日本看護科学会誌
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総説
小児期にてんかんを発症した成人における就労と精神症状に関するスコーピングレビュー
安藤 冴子岩瀬 貴美子勝田 仁美
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2025 年 45 巻 p. 200-213

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Abstract

目的:小児期にてんかんを発症した成人における就労と精神症状に関する文献を分析し研究の動向と今後の移行期支援の課題を明らかにする.

方法:データベースはPubMed,CINAHL,医中誌Webを使用し,文献選定基準は対象者に小児期発症てんかん患者が含まれ,精神症状と就労に関する記述がある文献とした.

結果:分析対象文献は27件であった.精神症状併発と就労との間に有意な関連がみられた文献は4件,関連がないと示された文献は4件であり,文献により矛盾した結果であった.また患者のQuality of Lifeには精神症状の併発,就労状況,発作頻度,抗てんかん薬の副作用が関連していた.グループセッションと看護師からの電話連絡を含んだ介入は精神症状改善の効果も示されていた.

結論:今後,就労でのネガティブな経験について定性的研究や移行期からのストレス対処及びセルフマネジメントの準備性に関する研究が求められる.

Translated Abstract

Objective: To review the literature on employment and psychiatric comorbidities in adults with childhood-onset epilepsy and to investigate study trends and challenges in transition support.

Methods: Databases utilized included PubMed, CINAHL, and Ichushi WEB. The inclusion criteria for literature selection required that the subjects be patients with childhood-onset epilepsy and that the literature describe psychiatric symptoms and employment.

Results: A total of 27 pieces of literature were analyzed. Four studies indicated a significant association between psychiatric symptom comorbidity and employment, whereas four studies reported no association, presenting contradictory results across the literature. Furthermore, patients’ quality of life was correlated with the presence of psychiatric symptoms, employment status, seizure frequency, and side effects of antiepileptic drugs. Intervention research indicates that group sessions and telephone contact with nurses are effective in alleviating psychiatric symptoms.

Conclusion: There is a need for qualitative research on negative experiences at work and on readiness to cope with stress and self-management during the transition period.

Ⅰ. 緒言

慢性的に脳神経細胞の異常な興奮による発作を繰り返すてんかん患者では,うつ症状や不安障害といった精神症状を併発する確率が一般人口と比べて2~3倍高く(Tellez-Zenteno et al., 2007),喘息や糖尿病といった慢性疾患よりも精神疾患との関連が強い(Rai et al., 2012)ことが示されている.発症要因として脳の器質異常や抗てんかん薬の副作用といった医原的要因,てんかん患者の取り巻く心理社会的要因など多様な要因(山田,2011)が示されている.

また,てんかんの罹患率のピークは小児期と高齢期であり(Fiest et al., 2017),小児期の罹患率のうち生後1年間が最も高い(Wirrell et al., 2011)ことから,成人期に精神症状を併発しているてんかん患者の中には小児期発症の患者が含まれる.小児期発症のてんかん患者の特徴として発達障害や知的障害の合併が挙げられ,英国のコホート研究では約37%に発達障害といった精神的問題の合併がみられることが示されている(Davies et al., 2003).さらに学齢期のてんかん患者を対象にインタビューを行った先行研究では,約半数のてんかん患者が集中力や記録力の欠如といった学習への影響,自己肯定感の低下や気分の変調といった学校生活における感情的な問題を抱えていた(Johnson et al., 2022).このように小児期のてんかん患者は疾患の特性により精神状況にも影響を受けている可能性があり,近年研究が進められている.小児期のてんかん患者の精神疾患併発に関するメタアナリシスでは,小児期においても18.9%に不安障害,13.5%にうつ病の併発がみられ,一般人口と比較して多いことが示されている.また,その結果の統合の中で,精神疾患の併発には知的指数(以下,IQ)が低いこと,てんかん発作,親の精神状況や不安定な家庭環境といった家族因子が関連していた(Dagar & Falcone, 2020).加えて,9歳から18歳のてんかん患者を対象としたレビュー論文では,てんかんに対する否定的な態度,自己効力感の低さ,自尊心の低さ,スティグマ,家族機能の低下がうつ病と関連していることが示されていた(Temple et al., 2023).

また,小児期発症てんかん患者の成人移行後の問題として就労が挙げられる.デンマークで行われた大規模な後ろ向きコホート研究において小児期発症のてんかん患者は30歳の時点で一般人口より雇用率が有意に低く,教育歴が短いこと(Jennum et al., 2016),収入が低く,精神的な治療に伴う医療費が増加していることが示されている(Jennum et al., 2021).さらに本邦で実施された小児期発症てんかん患者と非てんかん患者集団を追跡した調査では,対照集団の高校進学率は97.0%に対してんかん患者は65.5%と低く,雇用率も同様に97.0%に対して67.4%と低いことが報告されている(Wakamoto et al., 2000).このような先行研究の知見から,小児期発症のてんかん患者は成人期に社会経済的影響を受けていることが示唆された.小児期発症てんかん患者における成人期の社会状況に焦点を当てたメタアナリシスでは,精神症状と就労状況に関連があると示している文献は2件,関連がないと示している文献が2件あり,結果を統合すると有意な関連はみられていないことが示されていた(Puka et al., 2019).しかし,これは社会状況に焦点を当ててレビューされており,精神症状について記述のある文献が網羅されていないことが課題として挙げられる.

このように小児期発症てんかん患者の中には教育的な問題及び精神的,心理的な問題を抱えて成人期に就労を開始する者が一般人口よりも多く,精神症状と就労の間には関連があると考えられることから,小児期から成人期における切れ目のない支援が必要である.そのために就労と精神症状の関連性,それぞれに関連する因子を調べ,成人期におけるてんかん患者を取り巻く社会状況の課題を見出すことが求められる.過去の文献レビューではメタアナリシスの手法を用いられているが,対象者が小児のみであること,前述したように社会的状況に焦点が当てられ,精神症状について網羅されていないことが課題である.知的障害,発達障害を併発している患者もおり,てんかん患者の就労形態はフルタイムの就労から就労移行支援と幅広く,雇用形態も正規雇用または障害者雇用と多様な就労状況が想定され,精神症状を併発することで就労状況は多様化することが推察される.このことから,就労に関して幅広い知見を基に網羅的に概観する必要があると考える.

そのため本研究では,スコーピングレビューの手法を用いて小児期にてんかんを発症した成人における就労と精神症状に関する文献を分析し,研究の動向と今後の移行期支援の課題を明らかにすることを目的とする.

Ⅱ. 方法

1. 文献の検討方法

研究方法は文献レビューであり,レビューの種類は研究領域の基盤となる主要な概念,主な情報源,利用可能な文献やエビデンスの種類をまとめ,既存の知見から研究ギャップを特定することを目的としたスコーピングレビュー(Arksey & O’Malley, 2005)とする.なお,結果の報告は友利ら(2020)が作成したスコーピングレビューのための報告ガイドライン(PRISMA-ScR)日本語版を基に行う.

スコーピングレビューを行うにあたり,リサーチクエスチョンからParticipants, Concept, Contextを以下のように設定した.

①Participants(患者):小児期(18歳まで)にてんかんを発症し精神症状を併発した患者

②Concept(概念):精神症状併発と就労の関連,精神症状と就労に関する介入

③Context(文脈):学校卒業後の精神症状と就労状況,精神症状併発へ影響する就労状況,精神症状併発後の就労状況,精神症状と就労は双方向で関連していることが想定されるため精神症状が併発する時期は問わない

また,本研究における用語の定義として就労は,収入に結び付いた仕事に従事し,何らかの社会的役割をもつこととした.

2. 文献検索方法

データベースはPubMed,CINAHL,医学中央雑誌Web版Ver. 5(以下,医中誌とする)を使用し,検索手順は図1に示す.検索式には「てんかん(epilepsy)」,「子ども(child)」,「精神症状(psychiatric comorbidity)」,「就労/雇用(employment)」といったキーワードを用いた.論文の言語は英語と日本語とし,学会発表及び資料は除外した.発行年は国際抗てんかん連盟(ILAE)がてんかんにおける精神症状の分類(Krishnamoorthy et al., 2007)を発表した2007年から2024年とし,最終検索日は2024年12月27日であった.対象文献の包括基準は,対象者に小児期発症てんかん患者が含まれており,精神症状と就労に関する記述のある文献とし,抄録から基準に当てはまる文献を選択し,精読のうえ対象文献を選定した.除外基準はてんかん以外の疾患(心因性非てんかん発作,脳卒中,脊髄炎,骨粗しょう症,熱性けいれん,認知症)が対象の論文,遺伝子に関する論文,睡眠に関する論文,脳構造及び脳機能に関する論文,認知機能に関する論文,薬物療法の論文(就労と精神症状について調査されていない論文)とした.

図1  検索フローチャート

3. データの抽出と結果の統合

文献は発表年,著者,タイトル,掲載雑誌,対象者(包括基準,除外基準),研究デザイン,目的,主要アウトカム,測定用具,分析方法,結果,考察,限界について整理した.さらに主要アウトカム毎に内容が類似しているものを類型化し,表の要約を作成した.データの抽出は著者1名が行い,分析にあたっては妥当性を担保するため,分析対象論文を整理したものを共同研究者間で確認し,検討を重ねた.

4. 方法論的質的評価

各文献の方法論が研究目的に即した方法であるか評価するために,英国で開発されているCritical Appraisal Skills Programme(以下,CASP)の各研究デザイン毎(記述・横断研究,コホート研究,ケースコントロール研究,ランダム化比較試験研究)のチェックリストを用い,対象論文を批判的に精読した(Critical Appraisal Skills Programme, 2023a, 2023b, 2023c, 2023d).そして,各文献の研究方法における良好な点及び脆弱点を記述し,結果を統合することで,てんかん患者における精神症状と就労に関する文献の方法論的な課題を示した.

