2025 年 45 巻 p. 454-465
目的:精神科外来で精神疾患をもつ者へ実践されているデジタルテクノロジーを用いた看護実践の内容と効果を明らかにする.
方法:代表的なデータベースのPubMed,CINAHL,医中誌Webを用いて看護実践について記載のある日本語・英語文献をDigital TechnologyやTelemedicine等のシソーラスを用いたキーワードで抽出した.
結果:14件が選定された.内容を帰納的に統合し①教育的指導・相談(7件),②症状等のモニタリング(4件),③治療プログラムの実践(3件)を実施していることが明らかとなった.症状改善を目的とした8件の研究中7件で肯定的な変化がみられた.疾患や重症度に関わらず実践されておりビデオ会議システム(7件)が最も使用されていた.
結論:ビデオ会議システム等を用いた看護実践が様々な疾患や重症度の患者の症状改善に繋がる可能性が示唆された.
Aim: This study aimed to assess the content and effects of nursing practice using digital technology to care for patients with mental disorders in psychiatric outpatient departments.
Methods: Relevant articles on nursing practice were identified in Japanese and English from the key databases PubMed, CINAHL, and Ichushi-Web, using thesaurus-based keywords such as “Digital Technology” and “Telemedicine”.
Results: A total of 14 articles were included in the analysis. Inductive integration of their content revealed three categories: (1) educational guidance and consultation (seven articles), (2) symptom monitoring (four articles), and (3) implementation of treatment programs (three articles). Positive changes were reported in seven of the eight articles that focused on symptom improvement. Nursing practices using digital technology were implemented regardless of disease type or severity. Videoconferencing systems were the most used technology, reported in seven articles.
Conclusion: These findings suggest that nursing practice using videoconferencing systems may contribute to symptom improvement in patients with various mental disorders and levels of illness severity.
日本において精神疾患をもつ者は2017年の患者調査で400万人を超え,年々増加傾向にある.同調査における外来患者数は約390万人であるのに対し,入院患者数は約30万人と患者の多くが外来にて治療を行っている.厚生労働省は2017年より精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築の推進を始め,2021年には精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築に係る検討会報告書(厚生労働省,2021)で,身近でアクセスしやすい支援体制の構築や一人ひとりが生きがいや役割を持ち,助け合いながら暮らしていくことのできる包摂的な地域社会を創ることを提言している.精神疾患からの回復はリカバリーと呼ばれ,症状や機能の回復を示す臨床的リカバリーだけでなく当事者自身が満足で希望のある充実した人生を送ることを示すパーソナルリカバリーも重要とされ(山口ら,2016),精神疾患をもつ者が地域でその人らしく生活することを支援することが求められている.前述した提言や精神障害にも対応した地域包括ケアシステム構築のための手引き(日本能率協会総合研究所,2021)において専門的かつ効果的なリハビリテーションを外来で実施することや通院が困難な者への支援の重要性が強調されている点も踏まえるとさらなる外来機能・アウトリーチ支援の拡充を図る必要があるといえる.
そのような中,2020年より新型コロナウイルス感染症(Coronavirus Disease-2019; COVID-19)が世界的に流行し,我が国においても感染症を専門としない病院や診療所等様々な医療機関で感染者への対応・支援が必要な状況となった.特に精神疾患はCOVID-19に罹患する危険因子であること(Taquet et al., 2021)や死亡率が高いこと(Hassan et al., 2022)が指摘されており,身体症状を含む個々の症状や各施設での医療提供体制に合わせた支援が求められた.2022年には一定の指針に基づけば医師のオンライン診療が可能となり,オンラインでの診療や相談窓口に関する方向性について検討される(厚生労働省,2024)等,対面に限らない多様な支援策が模索され始めている.例えばデジタルテクノロジーの活用である.デジタルテクノロジーの定義は広く,総務省(2024)の情報通信白書では情報通信技術・デジタルを用いたテクノロジーとされる.Schlicht et al.(2025)は看護におけるデジタルテクノロジーを看護業務をサポートするために設計された幅広いツールを含むものとしている.このようなテクノロジーは看護においても様々な形で活用されており,Huter et al.(2020)の看護におけるデジタルテクノロジーの活用分類では,電子カルテ等の運用管理システム,患者を遠隔でモニタリングするためのテレケアシステム,患者の移送や介助等を補助するロボット技術,集中治療室等で用いられるウェアラブルの監視センサー,患者の意思決定を支援する支援システム等があるとされる.日本においても慢性閉塞性肺疾患で在宅酸素療法を受けている患者に対するモニタリング(亀井ら,2011)や高齢慢性心不全患者のセルフモニタリングを促す支援(石橋ら,2018)を看護職が行っており,看護介入が急性増悪者や再入院患者の減少,QOLの維持・向上やセルフモニタリング能力の強化に有用であること,症状軽減やセルフケア能力の向上につながること等が確認されている.一方でHuter et al.(2020)はデジタルテクノロジーを用いた看護実践が与える患者への影響について,肯定的な効果を示す研究は多数あるがエビデンスレベルが低いことを指摘している.また活用されている場が病院や長期入院中の場が主であり,外来看護や在宅看護の場での研究はわずかであることも指摘している.精神科においてはうつ病や不安症等の患者を対象としてスマートフォン等を用いたオンライン診療と対面診療との効果を比較したランダム化比較試験(Kishimoto et al., 2024)で,QOLや治療効果,治療継続率,満足度等について,対面診療とほぼ同等の効果が得られることがわかっているが,これらは医師の診療においてであり,デジタルテクノロジーを用いてどのような看護実践が行われているか,どのような効果があるか,また特に精神科の外来における活用の実態については明らかとなっていない.
