日本看護科学会誌
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総説
日本における看護師の死への態度に関するスコーピングレビュー
平野 裕子遠藤 英子
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2025 年 45 巻 p. 1019-1032

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Abstract

目的:死に逝く患者を看取る上で求められる看護師の死への態度を系統的に明らかにする.

方法:PRISMA-ScRのガイドラインに従いスコーピングレビューを用い,包含基準は看護師,看取り,死への態度とし,類似性・相違性から帰納的に整理した.

結果:54文献を採用,看護師の死への態度は【看取るために必要となる基本姿勢】【患者に行うケア行動】【家族に行うケア行動】【患者や家族に共通して行うケア行動】など9つ,影響要因は【死別や看取りにかかわった経験】【死に関する意図的な学習や教育機会】など3つが抽出された.

結論:看護師の死への態度にはよりよいケアにするための多職種,看護師間連携,患者や家族のニーズを満たすケア行動,看取るために必要な基本姿勢,看取ることで生じる看護師個人の死やケアすることへの思いがあり,看取り経験,学習機会,ケアへの前向きさが影響していた.

Translated Abstract

Objective: To systematically clarify attitudes of nurses, who are required to provide mitori care to dying patients, toward death.

Methods: Following the PRISMA-ScR checklist, the inclusion criteria comprised nurses, mitori care, and attitudes toward death; an inductive approach in organization was implemented from the perspective of similarities and differences.

Results: Through the use of 54 articles, nine categories pertaining to nurses’ attitudes toward death were extracted, including “a basic stance required to provide mitori care”, “care-related actions toward patients”, “care-related actions toward families” and “care-related actions toward patients and families”. Three categories pertaining to influencing factors were extracted, including “experiences related to bereavement or mitori care” and “opportunities to learning and gain education about death”.

Conclusion: Nurses’ attitudes toward death included their personal sentiments toward death and care provision by adopting an attitude required to provide mitori care, providing mitori care, implementing care-related actions to fulfil the needs of patients and family members, and collaborating between nurses and multidisciplinary collaboration to provide higher quality care.

Ⅰ. 研究背景

少子高齢多死社会の影響により看取り人口が継続的に増加している(厚生労働省,2024).年間の死亡者数はこの40年間で約2倍となり,2040年には過去最高の167万人となるといわれ,看取り需要が高まっている(厚生労働省,2025).なかでも,病院は日本人の死亡場所の約65%を担っており,病院に勤務する看護師が患者の死を回避することは難しい(総務省,2024).

病院において看護師はさまざまな健康レベルにある患者へのケアを提供している.終末期にある患者にかかわる看護師は,苦痛緩和や療養場所の選択などの援助を通して最期までその人らしく過ごせるよう,人格を尊重した援助を通して職業的アイデンティティの育成や自己の死生観を深化させている.しかし,急性期病院において看護師は現行の医療体制における入院期間の短縮化や治療の高度化,効率化により煩雑化する業務に追われ,看護師自身が望む看護から逸脱することもあり,理想と現実にストレスやジレンマ,不全感を抱き,患者を看取ることを忌避する者もいる(石井ら,2015名越,2005逆井・松田,2009横浜・森,2013橋本ら,2023).また,看護師の中には看取ることへの混沌とした不安,重圧感,心身の疲労などが,踏み込めない,逃げ出したいという患者に関わる困難な状況を生み出しているという指摘もある(坂下,2008).そのため,実際に70%の看護師は看取り後に悲しみや疲労感,無力感による自責の念や不安感がみられている(坂口ら,2007).このような状況において看護師が患者を看取り続けることは,さまざまなストレスや困難感などからバーンアウトを引き起こし兼ねない.そのため,患者を看取るなかで看護師のストレスや困難感にまさる,死と真っ向から対峙できる死への態度は何かを明らかにしない限り,死への態度育成に向けた教育はおろか,看取りケアの質向上は見込めない.

日本における死への態度は仏教の影響が強く,キリスト教圏の信仰がある国と異なること,欧米圏では「死」に対する態度が文化的な要素を含むことが指摘されている(隈部,2006丹下ら,2013).そのため,日本の文化的背景に基づき,死に対する態度を多面的に把握できる尺度(丹下,1999平井ら,2000丹下ら,2013)や死にゆく患者に対する看護師をはじめとした医療者のケア態度を測定できる尺度(Frommelt,2003中井ら,2006)が開発され定量的な調査が行われている.しかし,看護師の死への態度は何かについて言及している研究は散在するが(畑中,2012大西,2009大久保・小山,2018),その内容は十分に検討されていない.また,終末期にある患者のケアを行う上で死生観を持つことは重要であるといわれているが,死生観とは死と生にまつわる価値や目的などに関する考え方で,感情や信念を含む,行動への準備体制(岡本・石井,2005)を意味している.つまり,死生観だけでは患者や家族を尊重したQuality of Deathの実現は難しく,ケア行動として看護実践に結びつく死への態度が必要である.

一方,看護基礎教育において死にゆく患者に対するケアのあり方は2007年以降のカリキュラムに初めて「終末期看護」が示されたが,がん看護や緩和ケア教育の体系化は十分ではなく(清水,2019),患者の死を看取る上で求められる看護師の態度獲得や育成に関する教育内容は明確にされていない.

以上のことから死に逝く患者を看取る上で求められる看護師の死への態度獲得のための教育のあり方を検討するため,看護師の死への態度を系統的に明らかにすることが急務である.

Ⅱ. 研究目的

死に逝く患者を看取る上で求められる看護師の死への態度を系統的に明らかにし,その特徴から看護師の死への態度獲得に向けた教育のあり方を検討するための示唆を得ることとした.

