日本看護科学会誌
Online ISSN : 2185-8888
Print ISSN : 0287-5330
ISSN-L : 0287-5330
原著
在宅高齢者の救急車頻繁利用減少の要因と療養生活継続への有効な支援
―訪問看護師からみた要因と支援に焦点をあてて―
蒔田 寛子大野 裕美川村 佐和子
著者情報
ジャーナル フリー HTML

2025 年 45 巻 p. 603-612

詳細
Abstract

目的:療養生活を送る在宅高齢者が救急車の頻繁利用をしなくなった要因と,支援について明らかにすることを目的とした.

方法:研究協力者は訪問看護師1,000名である.2段階のデルファイ法により,質問紙調査を行った.同意率は第1回調査では70%,第2回調査では80%とした.

結果:第1回調査の同意率70%以上は,在宅高齢者が救急車の頻回利用をしなくなった要因18項目中14項目,在宅高齢者への支援21項目中20項目であった.第2回調査の同意率80%以上は,在宅高齢者が救急車の頻回利用をしなくなった要因14項目中13項目,在宅高齢者への支援20項目中19項目であった.

結論:在宅高齢者が救急車の頻回利用をしなくなった要因は,症状理解と対応ができるようになったこと,必要な医療が在宅で受けられること,病院ターミナルから在宅ターミナルへの切り替えであった.そのためには,緊急性の高い状態を説明し,いつでも対応する支援が必要であった.

Translated Abstract

Objective: The objective of this study was to ascertain factors contributing to the reduced utilization of ambulance services and the provision of assistance to homebound older adults who are recuperating.

Methods: One thousand visiting nurses participated in the study. A questionnaire survey was conducted using the two-stage Delphi method. The survey’s first and second stages garnered 70% and 80% consent rates, respectively.

Results: In the initial survey, a consensus rate of 70% or higher was achieved for 14 of the 18 factors hindering homebound older adults from utilizing ambulances with greater frequency. This consensus was reached for 20 of the 21 items designed to assist homebound older adults. In a subsequent survey, the agreement rate surpassed 80% for 13 of 14 factors hindering the utilization of ambulances by homebound older adults, along with 19 of 20 items designed to enhance their well-being.

Conclusion: The factors that inhibited homebound older adults from the frequent use of ambulance services were the ability to understand and respond to symptoms, access to necessary home health care, and the transition from the hospital to home. Thus, the provision of clear explanations regarding urgent conditions and assurance of the constant availability of support are necessary.

Ⅰ. 緒言

令和5年版救急・救助の現況(総務省消防庁,2024a)によると,搬送人数はCOVID-19感染拡大の影響により一旦減少したものの年々増加傾向であり,救急出動件数の増加は,現場到着時間の延伸,救急救命処置や医療機関への搬送の遅れに繋がり社会的問題になっている.そして,高齢者の救急搬送の割合は62.1%と高く,概ね9人に1人の高齢者が搬送されたことになる.病院の救急搬送患者受け入れの実態調査では,70歳以上の救急搬送患者増加との報告(亀山ら,2020)もあり,後期高齢者の増加により今後さらに高齢者の救急車利用増加が予想される.

急病の傷病程度別搬送人員は,軽症が47.3%,中等症(入院診療)が43.5%と報告されている(総務省消防庁,2024a).そして,地域中核病院の救急搬送実態調査では軽傷が50%程度と最も多かったとの報告(小田・中村,2022),救急搬送された患者の69.0%が自力もしくは周囲の支援で来院可能であったとの報告(佐々木ら,2018)もあり,緊急性が高くない者も多く,社会的問題に繋がっている.また寺本ら(2018)は,救急外来を受診後帰宅した患者の30日以内の再受診では,初回と同様もしくは関係のある症状での再受診が半数近かったと報告しており,医療が必要な受診であっても一部は予防可能であったと考えられる.