そこで本研究では国内外のデイケア等のリハビリテーション部門を含む精神科外来で行われているデジタルテクノロジーを用いた看護実践について,現在実践されている内容及び特徴とその効果を明らかにし,精神科外来で活用できる精神疾患をもつ者へのデジタルテクノロジーを用いた看護実践に関する示唆を得たいと考えた.そのため,既存の知見を網羅的に概観し整理できるスコーピングレビューを行った.
国内外の精神科外来に通院する者を対象としたデジタルテクノロジーを用いた看護実践に関する文献のスコーピングレビューを通じて,現在実施されている看護実践の内容及び特徴とその効果を概観・整理すること,さらに精神科外来におけるデジタルテクノロジーを用いた看護実践上の課題を検討することである.
本研究は友利ら(2020)のスコーピングレビューのための報告ガイドライン日本語版:PRISMA-ScRを基に実施した.Participant,Concept,Contextは次のように設定した.
Participant:精神疾患をもつ者を対象とした治療を行っている国内外の医療施設の精神科外来に勤務する看護職,Concept:国内外の精神疾患をもつ者を対象とした治療を行っている医療施設の精神科外来にて看護職が行っている看護実践のうち,精神疾患をもつ者に対してデジタルテクノロジーを用いて実施している対象の特性,看護実践の内容,使用されているデジタルテクノロジー,デジタルテクノロジーを用いた看護実践の効果,Context:国内外の精神疾患をもつ者を対象とした治療を行っている医療施設の精神科外来.
文献検索データベースは,日本語及び英語の代表的な文献検索データベースであり,シソーラス機能を有する①PubMed,②EBSCO社のCINAHL CompleteとMEDLINE with Full Textの同時検索システム,③医学中央雑誌Web版の3つを用いた.文献の選定にあたっては,質の高い選定プロセスとデータの抽出を保証し,解釈エラーを最小限とするために英語または日本語の文献を対象とした.また現在の臨床現場における実態に即したデジタルテクノロジーを用いた看護実践を抽出したいため,研究開始から10年前までの2013年1月1日から2023年12月31日までを検索対象期間とし,2024年3月24日に検索を実施した.
PubMed,CINAHL CompleteとMEDLINE with Full Textの同時検索システムでは,(Psychiatry or Psychiatric Nursing) AND (Digital Technology* or Software* or Telemedicine* or Mobile Application* or Internet-Based Intervention*) AND (Outpatient* or Outpatient Clinics, Hospital)という検索式を用いて検索を行った.
医学中央雑誌Web版では,((デジタル技術/TH) or (デジタルヘルス/TH) or (ソフトウェア/TH) or (モバイルアプリケーション/TH) or (インターネットによる介入/TH)) and ((精神科病院/TH) or (病院精神科/TH))を用いた.検索式はより網羅的に文献を抽出できるようにシソーラスを用いるとともに,文献検索に精通する図書館司書の助言を基に複数の研究者と協議した上で決定した.
文献の包含基準は1)精神科外来にて看護職がデジタルテクノロジーを用いて行っている看護実践に関する記述がある論文,2)英語または日本語で記載されている論文とし,除外基準は1)精神科外来以外でのデジタルテクノロジーを用いた看護実践に関する論文,2)主な目的が精神疾患の看護実践でない論文,3)学会抄録・会議録,4)解説(レター,コメンタリー,研究プロトコル,レビュー論文)とした.包含基準と除外基準を表1に示す.なお本研究ではエビデンスに基づいた精神科外来でのデジタルテクノロジーを用いた看護実践の内容,効果,患者の反応について明らかにしたいと考えているため,政府や産業界などが出版する刊行物などの灰色文献は除外したが,より多くの文献を収集できるように看護実践に関する記述がある論文であれば研究デザインを問わず分析の対象とした.
| 包含基準 | 除外基準 |
|---|---|
| 1)精神科外来にて看護職がデジタルテクノロジーを用いて行っている看護実践に関する記述がある論文であること 2)英語または日本語で記載されていること |
1)精神科外来以外でのデジタルテクノロジーを用いた看護実践に関する論文 2)主な目的が精神疾患のケアでない論文 3)学会抄録,会議録 4)解説(レター,コメンタリー,研究プロトコル,レビュー論文) |
文献の選定にあたっては,選定基準に沿ってタイトルと抄録の確認を2名の研究者が独立して行った.タイトルと抄録で除外できなかったものは,全文を読み,研究者2名で検討を行った.選定プロセスの各段階で意見の相違が生じた場合は,共同研究者間の協議を通じて採用の可否を決定した.
なお本研究では,精神科外来,看護職,デジタルテクノロジー,看護実践を次のように定義した.精神科外来は,精神疾患をもつ者に対して医療を提供する病院・診療等の医療施設における外来部門または外来リハビリテーション部門とする.看護職は,看護学を構成する重要な用語集(日本看護科学学会,2011)を基に保健師や助産師,看護師,准看護師等の資格を有し看護活動を行っている者とした.デジタルテクノロジーは,総務省(2024)の情報通信白書を基にデジタル形式の情報通信技術を用いたテクノロジーとし,看護職が対象へ行っている看護実践の中で活用しているものを対象とする.また看護実践は,看護学を構成する重要な用語集を基に,看護職が患者に働きかける行為とし,看護職のみで実践しているものだけでなく多職種とともに実践しているものも含むこととした.
