2025 年 45 巻 p. 236-245
目的:術前外来で行われている退院後の生活を見据えた看護実践を明らかにする.
方法:術前外来の看護師を対象に個別に半構造化面接を実施した.分析方法はクラウス・クリッペンドルフの内容分析とした.対象者別の逐語録を精読し,看護実践の語りを対象者の言葉のまま抽出し,内容が明瞭になるように文章で表しコードとした.対象者全体のコードを意味の類似性や相違性を検討して共通する項目ごとにサブカテゴリ化,カテゴリ化した.
結果:対象者は6名で面接時間は平均43分であった.分析の結果,術前外来における退院後の生活を見据えた看護実践は235コード,53サブカテゴリ,9カテゴリであった.
結論:看護師は,安全な周術期管理を目的に身体的準備を整える支援を看護師間・多職種と連携して行っていた.また,精神・社会的な情報から患者の思いや価値,生活状況を把握し,意思決定支援や術後の変化と共に生活していくための支援を重視していた.
Objective: To clarify nursing practices with a focus on life after discharge in preoperative outpatient care.
Methods: Semi-structured individual interviews were conducted with nurses providing preoperative outpatient care. The interview content was then analyzed using the Klaus Krippendorff’s method. The verbatim transcripts for each participant were carefully read. The narratives of nursing practices in preoperative outpatient care were extracted in the participants own words, written down to clarify the content, and then coded. The codes for all participants were categorized and subcategorized into common items while the similarities and differences in meaning were examined.
Results: Six nurses were included with a mean interview time of 43 min. Through content analysis, nursing practices in preoperative outpatient care with a view of life after discharge were represented by 235 codes, 53 subcategories, and 9 categories.
Conclusion: Support for physical readiness for safe perioperative management was provided in collaboration with other nurses and multidisciplinary staff. Additionally, nurses focused on understanding the patient’s thoughts, values, and living situation according to mental and social information, and provided support for decision-making and living with postoperative changes.
日本の医療体制は,医療モデルから生活モデルにシフトしている.診療報酬の改定により周術期の診療期間は短縮し,術前検査や術前オリエンテーションは外来で行い,手術直前に入院するようになった.そのため,手術に必要かつ重要な事前情報が不足した中で患者が手術前日を迎える現状や,患者・家族の不安な思いに寄り添う時間が十分にとれない状況が増加している.また,術後の形態機能の変化に伴う機能回復や自己管理を十分に身に付ける前に退院となる.加えて,手術を受ける患者の多くは高齢者で,認知機能の低下やフレイルを有している特徴がある.高齢者の中には術前は自立して生活を送っていたにも関わらず,術後に身体能力の低下により転院や退院後に介護が必要になる場合がある.このような予後を予防するためには,術前から術後の日常生活動作(Activities of Daily Living:以下ADL)の回復の程度を予測し,退院後の日常生活も視野に入れた継続的な看護が必要である.小児や成人の患者に対しても同様で,患者が安全・安楽に手術を受け,術後の回復促進をめざした看護は重要課題である.
このような課題に対応し,患者が周術期を通して安全・安心・快適に手術を受けられ,術後合併症なく退院できることをめざして(三淵ら,2020),入院前から周術期に特化した「術前外来」等の名称でよばれる部署を開設し,外来での介入を行う施設が増えてきている(姫野,2020).
術前外来では,患者・家族に対して,身体的・精神的準備を整え,術後合併症なく退院し早期社会復帰できることを目的に,入院前から看護介入を行う(三淵ら,2020).看護師は,手術が安全かつ予定通りに実施されるように,手術や麻酔に必要となる患者情報を収集して評価し,問題となる情報をもとに再検査や治療に向けて対応するとともに,患者・家族が手術のための準備ができるような指導や支援を行っている(石橋,2016;山本ら,2018).また,多職種と協働して持参薬の休薬確認,禁煙指導,手術予定患者のリスク評価や不安への対処を行っている(姫野,2020;長瀬ら,2016).術前外来で看護実践を行うことにより,手術中止や延期,術後合併症の発生率が減少したという報告があり(益満ら,2015;三淵ら,2020),有用性は明らかである.国外でも,術前に看護師が患者の健康状態とニーズに関する適切なデータ,手術療法と処方薬に関する詳細な情報に基づくアセスメントを行い,安全な手術の実施と術後合併症の予防のため看護を行う重要性が述べられている(Sandelin et al., 2019;Kelvered et al., 2012;Ralph, 2018).国内外において,術前の看護実践に関する研究が散見されるが,合併症予防など身体的側面に焦点をあてたものが多く,精神的・社会的な視点を含めた退院後の生活を見据えた看護実践は明示されていない.