Ⅲ. 結果

1. 選定文献の概要

PubMedでは1,154件,CINAHL Plus with Full Textでは3件,医中誌では31件の文献が検索された(図1).一次スクリーニングにおいてタイトル抄録を確認し,文献総数1,187件(重複文献1件を除く)のうち71件の文献を抽出した.医中誌での検索において対象が合致する実践報告はあったが,学会発表の抄録のみであった.二次スクリーニングでは全文を精読し,参考文献の中で対象文献の基準に当てはまる2件の文献を追加し最終的に英語文献27件(日本での調査2件を含む)を分析対象とした.対象者が小児期発症者のみとする文献は3件,他は成人期(18歳から64歳)及び老年期(65歳以上)に発症した患者も含めた調査であった.研究デザインは調査研究2件,横断研究15件,ケースコントロール研究3件,縦断研究4件,介入研究3件であった.

選定文献27件の内容を主要アウトカム毎に類型化した結果,てんかん患者のQuality of Life(以下,QOLとする)改善に関する文献8件(表1),就労状況を含む社会状況に関する文献が9件(表2),精神症状を含むメンタルヘルスに関する文献10件(表3)に分けられ,それぞれの要約を表に示した.また,就労環境及び雇用条件は年齢により異なる可能性があることから,結果の表は対象者の平均年齢順に記載した.

表1 QOLに関する文献

No 著者(発表年) タイトル(国) 対象者
(平均年齢 ± SD)
デザイン 目的 測定内容 分析方法 主な結果と考察 方法論的質的評価※
1 Jansen, A. C., Vanclooster, S., de Vries, P. J. et al. (2020) Burden of illness and quality of life in tuberous sclerosis complex: Findings from the TOSCA study.(ベルギー,フランス,ドイツ,イタリア,スペイン,スウェーデン,イギリス) TSC患者または介護者143人(19.8 ± 15.2) 横断研究 疾患による負担(Burden of illness)とQOLの観点から結節性硬化症自体が個人や介護者の生活に与える影響を評価すること. ・BOI:社会福祉のニーズ,ヘルスケアのニーズ,教育と雇用への影響,家族への影響,小児ケアから成人ケアへの移行を扱う一連の補助的な質問
・EuroQol-5D(EQ-5D)成人
・QoL in Epilepsy Inventory-31-Problems (QOLIE-31)-P,
・QoL in Childhood Epilepsy (QOLCE)
・QOLIE-AD-48
記述統計 143人中67人がてんかんを合併しており,小児科から成人へのケアのスムーズな移行が報告されたのはわずか14人(36.8%)であった.38人の成人のうち,20人(52.6%)は就労しており,7人は就労できていなかった.EQ-5Dは143人全員が回答し,34人(23.8%)が移動の困難を報告,32人(22.4%)がセルフケアの困難を経験,26人(18.2%)が通常の活動が困難,50人(35%)が中程度の痛みや不快感を報告.62人が(43.4%)が中程度の不安/うつ病を報告し,6人(4.2%)が極度の不安/うつ病を報告した. ×横断研究では影響を調査することができない.
×社会福祉やヘルスケアニーズといたBurden of illnessの測定尺度は独自に作成された物であり信頼性妥当性が検証されていない.
×分析が記述統計のみであるため関連性を見出すことができない.
2 Zöllner, J. P., Conradi, N., Sauter, M. et al. (2021) Quality of life and its predictors in adults with tuberous sclerosis complex (TSC): A multicentre cohort study from Germany.(ドイツ) 結節性硬化症(TSC)の成人121名(31.0 ± 10.5,幅 18~61歳) 横断研究 TSCの成人を対象として包括的なQOLを分析し,QOLとその予測因子に関する最新の知識を提供すること,ドイツにおける大規模な多施設サンプル調査からQOLの予測因子を調査すること. ・The EuroQoL–5 dimension–3 level inventory(EQ-5D-3L)
・The Quality of Life in Epilepsy Inventory–31 items(QOLIE-31):HRQol
・The Neurological Disorders Depression Inventory for Epilepsy(NDDI-E)
・The Epilepsy Stigma Scale measures disease-related stigma(一部)
・the Liverpool Adverse Events Profile(LAEP)
・TSC関連の負担:4段階リッカートスケール,2項目
・障害等級
多重線形回帰分析 121名のうち77%がてんかんを合併していた.就労状況を開示した83人のうち,34人(41.0%)が失業中であった.NDDI-E(カットオフ値14点)の平均は12.4(範囲:6~23)であり,脳の構造的異常や神経精神病的症状,影響を受ける臓器の数が多く,LAEPが35以上であることがNDDI-Eの悪化と関連していた.重度のスティグマ(3点)は神経精神症状,てんかん,構造的脳症状,LAEPスコアと関連していた.健康関連QOLを従属変数にした多重回帰分析ではLEAPの影響力が関連しており(β = –0.548),活動性てんかん(β = –0.358),神経精神症状が(β = –0.293)と優位に関連していた.就労状況は優位な関連はみられなかった. ○健康関連QOLに関連する研究されたリスク要因(うつ症状,スティグマ,てんかん治療の有害事象,就労状況)が調査されている.
○サンプルサイズ.
×リクルート方法が病院と患者会双方から行っていることから重複して回答した人がいる可能性がある.
3 Tlusta, E., Zarubova, J., Simko, J. et al. (2009) Clinical and demographic characteristics predicting QOL in patients with epilepsy in the Czech Republic: How this can influence practice.(チェコ) 外来通院のてんかん患者268名(39.9 ± 14.7) 横断研究 チェコ共和国における,てんかん患者の臨床的な変数や人口統計的な変数がQOLに及ぼす影響を検討すること. ・電子カルテより年齢,性別,てんかん罹患期間,発作の頻度と種類,抗てんかん薬の数,生涯で使用した抗てんかん薬の数,併発症,雇用状況
・the Quality of Life in Epilepsy Inventory(QOL-31)
単回帰分析
重回帰分析(ステップワイズ法)
55%が雇用されていたが,失業が6.3%,障害年金受給が29%みられた.14.2%に精神症状を併発していた.てんかんの罹患期間とQOLの関連はないが,発作頻度,雇用可能性,精神症状の併発がQOLの予測因子となっていた(決定係数0.344).雇用可能性は,QOL全体,情緒(気分),活力(疲労),精神活動(思考,集中,記憶)のサブスケールにおいて強い予測因子となった. ×回答率の記載がないため代表する集団が回答しているか不明.
×カルテより治療状況は調査されているが,治療による有害事象や副作用は調査がないため交絡因子となっている可能性がある.
4 Dias, L. A., Angelis, G., Teixeira, W. A. et al. (2017) Long-term seizure, quality of life, depression, and verbal memory outcomes in a controlled mesial temporal lobe epilepsy surgical series using portuguese-validated instruments.(ブラジル) 薬剤耐性のある内側側頭葉てんかん(MTLE)で脳手術を受けた成人患者71名(43.90 ± 9.03),コントロール群20名(39.40 ± 6.61) 縦断研究(前向きコホート研究) 手術と臨床治療が長期的なQOLに及ぼす影響,および発作の結果,社会的関係,うつ病,および薬物の副作用との関連性,ならびに既存の言語記憶障害への影響を確認すること. ・雇用,教育,運転記録,家族の関係性,発作頻度に関するインタビュー
・QOLIE-31
・Beck Depression InventoryeII(BDI-II)
・Liverpool Adverse Events Profile(AEP scale)
・Rey Auditory Verbal Learning Test
段階的多重線形回帰分析
分散分析
術前後でBDI-II > 13の患者は50%から16.9%と有意に減少した.軽度以上のうつ病を呈する確率はコントロール群と比較してオッズ比4.92であった.手術後患者の方が就労者は多いが,外科的介入を受けた患者の約半数は失業していた.AEP値の平均も対象群で優位に低かった.QOLIE-31ではトータルスコア,発作の心配領域,社会機能領域で対象群が有意に高かった.両群全体をサンプルとした場合,多変量回帰分析でQOLIE-31と優位であったのはAEP,BDI-IIのみであった.手術により発作誘発への不安,社会機能も肯定的に改善する可能性がある. ×コントロール群がどのような患者なのか記述がみられない,また20名と少なく対象群との差が検出されていない可能性がある.
×インタビューを行って雇用,教育家族の関係性を調査しているが,内容や方法が不明であり,住民登録の使用,既存尺度の使用が行われていない.
5 Welton, J. M., Walker, C., Riney, K. et al. (2020) Quality of life and its association with comorbidities and adverse events from antiepileptic medications: Online survey of patients with epilepsy in Australia.(オーストラリア) てんかんもしくは発作障害の報告があった18歳以上の者 978名(44.7 ± 14.14) 横断研究 オーストラリアのてんかん患者サンプルでQOLと併発症や抗てんかん薬との関連を調査すること. ・人口動態,居住地,てんかんの重症度
・the Livepool Adverse Events Profile
・Epilepsy Comorbidities and Health(EPIC)
・Generalized Anxiety Disorder 7 item
・the Neurological Disorder Depression Inventory for Epilepsy(NIDDI-E)
・Patient-Weighted Quality of Life in Epilepsy Inventry(QOLIE10-P)
・重回帰分析(ステップワイズ)
・感度分析
リクルートの7割がMedadvisor経由であったため,年配でてんかんコントロールが良好な傾向があり,QOLも高かった.併発症については精神障害(46%),痛み(44%),呼吸器の問題,循環器の問題があげられた.
QOLについて,決定係数0.52,差が大きい順に精神症状の併発,行動障害・身震い,痛みであった.有害事象については睡眠障害(89%),記憶障害(68%),頭痛(54%),不安定がみられた.
○有害事象とうつ症状は多重共線性を避けるためグループ化される.
×リクルート方法,調査方法がオンラインのためてんかん患者であることは自己申告.
×平均年齢が高く,高齢の退職者が含まれている可能性.
×スティグマが未調査であり交絡因子の可能性がある.
6 Azuma, H., Akechi, T. (2014) Effects of psychosocial functioning, depression, seizure frequency, and employment on quality of life in patients with epilepsy.(日本) 18歳以上のてんかん患者215名をリクルートし最終102名(45.8 ± 15.7) 横断研究 てんかん患者においてQOLとうつ症状,抗てんかん薬による生活への影響や発作型,居住状況についての変数との関連を明らかにすること. ・the modified version of the Quality of life in Epilepsy Inventory-31-P(QOL-31-P)
・The side effects and life Satisfaction Inventory(SEALS)
・Neurological Disorders Depression Inventory for Epilepsy(NDDI-E)
段階的線形回帰分析 てんかん患者のQOLには抗てんかん薬による副作用,抑うつ傾向,焦点発作の頻度,抗てんかん薬の数,雇用形態が関連しており全体の説明変数は74%であった.
先行研究と同様にNIDDIと抗てんかん薬の数に関連はみられなかた.
×サンプルサイズは足りているが平均年齢が高く,高齢の退職者が含まれている可能性.
×先行研究でリスク要因として示されているスティグマが未調査.
×回答率が半数以下.
×知的障害,認知症の方が除外されているが判定基準が不明.
7 Schougaard, L. M. V., de Thurah, A., Christensen, J. et al. (2020) Sociodemographic, personal, and disease-related determinants of referral to patient-reported outcome-based follow-up of remote outpatients: A prospective cohort study.(デンマーク) 初めて大学病院神経科に受診した15歳以上のてんかん患者411名(49.3 ± 21.9)
回答率51%
縦断研究(前向きコホート研究) PRO測定(患者報告アウトカム)を使用したリモート診療への紹介と関連する社会的要因や個人的疾患に関連した要因を特定すること. ・The Hospital Business Intelligence (BI) Register in Central Denmark Region
・同居状況,世帯収入,雇用状況,教育状況
・併発症:The Danish National Patient Registry(DNPR)
・WHO-Five Well-being Index(WHO-5)
・Short Form Health Survey 36(SF-36)
・Health Literacy Questionnaire (HLQ) 9
・General self-Efficacy Scale(GSES)
・Patient Activation Mesdure 13
・類似値アプローチ
・重回帰分析
61%の患者がPROフォローアップ,48%が言及されなかった.12%に精神疾患併発していた.
独居,精神疾患の併発,収入の低い方はPROフォローアップへ紹介される可能性が低い.さらに患者が健康リテラシー,自己効力感,患者の活性化,幸福感,または一般的な健康状態が低いと報告した場合,PROベースのフォローアップに紹介される可能性が低いことが示されていた.
○検証されている測定内容.
○検出力のあるサンプルサイズ.
×2週間毎の回答であり回答率が低い.
×とりわけ未回答者のうち15~59歳が71%であることから高齢者の回答に偏っている.
8 Kobau, R., Cui, W., Kadima, N. et al. (2014) Tracking psychosocial health in adults with epilepsy—estimates from the 2010 National Health Interview Survey.(アメリカ) 43,208世帯選択され,最終的にてんかんについての回答も含めて完了した27,139人が対象,うちてんかんの罹患歴のある人480人(対象者の年齢について記載なし) 横断研究 米国2010年全国健康調査
てんかんのある米国在住(代表地点)の成人における心理社会的健康,社会参加,HRQOLの推定値を示すこと.
・National Health Interview Survey
・the Kessler-6 scale of Serious Psychological Distress
・cognitive limitation; the extent of impairments associated with psychological problems; and work limitation;
・Social participation 8つの活動に分類
・the Patient Reported Outcome Measurement Information System Global Health scale.
・過去7日間の感情的な問題,社会活動や関係性への満足,健康関連QOL
多項ロジスティック回帰分析 深刻な精神的ストレスを申告したのはてんかん患者が優位に多く(12.8%:3.2%)てんかん患者は一般の方と比較して就労できないことや就労の制限があると回答,認知的な制限もあると回答(17.3%:3.0%)していた.
活動的な発作がある方の27%がレジャーや社会参加,外出,交通機関の利用といった社会活動への参加に課題を感じていた.QOLにおいて身体的,メンタルヘルスともにてんかん患者は優位に低い結果となった.重度の精神的ストレスのある者,認知障害がある者,メンタルヘルスの不良があるてんかん患者は,精神的な制限がないてんかん患者と比べて就労できないと申告している者が優位に多かった.
○検出力のあるサンプルサイズ.
○米国全国健康調査の一部であり,米国在住の成人サンプルを抽出できている可能性が高い.
×就労困難や就労制限に関する認知の仕方は自己申告であり検証されている測定内容ではない.
×てんかんの種類や発作型は不明.

