどで観察)実施割合は観察部位別で39.3%~97.9%の範囲にあった.実施割合が最も低いのは,歯の状況(39.3%),歯の痛み(49.7%)の順であり,50%未満であった.NICU・GCUでは,50%以上実施の割合は5.8%~94.2%の範囲にあり,実施割合が最も低いのは歯の痛み(5.8%),歯の状況(19.5%),口腔内の清掃状態(48.1%)の順であり,50%未満であった.歯学部併設の有無別で,50%以上実施割合に有意な差が認められた部位は,小児病棟では,唾液の質・量で,併設無の割合が有意に高かった(p = .030).NICU・GCUでは,歯の状況で,併設有の割合が有意に高かった(p = .001).

表1 病棟・歯学部併設有無別の患児への口腔アセスメントの実施状況

観察部位 小児病棟 NICU・GCU
全体
N = 141
歯学部 p値* 全体
N = 139
歯学部 p値*
併設有
n = 69
併設無
n = 72
併設有
n = 50
併設無
n = 89
n % n % n % n % n % n %
口唇の状態(腫れ,出血,潰瘍等)
看護師50%未満実施 3 2.1 2 2.9 1 1.4 0.614 8 5.8 3 6.0 5 5.6 1.000
看護師50%以上実施 138 97.9 67 97.1 71 98.6 131 94.2 47 94.0 84 94.4
舌・舌苔
看護師50%未満実施 33 23.4 21 30.4 12 16.7 0.054 38 27.4 16 32.0 22 24.7 0.355
看護師50%以上実施 108 76.6 48 69.5 60 83.4 101 72.7 34 68.0 67 75.3
歯肉・口腔粘膜(腫れ,出血,潰瘍等)
看護師50%未満実施 28 19.8 15 21.7 13 18.1 0.584 48 34.5 22 44.0 26 29.2 0.078
看護師50%以上実施 113 80.1 54 78.3 59 81.9 91 65.5 28 56.0 63 70.8
唾液の質・量
看護師50%未満実施 61 43.6 36 52.9 25 34.7 0.03 47 33.8 18 36.0 29 32.5 0.683
看護師50%以上実施 79 56.4 32 47.1 47 65.2 92 66.2 32 64.0 60 67.4
歯の状況(むし歯,欠損,ぐらつき等)
看護師50%未満実施 73 52.1 35 51.5 38 52.7 0.347 13 9.4 9 18.0 4 4.4 0.001
看護師50%以上実施 55 39.3 24 35.3 31 43.0 27 19.5 18 36.0 9 10.1
口腔内の清掃状態(歯垢,歯石等)
看護師50%未満実施 50 36.8 28 43.1 22 30.9 0.144 70 51.8 28 59.6 42 47.8 0.189
看護師50%以上実施 86 63.3 37 57.0 49 69.0 65 48.1 19 40.4 46 52.2
歯の痛み
看護師50%未満実施 59 41.8 25 36.2 34 47.2 0.053 4 2.9 2 4.0 2 2.2 0.136
看護師50%以上実施 70 49.7 40 57.9 30 41.7 8 5.8 5 10.0 3 3.3
口腔機能(嚥下・咀嚼)
看護師50%未満実施 43 30.7 21 30.4 22 31.0 0.944 33 23.7 13 26.0 20 22.5 0.639
看護師50%以上実施 97 69.3 48 69.5 49 69.0 106 76.3 37 74.4 69 77.5

*:χ2検定またはFisherの正確確率検定

各項目の回答数は欠損値があるため同一ではない

4. 口腔アセスメントでの困り事(表2

小児病棟で,困っている内容で最も高い理由は,口腔アセスメントを拒否される(68.8%),口腔アセスメントの知識がない(46.1%)の順であった.NICU・GCUでは,口腔アセスメントの知識がない(51.1%),口腔アセスメントツールがない(36.0%)の順であった.歯学部併設の有無別では,小児病棟では有意な差はなかった.NICU・GCUでは,併設有の病院で「口腔アセスメントの知識がない」の割合が有意に高く(p = .022),歯学部併設の無しの病院では,「特に困っている事はない」の割合が有意に高かった(p = .006).