Ⅲ. 用語の定義

1. 看護師の死への態度

態度とは,人間が何かを選択したり,決定したりする際にその根拠として働いていると考えられる知識や好き・嫌いなどの心理的状況の総称(唐沢,2010)である.このことを踏まえ,看護師の死への態度とは,患者の死に対して生じる感情や意志,表情などの外面に表れたふるまい,心のかまえ,考え方,行動とし,患者の死に対するケアを選択,決定する際に根拠として働いている知識や肯定・否定の両者を含む反応とした.

Ⅳ. 研究方法

研究領域の基盤となる主要な概念や利用可能なエビデンスを概説することを目的とするスコーピングレビューとし(Arksey & O’Malley, 2005),PRISMA Extension for Scoping Reviews(PRISMA-ScR)ガイドライン(Tricco et al., 2018友利ら,2020)に基づき実施した.

研究疑問の枠組みに沿い,Patientは死に逝く患者を看取る看護師とした.Conceptは死に逝く患者を看取る看護師の死への態度としたが,看護師の死への態度に該当する定義が十分でないことから本研究を行う上で用語の定義をし,該当する内容を含めた.Contextは看取りとし,文化的背景の違いを考慮し,日本国内と限定した.また,看取りの場所,看取るまでの期間は限定しなかった.

1. 対象文献の検索と選定

文献検索データベースは医学中央雑誌Webを用いた.検索対象は「看護婦or看護師」and「看取り」and「死への態度」とした(検索日:2024年6月4日).検索対象は,日本においては1990年代後半より死生観や死への態度の研究が取り扱われ始めたことから1991年以降に発表され,かつ会議録を除く原著論文に限定した.

さらに,包含基準を看護師,看取り,死への態度に言及し,除外基準は対象者が看護学生,介護職,看護師を含む他の医療者が混在する文献,死に逝く患者を対象としていない論文,看護師の死への態度に関する記載のない論文とした.また,発達年齢を前提とする多様なかかわりが含まれるため,NICUおよび小児病棟勤務看護師は除外した.

文献の選定は,研究者がそれぞれ独立して実施し,選定基準に従い題目と要約の内容確認を行った.題目と要約で除外できなかった文献は全文を精読し,判断に迷ったものは研究者間で1文献ずつ検討を行い,最終的に採択する文献を決定した.

2. データ抽出と分析

採択した文献の本文から質的研究においては,本研究の用語の定義「看護師の死への態度」であると思われる要因を抽出し,類似性・相違性の観点から帰納的にサブカテゴリー,カテゴリーに分類し,整理した.量的研究においては,看護師の死への態度を測定するために使用された既存尺度の下位概念から,影響要因は統計学的に関連があることが明記されている項目を抽出した.

また,これらの関係を検討するためカテゴリーおよび影響要因を,カテゴリー間の類似性,相違性を踏まえ図解した.なお,研究者はそれぞれ独立してこれらの作業を行い,相違がある個所は研究者間で検討を重ねた.さらに,スコーピングレビューに関する研究において指導実績のある看護大学教員にスーパーバイズを受けながら信頼性と厳密性の担保に務めた.

3. 倫理的配慮

文献の取り扱いには,著作権を侵害しないよう配慮し,原文に忠実であることに努め,引用した.

Ⅴ. 結果

1. 文献の選定

463件が該当した(検索日:2024年6月4日).題目と要約を確認し132件が除外され,選抜された文献は331件となった.さらに,全文を精読し,162件の文献が除外され,研究方法および結果が十分示されていない,あるいは概要のみしか示されていない論文を除外し,さらに判断に迷ったものは研究者間で検討したのち,最終的に54件の文献がレビューの対象となった(図1).

図1  看護師の死への態度に関する文献抽出フロー

2. 看護師の死への態度

看護師の死への態度は,【看取るために必要となる基本姿勢】【患者に行うケア行動】【家族に行うケア行動】【患者や家族に共通して行うケア行動】【よりよい看取りにするための看護師間での協働】【多職種で判断し,行うケア連携】【思うようなケアができないことへの葛藤や負担】【看取ることで深まる死に対するとらえ方】【看取ることで得られる自己成長やケア意欲の獲得】の9つのカテゴリーが抽出された(表1-11-2).

以下,分析結果をコードから生成されたサブカテゴリーを〈 〉で,カテゴリーを【 】で表記した.

1) 【看取るために必要となる基本姿勢】(34文献)

このカテゴリーは,〈ケア実践の基本的となる知識やスキル〉〈信念や価値観に基づく死のとらえ方〉〈死を前提にした患者と向き合う責務〉〈基本となるケアへの姿勢〉で構成された.

〈ケア実践の基本的となる知識やスキル〉は,患者や家族のケアをする上で必要となる終末期や緩和ケアに関する知識や実践能力があり,なかでも亡くなるプロセスへの理解や症状緩和,死を前提としたコミュニケーションスキルが含まれた.また,ケアをする上で必要となる家族看護,社会資源に関する基本的知識も含まれた.

〈信念や価値観に基づく死のとらえ方〉は,死を自然な現象や死後の世界への期待する価値観,看護師自身が抱く死への恐怖や不安の自覚など死に対する個人の普遍的価値や信念が含まれた.

〈死を前提とした患者と向き合う責務〉は,回避せず限られた患者の命と向き合う覚悟や看取る上での役割意識,患者の死に対する責務が含まれた.