高齢者の急病の傷病程度別搬送人員については,中等症が51.7%と最も多かった(総務省消防庁,2024a).高齢者の救急車利用の4割は受診後すぐに帰宅し,緊急度が低い傾向があること(片山ら,2018),受診理由の半数は持病の悪化であったこと(山口ら,2019)等の報告がある.高齢者は持病の悪化が救急受診に繋がり,救急車利用への課題があるが,治療中の病気等で多少の状態変化があっても自身で判断対応ができれば救急受診に繋がらないと考えられる.一方,救急搬送される患者・家族は,強い不安と混乱状態により,現状を受け入れられないのであり(田川・眞砂,2018),高齢者側からみると,何らかの状態変化から不安定な療養生活に陥っていると推察される.

増加する救急需要に対してさまざまな対策がとられている.救急安心センター事業(#7119)の活用による効果の報告は複数あり,山梨県では軽症者割合が47.4%から45.8%に減少していた.しかし高齢者による#7119の相談割合は高くない(総務省消防庁,2024b).また救急搬送における選定療養費の徴収を開始した自治体の報告がある.松阪市(2024)では,3ヶ月間に選定療養費を徴収したのは救急搬送全体の7.4%であり,成人の徴収率が8.2%,高齢者が4.8%で,前年と比較し救急出動件数は減少と報告している.茨城県(2025)では,3ヶ月間に選定療養費を徴収したのは4.2%であり,成人の徴収率が6.6%,高齢者が3.0%で,救急搬送件数は0.5%減少と報告している.これらの対策により,緊急性が低い救急車の頻繁利用抑制への効果は認められるが,在宅高齢者がなぜ頻繁に救急車を利用するかには着目しておらず,救急車を頻繁に利用する高齢者への対策については検討されていない.

そして,救急搬送に関する研究には,高齢者搬送数増加と生産年齢人口の軽傷率の割合が高いこと(海老原・守谷,2020),救急自動車の現場到着時間延長には高齢傷病者が関連していること(外山ら,2023)等の報告がある.また,救急搬送された2型糖尿病患者への治療薬変更による重症低血糖患者と救急搬送減少への効果(工藤ら,2022),消防と福祉部局との連携により救急車頻回利用者1名に救急車利用が減少した報告(矢澤ら,2020)があるが限られた対象への研究が多い.

2022年の訪問看護利用者数は要支援,要介護合わせて約69万人で,年々増加しており(厚生労働省,2023),利用者が訪問看護に求めるもので最も多いものは「24時間対応」であった(厚生労働省,2015).また月の定期訪問件数が3,599件の訪問看護ステーションでは,緊急訪問が1日平均6.4件,緊急訪問の内容は「身体症状」が最も多く(田中ら,2022),訪問看護師の83.7%が急変を経験しているという報告(西山ら,2018)があり,訪問看護師は在宅療養者の症状変化に関わる機会が多い.そして,症状変化時連絡できる支援者であり,療養生活について把握していると考えられる.なんらかの健康問題を持つ高齢者では身体症状の変化から救急車の頻繁利用に繋がりやすい.しかし先行研究(蒔田ら,2024)では医師と訪問看護師の支援を受け,自分にとっての緊急性が高い状態がわかり,多少の症状の変化には対処し改善できる経験を重ねることで,救急車を頻繁利用しなくなる高齢者もいることを明らかにしている.

高齢者の救急外来受診理由の半数は持病の悪化であること(山口ら,2019)から救急車の頻繁利用の解決には,高齢者自身の病状管理が大切と考えられる.つまり自身の病気がわかり,状態の変化をどのように認識し,自身で対処または緊急性が高いかもしれないと考え,医療につなげることができるかが重要である.そして患者は病気の症状変化が予測できない場合に,高レベルの不確かさが生じ(Mishel & Braden, 1988),療養行動には,医療職からの評価,心理的サポート等の支援が最も影響がある(西尾,2017).そのため救急車を頻回に利用しなくなった要因には,高齢者自身の状態の認識と対処,医療職の支援のありようが影響していると考えた.

