日本看護科学会誌
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原著
乳幼児期の子どもへの接し方に育児困難を感じる母親の援助要請のプロセス
吉羽 久美森田 展彰
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2025 年 45 巻 p. 110-120

詳細
Abstract

目的:乳幼児期の子どもへの接し方に育児困難を感じる母親の援助要請のプロセスを明らかにすることである.

方法:乳幼児期の子どもへの接し方に育児困難を感じた経験がある母親26名に半構造的面接法によるインタビューを行い,修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチによる質的研究を行った.

結果:乳幼児期の子どもへの接し方に【育児困難の知覚】をする母親は,困難を解決し【最適な育児の探索】のために【援助要請】を行う.それは日ごろから行っている【援助要請しやすい関係づくり】をもとに【方法の選択】をし,《救いを求める》ことで【安心を得る】ことである.【援助要請の抵抗感】や対面での【援助要請のあきらめ感】がある母親は【オンラインの援助要請】を行うことで【安心を得る】.

結論:接し方に育児困難を感じる母親の援助要請のプロセスが明らかになった.看護職はこのプロセスを啓発し,看護実践に活かす必要がある.

Translated Abstract

Aim: This study aims to elucidate the help-seeking process of mothers experiencing parenting difficulties with their infant children.

Methods: Semi-structured interviews were conducted with 26 mothers who have experienced parenting difficulties with their infant children. The data were analyzed using the Modified Grounded Theory Approach for qualitative research.

Results: Mothers experiencing [perceived sense of parenting difficulties] [seek help] to resolve their difficulties and [explore optimal parenting methods]. They [select methods] based on [relationships that facilitate help-seeking] in daily life, and «seek relief», which ultimately leads to [obtaining reassurance]. Mothers who feel [resistant to help-seeking] and have [a sense of giving up on help-seeking] in face-to-face contexts often opt for [online help-seeking], which also helps them [obtain reassurance].

Conclusion: This study identified the help-seeking process of mothers experiencing parenting difficulties with their infant children. It is essential for nursing professionals to promote awareness of this process and incorporate this understanding into their nursing practice.

Ⅰ. 緒言

子ども虐待の予防は,健やか親子21(第2次)において重点課題となっている(厚生労働省,2019).しかしながら,子ども虐待の相談・対応件数は年々増加し(こども家庭庁,2024a),虐待による死亡もしくは重症者の発生数は横ばいが続き,改善に兆しが見えていない(こども家庭庁,2024b).ところで,子ども虐待の高リスク群と判断された母親には育児困難があることが明らかにされている(吉岡ら,2017).育児困難とは,川井ら(1996)は育児への困惑と子どもへのネガティブな心的態度や感情であると定義し,育児困難を評価する質問紙を開発した.これを用いて調査をした小林ら(2006)は,生後1ヵ月の乳児の母親は40.3%もの多くの人が育児困難を感じていることを明らかにした.このような育児困難を母親が感じた時,それを解決するために援助要請しやすい環境づくりを社会で取り組むことは,子ども虐待の解決策の1つになると考えられる.

Rickwood et al.(2005)は,援助要請とは積極的に他者に助け(理解,助言,情報,治療,一般的なサポート等)を求める行動のことであり,そして個人的な問題が人に助けを求めるという対人関係を伴うものに変化するプロセスであると述べている.母親の援助要請のプロセスの質的研究は日本においても行われている.小倉(2015)は母親が育児や家事で負担が大きい時に夫への援助要請の欲求が高まるが,それが抑制される心理的プロセスを明らかにしている.Shimada et al.(2021)は乳児を持つ母親が日常的に生じる子どもの些細な心配事を看護職に援助を求めるプロセスには,看護職の対応に対する失望や満足が影響していることを明らかにした.さらに海外の研究では,Chivers et al.(2021)は母親の育児スキルが向上し,不安が解消する学習プロセスがあり,そのプロセスの中に母親同士で援助要請を行っていることを明らかにした.以上のことから,母親の援助要請のプロセスに関する研究は国内外で実施され,母親が育児スキルを向上し,育児負担や育児不安を軽減するために,他者に援助要請を行っていることが明らかになっている.しかしながら,育児困難を感じる母親には,どのような援助要請のプロセスがあるかについては明らかにされていない.育児困難は子ども虐待のリスクを高めるため(吉岡ら,2017),それを解決しようとする母親が誰にどのような援助要請を行い,また抑制されるプロセスがあるかをインタビューデータから明らかにすることは,母親の複雑な心の理解が深まり,子ども虐待を予防する看護実践の質の向上において意義があると考えられる.そして本研究は育児困難(子どもへのネガティブな心的態度や感情)の1つと考えられる乳幼児期の子どもへの接し方に感じる育児困難に着眼をした.頭川(2017)は子どもへの接し方に悩む母親とは,子どもに感情的な言葉で怒ってしまう,子どもを愛せないことに苦しむなど,子どもに対して自信をもって接することができないことと述べている.本研究が子どもへの接し方に感じる育児困難に着眼した理由の1つ目は,日本の年少人口は11.4%と過去最低となり,かつてない少子化社会となった(総務省,2024).これに伴い,若者が乳幼児と接する機会は減少し,乳幼児期の子どもへの接し方に育児困難を感じる母親は多いと推測されるためである(Chen, 2007).2つ目は,子ども虐待の加害の動機の中には「泣きやまないことにいらだったため」「しつけのつもり」といった,子どもへの接し方に対する困難さが原因と考えられるものがあるためである(こども家庭庁,2024b).そこで本研究は乳幼児期の子どもへの接し方に育児困難を感じる母親の援助要請のプロセスを明らかにし,看護学での実践的応用を検討することを目的に調査を行った.