2. 結果の統合方法選定した論文は著者,出版年,対象,研究デザイン,目的,論文の概要,看護実践の概要,使用されるデジタルテクノロジー,効果の概要について記載されている箇所を抽出し,発行年順に文献番号を付けて整理した.抽出した項目は,本研究のリサーチクエスチョンから設定したParticipant,Concept,Contextの枠組みに沿って決定した.その後,整理した内容を基に看護実践の機能とその効果について帰納的に統合し,看護実践ごとに図示した.
3. 倫理的配慮各文献の著作権に配慮して,引用する際は,本文中の表現をそのまま引用,又は意図が損なわれない範囲で要約を行った.
文献選定の過程を図1に示す.

PubMedでは623件,CINAHLでは623件,医中誌では20件の計1,266件が検索され,重複文献495件を除いた771件の文献が一次スクリーニングの対象文献となった.一次スクリーニングでは,タイトル・抄録を確認し184件の文献が抽出された.二次スクリーニングでは,全文を確認し不適格とされた170件の文献が除外され,最終的に14件が対象となった.
2. 文献の概要選定された14件の文献の概要を表2に示す.
| 文献番号 | 著者名,発表年 (研究実施国) |
主な対象者 | 研究デザイン | 目的 | 文献の概要 | |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 症状への効果検証 | 患者の反応等の調査 | |||||
| 1 | Kasckow, et al., 2014 (アメリカ) |
自殺念慮のある統合失調症の患者 | 横断的観察研究(質的記述的研究) | ― | ○ | ・専用のモニタリングシステムの改善点を質的に明らかにした. ・(1)強い感情的反応を引き起こすトピックがある(2)守秘義務に懸念がある(3)設問や指示が曖昧である(4)設問や指示の語彙や言葉遣いに問題があることが明らかとなった. |
| 2 | Fortney, et al., 2015 (アメリカ) |
PTSDをもつ退役軍人 | ランダム化比較試験(RCT) | ○ | ― | ・オンライン上で行われるケアモデルの効果を検証した. ・心的外傷後診断尺度の有意の低下(35.0から29.1へ)がみられた. ・治療薬の処方数,服薬アドヒアランスに有意差はなかった. |
| 3 | Kodama, et al., 2016 (日本) |
精神科外来に通院中の患者 | シングルアーム試験 | ○ | ― | ・テキストメッセージを用いたプログラムの有用性を評価した. ・専門家等に相談した者の割合や何らかの社会サービスを利用した者の数は有意に増加した(3.6%から28.6%へ). ・過去6か月間に自傷行為を行った患者等は介入後に有意に減少した(27.6%から6.9%へ). |
| 4 | Blankers, et al., 2016 (オランダ) |
重症精神疾患患者 | 非ランダム化比較試験 | ○ | ― | ・対面とインターネットを組み合わせたプログラムの治療満足度,臨床転帰,および生活の質を評価した. ・QOLと自己効力感は3か月後にわずかに改善した. ・臨床的問題と社会的機能に関するスコアは変化しなかった. |
| 5 | Schuman-Olivier, et al., 2018 (アメリカ) |
オピオイド使用障害の患者 | シングルアーム試験 | ○ | ― | ・テキストメッセージ,ビデオ会議システム等を統合した専用アプリの実施可能性,有効性等を評価した. ・介入により,患者の2/3が週平均5日以上の治療薬自己投与を達成できた. ・違法オピオイドの断薬率は介入中は53%上昇したが,介入後3週間以内には43%低下した. |
| 6 | Darvish, et al., 2019 (イラン) |
PTSDをもつ退役軍人 | ランダム化比較試験(RCT) | ○ | ― | ・テキストメッセージを用いたプログラムの効果を評価した. ・PTSD・QOLに関するスコアの有意な改善が認められ,再発頻度が有意に低下した. |
| 7 | Metsäranta, et al., 2019 (フィンランド) |
うつ病症状のある青年期の者 | 横断的観察研究 | ― | ○ | ・電子日記を用いたプログラムの利用状況を調査した. ・患者の53%が電子日記を使用した.利用者はほぼ女性(96%)であった. ・毎週電子日記にログインした割合は40%であった. ・メンタルヘルスの問題,社会的相互作用,自分自身の発達について最も記載されていた. |
| 8 | Schulze, et al., 2019 (ドイツ) |
