日本看護科学会誌
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原著
臨床看護師による保存期慢性腎臓病入院患者の行動変容を促す療養援助のプロセス
新井 里美中田 ゆかり比嘉 勇人
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2025 年 45 巻 p. 178-188

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Abstract

目的:臨床看護師が実践している入院中の保存期慢性腎臓病患者の行動変容を促す療養援助のプロセスを明らかにすること.

方法:腎臓病指導を行う臨床看護師10名に半構造的面接を実施し,修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ(M-GTA)を用いて分析した.

結果:臨床看護師が保存期慢性腎臓病患者とともに患者自身が取り組もうと思える療養行動を見出すプロセスは,【患者の療養体験と希望を知覚する】ことを起点とし,【患者に承認してもらう】関係性を築けると【立ち止まって確認したり説明する】【患者とこころを合わせ療養行動を見出す】援助につながり,行動変容を促進できる.話をきかせてもらっても【及び腰になる】【一方的に指導する】という行動変容を促すことができないプロセスも見られるが,【チームで支援する】ことで行動変容を促す療養援助を継続できる.

結論:患者の関心事について【患者の療養体験と希望を知覚する】ことを通して顔なじみとなり【患者に承認してもらう】関係性を築くことが,行動変容を促す療養援助において重要であることが示唆された.

Translated Abstract

Purpose: This study aims to clarify the process of how clinical nurses’ recuperation support promotes behavior change in hospitalized patients with predialysis chronic kidney disease.

Methods: Semi-structured interviews were conducted with ten clinical nurses who provided kidney disease guidance to hospitalized patients, and the results were analyzed using the Modified Grounded Theory Approach (M-GTA).

Results: In recuperation support, the clinical nurse works with the patient to find recuperation behaviors in which the patient is willing to engage. In this process, the nurse begins by “perceiving the patient’s recuperation experiences and wishes.” This leads to the nurse “getting approved by the patient,” “taking time to confirm the patient’s words (thoughts) and explain things to the patient,” and “building rapport and working with the patient to find suitable recuperation behaviors for the patient,” which promote the patient’s behavior change. When the nurse listens to the patient’s story, actions that may suppress behavior change, such as the nurse “being hesitant” and “giving one-sided guidance,” are still observed. However, continuous recuperation support that promotes behavior change can be accomplished by “supporting the patient as a team.”

Conclusion: This study suggests that “getting approved by the patient” by “perceiving the patient’s recuperation experiences and wishes” is important in helping the nurse provide recuperation support that promotes behavior change in hospitalized patients with chronic kidney disease.

Ⅰ. 緒言

わが国の慢性腎臓病(Chronic Kidney Disease: CKD)患者は成人の約8人に1人に達し,21世紀に出現した新たな国民病といわれている.CKDは糖尿病,高血圧などの生活習慣病が背景因子となって発症することが多く,循環器系疾患や高齢化に伴う合併症が大きなリスクとなり,患者のADLやQOLを阻害しているため(日本腎不全看護学会,2021),その発症・進展の抑制には生活習慣の改善が重要である.そして生活習慣病の改善には患者自身による自己管理が必要不可欠であり,その自己管理の手段に対する教育または療養指導は看護師の重要な責務でありながら,複雑な背景をもつ保存期CKD患者の療養指導時の困難が明らかとなっている(田中ら,2015).すでに各施設で腎臓病指導マニュアルは導入されているものの入退院を繰り返すことも多く,入退院を繰り返す保存期CKD患者は「自分なりになんとか工夫して生活していた」が療養制限との折り合いがつかず入院となっていた体験が明らかとなっている(新井ら,2020).このように,効果的な介入が行えていない背景には,看護師がCKD患者の療養生活への思いや性格傾向を十分に捉えることができておらず患者と医療者の志向や方向性が一致していないこと,CKD患者に対する対人関係を踏まえた効果的な教育プログラムが確立されていないことが挙げられる.そのため,型通り知識を提供するだけの指導ではなく患者のこれまでの経験を尊重した援助が患者の安心感や行動変容への動機づけとなり,腎疾患をもちながらも自分らしい生活が営めるようになると考えた.