Ⅱ. 研究方法

1. 本研究の用語の定義

本研究では乳幼児期の子どもへの接し方に感じる育児困難とは,子どもの特性(行動,気質,発達等)に対する母親の子どもへの接し方のネガティブな心的態度や感情と操作的に定義をした.援助要請は,乳幼児期の子どもへの接し方に感じる育児困難をきっかけに,他者に救い(理解,助言,情報,支援等)を求めることと操作的に定義をした.

2. 研究参加者

研究参加者は乳幼児期の子どもへの接し方に育児困難を感じた経験がある母親とした.

3. 研究デザイン

修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ(以下M-GTAと表記をする)による質的研究を行った(木下,2020).M-GTAを選んだ理由は,本研究は乳幼児期の子どもへの接し方に育児困難を感じる母親が社会的相互作用の中で解決しようとするプロセスを明らかにすることが目的であること,またM-GTAはヒューマンサービス領域の実践的活用を目的としているためである.

4. データ収集方法

データ収集は2022年11月から2023年1月に実施した.研究参加者のリクルートは,公益財団法人Aが0歳から2歳までの子どもをもつ母親を対象に全国10万人程度に配信しているメールマガジンに本研究の協力依頼文を掲載してもらうことに協力を得て配信し,25名から同意を得た.また本研究とは別に筆者が行ったインターネット調査の質問紙に同じ協力依頼文を掲載し,回答者104名のうち1名から協力を得て,合計26名から協力を得た.リクルートにインターネットを利用した理由は,子どもへの接し方に育児困難を感じる母親を対象としたインタビュー調査に同意をしてくれる協力機関や研究参加者は少ないため,多くの人に協力依頼文を周知する必要があったためである.本研究の研究参加者に該当することを確認するために,協力依頼文に本研究の対象者は「乳幼児の子どもを持ち,乳幼児への接し方に困難を感じた経験があるお母様」と明記をし,またインタビューを開始する前に行う口頭の説明の時に再確認をした.インタビューはZoomを用いたオンラインで半構造的面接法により行った.インタビュー時間は平均30分(範囲:18分から48分)で実施した.主なインタビュー内容は,「我が子への接し方で,戸惑った時に,どのように対処したか」「どうすれば良いか分からない時に,自分から誰か(もしく公的機関等)に聞くことがあったか」「相談しづらいと感じたことはあったか」「我が子が泣く,ぐずる,言う事を聞かない時に,自分から誰か(もしくは公的機関等)に相談したことがあったか」等である.これらの質問に対する研究参加者の語りが,より具体的になり,その時の思い,且つ語ったことによる気づきを表現しやすくなるように配慮をした.インタビューの音声はICレコーダーで記録をすることの同意を研究参加者から得てから録音を開始し,逐語録に書き起こした.

5. 分析方法

インタビューデータの分析はM-GTAで行った.M-GTAは分析焦点者の視点から分析テーマにそって分析を行う(木下,2020).本研究の分析テーマは,母親が援助要請をした後に安心感を得ていたことから,「乳幼児期の子どもへの接し方に育児困難を感じる母親が援助要請をし,安心を得るプロセス」とした.また分析焦点者は,「乳幼児期の子どもへの接し方に育児困難を感じた経験がある母親」とした.

データ分析の具体的な方法は,分析テーマと分析焦点者の視点からインタビューデータを読み,それらに関連すると思われる語りを抽出し,M-GTA独自の分析ワークシートにバリエーションとして記述した.抽出した語りの意図や意味,抽出した理由,その次に生じると思われる動き,対極例として考えられること,これらは理論的メモに記入して解釈を行った.これらの分析作業は筆者が豊かな語りと判断した1事例から開始した.そして,事例から抽出した語りの抽象度を上げた定義,および定義を凝縮した概念を生成した.分析を開始した1事例のインタビューデータから,これ以上の概念の生成はないと判断した後に,その他の事例の分析を開始した.このような分析と同時に,概念相互を継続的比較分析することで修正や統合を行った.生成した概念の抽象度を上げ,その意味の幅に含まれる概念を統合し,サブカテゴリー,カテゴリーとした.コアカテゴリーは,分析テーマのプロセスの中で中心となるカテゴリーとした.ストーリーラインは,最初にカテゴリーだけで文章化し,次にサブカテゴリーを入れて完成させた.結果図は,分析テーマの中心となるコアカテゴリー,および概念やカテゴリーの動きを検討しながら作成した.データ分析により新たな概念が生成されないことを確認し,理論的サンプリングとしてのデータ収集と分析を終了した.