重度精神疾患の患者 | ランダム化比較試験(RCT) | ○ | ― | ・電話/テキストメッセージを用いた服薬アドヒアランスを改善するためのプログラムの効果を評価した. ・6カ月後の服薬アドヒアランスに関する尺度(MARS-D)が有意に高かった(オッズ比4.11). ・介入の優位性は4~6ヵ月目に現れた. |
| 9 | Takano, et al., 2020 (日本) |
薬物使用症の患者 | ランダム化比較試験(RCT) | ○ | ― | ・オンライン上で行われる再発予防プログラムの有効性を評価した. ・断薬期間と再発リスク,変化への動機づけ,自己効力感,薬物に費やした費用等に有意差は認められなかった. ・介入群では約26%が介入の全行程を完了できなかった. |
| 10 | Skime, et al., 2022 (アメリカ) |
精神疾患をもつ患者 | 横断的観察研究 | ― | ○ | ・オンラインで実施される集団プログラムの満足度を評価した. ・友人や家族にこの形式を推奨すると報告した割合は92.5%であった. ・パンデミック後もオンラインでのプログラム提供を希望する者(50%),対面形式を希望する者(35%),どちらでもない者(5%)であった. ・患者の一部(46.15%)は,プログラム中にインターネット接続の遅さやセッションから誤って削除されるなど技術的なトラブルを体験した. |
| 11 | Sharma, et al., 2022 (インド) |
アルコール使用障害の患者 | シングルアーム試験 | ○ | ― | ・インターネットを用いた介入プログラムの実施可能性,受容性,予備的有効性を評価した. ・参加者の65.2%が満足度スコアで高い値を示し,禁酒日数に対する効果がみられた. ・アルコール使用量,飲酒頻度,多量飲酒,渇望,不適応対処行動も減少した. |
| 12 | O’Connor, et al., 2023 (アイルランド) |
摂食障害の患者 | 横断的観察研究(質的記述的研究) | ― | ○ | ・オンラインデイケアプログラムに参加した患者体験の内容を質的に明らかにした. ・患者は退院後の身体的な心配や退院後の自分自身のニーズがどうなるかなどを不安に感じながら回復の次の段階に進むための準備を整えていた. ・オンライン環境がグループセッション後に切断されることで,患者同士のインフォーマルな交流の機会が失われる断絶感を体験していた. |
| 13 | Lee, et al., 2023 (アメリカ) |
精神疾患をもつ患者 | 横断的観察研究 | ― | ○ | ・COVID-19パンデミック時の精神科外来で行われたオンラインでの医療サービスの患者体験の内容を明らかにした. ・患者の47%がオンラインでの医療で症状が改善されたと回答した. ・スマートフォンは最も頻繁に使用され(63.3%),好まれるデバイス(57.1%)であった. ・望ましい医療サービスの形式はオンライン(55.1%)と対面(55.1%)で同等であった. |
| 14 | Link, et al., 2023 (ドイツ) |
精神疾患をもつ患者 | 横断的観察研究 | ― | ○ | ・COVID-19によるロックダウン期間中に行われたオンラインでの医療サービスの患者満足度と受容度を明らかにした. ・治療に対する受容度と満足度について,性別・年齢による差はなかった. ・オンライン等での医療が「良い」と評価した患者は51.6%であった.「悪い」と評価した患者は19.5%であった. ・パンデミック終息後にオンラインと対面治療を併用することを希望する患者は39.8%,通常の対面治療に戻ることを希望した患者は56.3%であった. |
研究手法は横断的観察研究6件,ランダム化比較試験4件,シングルアーム試験3件,非ランダム化比較試験1件であった.14件の対象文献のうち,症状の程度やQOL,服薬アドヒアランス等に対する介入の効果検証を主とした研究は8件,満足感や使いやすさ,経験した技術的困難等の患者体験の特徴を調査した研究は6件であった.研究が発表された年代はCOVID-19流行前の2013~2019年が8件,流行後の2020~2023年が6件であった.看護実践の対象とされた患者の疾患は物質使用障害4件,気分障害4件,統合失調症(精神病性障害・統合失調感情障害含む)4件,不安障害2件,パーソナリティ障害2件等であった.使用された主なデジタルテクノロジーはビデオ会議システム7件,電話3件,テキストメッセージ3件,その他5件であった.
1) 精神科外来におけるデジタルテクノロジーを用いた機能別の看護実践各文献の記載内容を基に看護実践について帰納的に分類した結果,教育的指導・相談7件,症状等のモニタリング4件,治療プログラムの実施3件に分類された.看護実践ごとに使用されたデジタルテクノロジー,関与した職種,効果を整理し表3に示す.
