目的:女性と自認していない生物学的女性で出産を経験した者が,妊娠・出産・産後の体験をどのようにとらえ,感じ,考えていたのかを本人の語りを通して明らかにする.
対象と方法:トランス男性(身体的には女性で性自認が男性),Xジェンダー(身体的には女性で性自認が女性でも男性でもない),かつ妊娠・出産し生児を得て授乳・子育て経験がある者に半構造化面接を行い,テーマ分析法で分析した.
結果:6名の妊娠・出産・産後の体験の語りより【妊娠・出産した人生に対する心の揺らぎ】【妊娠・出産・産後の女性的なからだの変化に対する認識】【妊娠・出産・授乳をするのは女性,母親であるという一般的な性規範への不快感】【性自認の開示状況で異なる医療者との関係】の4テーマを抽出した.
結論:看護者には,シスジェンダーに基づくケアを提供するだけでなく,多様な性を理解しこれらの人々へのケアのあり方を探究する姿勢が必要である.
Purpose: This study aimed to elucidate the perspectives of biological women who do not self-identify as women and have experienced childbirth regarding the physical and mental changes associated with pregnancy, childbirth, and the postpartum period.
Participants and Methods: Semi-structured interviews were conducted with trans-men (biological female and self-identified as male) or X-gender individuals (biological female and self-identified as neither female nor male), and those who had experienced pregnancy, childbirth, breastfeeding, and childrearing. Thematic analysis was the chosen methodological approach.
Result: Four themes were extracted from the narratives of pregnancy, childbirth, and postpartum experiences of six participants; “emotional turmoil about life after pregnancy and childbirth,” “awareness of physical changes as women during pregnancy, childbirth, and the postpartum period ,” “discomfort with the general gender norms that pregnancy, childbirth and breastfeeding are for women and mothers,” and “different feelings arising from the relationship with the health care providers based on disclosure of gender identity.”
Conclusion: The present study suggests that midwives should provide care that is not only cisgender-based, but should also embrace a commitment to exploring ways in which they can care for diverse genders and sexualities.
一般的に性は生下時の外性器で男女に分ける性別二元論で規定されているが(周司・高井,2024),身体的性の他にも性的指向(sexual orientation:性的魅力を感じる相手),性自認(gender identity:自身の性別認識),性表現(gender expression),身体の性的特徴(sex characteristics)が存在し,その組み合わせは多種多様である.英語の頭文字よりSOGI(またはSOGIESC)とも言われ,全ての人を対象とした概念として近年注目されている(周司・高井,2024;村井,2023).
性自認が身体的性と一致しない場合,当事者は自身の性別認識に反して身体的性に基づく成長発達や性機能を体験する.身体的には女性で性自認が男性のトランス男性,身体的には女性で性自認が女性でも男性でもない者(以下,Xジェンダー)は,乳房発育,月経発来,妊娠・出産・母乳育児を経験し得ることになる.
国内の先行研究では,トランスジェンダーへの看護者の知識や理解に関するもの(西・井上,2020)や,トランス男性らの悩みやストレス,ホルモン治療に関するもの(井關ら,2023;安藤ら,2016;中塚・江美,2004)はあったが,トランス男性やXジェンダーの妊娠・出産・授乳に関する研究はなかった.しかし諸外国ではGlobal Northと言われる先進国(北半球の欧米諸国の他,南半球のオーストラリアを含む)からの報告があり,これらの人々の周産期の経験に関する12文献によるスコーピングレビュー(Greenfield & Darwin, 2021)は,トランス男性やXジェンダーの者にはトラウマ的出産やメンタルヘルス悪化のリスクがあると指摘している.またRiggs et al.(2020)は流産経験のあるトランス男性・Xジェンダー16名のインタビュー調査に基づき,こうした人々へのケアに関する医療従事者への教育の必要性を示している.
日本でも,トランス男性・Xジェンダーの妊産褥婦が自らの性自認を看護者に隠すか,伝えても理解が得られずシスジェンダー(性自認と生下時の性が一致していること)に基づく看護ケアを受けた場合,妊娠・出産というライフイベントがトラウマ体験となり,メンタルヘルスの悪化につながった可能性があるが,本邦での実態はわからない.そのため,トランス男性・Xジェンダー自身の周産期の体験やこれらに伴う当事者の思いを明らかにすることで,多様な性の有り様を踏まえた周産期看護への示唆を得たいと考えた.
出産経験のあるトランス男性・Xジェンダーの者が妊娠・出産・産後の体験をどのようにとらえ,感じ,考えていたのかを本人の語りを通して明らかにし,看護者に求められる支援のあり方を探究する.
研究対象は,身体的女性でありながら性自認は女性ではなく,かつ妊娠・出産し生児を得て授乳・子育てを経験したトランス男性またはXジェンダーの者とした.対象者が経験した具体的な場面や内容,その時の思いや感情も聴取するため,各個人の語りを詳細に記述する質的研究とし,半構造化面接を実施した.
