2025 年 45 巻 p. 338-350
目的:NICUのEnd-of-Life(EOL)家族支援への肯定的な態度と知識,技術の習得を促す看護師教育プログラムを開発し,構成・内容と満足度を評価する.
方法:1時間半のオンデマンド型e-learningと3時間のオンライン集合研修から成るプログラムを開発した.EOLケア経験のあるNICU/Growing Care Unit看護師を対象にプログラム実施後に満足度に関する12項目と自由記述で回答を得た.
結果:参加した52名の看護師の8~9割以上が,満足度に関する全ての項目に「そう思う~非常にそう思う」と回答した.自由記述では,【知識の深化】と【他施設からの学び】が述べられ,その学びは【実践での活用に対する意欲や自信】【今後の課題の明確化】につながった.
結論:対象者の満足度は高い傾向にあり,構成と内容は概ね適切であることが確認された.また,看護実践への有効性の認識につながることが示唆された.
Objective: This study aimed to develop a nursing education program that promotes positive attitudes toward and acquisition of knowledge and skills regarding end-of-life family support in neonatal intensive care units (NICUs), and to evaluate their satisfaction with the program.
Methods: The Analysis, Design, Development, Implementation, and Evaluation model of instructional design was employed to develop the program, which comprised 1.5 hours of on-demand e-learning video viewing and 3 hours of online group training. The participants were nurses who had completed Clinical Ladder Level II or higher programs working in NICUs or Growing Care Units (GCUs), having experience in end-of-life care in NICU. After completion of the program, participants evaluated it by responding to 12 survey items related to satisfaction with the educational program. Their responses were rated on a 7-point Likert scale. In addition, their opinions were obtained through free-text responses.
Results: The program included 52 NICU/GCU nurses. Between 80% and 90% of participants answered “agree” or “very much agree” on all items related to their satisfaction with the program. In their free response evaluations, they mentioned “deepening of knowledge” and “learning from other facilities and role-play.” This in turn led to “reflection and clarification of own care,” “willingness to use in practice and confidence,” and “clarification of future issues.”
Conclusions: The participants appeared highly satisfied with the program, confirming that the structure and content were generally appropriate and feasible. This program made it easy for nurses across facilities to participate, and the content was satisfying, suggesting that the program’s effectiveness in nursing practice is potentially recognizable.
わが国の新生児集中治療室(Neonatal Intensive Care Unit:以下NICU)ではこれまで,新生児医療の特性から救命・治療が最優先されてきた.しかし治療優先の考え方に代わり,子どもの最善の利益とQuality-of-Lifeを重視し,医療者が子どもと家族に対するEnd-of-Lifeケア(以下EOLケア)に視点を広げる必要性が示されている(船戸,2012).NICUのEOLケアの特徴として,家族の生活体験がない早期からわが子の生命の危機に直面し,状況的・発達的危機に置かれることが挙げられ(品川,2009),子どもが家族の一員として家族と出会い,ともに過ごすことができるよう支援する家族中心のケア(Family-Centered-Care:以下FCC)が重要である(木下,2001;De Lisle-Porter & Podruchny, 2009).このような状況にある子どもと家族に対するEOLケアは臨床的に重要であるだけでなく,医療者のケアが死別後の母親の悲嘆過程に大きな影響を及ぼすことが明らかにされている(大井,2001).
一方,NICUでEOLケアを担う看護師は,重篤な子どものケアと危機状況にある家族のケアを担わなければならず,その心理的負担は非常に大きい.これまでの研究から,NICU看護師はEOLケアに苦悩や戸惑いのような困難感を抱き,その中でも特に家族との関わりやコミュニケーションなど家族支援に関する困難感が高いことが示されている(齋藤ら,2016).困難感など否定的な思いを抱きながらEOLケアを行う看護師が,図らずも家族への対応を避ける,あるいは子どもの身体的ケアのみに集中し,タスク思考のケアを行うことで,その感情を鈍らせるような対処をすることが示されている(Cavinder, 2014;Davies et al., 1996;橋本,2011;Kim et al., 2019).また,ケア達成感の低さやストレスに繋がり,バーンアウトの一要因となる可能性もある.
困難感を抱く要因に,教育の不足による知識,技術不足の認識と態度の低下が挙げられる(宮﨑ら,2016;大坂ら,2018).海外のいくつかの国ではNICUのEOLケアに特化した教育が行われ,医療者のケアに対する知識,技術や自己効力感,肯定的な態度の向上に繋がることや(Knighting et al., 2019;Rogers et al., 2008;Zhang & Lane, 2013),ケアにゆとりを持って行えるなど,医療者支援の効果が示されている(Engler et al., 2004).わが国でも,NICUのEOLケアに対する教育プログラムが新生児集中ケア認定看護師を対象に実施され,苦手意識の低下や知識,理解の向上に繋がることが示されているが(Murakami et al., 2015),海外の教育プログラムを参考に作成されたことから,亡くなりゆく時である看取りや死後の家族の悲嘆のケアを中心とした内容となっている.重症な子どもに対する人工呼吸器などの生命維持治療に関する選択では,他の多くの国で治療の中止が選択されるのに対し,日本の多くの施設では治療の中止は行わず,治療の差し控えが行われることが示されている(諫山,2019).
そこで,NICU看護師が特に困難を感じ,同様に教育ニーズが高いことが示されている(村上ら,2012),EOLの家族支援に特化した教育プログラムの開発が必要である.また,治療が継続される傾向にあるわが国の特徴と,看取りや死後の悲嘆のケアを中心とした既存の教育プログラムの限界から,子どもの治療方針を検討する時期から,子どもの状態が悪くなり,看取りに至るまでの期間に焦点を当てた内容とする必要がある.NICU看護師が,EOL家族支援に関する知識,技術を習得し,意欲と自信をもってケアを行うことができる教育プログラムを実施することで,EOL家族支援に対する困難感を払拭できると考える.
はじめに,NICU看護師を対象にEOL家族支援に関する知識・技術の習得と,肯定的な態度の形成を促す教育プログラムを開発する.開発した教育プログラムは,形成的評価(プロセス分析)と総括的評価(アウトカム分析)の視点から評価する.本研究では,教育プログラムの開発と形成的評価として,構成・内容と満足度の評価を目的とした.本教育プログラムの開発により,NICU看護師のEOL家族支援に関する継続教育の目標や,教育すべき内容を明確にすることができ,教育の標準化を図る一助となりうると考える.