〈基本となるケアへの姿勢〉は,患者を軸とし基本的欲求を満たす,敬意をもって接するなど死にかかわらずかかわる上での基盤姿勢が含まれた.

2) 【患者に行うケア行動】(24文献)

このカテゴリーは,〈患者の思いを引き出し,寄り添う〉〈価値や信仰を尊重し,自己決定を支える〉〈全人的な苦痛を緩和し,安寧さを守る〉〈最期までその人らしく過ごせるよう調整する〉〈安らかに逝けるように伴走し,最期を見届ける〉〈最期まで生ききるための療養環境を整える〉で構成された.

〈患者の思いを引き出し,寄り添う〉は,患者と関係を作りながら意思や希望を感受できるよう時間を確保し,死の受け入れ状況や思いに寄り添う姿勢が含まれた.

〈価値や信仰を尊重し,自己決定を支える〉は,患者の価値や信仰を尊重し,後悔なく最期を生きれるように自己決定を支える姿勢が含まれた.

〈全人的な苦痛を緩和し,安寧さを守る〉は,患者が体験している疼痛や身体的苦痛を症状マネジメントするだけではなく,精神面やスピリチュアルな視点からも緩和,体調維持し,安寧さを守るように努めることが含まれた.

〈最期までその人らしく過ごせるよう調整する〉は,最期までその人らしく,残された「今」という時間をより有意義に生きられるようにしたいという思いが含まれた.そのため,医師と治療について調整することも含まれた.

〈安らかに逝けるように伴走し,最期を見届ける〉は,患者が安らかに,安心して逝けるよう伴走し,最期に立ち会い,見届けたいという思いが含まれた.

〈最期まで生ききるための療養環境を整える〉は,最期を過ごす療養場所決定だけではなく,静かに過ごすための療養環境の整備が含まれた.そのため,臨終を想定した場の調整や環境調整も含まれた.

表1-1 抽出文献による看護師の死への態度

カテゴリー サブカテゴリー コード 該当文献
看取るために必要となる基本姿勢 ケア実践の基本となる知識やスキル 死を前提としたコミュニケーションスキル 吉岡・森山,2011)(東野,2021)(稲野辺ら,2009
家族看護や社会資源に関する基本的知識 吉岡・森山,2011
緩和ケアや終末期に必要な知識と実践能力 吉岡・森山,2011)(東野,2021)(稲野辺ら,2009)(生田ら,2016
症状緩和に関する基本的知識と実践能力 吉岡・森山,2011
亡くなるプロセスへの理解 坂下,2017b
信念や価値観に基づく死のとらえ方 死に対する信念や受け止め方 吉岡・森山,2011)(永山ら,2020)(伊藤・塩田,2016)(名越ら,2012)(山出・糸島,2019)(平井ら,2000
死は自然な現象 永山ら,2020)(熊本,2016)(長尾,2017)(永石・佐々木,2022)(新藤ら,2012
死後の世界への期待 永山ら,2020)(根立・中村,2014)(籏武ら,2018)(福ヶ野ら,2015)(平井ら,2000
死は苦悩からの解放 横尾・大町,2014)(平井ら,2000
身体と精神の死は別 生田ら,2016)(鈴木,2023)(大重,2011)(竹居ら,2023
死にまつわる恐怖や不安の自覚 永山ら,2021)(平井ら,2000)(岡本・石井,2005)(丹下ら,2013)(隈部,2006)(谷岡・堀,2018)(永山ら,2020
生きることへの目的意識 平井ら,2000
死を前提にした患者と向き合う責務 限られた患者の命と向き合う自覚 川田・石田,2023)(増田ら,2019)(伊藤・塩田,2016)(谷岡ら,2018)(山出・糸島,2019)(丹下ら,2013)(平井ら,2000
看取りにおける役割意識や死への責務の自覚 吉岡・森山,2011)(永山ら,2020)(名越ら,2012)(阿部ら,2020)(小田・国府,2023)(吉岡ら,2009
死を回避しない姿勢 東野,2021)(大西,2009)(隈部,2006)(平井ら,2000
基本となるケアへの姿勢 対象者中心にケアする姿勢 吉岡,2019
基本的欲求を満たす 藤恵ら,2018
基盤となるケアを提供する 小田・国府,2023
敬意を持って接する 増田ら,2019
患者に行うケア行動 患者の思いを引き出し,寄り添う 患者理解を深められるようにする 山崎・恩幣,2022)(藤恵ら,2018)(名越・道廣,2005
思いに応えられるよう,希望を聞く時間を作る 生田ら,2016)(加藤・百瀬,2014
患者の意思を感受し,推し量らう 小田・国府,2023)(園田・石垣,2009
患者の死を受け止めや想いに合わせ,寄り添う 新井ら,2018)(上山,2007)(生田ら,2016)(藤恵ら,2018
普段から信頼関係が築けるようにする 生田ら,2016
価値や信仰を尊重し,自己決定を支える 最期まで価値や信仰を尊重する 永山ら,2020)(井上ら,2009)(平山ら,2015)(加藤・百瀬,2014)(山出ら,2019)(藤恵ら,2018)(小田・国府,2023)(永石・佐々木,2022
最期を生ききるための自己決定を支える 増田ら,2019)(生田ら,2016)(池口,2016)(藤恵ら,2018)(吉岡,2019)(小田・国府,2023)(吉岡ら,2009
全人的な苦痛を緩和し,安寧さを守る 疼痛緩和や症状コントロールする 竹居ら,2023)(吉田,1999)(新井ら,2018)(東野,2021)(小野ら,2002)(上山,2007)(名越ら,2012)(阿部ら,2020)(加藤・百瀬,2014)(山出・糸島,2019)(永石・佐々木,2022
心身の苦痛を緩和する 増田ら,2019
心理面の苦痛を緩和する 阿部ら,2020
霊的苦痛の緩和をする 伊藤・塩田,2016)(吉岡ら,2009
安寧さを守る 増田ら,2019)(名越・道廣,2005
最期までその人らしく過ごせるよう調整する その人らしさを保てるよう工夫する 新井ら,2018)(生田ら,2016)(加藤・百瀬,2014)(藤恵ら,2018)(永石・佐々木,2022
医師と治療について調整できるようにする 新井ら,2018
今という時間を有意義に過ごせるようにする 吉田,1999)(上山,2007)(永石・佐々木,2022
安らかに逝けるように伴走し,最期を見届ける 安らかに逝けるよう伴走する 菅・小松,2016)(生田ら,2016)(永石・佐々木,2022)(小田・国府,2023
最期に立ち会い,見届ける 井上ら,2009)(山出ら,2019
最期まで生ききるための療養環境を整える 療養場所決定を支援する 増田ら,2019
静かに過ごせる最期の場の環境を作る 新井ら,2018)(井上ら,2009)(上山,2007
療養環境を整える 山崎・恩幣,2022)(平山ら,2015)(伊藤・塩田,2016)(加藤・百瀬,2014)(吉岡,2019