表2 病棟・歯学部併設有無別の口腔アセスメントでの困り事

小児病棟 NICU・GCU
全体
N = 141
歯学部 p値* 全体
N = 139
歯学部 p値*
併設有
n = 69
併設無
n = 72
併設有
n = 50
併設無
n = 89
n % n % n % n % n % n %
口腔アセスメントでの困り事
口腔アセスメントを拒否される 97 68.8 48 69.6 49 68.1 0.847 23 16.5 11 22.0 12 13.5 0.195
家族の協力を得られない 10 7.1 6 8.7 4 5.6 0.527 1 0.7 1 2.0 0 0.0 0.360
口腔アセスメントツールがない 43 30.5 20 29.0 23 31.9 0.703 50 36.0 20 40.0 30 33.7 0.458
口腔アセスメントの知識がない 65 46.1 33 47.8 32 44.4 0.687 71 51.1 32 64.0 39 43.8 0.022
口腔アセスメントをする時間がない 39 27.7 17 24.6 22 30.6 0.432 13 9.4 7 14.0 6 6.7 0.224
特に困っている事はない 12 8.5 7 10.1 5 6.9 0.496 32 23 5 10.0 27 30.3 0.006

*:χ2検定またはFisherの正確確率検定

5. 口腔アセスメント実施レベルと看護師の属性及び口腔アセスメントに関する認識との相関(表3

病棟別の口腔アセスメント実施レベルと,看護師の属性及び口腔アセスメントに関する認識との相関を表3に示す.口腔アセスメント実施レベルと有意に相関が認められたものは,小児病棟では,口腔アセスメントの知識レベル(ρ = .334),口腔アセスメントの自信レベル(ρ = .269),NICU・GCUでは,口腔アセスメントでの情報の必要性認識レベル(ρ = .372),口腔アセスメントの自信レベル(ρ = .301),口腔アセスメントの知識レベル(ρ = .275)であった.

表3 口腔アセスメント実施レベルと看護師の属性および口腔アセスメントに関する認識との相関

要因 小児病棟 NICU・GCU
平均 SD 相関係数* p 平均 SD 相関係数* p
年齢 31.14 8.29 0.057 0.511 30.98 7.84 –0.019 0.827
看護師勤務年数 8.62 7.57 0.077 0.376 8.53 7.80 –0.021 0.810
小児対象病棟経験年数 5.11 4.91 –0.033 0.704 5.17 4.25 0.032 0.714
口腔アセスメントに関する知識レベル 5.62 1.39 0.334 0.000 4.71 1.54 0.275 0.001
口腔アセスメントに関する自信レベル 5.28 1.48 0.269 0.002 4.55 1.69 0.301 0.000
口腔アセスメントでの情報の必要性認識レベル 8.08 1.48 0.080 0.358 7.88 1.64 0.372 0.000
歯科医療従事者連携レベル 2.07 1.78 0.087 0.317 0.74 1.18 0.188 0.031