腎臓病看護に関しては透析患者を対象とした研究が多くみられるが,近年透析導入前の保存期CKD患者の看護介入への示唆も報告されており(飯田・小林,2018川瀬・岡,2019新井ら,2020西岡・森田,2020竹山ら,2021金子・野呂,2022Schrauben et al., 2022),CKD保存期ケアガイドも示されている(日本腎不全看護学会,2021).さらに,アプリの開発・普及など患者のセルフマネジメントの効率化を目指す研究や(高橋ら,2017Jung-Won et al., 2022),尺度開発の研究も報告されるようになってきており(Chiu-Chu et al., 2012梶原・森本,2020),これらは近年の在院日数短縮に伴う患者の包括的理解における評価・援助として効率的なツールであると言える.しかし,CKD患者の予後は原疾患により大きく異なることから複雑な経過をたどること,さらに腎臓病は不可逆的な疾患であることから,生活習慣改善のための行動変容への動機づけやその生活習慣の維持には,知識を提供するだけの腎臓病指導ではなく,個々のCKD患者に適した信頼関係構築と生活習慣の改善を意図したコミュニケーションスキルを用いた療養援助が必要である.特に透析前の時期である保存期への個別的な療養援助により患者の行動変容を促し,いかに透析導入を遅らせたり,透析導入に至らないようにすることができるかが患者のQOLにも大きくかかわってくる.また,行動変容を促す看護として患者の生きがいを支えるEncourage Autonomous Self-Enrichment program(EASEプログラム)(岡,2018)が開発されていることからも,CKDの治療と生活は大きく影響し合っているため,患者が大切にしたい生活とそれにフィットする療養との調整(安保・武藤,2010)には,人の介在が不可欠である.看護技術を活用する前提として看護師と患者の援助的人間関係の形成が患者の回復に影響することは明らかであり,高度医療が発展した現代においても患者と看護師との相互性に着目することは重要である.そこで本研究では,臨床看護師が実践している入院中の保存期CKD患者の行動変容を促す療養援助のプロセスを明らかにしたいと考えた.

Ⅱ. 研究方法

1. 用語の定義

1) 行動変容

行動変容とは,外に現れた行動のみならず,気づきを持ったり,感情的な体験をしたり,考え方が変わることなども含むことから(津田・石橋,2019),本研究では,臨床看護師の援助により患者が疾患の重症化予防のために生活習慣を変えることに関心を示したり重要性を認識すること,また患者が取り組めそうだと自信を持てる発言がみられる,または実際に取り組めることとする.

2) 療養援助

生活習慣の改善と病気の進行を抑えるための行動変容を促す指導や支援を含む援助とする.

2. 研究デザイン

質的記述的研究デザイン

本研究では,修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ(Modified Grounded Theory Approach;以下M-GTAとする)を用いて分析した.本研究は患者の行動変容を促す援助プロセスを明らかにすることを目的としているため,人間の社会的相互作用に関係した人間行動の説明と予測に有効であり,プロセス的特性を持つ現象を明らかにする研究に適している(木下,2020)M-GTAを選択した.

3. 研究参加者

腎臓内科病棟にて腎臓病看護に携わる看護師とした.患者の行動変容を促す療養援助ということでは,新人看護師は腎臓病指導を自立して行っていない可能性があるため,新人看護師を除外した.

4. データ収集方法と調査期間

1) 属性

年齢,性別,臨床経験年数,腎臓内科病棟経験年数を属性とした.さらに,患者の行動変容のためには,プロフェッショナルなスキルが求められていることや(河口,2018),腎臓病看護に携わる看護師のコミュニケーションスキルとスピリチュアリティの関連が認められていることから(新井ら,2023)スピリチュアリティ(Spirituality評定尺度B:SRS-B)(比嘉,2006),援助的コミュニケーションスキル(援助的コミュニケーションスキル尺度:TCSS)(比嘉ら,2014杉山・比嘉,2019)を属性として調査した.SRS-Bは合計点数(SRS-B評点)が高いほど肯定的評価であることを示し,TCSSは得点が高いほど援助的コミュニケーションスキルが高いことを示す.

2) 半構造的面接

研究参加者にはプライバシーの確保できる施設内の一室を借り,30分程度の半構造的面接を実施した.開始時に属性に関する質問紙を記載してもらい,参加者の同意を得てインタビュー内容をICレコーダーで録音し,逐語録を作成した.質問内容は,透析導入に至っていない保存期CKD患者への腎臓病指導時に気をつけていること,患者の行動変容を促す援助の現状や課題について,コミュニケーションにおける自己の傾向などである.

3) 調査期間

データ収集は,2022年11月~2023年3月の期間で実施した.