※方法論として良好な点は○,脆弱な点を×として示した

表2 就労を含む社会状況に関する文献

No 著者(発表年) タイトル 対象者
(平均年齢 ± SD)
デザイン 目的 測定内容 分析方法 主な結果と考察 方法論的質的評価※
1 Baca, C. B., Barry, F., Vickrey, B. G. et al (2017) Social outcomes of young adults with childhood-onset epilepsy: A case-sibling-control study.(アメリカ) 16歳までに初回発作がありてんかんの初期診断を受けた361人(追跡15年終了時点の平均年齢21.9 ± 3.5)と対照群(きょうだい)173人(追跡15年終了時点の平均年齢22.8 ± 5.0) 縦断研究(前向きコホート研究) 成人期の小児期発症てんかん患者の長期的な社会状況を神経学的に異常のないきょうだいのコントロール群と比較すること(コネチカット州の16の小児神経科医の診療所から特定されたコホート). ・社会的結果(構造化インタビュー)
教育状況,雇用,居住状況,結婚歴,子どもの有無
妊娠歴,運転免許,法的トラブル
・診断的変数
一般神経学検査,MRI,IQ(≧60),てんかん発症に起因する脳損傷(髄膜炎など)
てんかん発作の状況
・一般線形モデルで比較
・推定調整オッズ比を算出
・感度分析
・サブグループ分析
リクルートした小児期発症てんかん患者613人のうち15年後調査を完了したのは361人.てんかん患者はきょうだいのコントロール群と比較して,非雇用及び20時間未満の雇用が多い(OR:2.00).合併症のないケース群はコントロール群と同等の社会的結果と関連しており,合併症のない群のうち5年間で発作があった者は,無職か不完全雇用が高く(2.22),独立して生活できておらず(2.65),中卒(4.82)であった.合併症があり5年発作がないケース群でも中卒(16.71),productive engagementが少ない(7.46),運転免許を持っていない(9.36). ○小児期発症てんかん患者を16の小児神経科医からリクルートしており,対象者を捉えられている.
×3~4か月ごとに電話連絡を入れているが追跡不能者が151名おり,最終的な15年後の脱落率が41%と高い.
×インタビュー方法記載がない.
2 Berg, A. T., Baca, C. B., Rychlik, K. et al. (2016) Determinants of social outcomes in adults with childhood-onset epilepsy.(アメリカ) 小児期にてんかんを発症し,合併症のないてんかん患者241人 最終追跡後の平均年齢26.1歳(22~35歳) 縦断研究 小児期に合併症のないてんかんを診断された若年成人において,発作のコントロール状況及び精神障害や学習障害と成人期の社会状況の関係性を検討すること. ・発作状況(既存研究の4段階評価)
・精神障害と学習障害:外在化障害(ADHD, ODD)内在化障害(うつ,不安症,脅迫神経症,双極性障害),学習障害(発達遅延,言語障害,失語症)
・社会的状況
居住状況,教育,雇用,法的機関との接触,運転免許証の所持,親の教育歴
・ロジスティック回帰分析
・比例ハザードモデルを使った相対リスクの推定
リクルートした小児期発症てんかん患者613人のうち17~21年後調査を完了したのは241人.精神障害合併の有無は学歴と法的機関との接触と関連していた.学歴と法的機関との接触はとりわけ外在化障害と強く関連がみられた.ロジスティック回帰分析において,発作状況の悪さ(OR:0.62)と学習問題(OR:0.35)が学歴に影響しており,精神障害(OR:0.32)も学歴に関連していた.学習トラブルは雇用機会の低さに関連(OR:0.43)していた.学習問題と精神障害併発が広範囲に成人期の社会的状況に影響していた. ○小児期発症てんかん患者を16の小児神経科医からリクルートしており,対象者を捉えられている.
×6割が脱落しており,脱落者は外来フォローが10年未満の者,最終インタビュー時22歳未満の者であり結果が偏った可能性.
×精神障害と学習障害について親へのインタビューとカルテから判断されている.
・雇用の種類(正規,パート,就業内容)が不明.
・カイ二乗検定のCramer’ Vの値やロジスティック回帰分析のZ値がないためどれだけ信頼できる値が判断ができない.
3 Moschetta, S., Valente, K. D. (2013) Impulsivity and seizure frequency, but not cognitive deficits, impact social adjustment in patients with juvenile myoclonic epilepsy.(ブラジル) 若年性ミオクロニーてんかんの診断を受けた42名(26.6 ± 8.4)と健康なボランティアで構成されたコントロール群42名(27 ± 8.5) ケースコントロール研究 1.若年性ミオクロニーにおける社会適応について客観的尺度で確認すること.
2.臨床変数,衝動性,神経心理学変数が社会適応の悪化と関連があるかどうか特定すること.
・the Self-Report social Adjustment Scale
・the Temperament and Character Inventry(TCI)
・the temperament Novelty Seeking(NS)
・神経心理学検査(実行機能,記憶機能)
・発作状況
・精神症状の家族歴,及び本人の精神症状(DSM-IV)
・the Matrix Reasoning and Vocabulary subtests of the Wechsler Abbreviated Intelligence Scale:IQ
共分散分析 社会適応尺度は「仕事」「親戚との関係」のサブスケールにおいてコントロール群より低かった.ミオクロニー発作と全般発作の頻度は社会適応の仕事と関連していた.パーソナリティ障害は衝動性のコントロールと関連しており,パーソナリティ障害がある人ほど結婚関係や社会適応全般が高い傾向にある.発作頻度は就労状況と関連していた.就労は若年性ミオクロニーのような様々な発作タイプのあるてんかんにおいて影響する可能性がある. ○対象者の年齢が16~40歳であり,成人期の就労状況を反映している.
×既に精神疾患の診断がついている人が除外されており,就労状況や社会適応の結果に影響している可能性がある.
4 Gabriel, D., Ventura, M., Samões, R. et al. (2020) Social impairment and stigma in genetic generalized epilepsies.(ポルトガル) 素因性全般てんかん(GGE)または海馬の硬化を伴う内側側頭葉てんかん(MTLE-HS)の診断を受けた患者333名
JMEが29.0歳(23~41),JAEが29.5歳(21~43),GTCAが34歳(24~50),GGEsが31歳(23~44),MTLE-HSが48歳(41~59)
横断研究 ・素因性全般てんかん患者における社会機能障害及び知覚するスティグマを調査すること.
・素因性全般てんかん患者の社会的変数を,同じ特性のある海馬硬化を伴う内側側頭葉てんかん患者及びポルトガルの一般の方の社会的変数と比較すること.
・社会的変数(年齢,性別,教育段階,婚姻状況,家族構成,就労状況,就労していた場合の月収,退職年齢,住宅形態,子どもの数)
・Ak PDにより開発されたスティグマの質問紙(感じるスティグマ,患者に対する過保護な態度,疾患の隠蔽,社会生活に関連した心配,職業)
・自身の健康状態に対する印象
・臨床変数(てんかんの発症年齢,期間,てんかん症候群,発作のタイプ及び頻度,現在の抗てんかん薬及び量,精神疾患の併発,治療)
多項ロジスティック回帰分析 てんかん症候群間において就労状況の差はなかった.半数以上(50.5%)が何らかの精神疾患(気分障害,不安障害)を付随していた.職場や学校でてんかんを隠している人は各症候群で67.7~81.8%であった.てんかんのため就職が困難と感じたことがある者はJMEで22.3%に対してMTLE-HSにおいて39.6%と差があった.GGEにおいてスティグマの予測因子は難治性てんかん(OR:4.96),発作頻度(OR:1.19),全般性間代発作(OR:1.88),精神疾患(OR:2.06).MTLE-HSでは発作頻度(OR:1.34),焦点性欠神発作(OR:1.12),抗てんかん薬の数(OR:1.81),精神疾患(OR:2.37)であった.MTLE-HSにおいて他の症候群と比較して精神疾患の併発率が上がる. ○対象年齢が21~59歳であり,成人期の就労状況を反映している.
○~×就労を含む多面的なスティグマを反映した尺度が使用されているがカットオフ値が不明.
×多項ロジスティック回帰分析の説明変数に就労状況が入っていない.
×考察で過去の調査と比較されているが,目的にある一般人口と比較するために実際に調査はされていない.