*:Spearman順位相関係数

6. 多変量解析による口腔アセスメントの実施に影響する要因(表45

モデルχ2検定は,小児病棟では,「口唇の状態」,「口腔内の清掃状態」,「口腔機能」,NICU・GCUでは,「歯肉・口腔粘膜」,「唾液の質・量」が0.05以上であり,モデルの適合性が不良であったが,それ以外の項目では0.05未満であった.Hosmer-Lemeshow検定では,p = 0.173~0.941であった.ロジスティック回帰分析による小児病棟での口腔アセスメント実施に関連する要因を検討した結果を表4に示す.口腔アセスメント部位の「舌・舌苔」は,歯学部と自信レベルと有意な関連が認められ,オッズ比[95%信頼区間(95%CI)]はそれぞれ,0.35(0.14~0.86),5.52(1.33~22.88)であった.「歯肉・口腔粘膜」は,自信レベルと有意な関連が認められ,オッズ比は4.54(1.12~18.42)であった.「唾液の質・量」は,歯学部,年齢,知識レベルと関連がみられ,オッズ比はそれぞれ,0.44(0.21~0.93),0.95(0.9~1),3.25(1.09~9.69)であった.「歯の状況」は,知識レベルと関連がみられ,オッズ比は,4.96(1.69~14.59)であった.「口唇の状態」,「口腔内の清掃状態」,「歯の痛み」,「口腔機能」と有意に関連するものは見られなかった.

表4 多変量解析による,小児病棟の口腔アセスメント実施aと要因との関連性

口唇の状態 舌・舌苔 歯肉・口腔粘膜 唾液の質・量
変量 オッズ比 95%CIa p値* オッズ比 95%CIa p値* オッズ比 95%CIa p値* オッズ比 95%CIa p値*
歯学部 有り=1 0.32 (0.02~4.47) 0.398 0.35 (0.14~0.86) 0.022 0.62 (0.25~1.55) 0.309 0.44 (0.21~0.93) 0.032
無し=0 1c 1c 1c 1c
性別 男性=1 3.0 × 107 0.999 0.80 (0.18~3.59) 0.771 3.12 (0.37~26.47) 0.297 0.28 (0.08~1.01) 0.051
女性=0 1c 1c 1c 1c
年齢 0.98 (0.86~1.12) 0.808 1.03 (0.97~1.09) 0.347 0.99 (0.94~1.05) 0.858 0.95 (0.9~1) 0.043
口腔アセスメントに関する知識レベル L6-10 = 1 0.54 (0.04~7.43) 0.642 1.42 (0.43~4.68) 0.562 1.24 (0.38~4.08) 0.718 3.25 (1.09~9.69) 0.035
L1-5 = 0 1c 1c 1c 1c
口腔アセスメントに関する自信レベル L6-10 = 1 9.2 × 107 0.997 5.52 (1.33~22.88) 0.018 4.54 (1.12~18.42) 0.034 1.27 (0.41~3.97) 0.682
L1-5 = 0 1c 1c 1c 1c
口腔アセスメントでの情報の必要性認識レベル L8-10 = 1 1.70 (0.11~25.28) 0.699 1.28 (0.47~3.44) 0.631 1.73 (0.65~4.58) 0.271 0.99 (0.44~2.25) 0.989
L1-7 = 0 1c 1c 1c 1c
歯科医療従事者連携レベル L4-8 = 1 1.98 (0.15~26.01) 0.603 0.95 (0.38~2.37) 0.910 1.10 (0.44~2.74) 0.843 1.20 (0.54~2.67) 0.646
L2-3 = 0 1c 1c 1c 1c
歯の状況 口腔内の清掃状態 歯の痛み 口腔機能
変量 オッズ比 95%CIa p値* オッズ比 95%CIa p値* オッズ比 95%CIa p値* オッズ比 95%CIa p値*
歯学部 有り=1 0.64 (0.3~1.36) 0.249 0.47 (0.22~1.01) 0.054 1.87 (0.91~3.83) 0.089 0.94 (0.44~2.05) 0.885
無し=0 1c 1c 1c 1c
性別 男性=1 0.77 (0.22~2.65) 0.676 1.21 (0.33~4.46) 0.777 1.75 (0.51~6.06) 0.375 0.32 (0.1~1.07) 0.064
女性=0 1c 1c 1c 1c
年齢 0.98 (0.94~1.03) 0.476 1.02 (0.97~1.07) 0.536 0.99 (0.95~1.04) 0.821 1.01 (0.96~1.06) 0.761
口腔アセスメントに関する知識レベル L6-10 = 1 4.96 (1.69~14.59) 0.004 1.94 (0.69~5.48) 0.211 1.30 (0.47~3.61) 0.609 0.64 (0.22~1.87) 0.415
L1-5 = 0 1c 1c 1c 1c
口腔アセスメントに関する自信レベル L6-10 = 1 1.00 (0.34~2.93) 0.995 1.75 (0.58~5.25) 0.316 2.30 (0.81~6.55) 0.119 3.08 (0.97~9.77) 0.055
L1-5 = 0 1c 1c 1c 1c
口腔アセスメントでの情報の必要性認識レベル L8-10 = 1 1.26 (0.56~2.82) 0.569 1.63 (0.72~3.72) 0.244 0.87 (0.4~1.91) 0.734 0.93 (0.4~2.16) 0.861
L1-7 = 0 1c 1c 1c 1c
歯科医療従事者連携レベル L4-8 = 1 1.27 (0.57~2.85) 0.561 1.13 (0.51~2.52) 0.756 1.52 (0.71~3.24) 0.284 1.56 (0.7~3.47) 0.276
L2-3 = 0 1c 1c 1c 1c