分析の厳密性を高めるため,M-GTAの研究に精通する研究者から分析方法の指導を受けた.また子ども虐待の研究実績を有し,博士号をもつ研究者3名から助言を得た.さらに大学院生だけの自主的なグループワークで助言を得た.これらを通して,分析の精度を高めた.

6. 倫理的配慮

筑波大学医の倫理委員会の承認(第1778-1号)を得てから調査を開始した.インタビュー調査を開始する前に,研究参加者に調査依頼文を提示しながら,口頭で説明を行った.研究の参加は,研究参加者の自由意思に基づいている.インタビューの途中で知り得た個人情報(氏名,居住地,施設等)はイニシャルではない任意のアルファベットに変え,個人を特定することができなくなるようにした.

Ⅲ. 結果

1. 研究参加者の概要

研究参加者は乳幼児期の子どもを含めた1名から3名の子どもがいる母親26名である.子どもの年齢,人数,性別の概要を表1に示した.本研究はインタビュー内容の一部に不適切な養育に関する内容が含まれているため,個人情報の収集は最小限にとどめた.

表1 研究参加者の子どもの人数,年齢,性別

No 子どもの人数 第1子年齢(性別) 第2子年齢(性別) 第3子年齢(性別)
1 1 幼児(女)
2 1 幼児(不明)
3 1 0歳(男)
4 1 2歳(男)
5 1 0歳(男)
6 2 3歳(男) 1歳(女)
7 2 5歳(男) 2歳(男)
8 1 2歳(男)
9 3 不明(男) 不明(女) 0歳(不明)
10 1 1歳(不明)
11 2 3歳(男) 不明(男)
12 1 0歳(男)
13 1 0歳(男)
14 3 9歳(不明) 6歳(不明) 1歳(不明)
15 1 3歳(女)
16 1 2歳(男)
17 2 幼児(男) 0歳(不明)
18 1 1歳(男)
19 2 4歳(不明) 1歳(不明)
20 2 1歳(不明) 0歳(不明)
21 1 幼児(不明)
22 2 4歳(男) 2歳(女)
23 3 幼児(女) 2歳(女) 1歳(男)
24 1 0歳(女)
25 2 4歳(男) 2歳(女)
26 1 0歳(女)

2. ストーリーライン

質的データ分析の結果,55の概念,15のサブカテゴリー,11のカテゴリーを生成した.これらと研究参加者のインタビューの言葉の引用は文脈の意味を明確にするために( )で補いながら表2に示した.結果図は図1に示した.それを基にストーリーラインを作成した.以下,文中の〈 〉は概念,《 》はサブカテゴリー,【 】はカテゴリーを表している.

