目的:産科医療機関の看護職を対象に,子ども虐待発生予防に向けた看護実践意識化プログラムの効果を検証することを目的とした.
方法:無作為化比較試験を介入群31名,対照群30名を対象に実施した.介入群にはEラーニングとグループワークによるプログラムを実施した.効果評価には,NES-CMP(子ども虐待発生予防に向けた看護実践自己評価尺度)と看護実践の意識,モチベーション,自信の割合および変化量を用いた.
結果:介入群28名(脱落率9.7%),対照群26名(脱落率13.3%)のデータを分析した.NES-CMPスコアでは両群に有意差はなかったが,看護実践の意識,モチベーション,自信の変化量では,介入群が対照群を有意に上回った.
結論:本プログラムは,看護実践における意識,モチベーション,自信の向上に有効であったが,より広範な対象者や効果の持続性を検討する必要がある.
Objective: This study aimed to evaluate the effectiveness of a nursing practice awareness program designed to prevent child maltreatment, targeting nurses working in maternity wards at obstetric medical institutions.
Methods: A randomized controlled trial was conducted with 61 participants—31 in the intervention group and 30 in the control group. The intervention group received a program consisting of the combination of e-learning and group work. The effectiveness of the program was evaluated using the NES-CMP (Nursing Evaluation Scale for Child Maltreatment Prevention), as well as through the observation of changes in their awareness, motivation, and confidence related to nursing practice.
Results: Data belonging to 28 participants in the intervention group (attrition rate: 9.7%) and 26 in the control group (attrition rate: 13.3%) were analyzed. Although there was no significant difference in NES-CMP scores between the groups, the intervention group displayed significantly higher changes in awareness, motivation, and confidence in comparison to the control group.
Conclusion: The program was effective in enhancing awareness, motivation, and confidence in nursing practice. However, further research is needed to explore the sustainability of these effects and the applicability of the program to a broader range of nursing professionals.
日本における子ども虐待による死亡事例の検証では,0歳児が全体の約半数を占め,出産直後から0歳児が最もリスクの高い時期であることが報告されている(厚生労働省,2021).この深刻な状況を受け,国は虐待発生の予防のため,妊娠期から子育て期にわたる切れ目のない支援体制の構築に注力している.具体的には,特定妊婦への支援,子育て支援センターの設置,赤ちゃん訪問事業の推進,医療機関と保健機関のネットワーク構築を通じて,虐待リスクを有する母親や家庭を早期に把握し,必要な支援を提供する取り組みが進められている.
子ども虐待予防の戦略は,一次予防(全住民を対象),二次予防(リスクを有する特定の集団を対象),三次予防(虐待が発生した後の対応)の3つに分類される.子ども虐待の一次予防は,助産師や看護師(以下,看護職)が育児に関する適切なアドバイスや親の安心のための助言を行い,親のメンタルヘルスや安定した愛着の問題に気づくことである.さらに,母親を一人の個人として尊重する姿勢は,自己肯定感を育み,育児への自信を深める鍵となる(Browne et al., 2006/2012).産後5日程度の短い入院期間であっても,母親が満足するケアを受けると子どもへの愛着形成を促進することが報告されている(Ohashi et al., 2014).このように,母親の思いを尊重し,共感をもって接する態度は,母親の自己肯定感を高め,ひいては子どもへの愛着を促進し,その結果として虐待リスクの低減につながるといえる.二次予防としては,虐待リスクの早期発見と適切な支援が重要である.産科医療機関の看護職は,妊婦健診,分娩,産後の日常的なケアを通じて「何か気になる」という感覚を用いて虐待リスクを察知し,看護チームで検討し,他機関への情報提供を行い(唐田,2023;大友,2020),虐待の発生予防に寄与している.このような予防活動ができる看護職には,虐待発生予防の実践が期待されており(日本産婦人科医会,2021),虐待リスクに「気づき」,看護チームで対応する力,さらに退院後も支援が途切れないよう多職種および他機関と連携する力が求められている.
しかし,実際には「虐待予防に何か貢献したい」と思っていても,一部の看護職は虐待発生予防の実践に対して迷いや自信の欠如があり,虐待リスクに気づいても報告しない場合があることが明らかになっている(武田ら,2010).大友・斉藤(2018)は,看護職が「自信がない」と感じる背景には,どのような看護実践が良いのか分からないことや,自らの実践が虐待発生予防にどのように寄与しているかを十分に認識できていない現状があると考え,この課題を解決するため,子ども虐待発生予防に向けた看護実践自己評価尺度(NES-CMP)を作成している.その中には,信頼関係の構築や育児支援必要度の査定といった,すべての母親に行われる看護実践が含まれていた(大友・斉藤,2018).日常的な看護実践を通じて信頼関係を構築しながら親子の愛着形成を促し,虐待発生を予防することは,看護職に課された大きな役割であるといえる.