5. データ分析方法

データ分析方法はM-GTAを用いた.M-GTAでは方法論的限定によって分析テーマ,および分析対象者を確定化して分析を行う.また,得られたデータに密着した分析となるように分析テーマは必要に応じて調整していく,というM-GTAの分析テーマの設定手順に従い,分析テーマは「臨床看護師が保存期CKD患者とともに,患者自身が取り組もうと思える療養行動を見出すプロセス」,分析焦点者は「腎臓病指導を行っている臨床看護師」とした.分析の手順については,よりデータが豊富な事例から概念生成していくというM-GTAの手続きに沿って行った.分析は,逐語録をもとに保存期CKD患者の行動変容を促すような腎臓病の療養援助に関連する部分を抜粋して分析ワークシートを作成し,ヴァリエーションを充実させた.次に分析ワークシートを用いて行動変容を促すための療養援助として保存期CKD患者が取り組もうと思える療養行動をともに見つけるプロセスの文脈を意識しながら,概念を生成し,複数の概念が生成された段階で概念間の関係を検討した.さらに,概念の取捨選択を繰り返し,カテゴリ生成も同時に検討した.カテゴリは保存期CKD患者と看護師の相互行為であることから,対人関係理論に基づき看護師が行う専門的な支援としての表現を意識しながら命名した.最終的に,概念とカテゴリ,中心的カテゴリの関係を図式化し,ストーリーラインをまとめた.なお,概念とカテゴリの生成が追加されないと判断し,生成した概念とカテゴリを用いて分析テーマの現象を説明できることを研究者間で確認した時点で逐語録の分析を終了した.

結果は,看護教育研究者とM-GTAによる研究および指導経験が豊富な研究者間の検討により確証性を確保し,研究参加者にメンバーチェッキングを実施することにより結果の信憑性を確保した.

6. 倫理的配慮

腎臓内科病棟管理者より紹介された研究参加者候補に研究依頼文書を用いて研究内容を説明し,研究への参加は自由意思によること,参加・不参加の保障,同意を撤回しても不利益のないこと,個人情報の守秘と協力,学術資料以外への不使用などについても説明した.研究参加者からは,以上に関する同意書への署名を得た.本研究は金沢医科大学大学生命科学・医学系研究倫理審査委員会および富山大学の人間を対象とし医療を目的としない研究倫理審査委員会の承認(No. I717およびJ2022008)を得て実施した.

Ⅲ. 結果

1. 研究参加者の概要(表1

研究参加者は女性10名であった.平均年齢は32.5 ± 7.4歳,平均臨床経験年数は10.3 ± 6.8年,平均腎臓内科病棟経験年数は3.5 ± 1.7年,SRS-B評点は7.6 ± 1.7点(10名が理論的中央値以上),TCSS得点は66.4 ± 10.4点(9名が理論的中央値以上)であった.

表1 研究参加者の概要

ID 性別 年齢 臨床経験年数 腎臓内科病棟経験年数 SRS-B得点
(range: 0~10)
TCSS得点
(range: 18~90)
面接時間
(分)
A 20代 6 6 9 74 29
B 20代 3 3 7 53 33
C 40代 22 4 8 64 31
D 20代 4 4 5 84 27
E 30代 9 7 9 78 24
F 30代 12 2 10 56 33
G 30代 13 3 5 56 21
H 30代 10 3 6 63 32
I 40代 22 1 9 77 46
J 20代 2 2 8 59 36
平均 32.5 ± 7.4歳 10.3 ± 6.8年 3.5 ± 1.7年 7.6 ± 1.7点
10人が理論的中央値5以上
66.4 ± 10.4点
9人が理論的中央値54以上
31.2 ± 6.5分

2. プロセスの構成概念とカテゴリ(表2

分析の結果,生成された【カテゴリ】は7,〈概念〉は21であった.援助プロセスを構成する7つのカテゴリについて,特徴的な概念を用いて説明する.なお文中においてインタビューのデータは斜字体で示す.