早期退院し在宅に移行する患者にとって,術後の回復を促進させることは,その後の患者の生活の質を決定づける重要な要件だといわれている(川原・貝瀬,2013).そのため,入院前から退院後の支援を考えることが重要である(三淵ら,2020).すなわち,患者が安全・安心・安楽に手術を受け,術後合併症を起こすことなく早期に回復し退院するためには,術前外来における退院後を見据えた看護実践が重要だといえる.
本研究は術前外来における退院後の生活を据えた看護実践を明らかにすることを目的とした.周術期に特化した術前外来における看護実践を明らかにすることで,安全な周術期管理と退院後を視野に入れた看護実践が明らかになり,患者の日常生活への早期回復や生活の質(Quality of Life:以下,QOL)向上が期待できる.
術前外来で行われている退院後の生活を見据えた看護実践を明らかにする.
「患者が手術を受けるための身体的・精神的準備を整え,術後合併症なく退院し早期社会復帰できることを目的に入院前から看護介入を行う部署」とした.
術前外来は手術を受けることが決定したときから看護介入を開始する外来で,看護介入には,患者が手術を受けるための身体的・精神的準備を整えるという目的がある(徳山ら,2019).加えて,手術前から退院後の支援を考え,術後合併症なく退院できるように支援することが重要である(三淵ら,2020).本研究では退院後の生活を見据えた看護実践を明らかにするため,操作的に定義した.
2. 術前外来における看護実践「術前外来で看護師が手術を受ける患者,家族および多職種に対して行う行為」とした.
看護実践とは,看護職が看護を必要とする人々に働きかける行為である(日本看護科学学会看護学学術用語検討委員会,2005).術前外来では,多職種が連携してチームとして患者,家族への関わりを行っている(中村・古賀,2021).また,姫野(2020)は周術期外来における看護師の実践内容を,医療職者および患者に対して行っている内容と定義している.本研究においても,術前外来の特徴を踏まえて操作的に定義した.
質的記述的研究デザイン.
2. 研究対象者周術期に特化した部署である「術前外来」で看護実践を行う看護師を対象者とした.選定条件は,①5年以上の看護師経験がある,②周術期看護の専門性を有しており,術前外来における看護実践や考えを語ることができる看護師とした.1人目の対象者の選定は,研究者のネットワークを用いて術前外来を設置している施設に研究協力を依頼し,協力が得られた施設の看護部に対象者の選定を一任した.2人目以降の対象者は,対象者から次の対象候補となる方あるいは施設を紹介してもらった.理論的飽和をめざし,対象者が6名に達するまで依頼を継続した.対象者数を6名とした理由は,全国の周術期に特化した術前外来等の看護師を対象とすることで,異なる経験を持つ参加者を含めることができ多様な視点を得ることが可能になること,先行研究(姫野,2020)では一定の地域において術前外来所属の手術室看護師3名のインタビューにより看護実践が明らかになっていたことを鑑みて,6名の対象者から得られるデータにより理論的飽和に達すると考えたためである.
3. データ収集方法術前外来で看護実践を行う看護師に対し個別に半構造化面接を実施した.インタビュー時間は60分程度とし,対面またはZoom Video Communications(以下Zoomとする)で実施した.インタビューは個室で行い,対象者に事前に説明し同意を得てICレコーダーに録音し,適宜研究者がメモをとった.Zoomでのインタビューは研究者および対象者ともに個室で行い,Zoomの参加者名は個人情報保護の観点から施設名,対象者の個人名以外で任意とし,事前に個別に提示したパスコードで参加を依頼した.また,レコーディング機能は使用せず,対象者の同意のもとICレコーダーに録音した.インタビュー内容は,①属性(所属部署,看護師経験年数,手術室での看護経験年数,所属施設の病床数,所属施設の年間手術件数,認定資格の有無),②術前外来ではどのような患者(術式,麻酔方法,年齢)に看護実践を行っているか,③術前外来での看護実践において患者の身体的側面,精神的側面,社会的側面のような側面が大事だと思うか,④早期社会復帰や退院後の生活の質を高めるために,術前外来での看護実践は必要だと考えるか,⑤術前外来で実際に行っている看護実践,⑥退院後の生活を見据えた看護実践として行っていることや大事にしていること,⑦術前外来で行う看護実践で退院後を見据えるために必要だと考えることを語ってもらった.