Baba & Kataoka(2023)は,日本の看護職が基礎教育で虐待予防に関する知識やスキルを十分に学ぶ機会が乏しく,臨床では個人の努力に依存していると指摘し,これに対応して実施したEラーニングプログラムが,知識と効力感の向上に有効であったと報告している.このように虐待予防に関する知識の習得は重要であるが,虐待発生予防の看護実践はすぐに成果が見えにくいため,明確な達成感を得るのが難しく,モチベーションを維持しづらいのではないだろうか.古川(2010)は,「何についても意識化」することが行動の成果を高め,さらなる挑戦への意欲につながると述べている.虐待発生予防の看護実践のような成果が不明瞭な状況では,自分がなぜその行為を行うのかを十分に意識しないと,十分な効果を得られない可能性があり,虐待発生予防の看護実践においても意識化の取り組みが重要であると考えた.
そこで本研究では,中堅看護職を対象に,虐待発生予防に向けた看護実践の意識化プログラムを開発することを目的とした.中堅看護職を対象とした理由は,彼らが経験の浅い看護職への教育やチームのリーダーシップといった中核的役割を担っており(柿田ら,2023),職場全体の看護実践を統一・向上するためには,中堅看護職の実践能力や自信を高めることが不可欠だと考えたからである.
本研究では,仮説1:本プログラム参加者は非参加者よりもNES-CMPスコアが高くなる.仮説2:本プログラム参加者は非参加者よりも虐待発生予防の看護実践の意識,モチベーション,自信が向上する,と設定した.
本研究での用語の操作的定義として,「お母さん中心の支援で虐待を未然に防ぐ看護実践(以下,看護実践)」とは,母親を尊重し虐待発生予防を図る取り組みであり,母親との信頼関係を基盤に情報を収集し,個々の看護職からチームや多職種へと支援を広げる活動を指す.また,母親を通じてパートナーなど家族の問題を把握した場合は家族全体への支援も含む.「意識化」とは,漫然と行っている行為に意識を向け,その目的や理由を自覚することである.
本研究は無作為化比較研究(RCT)である(図1).

日本産婦人科医会のデータベース(日本産科婦人科学会,2022)を基に,全国の産科医療機関688施設(100床以上)のリストを作成し,看護部長宛に依頼書を送付した.サンプルサイズは,検出力80%,有意水準5%,先行研究(大友・斉藤,2018)を参考に効果量を0.8と仮定して算出した.その結果,介入群と対照群の各群17名(計34名)となった.また,先行研究(藤川・月野木,2020;今戸ら,2021)を参考に,脱落率40%を想定して各群24名(計48名)を目標とした.
研究協力者は産科病棟に勤務する看護職とし,参加要件は中堅看護職(5~10年程度)または中間管理職から1名とした.除外要件は①妊産婦ケアの経験がない,または今後も予定がない,②看護師の資格がない,③プログラムの一部しか参加できない,とした.本研究では,妊産婦ケアへの従事を参加要件とし,助産師の資格による制限はしなかった.この理由は,先行研究(大友・斉藤,2018)において,産科病棟における助産師と看護師のケア内容は,分娩介助を除き共通していることが確認されており,資格を限定することで産科勤務の看護師が虐待発生予防に関する教育機会から除外されることを避けるためである.
募集期間は2022年4月から5月であり,61名から承諾書の返信を得た.研究協力者の情報は匿名化し,各参加者に固有の識別番号を割り当てたうえで管理した.ランダム割付はSPSSの乱数生成機能を用いて実施し,介入群31名,対照群30名に分類した.盲検化を確保するため,各協力者にはテキスト送付時にグループ名(A講義前半グループ=介入群,B講義後半グループ=対照群)を通知した.データは匿名化形式で管理され,個人が特定されることなく,データの信頼性が確保された.
3. プログラムの手順と概要本プログラムは,子ども虐待の現状や虐待発生の要因と対応および虐待発生予防の看護実践(大友・斉藤,2018)の理解を深め,虐待発生予防の看護実践を促進することを目的に作成した.内容は先行文献(Browne et al., 2006/2012;厚生労働省,2007;立花,2016)を参考に構成した.また,妊娠中から産後の継続支援における保健師との連携の重要性(大友・麻原,2013)を考慮し,保健師の活動内容や連携のメリットに関する要素も加えた.
プレテストは,2021年9月から10月にかけて助産師3名(平均年齢45.3 ± 11.5歳,助産師経験年数平均12.3 ± 8.0年)を対象にオンライン講義を実施し,①プログラム内容の分かりやすさ,②プログラムの所要時間に対する負担感,③アンケートの回答のしやすさ,④オンラインの課題,⑤プログラム全般に関する意見についてアンケートを回収した.これらの結果を踏まえ,研究者間で協議し,最終的なプログラムの内容を修正した.