2. 用語の定義1)トランスジェンダー:出生時に割り当てられた性別とは異なる性を自認する者(薬師ら,2019).
2)産後:母子保健法第一章第六条(昭和四十年法律第百四十一号)では「妊産婦」を妊娠中または出産後1年以内の女子と定義しており,本研究でも出産後1年以内とした.
3)体験:環境との相互作用を通して精神も身体も変化し続けながら存在している生きざま(中木・谷津,2011).
3. 研究対象者募集方法インターネットでトランスジェンダー当事者との接点がある団体を調べ,代表者に研究概要を説明し,対象者募集の協力を得た.法人格のない団体もあったため,代表者・所在地・連絡先と活動の詳細が公表されている3団体を著者が選定した.
代表者にトランス男性・Xジェンダーの者への研究概要説明を依頼し,著者は詳細説明を希望する当事者のメールアドレスのみを代表者から入手し,対象者へメールで研究説明文書を送付した.さらに電話かWeb会議システム(以下,Zoom)で口頭説明を行い質問にも回答した.最終的に対象者6名の紹介があり,6名全員が自由意思で研究に参加した.
4. 面接方法・内容面接方法は対面かZoomを参加者が選択し,同意を得て面接内容をICレコーダーに録音した.面接実施期間は2021年6月から9月で,妊娠から出産を経て産後に至る体験に基づく思いを経時的に問いつつ,参加者が自分の望む順で自由に語ってもよいようにした.
5. 分析方法分析にはBraun & Clarke(2006)のテーマ分析法を用い,データに慣れること,初期コードの生成,テーマの探索,テーマの検討,テーマの定義と命名,論文執筆の6段階を経た.
面接後は録音内容を逐語録にして繰り返し熟読し,妊娠期・分娩期・産後の体験をどのようにとらえ,感じ,考えていたかという部分を抽出した.その後,抽出データを各期に分けて意味を損なわないよう段階的に抽象度を上げてコード化した後,時期を問わず意味が共通するコードをまとめていった.次に,グループ化したコードからサブカテゴリを作成し,さらにサブカテゴリをまとめてカテゴリを作成した後,いくつかのカテゴリに共通する意味からテーマを導き,これを定義した.
6. 倫理的配慮既述のように,対象者のリクルートを段階的・慎重に行って本人の自由意思での研究参加を保障し,不参加や参加同意後の撤回の自由も説明した上で参加の同意を得た.本研究期間は新型コロナウィルス感染症拡大防止対策が厳重な時期であったため,対面での面接は感染対策を行い,参加者が指定したプライバシーを確保できる場所で行った.Zoomの場合は参加者ごとにパスワード付きミーティングルームを準備し,会話の内容が第三者に漏れないよう研究者は施錠された個室で面接を行った.未就学児のいる者は子どもの同席も可能とした.また入手した個人情報は,個人を特定できないよう逐語録に起こす時点で匿名化した.(京都看護大学研究倫理委員会:承認番号202008).
トランス男性3名,Xジェンダー3名の参加があった.6名全員が妊娠・出産までに性別違和を感じ,うち2名は妊娠までに性別違和の診断を受け,1名は出産後に診断を受けていた.医療者に性別違和を伝えていた者は1名であり,全員が経腟出産で直接授乳の経験があった(表1).
| 参加者 | A(トランス男性) | B(Xジェンダー) | C(Xジェンダー) | D(Xジェンダー) | E(トランス男性) | F(トランス男性) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 年齢 | 40歳代後半 | 30歳代後半 | 30歳代後半 | 40歳代前半 | 40歳代前半 | 30歳代前半 |
| 戸籍上の性別 | 女 | 女 | 女 | 女 | 女 | 女 |
| 社会的な性別 | 男 | 女 | 不明 | どちらでもない | 男 | 女 |
| 婚姻歴 | 1 | 0 | 1 | 3 | 1 | 0 |
| 家族構成 | 子1 | パートナー(女性) 子2 |
パートナー(男性) 子1 |
パートナー(男性) 子2 |
子2 | 子2 |
| 性別不合の診断 | 有(40歳代) | 無 | 有(20~30歳代) | 無 | 無 | 有(20歳代) |
| 治療内容 | ホルモン治療中 | ― | ホルモン治療歴あり | ― | ホルモン治療歴あり(個人輸入) | カウンセリング |
| 医療者への性自認の開示 | 無 | 無 | 有 | 無 | 無 | 無 |
| 出産様式 | 経腟 | 経腟 | 経腟 | 経腟 | 経腟 | 経腟 |
| 出産歴/子ども数 | 1回/1人 | 1回/1人 | 1回/1人 | 2回/2人 | 2回/2人 | 2回/2人 |
| 第一子出産時の年齢 | 30歳代後半 | 30歳代後半 | 30歳代後半 | 30歳代前半 | 20歳代前半 | 20歳代後半 |
| 妊娠方法 | 体外受精 | 人工授精 | 自然妊娠 | 自然妊娠 | 自然妊娠 | 自然妊娠 |
| 妊娠期間 | 38週 | 40週 | 40週 | 38週 | 40週 | 39週 |
| 児の栄養方法 | 混合 | 混合 | 人工 | 母乳(4ヵ月まで) | 母乳(3~4ヵ月) | 母乳(1歳まで) |
| 第二子出産時の年齢 | ― | ― | ― | 30歳代後半 | 20歳代後半 | 20歳代後半 |
| 妊娠方法 | ― | ― | ― | 自然妊娠 | 自然妊娠 | 自然妊娠 |
| 妊娠期間 | ― | ― | ― | 39週 | 39週 | 37週 |
| 児の栄養方法 | ― | ― | ― | 母乳(2ヵ月まで) | 母乳(1ヵ月頃まで) | 母乳(1歳まで) |
5名はZoom,1名は対面で面接し,平均面接時間は69分であった.研究参加同意後に同意を撤回した者,面接中に心身の不調を訴えた者,面接を中断した者,子どもの同席を希望した者はいなかった.