表2 臨床看護師が保存期CKD患者とともに患者自身が取り組もうと思える療養行動を見出すプロセスを構成する概念とカテゴリ

カテゴリ 概念 定義
患者の療養体験と希望を知覚する 希望を把握する 療養行動が患者の希望と一致(関連)できるように患者が大切にしていることを把握すること
これまでの話をきかせてもらう 時間調整を行ってベッドサイドへ行き患者の原疾患に伴うこれまでの療養体験の話をきかせてもらうこと
押し付けずに話をきく 指導を押し付けずに,療養行動の共通理解のために話をきくこと
患者に承認してもらう 顔なじみになる 信頼を得て本心を語ってもらえるよう対話を通して顔や名前を覚えてもらうこと
同じスタートラインに立つ 患者のこれまでの療養生活を踏まえ今後の療養行動を一緒に考え始めること
立ち止まって確認したり説明する 立ち止まって説明する 患者の反応も見つつ立ち止まって理解度を確認しながら患者主体で自己決定できるよう臨機応変に説明していくこと
腎代替療法の見通しを本人の言葉で語ってもらう 患者がどの程度腎代替療法などの治療への見通しを理解しているのか患者の言葉で語ってもらい,思いを確認すること
腎臓病指導の経験を活かす これまでの指導を通して知識や経験が積み上がり余裕をもって患者に調和した援助ができること
患者とこころを合わせ療養行動を見出す 実際に一緒にやってみる 患者のこれまで行ってきた工夫を確認しながら根気強く実際に一緒にやってみること
タイミングを合わせる 患者の状態を見極め,指導内容と患者の受け入れ状況のタイミングを合わせアプローチすること
患者に響く対応を工夫する できていることを意識的にポジティブに言い換えるなど患者のモチベーションを上げるような患者に響く対応を工夫すること
取り組めそうな療養を提案する 複雑な背景をもつ患者にとっての一番を考えながら療養行動をアレンジして提案すること
楽観的で柔軟に伝える 行動変容の責任を共有しつつも,見通しを少し明るくできるように楽観的に捉える伝え方をすること
チームで支援する 指導はチームで継続する 支援内容を看護チームとして共有し統一した指導を継続することが必要であると考え行動すること
説明不足を補う 看護師の経験によって説明できる範囲が異なるため患者の思いと指導内容の振り返りをしつつ補足説明を行うこと
医師と協働する 治療方針を決定している医師と協働しながら患者の療養を支援すること
セルフケアを調整する セルフケア能力の査定を行い,不足部分は家族や多職種と連携しながらあの手この手であきらめずに調整すること
及び腰になる 指導にジレンマを感じる 業務の忙しさやタイミングも合わず効果的な腎指導にジレンマを感じていること
自信がない 看護師としての経験や知識技術に自信をもてずにいること
一方的に指導する マニュアル通りの指導をする 経験や知識が十分でないために計画に沿ったマニュアル通りの指導をその日の業務として行うこと
一方的に教える 患者の反応を確認せずに一方的に教えること

1) 【患者の療養体験と希望を知覚する】

このカテゴリは,保存期CKD患者への行動変容を促すプロセスの起点を示している.患者の苦しみなどの関心事を理解し,その関心事と関連付けて行動変容への動機づけができるよう療養行動に対する共通理解を形成するために,まずは話をきかせてもらうということが援助プロセスの重要な起点となる.

〈希望を把握する〉

やはり患者さんがどう思っているかということが一番大切なことなのかなと思うので,それからそれるようなことをいくらお伝えしたとしても,うまくいかないと思っているので,まずはしっかりと本心というか,本音みたいなところをまずきかせていただくところから関わるようにしています.患者さんが一番何を大事にしているかとか(看護師I)

〈これまでの話をきかせてもらう〉

まずはひととおり話をきくということはしていますね.ちゃんときくということを1回でもすると,多分すごく関係性が築けて,この人ならという.(看護師F)

2) 【患者に承認してもらう】

このカテゴリは,保存期CKD患者の行動変容を促進する重要なプロセスであり中心的カテゴリとして捉えた.看護師は患者なりに気を付けていた療養行動を尊重し根気強くきいていくことで,患者の本心を話してもらえる関係性や一緒に考え始めるという援助関係の基盤となる【患者に承認してもらう】プロセスにつながる.

〈顔なじみになる〉

腎内の患者さんはもう入退院を繰り返していて,もう看護師さんと顔なじみみたいな.「はーい」「また来たよ」みたいな感じなのですが,関係性ですよね.響く響かないのは多分,「この看護師さんだったら話せるわ」という関係性をやはり.(看護師F)

〈同じスタートラインに立つ〉

いきなり「指導しますね」という入り方ではなくて,本人さんと一緒にちょっと頑張ろうという,同じスタートみたいな感じの方が,患者さんも意識してくれるかなと.(看護師A)

3) 【立ち止まって確認したり説明する】

このカテゴリは,保存期CKD患者に承認されるプロセスを経て看護師の話を聞いてもらえる関係になったことで,立ち止まって確認したり説明することができるプロセスを示している.

〈腎代替療法の見通しを本人の言葉で語ってもらう〉

患者さんが今の病気のことをどうやって捉えているかというのをいつも確認しています.(看護師F)

〈腎臓病指導の経験を活かす〉

経験も積んできたり,いろいろな患者さんを見たりしたら,基本的な知識プラス,いろいろな患者さんのパターンも見てきたので,患者さんにより具体的な情報提供ができるようになったかなというのもあります.(看護師A)

4) 【患者とこころを合わせ療養行動を見出す】

このカテゴリは,保存期CKD患者の療養生活を尊重したうえで,コミュニケーションスキルを駆使することで相互に影響し合い行動変容にむけて取り組もうと思える療養行動を一緒に見つけ出していく看護師と患者との個別的なプロセスの最終局面を示している.