4. データ分析方法クラウス・クリッペンドルフの内容分析の技法(Krippendorff, 1980/1989)を参考にした.クラウス・クリッペンドルフの内容分析は,データをもとに文脈に関して反復可能で妥当な推論を行う調査技術で,得られた質的データの文脈を重視しながら意味を解釈していく方法である.本研究は,未だ明らかにされていない術前外来における退院後の生活を見据えた看護実践を明らかにするため,対象者の語りの意味を,文脈を重視しながら退院後の生活と関連させて解釈するクラウス・クリッペンドルフの内容分析が目的に適うと考えた.分析手順は,対象者別の逐語録を精読し,術前外来における看護実践の語りを対象者の言葉のまま抽出し,内容が明瞭になるように文章で表した.文章の意味の類似性と相違性に従って分類しコードとした.対象者全体のコードを意味の類似性や相違性を検討しながら共通する項目ごとにサブカテゴリ化,カテゴリ化した.
5. データおよびデータ分析における信頼性と妥当性の検討方法本研究は,質的調査を報告するための統合された基準(COREQ)(Tong et al., 2007)に則り,研究プロセスごとに基準に従っているかを評価して質を高めた.信用性を高めるために,逐語録,コード化,サブカテゴリ化,カテゴリ化の各分析過程を詳細に記録に残した.また,逐語録を対象者に返し内容を確認してもらうことでデータの信頼性を確保した.明解性と確認可能性を高めるために,コード化,サブカテゴリ化,カテゴリ化の各分析過程で,複数の研究者でディスカッションを行い,コード,サブカテゴリ,カテゴリが「退院後の生活を見据えた術前看護」として生成できているかの検討を重ねた.半構造化面接を進めていく過程で,5名のインタビューが終了した時点で対象者から得られるデータが重複し,6名のデータ分析をした段階で追加のデータ収集が不要であると判断したため,理論的飽和とした.
6. 倫理的配慮対象者に対して研究目的と意義,方法,期間,研究参加の自由意思,研究参加の中断および拒否の権利,プライバシーの保護,個人情報の保護,研究結果の公表方法について文書と口頭で説明し,研究協力の意思を確認して同意書に署名を得た.研究対象者との連絡は研究者と直接電子メールで行い,研究対象者の自由意思で参加または不参加の決定ができ,看護部(看護管理者)には研究参加の可否が伝わらないように配慮した.研究者が所属する札幌市立大学大学院看護学研究科倫理審査会の承認(No. 9③)を得た.
研究対象者は6名で,インタビュー時間は平均43分(35~62分)であった.
| 対象 | 所属部署 | 病床数 | 年間手術件数 | 看護師経験年数 | 手術室での看護経験年数 | 認定資格の有無 | インタビュー時間 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| A | 術前外来 | 299床 | 3,500件 | 23年 | 13年 | 手術看護認定看護師 | 39分1秒 |
| B | 術前外来(手術室兼務) | 299床 | 3,200件 | 15年 | 13年 | 手術看護認定看護師 周術期管理チーム看護師 |
41分46秒 |
| C | 周術期管理センター | 855床 | 10,059件 | 26年 | 2年 | 無 | 62分46秒 |
| D | 周術期管理センター | 855床 | 10,000件 | 17年 | 0年 | 無 | 37分53秒 |
| E | 術前外来(手術室兼務) | 1,172床 | 11,634件 | 28年 | 28年 | 手術看護認定看護師 周術期管理チーム看護師 |
42分17秒 |
| F | 手術センター(手術室兼務) | 450床 | 5,300件 | 20年 | 20年 | 手術看護認定看護師 | 35分14秒 |
術前外来における退院後の生活を見据えた看護実践として235コード,53サブカテゴリ,9カテゴリが生成された.以下カテゴリを【 】,特徴的なサブカテゴリを《 》,研究対象者の語りを「斜字」で示す.