3. 妊娠・出産・産後の体験や思い参加者6名の語りから,4テーマが抽出された(表2).
| カテゴリ | サブカテゴリ | 代表的コード |
|---|---|---|
| テーマ1:妊娠・出産した人生に対する心の揺らぎ | ||
| 身体的女性である自分の責任を果たそうと思った | ・妊娠・出産をやり遂げれば本当の自分で生きていけると思った | ・妊娠・出産は人生のミッションをやり遂げる感じだった[B] |
| ・子どものために母乳を頑張ろうという思いがあった | ・母乳のメリットを知り一度きりの経験なので母乳を頑張る気持ちになった[A] ・助産師が乳房を触ることに抵抗があったけれど子どものために受け入れるしかなかった[F] |
|
| ・孫や娘を支えてくれる親に報いなければと思った | ・実母が孫のために母乳が出るよう自分を支援してきてくれたので無下にはできなかった[F] | |
| 男性として生きていたらと考える時があった | ・からだの変化を妊婦の喜びと考えられなかった | ・性別違和がなければつわりも妊婦の喜びとして感じられていたかもしれない[E] |
| ・本来の男性のからだならあり得ない経験をした | ・本来のからだであれば妊娠・出産・授乳はパートナーがすることが自然なことだった[E] ・授乳を終えた後,元の大きさに戻ったが本来の男性の姿に戻る訳ではなかったことを痛感した[E] |
|
| ・男性医師を見て男として生きていたらと考える環境が苦痛だった | ・同年代の男性医師の姿を見て本来の男のからだで生きていたらと考えやすい環境が苦痛だった[E] | |
| 自分を親にもつ子どもの将来が気がかりだった | ・過去のホルモン治療や自分の存在が子どもに影響しないか心配だった | ・妊娠を知ったとき自分の性自認が子どもの将来へどのように影響するのだろと思った[C] ・過去のホルモン治療が妊娠・出産に影響しないかという心配があった[C] |
| ・自分を親に持つわが子のためにきょうだいを産んであげたかった | ・自分が男性として生きて行くときに子どもが負担や苦しみを分け合えるよう,絶対子どもは2人欲しかった[E] | |
| テーマ2:妊娠・出産・産後の女性的なからだの変化に対する認識 | ||
| からだの変化は女性であることを認識する苦痛な体験だった | ・女性を感じる直接授乳が苦痛だった | ・授乳の時間が最も苦痛だった[B][F] ・女性を感じる直接授乳をいつまでするかゴールを設定した[F] |
| ・妊娠に伴うからだの変化や女性器に触れられることで,女性であることを叩きつけられた | ・内診を受けて自分のからだが女性であることを認識せざるを得なかった[F] ・妊娠によるからだの変化は男性に絶対起きないことなので女性を感じた[F] |
|
| ・周りの悪意ない言葉で女性を感じた | ・他者からの「お母さん」「授乳大変でしょ」「おめでとう」という悪気のない声かけでも女性や母親を感じた[F] | |
| ・妊娠・出産・産後を再体験する違和感は凄まじかった | ・1人目を出産し,さらに2人目で同じ経験をする違和感が大変だった[E] | |
| 妊娠・出産に伴うからだの変化を客観視していた | ・自分のからだの変化が自分以外のところで起こっていた | ・妊娠で変化するからだと精神が分離していて,機械を操縦しているような感覚があった[E] |
| ・自分が男なのに妊娠したという事実を誇らしげに思っていた | ・自分が男なのに,男が体験できない妊娠をしたことを誇らしげに思っていた[E] | |
| 特別な状況下では性別違和を感じない時もあった | ・急速な分娩進行と陣痛で性別違和への嫌悪感を抱く間もなかった | ・分娩進行が早かったので性別違和への嫌悪感を抱く間もなかった[F] ・「お母さん頑張れ」と言われる間もなかったのでラッキーだった[F] |
| ・乳房の大きさは慣れと変化がなければ違和感はなかった | ・妊娠して乳房や乳頭に変化がなかったので違和感はなかった[A] ・成長期の乳房の膨らみにも違和感がなかったので,妊娠しても大きくなるものだと思っていた[D] |
|
| テーマ3:妊娠・出産・授乳をするのは女性,母親であるという一般的な性規範への不快感 | ||