〈タイミングを合わせる〉

栄養士さんとどんな話をしましたかというのは本人さんからのお話をきいて,「じゃあそこを気を付けていかんなんね」と声掛けしていくような形でしています.(看護師J)

〈取り組めそうな療養を提案する〉

リスクは伝えた上で.パンフレットの,毎日2回,血圧も,体重も.そんな,自分だってできる自信はないしなとかと思ったのもあって,それならもう,習慣付けるみたいなのはどうですかとか,せめて週3回,朝だけでもいいし,みたいに言っていくと,案外「ああ,それなら忘れずできるかも」とか.そのぐらいに.なってきたかなと思います.(看護師D)

5) 【チームで支援する】

このカテゴリは,腎臓病指導を行っている臨床看護師が看護チームとして補い合いながら保存期CKD患者の希望に沿った行動変容を促すために取り組んでいるプロセスを示している.

〈指導はチームで継続する〉

パンフレットも,最初は透析導入ぐらいしかなかったのを,去年とか,チーム活動でステロイドのパンフレットを作ったり,病棟としても,ちょっとずつ患者統一になるようにやっていっているという段階という感じで.基本,受け持ちができたらいいのですが,やはり毎日勤務しているわけではないので,チーム内で,どこまで指導が終わっているのか誰が見ても分かるようにして,順番に1日1項目とか.(看護師B)

〈セルフケアを調整する〉

やはり最終,セルフケアみたいなところになってくると.だから本人次第だと思います.その人ができる範囲内でいかにセルフケア能力を引き出して,それを最大限に高めて,自宅でも継続して実施できるようなことはどういうことだろうと考えています.多職種で関わっていくということもどんどんやっていかないとと思います.(看護師I)

6) 【及び腰になる】

このカテゴリは,保存期CKD患者の行動変容を促すためにかかわろうとしていても消極的になってしまうプロセスを示している.

〈指導にジレンマを感じる〉

なかなか指導が入っていかない.「自分は今困っていない」と.「言われたから入院している」みたいな感じなので.体がパンパンにむくんできてひどいとなったら,たぶん分かるのでしょうが,自覚症状のない人もいますし.(看護師G)

〈自信がない〉

患者さんの思いをきくときに結構,患者さんにこれを言ったらどう思うのかなというのを気にして,あまり踏み込めないところはあるかもしれません.(看護師H)

7) 【一方的に指導する】

このカテゴリは,保存期CKD患者の行動変容を促すためにマニュアル通りに指導するが患者が取り組もうと思える療養行動は見出せないプロセスを示している.

〈マニュアル通りの指導をする〉

病棟のマニュアルを使い,その順序に沿ってといいますか,逸脱することがないように,治療経過はもう一通り分かるようになってきた.(看護師I)

〈一方的に教える〉

患者さんのところにも行くけど,自分の伝えたいことというか,指導にしたら,やってもらいたいことばかりわーっと言っていたのではないかなと思います.新人の頃だと,ある意味一方的にというか,書いてあるとおりすべて,一言一句言わないといけないと思って.(看護師D)

3. ストーリーライン(図1

臨床看護師が保存期CKD患者とともに,患者自身が取り組もうと思える療養行動を見出すプロセスは,まずベッドサイドへ行き,【患者の療養体験と希望を知覚する】ことからはじまる.保存期CKDの予後は原疾患により大きく異なり複雑な経過をたどることも多いため,これまでの話を根気よくきいて患者の療養体験を知っていくことで,自分のことをよく知っている看護師であると【患者に承認してもらう】ことができる.患者は承認した顔なじみの看護師の話はきいてくれるようになるため,腎代替療法を見据え【立ち止まって確認したり説明する】ことができる.患者の言葉で見通しを語ってもらうことで【患者とこころを合わせ療養行動を見出す】援助につながり,この相互作用が患者の行動変容を促す.このような援助をスタッフ間で共有し【チームで支援する】ことは,患者の行動変容促進に影響する.一方,患者の話をきく中で【及び腰になる】ことや【一方的に指導する】こともあるが,看護チームとして補い合いながら【チームで支援する】ことが患者の行動変容を促す援助に影響する.