表2 カテゴリー,サブカテゴリー,概念,定義,インタビューの言葉の引用

カテゴリー サブカテゴリー 概念 定義/インタビューの言葉の引用(イタリック体)
育児困難の知覚 子どもの特性 社会的な問題行動をする 子どもが社会生活で問題になる行動をすること
子どもの力が強く,他の子を叩いてしまう時期もあった.(事例X)
不機嫌が収まらない 子どもが泣き止まないこと
泣き止まない.夜中も四六時中ほぼ泣いていた.(事例M)
育てにくい気質 母親が育てにくいと感じる子どもの気質
繊細で敏感で泣きやすい(子ども).(事例G)
子どもへの接し方の困難感 社会的問題行動への困難感 子どもの社会的問題行動への接し方に母親が困難を感じること
本当に「やめてくれ」って思うのがあって.(事例P)
不機嫌をあやす困難感 子どもの機嫌が悪い時に困難を感じること
泣くが凄い時は(母親の)心が折れちゃって(事例E)
気質とそりが合わない 子どもの気質が難しいと感じること
この子は私とそりが合わなくて,凄く育てにくいことを(子どもに)言ってしまうこともあって.(事例Y)
子育ての疲弊感 試行錯誤の子育て 第1子の子育てを日々迷いながら行うこと
生れてから3~4カ月の間,試行錯誤の連続で大変,特に精神的にきつかった.(事例U)
睡眠不足による体調不良 睡眠不足により母親が心身ともに疲弊すること
睡眠が削られていて,体力的に少なくなっていた(事例J)
解消されない不安感 母親が強い不安を感じ続けながら子育てを行うこと
3ヵ月までは,かわいいよりも不安が大きかった.(事例W)
困難感が子どもに気づかれたと思う 母親の子育ての困難感に子どもが気づいたと思うこと
(次女は)私に長女よりかわいがられてないような感情を感じてしまって情緒不安みたいになった.(事例F)
子どもへのイラ立ち 子どもにイライラを感じること
生後6カ月ぐらいの時は,すごいイライラしていましたね.(事例B)
イラ立ちを抑える 子どもへのイライラ感を落ち着けること
私が距離を置いて落ち着くってことをしないといけないなってことは,ずっと思っていたんです.(事例C)
イラ立ちに支配される イラ立ちが限界まで達する 母親のイライラ感が限界点に到達したと思うこと
子どもが泣き叫ぶし,もう,限界ってなって(事例U)
自分の行動に恐怖を感じる イライラして自分の行動に危機感を感じること
子どもに(自分が)危害を加えてしまうんじゃないかっていうのもあった.(事例H)
イラ立ちの暴発 怒りを子どもに当てる 母親のイライラする気持ちを子どもに当ててしまうこと
暴言しか言葉が口から出て来ない時があった.(事例A)
自己嫌悪に陥る 子どもに対する自分の態度に自己嫌悪を感じること
自分が悪かったなって思う.(事例W)
最適な育児の探索 最適な育児方法を探す 子どもに合った最適な育児方法を常に探すこと
自分の気持ちと自分の子どもに合うやり方を探して行くというやり方だと思う.(事例D)
子育て講座で学ぶ 子育て講座に参加をして勉強すること
子育て関連のセミナーによく参加して勉強したりしました.(事例V)
ネットの世界を検索する 子育てで分からないことをインタ-ネットで検索し調べること
インターネットで調べたりします.(事例I)
援助要請しやすい関係づくり 良好な関係づくり 幾度も顔を合わせる 母親を支えてくれる人と何度も会う機会をつくること
そういう人と顔を会わせる機会が結構多くて,そうすると,顔は知っているし(事例V)
つながりをつくる 日ごろから周囲の人々と良好なつながりをつくること
そういう密な関係を日ごろから作っていたので,信頼関係もあるし.(事例B)
気にかけてくれる人 相手も子どもをよく知っている 子どもの特性を家族以外の周囲の人も知っていること
皆(親族)が子どもの性格特性を情報共有できているんですよね.(事例S)
向こうから声をかけてくれる 手伝うことはないかと声をかけてくれること
日ごろからの接触,向こうから気にかけてくれる「どうですか」って.(事例G)
方法の選択 負担の少ない方法の活用 無料相談を希望する 相談するには無料でなければ利用しようと思わないこと
有料なんだとちょっとためらってしまう.(事例CC)
手間の要らない手段を選ぶ 相談までの手間と時間がかからない方法を選択すること
(予約制の相談の場合は)時間とか,手間が,いつの日時に設定しようかとか,ちょっと大変で,「わざわざいいかな」って思う.(事例S)
タイミングを活かす 相談相手に会える機会を積極的に活用すること
健診の時に聞くとか,予防接種の時に聞くって感じですね.(事例T)
相談相手の選択 傾聴してもらえる人の選択 忙しそうな人には相談することを遠慮すること
(相手が)忙しそうだったりすると遠慮してしまうので.(事例A)
最適な相手を選ぶ 母親は最適な相談相手を選択していること
自分の中で重要度に応じて,相談先も「ここでいいや」って決めたり,相談先も決めていました.(事例F)
援助要請 救いを求める 子育て経験談を聞く 子育て経験者から経験談を聞くこと
ご近所の方,子育て中のお母さんが多いので,そういった方にどうされているのか聞いたりとか.(事例R)
専門職に相談する 子育ての悩みを専門職に相談をすること
子育て支援センターに行った時とか,新生児訪問で保健師さんが来た時に相談とかはしました.(事例E)
愚痴を聞いてもらう 母親の子育ての愚痴を受けとめてもらうこと
愚痴を聞いてもらえるだけで,気持ちは落ち着きます.(事例BB)
援助要請に抵抗感がない 人に助けてもらうことに抵抗感がないこと
(人に)助けてもらうことに(自分は)苦手なタイプではないですね.(事例T)
パートナーと協働または分担化 協働 子育てを共に行う パートナーと一緒に子育てに取り組むこと
泣き止まない時に,(パートナーが)すぐに抱っこをを代わってくれる(事例P)
負担が楽しみに変わる 子育ての負担感が楽しみに変わること
夫がいると,グチャグチャになっているのも共有できるので,何か面白い感じになるんです.(事例Q)
同志になる 子育てを通してパートナーとの絆が深まること
子どもの命を守っていく戦友みたいな絆みたいなものも出来ました.(事例C)
分担化 パートナーに葛藤を抱く パートナーにストレスを感じること
パートナーはまだ親になっていない.(事例B)
母親が負担を背負う パートナーとの育児の協力関係ができていないこと
分担というか,どちらかとその考え方が強い感じですかね.(事例AA)
祖父母の支援または自立化 自立化 ストレスになる 祖父母に相談をすると,かえって自分自身のストレスになること
祖父母が必要以上に気にしてしまって,それが私はストレスになる.(事例N)
祖父母を頼らない 祖父母を頼らないで子育てを行うこと
手伝うのも,もちろんしてもらわなかったし,そういった相談事っていうのも,しなかったですね.(事例A)
社会資源を探す 利用することができる社会資源を多様な情報源から探すこと
産後ケアを使えないかと(役所に)連絡をした.(事例P)
支えてもらう 祖父母との良好な関係で子育てをサポートしてもらえること
良好な親子関係が私と母との間にあったから,今もいろいろ話ができる(事例O)
援助要請の抵抗感 人目が気になる 否定されることを恐れる 子育ての不安を否定されることを恐れること
「こんなこと気にしているんだ」って思われたくないって多分思っている.(事例J)
負担をかける抵抗感を感じる 相談すると相手に負担をかけるので抵抗感があること
相手の負担になることはあんまり話さないことにしています.(事例AA)
家庭の事情は話しにくい 家庭内の事情が絡む子育ての悩みは話しにくいと思うこと
家庭の環境については,やっぱり言いにくい.(事例X)
虐待を疑われる不安 ひどい母親と思われたくない 子どもを否定する感情を人に話さないこと
ひどい母親だと思われるのも怖かった.(事例Z)
虐待を疑われたくない 虐待をしていると疑われることを嫌悪すること
虐待のリストがあったら,それに載ってしまうのが怖かった.(事例N)
援助要請のあきらめ感 辛さを分かってもらえない 問題が解決しない辛い気持ちを打ち明けても分かってもらえないこと
心を閉ざすって言うか,分かって貰えないんだなっていう1つになりました.(事例Y)
状況の説明が難しい 困っている状況をその通り説明することができないこと
説明しようとしても,状況を上手く説明できないことが最初は多かった.(事例H)
本音が話せない 母親の本当の気持ちを相手に話せないこと
当たり障りなく「大丈夫です」と言ってました.(事例CC)
相談しづらい 子どもの相談をしづらいと思うこと
公的な相談の所にはちょっと言えないかなっていうのはありますかね.(事例I)
オンラインの援助要請 オンラインで本音を出し合う オンライン上で本音を出し合える仲間と交流すること
アプリで匿名で思いを吐き出していました.(事例G)
匿名で気軽に相談する 匿名であれば気軽に相談できること
匿名で相談できたらちょっとうれしいなと思いますね.(事例Y)
安心を得る 救われ感をもつ 子育ての相談をして安心すること
保健師さんと話せる機会があって,すごく救われた.(事例D)
ママ友との交流(対面)で救われる ママ友との対面での交流で気持ちが楽になること
お友達と過ごさせて貰えて,その環境は凄く助かっています.(事例Q)
ママ友との交流(オンライン)で救われる ママ友とのオンラインでの交流で気持ちが楽になること
似たような人がいて,自分だけじゃないんだという安心感がありました.(事例L)