村上ら(2012)はNICUのEOLを「意思決定期,臨死期,死別期」の3つの時期と定義し,名古屋ら(2013)は小児がんのEOLを「これ以上積極的な治療を行っても治る可能性が少ないと主治医から親に伝えられた時から,子どもが亡くなるまでの期間」と定義している.本研究ではこれらを参考に,「これ以上積極的な治療を行っても治る可能性が少ないと,医師から家族に伝えられ,治療方針を検討するときから,子どもの状態が悪くなり,亡くなる場面に至るまでの間」と定義した.
2. 家族Hanson(2005)は,「家族とは,互いに情緒的,物理的,そして/あるいは経済的にサポートを依存し合っている2人以上の人々.家族のメンバーとは,その人たち自身が家族であると認識している人々」と定義し,血縁や婚姻を必須の条件としていない.そこで本研究では,「血縁や婚姻,同居の有無に関わらず,NICUに入院している子どもの両親,きょうだい,祖父母などを指し,互いに情緒的,物理的,経済的にサポートし合っている人々」と定義した.
本教育プログラム開発の方法論的枠組みとして,インストラクショナル・デザイン(ID)におけるADDIEモデルを基盤とした.ADDIEとはIDにおける5段階の作業過程のことで,Analysis,Design,Development,Implementation,Evaluationの基本ステップで開発を行った(鈴木,2006).実践的な職業教育の水準の維持向上を図る上で重要なPlan(計画),Do(実施),Check(検証),Action(改善)のPDCAサイクルが,IDにおけるADDIEモデルと合致しており,医学教育においても活用されていることから採用した(柴田,2014).
2. Analysis:NICUのEOL家族支援に関する学習項目の抽出分析ではまず,インストラクションが解決策となる教育ニーズを決定する.知識,技術と肯定的な態度を習得すべきNICUのEOL家族支援の構成要素を明らかにするために,先行研究の「NICUにおけるEOLケア」の概念分析結果の属性部分から(齋藤・涌水,2021),「子どもの治療方針を検討するときから,看取りに至るまでのEOL家族支援」に関する内容を抽出し,学習の関連性で分類・集約した.すなわち,子どもの身体的苦痛の緩和・除去,最期を迎える支援,子どもを亡くした家族の悲嘆のケアを除いた,【愛着形成促進と親役割獲得・家族形成の支援】,【家族と医療者の協働意思決定】,【家族とのコミュニケーション】,【家族の精神的・身体的ケア】,【多職種協働支援】の5つの学習項目を抽出した.
3. Design:教育方法の設計 1) 教育目標の設定先行研究では,NICU看護師の約4割が家族看護や心理的反応・愛着に関する知識の不足を述べている(横尾ら,2008).またNICU看護師は,家族の愛着・親子関係形成支援,心理的援助など重要な役割を担っており(安積,2003),危機反応や悲嘆反応,ジレンマの中での意思決定,スピリチュアリティに対応し得る,包括的なアプローチとしてのFCCが必要であるとされている(横尾ら,2008).
そこで,NICUのEOL家族支援における標準的な看護の目標は,家族看護の基本的知識を持ち,システムとして家族を理解した上で系統的なアセスメントと支援計画を立案できるレベルとした.各学習項目に対する目標は,Bloom et al.(1971/1973)の学習目標の分類学(タキソノミー)を参考に,学習成果を知識(認知的領域),態度(情意的領域),技術(精神運動的領域)の3領域に分類し,表1に示した.
学習項目 | 目標 | 教育内容 | 動画時間(分) | ||
---|---|---|---|---|---|
Introduction | ・ | NICUのEOL家族支援教育プログラムの特徴・概要 | 5 | ||
・ | 教育プログラムを受講するうえでのお願い | ||||
・ | EOLの定義 | ||||
A.愛着形成促進と親役割獲得・家族形成の支援 | 1 | NICUのEOLケアにおける,愛着形成促進と親役割獲得・家族形成を促進する具体的な支援方法を述べることができる | ・ | 家族の心理的特徴 | 15 |
2 | 家族を包括的にアセスメントするための方策(諸理論)について述べることができる | ・ | NICUのEOLにおける,愛着形成促進と親役割獲得・家族形成の具体的な支援方法 | ||
3 | 家族を包括的にアセスメントする諸理論を活用した支援方法について述べることができる | ・ | 家族の全体像を把握し,ニーズを捉えるために必要な理論やモデル,アセスメントの枠組み(家族発達理論,家族システム理論,直線的思考と円環的思考) | ||
4 | 子どもがEOLにある家族の愛着形成と親役割獲得・家族形成を促進する支援に対する意欲を見せる | ・ | 家族エンパワーメントモデル | ||
B.家族と医療者の協働意思決定 | 1 | 家族と医療者の協働意思決定のプロセスについて述べることができる | ・ | NICUのEOLケアにおける倫理的問題 | 14 |
2 | 家族と医療者の協働意思決定の具体的な支援方法について述べることができる | ・ | 倫理原則 | ||
3 | 倫理的な課題へのアプローチ法について述べることができる | ・ | 協働意思決定において家族が望むこと | ||
4 | 家族と医療者の協働意思決定過程における,家族支援に対する意欲を見せる | ・ | 家族と医療者の協働意思決定のプロセスと支援方法 | ||
・ | 話し合いのガイドライン | ||||
・ | Jonsenの4分割表 | ||||
・ | Advance Care Planning(ACP)の作成 | ||||
C.家族とのコミュニケーション | 1 | コミュニケーションの基礎について具体的に述べることができる | ・ | コミュニケーションの重要性 | 7 |
2 | 効果的なコミュニケーション技術(NURSEのスキル)について具体的に述べることができる | ・ | コミュニケーションの基礎 | ||
3 | 効果的なコミュニケーション技術(NURSEのスキル)を演示することができる | ・ | 効果的なコミュニケーション技術(NURSEのスキル) | ||
4 | 家族とのコミュニケーションに対する意欲を見せる | ||||
D.家族の精神的・身体的ケア | 1 | NICUのEOLにおける,家族の精神的・身体的側面の具体的な支援方法を述べることができる | ・ | 家族の精神的・身体的ケアの具体的な方法 | 14 |