本プログラムは,オンデマンド形式のEラーニング(以下,EL)とグループワーク(以下,GW)を1セットとし,2週間間隔で2セット実施した.また,ELの視聴は各GW前に設定し,2週間内の自由視聴とした.プログラム前に,両群へELの内容をまとめた全56ページの紙媒体のテキストを送付した.EL1回目の内容は,母子を取り巻く環境の変化と課題,虐待発生予防に向けた看護実践(信頼関係の構築,育児支援必要度の査定,チームケアの実践,多職種支援体制の調整),および「地域の保健師はどんな母子支援をしているの?」とした.EL2回目では,子ども虐待の現状と予防,メンタルヘルス,ドメスティック・バイオレンス,妊娠クライシス,育児支援に関する社会資源,さらに「病院と地域が連携したら何かいいことある?」上手くいった事例紹介とした(表1).ELは研究協力者の負担を考慮し,総時間51~53分で構成した.
| 1回目 E-ラーニング講義内容 | 時間 |
| 1 母子を取り巻く環境の変化と課題,対策 | 13分 |
| 2 看護職支援の効果,虐待発生予防に向けた看護実践 | |
| ①信頼関係の構築 | 15分 |
| ②育児支援必要度の査定 | 10分 |
| ③チームケアの実践,多職種支援体制のための調整 | 7分 |
| 3 地域の保健師はどんな母子支援をしているの? | 8分 |
| 1回目 グループワーク内容 | 時間 |
| ・グループワークの説明,グループ分け,自己紹介 | 90分 |
| ・お母さん中心で虐待を未然に防ぐためのチームの強みと弱みの意見交換と発表 | |
| 2回目 E-ラーニング講義内容 | 時間 |
| 1 子ども虐待の現状と予防 | 10分 |
| 2 メンタルヘルス | 12分 |
| 3 DV | 8分 |
| 4 妊娠クライシス,育児支援に関する社会資源 | 11分 |
| 5 病院と地域が連携したら何かいいことある?上手くいった事例紹介 | 10分 |
| 2回目 グループワーク内容 | 時間 |
| ・事例の紹介,グループワークの説明 | 90分 |
| ・事例について自分達の動きや必要な社会資源について意見交換と発表 |
GW(各90分)の目標は,虐待発生予防のための看護実践を自施設でどのように活用できるか具体的に考え,その思いを共有することで看護実践の意識,モチベーション,自信を高めることであった.GW 1回目では,虐待発生予防における自施設の看護職チームの強みと弱みについて意見交換を行った.GW 2回目では,子ども虐待発生予防が必要な事例を提示し,各自がどのように行動するか,必要な社会資源をどのように活用するかを検討し,意見交換を行った.GWは,事前に研究協力者をランダムに5グループ(各5~6名)に分けて,1回目にグループメンバーを提示,2回目はメンバーを固定して,所定の日時にオンラインで実施した.GWは,オンライン会議システムのブレイクアウトルーム機能を用い,司会および書記は,各グループ内で自主的に決めるよう説明した.研究者は,開始時には目的とルール(録画しない,ここで知り得たことを他に漏らさない,発言を批判しない)を説明し,安心安全な場を確保し,GW中は各グループを巡回して進行を支援した.
評価は,両群に同一内容のアンケートを,T1(介入前),T2(介入直後),T3(1か月後),T4(3か月後)の4時点で実施した.追跡期間を3か月後までとした理由は,研究計画時に専門職対象の類似研究を検討した結果,1か月程度の追跡調査が一般的であり,3か月以上の追跡では脱落率が高まる傾向が報告されていたためである(今戸ら,2021).
T2時点では,「本研究への参加が看護実践の意識に与えた変化」を4件法「なかった」「少しあった」「あった」「大いにあった」の質問を追加し,「少しあった」以上に回答した者には意識に影響を与えた要因(介入群:EL,GW,テキスト,その他;対照群:テキスト,その他)(重複回答可)を質問した.また,プログラムに関する自由記載欄も設けた.介入群の1回目・2回目EL視聴の確認および内容の評価のために,1回目・2回目GW後に理解度(理解できた〜理解できなかった)および満足度(満足〜不満)の4件法を用い,さらに内容に関する自由記載を収集した.対照群には,T4後に期間限定でELを自由に視聴できる機会を設けた.
4. 調査項目調査項目は,性別,年齢,職位,資格,看護職経験年数,産科勤務経験年数,および個人の経験(児童虐待予防の学習経験,虐待リスクを有する妊産婦の担当経験)とした.プログラムの効果評価には,NES-CMP,虐待発生予防の看護実践の意識,モチベーション,自信の4指標を用いた.NES-CMPは,「多職種支援体制の調整(8項目)」,「信頼関係の構築(8項目)」,「育児支援必要度の査定(10項目)」,「チームケアの実践(4項目)」の4因子,合計30項目(得点範囲:0~120点)で構成され,併存妥当性,構成概念妥当性,および信頼性(クロンバックα = 0.97)が報告されている(大友・斉藤,2018).回答は5段階(0~4点)のリッカートスケールで行い,得点が高いほど実践能力が高いと評価される自己評価尺度である.