5 Arai, Y., Okanishi, T., Noma, H. et al. (2023) Prognostic factors for employment outcomes in patients with a history of childhood-onset drug-resistant epilepsy.(日本) 大学医学部附属病院へ通院していた薬剤抵抗性の小児期発症てんかん患者65人(31.0歳 幅:18~56) 横断研究 小児期発症薬剤抵抗性難治性てんかん患者の雇用状況を調査すること,非雇用に関連するリスク要因を明らかにすること. ・雇用状況
・カルテ:年齢,性別,抗てんかん薬の数,発症年齢,MRI所見,IQ,てんかんの病因,発作頻度
・心理社会的情報:精神疾患や神経発達障害,住居環境(施設または自宅),居住地
・教育的情報:学歴,不登校歴,満了年数
修正ポアソンの回帰分析 フォローアップ期間,抗てんかん薬の数,は雇用と負の相関があった.フェノバルビタール,レベチラセタム,トピラマートの使用が雇用と負の関連.気分障害(RR 4.917),統合失調症(RR 5.167),4つのうちいずれかの精神症状(RR 6.833)は雇用と負の関連があった. ○対象年齢が18~56歳であり,成人期の就労状況を反映している.
×後ろ向きにカルテから情報を取っており,精神疾患などはカルテの情報から推察されている可能性がある.
6 Willems, L. M., Kondziela, J. M., Knake, S. et al. (2019) Counseling and social work for people with epilepsy in Germany: A cross-sectional multicenter study on demand, frequent content, patient satisfaction, and burden-of-disease.(ドイツ) てんかんに特化したカウンセリングサービス(6施設)を受けている患者435名(32.3歳 ± 18.6) 横断研究(2014~2015) ドイツのヘッセン地方とフランケン地方にあるカウンセリングサービスを受ける小児と大人のカウンセリングにおける要望や特徴的な内容を明らかにすること. ・カウンセリングを受ける理由
・the ZUF-8 client satisfaction score
・the ZUF-8 client satisfaction score
・QOL:小児KINDL
:大人 QOLIE-31
・ケアをしている人 The EroQOL EQ5-D
・精神症状など(成人)
the Cambrigge Worry Scale
the Stigma scale for Epilepsy
・NDDI-E
・その他,就労に関するスケール
ピアソンのχ二乗検定
Welch’s t-test
抑うつ傾向の成人のうち臨床的にうつ傾向なのは118件(36.5%)であった.カウンセリングを受ける理由は一般的な情報集め(69.9%),行政上助成(47.8%),教育や就労の問題(40.5%)であり,6割が主治医からの紹介であった.8割がカウンセリングを他者に勧めたいと回答する一方で,73.1%が個別カウンセリングを望んでいた.カウンセリングにより,てんかんに関連した離職や転校を72%回避した報告がみられた. ○多施設から対象者をリクルートしておりカウンセリングを求めている人を抽出できている.
×カウンセリング内容は調査されているが,どのような対応がされて,どのような機関と連携しているのかは未調査.
×測定内容にQOL,スティグマ,うつ症状があるが,対象者の特性として分析結果が示されていない.
7 Gesche, J., Antonson, S., Dreier, J. W. et al. (2021) Social outcome and psychiatric comorbidity of generalized epilepsies - A case-control study.(デンマーク) 突発性全般てんかんのある402名の患者と住民登録システムからマッチングされた17歳以上の者(両群とも17~39歳が66%,40歳以上が33%) ケースコントロール研究 突発性全般てんかんとそのサブタイプ(強直性間代発作,若年性欠神てんかん,若年性ミオクロニーてんかん)患者の社会的な帰結と精神症状併発について調査すること. ・てんかん関連の変数
・学歴,同居家族,結婚歴,収入(the Interated database for Labor Market Research and Population Register)
・the Danish Psychiatric Central Research Register(ICD-10)
・the Danish National Prescription Registry
対比グループ(the Danish Civil Registration System)
・探索的分析(発作状況,全般性強直性てんかんのサブシンドローム,精神疾患)
・ロジスティック回帰分析
対象コホートと比較して学歴が低い,就労の割合が低く,収入が低かった.教育に関しては薬剤抵抗性がある方が低学歴,就労に関しては薬剤抵抗性よりも,発作がある人の方が一般と比較して就労が低い.突発性全般てんかんがあることは精神症状併発と関連していない.持続する発作は収入の低さと就労率と関連していた.若年性ミオクロニー発作は精神症状併発が対照群より多く,社会的な変数に負の関連があった.そのような不利な社会的状況は強直間代発作や若年性欠神発作ではみられなかった.重回帰分析で社会手当に関連していたのは精神症状併発(標準偏回帰係数2.9),薬物乱用やアルコール乱用の病歴,若年性ミオクロニー発作,抗てんかん薬の数であった. ○単施設であるが,地域に住む患者のほとんどのてんかん患者が受診する大学病院での調査でありサンプル数も多い.
○コントロール群も住民登録システムから抽出されており年齢,性別が正確にマッチングされている.
×対象者の年齢が17~95歳で退職されている方も含まれている.
×社会的状況に影響する発達障害に関する変数が調査されておらず交絡因子の可能性.
8 Specht, U., Coban, I., Bien, C. G. et al. (2015) Risk factors for early disability pension in patients with epilepsy and vocational difficulties - Data from a specialized rehabilitation unit.(ドイツ) 特別てんかんリハビリテーション病棟に入院している患者246名(38.8 ± 10.6) 横断研究 特別てんかんリハビリテーション病棟において成人期のてんかん患者が早期障害年金を受けるリスク要因を検討すること. ・障害年金受給状況
・PESOS:PErformance, Sociodemographic aspects, Subjective estimation
・就労状況
・認知機能
・精神併発症(専門医のインタビュー)
ロジスティック回帰分析(ステップワイズ) 76%がコントロール不良のてんかんであり,43.9%が雇用されていなかった.66.7%に精神症状併発していた.
33.7%が障害年金を受給しており,リスク因子(オッズ比)は50歳以上(9.05),入院に先立つ年金の申込(4.68),3か月以上の休職(3.18),精神疾患の併発(2.12)であった.
○対象者が入院患者であり,目的に合ったリクルートとなっている.
×知的障害の程度,最終学歴が不明なため,結果に影響している可能性がある.
×対象者の基準に当てはまったのは655名であり,有効回答率は37.5%と低く,精神症状が強く回答困難な者が多かった可能性.
9 Gilmour, H., Ramage-morin, P., Wong, S. L. (2016) Epilepsy in Canada: Prevalence and impact.(カナダ) カナダ地域保健調査に回答した者139,200人(18~64歳が71%を占める),うちてんかん患者は8万人 調査研究 2010と2011に行われたカナダの地域保健調査において,てんかんの有病率とその影響を提供すること. ・地域保健調査 記述統計 低所得者においててんかんをもっている人が優位に多い.一般人口より2倍気分障害になりやすい.29%の患者が抗てんかん薬の副作用の報告をし,29%が良質な睡眠が取れていないと回答.25%が教育を受ける機会に制限を感じ,雇用を得る機会への影響があると回答したのは43.6%であった.就労していない方が40.3%,永久に就労が困難と回答したのが9.3%であった. ○カナダ地域保健調査のデータであり,カナダ全体のてんかん患者における社会状況を反映している.
×記述統計のみであるため関連性,影響の検証はできない.
×調査方法の記載がないため精神症状,てんかんの発作状況といった診療情報は自己申告の可能性がある.