2 | 家族の心理状態をアセスメントする方策(危機理論)について述べることができる | ・ | FCCの原則 | ||
3 | 危機理論,悲嘆への介入を活用した具体的な支援方法について述べることができる | ・ | 家族の心理的危機のプロセス(アギュララの問題解決型危機モデル)と危機介入 | ||
4 | NICUのEOLにおける,家族の精神的・身体的ケアに対する意欲を見せる | ・ | 予期悲嘆への介入 | ||
・ | コーピング | ||||
・ | きょうだい・祖父母のケア | ||||
E.多職種協働支援 | 1 | 多職種チームアプローチとそれにかかわる職種について述べることができる | ・ | 多職種協働支援の重要性 | 6 |
2 | 多職種協働支援における看護者の役割を述べることができる | ・ | 多職種チームアプローチ | ||
3 | 多職種が協働してEOL家族支援を行うことに対する意欲を見せる | ・ | 多職種協働支援の問題点 | ||
・ | 多職種協働支援における看護師の役割 | ||||
・ | 看護者自身のこころのケア |
NICUのEOL家族支援における看護実践を促進させるために必要な5つの学習項目に対する教育内容を,国内外のNICUのEOLケアに関する既存の医療者教育プログラム(合計9文献;国内1件,国外8件)(Anspacher et al., 2017;Ferrell et al., 2020;Harris et al., 2015;Knighting et al., 2019;Mancini, 2011;Murakami et al., 2015;Rogers et al., 2008;Twamley et al., 2013;Zhang & Lane, 2013)や周産期ファミリーケア教育プログラム(横尾ら,2008),成人領域のEOLケアに関する教育プログラムを参考に設定し(吉岡,2011),目標と合わせて表1に示した.危機状況にある家族のアセスメントや具体的な支援方法,コミュニケーション技術が習得できる教育内容である.教育内容原案は,NICU勤務経験10年以上で修士の資格を有する研究者1名が作成し,小児看護学研究者2名および小児・新生児看護経験のある院生とディスカッションを行い検討し,洗練した.
3) 学習内容に適した教育方法の設定 (1) ブレンド型学習(Blended-learning)による教育教育方法は,知識習得に効果があり,時間の制約の多い環境の中でも参加しやすく,より多くの看護師が学習の機会を得られるブレンド型学習(blended-learning)を設定した(礒山・衣川,2020).1時間の非同期型e-learningによる動画視聴(以下,オンデマンド型e-learning)と30分の確認テスト,3時間の同期型e-learningによる双方向型の集合研修(以下,オンライン集合研修)を合わせた,計4時間30分の学習である.教育時間の設定は,教育内容の設定で参考にした国内外のNICUのEOLケアに関する既存の教育プログラムや周産期の喪失ケアに関する教育プログラム(岡永,2017)を参考にした.
(2) オンデマンド型e-learningオンデマンド型e-learningによる動画視聴では,音声を挿入したPowerPointのアニメーション動画を作成した.本教育プログラムの概要(Introduction)と学習項目に対応させた5つのチャプターの計6チャプターで構成した.学習の簡便さを考慮し,各チャプターを5~15分程度で作成し(加藤ら,2014),動画視聴時間は計1時間となった.動画視聴後に各チャプター5~10分程度,計30分の実施必須の確認テストを設定し,解答解説を挿入した.オンライン集合研修の日程までに,全てのチャプターを1回以上実施必須とした.
(3) オンライン集合研修オンライン集合研修は,事例に関するグループディスカッションとコミュニケーション技術に関するロールプレイの2つから構成される計3時間の研修である.ビデオコミュニケーションツールzoomを用いて実施した.オンデマンド型e-learningで習得した知識を,グループディスカッションとロールプレイで発展的に活用できるようにした.効果的な協同学習とグループダイナミクスを考慮して5名程度のグループを作成し,ファシリテーターを配置した(Barkley et al., 2005/2009).1回の開催の参加人数を10名までとし,講師1名とファシリテーター1名の計2名にて実施した.なお講師とファシリテーターは,実施要領やファシリテーションマニュアルを用いて目標や展開方法について共通認識を持ち,非指示的態度で参加者の思考が進むような声掛けが行えるようにした(内藤・伊藤,2017).グループディスカッションは,NICUのEOL家族支援における問題解決方法の習得と他施設との情報交換を目的とし,対応が困難な事例を用いて家族のアセスメントと具体的な支援方法についてディスカッションを行った.グループディスカッションで用いる事例は,①家族の愛着形成・親役割獲得・家族形成が困難な事例と,②家族の精神的不安定な状態が継続した事例の2つを設定し,多職種協働支援についても考えられる内容とした.
また,家族とのコミュニケーションにおける効果的なコミュニケーション技術を習得する方法として,感情を探索し表出を促進させる技法である,NURSEのスキルを用いたロールプレイを実施した.NURSEは以下の5つの言葉の頭文字で,「Naming(命名:感情に名前をつける),Understanding(理解:感情に関する反応について理解を示す),Respecting(尊敬:家族の感情に尊敬を示す),Supporting(支持:できる限りの支援を表明する),Exploring(探索:家族の真の気がかり,不安を探索する)」のことである(栗原,2015).参加者は全員が看護師役か家族役のどちらかを演じられるようにした.ロールプレイでは,①NICUで子どもが重篤な状態にある家族が,今後の治療方針について医療者と「協働意思決定」を求められる場面と,②その後の「日常の面会」の場面の2つを設定した.これまでのEOLケアに関する研修を参考に(早坂,2015;村上,2014),グループディスカッションは2事例で60分,ロールプレイは2場面で60分とした.オンライン集合研修の展開を表2に示した.