a:50%以上実施=1,50%未満実施=0,b:95%信頼区間,c:Reference

*:ロジスティック回帰分析(強制投入法)

表5 多変量解析による,NICU・GCUの口腔アセスメント実施aと要因との関連性

口唇の状態 舌・舌苔 歯肉・口腔粘膜 唾液の質・量
変量 オッズ比 95%CIa p値* オッズ比 95%CIa p値* オッズ比 95%CIa p値* オッズ比 95%CIa p値*
歯学部 有り=1 1.43 (0.24~8.72) 0.696 0.95 (0.40~2.26) 0.903 0.49 (0.22~1.09) 0.081 1.29 (0.57~2.9) 0.543
無し=0 1c 1c 1c 1c
性別 男性=1 0.03 (0.00~1.24) 0.065 0.65 (0.04~11.52) 0.770 0.76 (0.04~13.27) 0.852 0.61 (0.03~11.07) 0.739
女性=0 1c 1c 1c 1c
年齢 1.03 (0.92~1.15) 0.587 1.07 (1.00~1.14) 0.048 1.01 (0.96~1.06) 0.687 0.99 (0.95~1.04) 0.775
口腔アセスメントに関する知識レベル L6-10 = 1 1.8 × 107 0.999 0.75 (0.06~9.22) 0.822 0.60 (0.05~7.52) 0.692 1.0 × 109 0.999
L1-5 = 0 1c 1c 1c 1c
口腔アセスメントに関する自信レベル L6-10 = 1 0.00 0.999 6.95 (0.45~107.81) 0.166 1.85 (0.14~24.76) 0.642 0.00 0.999
L1-5 = 0 1c 1c 1c 1c
口腔アセスメントでの情報の必要性認識レベル L8-10 = 1 21.12 (2.01~222.21) 0.011 2.64 (1.12~6.23) 0.027 2.15 (0.98~4.7) 0.056 1.49 (0.68~3.27) 0.324
L1-7 = 0 1c 1c 1c 1c
歯科医療従事者連携レベル L4-8 = 1 1.87 (0.25~13.83) 0.541 0.94 (0.35~2.54) 0.908 2.33 (0.91~5.94) 0.078 0.80 (0.32~1.98) 0.628
L2-3 = 0 1c 1c 1c 1c
歯の状況 口腔内の清掃状態 歯の痛み 口腔機能
変量 オッズ比 95%CIa p値* オッズ比 95%CIa p値* オッズ比 95%CIa p値* オッズ比 95%CIa p値*
歯学部 有り=1 5.69 (1.91~16.95) 0.002 0.54 (0.23~1.25) 0.148 3.39 (0.58~19.71) 0.174 0.58 (0.23~1.48) 0.254
無し=0 1c 1c 1c 1c
性別 男性=1 2.33 (0.13~42.44) 0.567 1.60 (0.09~29.1) 0.752 1.8 × 108 0.997 0.41 (0.02~8.99) 0.572
女性=0 1c 1c 1c 1c
年齢 0.99 (0.92~1.06) 0.713 1.03 (0.98~1.08) 0.316 1.03 (0.93~1.14) 0.539 0.99 (0.94~1.04) 0.602
口腔アセスメントに関する知識レベル L6-10 = 1 4.07 (0.29~57.83) 0.299 9.2 × 108 0.999 0.00 0.999 0.06 (0.00~0.73) 0.028
L1-5 = 0 1c 1c 1c 1c
口腔アセスメントに関する自信レベル L6-10 = 1 0.50 (0.04~7.17) 0.611 0.00 0.999 1.1 × 108 0.999 14.20 (1.05~191.62) 0.046
L1-5 = 0 1c 1c 1c 1c
口腔アセスメントでの情報の必要性認識レベル L8-10 = 1 3.43 (1.01~11.63) 0.048 2.55 (1.12~5.77) 0.025 2.6 × 1012 0.996 4.59 (1.92~10.97) 0.001
L1-7 = 0 1c 1c 1c 1c
歯科医療従事者連携レベル L4-8 = 1 2.51 (0.89~7.05) 0.082 3.73 (1.48~9.38) 0.005 0.34 (0.03~3.59) 0.371 1.11 (0.42~2.94) 0.837
L2-3 = 0 1c 1c 1c 1c