( )は著者による補足

図1  乳幼児期の子どもへの接し方に育児困難を感じる母親が援助要請をし,安心を得るプロセス

乳幼児期の子どもへの接し方に育児困難を感じる母親の援助要請のプロセスは,母親が【育児困難の知覚】をすることから始まる.これを解決し,【最適な育児の探索】をするために【援助要請】を行う.それは日ごろから行っている【援助要請しやすい関係づくり】をもとに【方法の選択】をし,《救いを求める》ことで【安心を得る】ことである.この時に母親は【パートナーと協働または分担化】また【祖父母の支援または自立化】という相互作用をしている.【援助要請の抵抗感】や対面での【援助要請のあきらめ感】がある母親は【オンラインの援助要請】を行うことで【安心を得る】.

3. プロセスを構成するカテゴリー

1) 育児困難の知覚

乳幼児期の子どもへの接し方に育児困難を感じる母親の援助要請のプロセスは,母親が【育児困難の知覚】をすることから始まる.それは 《子どもの特性》に対する《子どもへの接し方の困難感》がある.そして母親は《子育ての疲弊感》と〈子どもへのイラ立ち〉も感じる時があり,〈イラ立ちを抑える〉ように試みるが抑えきれずに《イラ立ちに支配される》様な心理的状態となり,《イラ立ちの暴発》が起きる時がある.さらに母親の〈困難感が子どもに気づかれたと思う〉ことから母子の相互作用が悪循環に陥ることがある.このカテゴリーには表2のとおり,5のサブカテゴリー,16の概念が生成された.

【育児困難の知覚】となる《子どもの特性》には,我が子が他の子どもを叩く等の〈社会的な問題行動をする〉,泣き叫ぶ等の〈不機嫌が収まらない〉,〈育てにくい気質〉がある.これらの特性に対する母親の《子どもの接し方の困難感》には,〈社会的問題行動への困難感〉,〈不機嫌をあやす困難感〉,〈気質とそりが合わない〉ことがある.そして接し方の困難感だけではなく《子育ての疲弊感》を感じている.この疲弊感は,〈試行錯誤の子育て〉,〈睡眠不足による体調不良〉,発達の遅れや子どもの命を預かる等の〈解消されない不安感〉があるためである.さらに〈子どもへのイラ立ち〉を感じる時があるため,〈イラ立ちを抑える〉ようにしている.〈子どもへのイラ立ち〉の原因は,子どもが言う事を聞かない,食事を食べない,泣き止まない,いたずらをすることがある.この〈イラ立ちを抑える〉ために,具体的には子どもと距離を置く,自分自身に言い聞かせる(例,子どもだから仕方ない,成長すれば変わる,今だけ),人に話す,声に出す,気を紛らわせることを行っている.しかしながら,抑えきれずに〈イラ立ちが限界まで達する〉と自覚し,子どもに危害を加えてしまうのではないかと,〈自分の行動に恐怖を感じる〉ほどの《イラ立ちに支配される》様な心理的状態となる時がある.そのために母親は子どもに怒鳴る,頭を叩く,暴言を吐く,物に当たる等,〈怒りを子どもに当てる〉場合もある.このような後に母親は〈自己嫌悪に陥る〉という《イラ立ちの暴発》に至る時がある.