段階 | 時間(分) | 目的 | 展開方法と主催者の役割 | 留意点 |
---|---|---|---|---|
導入 | 10 | ・注意喚起 ・学習目標の理解 ・スケジュールの確認 |
・出席者の確認 ・開会のあいさつ ・講師・ファシリテーター紹介 ・オリエンテーション (本日の研修会の目標,注意点,本日のスケジュールの説明) |
・接続がうまくできない参加者に対応する ・進行用スライドを表示する ・手元にテキストを準備するよう伝える |
5 | ・場の雰囲気をつくる | ・グループに分かれて参加者の自己紹介(アイスブレイク) | ・自己紹介で話す項目(名前,所属,今回研修会に参加した理由・動機,意気込み,その他,伝えたいこと,要望など)について例示する | |
展開 | 5 | ・グループディスカッションの方法の理解 ・話し合いのポイントの理解 ・グループディスカッション事例の認識 |
・グループディスカッションの方法・話し合いのポイントの説明 ・事例①の提示 |
|
60 | ・EOL家族支援における問題解決方法を習得する ・各学習項目の具体的な支援方法について学ぶ ・他施設と支援方法に関する情報共有を行う ・各グループのディスカッション内容をまとめる |
・事例①のディスカッション ・不足している情報(確認すべき情報)と,家族アセスメント,今後の支援の方向性(長期目標・短期目標),具体的な支援方法について,ディスカッションしながら整理する ・家族のアセスメントと必要な支援について,各施設で実践可能な内容を話し合う ・実践していることがある場合にはその情報を共有する ・事例②の提示 ・事例②のディスカッション ・上記同様の内容とする ・ディスカッション内容のまとめの作業に入るよう,適宜アナウンスする |
・予めビデオをオンにし,ミュートの解除を依頼し,講師やファシリテーターが指名しなくても,ディスカッションが進むように声掛けを行う ・アセスメントシートの表示と板書を講師・ファシリテーターが行う ・参加者が対等な立場で率直に話し,お互いに批判的にならないよう配慮する ・ファシリテーターは,目的に沿って様々な考え方が明確になり,時間内にディスカッションが完了するよう,配慮する |
|
5 | ・各グループでのディスカッション内容を共有する | ・講師・ファシリテーターがディスカッション内容を発表する | ・問題点の分析,看護の方略・各施設での取り組みについて発表する | |
5 | ・学習の振り返り ・事例の支援ポイントの理解 ・オンデマンド型e-learningの復習 |
・各グループの発表内容に対する講師からのフィードバック ・事例の支援ポイントの説明 ・オンデマンド型e-learningのポイントと照らし合わせながら説明する |
・ポジティブなメッセージでフィードバックを行う ・支援ポイント(家族の発達段階,円環的思考,家族システム理論,危機モデルを用いた心理的危機の回避,悲嘆への介入,多職種協働支援) |
|
休憩(10分) | ||||
展開 | 10 | ・ロールプレイの方法・ルール・スケジュールの理解 | ・学習目標の提示 ・ロールプレイの方法・ルール・スケジュール・フィードバック方法の説明 |
・グループディスカッションと同様のメンバーとする |
60 | ・ロールプレイ事例の認識 ・自身のコミュニケーションのパターンについて振り返る ・オンデマンド型e-learningの復習(コミュニケーションの基礎,効果的なコミュニケーション) ・NURSEのスキルの習得 ・コミュニケーション技術の共有と振り返り |
・ロールプレイ事例の説明(場面①) ・1組に場面①の1回目ロールプレイを実施してもらう ・事例の読み合わせ,看護師名の確認,設定の確認など(3分) ・場面①のロールプレイの実施(4分) ・ディスカッション(5分) ・参加者1組のロールプレイ後に,「家族とのコミュニケーション」に関する講義の動画を視聴する(5分) ・家族とのコミュニケーションに関する講義を視聴し,改めてNURSEのスキルを意識しながらロールプレイを実施する ・場面①のロールプレイ実施 ・役作り(2分) ・2回目ロールプレイ(4分) ・ディスカッション(5分) ・ロールプレイ事例の説明(場面②) ・場面②のロールプレイ実施 ・事例の読み合わせ,看護師名の確認,設定の確認など(3分) ・3回目ロールプレイ(4分) ・ディスカッション(5分) ・役作り(2分) ・4回目ロールプレイ(4分) ・ディスカッション(5分) |
・ロールプレイは,看護師役と家族役のみで実施できるよう,他の参加者はビデオとマイクをオフにするよう説明する ・ディスカッションの内容は以下の通りとする ①看護師役の振り返りと感想(NURSEの視点で振り返りを促す) ②オブザーバーからのフィードバック(良かった点・改善できる点) ③家族役の感想・フィードバック ④最後に,全体を通じての技法の確認,ファシリテーターからの意見を話す ・参加者全員が1度は看護師役,もしくは家族役を演じることができるようにする ・2回目ロールプレイ後のディスカッションでは,はじめに行ったロールプレイから自身のコミュニケーションパターンと照らし合わせて感想を述べるよう伝える ・1回のロールプレイの目安は,事例の読み合わせ,看護師名の確認,設定の確認,役の交代を含めて14~15分とする |
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まとめ | 10 | ・学習の振り返り | ・参加者からロールプレイの感想の発表 ・ロールプレイに対する講師からのフィードバック |
・ポジティブなメッセージでフィードバックを行う |
10 | ・総括的評価,形成的評価 | ・評価表の入力 | ・研修会終了後も質問の受付にオンラインの接続を維持しておく |
前述のように,音声を挿入したPowerPointのアニメーション動画を作成し,オンデマンド型e-learningのコンテンツとした.プライバシーマークの認定を受け,個人情報保護およびサーバのセキュリティへの配慮を行っているLearning Management System(以下LMS)を採用し,利用者の場所・時間に制限なく,利用者個々のモデルに沿って情報提示できるよう,マルチデバイス対応とした.コンテンツを選択することで動画が開始となり,中断箇所から学習再開も可能である.確認テストは,合格点(8割以上)に達するまで何回でも受講可能とし,合格後に次の学習項目に進めるようにした.なお,確認テストは復習目的で実施したため,テキストを見ながら回答することを許可した.
また,オンデマンド型e-learningのPowerPointスライドを中心とした,紙媒体のテキストを参加者に郵送した.テキストには,危機状況にある家族をアセスメントするための理論やモデルの図,具体的な支援方法やコミュニケーション技術など実践的なツールを記載した.学習の振り返りができるエクササイズや,Webベースの資料にアクセスできるQRコードを添付した.