3) 【家族に行うケア行動】(24文献)

このカテゴリーは,〈家族の思いや意向を確認する〉〈病状理解や思いに合わせ,寄り添う〉〈家族が看取りに参加できるようケア情報などを伝える〉〈最期の時間を患者と過ごせるようにする〉〈家族が納得し,悔いなく看取れるよう支える〉〈残された家族の悲嘆を考慮しケアを行う〉で構成された.

〈家族の思いや意向を確認する〉は,家族との関係を作り,思いの表出,価値や意向の把握,思いを察知するなど家族の心情を確認する内容が含まれた.

〈病状理解や思いに合わせ,寄り添う〉は,家族がどのように患者の病状を理解しているのかを確認した上で,その歩幅に合わせ寄り添う姿勢が含まれた.

〈家族が看取りに参加できるようケア情報などを伝える〉は,家族が自己の役割を担い,ともに看取りに参加できるよう,ケアに必要な情報や方法を提供し,支えることが含まれた.

〈最期の時間を患者と過ごせるようにする〉は,最期の時間を家族と共有,家族が旅立ちを見守られるようにすることが含まれた.

〈家族が納得し,悔いなく看取れるよう支える〉は,臨終後を含め,家族が患者の死に納得でき,会わせたい人に会わせるなど悔いなく看取れるようにすることが含まれた.そのため,家族の意向を聞き,臨終に向けた準備などをすることも含まれていた.

〈残された家族の悲嘆を考慮しケアを行う〉は,患者が亡くなった後の家族の悲嘆や体験するグリーフワークを考慮したケアが含まれた.

4) 【患者や家族に共通して行うケア行動】(7文献)

このカテゴリーは,〈患者や家族と関係性を築き,意向を尊重する〉〈患者と家族の関係を重視する〉で構成された.

〈患者や家族と関係性を築き,意向を尊重する〉は,コミュニケーションをとり,患者家族との関係性を築くこと,死後も含めた想いに寄り添い,患者や家族を尊重したケアをすることが含まれた.

〈患者と家族の関係を重視する〉は,患者と家族の関係を重視し,歩んできたありのままを尊重してかかわることが含まれた.

5) 【よりよい看取りにするための看護師間での協働】(9文献)

このカテゴリーは,〈よい看取りとなるよう,看護師チームで連携し,体制を整える〉〈よりよい看取りケアができるようスタッフ間で支援体制を作る〉で構成された.

〈よい看取りとなるよう,看護師チームで連携し,体制を整える〉は,チームの価値観形成,情報共有するなどよい看取りとなるよう,チームの一員として有効なケアが提供できるよう調整し,連携をとることが含まれた.そのため,看取り後の振り返りも含まれていた.

〈よりよい看取りケアができるようスタッフ間で支援体制を作る〉は,よりよい看取りケアにつなげる一手段となるエンゼルケアを提供するための体制づくり,後輩看護師育成を含めたスタッフ間の教育や支援が含まれていた.

6) 【多職種で判断し,行うケア連携】(10文献)

このカテゴリーは,〈チームで臨死期を判断する〉〈多職種チームで連携しながらケアする〉〈医師と連携をする〉で構成された.

〈チームで臨死期を判断する〉は,臨死期の時期をチームで判断することが含まれた.

〈多職種チームで連携しながらケアする〉は,自己の専門分野を見極めて臨死期ケアについて多職種と連携や協働し,チームで行っていくことが含まれた.

〈医師と連携をする〉は,医師と連携してケアができたことが含まれていた.

7) 【思うようなケアができないことへの葛藤や負担】(6文献)

このカテゴリーは,〈思うようなケア実践ができないことへの葛藤や後悔〉〈患者や家族の苦痛や苦悩をケアすることへの精神的負担〉で構成された.

〈思うようなケア実践ができないことへの葛藤や後悔〉は,看護実践へのジレンマや葛藤,患者や家族をサポートできないことへの後悔,ルーティン業務や先輩看護師からの指示だけで十分な看護を展開できていないことが含まれた.

〈患者や家族の苦痛や苦悩をケアすることへの精神的負担〉は,死が近づくなかで生じる患者の苦痛や家族の苦悩を十分にケアできないことへの精神的苦悩や負担が含まれた.