※方法論として良好な点は○,脆弱な点を×として示した

表3 精神症状を含むメンタルヘルスに関する文献

No 著者(発表年) タイトル(国) 対象者
(平均年齢 ± SD)
デザイン 目的 測定内容/介入内容 分析方法 主な結果と考察 方法論的質的評価※
1 Kishk, N., Raafat, O., Abdou, H. et al. (2021) Psychogenic nonepileptic seizures in patients with epilepsy: A comparative study with patients with pure epilepsy.(エジプト) てんかんの診断を受けた患者80名
コントロール群:てんかん単一40名(30.98 ± 8.52)
対象群:心因性てんかん発作も合併した混合型40名(31.02 ± 8.52)
横断研究 ・てんかん患者と,心因性てんかん発作とてんかんを合併した患者の社会的,心理学的,臨床医学的変数を比較して評価すること.
・心因性てんかん発作を合併したてんかん患者の予測因子を調査すること.
・発作頻度,発症年齢といった神経学的変数(本人,支援者の申告または診療録)
・長時間脳波
・the updated version of Fahmy and El-Sherbini’s scale for socioeconomic status
・semistructured cilinical interview using the Adult Case History Sheet of the Kasr AI Ainy Department of Psychiatry
・The Personality Inventory for DSM-5 Brief Form and Its Arabic Version(PID-5-BF)
・The Dissociative Experiences Scale Taxon and Its Arabic Version(DES-T)
多項ロジスティック回帰分析 混合型の未就労者が29名(72.5%)に対して,てんかんのみは19名(47.5%)と優位に混合型の方が未就労者が多い.過去に家族の機能不全や虐待があった者は混合型の方が有意に申告が多かった.精神疾患併発は混合型の方が有意に多く,混合型で36名(90.0%),てんかんのみは7名(17.5%)であった.そのうちうつ病と解離性障害はその他の精神疾患よりも混合型で優位に多い.多項ロジスティック回帰分析では,家族機能不全(OR:9.674),虐待(5.947),うつ病(10.567)が有意であった. ×精神症状のある方が除外されているが基準について記載がみられない.
×家族機能不全の基準について記載がみられない.
×うつ病と虐待歴,家族機能不全は共変量している可能性があるが統計的に調整されているか記載がみられない.
×多項ロジスティック回帰分析に入れる説明変数を単変量のロジスティック分析の結果から選定されている.
2 Talıbov, T., İnci, M., Ismayılov, R. et al. (2024) The relationship of psychiatric comorbidities and symptoms, quality of life, and stigmatization in patients with epilepsy.(トルコ) てんかん外来クリニックを受診し研究への参加に同意したてんかん患者300名(32.19 ± 11.5) 横断研究 併存する精神疾患と臨床および社会人口統計データ,患者の生活の質とてんかん患者のスティグマの認識との関係を評価すること. ・SCL-90-R Symptom Check List
精神症状と心理的苦痛を測定,一般症状指数(GSI)が1以上は下記インタビューを実施
・Mini International Neuropsychiatric Interview(MINI)
・年齢,性別,教育水準,婚姻状況,てんかん発症年齢,てんかん罹患期間,磁気共鳴画像法(MRI)および脳波(EEG)所見,てんかんの家族歴,てんかん手術歴,てんかん手術と精神医学的評価の間隔,発作頻度,および使用された抗てんかん薬による治療の回数
・Quality of life in epilepsy inventory(QOLIE-10)
・Jacobyにより改訂されたStigma scale
多変量ロジスティック回帰分析 MINIテストを受けた99人(35.6%)の患者のうち69人(24.8%)で,少なくとも1つの併存精神疾患が検出された.多変量ロジスティック回帰分析において精神疾患合併のリスク因子は精神疾患の既往歴(OR = 2.881),高いQOLIE-10スコア(OR = 2.731),および認識されたスティグマ(OR = 1.593)であり,就労の関連はなかった.スティグマと精神疾患合併との関連については,双方向の関係がある可能性がある. ×GSIスコアが1未満でありその他のスコアが1を超える場合はMINIを行っていないため精神疾患が正しく評価されなかった可能性がある.
×抗てんかん薬の調査はあるが,副作用の調査がない.
×副作用,家族因子の調査がなく交絡因子となっている可能性.
3 Goel, P., Singh, G., Bansal, V. et al. (2022) Psychiatric comorbidities among people with epilepsy: A population-based assessment in disadvantaged communities.(インド) てんかんの診断を受けた成人患者116人(精神疾患併発者60人36.5 ± 13.5,非併発者30.7 ± 11.4) 横断研究 低所得~中所得の国におけるてんかん患者の精神疾患のスクリーニング及び診断の経験を報告すること,うつや不安障害の心理的要因を検討すること. ・the Brief Psychiatric Rating Scale
・the Neurological Disorders Depression Inventory for Epilepsy(NDDI-E)
・Generalized Anxiety Disorder-7(GAD-7)
・人口統計変数
・てんかん関連変数
・抗てんかん薬
・精神医学的変数
・マクネマーテスト
・B一元配置分散分析(ANOVA)
ロジスティック回帰分析
116人中63人(63.54%)に精神症状の併発がみられた.就労者は17人(33%)と少ない集団であった.多変量ロジスティック回帰モデルでは,高校卒業未満の教育[オッズ比(OR):2.59],発作頻度が少なくとも1年あたり1回であること(OR:2.36),発作発症年齢が遅いこと(OR:1.05),およびクロバザムの使用(OR:5.09)が精神科診断と関連していた.低中所得国ではてんかんは重度の偏見から精神疾患併存による二重の打撃となることが示されている. ○インド北西部のにある住民約6万人を対象としたスクリーニングキャンペーンから募っているため目的に沿った集団をリクルートできている.
×精神症状の診断を受けた方の年齢が高く(19~80歳),高齢期のてんかん及び認知症,精神症状に結果が影響している可能性がある.
4 Seo, J. G., Lee, G. H., Park, S. P. (2017) Apathy in people with epilepsy and its clinical significance: A case-control study.(韓国) 1年以内に抗てんかん薬の投与を受けたてんかん患者240人(39.8 ± 12.9 幅:18~70)と健康状態良好な対照群124人(39.3 ± 11.4 幅18~68) ケースコントロール研究 てんかん患者におけるアパシー(モチベーションが下がる状態)の臨床的有用性を検討すること. ・the Apathy Evaluation Scale-Self(AES-S)
・the Korean version of the
Neurological Disorders Depression Inventory for Epilepsy(K-NDDI-E)
・the Generalized Anxiety Disorder7(GAD-7)
・the Epworth Sleepiness Scale(ESS)
・the Insomnia Severity Index(ISI)
・the Quality of
Life in Epilepsy-10(QOLIE-10)
・GABA作動性かGABA非作動性の抗てんかん薬か
・分散分析(ANOVA),共分散分析(ANCOVA)
・線形重回帰分析(ステップワイズ法)
てんかん患者は対照群と比較して,学歴が低く,雇用が少なく,運転免許取得が少ない.アパシーの平均は対照群と差異はないが,てんかんコントロール不良群はコントロール群と比較して優位に高く,サブスケールの「行動」については,対象群より高かった.重回帰分析でのアパシーの予測因子はNDDI-E(β0.476),抗てんかん薬の内服期間(β0.151)であった(決定係数0.264).重度てんかん患者は学歴が低く,失業して貧困になる可能性が高く,アパシーと関連がある. ○年齢が68歳までのため認知症に伴う無気力などは影響していない集団である.
×精神症状とNDDI-Eは共変量している可能性.
×単回帰分析で優位な雇用率が,重回帰分析で説明変数に入っていない.
5 Thorpe, J., Ashby, S., Hallab, A. et al. (2021) Evaluating risk to people with epilepsy during the COVID-19 pandemic: Preliminary findings from the COV-E study.(イギリス) 英国を拠点とする463人のてんかん患者(18~39歳が44.7%,40歳以上が35.8%) 調査研究 cociv-19が発作の頻度を増加させたか,併発症と関連があるか,死亡率との関連といったことに焦点をあてて,健康と幸福への影響を明らかにすること. ・人口統計(年齢,性別,民族的背景,郵便番号)
・てんかん,健康関連
・パンデミック中の行動,状況の変化,精神的健康状態,アルコールや薬物使用,睡眠パターン,発作の変化,独居か,緊急処置に対応する人との同居の有無,主治医との相談内容
・ヘルスケアアクセスの影響
・ユーザー満足度
・カテゴリー化
・記述統計,クロス集計
パンデミック中の健康の変化を40%が回答(19%が発作の変化,34%が精神的健康上の問題,26%睡眠障害)しており,自身の健康と幸福についての認識で,仕事の不安定さの回答が1名みられた.38%(176人)が過去12か月間にてんかんまたは関連する傷害,緊急治療が必要になった.分析をDM,心臓病,高血圧,呼吸器疾患のある人に限定すると(97人)34%が睡眠障害を経験し,43%が精神的ストレスの増加を報告していた. ○複数地域からのデータであり,英国全体のてんかん患者からリクルートされている.
×記述統計のみであるため関連性,影響の検証はできない.
×精神的健康状態については自己申告の可能性がある.
×covid-19流行期間中の雇用の変化について調査されていない.
6 Gandy, M., Sharpe, L., Perry, K. N. et al. (2013) The psychosocial correlates of depressive disorders and suicide risk in people with epilepsy.(オーストラリア) 三次紹介センターを受診したてんかん患者123名(40 ± 14 幅:18~73) 横断研究 1.心理社会的な要因を調査することで,うつの診断や自殺リスクを指摘されることとの特有の関連を調べること.
2.病気の表現やコーピング,疾患に関する自己のもつれモデルの要因がうつや自殺リスクと関連するか調査すること.
・人工統計,てんかんの詳細
・the Way of Coping Scale-Revised(WOCS-R)
・the Illness Perception Questionnaire
・a self-administered version of the Pictorial Representation of Illness and Self-Measurement(PRISM)
・the 33 item Epilepsy Self-efficacy Scale(ESE)
・the Mini International Neuropsychiatric Interview (MINI) 5.0