| カテゴリ | サブカテゴリ (コード数) |
|---|---|
| 患者の身体的・精神的・社会的な情報を患者本人・家族から収集する | 患者に会う前にカルテを確認し検査データや既往歴,治療,基本情報から身体的・精神的・社会的側面のリスクを査定する(6) |
| 周術期にある患者の安全を守るために各部署で必要な情報を過不足なく収集する(6) | |
| カルテからは詳しく情報収集できない1日の生活リズムや生活背景,ADL,家族関係を患者本人から情報収集する(3) | |
| カルテから収集した身体的な情報に齟齬がないかということも含めて患者に会って確認をしていく(4) | |
| 家族との会話の様子や家族の言葉から患者自身や家族関係,生活背景を情報収集する(3) | |
| 術中・術後の合併症が発生しないように身体状況のアセスメントを行う | コンパートメント症候群のリスクがないかを観察する(1) |
| 患者を捉えるために短い時間で的確にフィジカルアセスメントをする(1) | |
| 関節可動域,手術体位がとれるか,麻酔導入時に頚部が後屈できるかをアセスメントする(7) | |
| 術後に生じる苦痛の乗り越え方を説明する | 痛みを我慢したり痛みが継続しないようにpatient controlled analgesia(PCA)や痛み止めの使い方,上手に身体の動かしていくなどの術後の乗り越え方を説明する(4) |
| 術後せん妄の症状を説明する(2) | |
| 術後の回復促進にむけて生活習慣の行動変容を支援する | リスクアセスメントを確実に行い,必要な患者に時間をかけて関わることで心身の準備性を高める(9) |
| 飲酒,喫煙,食生活に関するリスクアセスメントを行う(1) | |
| 飲酒,喫煙,食生活の見直しが手術や術後の生活に必要であることを動機づける(3) | |
| 禁酒禁煙は周術期の短期決戦というところで患者に取り組んでもらえるように,患者が頑張れるような支持,支援をする(2) | |
| 合併症のリスクがどの程度ありそうなのか,体力や身体能力,術前の状態が高められるコンディションをよくすることがどの程度可能かを患者と共に確認する(2) | |
| 術後のADL維持のため,術前から筋力を落とさないような生活指導や運動を説明する(5) | |
| 術後の経過を踏まえて,合併症を減らし社会復帰のためには生活の行動変容が必要であることを伝える(6) | |
| 患者が指導を受けた内容をどのくらい取り組んでいるのか術前の頑張りの評価やフォローをする(1) | |
| 患者の「お任せ」の真の思いに寄り沿う | 手術に関する相談や不安に対しては専門性の高い手術室看護師が対応することで患者の安心を保障する(7) |
| 患者の心情を表す体の動きから患者の不安やお任せの思いを察して寄り添う(9) | |
| 手術による変化や不自由さと共に生活していけるように支援する | 手術後の体調や生活の変化に対して,患者がどのように乗り越えていったら退院できるのかをイメージできるような情報を提供する(8) |
| 患者の生活背景に合わせた退院後の生活の見通しを伝える(2) | |
| 患者目線に立って同じ目標に向かうスタンスで術前から術中,術後,退院までの流れを説明する(6) | |
| 手術によってADLが低下したり社会的役割を失うことがないように合併症予防や早期退院に向けて関わる(4) | |
| 術後の生活の質問や不安に対して個人差があるということも含めて解消できるよう関わり患者の心構えにつなげる(6) | |
| 生活の質や治療の価値,意義を踏まえた意思決定支援をする | 事前に情報を確認して患者に手術をする意思を問いかける(4) |
| 医療者の目的と患者が手術に臨む目的や,患者の認識が主治医からの説明と相違がないかを確認する(3) | |
| 手術をしても予後が良くない,生活の変化が伴うなど立ち止まる場面が必要な場合には,何を大事に治療を選んでいくかを改めて考えることを提案する(7) | |
| 退院後,患者に在宅で自己管理してもらうなど手術に付随した生活の変化を患者,家族に術前に十分話をする(3) | |
| 退院後の生活の不自由さや,ある程度活動量低下が見込まれる場合は住み慣れた環境に戻って暮らしに適応ができるかどうか患者に考えを確認する(4) | |
| 手術のレールからおりることが患者にとっては難しいということを理解して治療の選択ができるように関わる(2) | |
| 手術をためらう患者に対して,タイミングを逸することなく家族に呼びかけをして,患者本人と家族で話し合う場を設定する(3) | |
| 術後の体の変化を受け入れて生きていくのは,患者自身の生き方に関わってくるため,手術する,しないを迷うこと,選んでいくことの保証をする(4) | |
| 手術をしなかった時のストーリーをイメージできずに,手術しかないという結論にたどり着く患者もいるので,手術をしたくない気持ちもよくわかると同調する(1) | |
| 手術をしなかった時の想定が患者自身が思い描いていることにズレがないか確認する(2) | |
| 患者が周術期を通して身体的・精神的・社会的に安定して過ごせるよう必要と考える情報を関連部署の看護師と共有して関わる | 患者に不安を抱かせないように外来,手術室,病棟間でシームレスに情報共有をする(11) |
| 手術によって起こり得る日常生活への影響をアセスメントし,病棟で必要なケアを申し送る(3) | |
| 術前からpostoperative nausea and vomiting(PONV)(術後の悪心・嘔吐)のアセスメントをして病棟看護師に申し送る(1) | |