5. 教育プログラムの内容妥当性作成した教育プログラムの内容は,NICU勤務経験10年以上で,修士・博士課程を修了した看護師3名に参集してもらい,専門家会議にて検討することで妥当性を確保した.会議では事前に教育プログラムの原案を配布し,教育内容はわが国の臨床に即しているか,分量や構成・展開,実施方法は適切であるか,意見をまとめてもらうよう依頼した.会議は,ビデオコミュニケーションツールzoomを使用して開催し,時間は120分とした.教育内容と臨床の事例とのリンケージや,効果的なオンライン集合研修の構成などについて意見があり,これらの意見をもとに教育プログラムを修正した.修正した教育プログラムの内容の確認は,専門家へのメールにて行った.その後,NICU勤務経験がある看護師8名を対象に修正した教育プログラムを実施し,分かりにくい表現や進行の時間の配分についてさらに細部修正を行った.
1群事後デザインによる準実験研究である.
2) 研究対象者とリクルート総合周産期母子医療センターのNICU/Growing Care Unit(以下GCU)に勤務する看護師で,クリニカルラダーレベルII以上(目安:臨床経験年数2~3年目以上),NICUにおいてEOLケア経験のある看護師を対象とした.
選定理由として,End-of-Life Nursing Education Consortium Japan(ELNEC-J)コアカリキュラム(日本緩和医療学会,2009)を参考に,クリニカルラダーレベルII以上を設定した.NICUのEOL家族支援に対する困難感は,臨床経験年数11年以下の看護師がそれ以上の者よりも高いことから(齋藤ら,2016),クリニカルラダーレベルII~IV(目安は臨床経験年数2~10年未満)を推奨した.また教育方法として,実践経験をもとにロールプレイやグループディスカッションを行うため,NICUにおいてEOLケア経験のある看護師とした.
NICUを有する施設として厚生労働省が認可する,「周産期母子医療センター一覧」より,日本全国の総合周産期母子医療センター112施設を検索した(厚生労働省,2022).112施設の看護研究責任者に研究協力依頼を電話で確認後,了承の得られた108施設への研究依頼書と教育プログラムの内容や日時,申し込み方法を記載した募集案内のチラシを送付した.参加申し込みは,看護師個人がチラシに記載されたGoogleフォームのQRコードを使用して行う.受付完了後,オンライン集合研修の3週間前を目安に,オンデマンド型e-learningのURLとID・パスワード,zoomのURLとパスコードを参加者にメールで知らせ,テキスト,教育プログラムで用いる資料一式を郵送した.
3) データ収集方法データ収集期間は,2022年7月~9月であった.調査項目は,教育プログラム実施前に,対象者の背景因子として,性別,年齢,臨床経験年数,NICU経験年数,現在の所属,取得した資格,職位/役割,EOLケアに関する院内外の研修経験,家族看護に関する院内外の研修経験,研修参加動機を尋ねた.実施後に,教育プログラムの構成・内容,満足度に関する調査を,浅野(2005)の「研修満足度調査(レベル1)の尺度」を参考に,学習内容3項目,講師のインストラクション2項目,研修教材3項目,相互学習2項目,研修時間2項目の計12項目を設定し,「1.全くそう思わない」から「7.非常にそう思う」の7段階リッカートスケールで尋ねた.また,全体を通じた意見や感想について自由記述で回答を求めた.調査項目の妥当性は,本教育プログラムの満足度を適切に評価できるか,小児看護学研究者や小児・NICU勤務経験のある院生とディスカッションし,新生児看護の専門家から確認を得ることで確保した.回答はLMSのアンケート機能を使用した.
4) 分析方法対象者の基本情報と,教育プログラムの満足度に関する各項目について記述統計量を算出した.教育プログラム全体に対する意見や感想について,得られた自由記述の質的データは文脈に留意しながら意味内容を損なわない範囲で区切り,コード化した.コードを意味内容の類似性と相違性を比較しながら類型化し,サブカテゴリー化した.さらにサブカテゴリーを類型化してカテゴリー化した.分析は,谷津(2015)の質的データの分析ステップを参考に行った.データの分析・解釈過程において,小児看護学研究者のスーパーバイズを受けた.
5) 倫理的配慮本研究の実施にあたり,筑波大学医学医療系「医の倫理委員会」の審査を受け,承認を得た上で実施した(承認番号:第1736号).研究の趣旨,研究への参加は自由意思であること,協力が得られない場合にも不利益を被ることは一切ないこと,参加は途中で中断可能であること,匿名性の保持,データの厳重管理と破棄,結果の公表などについて申し込み受付の際の文書にて説明を行い,同意を得た.教育プログラム実施中に過去のケア経験を想起して気持ちの動揺があった場合,zoomの個別チャット機能を利用して講師やファシリテーターに連絡する方法を伝え,参加を途中でやめられることを保証した.
オンデマンド型e-learningによる動画視聴と確認テスト,オンライン集合研修の2つを1クールとする教育プログラムを,計9クール実施した.全国より58名の参加希望があり,そのうち,2名は勤務変更や体調不良を理由に途中で参加を辞退された.オンデマンド型e-learningとオンライン集合研修の2つを受講した者は54名であり,実施後の教育プログラムの満足度に関するアンケートの回答が得られた52名を分析対象とした(有効回答率96.3%).
対象者の属性を表3に示した.年齢は平均(標準偏差)35.7(7.9)歳,臨床経験年数は平均(標準偏差)13.0(7.5)年であった.取得した資格(複数回答可)は認定看護師が2名(3.8%),専門看護師が3名(5.8%),修士課程が5名(9.6%)であった.現在の職位はスタッフが45名(86.5%),主任が4名(7.7%),副師長が3名(5.8%)であった.NICUのEOLケアに関する研修会への参加経験がある者は7名(13.5%)であった.参加動機(複数回答可)はスキルアップのためが37名(71.2%),関心のあるテーマが43名(82.7%)と多くを占めた.