| 看護実践 (件数) |
文献 番号 |
著者名,発表年 (研究実施国) |
看護実践の例 | 使用されているデジタルテクノロジー※1 | 他職種の 関与※2 |
効果の 有無※3 |
効果の内容 | |||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| ビデオ会議 システム |
電話 | テキスト メッセージ |
その他 | |||||||
| 教育的 指導・相談 (7件) |
3 | Kodama, et al., 2016 (日本) |
・医師等と共にストレス管理等に関するメッセージの作成 ・肯定的なフィードバックのメッセージの送信 |
― | ― | ✓ | ― | ● 医師 |
◎ | ・専門家等に相談した者,社会サービスを利用した者の増加 ・自傷行為を行った者,自殺念慮の強さの減少 |
| 4 | Blankers, et al., 2016 (オランダ) |
・ビデオ会議システム上で患者とコミュニケーション | ✓ | ― | ― | ✓ 専用サイト |
― | ○ | ・QOL,自己効力感に関するスコアの改善 ※臨床的問題と社会的機能に関するスコアは変化なし |
|
| 6 | Darvish, et al., 2019 (イラン) |
・症状や対処法等に関するメッセージに対する患者の受け止め方等をフォロー | ― | ― | ✓ | ― | ● 医師 |
◎ | ・PTSD,QOLに関するスコアの改善 ・再発頻度の低下 |
|
| 8 | Schulze, et al., 2019 (ドイツ) |
・服薬アドヒアランスの問題点等について電話指導 ・希望者に個別でメッセージを送信 |
― | ✓ | ✓ | ― | ― | ○ | ・アドヒアランスに関するスコアの上昇 ※介入の有意性は3ヵ月後にはみられなかったが4~6ヵ月目に出現 |
|
| 9 | Takano, et al., 2020 (日本) |
・提出された課題を確認し,共感的で動機づけ面接を活用した支持的なフィードバックを実施 | ― | ― | ― | ✓ 専用サイト |
― | × | ※断薬期間と再発リスク,変化への動機づけ,自己効力感,薬物に費やした費用等に有意差はなし | |
| 13 | Lee, et al., 2023 (アメリカ) |
・医師等を含む多職種チームでビデオ会議システムを介したリアルタイムの医療サービスを提供 | ✓ | ― | ― | ― | ● 医師/心理職 |
― | ― | |
| 14 | Link, et al., 2023 (ドイツ) |
・医師等を含む多職種チームで電話またはビデオ会議システムを用いたリアルタイムの医療サービスを提供 | ✓ | ✓ | ― | ― | ● 医師/心理職 |
― | ― | |
| 症状等の モニタリング (4件) |
1 | Kasckow, et al., 2014 (アメリカ) |
・専用のデバイス経由で患者が回答するうつ病や自殺の症状をモニタリング・医師へ報告 | ― | ― | ― | ✓ 専用デバイス |
● 医師 |
― | ― |
| 2 | Fortney, et al., 2015 (アメリカ) |
・オンライン上のシステムを用いて症状や服薬アドヒアランスをモニタリング | ✓ | ✓ | ― | ― | ● 医師/薬剤師/心理職 |
○ | ・PTSDに関するスコアの低下 ※治療薬の処方数,服薬アドヒアランスの有意差はなし |
|
| 5 | Schuman-Olivier, et al., 2018 (アメリカ) |
・看護師等と情報共有を行うための訓練を受けた者と共に服薬アドヒアランスの状況をモニタリング | ― | ― | ― | ✓ 専用アプリ |
● 訓練を受けた者/薬物カウンセラ― |
○ | ・介入中の違法オピオイド断薬率の上昇 ※介入後3週間以内に断薬率は低下 |
|
| 7 | Metsäranta, et al., 2019 (フィンランド) |
・訓練を受けた者と共に,電子日記の記載内容をモニタリング | ― | ― | ― | ✓ 電子日記 |
● 訓練を受けた者/医師 |
― | ― | |
| 治療 プログラム の実施 (3件) |
10 | Skime, et al., 2022 (アメリカ) |
・医師,作業療法士等で集団プログラムをオンライン上で実施 | ✓ | ― | ― | ― | ● 医師/作業療法士/心理職 |
― | ― |
| 11 | Sharma, et al., 2022 (インド) |
・訓練を受けた看護師がプログラムをオンライン上でで実施 | ✓ | ― | ― | ― | ― | ◎ | ・アルコール使用量,飲酒頻度,多量飲酒,渇望,不適応対処行動の減少 | |
| 12 | O’Connor, et al., 2023 (アイルランド) |
・医師,栄養士等と共に集団プログラムをオンライン上で実施 | ✓ | ― | ― | ― | ● 医師/栄養士 |
― | ― | |
※1 主に使用されていたデジタルテクノロジーを「✓」で示した.使用されていない・確認できない場合は「―」で示した.
※2 他職種の役割について記載のあった文献は「●」で示した.看護職のみ・記載が確認できない文献は「―」で示した.
※3 評価項目について統計的に有意な効果が示されていた場合は「◎」,一部の項目で効果が確認できなかった・継続的な効果の維持が確認できなかった場合は「○」とし,その内容を「効果の例」に記載した.効果が確認できなかった場合「×」とした.患者への効果について記載がない文献は「―」で示した.
7件の文献で看護職は教育的指導・相談業務を行っていた(Kodama et al., 2016;Blankers et al., 2016;Darvish et al., 2019;Schulze et al., 2019;Takano et al., 2020;Lee et al., 2023;Link et al., 2023).
例えば,重症精神疾患患者に対して対面とオンラインを組み合わせた看護実践を行った研究(Blankers et al., 2016)では,患者の自宅にインターネット接続環境やウェブカメラが提供され,看護師とビデオ会議システム上やアプリのチャット機能を用いてコミュニケーションをとっていた.また自殺念慮がある患者にテキストメッセージを用いた看護実践を行った研究(Kodama et al., 2016)では,精神科医とともにストレス管理や服薬アドヒアランスの促進,地域の相談サービス等に関するメッセージを作成し,患者のスマートフォンへ送信していた.
またオンラインを用いた医療サービスの患者体験を調査した研究(Lee et al., 2023)や患者満足度を調査した研究(Link et al., 2023)では,看護職の具体的な役割に関する記述は見られなかったが,医師や心理職等他の外来スタッフと共に電話またはビデオ会議を用いて患者とのコミュニケーション等の医療が提供されていることが記述されていた.