| 皮膚の状態をアセスメントをして褥瘡リスクが高いときはWound Ostomy Continence(WOC)と連携する(4) | |
| 必要に応じて退院支援の部門との連携を取り早い段階で退院調整に着手して関わる(3) | |
| 手術による侵襲を最小にするために看護師が中心となって関連部署・関連職種と連携する | 術中術後の身体状況,精神面を共通認識するために,看護師だけではなく主治医や麻酔科医師など多職種と協議してリスクアセスメントを行う(8) |
| 早期に問題を発見するために看護師が中心になって関連職種と連携する(1) | |
| 日頃から,身体的・精神的・社会的側面で介入が必要な場合に備えて,多職種や他部署の看護師と連携する(10) | |
| 術中,術後のリスクを想定し,どのようにしたらうまく手術ができるのか,侵襲を極力抑えて手術できるのかについて協議の場を各部署で設ける(3) | |
| 安全かつ術式に合った手術体位がとれるように,看護師が得た情報を医師と共有する(5) | |
| 多職種が専門性を発揮して患者の手術に対する準備性を高める介入できるように,看護師が主体となり注意事項の確認や介入の方向性を調整する(4) | |
| 手術体位をとることが難しいと予測される場合は手術室と連携して患者の意識下でシミュレーションを行う(11) | |
| 患者が手術に向けた身体的・心理的・社会的な準備ができるように,看護師が中心となって多職種と連携する(11) | |
| 過体重や体重減少がみられる患者には術後のADL低下予防や回復促進のための栄養指導を依頼する(3) | |
| 患者や家族の心理状態が置き去りにならないように,患者の不安や大事にされてるものを主治医や病棟,術前に関わるスタッフと共有する(8) | |
| 患者が手術を迷う気持ちをしっかり受け止めて,主治医に改めて説明を依頼し,無理に手術をすすめない(7) | |
| 患者への説明や介入によって手術の意思が揺らぐ患者に対して病状説明や意思決定の再構築を改めて一緒にしてもらうため,外科医とディスカッションを重ねて信頼関係を築く(2) |
【患者の身体的・精神的・社会的な情報を患者本人・家族から収集する】は,22コード,5サブカテゴリで構成された.「パフォーマンスステータスが落ちている方や,独居で認知機能が悪くて一人暮らしがままなってないっていうような方には,身体心理社会面,色々な側面からリスクがあるということが,面談前のカルテ情報からまず立つ(C氏)」と《患者に会う前にカルテを確認し検査データや既往歴,治療,基本情報から身体的・精神的・社会的側面のリスクを査定する》ことを行っていた.その上で,《カルテから収集した身体的な情報に齟齬がないかということも含めて患者に会って確認をしていく》ことを行っていた.また,「患者を前にした時には,検査データ以外の部分の生活の様子,手術や病気に対する気持ち,付き合い方を聞く(D氏)」といった《カルテからは詳しく情報収集できない1日の生活リズムや生活背景,ADL,家族関係を患者本人から情報収集する》ことを行っていた.
【術中・術後の合併症が発生しないように身体状況のアセスメントを行う】は,9コード,3サブカテゴリで構成された.「術中体位が取れるかと,麻酔導入の頸部の後屈なども細かく確認をすることも身体手的なところでは必要である(E氏)」,「手術室の関わりが悪くて患者の治療に関するモチベーションが下がってしまうことがないように,体位がとれるか,患者を見ることを大事にしている(B氏)」といった手術室看護師の専門的知識を生かして《関節可動域,手術体位がとれるか,麻酔導入時に頚部が後屈できるかをアセスメントする》ことを行っていた.
【術後に生じる苦痛の乗り越え方を説明する】は6コード,2サブカテゴリで構成された.「手術後約48時間から72時間を超えれば痛みもピークを超えるので,patient controlled analgesia(以下,PCA)の使い方や疼痛管理に対して指導ができたらいい(B氏)」と術後疼痛に対して適切に鎮痛剤を使用できるように指導していた.その上で《痛みを我慢したり痛みが継続しないようにPCAや痛み止めの使い方,上手に身体の動かしていくなどの術後の乗り越え方を説明する》ことで術後疼痛を軽減させ,離床の進め方等の回復促進に向けた支援を行っていた.また,「せん妄を少し感じる患者は,聞いてたとおり急に点滴が蛇に見えたと実際に自分が感じた体験,経験を話してくれて,術前の準備として話を聞いてて良かったっておっしゃる方が多い(C氏)」という経験から《術後せん妄の症状を説明する》ことを行っていた.
【術後の回復促進にむけて生活習慣の行動変容を支援する】は29コード,8サブカテゴリで構成された.「お酒やたばこ,暴食など生活を少し変えていないといけないという動機づけが重要だ(C氏)」と述べ,「手術までに自分の生活を見直す必要や,術後の生活に向けて見直しが必要であることを説明する(E氏)」といった,手術だけではなく手術後の生活も見据えて《飲酒,喫煙,食生活の見直しが手術や術後の生活に必要であることを動機づける》ことを行っていた.また,「術後に合併症を減らすことが社会復帰の近道であると思うので,合併症を減らし社会復帰のためであることを患者にしっかり伝えて,行動変容ができるようにしている(C氏)」,「医療者だけでは準備が整わないので,患者にも準備してくださいとお願いしている(F氏)」と《術後の経過を踏まえて,合併症を減らし社会復帰のためには生活の行動変容が必要であることを伝える》ことで,患者自身が主体的に生活習慣の行動変容に取り組めるような支援を行っていた.