| 一般的な性役割や性イメージの押しつけが不快だった | ・社会の性役割や性イメージに抵抗したり不快に思ったりした | ・母子手帳の両親の氏名記載欄の「父」を「パートナー」に書き換えた[B] ・病院のいかにも女性というピンクの産衣が嫌だった[B] |
| ・妊婦健診や子育てサークルに来るのは女性と決めつけられていた | ・妊婦健診で見た目から看護者に夫(男性)と間違われた[B] ・子育てサークルなどの母親同士の集まりでは,変な人種という感じで見られていた[C] |
|
| 妊婦や母親にならなければいけない体験が不快だった | ・妊婦であることに気づかれたくなかった | ・妊婦と気づかれたくなくて,一度もマタニティマークはつけなかった[B] ・妊娠していることを気づかれないような格好をしていた[F] |
| ・徹底的に妊婦や母親を演じ続けた | ・妊娠・出産するという女性の責任を果たすために徹底的に妊婦を演じた[E] ・助産師や周りのお母さん達に自分が異性であることがバレたらどうなるんだろうということが気になった[E] |
|
| テーマ4:性自認の開示状況で異なる医療者との関係 | ||
| 異性である助産師との関わりが不快だった | ・助産師に女性器や胸をさらけ出し触られることが苦痛だった | ・同性の前提で授乳指導する助産師に乳房を見られたり触られたりすることに嫌悪感と違和感があった[A] ・助産師に妊娠中は乳房を見られ,産後は授乳している姿を見られるという驚きと違和感があった[A] |
| ・助産師が当然のように「女性・母親」と接してくる不快感があった | ・無意識で発した男っぽい言葉遣いを助産師たしなめられたが本当は女性ではないと言いたくなった[E] ・助産師の妊娠・出産・母乳育児は「女性」の喜びという言葉に違和感があった[E] |
|
| 医療者に性別違和を伝えることに諦めと恐怖があった | ・医療者に性別違和を伝えることに恐怖があった | ・医療者に性別違和を伝えることはカミングアウトになるという恐怖があった[E] ・医療者に性自認について根掘り葉掘り聞かれる怖さがあった[F] |
| ・医療者が理解し対応してくれるなら自分の性自認を伝えたかった | ・診察上の配慮が得られるならトランス男性と言いたかった[F] | |
| ・一生懸命な医療者に不快感をもってはいけないと思った | ・仕事として一生懸命してくれる助産師に不快感や嫌悪感をもってはいけないと思った[A] | |
| 医療者が自分の性別違和を理解してくれようとした | ・性別違和を知ってくれている医療者には相談しやすく環境面への配慮があった | ・妊婦健診の時に他の妊婦さんと被らないようにいろいろな配慮をしてくれた[C] |
| ・医療者が自分への対応を考えていてくれて嬉しかった | ・自分の対応について話し合いをしてくれていてありがたかった[C] | |
以後,【テーマ】ごとの《カテゴリ》,これを構成する〈サブカテゴリ〉と,サブカテゴリ抽出に至った代表的な語りをイタリックで示した.また補足内容や中略を( )で示し,語り主を[A~F]で示した.
1) 【妊娠・出産した人生に対する心の揺らぎ】このテーマは,3つのカテゴリ(表2)で構成され,「妊娠・出産を選択した人生の中で身体的女性としての責任を果たしつつ,男性ならあり得ない体験に苦痛を感じたり,子どもの将来を心配したりする中で心が揺れている状態」と定義した.
(1) 《身体的女性である自分の責任を果たそうと思った》このカテゴリは,3つのサブカテゴリから構成された.女性として世間一般で言われている〈妊娠・出産をやり遂げれば本当の自分で生きていけると思った〉り,産後の授乳では,母乳栄養のメリットを知り〈子どものために母乳を頑張ろうという思いがあった〉りした.また,良い母乳が出るように〈孫や娘を支えてくれる親に報いなければと思った〉という思いが語られていた.
B氏は「妊娠・出産自体がミッションみたいな感じで,(中略)ひとまずミッションをやり遂げるみたいな感じ.」と語っており,A氏は「(体外受精で子どもは一人と思っていたので)ちょっと母乳頑張ってみようかなっていう気はしてました.(中略)母乳で育てるんだ,みたいな頭があったので.」と語っていた.また,F氏は「母は孫のために母乳が良くなるよう良い食べ物をたくさん食べさせてくれたので,これは無下にはできないという気持ちの方が強くて.」との思いを語っていた.