2) 最適な育児の探索

母親は子どもに合った〈最適な育児方法を探す〉ことをしている.そのために〈子育て講座で学ぶ〉,もしくは〈ネットの世界を探索する〉ことで情報を探している.このような方法で【最適な育児の探索】を行っている.このカテゴリーには表2のとおり,3の概念が生成された.

3) 援助要請しやすい関係づくり

母親は日ごろの生活の中で【援助要請しやすい関係づくり】を行っている.このカテゴリーには表2のとおり,2のサブカテゴリーと4の概念が生成された.それは人々と《良好な関係づくり》をするために,〈幾度も顔を合わせる〉機会を持ち,〈つながりをつくる〉ようにしている.これにより,〈相手も子どもをよく知っている〉ようになり,手伝うことはないか,最近の様子はどうかと,〈向こうから声をかけてくれる〉ような《気にかけてくれる人》ができるようになる.このようなつながりは,フォーマル(児童館や保育園の保育士,役場の職員,保健師),およびインフォーマル(親戚,友人,同僚,祖母,近所の人)と両方の人間関係で構築している.このように母親は【援助要請しやすい関係づくり】を行っている.

4) 方法の選択

母親は【援助要請】をする【方法の選択】をしている.このカテゴリーには表2のとおり,2のサブカテゴリー,5の概念が生成された.それは,経済的な負担のない〈無料相談を希望する〉.フォーマルな機関の相談は,相談するまでの〈手間の要らない手段を選ぶ〉.そして相談相手に会える機会となる予防接種,健康診査,新生児訪問,子育てサークル,産後ケア事業,帰省した時等の〈タイミングを活かす〉ようにし,《負担の少ない方法の活用》をしている.さらに自分の相談に〈傾聴してもらえる人の選択〉をし,〈最適な相手を選ぶ〉ようにし,《相談相手の選択》をしている.母親はこのような【方法の選択】をしている.

5) 援助要請(コアカテゴリー)

母親は育児困難を解決する時に,日ごろから行っている【援助要請しやすい関係づくり】をもとに【方法の選択】をし,他者に《救いを求める》【援助要請】を行っている.このカテゴリーには表2のとおり,1のサブカテゴリー,4の概念が生成された.母親の《救いを求める》には3つの意味がある.1つは,専門的ではない育児の困り事を 先輩ママ,職場の先輩,姉,ママ友等から〈子育て経験談を聞く〉ことである.2つ目は,育児の悩みを〈専門職に相談する〉ことである.具体的な相談内容は,子どもが泣き止まない,母親が精神的な余裕を失っている,離乳食の進め方,発達の遅れ,子どもの問題行動等,より深刻な困難を感じていることについて専門的な助言を得ることである.相談相手の専門職とは看護師,保育士,保健師,栄養士,助産師,医師である.3つ目は,インフォーマル,フォーマルな関係を問わずに〈愚痴を聞いてもらう〉ことである.具体的な愚痴の内容は,子どもの反抗期によるストレス,イライラ感,子育ての負担感,子どもの難しい気質等である.さらに〈援助要請に抵抗感がない〉ことが《救いを求める》行動に影響をしている.

6) パートナーと協働または分担化

母親がパートナーに援助要請を行う時に,【パートナーと協働または分担化】という2つの異なる相互作用がある.このカテゴリーには表2のとおり,2のサブカテゴリー,5の概念が生成された.それは,援助要請を行った後の《協働》は〈子育てを共に行う〉ことで,〈負担が楽しみに変わる〉.さらに,我が子の命を守る〈同志になる〉という強い絆が生まれることである.育児困難を母親が感じる状況でも,パートナーとの《協働》があることは,母親の強いサポート認知につながっている.一方,母親が【援助要請】をしても,〈パートナーに葛藤を抱く〉時には《協働》にならず,〈母親が負担を背負う〉ことになり,家庭の中で子育てと仕事という役割が《分担化》されることになる.

7) 祖父母の支援または自立化

母親が祖父母に【援助要請】を行う時に,【祖父母の支援または自立化】という2つの相互作用がある.このカテゴリーには表2のとおり,1のサブカテゴリー,4の概念が生成された.それは祖父母との良好な関係で子育てをサポートしてもらい,〈支えてもらう〉ことである.もう1つは,祖父母から《自立化》することである.それは,母親が祖父母に相談をすると,必要以上に心配される等の理由から〈ストレスになる〉ことがある.そのために〈祖父母を頼らない〉で他に利用できる〈社会資源を探す〉ことで,祖父母から《自立化》した子育てを行おうとしている.