虐待発生予防に関する看護職の意識,モチベーション,自信を測定するにあたり,これらを包括的に評価できる標準化された尺度は現存していない.そこで本研究では,主観的な感覚や心理状態の把握に医療・心理学領域で広く用いられるVisual Analogue Scale(VAS)に着目した.VASは連続的な評価が可能であり,微細な心理的変化の捕捉に適している.Web調査のため,VASの特性を活かしつつ回答の容易性と視認性を考慮し,11段階のリッカート尺度を用いて測定を行った.質問文には,「日常業務の中で,お母さんを中心とした支援によって虐待を未然に防ぐための看護実践について~」という共通の前置きを用い,それに続けて「どの程度意識していますか」「どの程度モチベーションを感じていますか」「どの程度自信がありますか」という3項目を設定した.各項目は,0を「全く意識していない」,10を「非常に意識している」とする11段階のリッカート尺度とした(以下,それぞれ「看護実践の意識」「看護実践のモチベーション」「看護実践の自信」とする).
5. データ収集と分析方法実施期間は2022年6月~11月とした.初回はテキストと自記式アンケートを郵送し,返信封筒で回収した.2回目以降はWebのアンケートフォームを利用して回答を得た.分析には,研究協力者の属性比較にt検定またはカイ二乗検定を用いた.NES-CMPと看護実践の意識,モチベーション,自信のスコアおよび変化量の比較にはt検定を用い,効果量としてCohen’s dを算出した.さらに,縦断的な変化および群と時点の交互作用を包括的に扱うために混合モデルを使用した(目的変数:各時点とベースラインの差,説明変数:群,時点及びベースライン値).群間比較では,変化量はT1をベースラインとし,各時点(T2, T3, T4)からT1を差し引いて算出した(変化量1 = T2 – T1,変化量2 = T3 – T1,変化量3 = T4 – T1).
6. 倫理的配慮本研究は,聖徳大学ヒューマンスタディに関する倫理審査委員会(承認番号:R03U012,2022年2月14日)の承認を得て実施した.研究協力者には研究目的や内容,途中辞退の自由,データ管理,氏名の連結可能匿名化,結果公表時のプライバシー保護について文書で説明し,同意書を取得した.対照群に不利益が生じないよう,プログラム終了後にELを視聴できる機会を設けた.また,研究協力者には倫理審査承認のもとで謝品を提供した.
介入群は28名(脱落者3名,脱落率9.7%)で,助産師26名,看護師2名,平均年齢39.5 ± 8.3歳であった.対照群は26名(脱落者4名,脱落率13.3%)で,助産師26名,平均年齢39.4 ± 7.8歳であった(表2).脱落理由は「要件外」「辞退」「返答がない」であり,両群間の属性に有意差はなかった.なお,介入群の看護師2名は少数のため,助産師群との統計的比較は困難であったが,目視では各スコアに顕著な差異はなかった.
| 介入群 (n = 28) |
対照群 (n = 26) |
p値 | ||
|---|---|---|---|---|
| 性別 | 女性 | 28(100.0%) | 26(100.0%) | ― |
| 平均年齢a | 39.5 ± 8.3 | 39.4 ± 7.8 | .94 | |
| 年齢範囲(歳) | 29~58 | 27~57 | ||
| 看護職経験年数a | 14.9 ± 7.8 | 15.0 ± 7.5 | .97 | |
| 産科勤務年数a | 13.4 ± 7.0 | 14.4 ± 6.9 | .60 | |
| 資格b | 助産師 | 26(92.9%) | 26(100.0%) | .17 |
| 看護師 | 2(7.1%) | 0(0.0%) | ||
| 職位b | スタッフ | 18(64.3%) | 20(76.9%) | .31 |
| 管理職 | 10(35.7%) | 6(23.1%) | ||
| 勤務形態b | 常勤 | 27(96.4%) | 26(100.0%) | .52 |
| その他 | 1(3.6%) | 0(0.0%) | ||
| 児童虐待予防の学習経験b | あり | 20(71.4%) | 20(76.9%) | .65 |
| なし | 8(28.6%) | 6(23.1%) | ||
| 虐待リスクを有する妊産婦担当経験b | あり | 24(85.7%) | 21(80.8%) | .57 |
| なし | 4(14.3%) | 4(15.4%) | ||
| 無回答 | 0(0.0%) | 1(3.8%) |
a:t-test,b:chi-square test
※看護職経験年数:介入群n = 27,対照群n = 26
NES-CMP合計スコアは,T2時点において対照群のスコアがT1時点より低下し,介入群が対照群を上回る傾向を示したが,有意差はなかった(p = 0.058, Cohen’s d = 0.529).第1因子「多職種支援体制の調整」,第4因子「チームケアの実践」では,すべての測定時点において両群間に有意差はなかった.一方,第2因子「信頼関係の構築」(T2: p = 0.017, Cohen’s d = 0.706)と第3因子「育児支援必要度の査定」(T2: p = 0.047, Cohen’s d = 0.561)においては,T2時点で介入群が対照群を有意に上回った(表3).また,介入群内グループ間の差の検定では,有意差はなかった.