(2) 症状等のモニタリング4件の文献で看護職は患者の症状をモニタリングする役割を担っていた(Kasckow et al., 2014;Fortney et al., 2015;Schuman-Olivier et al., 2018;Metsäranta et al., 2019).例えば,自殺念慮のある統合失調症患者をモニタリングするオンラインでの医療システムの効果を検証した研究(Kasckow et al., 2014)では,患者が専用のデバイスからオンライン上でうつ病や自殺の症状に関する質問に毎日回答し,看護師が定期的にその結果をウェブサイトでチェックしていた.患者の症状が悪化していることを示す報告がある場合,看護師から医師に報告がなされ,さらなる治療が必要かどうかを決定していた.またPTSD症状をもつ退役軍人に対するオンラインでの医療の効果を検証した研究(Fortney et al., 2015)では,看護師がオンライン上の意思決定支援システムを用いて症状や薬物療法のアドヒアランスモニタリング,心理療法への参加状況・課題提出状況の確認等を行っていた.
(3) 治療プログラムの実施3件の文献で看護職が治療プログラムを担当していた(Skime et al., 2022;Sharma et al., 2022;O’Connor et al., 2023).例えば,アルコール使用障害の患者に対してビデオ会議システム等を用いた治療プログラムの提供(Sharma et al., 2022)や摂食障害の患者に対してボディイメージやセルフエスティーム等のグループ形式の治療プログラムの提供(O’Connor et al., 2023)を行っていた.
2) 精神科外来におけるデジタルテクノロジーを用いた看護実践の効果14件の対象文献のうち,症状の程度やQOL,服薬アドヒアランス等に対する介入の効果検証を主とした研究は8件あり,うち7件で評価項目の肯定的な変化について統計的な有意差がみられた(Fortney et al., 2015;Kodama et al., 2016;Blankers et al., 2016;Schuman-Olivier et al., 2018;Darvish et al., 2019;Schulze et al., 2019;Sharma et al., 2022).例えば,重症精神疾患患者に対して対面とオンラインを組み合わせた看護実践を行った研究(Blankers et al., 2016)ではQOLや自己効力感の改善がみられた.また自殺念慮がある患者にテキストメッセージを用いた看護実践を行った研究(Kodama et al., 2016)では,過去6か月間に自傷行為を行った者は有意に減少していた.有意な効果がみられなかった研究(Takano et al., 2020)では,介入群の26%が治療から脱落しており,モジュールの量の多さが負担となった可能性があるとしていた.
14件の対象文献のうち,満足感や使いやすさ,経験した技術的困難等の患者体験の特徴を調査した研究は6件あった(Kasckow et al., 2014;Metsäranta et al., 2019;Skime et al., 2022;O’Connor et al., 2023;Lee et al., 2023;Link et al., 2023).患者の受容性について調査した研究(Skime et al., 2022;Lee et al., 2023;Link et al., 2023)では50%程度が今後もオンラインでの医療を希望する一方で,30~40%は対面または対面との併用を希望していた.またプログラム終了時に接続が一斉に遮断されることで,患者同士や医療者とのインフォーマルな交流の機会が制限されることによる断絶感を体験(O’Connor et al., 2023)したりインターネット接続の遅さ等の技術的な問題を体験(Skime et al., 2022)する患者もいた.自殺念慮のある患者へウェブサイト上に自身の症状を入力することを促した研究(Kasckow et al., 2014)では,自殺等の特定のトピックに対して症状の悪化や落ち込み等強い感情的反応を引き起こした他,自殺念慮や薬物使用等に肯定的な回答をした場合に治療へ影響があるかを懸念する者もいた.加えて症状等を入力する際の質問項目が曖昧である場合は,どのように回答してよいかわからず戸惑いや苦痛を感じる者もいた.
デジタルテクノロジーを用いた看護実践の方略について,本研究で明らかとなった教育的指導・相談,症状等のモニタリング,治療プログラムの実施の3つの視点で考察する.
まず教育的指導・相談であるが,ビデオ会議システムやテキストメッセージなどのデジタルテクノロジーを用いることで,継続的な指導や相談が必要だが症状等により通院が困難な状態の者にも切れ目のない医療を提供することにつながると考える.一般的に精神疾患をもつ者が受診しなかったり治療を中断する理由は,治療の必要性の認識の低さや交通手段がない・通院時間が取れないなどの構造的な障壁であるとされる(Kanehara et al., 2015).またKanehara et al.(2015)は治療中断の背景として医療者とのコミュニケーションが不十分であることを指摘している.ビデオ会議システムやテキストメッセージなどを活用すれば,直接来院せずとも医療者からの指導や相談を受けることが可能となるため,交通手段や時間などの受診に伴う構造的障壁を軽減することにつながると考える.また直接受診せずとも自身の治療に対する思いや考えを医療者に相談することが可能となる.そのため医療者とのコミュニケーション不足による治療中断の予防にもつながると考えられる.つまりビデオ会議システムやテキストメッセージなどは,継続的かつ患者中心の支援体制を構築する選択肢の一つとなると考えられる.
次に症状等のモニタリングだが,専用のデバイスなどを用いて継続的に症状や服薬状況のモニタリングを行うことは,症状の増悪を予防するための有用な支援方法となりうると考える.精神疾患をもつ者は症状の増悪等により再入院を経験することもあるとされ,なかでも1年以上の長期入院を経験した者は退院後1か月で30%程度が再入院するとされている(山之内,2018).また地域で生活する精神疾患をもつ者の6割が服薬に対する何らかの困難を体験するともされ,なかでも飲み忘れが多いとされる(山下ら,2017).デジタルテクノロジーを用いることで,症状が変化しやすくセルフケア能力が不足しがちな精神疾患をもつ者の状態を継続観察することができ,それに基づいたアセスメントや早期の介入が可能となるといえる.一方で症状のデバイスへの入力は患者自身に任されており,説明や指示がわからない,性別によって利用率が偏るなどの課題も見られた.症状によってはデジタルデバイスへの入力が困難となる可能性も考えられる.よって理解度や受け止め方,実施への意欲,症状の程度などを対面での医療と併用しながら確認し,患者の状態やレディネスに合わせて主体的に治療に参加できるような工夫を行う必要があると考える.