a:50%以上実施=1,50%未満実施=0,b:95%信頼区間,c:Reference

*:ロジスティック回帰分析(強制投入法)

NICU・GCUでの口腔アセスメント実施に関連する要因を検討した結果を表5に示す.

口腔アセスメント部位では,「口唇の状態」は認識レベルと有意な関連が認められ,オッズ比[95%信頼区間(95%CI)]は21.12(2.01~222.21)であった.「舌・舌苔」は,年齢,認識レベルと関連がみられ,オッズ比は1.07(1.00~1.14),2.64(1.12~6.23)であった.

「歯の状況」は,歯学部,認識レベルと相関があり,オッズ比は5.69(1.91~16.95),3.43(1.01~11.63)であった.「口腔内の清掃状態」は認識レベル,歯科医療従事者との連携レベルと相関があり,2.55(1.12~5.77),3.73(1.48~9.38)であった.「口腔機能」は知識レベル,自信レベル,認識レベルと相関がみられ,0.06(0.00~0.73),14.20(1.05~191.62),4.59(1.92~10.97)であった.「歯肉・口腔粘膜」,「唾液の質・量」,「歯の痛み」と有意に関連するものは見られなかった.

Ⅴ. 考察

1. 患児への口腔アセスメントの実態

本研究は複数施設での小児病棟,NICU・GCUの看護師を対象として病棟の患児に対する口腔アセスメントの実施状況を調査し,それらの実施状況に関連する要因を相関分析及び多変量解析で検討した初めての報告である.本研究では,小児病棟に勤務する看護師の口腔アセスメント実施割合は,口唇の状態,舌・舌苔,歯肉・口腔粘膜は高かった.これらは,小児病棟に勤務する看護師の口腔アセスメントが口唇,舌,歯肉粘膜,口腔粘膜といった口腔内の外観を中心に行っていることを示している.しかし,歯の状況,及び歯の痛みのアセスメントの実施割合は50%未満であり,他の部位と比較して低かった.また,小児病棟に勤務する看護師の口腔アセスメント実施割合は,成人,高齢者を担当する看護師よりも低かった(Haresaku et al., 2018山中ら,2020).う蝕は,小児で主に発生し,疼痛を引き起こし,QOLを低下させる(安藤ら,2003).特に健康障害をもつ患児は,健康な小児と比較し,う蝕罹患率が高い(曽田ら,2003).その理由として,患児は,疾患により無気力や倦怠感があり,口腔ケアは病状や安静の必要性から優先順位が低下し,口腔衛生が疎かになる(Blevins, 2011).従って,小児対象病棟に勤務する看護師においても,う蝕の進行やう蝕によるQOLの低下を防ぐために,患児のこれらの部位をアセスメントし,問題があれば歯科に紹介することが期待される.