8) 援助要請の抵抗感

育児困難を感じる母親の中には《人目が気になる》こと,《虐待を疑われる不安》から【援助要請の抵抗感】がある人がいる.このカテゴリーには表2のとおり2のサブカテゴリー,5の概念が生成された.具体的には《人目が気になる》は,育児困難を【援助要請】したいが,相手から気にし過ぎている等と〈否定されることを恐れる〉,また相談相手に〈負担をかける抵抗感を感じる〉,そして子育ての相談であっても,パートナーの性格や経済的な問題,家族の別居等の〈家庭の事情は話しにくい〉と感じることである.さらに《虐待を疑われる不安》は,子どもをうるさいと思うこと,かわいいと思えないことから〈ひどい母親と思われたくない〉,また子どもにイライラする,荒く扱ってしまう,体重が増えないことを相談し,〈虐待を疑われたくない〉という不安を感じていることである.これらのことから【援助要請の抵抗感】がある.

9) 援助要請のあきらめ感

【援助要請の抵抗感】がある母親は【援助要請のあきらめ感】がある.それは人に気持ちを打ち明けても〈辛さを分かってもらえない〉,そのために〈本音が話せない〉,また困っている〈状況の説明が難しい〉ために〈相談しづらい〉と思っている.このような【援助要請のあきらめ感】がある.このカテゴリーには4の概念が生成された.

10) オンラインの援助要請

対面での【援助要請のあきらめ感】がある母親は【オンラインの援助要請】をする人がいる.それは〈ネットの世界を探索する〉.そして〈オンラインで本音を出し合う〉.もしくはオンラインの〈匿名で気軽に相談する〉ことである.このカテゴリーには3の概念が生成された.

11) 安心を得る

母親は育児困難に対し【援助要請】(対面もしくはオンライン)をし,気持ちが楽になった等と〈救われ感をもつ〉ことで【安心を得る】.そして,〈ママ友との交流(対面)で救われる〉,また〈ママ友との交流(オンライン)で救われる〉ことである.これは【援助要請】(対面もしくはオンライン)をする機会と同時に,ママ友と交流する機会があることで,救われていると感じていることである.このような環境があることは,孤立せずに【援助要請】し,【安心を得る】ことにつながっている.このカテゴリーには表2のとおり,3の概念が生成された.

Ⅳ. 考察

本研究は乳幼児期の子どもへの接し方に育児困難を感じる母親が援助要請をするプロセスを明らかにする目的で調査を行った.援助要請の研究の中で,子どもへの接し方の困難感に焦点を当てた研究は初めての試みである.その結果,乳幼児期の子どもへの接し方に感じる困難感に伴うイラ立ちが子ども虐待のリスクを高めること,一方で援助要請のプロセスを促進し,安心を得ることが子ども虐待の予防に有効であることを示唆する新たな知見が得られた.これらについて以下に考察をする.

乳幼児期の子どもへの接し方に育児困難を感じる母親の援助要請のプロセスは,インフォーマル,およびフォーマルな関係に限られることなく,日ごろから良好な関係にある人を援助要請の対象として認知をし,負担の少ない方法を活用しながら最適な相談相手を選択し,救いを求めていた.小倉(2015)は援助要請を行う者が対象者をどのように認知しているかという「対象認知要因」が促進・抑制要因になると述べている.本研究の結果から,母親が援助要請をすることができる対象を良好な関係にある人と認知をし,援助要請を行う負担を軽くすることにより,母親の援助要請のプロセスは促進されると考えられる.

一方で,援助要請を抑制するプロセスもあった.それは人目が気になること,虐待を疑われる不安があるために援助要請の抵抗感を感じ,それがあきらめ感となり,対面での援助要請のプロセスを抑制していた.そしてオンラインでの援助要請につながっていた.この抵抗感の1つは《人目が気になる》という援助要請に対する他者の反応を気にしていることである.永井(2016)は母親の援助要請は,自身の子育てに対する非難が援助要請を抑制するのではないかと推測している.本研究の結果は永井(2016)の推測を支持している.もう1つの抵抗感は《虐待を疑われる不安》である.これは子どもにイライラすること等を人に話すことにより,虐待をしていると疑われるのではないかという不安感である.これは虐待という母性の規範から逸脱しているとラベルを貼られることに対するスティグマ的な不安である.スティグマとは,適合的ではない,望ましくない種類の属性のことである(Goffman, 1986/2001).そしてスティグマは,メンタルヘルスの問題がある人に精神疾患であるというラベルを貼り,自尊心を低下させ,援助要請の阻害となることが明らかになっている(Corrigan, 2004).このCorrigan(2004)の援助要請の知見は,本研究で認められた母親が虐待というラベルを貼られることへの不安から援助要請をしにくい心理と類似している.このような母親の中には,身近な人々や公的機関への援助要請は行わず,オンライン上の匿名の仲間と交流する機会で本音を出し合い,虐待を疑われることを回避しながら安心を得ている人がいた.山本(2022)は援助要請の抵抗感の1つに評価への懸念があると述べている.これらから母親が抱くネガティブな評価への懸念を少なくすることが,援助要請を促進すると考えられる.