(2) 《男性として生きていたらと考える時があった》このカテゴリは,3つのサブカテゴリから構成された.身体的女性として妊娠に伴う〈からだの変化を妊婦の喜びと考えられなかった〉ことや,妊娠に伴う身体の変化を〈本来の男性のからだならあり得ない経験をした〉ととらえていたことが語られた.また,〈男性医師を見て男として生きていたらと考える環境が苦痛だった〉と,自認する性で生きていた場合への思いが語られていた.
E氏は「(つわりの状況に対し)自分がちゃんと一致していて,そこも喜びにつながっていくような感じだったら少しは気持ちも違ったんでしょうけど.」と語られ,「ホントのからだだったらどういう人生だったんだろうな.ホントは自分がやるべきことじゃない.パートナーがすることが自然なのに『なんでこれ自分がやってんのかな』みたいな.」とも語られていた.
(3) 《自分を親にもつ子どもの将来が気がかりだった》このカテゴリは,2つのサブカテゴリから構成された.〈過去のホルモン治療や自分の存在が子どもに影響しないか心配だった〉ことや,〈自分を親に持つわが子のためにきょうだいを産んであげたかった〉と,ホルモン治療や自身の性自認が子どもに及ぼす影響が気がかりに思うことが語られた.
C氏から「(妊娠を知った時には)子どもが生まれた時,大きくなっていって自分の立場を考えた時にどうなんだろうかって思っちゃいましてね.」と語っており,E氏は「ホントの自分を打ち出して生きていくときに,1人だけだとその子が背負うものがどうしても大きい気がして.もう1人親密な子がいれば(苦しみを)分割できるって気がしてたんで,2人は絶対産もうと思ったんです.」と語っていた.
2) 【妊娠・出産・産後の女性的なからだの変化に対する認識】本テーマは,3つのカテゴリ(表2)で構成され,「特殊な状況下では女性であることの違和感はなかったが,妊娠や出産に伴うからだの変化は女性であることを認識せざるを得ない状況で,それを客観視している自分の存在を冷静に把握している状態」と定義した.
(1) 《からだの変化は女性であることを認識する苦痛な体験だった》このカテゴリは,4つのサブカテゴリから構成された.〈女性を感じる直接授乳が苦痛だった〉ことや,〈妊娠に伴うからだの変化や女性器に触れられることで,女性であることを叩きつけられた〉こと,また妊娠に伴うからだの変化を喜ばしいことであると決めつけたような〈周りの悪意ない言葉で女性を感じた〉経験が語られた.そして,2人目がいる参加者からは〈妊娠・出産・産後を再体験する違和感は凄まじかった〉という思いが語られていた.
F氏は「ホントに授乳の時間は,妊娠,出産をした過程で一番嫌だったかもしんないです.」と語っており,A氏からは「お産のとき一番嫌だったのが(中略),子宮口の開きを見るのに,助産師さんがまめに入れ替わり立ち代わり指を入れるんですよ.やっぱりすごい嫌で,胸のケアも膣のこともなんとなく同性だから.」と語っていた.また,E氏からは「1人目を産んだ後に割り切れてたものが割り切れなくなってきて,1人目の時みたいにいかなくて,全てが違和感でしょうがない中での出産でした.」との思いが語られた.
(2) 《妊娠・出産に伴うからだの変化を客観視していた》このカテゴリは,2つのサブカテゴリから構成された.からだと精神を切り離して考えないと違和感が大きくなるので〈自分のからだの変化が自分以外のところで起こっていた〉ととらえていた一方,妊娠・出産の体験を冷静にみて〈自分が男なのに妊娠したという事実を誇らしげに思っていた〉という思いが語られていた.
E氏は「自分のからだというよりは,自分のからだではないみたいな.ロボットを操縦しているような気持ちです.(中略)自分の精神とからだがホントに分離しているなっていう感じだったので,冷静にみていられた.」と語られ,「『男なのにやってやったぞ!』みたいなのがプラスアルファであった.(男性がしないようなことを体験したという)誇らしげな気持ちが同じくらいあって.」とも語られていた.
(3) 《特別な状況下では性別違和を感じない時もあった》このカテゴリは,2つのサブカテゴリから構成された.想定外の〈急速な分娩進行と陣痛で性別違和への嫌悪感を抱く間もなかった〉ことや,妊娠しても〈乳房の大きさは慣れと変化がなければ違和感がなかった〉と,からだに起きている状況や変化によっては性別違和を感じないこともあったことが語られていた.
F氏は「すぐに生まれますという状況で(中略)『頑張れー,お母さんになるんだから』という時間は全くなかったんですね.命と嫌悪感を天秤にかけたら命の方が大事なので,さすがに必死過ぎて嫌悪感を感じる間もないです.」と語られ,A氏は「妊娠期間中に胸が一切大きくならなかったので,サイズ変わらなかったんですよ.そこまで違和感はなかったというか.」と語られた.
3) 【妊娠・出産・授乳をするのは女性,母親であるという一般的な性規範への不快感】本テーマは,2つのカテゴリ(表2)から構成され,「妊娠,出産し,授乳をしているから女性であり母になるという一般的な性規範に基づいた判断や関わりに不快感を抱いていた状態」と定義した.