8) 【看取ることで深まる死に対するとらえ方】(15文献)

このカテゴリーは,〈死に対する情緒的な反応や負担感〉〈看取ることで得られる生死や命に対する考えの深まり〉で構成された.

〈死に対する情緒的な反応や負担感〉は,死を経験したことにより生じた自己の死に対するショックや恐怖,無力さだけでなくケアへの限界感など感情の自覚が含まれた.また,看護師として終末期ケアにかかわることへの業務的,精神的負担が含まれた.

〈看取ることで得られる生死や命に対する考えの深まり〉は,看取る経験を通して患者や命に寄り添うことから得られた気づきや自己の内面と向き合うことで生死に対する考え方の深まりへの気づきが含まれた.

9) 【看取ることで得られる自己成長やケア意欲の獲得】(11件)

このカテゴリーは,〈看取りへの満足感やケア意欲〉〈看護実践を通して実感するやりがいや自己成長〉〈看取りの経験を知識に変える努力〉で構成された.

〈看取りへの満足感やケア意欲〉は,看護師自身が終末期看護を行うことでケア意欲の高まり,看取りへの達成感や満足感を自覚したことが含まれた.

〈看護実践を通して実感するやりがいや自己成長〉は,工夫しながら患者の思いに沿ったケアができたことでのやりがい,看護師として困難をプラスに感じる自己成長などを自覚したことが含まれた.

〈看取りの経験を知識に変える努力〉は,死期が迫った患者の心理面への看護を行う上で看護師自身の看取り経験を知識に変え,実践につなげる努力が含まれた.

表1-2 抽出文献による看護師の死への態度

カテゴリー サブカテゴリー コード 該当文献
家族に行うケア行動 家族の思いや意向を確認する 家族との関係をつくる 小野・麻原,2007)(小田・国府,2023
家族の思いの表出を促す 熊谷ら,2009)(名越ら,2012)(吉岡,2019
家族の価値や意向を確認する 新井ら,2018)(吉岡,2019
家族の思いを察知,探索する 小野・麻原,2007)(園田・石垣,2009
病状理解や思いに合わせ,寄り添う 家族の看取りに対する思いを受容する 加藤・百瀬,2014
患者の病態理解を確認する 山崎・恩幣,2022)(熊谷ら,2009)(園田・石垣,2009
家族の思いに歩調を合わせ寄り添う 増田ら,2019)(熊谷ら,2009)(名越ら,2012)(吉岡,2019)(園田・石垣,2009
家族が看取りに参加できるようケア情報などを伝える ケアに必要な情報や方法を提供する 池口,2016)(加藤・百瀬,2014)(園田・石垣,2009
家族が看病や役割を果たせるよう支える 井上ら,2009)(熊谷ら,2009)(小野・麻原,2007)(名越・道廣,2005)(加藤・百瀬,2014
最期の時間を患者と過ごせるようにする 最期の時間を患者と過ごせるようにする 竹居ら,2023)(吉田,1999)(上山,2007)(小野・麻原,2007)(山出・糸島,2019
家族が納得し,悔いなく看取れるよう支える 家族が悔いなく看取れるようにする 井上ら,2009)(熊谷ら,2009)(玉城ら,2014)(池口,2016
家族が患者の死に納得できるよう支える 菅・小松,2016)(吉田,1999)(永石・佐々木,2022)(永山ら,2021
家族の意向を聞き,旅立ちの準備をする 井上ら,2009)(岡本・石井,2005
残された家族の悲嘆を考慮しケアを行う 残された家族の想いを考慮する 永山ら,2020)(小野・麻原,2007
意識して悲嘆ケアを行う 新井ら,2018)(阿部ら,2020)(永石・佐々木,2022
患者や家族に共通して行うケア行動 患者や家族と関係を築き,意向を尊重する 患者,家族と関係性を築く 井上ら,2009)(伊藤・塩田,2016)(吉岡,2019
患者や家族の意向を尊重して関わる 菅・小松,2016)(井上ら,2009)(東野,2021)(小野ら,2002)(中井ら,2006
患者と家族の関係を重視する 患者と家族の関係を重視する 小野ら,2002)(伊藤・塩田,2016
よりよい看取りにするための看護師間での協働 よい看取りができるよう,看護師チームで連携し,体制を整える よい看取りとなるよう,チームで調整,連携する 山崎・恩幣,2022)(吉岡・森山,2011)(菅・小松,2016)(坂下,2017b)(吉岡ら,2009
看護師仲間での看取りの振り返る 生田ら,2016
よりよい看取りケアができるようスタッフ間で支援体制を作る よりよりエンゼルケアが提供できる体制を作る 井上ら,2009
ケア方法などスタッフ間の教育や支援を行う 新井ら,2018)(玉城ら,2014
多職種で判断し,行うケア連携 チームで臨死期を判断する チームで臨死期を判断する 山崎・恩幣,2022)(新井ら,2018
多職種チームで連携しながらケアする 多職種チームで連携しながらケアにあたる 新井ら,2018)(小野ら,2002)(伊藤・塩田,2016)(名越ら,2012)(池口,2016)(生田ら,2016)(永石・佐々木,2022
治療方針や方向性の決定に参加する 山崎・恩幣,2022
医師と連携をする 医師と連携をする 竹居ら,2023)(小野ら,2002
思うようなケアができないことへの葛藤や負担 思うようなケア実践ができないことへの葛藤や後悔 思うようなケア実践ができないことへの葛藤や後悔 坂下,2017a)(玉城ら,2014)(谷岡・堀,2018)(名越ら,2012
ケアするために必要な施設・設備環境がない 小野ら,2002
患者や家族の苦痛や苦悩をケアすることへの精神的負担 患者や家族の苦痛や苦悩を目の当たりにすることで生じる精神的負担 坂下,2017a)(阿部ら,2020
看取ることで深まる死に対するとらえ方 死に対する情緒的な反応や負担感 死に対する情緒的反応の知覚 永山ら,2020)(小野ら,2002)(鈴木・村岡,2009)(稲野辺ら,2009
患者が死ぬことへのショックや恐怖 玉城ら,2014)(長尾,2017
死に対する哀情・心残り 鈴木・村岡,2009)(長尾,2017
何もできない無力であることの自覚 谷岡・堀,2018)(長尾,2017
終末期看護への限界感 名越・道廣,2005
終末期ケアをすることへの業務的・精神的負担 小野ら,2002)(稲野辺ら,2009
看取ることで得られる生死や命に対する考えの深まり 死を通して自己と対峙し,内面と向き合う 川田・石田,2023)(長尾,2017)(生田ら,2016)(名越・道廣,2005
患者の命に寄り添うことで得られた教えと気づき 川田・石田,2023)(坂下,2017b)(永石・佐々木,2022)(永山ら,2021
生死に対する考え方やケアが深まり 岡本・石井,2005)(川田・石田,2023)(菅・小松,2016)(生田ら,2016)(名越・道廣,2005)(丹下ら,2013
看取ることで得られる自己成長やケア意欲の獲得 看取りへの満足感やケア意欲 看取りへの満足感やケア意欲 福ヶ野ら,2015)(横尾・大町,2014)(谷岡・堀,2018)(永石・佐々木,2022)(大町ら,2009)(横尾ら,2010
看護実践を通して実感するやりがいや自己成長 看護実践を通して実感するやりがいや自己成長 川田・石田,2023)(玉城ら,2014)(小野ら,2002)(坂下,2017b
看取りの経験を知識に変える努力 看取りの経験を知識に変える努力 生田ら,2016