| 項目 | 時点/変化量 | 介入群(n = 28) Mean ± SD |
対照群(n = 26) Mean ± SD |
p値 | 効果量 Cohen’s d |
|---|---|---|---|---|---|
| NES-CMP合計 | T1 | 85.46 ± 17.36 | 86.92 ± 16.00 | .749 | .087 |
| T2 | 87.46 ± 10.04 | 79.73 ± 18.31 | .058 | .529 | |
| T3 | 87.75 ± 14.92 | 86.12 ± 15.98 | .683 | .106 | |
| T4 | 88.57 ± 14.25 | 89.31 ± 20.32 | .866 | .042 | |
| 変化量1 | 2.00 ± 16.91 | –7.19 ± 14.36 | .037* | .584 | |
| 変化量2 | 2.29 ± 19.83 | –0.80 ± 11.21 | .488 | .190 | |
| 変化量3 | 3.11 ± 18.31 | 2.38 ± 16.06 | .878 | .042 | |
| NES-CMP第1因子 多職種支援体制のための調整 |
T1 | 22.14 ± 6.05 | 22.90 ± 5.66 | .642 | .130 |
| T2 | 23.21 ± 4.76 | 21.42 ± 7.20 | .295 | .296 | |
| T3 | 24.04 ± 4.48 | 22.46 ± 5.73 | .269 | .102 | |
| T4 | 23.57 ± 5.71 | 24.35 ± 6.02 | .612 | .132 | |
| 変化量1 | 1.07 ± 5.65 | –1.48 ± 6.63 | .133 | .953 | |
| 変化量2 | 1.89 ± 5.81 | –0.44 ± 4.54 | .107 | .985 | |
| 変化量3 | 1.43 ± 6.72 | 1.44 ± 5.19 | .993 | .532 | |
| NES-CMP第2因子 信頼関係の構築 |
T1 | 22.18 ± 4.85 | 22.81 ± 4.28 | .612 | .137 |
| T2 | 23.29 ± 2.87 | 20.42 ± 5.03 | .017* | .706 | |
| T3 | 22.96 ± 4.52 | 23.42 ± 4.51 | .700 | .102 | |
| T4 | 23.89 ± 3.63 | 23.54 ± 4.43 | .745 | .088 | |
| 変化量1 | 1.10 ± 5.34 | –2.38 ± 4.61 | .013* | 1.246 | |
| 変化量2 | 0.79 ± 5.67 | 0.62 ± 3.76 | .898 | .569 | |
| 変化量3 | 1.71 ± 5.13 | 0.73 ± 4.83 | .473 | .731 | |
| NES-CMP第3因子 育児支援必要度の査定 |
T1 | 29.57 ± 5.32 | 29.69 ± 5.79 | .935 | .022 |
| T2 | 29.32 ± 3.48 | 26.62 ± 5.94 | .047* | .561 | |
| T3 | 29.14 ± 4.73 | 28.54 ± 5.65 | .655 | .116 | |
| T4 | 29.32 ± 4.67 | 29.38 ± 7.82 | .972 | .010 | |
| 変化量1 | –0.25 ± 5.50 | –3.08 ± 4.31 | .041* | 1.112 | |
| 変化量2 | –0.43 ± 6.79 | –1.15 ± 4.31 | .644 | .660 | |
| 変化量3 | –0.25 ± 5.74 | –0.31 ± 5.86 | .971 | .544 | |
| NES-CMP第4因子 チームケアの実践 |
T1 | 11.57 ± 2.81 | 11.62 ± 2.45 | .949 | .017 |
| T2 | 11.64 ± 2.11 | 11.27 ± 2.66 | .566 | .156 | |
| T3 | 11.61 ± 2.47 | 11.69 ± 2.19 | .891 | .036 | |
| T4 | 11.79 ± 2.57 | 12.04 ± 3.28 | .743 | .086 | |
| 変化量1 | 0.07 ± 2.99 | –0.35 ± 2.48 | .581 | .685 | |
| 変化量2 | 0.03 ± 3.29 | 0.08 ± 2.08 | .957 | .519 | |
| 変化量3 | 0.21 ± 3.18 | 0.42 ± 2.77 | .799 | .464 |
変化量1:T2–T1,変化量2:T3–T1,変化量3:T4–T1
t-test,* p < .05
看護実践の意識では,T3(p = 0.038, Cohen’s d = 0.587)で,看護実践のモチベーション(T2: p = 0.010, Cohen’s d = 0.748)および看護実践の自信(T2: p = 0.010, Cohen’s d = 0.739)では,T2時点で対照群のスコアがT1時点より低下し,介入群が対照群を有意に上回った(表4).また,介入群内グループ間の差の検定では,有意差はなかった.