ロジスティック回帰分析 53%が雇用されているか,学生であった.3割にうつ病があり,自殺リスクは33%にみられた.二変量分析で,自己肯定感の低さと逃避型のコーピングの多さ,責任感がうつと自殺リスク共に関連していた.
雇用状況は自殺リスクの重要な予測因子であり,逃避回避に関するコーピングと疾病の影響に関するサブスケールがうつと自殺リスクを予測する特有の変数となっていた.
×コーピング尺度の信頼性が低い.
×過去の入院歴も影響している可能性.
×うつ症状やや自殺リスクのカットオフ値の記載がみられない.
7 Lim, K. S., Wong, K. Y., Chee, Y. C. et al. (2023) Feasibility of psychological screening in a tertiary epilepsy clinic.(マレーシア) マレーシアにある医科大学病院(3次医療機関)を受診しているてんかん患者585名(43.3 ± 15.5) 横断研究(Googleフォームまたは書面) ・忙しい診療所でのさまざまな制限がある中で,自記式多言語NDD-IおよびGAD-7を使用して日常的な心理スクリーニングの実現可能性を判断すること.
・マレーシアの多民族てんかん患者集団におけるうつ病と不安をスクリーニングするための簡単なスクリーニングツールの実現可能性と予測因子を調査すること.
・The Neurological Disorders Depression Inventory fo Epilepsy(NDDI-E)
・the Generalized Anxiety Disorder-7(GAD-7)
・人口統計(年齢,性別,民族,発症年齢)
・カルテからの臨床データ(発作タイプ,てんかん症候群,病因,精神疾患併発,熱性けいれん,家族歴)
・一元配置分散分析
・多重線形回帰分析
NDDI-Eは就労者や未就労者よりも学生(11.6 ± 4.4)の方が有意に高い,GAD-7も同様に学生が有意に高い(6.1 ± 5.2).NDDI-Eを従属変数にした重回帰分析では発作の発症年齢(β = –0.265),てんかんの期間,レベチラセタムの使用(0.147),クロラゼプ酸(0.127),ラモトリギン(0.125)が関連していた(決定係数0.135).GAD-7を従属変数にした重回帰分析では現在の年齢(β = –0.152),民族がインディアンであること(0.114),カルバマゼピン(–0.090)が関連し,いずれの精神症状にも就労状況は優位な関連がなかった(決定係数0.099).思春期てんかん患者のうつ病のリスクは成人より2.54倍高く,健康な集団よりもうつ症状の有病率が有意に高い. ○首都圏にある3次医療機関であり,サンプルサイズが大きい.
×対象者の平均年齢が高いが,学生の精神症状が有意に高くなっているため学歴の高い集団の可能性.
×スティグマ,家族因子の調査がされておらず,交絡因子の可能性がある.
×スクリーニングツールとして利用可能か検討するために費用対効果,回答時間の負担などの記載がみられない.
8 Sajatovic, M., Colon-Zimmermann, K., Kahriman, M. et al. (2018) A 6-month prospective randomized controlled trial of remotely delivered group format epilepsy self-management versus waitlist control for high-risk people with epilepsy.(アメリカ) てんかんと診断を受けている患者(自己申告),かつ,18歳以上,かつ,6か月以内に入院などネガティブな事象があった方120名
SMART介入群60人(45.5 ± 12.3),対象群60人(41.0 ± 11.4)
RCT コミュニティ参加型アプローチによって 改良されたSMARTを実装し,SMART(N = 60)と待機リスト対照(WL,N = 60)を比較する6か月間のランダム化比較試験. 【測定内容】
・NHEの総数(否定的な健康事象:発作,事故,自殺未遂,救急外来受診,または入院)
・患者健康質問票(PHQ-9)
・モンゴメリーアズバーグうつ病評価尺度(MADRS)
・てんかん患者用QOL(QOL-10)
・簡易健康調査(SF-36)
・リバプール発作重症度スケール
【介入内容】
・約8~10週間の間にわたって8回のセッションを実施
・1回目は対面:ナースエデュケーター(NE)とピアエデュケーター(PE)2人が協力して60~90分のセッションにより積極的な自己管理の動機付け
・2回目以降はリモート:NEとPEが交互に電話,個人ケアプランの達成状況を確認
・記述分析
・Mann-Whitneyノンパラメトリック検定を使用
・一次自己回帰(AR (1))共分散構造と被験者レベルのランダム効果による縦断的バイナリ混合モデル
対象者の74.2%が失業中,87.4%が年間収入25,000米ドル未満であった.登録後30日以内に57.5%が発作があり,NHE(否定的な健康事象)のほとんどは発作であった.SMARTを受けた介入群は対象群と比較して,ベースラインから6か月間で総NHE中央値の減少が大きくなった(p = .04).SMART介入群は対象群 と比較して,PHQ-9(p = .032),MADRS(p = .002),QOLIE-10(p < .001),およびSF-36(身体の健康p = .015,精神の健康p = .003)で優位な差があった. ○新しい自己管理介入を実装する目的があるため,対象者を6か月以内にネガティブな事象があった方に限定している.
○割り当てはランダム化され,対照群は介入群との交流はなくブラインドされ,同じ期間追跡され調査を受けた.調査後,SMART介入を受け平等に扱われている.
×介入群と対照群に就労状況に差があった.
9 Kottapalli, I., Needham, K., Colón-Zimmermann, K. et al. (2022) A community-targeted implementation of self-management for people with epilepsy and a history of negative health events (SMART): A research and community partnership to reduce epilepsy burden.(アメリカ) てんかんと診断を受けている患者(自己申告),かつ,6か月以内に入院などネガティブな事象があった方 23名(48.5 ± 16.15) 介入研究 4か月の前向きプログラムをてんかんサービスのキーパーソンと連携しながら,コミュニティーで実装すること. 【測定内容】
・SMARTで得た情報(人口統計,てんかんの期間,発作型,精神症状)
・うつ傾向MADRS: Montgomery Asberg Depression Rating Scale
・PHQ-9: the Self-reported Patient Health Questionnaire 9-item version
・QOL-10: the Quality of life in epilepsy
・GAD-7: the 7-item Generalized Anxiety Disorder
・満足度(リッカート)
・ESMS: the Epilepsy Self-Management Scale
・外来やカウンセリング,職業相談などのリソースの利用状況
【介入内容】
・Community-SMART(C-SMART)てんかんセンターと連携
・60~90分の8セッション(8~10週)
・SMARTからの変更点(全てオンラインまたは電話,実施者の拡張 訓練された看護師やピアエデュケーター)
ベースラインと4か月後の各尺度をT検定 照会した10人に1人の参加となった.平均48.5歳,1か月以内に平均6回の発作,63%に精神症状を併発していた.4か月後に優位に変化したのは,うつ尺度,自己報告型健康尺度,てんかんセルフマネージメントコンピテンシーであった.NHEやQOLの優位な変化はみられなかった.90%がSMARTの有用性に賛成し,他者に勧めたいと回答した.SMARTは病院で実施になるが,このセッションは病院以外でも可能となる. ×対象者が少なく検定の精度が低い.
×対照群がないため,介入の効果で変化があったか検証ができない.
×除外基準の記載がみられない.
×各尺度の信頼性妥当性の記載がみられない.
10 Sajatovic, M., Tatsuoka, C., Welter, E. et al. (2016) Targeted self-management of epilepsy and mental illness for individuals with epilepsy and psychiatric comorbidity.(アメリカ) 精疾患簡易構造化面接(MINI)で統合失調症,感情障害,双極性障害,大うつの診断がついており,てんかんの診断をうけている18歳以上の患者 TIME介入群22人(52.00 ± 7.58歳),対照群22人(45.10 ± 14.18) RCT 精神疾患を合併したてんかん患者(E-MI)を対象とした16週間にわたるてんかん及び精神疾患の標的自己管理(TIME)の実現可能性,受容性,有効性を前向きランダム化比較試験を使用してテストすること. 【測定内容】
the Montgomery Asberg Depression Rating Scale(MADRS),the Charlson Comorbidity Index,Health Literacy,発作頻度,the Brief Psychiatric Rating Scale,the 10-item Epilepsy Stigma Scale,the Patient Health Questionnaire,QOL the Quality of Life in Epilepsy(QOLIE-10),the Global Assessment of Functioning,the Pittburgh Sleep Quality Index,the World Health Organization Disability Assessment Schedule II,the Internalized Stigma of Mental Illness Scale,the Multidimensional Scale of Perceived Social Support,the Epilepsy Self-Efficacy Scale 2000 version
【介入内容】
・てんかんと精神疾患の標的自己管理(TIME)16週間の前向きプログラム
・開発委員会は医療専門家5名,E-MI患者4名,支援者2名で構成
・ステップ1:12回の60~90分のグループセッション,看護師とピアサポーターの協力,12週間で完了,セッションの内容は,精神疾患とてんかんに関する事実,同時に対処するための行動計画,個人目標の設定,ストレス管理など
・ステップ2:ピアエデュケータ―との電話によるメンテナンスセッションを2回,看護師による電話セッションを2回,内容:継続的なサポートと自己管理,看護師は主治医に簡単な情報共有を実施
定量データ:ロバスト共分散推定を用いた一般化推定方程式法,ロジスティック回帰分析,介入前後(16週)の値をt検定
定性データ:テーマ別コーディング
対象者の平均年齢48.25歳であり,31人(70.5%)が失業,42人(92.5%)が年収25,000ドル未満であった.
16週間継続評価されたのは35名(TIME19名,通常治療16名)であり,グループセッションの参加率90%(対面での参加が難しい場合は電話での参加が許可された)TIME群ではうつ病尺度は優位に低下したことから,うつ症状を改善できることを示唆している.うつ尺度以外の測定値について,グループ平均はTIMEの方が比較群よりも数値の改善が大きいが統計的に優位なものはなかった.
○対象者は研究前にMINIの面接を受け,精神疾患を診断された者である.
○介入群と対象群の平均年齢が異なるが有意な差はなく,就労状況にも差がない集団である.
○ランダム化はされており,対照群は調査時以外,介入群との交流はなくブラインドされていた.
○対照群は介入群と同じ期間追跡され,同じ時点で評価されている.
×対象者の平均年齢が高く,退職者の影響の可能性がある.
×追跡可能後の脱落率が20%であり検定の精度が低い.