そして治療プログラムの実施であるが,対面での治療プログラムの代替としてだけでなく,参加者の心理的な安全性に配慮した方法の一つとしても活用できると考える.精神疾患をもつ者は,他者とのコミュニケーション方法や体験の言語化に課題があったり負担を感じる者もおり,外来で治療プログラムに参加している者は対人交流に関する自己効力感が低いことが指摘されている(竹原・銀山,2011).つまり複数の参加者が一堂に会する対面でのプログラムは参加者の心理的な負担となる場合もあると考えられる.今回,治療プログラムを実施していた全ての文献でビデオ会議システムが用いられていた.ビデオ会議システムは対面でのプログラムと同様にリアルタイムで表情やしぐさ等の非言語的要素を観察することができる.また参加者の症状や目的にあわせて小集団に分けたり,画面を消すことも可能であるため,参加者の心理的な負担に配慮した実施方法を選択することが可能と考える.つまり治療プログラムを実施する際は対面に近い双方向性が担保され,かつ参加者の心理的な負担の軽減が期待できるビデオ会議システムが最も適している可能性があると考えられる.
2. デジタルテクノロジーを活用した看護実践の効果とリカバリーとの関連介入の効果検証を主とした研究では8件中7件で症状の改善や望ましい行動の増加などの肯定的な変化が示されており,本研究により精神科外来においてもデジタルテクノロジーを用いた看護実践が,症状や機能の回復を示す臨床的リカバリーの改善につながる可能性があることが示唆された.看護実践の区分ごとに症状等の肯定的な変化が示されていた件数を見ると,教育的指導・相談で4件,症状等のモニタリングで2件,治療プログラムの実施で1件であった.そのうち治療プログラムの実施に関する研究は全て2020年代になってから実施されており,デジタルテクノロジーを活用した標準的な治療プログラム方法や効果については研究の途上であるといえる.また短期的な介入効果が確認されたものの介入終了後の長期的な効果維持について課題が指摘されている研究も見られた.教育的指導・相談に関連した研究では4件中3件で肯定的な変化のみが報告されていた一方で,症状等のモニタリングを行う2件の研究全てで有意差が確認できなかったり,介入終了後に効果が低下していた.これらのことから,治療効果を維持するためには,医療者が定期的な関わりを継続し,患者をフォローアップしていくことの重要性が示されたと考える.しかしながら今回対象となった論文数は限定されているため,対象や重症度,看護実践の内容別に長期的な効果が変化するのかを今後さらに検証していく必要があるといえる.
一方で夢や希望を持ちながら当事者が決めた人生を送ることを示すパーソナルリカバリーに関する評価はいずれの研究も評価していなかった.慢性疾患でもある精神疾患は症状の減少や緩和だけでなく,当事者が主体的に生きることが重要とされ,そのためには他者とのつながりが重要とされる(Leamy et al., 2011).今回対象となった研究で最も使用されていたデジタルテクノロジーであるビデオ会議システムやテキストメッセージは,医療者と患者もしくは患者同士でつながり,コミュニケーションをとることに活用できると考える.先行研究では地域で生活する精神疾患をもつ者が,他者から気にかけられたり他者とつながることで喜びや安心感を得て回復に向かうことが指摘されている(余傳・國方,2020).加えてオンラインコミュニティ内の交流が病気体験の改善の基盤となること(Allen et al., 2016)も指摘されている.さらにオンライン上のピアサポートが慢性疾患をもつ者の日常生活にどのような影響を及ぼすかを分析した研究(Kingod et al., 2017)では知識の共有とともに,疾患に対するアイデンティティを構築したり,患者や医師とのつながりを強化することが明らかになっている.こうしたデジタルテクノロジーを用いて看護実践を提供することは,経験や知識の共有,社会的なつながりの強化,疾患との向き合い方を考える契機にもつながり,パーソナルリカバリーの向上に寄与する一助となるのではないかと考えられるため,今後はパーソナルリカバリーの視点からも効果を検証していく必要があると考える.
3. デジタルテクノロジーを用いた精神科外来での看護実践上の課題とその対処患者体験をまとめた研究から患者は,断絶感の体験(O’Connor et al., 2023)や提供した情報の扱いに対する懸念(Kasckow et al., 2014),課題量の多さに関連した脱落(Takano et al., 2020)や曖昧な指示による情報入力への戸惑い(Skime et al., 2022),インターネット接続の遅さやデバイスへのログイン困難(Skime et al., 2022)等を体験することがあった.これらは大きく分けて1)否定的な体験や不安への対処,2)治療からの脱落への対処,3)使用する機器に関連した技術的な課題への対処という3つの課題に分けられると考えられ,看護職はこれらへ対処しながら看護実践を行う必要があると考える.