口腔アセスメントは,口腔ケアの標準化,プロトコルの作成に用いられ,口腔ケアに包括されている(Kudoh & Shibayama, 2022).患児に対する口腔ケアの実施率は,成人・高齢者よりも低い(伊多波ら,2006渡邊,2021).従って,小児に対する口腔ケアの実施率の低さが,口腔アセスメントの実施率の低さに影響している可能性がある.また,成人患者では,口腔アセスメントツールとして,OHATやOAGが開発されており,それらのツールには,歯に関するアセスメント項目が含まれている.しかしながら,小児用の口腔アセスメントツールの開発・利用に関する報告はなく,臨床では普及していないと考えられる.このことが,歯の状況に関するアセスメントの実施率の低さに影響している可能性がある.そのため,発達段階に応じた歯のアセスメント項目を含んだ,小児用の口腔アセスメントツールの開発が実施率向上に寄与する可能性がある.

小児病棟に勤務する看護師は,歯のアセスメントの実施率の低さに加え,口腔内の清掃状態のアセスメントの実施率も63.3%と十分ではなかった.口腔細菌は,歯科疾患に加え,肺炎のリスク因子である.また,化学療法を受ける患者への口腔ケアは,口内炎を抑制するとの報告がある(小林,2017Kubota et al., 2017).看護師は,口腔内の清掃状態をアセスメントし,適切な口腔ケアを実施することが期待される.

NICU・GCUでは,口腔機能のアセスメント実施率が76.3%と高かった.新生児,乳児において,母乳育児は世界的に重要視されており,生後6か月間の完全母乳育児を推奨している(World Health Organization, 2003).しかし,NICU・GCUの患児では,早産児の場合は未熟性や,治療に伴い直ぐには直接授乳ができない場合が多い(山口,2015).自律した経口哺乳の習得は,早産児の退院の主要な基準(American Academy of Pediatrics, 2008)となっており,NICU・GCUの患児において哺乳機能の獲得が重要であり(向井,2012),哺乳訓練前のアセスメントとして実施していると考えられる.

2. 口腔アセスメント実施に関する困り事

小児病棟での困り事において,「子どもから口腔アセスメントを拒否される」が68.8%,「口腔アセスメントの知識がない」が46.1%と約半数であった.このことは,健康障害をもつ小児に対しての口腔アセスメントが浸透していない事が示唆された.口腔アセメントの拒否は,山中ら(2020)による訪問看護師を対象にした調査と同様の結果であった.さらに,口腔ケアでの困り事に関する調査においても,対象者の拒否が最も割合が高かった(原ら,2019).これらの拒否行動を緩和する方法として,脱感作法があり(田中ら,2007),これらの技法に関する情報を提供し,看護師が習得することにより,患児の拒否・抵抗が緩和され,口腔アセスメントの実施向上が期待される.

3. 口腔アセスメント実施に関連する要因の検討

小児対象の専門歯科を有する歯学部の有無が独立した関連因子であった.小児病棟では,歯学部併設が無い病院に勤務している看護師の方が舌・舌苔,唾液の質・量のアセスメントを実施していた.歯学部併設有りの小児病棟では医科・歯科の連携の報告がある(小西ら,2015大谷ら,2010).従って,歯科医療従事者が患児に口腔診査を含めた口腔ケア・治療に従事している可能性があり,歯学部の併設が無い病院よりも歯科医療従事者への依存度が高いために,看護師による口腔アセスメントの実施率が低い可能性がある.