図1  臨床看護師が保存期CKD患者とともに患者自身が取り組もうと思える療養行動を見出すプロセス

臨床看護師が保存期CKD患者の関心事について【患者の療養体験と希望を知覚する】ことを通して【患者に承認してもらう】ことが,その後の行動変容を促す援助にかかわるため,このプロセスにおける中心的カテゴリは【患者に承認してもらう】ことである.これは,患者の複雑な療養生活を尊重して〈これまでの話をきかせてもらう〉ことで,今後の療養行動を一緒に考え始めるという〈同じスタートラインに立つ〉という概念で構成される.この【患者に承認してもらう】プロセスを通して〈腎代替療法の見通しを本人の言葉で語ってもらう〉ことによって,看護師は〈腎臓病指導の経験を活かして〉患者に【立ち止まって確認したり説明する】ことができる.また顔なじみの看護師だからこそ,〈実際に一緒にやってみる〉ことを通して療養行動における具体的な課題を一緒に確認でき,効果的に〈タイミングを合わせる〉援助が行えたり,患者を尊重しこれまでの療養行動を労い意欲が失われないような〈患者に響く対応を工夫する〉声かけができるようになる.また,これまでの〈腎臓病指導の経験を活かす〉ことで,入院中の保存期CKD患者が〈取り組めそうな療養を提案する〉ことができ,さらに〈楽観的で柔軟に伝える〉ことができると,患者が取り組もうと思えるような行動変容を促す【患者とこころを合わせ療養行動を見出す】援助につながる.

Ⅳ. 考察

1. 腎臓病指導を行う臨床看護師が保存期CKD患者とともに患者が取り組もうと思える療養行動をともに見つけるプロセスの特徴

1) 患者の行動変容を促すプロセス―顔なじみになるということ―

本研究結果より,保存期CKD患者の行動変容を促す療養援助プロセスにおいて,【患者に承認してもらう】ことが行動変容を促すための重要なプロセスであり,中心的カテゴリであることが示された.CKD患者は自覚症状がほとんどないにもかかわらず外来や入院で腎臓病指導を受ける中で,生活で気を付けることを何度も注意されてきた経験があると考える.先行研究(新井ら,2020)からも,患者の理解力や理解度も影響するが指導内容については患者自身もある程度分かってはいるけれども,自分の実際の生活と折り合いがつかないのである.一方で,長年の生活に自信やこだわりをもっている患者も少なくない.それゆえに自分のことを分かってもらえている顔なじみになった看護師には関心が向けられ,その看護師の言葉だからこそ,患者に受け入れてもらえるようになる.患者は入院という危機的状況において,いつでも病棟にいる看護師と〈顔なじみになる〉こと,そして指導というパターナリズムになりがちな態度ではなく〈同じスタートラインに立っている〉という対等な立場を意識できる感覚は,患者の大きな安心感につながり,このプロセスを踏まえるからこそその後の行動変容に影響すると考えた.看護師が【患者の療養体験と希望を知覚する】プロセスは,【患者に承認してもらう】前提として患者の苦しみなどの関心事を理解し,その関心事と関連付けて行動変容への動機づけができるように,療養行動に対する共通理解を形成するための重要な起点である.苦しみに意識の焦点をあて,それを聴こうとする者は相手に「援助者」として現象する,つまり指導という「管理・抑圧」の関係から真の援助関係に変化させる.さらに,対人援助の関係性には関係の循環性という特性があり,互いの意識の思考性に応じて引き起こされる相手の反応が,双方の意識の志向性を高め,関係を増幅する(村田,2019)ということや互恵モデル(石川,2019)からも,看護師は患者の話をきかせてもらい患者は看護師が話をきいてくれるからこそ,その看護師と対話できるようになる.

患者の行動変容を促すために患者が取り組もうと思える療養行動を看護師とともに見つけていくプロセスは,信頼関係構築のプロセスともいえる.看護師と患者の関係のプロセスそのものが看護であり,この関係を確立することが看護の目的を達成するための重要な手段であるととらえているPeplouやTravelbeeの理論をふまえると,本研究の行動変容を促す療養援助プロセスとしての【患者とこころを合わせ療養行動を見出す】プロセスは,腎臓病指導を行っている臨床看護師と保存期CKD患者とのラポールの深まり(Travelbee, 1971/1974)を示しているととらえることもできるだろう.また看護師は患者を生活者としてとらえ全人的に理解し援助することが求められていることからも,本研究の【患者の療養体験と希望を知覚する】【患者に承認してもらう】【立ち止まって確認したり説明する】【患者とこころを合わせ療養行動を見出す】プロセスは,病気を治療する医者とでもなく,そのほかの専門的な部分の回復を援助する医療者とでもなく,生活する人を支援する看護師とだからこそのプロセスであると考える.以上のことから,保存期CKD患者の行動変容を促す療養援助のプロセスとして,自分のことをよくわかってくれている看護師だと【患者に承認してもらう】ことは臨床で活用できる重要なポイントであるといえる.