(1) 《一般的な性役割や性イメージの押しつけが不快だった》このカテゴリは,2つのサブカテゴリから構成された.性別二元論をもとにした〈社会の性役割や性イメージに抵抗したり不快に思ったりした〉ことや,〈妊婦健診や子育てサークルに来るのは女性と決めつけられていた〉と性役割や見た目で性を判断されて不快であったとの思いが語られていた.
B氏は「(母子手帳の子の保護者の記載欄は)『父』を消して,私は『パートナー』って書いてます.」と語られ,「産むときにガウンみたいな着せられるんです.それがピンクの水玉で,私は絶対こんなん選ばない.」とも語られていた.またC氏は「そういう人達(子育て広場に参加している母親)のほうが偏見すごいんで.医療従事者の方より.(中略)『変な人種がいてるよ』っていうような感覚.(中略)初産のクセにテキパキやってる変な男のような女がやってきた.余計に腹立たしいと思いますよ.」と語られていた.
(2) 《妊婦や母親にならなければいけない体験が不快だった》このカテゴリは,2つのサブカテゴリで構成された.周囲から〈妊婦であることに気づかれたくなかった〉一方で,〈徹底的に妊婦や母親を演じ続けた〉という思いが表され,自認する性では起こりえない体験が不快であったという思いが語られていた.
B氏は「(マタニティマークを敢えて付けなかったのは)自分が妊婦と見られることとかがあんまり嬉しくないというか.(中略)願わくは気づかれない方がいいな.」と語っており,E氏は「(乳房を触られること自体は苦痛ではなかったが,助産師は)同性と思ったらそんな風にできるんだ(乳房を当たり前のように触るんだ)っていう,そっちの興味の方がすごくって.これ異性だってバレたらどうなるんだろう.」と語られていた.
4) 【性自認の開示状況で異なる医療者との関係】本テーマは,3つのカテゴリ(表2)から構成され,これを「自分にとって異性である助産師らと性別違和を伝えていない中で関わった苦悩や,伝えることへの恐怖感があったが伝えた場合には安堵感がえられていた状態」と定義した.
(1) 《異性である助産師との関わりが不快だった》このカテゴリは,2つのサブカテゴリで構成された.女性と自認していない参加者は〈助産師に女性器や胸をさらけ出し触れられることが苦痛だった〉,〈助産師が当然のように「女性・母親」と接してくる不快感があった〉と,助産師が女性として関わってくることに不快感があったとの思いが語られていた.
A氏は「僕達からすると,やっぱり女性って異性なんですよ.」と語られ,「(助産師の授乳指導は)なんか触られるより(授乳をしているところ)見られる方が,さらにちょっと嫌だったかもしれない.」と語っていた.E氏は「産む時の『くっそー!イッテー!』とか(中略)『女の子なんだからそんな声出すんじゃないの』みたいなこと言われて.『女じゃねぇし』みたいなことを言いそうになってしまったりして,出産時は結構イラついた….」と語られていた.
(2) 《医療者に性別違和を伝えることに諦めと恐怖があった》このカテゴリは,3つのサブカテゴリで構成された.自分の性自認について〈医療者に性別違和を伝えることに恐怖があった〉と思いつつも,〈医療者が理解し対応してくれるなら自分の性自認を伝えたかった〉という思いが語られた.また,〈一生懸命な医療者に不快感をもってはいけないと思った〉とケアする医療者に対する思いが語られていた.
E氏から「誰かに言葉にして伝えるということが,社会から殺される…みたいな.それを言ってしまったら生きていけないっていう恐怖の方がデカくて,バレないようにしなきゃみたいな.」と語っており,F氏は「(健診時の格好について)仮にそれがワンピースだったりとかした場合,それは受け入れられないので(中略),(トランス男性であることを)言っちゃったら,『じゃあ,しょうがないですね』となるのであれば,言ってしまいたいと思うことはあります.」と語っていた.またA氏からは「助産師さんが一生懸命して下さっているっていうのはわかってるので,それに対して不快感っていうか,嫌だなって思う気持ちを持ってもいけないみたいな,抑え込まないといけないみたいな気持ちはありました.」との思いが語られた.
(3) 《医療者が自分の性別違和を理解してくれようとした》このカテゴリは,医療者に自らの性別違和を伝えていたC氏からのみ抽出され,2つのサブカテゴリで構成された.C氏は,〈性別違和を知ってくれている医療者には相談しやすく環境面への配慮があった〉と妊婦健診時の医療者の対応を語られた.また,〈医療者が自分への対応を考えていてくれて嬉しかった〉と,自分の事を理解してくれようとした医療者への思いが語られた.