※方法論として良好な点は○,脆弱な点を×として示した

また,平均年齢30代で地域に住むてんかん患者の就業率(就労形態に障害者雇用,就労場所に就労支援施設を含む)は45.4~76.9%であり,うつ病及び全般性不安障害といった精神症状の併発率は14.2~63.54%であり,調査を行う国や地域により異なっていた(Arai et al., 2023Goel et al., 2022Seo et al., 2017Talıbov et al., 2024Tlusta et al., 2009Willems et al., 2019).対象者の平均年齢が40代で精神症状を併発した者のみの文献や緊急入院といったネガティブな事象を6か月以内に経験している方が対象の文献では失業中が7割を越えていた(Sajatovic et al., 2018Sajatovic et al., 2016).

2. QOLに関する文献(表1)

てんかんを合併する結節性硬化症患者のQOLを調査した文献では,小児期も含めて調査されており対象者の平均年齢は19.8歳であった.半数からうつ病/不安障害の報告があり,雇用の機会を得ることが難しいこと,小児科から成人期医療への移行が困難という回答がみられていた(Jansen et al., 2020).同様に結節性硬化症の成人を対象とした文献では平均年齢31歳の集団を対象としており,QOLには抗てんかん薬の有害事象,活動性てんかんがあること,神経精神症状の併発が関連していることが示され,就労状況に関連はみられなかった(Zöllner et al., 2021).一方で,平均年齢39.9歳の外来通院患者を対象にした文献と,米国全国健康調査を基に調査された文献(年齢についての記載なし)では,てんかん患者のQOLには発作頻度,精神症状の併発に加えて就労状況が大きく関連していることが示されていた(Kobau et al., 2014Tlusta et al., 2009).

また,平均年齢が40代の集団を調査した文献では,精神症状とともに頭痛といったてんかん患者に生じる痛みもQOLと関連していること(Welton et al., 2020),抗てんかん薬の副作用のQOLへの影響力は,うつ症状の程度,焦点発作頻度,雇用状況よりも影響力が大きいことが明らかにされていた(Azuma & Akechi, 2014).薬剤耐性のある内側側頭葉てんかんで脳外科手術を受けた患者では術前後でうつ症状が有意に減少し,QOLの社会機能領域において対象群よりも有意に高い結果となっていた(Dias et al., 2017).

また,QOLの改善を目的として,デンマークで取り組まれている患者報告アウトカム(Patient-reported-outcomes:以下,PROとする)を用いた新しい外来患者のヘルスケアシステムについて調査した文献がみられた.WHO-Five Well-being Index,Short Form Health Survey 36といったPROを使用したリモート診療フォローアップについて,初診から18か月間,追跡調査された.その中で,独居,精神疾患の併発,収入の低い方は臨床医よりPROを用いたリモート診療へ紹介される可能性が低いことが示されていた(Schougaard et al., 2020).

3. 就労を含む社会状況に関する文献(表2)

小児期にてんかんを発症した患者のみを追跡し,調査時の平均年齢が20代の縦断研究の文献が2件みられた.まず,兄弟姉妹を対照群とした,てんかんの診断後15年追跡した前向きコホート研究では,神経学的な異常や知的障がいといった合併症がないケース群は,きょうだい児のコントロール群と比較して雇用状況や学歴に有意な関連はなく,同等の社会状況であったと示している(Baca et al., 2017).また小児期発症てんかん患者を17~21年間,追跡した縦断研究では,発作状況は雇用及び学歴と負の関連がみられること,精神症状の併発は学歴に影響することが明らかになっていた(Berg et al., 2016).しかし,いずれの縦断研究も脱落率は高く,6~7割程度の患者が脱落していた.

また,特定のてんかん症候群を対象として調査した文献もみられた.若年性ミオクロニーてんかん患者(以下,JME)を対象としたケースコントロール研究(平均年齢26.6歳)では,ミオクロニー発作と全般発作の頻度は社会適応の仕事と関連しており,就労は若年性ミオクロニーのような様々な発作タイプのあるてんかんにおいて影響する可能性が示唆されていた(Moschetta & Valente, 2013).素因性全般てんかん(以下,GGE)または海馬の硬化を伴う内側側頭葉てんかん(以下,MTLE-HS)の診断を受けた方を対象とした,社会機能障害及びスティグマを調査した横断研究では,てんかん症候群間において就労状況に差はみられなかったが,MTLE-HSにおいて他の症候群と比較して精神疾患の併発率が高く,てんかんがあるために就職が困難と感じたことがある者は他の症候群よりも有意に多かった(Gabriel et al., 2020).突発性(素因性)全般てんかんのみを対象とした研究(Gesche et al., 2021)では,持続する発作と収入の低さは就業率と関連しており,突発性全般てんかんのうちJMEをもつ者は精神症状併発が対照群より多く,社会的な変数に負の関連があった.

対象集団の平均年齢が30代の3文献では,フェノバルビタール,レベチラセタム,トピラマートといった特定の抗てんかん薬が就労状況と関連すること(Arai et al., 2023)が示されていた.また,てんかんに特化したカウンセリングに関する調査では,カウンセリングの目的として4~5割の方が行政から受ける助成や教育及び就労の問題を相談することを挙げており,患者満足度が高いことが示されていた(Willems et al., 2019).ドイツではてんかん患者の障害年金受給のリスク因子として50歳以上であること,3か月以上の休職,精神症状の併発が挙げられていた(Specht et al., 2015).18歳から64歳が71%を占めるカナダ地域保健調査では,てんかん患者の4割が就労しておらず,そのうち19%がその他の疾患や精神障害により就労が困難と回答しており,永久に就労が困難と回答したのが9.3%みられた(Gilmour et al., 2016).

4. 精神症状を含むメンタルヘルスに関する文献(表3)

まずはじめに横断研究において精神症状併発と就労といった社会的因子との間に有意な関連があると示している文献は4件みられた(Arai et al., 2023Gandy et al., 2013Kobau et al., 2014Moschetta & Valente, 2013)が,関連のない文献は4件であり文献によって矛盾した結果であった.関連のみられなかった文献は,対象者が突発性全般てんかん患者のみを対象とした研究(Gesche et al., 2021),インドの低中所得のコミュニティでてんかん患者を対象に調査した研究(Goel et al., 2022),トルコの外来クリニックを受診したてんかん患者を対象にした研究(Talıbov et al., 2024),マレーシアにある医科大学病院を受診しているてんかん患者を対象にした研究であった(Lim et al., 2023).

対象者の平均年齢が30代の文献では,てんかんのみを罹患している患者と,てんかんと心因性てんかんを合併している混合型の患者を比較した文献がみられた.精神疾患の併発は混合型の方が有意に多く,心因性てんかんの予測因子として家族機能不全,虐待,うつ病が示されていた(Kishk et al., 2021).また,精神疾患合併のリスク因子として,精神疾患の既往歴,QOLの低さ,認識されたスティグマが挙げられ,就労状況は有意な関連はみられなかった(Talıbov et al., 2024).インドで調査された低~中所得地域における精神疾患のスクリーニング及び診断についての文献では対象者116人のうち半数の63人に精神症状の診断がつき,就労している方が17人(33%)と少ない集団であった.その中で,精神疾患の診断がついた群と診断のつかない群と比較した結果,学歴,発作の発症年齢が遅いこと,発作頻度,クロバザムの使用に有意な差がみられた(Goel et al., 2022).さらに,韓国における調査では,抗てんかん薬の長期服用がアパシー(周囲への無関心)と関連し就労に影響している可能性が示唆されていた(Seo et al., 2017).またcovid-19パンデミック中のイギリスでの調査では,4割がロックダウン中にてんかん発作の悪化,精神健康上の問題といった健康の変化があったと回答していた(Thorpe et al., 2021).