【患者の「お任せ」の真の思いに寄り沿う】は16コード,2サブカテゴリで構成された.「何かを思っていても言えない方もいるし,言ってこられる方もいる(E氏)」ことを看護師は理解していた.また,「患者と関わる時間は短いが,患者の不安にもっと寄り添えたらいい(A氏)」と短い時間で寄り添うことを大事にしており,「お任せを真に受けないで本当に大丈夫か,患者の話を時間をかけて傾聴する(B氏)」といった《患者の心情を表す体の動きから,患者の不安やお任せの思いを察して寄り添う》関わりを行っていた.
【手術による変化や不自由さと共に生活していけるように支援する】は26コード,5サブカテゴリで構成された.「どのような状況で退院になりそうかを伝えることで一人で家で暮らせそうだという発想になったり,時間がいるから転院の方がいい,という術後のステップを事前に意図的に意識してもらう(D氏)」といった《患者の生活背景に合わせた退院後の生活の見通しを伝える》関わりを行っていた.また,「患者が手術を受けに来るときのイメージがつきやすいように,食事に限らず手術後の体力低下などを情報提供する(A氏)」,「術後どのくらいで復帰ができるかのおおよその日程,順調にいった日程を伝える(E氏)」といった《手術後の体調や生活の変化に対して,患者がどのように乗り越えていったら退院できるのかをイメージできるような情報を提供する》ことを行っていた.
【生活の質や治療の価値,意義を踏まえた意思決定支援をする】は33コード,10サブカテゴリで構成された.「手術をしても予後が良くない場合は,手術を行う前提ではなく患者自身がその人らしい生き方が選択できるように面談を行う(C氏)」ことや「ハイリスクの患者であればあるほど,術後に回復に時間がかかることもあれば,癌,臓器をとるということで暮らしに変化が伴う,リハビリだけではクリアできない変化も,癌の根治と患者がバランスをどう考えられるかを,患者や家族とも十分に話をする(C氏)」といった《手術をしても予後が良くない,生活の変化が伴うなど立ち止まる場面が必要な場合には,何を大事に治療を選んでいくかを改めて考えることを提案する》ことや《手術をためらう患者に対して,タイミングを逸することなく家族に呼びかけをして,患者本人と家族で話し合う場を設定する》といった患者と家族へ意思決定支援を行っていた.また,「特に術後の身体の状況が大きく変わることを受け入れて生きていくのは,患者自身の生き方に関わってくるので,迷うことや選んでいくことの保証を心がけて,時間を取って関わっている(D氏)」と《術後の体の変化を受け入れて生きていくのは,患者自身の生き方に関わってくるので,手術する,しないを迷うこと,選んでいくことの保証をする》ことを行っていた.
【患者が周術期を通して身体的・精神的・社会的に安定して過ごせるよう必要と考える情報を関連部署の看護師と共有して関わる】は22コード,5サブカテゴリから構成された.「患者にとっては入院して手術をして退院するまでが線で繋がっているはずなので線を切らさないようにする(B氏)」ために「患者さんの不安が最小限になるかを術前外来で考え,入院する病棟と直接手術に対応する看護師に伝えて共有し,同じ対応をする(F氏)」等の《患者に不安を抱かせないように外来,手術室,病棟間でシームレスに情報共有をする》ことを行っていた.また,「親を介護していたり,子どもがまだ小学生という場合には,入院する体制のサポートがあるかどうかを聞くようにしている(E氏)」とサポート体制を情報収集して「施設探しを,術前からソーシャルワーカーとタッグを組んで,施設探しを並行し行っていた(C氏)」等の《必要に応じて退院支援の部門との連携を取り早い段階で退院調整に着手して関わる》ことを行っていた.
【手術による侵襲を最小にするために看護師が中心となって関連部署・関連職種と連携する】は73コード,12サブカテゴリから構成された.
「麻酔科医と共にリスクアセスメントを行い,患者の術前の身体状況を共有する(A氏)」,「身体状況や心理面で手術に耐えうる機能ではない,患者が手術を迷っているなどがあれば,チームでの多職種カンファレンスで協議をする(C氏)」といった《術中術後の身体状況,精神面を共通認識するために,看護師だけではなく主治医や麻酔科医師など多職種と協議してリスクアセスメントを行う》ことで安全に手術が行えるよう関連職種と連携していた.また,「実際に使用する体位固定具を用いて体位がとれるかどうかをシミュレーションする(A氏)」,「手術体位がとれるかわからないという患者が術前外来にきたら,麻酔科と主治医の先生と患者で相談して手術室に来てもらう(F氏)」等の《手術体位をとることが難しいと予測される場合は手術室と連携して患者の意識下でシミュレーションを行う》といった安全かつ安楽な手術体位が取れるように準備を行っていた.術後の生活に対して「術前に人工肛門を作る人は専門外来に行って術後の人工肛門のケアについてサポートが受けられるようにする(E氏)」といった《日頃から,身体的・精神的・社会的側面で介入が必要な場合に備えて,多職種や他部署の看護師と連携する》実践を行っていた.