さらに,乳幼児期の子どもへの接し方に感じる育児困難により惹起された母親のイライラ感は,援助要請を行い,救われ感をもてることにより母親は安心を得ることにつながっていた.この結果は,援助要請をすることが子ども虐待の予防に有効であることを示唆する結果である.このように強い不安を感じた時に,安心感を回復する行為は,Bowlby(1969/1991)により生物の存在に欠かせぬ本能的行動であり,アタッチメントと命名されている.このアタッチメントは,乳幼児期には対象者への接近等の行動により顕著に観察することができる.しかし,この内的に形成されたアタッチメントは,成人期においても認められることが明かにされている(Sroufe et al., 2005/2022).本研究では,母親は乳幼児期の子どもへの接し方に感じる育児困難を解決するために援助要請を行うことによってアタッチメントという安心感を得ていることを示唆する結果であった.

以上の結果から看護実践への3つの示唆を以下に述べる.乳幼児期の子どもへの接し方に育児困難を感じる母親の援助要請のプロセスは,日ごろから良好な関係にある人とのつながりをもとに最適な相手を選び,救いを求めていた.これが母親の援助要請を促進するため,看護職は母親が育児困難を感じた時に援助要請をしやすいように,母親とその周囲の人々との良好な関係づくり(例.母親に支持的な声かけを行う等)の重要性を社会全般に啓発することである.2つ目は乳幼児期の子どもへの接し方に感じる育児困難,およびそれを解決するための援助要請のプロセスについて,妊婦やそのパートナーに出産前の健康教育等で知識の提供をすることである.これは母親の援助要請の抵抗感が低下する1つの方法になると考えられる.3つ目は本研究では乳幼児期の子どもへの接し方に育児困難を感じる母親は,日ごろの対人関係に基づき援助要請を行っていることが明らかになった.この結果から,対人関係を構築することが苦手な母親,特に援助要請に抵抗感を感じやすい人は,子どもへの接し方に育児困難を感じても対面での援助要請をしにくいことが推測される.そのため,看護職は母親のこれまでの生活歴の中で対人関係の形成の仕方や援助要請の抵抗感についてアセスメントをすることにより,継続的支援の必要性を判断することに活かせると考えられる.これは母親の育児困難への援助要請行動を予測し,子ども虐待を防止する予防的介入になると考えられる.このように看護職が乳幼児期の子どもへの接し方に感じる育児困難とそれを解決する援助要請のプロセスに関する知識の提供,および母親の援助要請行動の予測と予防的介入を行うことにより,母親が育児困難を感じた時に援助要請しやすい環境づくりにつながると考えられる.

本研究の限界と課題は,オンライン調査による影響があることが考えられる.オンラインの活用により,広域に居住する人々が研究参加者になる機会が大幅に拡大した.一方で,非言語的情報を観察する機会が限られている可能性が考えられる.また,オンラインを利用することができない人は研究参加者に含まれていないことも考えられる.

そして,広汎性発達障害がある子どもの母親は,子どもの行動に振り回されながらも付き合い続けざるを得ない困難さがある(今井ら,2018).そのため母親が援助要請を行うだけで安心することができないことが推測できる.発達障害やその疑いがある子どもの母親が援助要請を行い,安心を得るまでのプロセスは今後の研究課題である.これらの限界と課題はあるが,子育て支援に貢献するプロセスが明らかになったと考えられる.

Ⅴ. 結論

乳幼児期の子どもへの接し方に育児困難を感じる母親の援助要請のプロセスを明らかにする目的で調査を行った.このプロセスは,母親は日ごろの良好な関係にある人を援助要請の対象者と認知をし,負担の少ない方法で最適な相談相手を選び,救いを求めていた.他者からのネガティブな評価への懸念は援助要請の抵抗感となり,プロセスを抑制していた.母親は援助要請を行い,救われ感をもつことで安心感を得ていた.看護職は社会全体,妊婦およびパートナーへ,このプロセスを啓発すると共に,母親の援助要請行動の予測と予防的介入を行うことにより,援助要請をしやすい環境づくりに貢献すると考えられる.

付記:本論文の内容は,第82回日本公衆衛生学会総会において発表した.

謝辞:インタビューに快諾してくださった皆様と,リクルートの協力機関の皆様に深く感謝を申し上げます.また,M-GTAの分析のスーパーバイズをしてくださった,姫路大学の唐田順子先生を始め,助言をいただいたM-GTA研究会の先生方に深く感謝を申し上げます.筑波大学の齋藤環先生,大谷保和先生,大学院生の皆様に深く感謝を申し上げます.

利益相反:本研究における利益相反は存在しない.

著者資格:KYは研究の構想,デザイン,研究データの取得,分析,解釈,論文執筆を行った.NMは研究の構想,デザイン,データの取得,分析,解釈に貢献し,研究のあらゆる側面に責任を負った.すべての著者は最終原稿を読み,承認した.

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