3. 看護師の死への態度に影響を及ぼす要因

看護師の死への態度に影響を及ぼす要因は年齢,性別のほか,【死別や看取りにかかわった経験】【死に関する意図的な学習や教育機会】【ターミナルケアや緩和ケアにかかわることへの前向きさ】の3つのカテゴリーが抽出された(表2).

表2 看護師の死への態度に影響を及ぼす要因

カテゴリー サブカテゴリー コード 該当文献
死別や看取りにかかわった経験 死別経験 死別経験 西出,2023)(岡本・石井,2005)(大町ら,2009)(大西,2009
家族の死を意識する経験 岡本・石井,2005
看取った回数 看取り回数 大町ら,2009)(籏武ら,2018)(土屋・明石,2016)(福ヶ野ら,2015
看取りケアにかかわった経験 看取りケア経験 竹居ら,2023)(中島,2014)(吉岡・森山,2011)(西出,2023)(名越ら,2012
患者の最期の生き方・死に方に関わった経験 菅・小松,2016
死後の患者・遺族とかかわった経験 菅・小松,2016
他の看護師や医師のかかわりをみた経験 菅・小松,2016
臨床経験年数 臨床での経験年数 高野ら,2018)(土屋・明石,2016)(横尾・大町,2014)(岡本・石井,2005)(根立・中村,2014)(中島,2014)(西出,2023)(大西,2009
所属病棟・専門領域 所属病棟の専門領域 大町ら,2009)(土屋・明石,2016)(横尾・大町,2014
ホスピス・緩和ケア病棟経験 岡本・石井,2005
病床数・体制 山崎・恩幣,2022
死に関する意図的な学習や教育機会 死を前提とするカンファレンスや話をする経験 デスカンファレンス参加経験 竹居ら,2023)(山崎・恩幣,2022)(西出,2023
死についての話をする機会 岡本・石井,2005
終末期ケアカンファレンス参加経験 竹居ら,2023
家族カンファレンス開催経験 山崎・恩幣,2022
看護基礎教育において緩和ケアや死に関する学習をした経験 死に関する教育を受けた経験 原・秋田,2009)(籏武ら,2018
緩和ケアの授業を受けた経験 高野ら,2018
死や終末期ケアに関する教育的な学習機会 死や死への準備教育に関する学習機会 高野ら,2018)(西出,2023
終末期ケアへの教育的な働きかけの享受経験 山崎・恩幣,2022)(大西,2009)(菅・小松,2016
事例検討会への参加経験 高野ら,2018
院内外での講義・講演参加経験 高野ら,2018
専門的知識獲得に向けた学習機会 臨床へ活用するための専門誌による知識獲得 高野ら,2018
ELNEC-Jコアカリキュラムの受講経験 高野ら,2018
ELNEC-Jコアカリキュラム指導者資格 高野ら,2018
がん・緩和ケア分野の専門資格取得 高野ら,2018
ターミナルケアや緩和ケアにかかわることへの前向きさ ターミナルケアや緩和ケアにかかわることへの前向きさ ターミナルケアへの前向きさ 籏武ら,2018)(新藤ら,2012)(玉城ら,2014
終末期ケアへの意欲 谷口,2021
緩和ケア病棟への配属希望 高野ら,2018
終末期ケアへの困難感 山崎・恩幣,2022

【死別や看取りにかかわった経験】は,〈死別経験〉〈看取った回数〉〈看取りケアにかかわった経験〉〈臨床経験年数〉〈所属病棟・専門領域〉で構成された.身近な人との看取りや死別経験だけではなく,看護師としての臨床経験年数,看取りや看取りケアにかかわった経験やその回数,看護経験のある疾患や病棟が含まれた.