(n=52)
項目 | n | % | |
---|---|---|---|
性別 | 男性 | 3 | 5.8 |
女性 | 49 | 94.2 | |
年齢(歳) | M(SD) | 35.7(7.9) | range 25~51 |
臨床経験年数(年) | M(SD) | 13.0(7.5) | range 3~29 |
NICU経験年数(年) | M(SD) | 7.5(4.9) | range 0~21 |
現在の所属 | NICU | 37 | 71.2 |
GCU | 15 | 28.8 | |
取得した資格(複数回答) | 認定看護師 | 2 | 3.8 |
専門看護師 | 3 | 5.8 | |
大学院博士前期課程(修士課程) | 5 | 9.6 | |
大学院博士後期課程(博士課程) | 0 | 0.0 | |
なし | 45 | 86.5 | |
現在の職位 | スタッフ | 45 | 86.5 |
師長 | 0 | 0.0 | |
副師長 | 3 | 5.8 | |
主任 | 4 | 7.7 | |
副主任 | 0 | 0.0 | |
NICUのEOLケアに関する研修会への参加経験 | ある | 7 | 13.5 |
ない | 45 | 86.5 | |
家族看護に関する研修会への参加経験 | ある | 25 | 48.1 |
ない | 27 | 51.9 | |
参加動機(複数回答) | スキルアップのため | 37 | 71.2 |
実践上の課題解決のため | 17 | 32.7 | |
関心のあるテーマだった | 43 | 82.7 | |
上司・同僚等に勧められた・誘われた | 20 | 38.5 | |
他施設と交流したかった | 8 | 15.4 | |
その他 | 1 | 1.9 |
教育プログラムの構成・内容と満足度に関する結果を表4に示した.各項目について「非常にそう思う~そう思う」と評価した者について記述する.学習内容に関する3項目では,「この研修の内容に満足している」49名(94.2%),「この研修の難易度は,適切であった」43名(82.7%),「この研修における学習の量は,適切であった」42名(80.7%)であった.講師のインストラクションに関する2項目では,「講師の説明は簡潔で分かりやすかった」51名(98.0%),「講師の説明は表現を工夫していた」49名(94.2%)であった.研修教材に関する3項目では,「テキストは読みやすくレイアウトされていた」51名(98.1%),「e-learningの内容は分かりやすかった」48名(92.3%),「e-learningの内容は説得力があった」49名(94.2%)であった.相互学習に関する2項目では,「研修を通じて,他の受講者から有用な情報を得ることができた」48名(92.3%),「受講者相互の活発な意見交換ができるような雰囲気だった」44名(84.6%)であった.研修時間に関する2項目では,「研修の日数は適切であった」48名(92.3%),「集合研修の時間帯は適切であった」45名(86.5%)であった.
(n=52)
非常にそう思う | そう思う | ややそう思う | どちらとも言えない | あまりそう思わない | そう思わない | 全くそう思わない | ||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
項目 | n | % | n | % | n | % | n | % | n | % | n | % | n | % |
学習内容 | ||||||||||||||
内容に満足している | 34 | 65.4 | 15 | 28.8 | 3 | 5.8 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
研修の難易度は,適切であった | 19 | 36.5 | 24 | 46.2 | 9 | 17.3 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
学習の量は,適切であった | 23 | 44.2 | 19 | 36.5 | 8 | 15.4 | 2 | 3.8 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
講師のインストラクション | ||||||||||||||
説明は簡潔で分かりやすかった | 36 | 69.2 | 15 | 28.8 | 1 | 1.9 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
説明は表現を工夫していた | 34 | 65.4 | 15 | 28.8 | 2 | 3.8 | 1 | 1.9 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
研修教材 | ||||||||||||||
テキストは読みやすくレイアウトされていた | 35 | 67.3 | 16 | 30.8 | 1 | 1.9 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
e-learningの内容は分かりやすかった | 29 | 55.8 | 19 | 36.5 | 3 | 5.8 | 1 | 1.9 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
e-learningの内容は説得力があった | 28 | 53.8 | 21 | 40.4 | 3 | 5.8 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
相互学習 | ||||||||||||||
他の受講者から有用な情報を得ることができた | 36 | 69.2 | 12 | 23.1 | 2 | 3.8 | 2 | 3.8 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
受講者相互の活発な意見交換ができるような雰囲気だった | 25 | 48.1 | 19 | 36.5 | 6 | 11.5 | 1 | 1.9 | 1 | 1.9 | 0 | 0 | 0 | 0 |
研修時間 | ||||||||||||||
研修の日数は適切であった | 20 | 38.5 | 28 | 53.8 | 4 | 7.7 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
集合研修の時間帯は適切であった | 19 | 36.5 | 26 | 50.0 | 5 | 9.6 | 2 | 3.8 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
教育プログラムに対する意見や感想に関する自由記述は,42名より回答を得た.自由記述を分析した結果を表5に示した.102のコードより,3つのカテゴリーと11のサブカテゴリーが抽出された.以下,カテゴリーは【 】,サブカテゴリーは〔 〕,代表的なコードは「 」で示す.