C氏は「他の妊婦さんとあまり被らないようにしてくれましたね.むこう(他の妊婦さん)も気になるだろうし,こっちも気になるだろうし,あんまり良くないからって時間帯をずらしたりとか,カーテンで区切ったり,パーティションとか別の部屋を用意してくれたりとかしましたね.」と語られ,「(医療者間で)話し合いもしてるからねと助産師さんから聞いてて,すごいありがたいなって思いますよね.安心もしたし,何よりも知ってもらえる,知ろうとしてくれてる労力がすごい嬉しかったですね.」とも語られていた.
妊娠や出産を「責任」ととらえる発言より,参加者は身体的女性としての役割を果たそうとしていた.人間は出生時に外性器から判断された性で生きていくが,「私たちは生まれおちた時から性別文化の中におかれ,意識的・無意識的にそれを身につけてしまう」と青木(1982, p. 21)が述べているように,人は自分だけでなく他者に対しても意識的・無意識的に男女の区別を行いながら生活する.性役割観とは,社会で自己が男・女としてどのような行動を求められているか,それに対応してどのように振る舞うべきかという社会的期待であり(間宮,1984),参加者の多くが自身の性自認にかかわらず性役割観に沿って生きていた.
具体的には,妊娠を受け入れ,母乳育児に取り組み,親を気遣い,子の将来を案じてきょうだいを出産した者もいたが,これらは本当のからだ(男性)で生きていればあり得ない体験で,参加者には自認する性と身体的性の「ズレ」が苦痛であったと考えられた.Charter et al.(2018)は,トランス男性が妊娠に関連した抑鬱(dysphoria)や,これに対処するメカニズムとして孤独(loneliness)を伴う孤立(isolation)を経験することを指摘しているが,本研究参加者の体験や苦痛も抑鬱・孤独・孤立につながるものであったと推察された.従って,性自認が女性でない人は妊娠・出産・授乳をしないだろうという考えやシスジェンダーに基づくケアは,これらの人々の周産期の体験をさらなる苦痛に転じさせる可能性が高く,男女の属性にとらわれず個々の性自認や性役割観を考慮したケアが必要であると示唆された.
2. 妊娠・出産・産後の女性的なからだの変化に対する認識トランス男性にとって妊娠に伴う腹部膨隆や乳房の変化は女性であることを突き付けられる体験であり,周囲から妊婦や母と見られることを戸惑う語りがあった.そのため,MacDonald et al.(2016)が授乳を「breastfeeding」ではなく「chestfeeding」と表していたように,A氏も乳房を「胸」という中立的な用語で表現していた.Hahn et al.(2019)やWolfe-Roubatis & Spatz(2015)の研究でも妊娠に伴う身体の違和感が用語の工夫で軽減される可能性を指摘しており,日本でも先行研究結果と同様と考えられ,このことは多様性を考慮した周産期ケアの一助になると考えられた.
自分自身の身体についてもつ概念を身体像(body image)と呼び,それは自己の身体についての同一感・自己概念であるが(遠藤,1981),妊婦である自分の体を「ロボットを操縦しているような感覚」でとらえ,「自分のからだと心を切り離していた」と語っていた者もおり,妊娠に伴うからだの変化は当事者の自己概念を大きく揺るがした体験であったと推察された.一方,陣痛のピーク時には性別違和を感じる間もなかった,との語りもあり,産婦の性の多様性を理解することはもとより,その人がその人らしくあるために産痛緩和などの助産師による分娩期ケアが重要であることが示された.
3. 妊娠・出産・授乳をするのは女性,母親であるという一般的な性規範への不快感Greenfield & Darwin(2021)はトランス男性やノンバイナリー(non-binary:自分の性自認が男女どちらにも当てはまらない,あてはめたくない人)が社会の構造的・心理的障壁(structural and psychological barriers)に直面していると指摘している.先行研究同様,本研究参加者も産衣はピンク,子の保護者の名称は父と母というような性別二元論を基とした日本の社会規範を不快に思い,対処していた.また他妊産婦との関わりから胎児や児への感情が他者と違うことに気づいた者や,子育て広場で他の母親から「子育て経験がある男みたいな女」という目で見られて不快だった者がいたことからも,「子産み子育てをするのは女性」というジェンダー規範に苦悩を抱いていた状況が明らかになった.
見た目から女性として扱われることもトランス男性が経験した苦痛の1つ(篠原・中塚,2019)であり,本研究参加者も類似の体験をしていた.妊娠前から女性と扱われたくなかった上に,他者からも確実に女性と見られる状況になり,それを隠して穏やかな生活を送りたい者がいた一方,自分の性自認を隠すため徹底的に妊婦を演じた者もいた.妊娠を隠した,妊婦を演じた,というどちらもトランス男性が自身のアイデンティティを守るための行為と考えられ,医療者には当事者の行為を尊重して接する姿勢が求められる.
4. 性自認の開示状況で異なる医療者との関係保健師助産師看護師法第一章第三条が定めるように,日本で「助産師」は女性のみが就ける職業であるため,参加者にとって助産師は異性のケア提供者であった.この点は,男性助産師を選択できる余地がある諸外国とは異なる状況であると考えられた.