患者の行動変容につながる「看護の教育的関わりモデル」(河口,2018)では,プロセスの第1期として,熟練看護師が患者の言動が気になって取りかかった【とっかかり/手がかり言動と直感的解釈】,第2期として,【生活者としての事実とその意味】【病態・病状の分かち合いと合点化】という概念があることが明らかとなっている.このプロセスは,本研究の【患者の療養体験と希望を知覚する】【立ち止まって確認したり説明する】【患者とこころを合わせ療養行動を見出す】プロセスと一致していると考えられるが,【患者に承認してもらう】プロセスはみられていない.また,CKD患者の在宅療養を支える外来看護においては,患者の病状への関心を引き出す看護や日常生活への視点,および腎代替療法が必要となることを想定し,長期的視野を持って計画的にかかわることが必要であることなどが報告されている(杉田,2015竹中ら,2019).関心を引き出す援助としては,【患者の療養体験と希望を知覚する】,そして今後を見据える〈腎代替療法の見通しを本人の言葉で語ってもらう〉プロセスは本研究と一致していると考えるが,【患者に承認してもらう】プロセスはみられなかった.透析患者の自己管理支援(山本,2017)では,【理解と関心を示す】【真摯な態度】など患者の生活と自律性を重視する看護感が自己管理支援に最も影響を与えていた要因であり,多くの看護師はその重要性を認識しているものの実践に至っていない現状から,具体的な教育方法が望まれている.本研究の【患者に承認してもらう】プロセス,およびその後の概念における具体的なプロセスは,入院中の保存期CKD患者の行動変容を促す療養援助プロセスとして新規性があると言える.

また,研究参加者全員はSRS-B評点およびTCSS得点が概ね中程度以上であり,スピリチュアリティおよび援助的コミュニケーションスキルが高い傾向を示す群であったと言える.「看護の教育的関わりモデル」(河口,2018)では,PLCの程度により効果(患者の変化すなわち行動変容というアウトカム)に顕著な差が現れることが課題であると報告されているとおり,本研究でもスピリチュアリティおよび援助的コミュニケーションスキルが高い傾向を示す群であったことが,行動変容を促すプロセスに影響を与えたと考えられる.

2) 患者が取り組もうと思える療養行動をともに見出せないプロセス―一方的な指導―

本研究では,看護師は患者の行動変容を促すために一通り話をきかせてもらっても療養援助に自信がもてず患者が取り組もうと思える療養行動を見出せないプロセスも生成された.これは行動変容を促す療養援助を検討した本研究で明らかとなった重要な点であると考える.関心をもって患者に近づきどれだけコミュニケーションを駆使しても,お互いに納得したり同調することが難しく【及び腰になる】状況や,看護師の経験値によっても【一方的に指導する】状況がある.慢性疾患の患者は長年にわたり複雑な体験をしているため,スピリチュアルペインの存在も報告されており(Tanyi et al., 2006川瀬・岡,2019),保存期CKD患者の療養体験(新井ら,2020)でも患者の揺れ動く心情が明らかとなっている.このことからも,腎臓病という不可逆の疾患で保存期という時期だからこそ【患者の療養体験と希望を知覚する】ことで患者の苦しみや諦め,怒りなどの感情が看護師に伝わり,容器としてその感情を受け取った看護師自身も葛藤したり自信がなくなり,業務としての一方的な指導となってしまうという,ある意味共感できたからこそのプロセスととらえることもできる.【患者の療養体験と希望を知覚する】ことから始まる療養援助プロセスにおいては,共感するからこそ,肯定的な感情としてとらえることも否定的な感情として看護師に陰性感情が起こったととらえることもできると考えた.「巻き込まれ」の概念分析では(牧野ら,2015),「看護師に陰性感情が起こる」「患者との距離が保てなくなる」「患者に共感する」という属性が抽出されていることから,看護師は【患者の療養体験と希望を知覚する】ことで患者に「巻き込まれ」ていると解釈することもできるだろう.

患者の話をきく中で【及び腰になる】ことや【一方的に指導する】こともあるが,【チームで支援する】ことが患者の行動変容を促す援助に影響する.これは,スピリチュアリティの高い傾向を示す群であったことに加え,チームで実践している看護だからこそ一人の看護師が頑張らなくても患者を【チームで支援する】ことができたからだと考える.入院中の看護は24時間切れ目のない支援を提供しているため,看護師個人の【患者に承認してもらう】という行動変容を促すプロセスと,【及び腰になる】という患者が取り組もうと思える療養行動をともに見出せないプロセスをチームで支え合うことができ,結果として行動変容を促すために患者が取り組もうと思える療養行動を見つけるプロセスとなっていると考えられた.