一方,NICU・GCUでは,併設有の方が歯の状況のアセスメントの実施率が高かった.新生児には,先天性歯による舌下部に潰瘍を形成するRiga-Fede病のリスクがある患児が存在する(新谷,2011).また,歯学部併設病院では,口唇・口蓋裂の専門的に扱う小児・矯正歯科,あるいはセンターを有しており,NICUと連携して,患児の治療を行っているため(祐田ら,2016),医科・歯科の連携が充実していると考えられる.その中で,看護師による歯のアセスメント及び医師を通しての歯科紹介という,看護師,医師,及び歯科医療従事者との連携が進んでいる可能性がある.

相関分析により,小児病棟,NICU・GCUにおいて,口腔アセスメントの実施と口腔アセスメントの知識レベルとの間に正の相関が認められた.成人や高齢者を対象とした複数の病院の看護師を対象とした調査においても,OHATやOAGの知識を持つ看護師が多いほど口腔アセスメントの実施率が高い事が示されており(Haresaku et al., 2020),看護師が口腔アセスメントやそのツールの知識を持つ事が実施促進に重要であると考えられる.小児病棟,NICU・GCUの看護師の約半数は,口腔アセスメントの困りごとの中で,「口腔アセスメントの知識がない」と回答している.看護系大学を対象に行われた調査によれば,約71%の大学で口腔アセスメントの教育時間は2時間未満であり,口腔アセスメントツールの利用方法についての教育は24.5%に過ぎない(Haresaku et al., 2022).従って,小児対象病棟の看護師を対象とした,口腔アセスメントの知識の向上を目指した卒後教育のプログラムが必要である.

また,ロジスティック回帰分析により,口腔アセスメントに関する知識の有無はアセスメント実施の独立した関連因子であった.小児病棟では,口腔アセスメントに関する知識が高い方が,唾液の量・質,歯の状況のアセスメントの実施率は高かった.従って,継続教育により,口腔アセスメントの知識が向上すれば,唾液や,歯のアセスメント実施率が向上する可能性がある.一方,NICU・GCUでは,アセスメントの知識は,口腔機能のアセスメント実施の負の独立した関連因子であった.NICU・GCUの口腔機能のアセスメントは,哺乳機能や嚥下機能のアセスメントであり(川村ら,2022宮崎・熊倉,2013),それらの機能は複雑で,他の部位よりもアセスメントを実施するには多くの知識が必要であると考えられる.それらの事は,実際にアセスメントを実施する事で認識され,自分には知識がないと感じている可能性がある.

相関分析により,小児病棟,NICU・GCUにおいて,口腔アセスメントの実施と口腔アセスメントの自信レベルとの間に正の相関が認められた.また,口腔アセスメントに対する自信は,小児病棟では,舌・舌苔,歯肉・口腔粘膜において独立した関連因子であり,NICU・GCUでは,口腔機能のアセスメント実施の独立した関連因子であった.

高齢者を対象とした看護師の口腔アセスメントの実態調査においても,同様の関連が報告されており(Haresaku et al., 2018),口腔アセスメントを実施する事により,自信が向上し,あるいは,その自信が実施を促進させる可能性がある.

NICU・GCUでは,口腔アセスメントの実施と情報の必要性の認識レベルとで正の相関が認められた.また,多くのアセスメント実施の独立した因子であった.これらは,NICUでは口腔アセスメント実施者は必要な情報をより必要としている事を示している.先行研究では,口腔ケアを実施している看護師はさらに,口腔ケアに対する新たな情報を欲していた(中島ら,2020).従って,口腔アセスメントを実施し,情報の必要性を認識している看護師に対し,口腔アセスメントに関する情報を積極的に提供する事により,歯科疾患や口腔内の清掃状態のアセスメントの質が向上し,口腔ケア技術の向上や歯科紹介のさらなる推進にも寄与する可能性がある.