【死に関する意図的な学習や教育機会】は,〈死を前提とするカンファレンスや話をする経験〉〈看護基礎教育において緩和ケアや死に関する学習をした経験〉〈死や終末期ケアに関する教育的な学習機会〉〈専門的知識獲得に向けた学習機会〉で構成された.看護基礎教育における緩和ケアや死に関する学習をした経験,死に関する教育機会としての研修会経験,デスカンファレンスや死の話をする機会が含まれた.また,現任教育において自発的な学習機会となるELNEC-J(End-of-Life Nursing Education Consortium-Japan)コアカリキュラムの受講経験やがん看護専門看護師や緩和ケア認定看護師などスペシャリスト資格獲得が含まれた.

【ターミナルケアや緩和ケアにかかわることへの前向きさ】は,〈ターミナルケアや緩和ケアにかかわることへの前向きさ〉で構成された.緩和ケア病棟での勤務希望,終末期ケアへの意欲などターミナルケアにかかわることへの前向きな姿勢が含まれた.

4. 看護師の死への態度と影響要因の概要

文献から抽出された看護師の死への態度と影響要因の概要を図2に示した.図は,カテゴリーを【 】,サブカテゴリーを〈 〉で示し,関連するカテゴリーを角丸長方形実線枠でまとめた.さらに,関連するカテゴリーをまとめ,角丸長方形点線枠で囲い,新たな類似性の集まりにその全体の内容を言い表す説明表記に“ ”をつけた.また,看護師の死への態度に影響を及ぼす要因は長方形実線枠でまとめた.

図2  看護師の死への態度と影響要因の概要

“患者や家族のニーズを満たし,よりよいケアにするための行動”は,【患者に行うケア行動】【家族に行うケア行動】【患者や家族に共通して行うケア行動】の3つのカテゴリーであり,患者や家族のために看護師が実施するケア行動として関連があると判断した.また,【よりよい看取りにするための看護師間での協働】【多職種で判断し,行うケア連携】の2つのカテゴリーは互いに関連しあい,患者や家族のために看護師が実施するケア行動にも相互作用していた.“看取ることで生じる看護師個人の死やケアをすることへの考え”は,【看取ることで深まる死に対するとらえ方】【看取ることで得られる自己成長やケア意欲の獲得】【思うようなケアができないことへの葛藤や負担】の3つのカテゴリーからなり,これらは相互作用を経ながら循環していた.また,“看取ることで生じる看護師個人の死やケアをすることへの考え”と“患者や家族のニーズを満たし,よりよいケアにするための行動”はそれぞれ相互作用していた.

看護師の死への態度に影響を及ぼす要因は3つのカテゴリーからなり,4つのサブカテゴリーからなる【看取るために必要となる基本姿勢】へと影響し,さらに“患者や家族のニーズを満たし,よりよいケアにするための行動”に影響していた.

従って,看護師の死への態度は,よりよい看取りとなるよう多職種,看護師間でケア連携しながら患者,家族,または患者や家族それぞれのニーズを満たすケア行動があり,これらは看護師個人の死別や看取りにかかわった経験,意図的な学習機会,ターミナルケアに関わることへの前向きさ,さらには看取るために必要となる基本姿勢が影響していた.また,患者や家族のニーズを満たし,よりよいケアにするための行動を通して看取ることで生じる看護師個人の死やケアすることへの考えを深めるなど相互に影響しあっていることが示された.

Ⅵ. 考察

1. 日本における看護師の死への態度

看護師の死への態度は,看護師が患者,家族の意向に沿い,ニーズを満たすため築いてきた家族の関係性に配慮しながら最期まで伴走するケア行動がみられた.なかでも患者に対するケア行動には療養環境を整え,全人的な視点から苦痛を緩和し,その人らしく,安らかに逝けるよう支援するだけではなく,伴走者としてその最期を見届けたいという考えや行動があった.がんサバイバーシップが提唱する終末期の生存の時期は,疼痛管理,症状緩和などのコントロールと実存へのケアを含む質の高い全人的なケアが求められており(久保,2019),その人らしさを維持,尊重する上で苦痛の除去は必須である.しかし,看護師はこれらだけではなく最期まで患者が生ききる姿を見届けたいととらえていた.このことは,看護師が最期まで患者の生きるプロセスを伴走者として寄り添い続けることで看護師役割を果たすだけではなく,死を1つの区切りとして自己の提供したケアを振り返り,感情を整理する機会を得ているのではないかといえる.また,家族に対するケア行動には,家族が主となり看取りに参加できるようケア情報を伝え,納得した後悔のない時間となるように支援するとともに,患者の亡き後にも経験する悲嘆を考慮したケアをするという姿勢がみられた.在宅で終末期の家族を看取った遺族は,死別後の後悔には時間の使い方と介護知識不足があるという指摘があるが(安藤・二の坂,2014),看護師は家族それぞれが役割を果たしながら介護やケアに参加できるよう行動しており,家族を主体にとらえる姿勢こそが悔いのない看取りや予期悲嘆ケアの提供につながる大事な態度であるといえる.