対象者集団の年齢が上がり平均年齢40代の調査では,てんかん患者におけるうつ病の併発と自殺リスクについて,回避型コーピングがうつ病や自殺リスクと関連があることが示されていた(Gandy et al., 2013).マレーシアでの調査では,うつ症状の強さには発作の発症年齢,レベチラセタム,クロラゼプ酸,ラモトリギンの内服が関連していたが,就労状況に有意な関連はみられなかった(Lim et al., 2023).

また,対象者の平均年齢が40~50歳代の介入研究が3件みられ,うち2件はランダム化比較試験(以下,RCT)と介入研究1件であった.RCTのうち一つは,精神症状併発に関わらずてんかん患者を対象としたコミュニティー参加型アプローチSelf-management for people with epilepsy and a history of negative health events(以下,SMART)の介入であった.SMARTは積極的な自己管理の動機付けに関するグループセッションを含む介入であり,RCTの結果,介入群は対照群と比較してうつ症状,QOL,簡易健康尺度の値で改善がみられた(Sajatovic et al., 2018).さらにSMARTを全てオンラインで参加可能に変更されたCommunity-SMART(C-SMART)(Kottapalli et al., 2022)が開発され介入の実装が行われていた.介入前と介入後4か月後の調査を比較し,うつ尺度,自己報告型健康尺度,てんかんセルフマネージメントコンピテンシーが有意に変化していたが,対照群はなく,分析は介入前後値のt検定のみであった.これら2つの介入はてんかん患者を対象とする介入である一方で,精神症状にフォーカスをあてた介入のRCTも行われていた.精神症状を併発したてんかん患者のみを対象とした介入Targeted Self-Management for Epilepsy and Mental Illness(TIME)では,介入内容として精神疾患とてんかんを同時に対処するための行動計画,個人目標の設定などを行うグループセッション,看護師とピアサポータ―からの電話メンテナンスセッションが含まれていた.4か月の追跡の結果,介入群は対照群と比較して,うつ症状に関する尺度が有意に改善されていたが,脱落者がおり最終的な調査は介入群19名,コントロール群16名であった(Sajatovic et al., 2016).

Ⅳ. 考察

本研究において,てんかん患者は就労におけるネガティブな経験,精神症状併発や抗てんかん薬の影響により大きくQOLが損なわれる可能性があることが明らかとなった.また,対象文献において精神症状の併発から就労自体が困難な患者もみられることが示されていた.健康と直接関連のあるQOL(health related QOL: HRQL)は身体的状態,心理状態,社会的状態,霊的状態,役割機能や全体的well-beingなどが含まれる(土井,2004)とされている.てんかん発作のみならず精神症状を併発した場合,雇用や経済的自立といった社会的状態の自己不全感を抱くことが推察される.さらに抗てんかん薬の影響を受けながら思春期以降の大きなライフイベントを経験することから,てんかん薬の長期的服用に伴う食欲変動,思考力低下,睡眠への影響といった生活への影響は就労継続へのリスク要因となりえるため,主治医と連携した薬剤調整が求められる.さらに自己では症状出現のコントロールが困難なてんかん発作や精神症状に対して,就労の場面では症状の出現の仕方に合わせた業務調整が必要であり,職場との調整相談が不可欠となる.加えて,失業する場合は,再就職の相談や障害年金といった社会保障の相談が可能な機関と連携が必要となる.医療の側面だけでは支援が難しく,成人期にQOLの著しい低下に繋がる可能性もあることから移行期前から産業保健及び計画相談支援事業といった他機関との連携が今後の課題である.

また,就労状況と精神症状の併発の関連が文献によって矛盾していることは,文献によって対象者のてんかん症候群が異なることや調査した地域により社会的状況が異なるためと考えられる.就労状況と精神症状併発の両者に関連がないことが示されている突発性全般てんかんでは,一般的に知的な障害を伴わず発達は正常だが注意欠如多動性障害,学習障害を合併することが知られている(Hirsch et al., 2022).知的な障害を伴う場合,初めての業務内容や急なスケジュール変更,新規性の不安や業務手順のこだわり,精神的な不安定さや円滑な作業遂行の困難さといった障害特性に起因する課題や対人関係に関する課題が挙げられる(松田,2023).このことから研究対象者が知的な障害を伴うてんかん患者の場合は就労における障害特有の困難感から,精神症状併発の割合が高まる可能性があることが推察される.さらに対象文献(Gabriel et al., 2020)において精神疾患併発には単なる就労の状況のみならず,てんかんであることの開示,就労における制限といったスティグマが関連していることが示されていた.しかし前述したように精神疾患併発には就労場面における障害特有の困難感や,就労場面での発作や服薬管理に対する認識,対人関係に対する葛藤,国や地域による障害者雇用制度の差や文化的な影響など,多様な要因が関連すると考えられる.また小児期発症のてんかん患者の就労においては,家族関係の変化がある中で,患者と家族に対して,発作症状に合わせた職業選択や個々の能力や適性についての相談が必要となり,成人期発症患者とは異なる課題が生じることが推察される.そのため小児期発症てんかん患者における就労と精神症状併発の関連性の解明においては,就労場面におけるネガティブな経験について定性的な研究が求められると考える.

そして,てんかん患者に対して実装されているアウトリーチ型の介入が有用である可能性がある.精神症状併発したてんかん患者の場合,発作への不安や恐怖,および意欲の減退や集中力低下といった陰性症状により外出困難な場合があるため,アウトリーチ型の介入により精神症状の軽減に寄与していることが推察される.しかし,いずれの介入も成人期を対象とした介入であり,移行期より将来を視野に入れた継続したストレス対処及び自己の症状把握や他機関への相談を含めたセルフマネジメントの準備性を高める研究も今後検討が必要と考える.

最後に,対象文献の方法論的質的評価を行い,研究方法に関する今後の課題について述べる.小児期発症てんかん患者を追跡した縦断研究では脱落率も半数近くと高く,アウトカムの確実性が低い可能性が残っていた.これは小児神経科医より患者を募集しており,成長に伴い成人の医療機関への移行,保護者からの独立により追跡困難な事例が多くみられることが推察された.今後は移行した医療機関との連携や多施設による継続的な調査が求められる.また調査内容で交絡因子が見落とされることが挙げられる.QOLに関しては抗てんかん薬による副作用,就労状況では疾患による認識されるスティグマ,精神症状に関しては特定の抗てんかん薬の使用,IQといった変数が影響力をもつことが先行研究で示されており,調査が必要になる.さらに,統計分析において,就労状況と精神症状は相関する場合があり,重回帰分析の際は多重共線性の影響を考慮した分析方法が必要であると考える.

Ⅴ. 研究の限界と今後の課題

本研究の限界として以下の三点が挙げられる.まず一つは文献選定における方法の限界である.本研究で使用したデータベースは,PubMedとCINAHL Plus with Full Text,医中誌であり,医学文献が中心となり対象文献を網羅できていない可能性がある.そして,文献の抽出を著者1名で行っており,複数で抽出を行った場合と比較して包括基準の文献を見落とす可能性が高くなっていることが課題として残る.二つ目はバイアスのリスク評価を行っていない点である.本研究は,小児期発症てんかん患者における成人期の就労と精神症状の関連性,それぞれに関連する因子を調べ,成人期におけるてんかん患者を取り巻く社会状況の課題を見出すことで今後の移行期支援の課題を明らかにすることを目的としており,研究バイアスのリスク評価は行っていない.今後,精神症状併発へ影響する要因を特定すること,介入内容の効果を正確に把握するためには研究バイアスのリスク評価が必要と考える.最後に,文化的な社会状況の影響を加味できていない点である.本邦で調査した文献は2つであるが,その他の文献は調査が海外であり教育環境や社会資源が異なる調査内容が含まれているため調査された地域の社会状況を加味した検討が今後必要である.

Ⅵ. 結論

小児期にてんかんを発症した成人のQOLには就労状況,精神症状併発,抗てんかん薬の副作用といったことが影響していることが示唆された.医療の側面だけでは支援が難しく,産業保健及び計画相談支援事業といった他機関との連携が今後の課題である.また,就労と精神症状との関連は文献により矛盾した結果となっていたことから,就労場面におけるネガティブな経験について定性的な研究が今後求められる.メンタルヘルス対策としてはアウトリーチ型の介入が開発運用されているが,成人対象の介入であり,移行期より継続したストレス対処及び自己の症状把握や他機関への相談を含めたセルフマネジメントの準備性を高める研究が今後求められる.

付記:本研究は日本私立看護系大学協会の若手研究助成を受けて実施した.また,本論文は日本小児看護学会第34回学術集会で発表した「小児期発症てんかん患者の成人期における就労と精神症状併発に関する文献検討」に加筆・修正を加えたものである.

利益相反:本研究における利益相反はない.

著者資格:SAは研究の着想及びデザイン,データ収集と分析,論文執筆の全プロセスを担当した.HKとKIはデザイン及びデータ分析と解釈,論文執筆への助言を行い,論文執筆へ貢献した.著者全員が最終原稿を読み,承認した.

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