カテゴリー | サブカテゴリー | コード | n | |
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教育プログラム への意見 |
教育プログラムの 新規性と価値 |
・ | 貴重な経験だった | 6 |
・ | EOLに関する研修がなかった | 2 | ||
・ | EOL研修で統合されたものが今までなかった | 1 | ||
教育方法・内容の 良かった点 |
・ | オンラインのため,全国各地の他の施設の方と交流することができた | 3 | |
・ | 今後の看護に活かせる内容だった | 2 | ||
・ | オンラインでの学習と集合研修というスタイルがよく,研修会受講のハードルが下がった | 1 | ||
・ | 講義内容や資料もわかりやすかった | 1 | ||
・ | 個人的な都合にタイムリーに丁寧に対応してくれた | 1 | ||
教育方法・内容の 改善点 |
・ | 職種間での価値観に対する対応のスキルを教えて欲しい | 1 | |
・ | EOLに関する内容がもっと知りたいと思った | 1 | ||
・ | ロールプレイやディスカッションの時間をもっと多くとって,たくさんの方と話し合ったり,対応について考えたい | 1 | ||
・ | 直接会って,ロールプレイやディスカッションを行いたい | 1 | ||
・ | ボリュームを増やして,数日間コースで学びたい内容だった | 1 | ||
・ | ネット環境に左右されることが残念 | 1 | ||
・ | 子どもと家族との思い出を共有することもスタッフのグリーフケアにつながる | 1 | ||
教育プログラムを 通じた学び |
知識の深化 | ・ | 手探りだったEOLを体系的に理解でき,知識を深めることができた | 3 |
・ | 教育プログラムの学習や事例検討,ロールプレイなど大変勉強になった | 3 | ||
・ | コミュニケーション技法や理論を用いてアセスメントすることができ,知識を深めることができた | 2 | ||
・ | グループディスカッションやロールプレイを通じて技術が確認できて,学びになった | 1 | ||
・ | 広い視野で俯瞰してみることの大切さを学んだ | 1 | ||
・ | これまでの学びを統合することができた | 1 | ||
他施設からの学び | ・ | ディスカッションを通じて,他の施設の取り組みや工夫を学ぶことができて勉強になった | 6 | |
・ | 全国の様々な施設の方々と意見交換できて有意義な時間だった | 3 | ||
・ | 他の施設の方と直接話して意見を聞き,学びが深まった | 2 | ||
・ | 他の参加者も日々実践で迷いながら看護されていることが感じられた | 1 | ||
ロールプレイを 通じた学び |
・ | 現場で他の看護者が家族にどのような対応をしているかを見ることができて参考になった | 5 | |
・ | 他者の家族との関わり方を聞くことで,声掛けや共感の姿勢を学ぶことができた | 2 | ||
・ | ロールプレイでは,どのような声掛けが安心につながるか学ぶことができた | 2 | ||
・ | ロールプレイを通じて,他の方の意見が聞けて勉強になった | 1 | ||
・ | ロールプレイはとても分かりやすく,実際の場面を想像しながらできてよかった | 1 | ||
・ | ロールプレイを通じてすでにできていることや工夫点を知ることができた | 1 | ||
・ | ロールプレイを通じてその立場になることで,気付くことが多かった | 1 | ||
家族支援に ついての学び |
・ | 家族とどのように関わっていけばよいか知ることができた | 2 | |
・ | 家族をシステムとして捉えることで,違う視点に気付いた | 1 | ||
・ | 子どもに対してできることを重ねるのも大切だけど,家族がそこにいることが価値のあることと感じられた | 1 | ||
・ | 家族が存在意義に気付くことができるように支えていきたい | 1 | ||
・ | 家族ケアは難しいけど楽しいと改めて感じた | 1 | ||
・ | 意思決定支援や家族支援について学べてよかった | 1 | ||
看護実践の振り返りと学びの活用 | 自分自身のケアの振り返りと明確化 | ・ | グループディスカッションやロールプレイを通じて,自分の振り返りができた | 2 |
・ | 自分のケアが正しかったということが学べた | 1 | ||
・ | 自分が行っていた家族への関り方について振り返ることができた | 1 | ||
・ | 家族との関わり方を客観的に考え直す機会となった | 1 | ||
・ | 自分の経験値から参加できて現状がわかった | 1 | ||
・ | 今まで自分は家族をシステムとして捉えていなかったので,個人的な感情を持っていた | 1 | ||
・ | これまでEOLにあるご家族への対応はこれでよかったのか悩むことが多かった | 1 | ||
・ | これまで行ってきたことが明確化された | 1 | ||
・ | EOLについてあっているか分からないままだったが,スキルが可視化できたことで,方向性が合っていたことがわかった | 1 | ||
実践での活用に 対する意欲 |
・ | この研修を活かしてEOL家族支援の実践につなげたい | 7 | |
・ | コミュニケーション技術について,今後の臨床に活かしていきたい | 2 | ||
・ | テキストを用いて復習を行い,明日からの臨床に活かせるようにしたい | 1 | ||
・ | これからの家族との関わりに活かしたい | 1 | ||
・ | 今後の子どもと家族への関り,良いケア・時間につなげたい | 1 | ||
・ | 子ども・家族・スタッフに優しくありたい | 1 | ||
・ | EOLケアに関する知識・技術を統合して実践を行いたい | 1 | ||
・ | 病棟教育でも,グループディスカッションやロールプレイを通じてみんなで振り返ることが大切と感じたので,今後の実践に活かしたい | 2 | ||
・ | 病棟でもカンファレンス等を通じて,研修内容を活かしていきたい | 1 | ||
・ | 他の施設の取り組みを知ることができ,自施設にも取り組みたい | 1 | ||
・ | NICUに携わるスタッフにぜひ参加して欲しい | 1 | ||
実践への自信 | ・ | EOLケアを逃げないでできる自信ができた | 1 | |
・ | もっと自信を持って対応していきたい | 1 | ||
・ | ロールプレイのフィードバックを受けて,患者さんと自信をもって関われそう | 1 | ||
今後の課題の 明確化 |
・ | 自分や他の人の課題を知ることで,改善点が見えた | 1 | |
・ | 自分に不足している知識やスキルが抽出できたことで,今後の方向性が見えた | 1 | ||
・ | 事例やロールプレイを通じて,自分の態度やコミュニケーション技術について課題が見えた | 1 |
【教育プログラムへの意見】には3つのサブカテゴリーが含まれた.〔教育プログラムの新規性と価値〕には「貴重な経験だった」,〔教育方法・内容の良かった点〕には「オンラインのため,全国各地の他の施設の方と交流することができた」,〔教育方法・内容の改善点〕には「職種間での価値観に対する対応スキルを教えて欲しい」などのコードが含まれた.
2) 教育プログラムを通じた学び【教育プログラムを通じた学び】には4つのサブカテゴリーが含まれた.〔知識の深化〕には「手探りだったEOLを体系的に理解でき,知識を深めることができた」,〔他施設からの学び〕には「ディスカッションを通じて,他の施設の取り組みや工夫を学ぶことができて勉強になった」などのコードが含まれた.〔ロールプレイを通じた学び〕には「現場で他の看護師が家族にどのような対応をしているかを見ることができて参考になった」,〔家族支援についての学び〕には「家族とどのように関わっていけばよいか知ることができた」などのコードが含まれた.
3) 看護実践の振り返りと学びの活用【看護実践の振り返りと学びの活用】には4つのサブカテゴリーが含まれた.〔自分自身のケアの振り返りと明確化〕には「グループディスカッションやロールプレイを通じて,自分の振り返りができた」のように,これまでの自身のケアが明確化された内容が含まれた.〔実践での活用に対する意欲〕には「この研修を活かしてEOL家族支援の実践につなげたい」という看護師個人の意欲と,「病棟教育でも,グループディスカッションやロールプレイを通じてみんなで振り返ることが大切と感じたので,今後の実践に活かしたい」のように,病棟教育での活用への意欲が含まれた.さらに〔実践への自信〕には「EOLケアを逃げないでできる自信ができた」,〔今後の課題の明確化〕には「自分や他の人の課題を知ることで,改善点が見えた」などのコードが含まれた.