参加者には,妊娠中の助産師による乳房や乳頭のチェックに嫌悪感を抱いていた者が多く,中でもA氏は,妊娠前から嫌だった乳房を妊娠期間中に助産師に見せるという想定がなかった上に,産後は直接母乳を行い,さらにその姿を助産師に見られるということに度重なる苦痛を感じていた.藤高(2019)によると,程度に差はあれトランスジェンダーに共通している経験は「間違った身体」を生きているという感覚であり,自認する性と異なる性の象徴ともいえる乳房の変化や授乳は「あり得ない体験」で,相当な苦痛であったと推察された.Wolfe-Roubatis & Spatz(2015)は,トランスジェンダーと医療者間の信頼関係構築に必要な事項として,授乳をするのは女性と決めつけないことや,乳房に触れる際は声かけを行い,触れられることに不快感がある場合は必要最小限の観察にするといった配慮の必要性を指摘している.
周産期領域の看護は,対象の乳房や外性器を診る・触るという非常にセンシティブな領域である.岡本ら(2017)によると,妊婦に触れることは,信頼関係を形成していきながら妊婦と自らの身体感覚を高めるなど多くの意図を持った助産技術であり,同時にこれらは助産診断において不可欠の技術である.しかし,助産師を異性だと認識し自身の身体を助産師へ見せることに苦痛を感じている妊産婦が少なからず存在することを踏まえ,「女性同士」を前提にケアを行うのではなく,特にセンシティブな領域を診る・触る前には必ず同意を得て,個人が納得した方法で助産ケアを行わなければならない.
C氏は,医療者に性自認を開示していた唯一の参加者で,医療者が研修会を開催し,自分のことを知ろうとしてくれていたことを「ありがたかった」と語った.Malmquist et al.(2019)は,医療者のもつセクシュアルマイノリティへの偏見は,出産の痛みや傷,出血,子どもの死という「一般的な出産の恐怖(fear of childbirth)」をさらに助長させると述べている.自分のことを知ろうとしてくれた医療者のもとで妊娠・出産・産後のケアを受けたC氏からは,妊娠・出産時の不快や恐怖についての語りはなく,産後助産師らに「辛い」と伝えられたことが安心感につながったという表現があった.Hoffkling et al.(2017)は,トランスジェンダー当事者らが医療従事者にセクシュアリティについて学んでほしいと望んでいることを指摘しており,C氏から語られた医療者との関係からも,勉強会等で当事者との関わりを具体的に学び検討することがよりよいケアにつながっていくと考えられた.
5. 本研究の限界今回,トランス男性・Xジェンダーの人々の妊娠・出産・産後の体験をテーマ別に分類することで多様な思いの概要が明らかになったが,複数名の語りからテーマを構成できていないため看護支援の一般化が困難であることが本研究の限界である.また医療者に自認する性を開示していなかった者は,医療者に不快な思いや嫌悪感を抱いてはいけないと思っていた一方,自認する性を医療者に開示していた1名は安心感を抱いていた.今後は医療者に性自認を開示していた対象者をリクルートする戦略を検討し,開示の有無が妊娠・出産・授乳に及ぼす影響を明らかにすることで,多様な性に対応できる看護支援の一般化に努めていく必要がある.
自分の性別を女性と自認しない女性は,身体的女性としての役割を果たそうと妊娠・出産・授乳を経験していた一方で,男性として生まれていたら経験しないことであったと考え苦痛を感じていた.そして,いずれ自認する性で生きることを考えて子どもの将来を気にかけ,妊娠・出産した自分に娘として接している親を無下にはできないと家族のことも案じるなど,様々な葛藤を抱きながら妊娠や出産を選択していた.妊娠・出産によるからだの変化は女性を認識せざるを得ない苦痛な体験であり,助産師を異性としてとらえ,性自認を医療者に開示していない者は女性を前提にした発言で不快な思いをしていた一方で,自身のセクシャリティを医療者に開示していた者は安心して周産期ケアを受けることができていたことが明らかになった.
これらの人々は,女性と自認していないという共通点はあっても,妊娠・出産・授乳への向き合い方は各自で異なっていた.そのため助産師には,シスジェンダーに基づいたケアだけではなく,多様な性への理解とこれらの人々へのケアのあり方について探究する姿勢が必要である.
付記:本稿は,京都看護大学大学院に提出した修士論文の一部に加筆修正したものである.また,一部を第37回日本助産学会学術集会において発表した.
謝辞:本論文の執筆にあたり,多くの方にご支援をいただきました.研究にご参加いただいた研究参加者の皆様に厚く御礼申し上げます.また,本研究の参加者様をご紹介いただいた団体代表者様にも心より御礼申し上げます.
利益相反:本研究における利益相反は存在しない.
著者資格:M.Sは研究の着想及びデザイン,データの収集と分析,原稿作成のプロセス全体に貢献した.Y.Cは研究デザイン,データ分析と解釈,原稿作成に貢献した.すべての著者は最終原稿を読み承認した.