| 項目 | 時点/変化量 | 介入群(n = 28) Mean ± SD |
対照群(n = 26) Mean ± SD |
p値 | 効果量 Cohen’s d |
|---|---|---|---|---|---|
| 看護実践意識 | T1 | 6.18 ± 2.33 | 5.92 ± 2.64 | .707 | .103 |
| T2 | 7.18 ± 2.37 | 5.92 ± 2.77 | .079 | .488 | |
| T3 | 7.29 ± 1.86 | 6.04 ± 2.37 | .038* | .587 | |
| T4 | 7.25 ± 1.53 | 6.73 ± 2.46 | .361 | .256 | |
| 変化量1 | 1.00 ± 2.09 | 0.00 ± 2.71 | .138 | .415 | |
| 変化量2 | 1.11 ± 2.36 | 0.12 ± 2.52 | .143 | .407 | |
| 変化量3 | 1.07 ± 1.88 | 0.81 ± 2.51 | .667 | .119 | |
| 看護実践モチベーション | T1 | 6.75 ± 1.92 | 7.12 ± 2.18 | .655 | –.178 |
| T2 | 8.25 ± 1.58 | 6.77 ± 2.34 | .010* | .748 | |
| T3 | 7.89 ± 1.89 | 7.19 ± 2.42 | .239 | .324 | |
| T4 | 7.71 ± 1.56 | 6.96 ± 2.42 | .186 | .372 | |
| 変化量1 | 1.50 ± 1.71 | –0.35 ± 2.17 | .001*** | .949 | |
| 変化量2 | 1.14 ± 2.34 | 0.08 ± 1.90 | .071 | .499 | |
| 変化量3 | 0.96 ± 2.10 | –0.15 ± 2.17 | .067 | .512 | |
| 看護実践自信 | T1 | 4.82 ± 2.20 | 5.12 ± 2.08 | .504 | –.137 |
| T2 | 6.29 ± 1.63 | 4.85 ± 2.24 | .010* | .739 | |
| T3 | 6.32 ± 1.79 | 5.27 ± 2.25 | .062 | .587 | |
| T4 | 6.32 ± 1.59 | 5.77 ± 2.35 | .314 | .277 | |
| 変化量1 | 1.46 ± 1.86 | –0.27 ± 1.34 | .000*** | 1.064 | |
| 変化量2 | 1.50 ± 2.01 | 0.15 ± 1.54 | .008** | .748 | |
| 変化量3 | 1.50 ± 2.40 | 0.65 ± 1.60 | .131 | .412 |
変化量1:T2–T1,変化量2:T3–T1,変化量3:T4–T1
t-test,* p < .05,** p < .01,*** p < .001
T2時点における意識変化の調査では,介入群(28名)では「大いにあった」25.0%(7名),「あった」57.1%(16名),「少しあった」17.9%(5名),「なかった」0%(0名)であった.一方,対照群(26名)では「大いにあった」3.8%(1名),「あった」46.2%(12名),「少しあった」30.8%(8名),「なかった」19.2%(5名)であった.介入群は「大いにあった」「あった」を感じた割合が対照群に比べて有意に高かった(χ2 = 5.94, p = 0.015).介入群の自由記載では,「普段のケアが虐待予防につながっていると知り,ケアに自信がついた」「グループワークで他施設の状況を知り,自施設の環境が恵まれていることに気づいた」「他の病院のことが参考になり,頑張ろうとモチベーションがあがった」「産後の育児状況だけでなく,その方の家族,社会的な背景なども意識して関わるようになった」「育児支援は地域差もあることがグループワークを通してより実感できた」「他の病院の状況も参考になり,業務に生かせると思えた」などの意見があった.対照群は,「虐待がどこまでの範囲なのか,スタッフ間で話し合うことができた」「地域の具体的な活動や社会的資源の具体的なものが分かった」「リスク妊婦の情報を病棟内で積極的に発信しようと思うようになった」「母親の話をよく聞き,その表情からも読み取ろうと努力した」など意見があった.意識に影響を与えたものは,介入群で,テキスト46.4%(13人),講義1回目64.3%(18人),講義2回目67.9%(19人),GW 100.0%(28人),その他0%(0人)であり,対照群では,テキスト80.8%(21人),その他23.1%(6人)であった.
4. プログラム介入によるNES-CMP,看護実践の意識,モチベーション,自信の変化量プログラム介入によるNES-CMP,看護実践の意識,モチベーション,自信の変化量を混合モデルで分析した結果,NES-CMP合計および第1~第4因子の変化量に有意な群間差はなかった.一方,看護実践の意識(p = 0.042),看護実践のモチベーション(p = 0.005),および看護実践の自信(p < 0.001)の変化量においては,介入群が対照群に比べて有意に上回った(表5)(付録1~3).
| 推定値 | 95%信頼区間 | 群間比較 p値 |
||
|---|---|---|---|---|
| 下限 | 上限 | |||
| NES-CMP合計 | 5.08 | –1.18 | 11.33 | .109 |
| NES-CMP第1因子 | 1.51 | –0.68 | 3.70 | .173 |
| NES-CMP第2因子 | 1.47 | –0.22 | 3.16 | .086 |
| NES-CMP第3因子 | 1.86 | –0.21 | 3.93 | .077 |
| NES-CMP第4因子 | 0.12 | –0.85 | 1.10 | .799 |
| 看護実践意識 | 0.82 | 0.03 | 1.60 | .042* |
| 看護実践モチベーション | 1.24 | 0.40 | 2.09 | .005** |
| 看護実践自信 | 1.24 | 0.75 | 1.73 | .000*** |
* p < .05,** p < .01,*** p < .001
目的変数:各時点とベースラインの差
説明変数:群,時点及びベースライン値
1回目の満足度は,「満足」71.4%(20人),「少し満足」25.0%(7人),「少し不満」3.6%(1人)であった.理解度は,「できた」71.4%(20人),「少しできた」28.6%(8人)であった.2回目の満足度は,「満足」75.0%(21人),「少し満足」25.0%(7人)であり,理解度は,「できた」89.3%(25人),「少しできた」10.7%(3人)であった.自由記載には,「分かりやすく勉強になった」「事例が参考になった」「DVやハイリスク事例への対応を学んだ」「地域との連携事例によりモチベーションが上がった」などの記述があった.