術前外来における退院後を見据えた看護実践として,235コード,53サブカテゴリ,9カテゴリが生成された.以下に本研究で明らかにした術前外来における退院後を見据えた看護実践の特徴を述べる.
術前外来における退院後を見据えた看護実践の1つめの特徴は,入院前から身体的・精神準備を整えることが,早期社会復帰や退院後の生活の質に関わるという認識をもって看護実践を行っていることだと考える.
【患者の身体的・精神的・社会的な情報を患者本人・家族から収集する】【術中・術後の合併症が発生しないように身体状況のアセスメントを行う】【術後に生じる苦痛の乗り越え方を説明する】【術後の回復促進にむけて生活習慣の行動変容を支援する】【患者の「お任せ」の真の思いに寄り沿う】の5カテゴリは,安全な周術期管理のために入院前から身体的・精神準備を整える看護実践であった.看護師が術前外来で手術や麻酔に対するリスクアセスメントを行い,入院前の生活指導や術前訓練を行うことで,手術の延期や中止,術後合併症の発生率が減少したという報告がある(Abdelhafez et al., 2020;益満ら,2015;三淵ら,2020).また,術後合併症を予防するためには,エビデンスに基づいた術前評価と介入を行うことが必要だといわれている(Abdelhafez et al., 2020).このことから,術前外来で看護師が行う情報収集とリスクアセスメントは,安全な手術の実施および術後合併症を予防し術後回復を促進するために重要な看護実践だといえる.さらに,看護師は合併症予防が社会復帰の近道であることから,【術後の回復促進にむけて生活習慣の行動変容を支援する】実践を行っていた.手術を受ける患者に対する看護実践として,個別的な症状マネジメントとセルフケアの支援,術後のQOLを高めるような患者教育の必要性が述べられている(高島ら,2009).本研究においても,生活習慣の行動変容を支援する実践は,患者にとって退院後の生活の質を高める一助となる看護実践だと示唆された.加えて,看護師は精神的側面にも着目し【患者の「お任せ」の真の思いに寄り沿い安心して手術を受ける準備を整える】実践をしていた.術後合併症を予防し回復を促進するためには,術前の不安をアセスメントし,ケアすることが重要だといわれている(Ralph, 2018).患者の術前からの不安は術後の経過に影響を及ぼすことから,精神的な準備を整える看護実践は重要だと考える.また,術後疼痛に対する不安は,術前のみならず術後も継続するといわれている(板東・當目,2013).そのため術前の患者に【術後に生じる苦痛の乗り越え方を説明する】ことは,術後回復を促進する看護実践だと考える.
2つめの特徴は,患者がスムーズに早期回復し在宅に移行できるように,術後の変化と共に生活していくための支援を行っていることである.【手術による変化や不自由さと共に生活していけるように支援する】の1カテゴリは,術前から患者自身が術後や退院後の生活をイメージし,日常生活を行う上で必要となる自己管理方法を獲得できるようにするための支援であった.在院日数の短縮により,術後の形態機能の変化に伴う機能回復や自己管理を十分に身に付ける前に退院となる.そのため手術前の患者は,退院後の生活や日常生活動作における痛みの出現,運動や入浴の開始時期,傷の痛み,創部の管理等の不安があるといわれている(松井ら,2013;柴田ら,2017).不安への対応として,看護師が具体的なセルフケアの内容が記載されたパンフレットを用いた情報提供やセルフケアの必要性を説明したことで,患者は術後のセルフケア方法をイメージして手術に臨み,セルフケアの早期確立を図ることができたといわれている(松原・稲吉,2013).看護師が行う《術後の生活の質問や不安に対して個人差があるということも含めて解消できるよう関わり患者の心構えにつなげる》,《手術後の体調や生活の変化に対して,患者がどのように乗り越えていったら退院できるのかをイメージできるような情報を提供する》実践は,術前から患者自身が術後や退院後の生活をイメージし,日常生活を行う上で必要となる自己管理方法を獲得できるようにするために重要な支援だといえる.