NICU・GCUでは,口腔アセスメント実施レベルと歯科医療従事者との連携レベルに正の相関が認められた.過去の報告では,歯科医療従事者の連携と口腔アセスメント実施で正の相関が示されており(山中ら,2020),NICU・GCUにおいても同様の結果が得られた.また,その連携は,清掃状況のアセスメント実施の独立した関連因子であった.NICU・GCUでは乳幼児の誤嚥や人工呼吸器による肺炎予防のために,連携して清掃状況のアセスメント,口腔ケアを実施している可能性がある.

一方,小児病棟では,歯科医療従事者と連携に関連性が認められなかった.さらに,連携と関連するアセスメント部位もなかった.この事から,大学病院の小児病棟では,歯科医療従事者の連携と口腔アセスメントの実施は関連しないと考えられる.理由として,前述のように歯学部の併設有と口腔アセスメント実施は負の関係がある事から,連携による歯科医療従事者への依存が影響している可能性がある.これらの関連性やその要因については,他の大学病院や大学病院でない小児病棟でさらなる調査と検証が必要である.

小児病棟では,「口唇の状態」,「口腔内の清掃状態」,「口腔機能」,NICU・GCUでは,「歯肉・口腔粘膜」,「唾液の質・量」がモデルχ2検定で0.05以上であり,モデルの適合性が不良であった.これらの項目においては,本研究で調査項目以外の患児の対象疾患等の要因による影響が大きいと考えられた.

研究の限界と今後の課題

本研究は,調査対象施設,対象者数が限定された一時点の調査であり,一般化には限界がある.さらに,対象とする患児の疾患,発達段階の違いについて調査をしていない.本研究では,小児病棟では,「口唇の状態」,「口腔内の清掃状態」,「口腔機能」,NICU・GCUでは,「歯肉・口腔粘膜」,「唾液の質・量」のモデルの適合性が良くない事から,患児の疾患,発達段階の違いが口腔アセスメントの実施率に影響を及ぼす因子の可能性がある.本研究で調査した口腔アセスメントの認識は単一の質問項目での調査であり,回答者によっては解釈の飛躍が生じる可能性がある.今後は,調査の対象施設と対象者数を増やし,対象疾患,発達段階別で分類して調査を実施する必要がある.また,口腔アセスメントの観察項目は信頼性・妥当性のある日本語版OHATを参考にしたものであり,小児用の口腔アセスメントツールを開発し,信頼性・妥当性について今後さらなる研究が必要である.

Ⅵ. 結論

1.大学病院の小児病棟,NICU・GCUに勤務する看護師の口腔アセスメント実施率は,小児病棟,NICU・GCU共に,歯の状況,歯の痛みの実施率が低かった.

2.小児対象病棟の看護師の口腔アセスメントの実施に関連する要因として,口腔アセスメントの知識,口腔アセスメントの自信,口腔アセスメントの情報の必要性の認識,歯科医療従者との連携,環境因子として歯学部の併設の有無が認められた.

3.小児対象病棟の看護師に対し,小児病棟では,口腔アセスメントの知識,自信を高める教育を図り,NICU・GCUでは口腔アセスメントの情報を提供する事が実施率改善に寄与する可能性が示唆された.

付記:本研究は,福岡看護大学大学院看護学研究科に提出した修士論文に加筆・修正を加えたものである.

謝辞:本研究にご協力頂きました病院関係者の皆様に,深く感謝いたします.本研究は2022年度~2026年度科学研究費助成事業基盤C(22K10304)の助成を受けて行いました.

利益相反:本研究における利益相反は存在しない.

著者資格:KKは研究の着想及びデザイン,データ収集,統計解析,原稿草案の作成を行った.SHは,統計解析,原稿の作成への示唆,研究プロセス全体への助言を行った.HI,FN,HA,FUは原稿への示唆および研究プロセス全体への助言に貢献した.すべての著者は最終原稿を読み,承認した.

文献
 
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