1) 否定的な体験や不安への対処患者の約50%がオンライン上での看護実践を望んでおり満足度は比較的高かったことから,精神科医療においてもデジタルテクノロジーを用いて看護実践を行うことで外来受診継続への障壁が低くなり,治療参画の促進がさらに期待できると考える.一方で否定的な体験や不安等から対面または対面との併用を希望する者も30~40%程度いた.精神科においては患者・看護師が思考や感情,不安等を相互に共有しながら信頼関係を構築していくことが重要(前原・前原,2018)とされる.しかし本研究で示されたように,デジタルテクノロジーを用いた看護ではこれらが困難となる場合も考えられる.例えばビデオ会議システムの接続が中断され断絶感を体験する場合や,互いの表情を確認できないままテキストメッセージ等に文章で情報を入力することで真意が受け手に十分に伝わらない場合である.また参加者名が表示されたり,誰がどのルームにいるか等が明確にわかるため,知られたくない情報を他者と共有してしまうリスクも存在する.このような不安や懸念に医療者側が適切に対処できない場合,信頼関係を損ない治療を中断してしまう可能性もある.同様の課題は精神科以外でも指摘されているが(Budd et al., 2020),精神科においてはプライバシーへ特に配慮しながら患者との信頼関係を構築することが,治療への参画を促進する上で重要と考える.そのため,オンラインでの面談時に患者や医療者が十分に交流できる時間を設ける,参加者の了解を得て通信を切断する,相談や連絡を希望する際の連絡方法を確保する,事前に患者と治療の進行方法やプライバシーに関する留意点を共有する等の工夫を行うことが重要と考える.
2) 治療からの脱落への対処治療プログラムで提供された課題の多さから脱落者が多かった研究や苦痛を感じさせる質問内容となっていた研究,性別によって継続参加に偏りがみられた研究等があった.性別や年齢,精神症状によっては提供される看護実践が効果的でない場合もある.一部の研究では,看護師が患者の治療への反応を定期的にフォローアップしたり,相談できる窓口を解放していたことから,治療への負担感や参加への意欲を継続してモニタリングできるような工夫について今後さらに洗練していく必要があると考える.
3) 使用する機器に関連した技術的な課題への対処多くの研究でビデオ会議システムの利用やウェブサイトへ入力,メールの送受信等インターネットを介した看護が提供されていた.つまり対応するデバイスを所持し操作できる,インターネット接続環境がある,患者自身が機器トラブルへ対処できる等が必要となる.
精神疾患をもつ者の理解度や操作方法の複雑さ等がデジタルテクノロジーを使用する際の障壁になることが指摘(Bernard et al., 2016)されていることからも,患者のデジタルテクノロジーを使用する能力を事前にアセスメントするともに,患者の理解度に合わせた説明や技術的なサポートの提供等を行い,患者の希望に応じてデジタルテクノロジーを活用できるようにし支援していくことが看護実践を行う上で重要と考える.
本研究で対象とした研究はPubMed,CINAHL,医中誌Web上に2013年から2023年までの10年間に英語または日本語で掲載された文献であり限定的なレビューとなっている.今回は人工知能や仮想現実等のデジタルテクノロジーを用いた看護実践は抽出されなかった.今後テクノロジー発展に伴いさらに活用されるようになる可能性もある.また今回の研究では患者満足度や受け入れ状況等について調査した横断的観察研究が最も行われていた.介入研究の半数はランダム化比較試験であったが,半数はランダム化しておらず,また小規模なサンプルサイズの研究が主であった.そのため必ずしもエビデンスレベルが高い研究が主ではないと言え,本研究の結果を一般化するには限界があると考えられる.今後は人工知能や仮想現実等をキーワードに含める,灰色文献を対象にする,各国の医療制度やデジタルテクノロジーの普及状況等も考慮するなどしてより網羅的なスコーピングレビューを実施することが必要と考える.
精神科外来でのデジタルテクノロジーを活用した看護実践について14件の文献が検索された.看護職は1)教育的指導・相談,2)症状等のモニタリング,3)治療プログラムの実践という3つの役割を担っており,教育的指導・相談が最も実践されていた.7件の文献で症状の改善や望ましい行動の増加など肯定的な変化が示されており,デジタルテクノロジーを用いた看護実践が臨床的リカバリーの改善につながる可能性が示唆された.看護実践にあたっては,1)否定的な体験や不安,2)治療からの脱落,3)使用する機器に関連した技術的な課題という3つの課題に対処しながら実践する必要があることが明らかになった.
付記:本研究は第27回East Asian Forum of Nursing Scholars(EAFONS)にて発表したプロトコルを一部修正し実施したものである.また本研究の一部を第44回日本看護科学学会学術集会で発表した.
謝辞:本研究に関してご助言・ご指導賜りました千葉大学大学院地域創成看護学講座(精神看護学)並びに東京医療保健大学の図書館司書の皆様に深く感謝申し上げます.なお本研究はJSPS科研費基盤研究(B)23H03221(研究代表者:田上美千佳)の助成を受けて実施した.
利益相反:本研究における利益相反は存在しない.
著者資格:TSは研究の着想,デザイン,文献の選定と分析,解釈に貢献し論文の作成及び改訂に関与した.MTは研究プロセス全体への助言及び論文の考察の改訂に関与した.MSは研究プロセス全体への助言及び論文の考察の改訂に関与した.TKは文献の選定に関与した.すべての著者は最終原稿を読み,承認した.