2. 実践への示唆

CKDの重症度に応じた治療や看護援助のタイミングはすでにマニュアル化されており(日本腎不全看護学会,2021),患者の行動変容を促す療養援助の際に活用することは,患者の行動変容促進に影響すると考える.CKDは不可逆な疾患であり長期的な見通しとして腎代替療法の選択の必要性がでてくること,また原疾患により予後が異なっており,特に糖尿病の管理をしながら腎臓病の管理が必要となる患者も多く,長期にわたるセルフケアが複雑で難しいことがあるため,看護の方向性やタイミングを見極めるためには,病期をアセスメントしておく必要はあるだろう.しかしながら,本研究では病期に着目した援助内容はほとんど語られておらず,目の前の患者に向き合いながら,【患者の療養体験と希望を知覚する】プロセスが明らかとなった.入退院を繰り返す保存期CKD患者に対する療養援助において,再入院や透析のリスクが優先されるのは大事な視点である.しかし,生活の中で行動を変容させ維持していくのは患者自身である.患者の関心やモチベーションを上げないことには,行動変容に向かわない.患者自身が療養行動の内容を理解するためには,指導内容と患者自身の生活とがつながらないとイメージすることができず必要性も理解できないだろう.看護師は患者の語りから生活状況を丁寧に根気強くきき,意見の違いや立場の違いを理解しながらも患者に分かりやすく伝えることが【患者に承認してもらう】プロセスにつながる.さらに,相手の感情を知ることがケアの手掛かりとなることからも(武井,2001),【患者に承認してもらう】関係性を踏まえて,これまでの療養体験を振り返ってもらえるとその不安や希望などの思いを【立ち止まって確認したり説明する】ことができると考える.看護師は病期に応じたリスクやマニュアル化された看護を知識として知ったうえで,目の前に居るその人を看てその人に合った療養行動をともに模索していくことがより実践的であることが示唆された.

本研究の【患者に承認してもらう】プロセス,およびその後の概念におけるプロセスは具体的で活用しやすいこと,さらに本研究の特徴的な【患者に承認してもらう】カテゴリ以外のプロセスにおいては,慢性疾患看護における「看護の教育的かかわりモデル」や高齢者のリロケーションを促進する看護支援(渡邊・野嶋,2021)のプロセスと同様であると考えた.よって,本研究の保存期CKD患者の行動変容を促す療養援助プロセスは,慢性疾患患者や高齢者の行動変容を促す援助に応用可能であると考える.

Ⅴ. 研究の限界と今後の課題

本研究の対象施設は腫瘍内科との混合病棟であり教育入院がほとんどない腎臓内科病棟であったことで,保存期CKD患者への腎臓病指導の機会が少ないことなどの参加者の属性が結果に影響したことが考えられる.

また,患者の行動変容は医療者の希望であって,患者の希望ではないかもしれない.そのため,本研究のモデルは,アドヒアランス的な支援であることも否めない.今後コンコーダンスなどの概念の活用が,話をきかせてもらい,患者の「行動変容」への希望を確認すること,そして意図的なノンアドヒアランスである「行動変容しない」希望にも責任をもち,その人らしく療養生活を行えることを援助することにつながると考える.

Ⅵ. 結語

臨床看護師が実践している入院中の保存期CKD患者の行動変容を促す療養援助のプロセスを明らかにすることを目的に,腎臓病指導を行っている臨床看護師10名に半構造的面接を実施し,修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ(M-GTA)を用いて分析した結果,生成された【カテゴリ】は7,〈概念〉は21であった.看護プロセスを構成するカテゴリは,【患者の療養体験と希望を知覚する】【患者に承認してもらう】【立ち止まって確認したり説明する】【患者とこころを合わせ療養行動を見出す】【チームで支援する】【及び腰になる】【一方的に指導する】の7つであった.行動変容を促進するためには,【患者に承認してもらう】プロセスが中心的カテゴリであった.

入院中の保存期CKD患者は,行動変容に「無関心」である場合もあるため,患者の関心事について話をきかせてもらい,行動変容への関心と調和させることが行動変容を促す療養援助において重要であることが示唆された.

付記:本研究は,富山大学大学院医学薬学教育部に提出した博士論文の一部に加筆・修正を加えたものである.

謝辞:本研究を実施するにあたりご協力いただきました病棟看護師の皆様,およびM-GTA分析においてご指導くださいました金沢医科大学看護学部の長山豊教授に深く感謝申し上げます.本研究は,JSPS科研費(課題番号19K10889)の助成を受けた研究成果の一部である.

利益相反:本研究における利益相反は存在しない.

著者資格:SAは研究の着想およびデザイン,データ収集,データ分析,論文執筆のすべてを実施した.YNはデータ分析および解釈に実質的に寄与し,原稿への助言を行った.HHは研究の全プロセスにおいて助言を行い,論文執筆の推敲を行った.すべての著者は,最終原稿を読み,承認した.

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