本研究では,研究協力者として中堅看護職(経験年数5~10年程度)または中間管理職をリクルートしたが,結果的に平均経験年数は約15年となった.西田・青木(2022)は,中堅看護師の定義として経験年数5年以上を基準とする例が多く,上限は15~20年程度とすると報告しており,本研究における平均経験年数15年という結果も,中堅看護職として妥当な範囲内であると考える.
2. プログラムによるNES-CMPスコアの検証虐待発生予防の看護実践は成果が見えにくく,達成感を得にくい.そのため,目的を意識して実践しなければ十分な効果が期待できないと考え,本研究では看護実践の意識化を促すプログラムを検討し,NES-CMPおよび看護実践の意識,モチベーション,自信を用いてその効果を評価した.仮説1「本プログラムの参加者は非参加者よりもNES-CMPスコアが高くなる」は,スコアおよびスコアの変化量1~3に関する混合モデルの分析結果において,介入群と対照群間に有意差が認められなかったため,支持されなかった.
この結果を解釈するにあたり,先行研究(大友・斉藤,2018)を参考にした.同研究では,子育て支援事業やサービスを紹介した群のNES-CMPスコア中央値は83点,非紹介群は68点で,有意な差が示されていた.この「紹介の有無」は,虐待発生予防を目的とした看護実践の指標と解釈できることから,比較対象とした.本研究では,T1時点のスコア中央値が介入群87.5点,対照群89点と,いずれも「紹介した群」と同等の高値であり,研究協力者は全体として虐待発生予防に関して高水準の看護実践を行っていた可能性がある.さらに,スコアの高さから,虐待発生予防の看護実践に関心が高い層が自発的に参加したと考えられ,自己選択バイアス(Young et al., 2020)の影響により,介入の効果が統計的に現れにくかった可能性がある.
次に,NES-CMPは具体的行動を測定する尺度であることから,どのような行動に変容が見られたのかを明らかにするため,因子別に結果を検討した.第1因子「多職種支援体制の調整」では群間に差が認められず,意識や自信といった気持ちの高まりが,多職種連携に関する具体的な行動には直結しなかった可能性が示唆された.特に医療現場においては,たとえ看護職が多職種との連携を望んでいたとしても,組織の環境がその実行を妨げる場合があるとされている(松下ら,2019).加えて,支援を要する母親が実際に存在しないという状況も,行動の変容に影響を与えた可能性がある.そのため,第1因子に関しては,看護職個人の努力のみではスコアの向上が難しい側面があったと考えられる.一方,第2因子「信頼関係の構築」と第3因子「育児支援必要度の査定」では,T2時点において介入群が対照群を有意に上回ったものの,その後は有意差が継続しなかった.これらの因子は,すべての母親を対象とした日常的な看護実践が含まれるため,テキスト教材に加え,プログラムを通じて「その実践が虐待発生予防につながる」と意味づけられたことにより,行動へ反映されやすかった可能性がある.しかし,効果が持続しなかった点は,今後の課題として検討する必要がある.第4因子「チームケアの実践」は,両群ともT1時点で上限値に近く,既に高水準で実践されていたため,介入による明確な差は認められなかった.
また,対照群ではT2時点のNES-CMPスコアがT1時点より低下した.これは知識の習得を通じて自己の未熟さを認識し,自己評価が厳しくなるダニング=クルーガー効果(Dunning & Kruger, 1999)による影響と考えられる.一方,介入群ではELおよびGWを通じた他者との体験共有が実践の肯定的再認識を促し,自己評価の低下を抑制した可能性がある.
3. 看護実践の意識化を促進する心理的基盤課題遂行には個人差があり,行動変容理論によれば,「やってみよう」というモチベーションと「やればできる」という自信は,課題に取り組むための基盤となる(古川,2010).本研究では,この基盤に注目し,看護実践の意識,モチベーション,自信の割合を測定した.
仮説2「本プログラム参加者は非参加者よりも看護実践の意識,モチベーション,自信が向上する」は,変化量1~3についての混合モデル分析の結果,介入群と対照群の間で有意差が認められ,支持された.この有意差は,ELとGWを組み合わせた効果によるものと考えられる.介入群におけるELの評価では,満足度・理解度ともに高く,内容は良好であったと判断される.