3つめの特徴は,患者の手術に対する意思決定のプロセスに重きをおいて丁寧に関わっていることである.【生活の質や治療の価値,意義を踏まえた意思決定支援をする】の1カテゴリは,対象の健康観,人生観を尊重した意思決定支援であった.手術療法の意思決定を支援する看護師は,手術をする場合としない場合のイメージができるよう説明して患者の理解を補ったり,治療選択に揺れる葛藤や,患者の手術に向かうつらさを受け止める関わりを行うことで,患者が納得して意思決定できるよう支援していると報告がある(菅野ら,2019).本研究においても看護師は《手術をしても予後が良くない,生活の変化が伴うなど立ち止まる場面が必要な場合には,何を大事に治療を選んでいくかを改めて考えることを提案する》,《術後の体の変化を受け入れて生きていくのは,患者自身の生き方に関わってくるので,手術する,しないを迷うこと,選んでいくことの保証をする》といった【生活の質や治療の価値,意義を踏まえた意思決定支援をする】実践をしていた.
看護師は,患者自身が自らの決定に納得できるように支援することを大事にしており,手術以外の治療を選択した場合の予後やADLを患者自身がイメージできるような支援の重要性が示唆された.また,《手術のレールからおりることが患者にとっては難しいということを理解して治療の選択ができるように関わる》実践を行っていた.田鍋ら(2022)は,患者の意思や価値観,これまでの人生を通しての患者の経験などを踏まえた上で患者と向き合うことが必要だと述べている.術前外来では,患者の手術に対する意思決定の揺らぎに対応することが重要で,対象の健康観,人生観,生き方,大事にしたいことを尊重した支援が求められていると考える.
4つめの特徴は,安全な周術期管理と患者がめざす退院後の目標に向かって看護師間および多職種と連携して看護実践を行っていることである.【患者が周術期を通して身体的・精神的・社会的に安定して過ごせるよう必要と考える情報を関連部署の看護師と共有して関わる】,【手術による侵襲を最小にするために看護師が中心となって関連部署・関連職種と連携する】の2カテゴリは,看護師間および多職種と連携した看護実践であった.術前外来では,多職種で患者のリスクを評価し,安全な周術期管理に繋げられるようにチームで関わっている(姫野,2020).近年,患者の高齢化や患者背景の複雑化があり,既往歴や内服歴,現在の治療内容について十分な評価と準備を行うためには,多職種が互いの専門性を活かしながら情報共有し,チームとして患者を支援することが必要である(中村・古賀,2021).本研究においても看護師は,安全な周術期管理に向けた多職種連携が行われていたと同時に,患者にとって術前,術中,術後の支援がシームレスであることを重要視していた.
以上の4つの特徴から,術前外来における退院後を見据えた看護実践は,安全な周術期管理のための身体的準備にむけた支援,患者が退院後に満足できる生活を送ることができるように,精神的・社会的な情報から患者の思いや価値,生活状況を把握し,手術に対する意思決定支援や術後の変化と共に生活していくための支援であることが示唆された.また,在宅移行に向け,継ぎ目のない看護を提供できるように,術中,術後に関わる他部署の看護師や多職種との情報共有や連携して介入することを重視していた.
本研究は,全国の術前外来に所属する異なる背景や経験を持つ看護師による実践の語りから術前外来における退院後の生活を見据えた看護実践を明らかにした.一方で,周術期看護では新生児から高齢者,あらゆる疾病の様々な手術を受ける患者を対象としているが,対象者の特性に対応した術前外来における看護実践の明確化には至らなかった.今後は,術前外来を担う看護師が,術式や手術侵襲の程度,発達段階など,様々な背景をもつ患者の特徴に応じた日常生活への早期回復やQOL向上に貢献できるような退院後を見据えた看護実践の標準化をめざしていくことが課題である.
術前外来における退院後を見据えた看護実践として,235コード,53サブカテゴリ,9カテゴリが生成された.また,術前外来における退院後を見据えた看護実践には,入院前から身体的・精神準備を整えることが早期社会復帰や退院後の生活の質に関わるという認識をもって看護実践を行っていること,患者がスムーズに早期回復し在宅に移行できるように術後の変化と共に生活していくための支援を行っていること,患者の手術に対する意思決定のプロセスに重きをおいていること,安全な周術期管理と患者がめざす退院後の目標に向かって看護師間および多職種と連携した看護実践であるという4つの特徴が示された.
付記:本研究は,第43回日本看護科学学会学術集会において発表した内容の一部に加筆修正したものである.
謝辞:貴重な看護実践を語ってくれた看護師の皆様に深く感謝いたします.
利益相反:本研究における利益相反は存在しない.
著者資格:SFは研究の着想およびデザイン,データ収集,データ分析,原稿の作成までの研究プロセス全体に貢献した.AH,MMはデータ収集,データ分析に貢献した.AHは研究プロセス全体に貢献した.すべての著者は最終原稿を読み承認した.