本研究の対象者は,わが国のNICU看護師を対象とした浅井(2017)と比較すると,年齢,臨床経験年数,NICU経験年数ともに2~3年程度長い集団であった.また,主任・副師長の割合がやや高く,専門看護師や修士課程の資格を有する者も多く,病棟において管理・教育的な立場の者が比較的多い集団であったと考えられた.NICUのEOLケアに関する研修に参加した経験のある者の割合は少なかった.教育プログラムの参加動機の結果から,NICUのEOL家族支援に対する学習意欲,興味・関心が高い集団であると考えられる.
2. 教育プログラムの構成・内容と満足度の評価本教育プログラムは,1時間半のオンデマンド型e-learningの動画視聴と確認テスト,3時間のオンライン集合研修を合わせた計4時間30分のブレンド型学習を実施した.本教育プログラムに対する対象者の満足度は高い傾向にあり,学習内容,講師のインストラクション,研修教材,相互学習,研修時間の満足度に関する全ての項目において,80~90%以上の者が「そう思う」~「非常にそう思う」と回答していた.これらの結果から,教育プログラムの内容と構成は概ね適切であったという評価が確認できた.対象者の自由記述における内容の評価を見ると,これまでわが国においてNICUのEOLケアとして統合された研修があまりなかったことから,教育プログラムの新規性や貴重な経験という思いが挙げられており,このことも全体的な満足度につながったと考える.
項目別に見ると,学習内容の「研修の難易度は,適切であった」と「学習の量は,適切であった」の項目で,約15%の者が「ややそう思う」と回答していた.自由記述における教育プログラムの改善点で,ロールプレイやディスカッションの時間をもっと多く取りたい,ボリュームを増やして数日間コースで学びたいという意見が聞かれた.もっと多く学びたい,時間を多く取りたいという希望は,教育プログラム受講直後の学習意欲の高まりによるものとも考えられ,本教育プログラムの内容を基本に,難易度や構成について対象者の意見を取り入れた柔軟な内容としていく必要がある.また一部の参加者から,職種間での価値観の違いに対する対応のスキルや,より深いEOLケアに関する内容が知りたいという意見が挙げられた.この点は今後の教育プログラム改善の課題であり,対象者の学習ニーズに合わせた内容を検討することで,より包括的なEOL家族支援に関する教育が可能になると考える.
相互学習の「受講者相互の活発な意見交換ができるような雰囲気だった」の項目では,約10%の者が「ややそう思う」と回答し,「どちらとも言えない」~「あまりそう思わない」と回答した者が3.8%いた.オンライン研修会のデメリットとして,参加者同士の交流が乏しいことが報告されており(星ら,2021),本研究も同様であると考えられた.自由記述の改善点で述べられたように,ネット環境に影響を受けることも要因であると考える.しかし自由記述の評価にて,他施設の取り組みや意見,工夫を聞き学びとなることや,ロールプレイを通じて家族との関わり方を学び,知識の深化につながるという意見が聞かれた.そしてその学びは,自分自身のケアの振り返りとなり,EOL家族支援に対する自信や,今後の課題の明確化,実践への意欲につながっていた.これらことから,オンラインで実施したブレンド型学習による本教育プログラムは実施可能で,施設を越えた対象者が参加しやすく,満足感が得られる内容であり,看護実践への有効性の認識につながることが示唆された.
3. 本研究の限界と今後の課題本研究では,全国の総合周産期母子医療センターを対象に公募を行い,参加を自ら希望した者を対象にしていることから,対象者がNICUのEOL家族支援に対する興味・関心,意欲が高い者に偏っていることが考えられ,それにより満足感が得られやすい集団であるなどのバイアスが生じる可能性がある.さらに,EOLケア経験が比較的類似していると想定される,総合周産期母子医療センターのNICU看護師のみを対象としていることから,結果の一般化には限界がある.また本教育プログラムの原案は研究者1名が作成し,その後,研究者間のディスカッションや専門家会議,試行実施を経て検討したが,作成段階が限られていたため,内容妥当性の確保には一定の限界がある.
本研究は,治療方針の意思決定をするときから,看取りに至るまでの時期のNICUの家族支援に焦点を当てた,わが国で初めての看護師教育プログラムの開発であり,対象者の満足感が得られる教育内容であることが確認できた.NICUのEOLケアに関する研修会への参加経験がある者が非常に少ないことを考えると,本教育プログラムを現任教育として広く普及させていく意義が見出された.本教育プログラムは,これまでの自身の経験を基に,事例に対するグループディスカッションやロールプレイを行う内容となっている.しかし,EOLケア経験がない看護師にとっても,EOL家族支援について考え学ぶ機会となり,教育効果が期待できる可能性がある.今後は対象者をEOLケア経験のない看護師にも拡大し,対象者に合わせた教育内容について検討する必要があると考える.また,本研究では教育プログラムを開発し,形成的評価である対象者の満足度について検証したが,総括的評価である看護師の知識,技術,態度に及ぼす効果についても明らかにする必要がある.
本研究はNICU看護師を対象に,EOL家族支援に対する肯定的な態度の形成と知識,技術の習得を促す教育プログラムを開発・実施し,教育プログラムの構成・内容と対象者の満足度を評価することを目的とした.5つの学習項目から成る,オンデマンド型e-learningとオンライン集合研修を合わせた,計4時間30分のブレンド型学習による教育プログラムを開発・実施した.本教育プログラムに対する対象者の満足度は高い傾向にあり,内容と構成は概ね適切で,実施可能であることが確認された.
付記:本研究は,筑波大学大学院に提出した博士論文の内容の一部に加筆・修正したものである.また,一部を第43回日本看護科学学会学術集会にて発表した.
謝辞:本研究にご協力いただきました,研究参加者の皆様に心より感謝申し上げます.本研究は,山路ふみ子専門看護教育研究助成基金より助成を賜り実施しました.
利益相反:本研究における利益相反は存在しない.
著者資格:YSは研究の着想とデザイン,データ収集・分析,原稿の作成,RWおよびNOは研究デザイン,データ分析,原稿への示唆と研究プロセス全体への助言,SSはデータ収集と原稿への示唆に貢献した.すべての著者は最終原稿を読み,承認した.