また,全員が意識の変化に影響を与えた要因としてGWを挙げていた.介入群のGW後の自由記載では,「他の病院のことが参考になり,頑張ろうとモチベーションがあがった」や「他の病院の状況も参考になり,業務に生かせると思えた」といった記述が見られた.これらのコメントから,GWは他者との交流を通じて心理的な作用があったと考える.この結果は,唐田(2023)の「他施設の助産師・看護師との情報交換や事例検討により,さらに学びが深まった」という報告とも一致している.GWの効果について,伊藤ら(2010)は,他者に語ることで問題に向き合い,気づきを得て視点を転換し,気持ちを前向きに変える力が生まれると報告している.また,事例検討においては,患者理解や関わり方を変える契機となり,全参加者にとってエンパワメントとなることが多いとされる(武井,2022).このことから,本プログラムのGWでの意見交換が,看護職の意識の変化,モチベーション,自信の変化量の差につながったと考えられ,GWは学習内容を実践的な行動に結びつける心理的基盤となる有効な手法であると考える.
さらに,中堅看護職は高い能力を持つ一方で,実践能力に対する自信の不足から後輩育成に消極的な姿勢を取る傾向が指摘されている(吉川・森脇,2019).本研究では,プログラムの介入により,中堅看護職の看護実践に対する意識,モチベーション,自信が向上したことから,日常的に行っている看護実践を意識的に振り返り,自信を持って後輩育成に取り組む動機づけとなった可能性がある.しかし,本研究では,後輩指導における具体的な行動変化までは検討していない.今後は,プログラムを受けた看護職の教育行動や職場環境への働きかけなどを調査する必要がある.
なお,対照群において,T2時点の意識・モチベーション・自信のスコアも,T1時点より低下した.これは,NES-CMPスコアの自己評価が厳格化したこと(Dunning & Kruger, 1999)に起因する可能性がある.一方,介入群ではELとGWによる実践の振り返りや他者との経験共有が前向きな気持ちにつながったと考えられる.実際,T2時点での意識変化があったと回答した割合は,介入群で有意に高かった(p < 0.05).この結果は,介入群においてより明確な意識変化が生じたことを示している.したがって,知識提供に加え,安心して意見交換や学習ができるプログラム設計の重要性を示唆している.
本研究では,プログラムの実施により,意識・自信・モチベーションといった心理的側面において有意な向上が認められた.しかし,行動レベルの評価指標であるNES-CMPには有意な差が見られなかった.この結果は,意識や自信などの気持ちの高まりが,職場環境などの影響で,直ちに行動変容へと結びつくわけではないことを示唆している.
Martin(2010)は,トレーニングで得た知識やスキルを職場で活用するためには,同僚間の支え合いや上司の支援が重要であり,定期的なフォローアップがスキルの定着を促進すると指摘している.また,本研究では介入群におけるeラーニング(EL)の視聴期間をT2以前に限定したことが,学習効果の持続に影響を及ぼした可能性も考えられる.そのため,今後は,EL視聴期間の延長,学習回数の増加,事例検討会の実施など,継続的なフォローアップの導入が求められる.
さらに,施設バイアスを排除するため,各施設から1名の看護職のみを対象としたが,今後は多様な経験年数の看護職や,同一施設内の複数名を対象とした介入研究を実施することにより,職場環境の特性が個人の行動変容に与える影響について検討する必要がある.加えて,本プログラムによって高まった看護職の意識やモチベーション,自信が,後輩育成などの具体的な行動変容へどのように波及するのか,また,心理的変化を持続的な行動に結びつけるために,どのような組織的要因が必要であるかを明らかにすることが今後の課題である.
本研究では,プログラムの介入により看護職の意識,モチベーション,自信の変化量において,介入群と対照群の間に有意差が認められた.一方,行動レベルを測定するNES-CMPスコアの変化量については,両群間に有意差は見られなかった.
この結果は,研究協力者の介入前における看護実践の平均値が比較的高かったこと,フォローアップの不足,職場環境の影響などが要因として考えられる.今後は,より多様な看護職を対象とした検証に加え,効果を持続させるためのフォローアップの在り方や,職場環境も含めた調査を通じて,虐待発生予防に向けた看護実践の意識化を促進する研究を進めていく必要がある.
付記:本研究の一部は26th East Asian Forum of Nursing Scholarsにおいて発表した.
謝辞:本研究にご協力いただきました全国の看護師,助産師の皆様に心より御礼申し上げます.また,統計解析に関して貴重なご助言を賜りました大谷哲也先生に深く感謝申し上げます.なお,本研究は文部科学省科学研究費補助金(基盤研究(C),課題番号:20K10894)の助成を受けて実施した.
利益相反:本研究における利益相反は存在しない.
著者資格:大友光恵は研究の着想およびデザイン,データ収集,解析と解釈,草稿の作成に貢献した.鈴木幸子は研究のデザイン,データ解釈,草稿への助言,原稿の作成に貢献した.宮﨑紀枝は研究のデザイン,データ解釈,草稿への助言,原稿の作成に貢献した.すべての著者は最終原稿を読み,承認した.