また,患者や家族へのケア行動をするためには,看護師個人の死に対する考えだけではなく患者の死と向き合い,その責務を負うために求められる知識やスキルを持ち合わせるという基本姿勢が含まれていた.看護師が死に対する考えや信念を持ち合わせることは患者や家族に寄り添う上で重要であり,看護師個人の精神的負担を軽減する一助となる.しかし,看護師には最期は安らかで穏やかにいくべきである,という思いを抱き,患者の生命に対する責務として死をとらえる傾向がある(永山ら,2020).看護師は自己の役割を遂行するうえで緩和ケアや終末期看護に関する知識やスキル,コミュニケーションを駆使した実践能力があってこそその人らしい最期の有意義な時間を過ごせる援助ができると認識しているのかもしれない.

さらに,看護師は多職種チームでの判断や連携,看護師チーム間の連携や協働によりよい看取りとなるようケア連携をしていた.多職種連携においてはキーワードだけが抽出され,具体的な内容が十分に得られなかった.しかし,看護師だけで抱え込まず臨死期にあることを多職種チームで判断することは家族が死別に備える準備をする上でも必要である.また,看護師間の連携や教育的支援体制の整備は,ケア向上だけにとどまらず,経験の少ない看護師のスキルアップの機会となり,ケアの質向上に向け人的環境を整えることは重要な態度といえる.

一方で,看護師は患者を看取る経験を通して死や命に対する自己の情緒的な反応を自覚し,考えを深め,ケアを通してやりがいを実感,ケアへの意欲や自己成長の機会を獲得するが,同時に思うようなケアが提供できないことでの葛藤や苦悩,精神的負担といった否定的な反応もみられた.看護師は看取りやターミナルケアにかかわることに困難感を抱く傾向があり,特に新卒看護師においてはがん患者との死別や死そのものに対する恐怖,後悔,自責感といった「看取りにおける不快感情」と,看取りケアに関する知識・技術の不足である「看取る能力の不足」)がある(浅野・坂井,2017).しかし,死に関わる多大な苦悩をもたらす体験から成長を見出すことで看護師自身の精神的安定が保たれ,質の高いケアの提供につながる(西田ら,2011)ことからケアするなかで生じる葛藤や負担は死に逝く患者のケアを行う上で成長につながる態度として必要といえる.

2. 看護師の死への態度獲得に向けた教育のあり方

看護師の死への態度は,死に対する意図的な学習や教育機会より影響を受けながら患者や家族のケアに必要な知識やスキルの上にケア行動が成り立っており,少しでも看護師が思い描くようなケアが自信をもって提供できるよう知識やスキルの獲得や強化が重要である.看護師は死別や看取りにかかわった経験より影響を受け,看護師チーム間での連携や協働により具体的なケア提供を実施していることから,日常的な看護業務を担うなかでの看護師間の公式・非公式なやり取りが互いの学習機会になると自覚し,看護スタッフ間での教育支援体制を強化することも必要である.そのためには知識やスキルだけではなく,死についての考え方を自由に話す場を設けることも有効である.患者の死後に行うデスカンファレンスは事例を前提とするが,うまくいかなかった看取りの事例に関しても,自由に想起させ,なぜうまくいかないと考えたのかその理由など,今ならどのようにかかわれるのか看護師個人の死やケアをすることへの考えに焦点をあてた話し合いを持つことができれば自己省察が促され,死に対する否定的な反応を成長に変えることができるのではないかと考える.

現在,看護基礎教育においては296大学304課程で学士課程教育を実施している(文部科学省,2025).看護基礎教育では死に関しては「終末期にある人々を援助する能力」として位置づけ,生きること,死にゆくことの意味とその過程,最後までその人らしく支援することの必要性,緩和ケアなどがコアとなる看護実践能力,卒業時到達目標として示されている(文部科学省,2011).また,教育の質保証のために必要な修学目標を掲げた看護学教育モデル・コア・カリキュラが改定されている(文部科学省,20172025).しかし,死への理解につながる学習は十分とはいえず,自己の死への考え方はもとより,看護師として求められる死への態度は何かも曖昧なままである.知識やスキルとあわせ,どのような死への態度が獲得できれば看護実践者として貢献できるのか,患者の死や死を考える機会を通して看護学生がどのような死への態度を学び,身につけることができたかを確認することが必要ではないかといえる.

Ⅶ. 研究の限界

先行研究から看護師の死への態度が明らかにすることできたと考えるが,看取りの場所,看取るまでの期間は限定せず,小児病棟勤務看護師は除外したため,すべてを網羅した「看護師の死への態度」の特徴までは明らかにできなかった.今後は,検索エンジンを増やすとともに看取る場所や対象年齢を踏まえた看護師の死への態度を追究していきたい.

Ⅷ. 結論

看護師の死への態度は,【看取るために必要となる基本姿勢】【患者に行うケア行動】【家族に行うケア行動】【患者や家族に共通して行うケア行動】【よりよい看取りにするための看護師間での協働】【多職種で判断し,行うケア連携】【思うようなケアができないことへの葛藤や負担】【看取ることで深まる死に対するとらえ方】【看取ることで得られる自己成長やケア意欲の獲得】の9つのカテゴリーが抽出された.また,看護師の死への態度に影響を及ぼす要因は【死別や看取りにかかわった経験】【死に関する意図的な学習や教育機会】【ターミナルケアや緩和ケアにかかわることへの前向きさ】の3つのカテゴリーが抽出され,【看取るために必要となる基本姿勢】に影響していることが明らかになった.

謝辞:本研究はJSPS科研費20K10758の助成を受け実施したものである.

利益相反:本研究における利益相反は存在しない.

著者資格:YHは研究プロセスすべてを主導し執筆した.EEは研究の構想,分析データの抽出,分析,解釈に貢献し,研究プロセス全体への助言を行った.著者ともに最終原稿を読み承認した.

文献
 
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