在宅高齢者が,緊急性が低いと思われる状況でも救急車を頻回に呼ぶ理由や,それに対する支援について明らかにした研究は見当たらない.そのため本研究では,先行研究(蒔田ら,2024)を踏まえ,療養生活を送っている在宅高齢者が救急車の頻繁利用をしなくなった要因として高齢者の認識と対処に焦点をあて,そのための支援については医療職の支援のありように焦点をあて,訪問看護師を研究対象に調査し,明らかにすることを研究目的とした.

Ⅱ. 研究方法

1. 用語の操作的定義

在宅高齢者:なんらかの健康問題をもち,住み慣れた自宅で医師と訪問看護師の支援を受けて療養生活を送っている65歳以上の者.

緊急性が低い救急車の頻繁利用:救急外来を受診しても入院診療を必要としない救急車の利用が,1ヶ月に2回以上である.

療養生活:なんらかの病気や健康障害があっても治療を受けながら,地域で暮らしていること.

2. 研究デザイン

デルファイ法による質問紙調査である.デルファイ法は,同一内容の質問を同一対象者に対して,質問紙への回答,分析,フィードバック,回答という過程を数回繰り返すことによって,回答者集団の意見の収斂を図る方法である(Polit & Beck, 2004/2010).

3. 研究協力者

デルファイ法では,研究協力者となる専門家の選定が重要であり,対象人数は10~100人と幅広いが,同質の対象者であれば10~15人でも良質な結果が得られる(Keeney et al., 2011).蒔田・山根(2021)のデルファイ法による回収率を踏まえ,回収率は低いと考え,研究協力者を全国の訪問看護ステーションの看護師1,000名(訪問看護の経験が3年以上)とした.全国訪問看護事業協会のHPより,47都道府県ごとに層化抽出法を用いて,対象となる訪問看護ステーションが1,000ヶ所となるよう都道府県ごとに比例割当を行った.訪問看護師は療養生活を送っている在宅高齢者の身近な医療職であるため研究対象とした.

4. 調査方法

1) 救急車の頻繁利用をしなくなった要因と支援を明らかにするための質問紙作成

先行研究(蒔田ら,2024)を踏まえ,研究者間で討議し質問紙を作成した.「高齢者が救急車を頻回利用しなくなった要因」は先行研究の「在宅高齢者が救急車を呼ばなくなった要因」のカテゴリを整理し3項目とした.「在宅高齢者への支援」は,先行研究の「在宅高齢者が救急車を呼ばなくてもよい支援」のカテゴリから作成し,5項目とした.それぞれの選択項目はサブカテゴリ,下位サブカテゴリ,コードを踏まえ作成した.緊急性が低い救急車の頻繁利用をしている在宅高齢者の疾患や症状,家族背景等は個人差が大きい.焦点を絞るため事例を示し回答を求めた.先行研究のインタビュー調査の事例を参考に,主な疾患が心不全で認知機能の低下もある90歳女性Aさんの事例を作成し,事例を踏まえて質問への回答を求めた.高齢者が救急車を頻回利用しなくなった要因として,(1)症状理解と対応ができるようになった,(2)医療者を信頼し在宅で病院と同様に必要な医療を受けられることを理解した,(3)病院ターミナルから在宅ターミナルへの切り替え,について18の選択項目を設定し理由であるか否かを選択とした.この3項目にはそれぞれさらに自由記述の記載を求めた.なお終末期は病院に入院する場合を病院ターミナル,在宅で療養生活を継続する場合を在宅ターミナルとした.在宅高齢者への支援として,(4)医師と訪問看護師で病状の管理をする,(5)緊急性の高い状態を説明する,(6)いつでも対応する,(7)療養生活を支援する,(8)家族が介護で困らないように支援する,について21の選択項目を設定した.21項目については4件法とした.重要な支援は◎,必要な支援は〇,あったほうが良い支援は△,必要ない支援は×で回答を求め,5項目それぞれにさらに自由記述の記載を求めた.

研究協力者の属性として,年齢,訪問看護師としての経験年数,救急車を頻繁利用していた高齢者への支援の経験について確認した.

事例:Aさんは,何かあると(自覚症状の悪化,不安,夜間休日等)救急車を呼んで,医療機関に受診しています.その回数が月に2回程度におよび,救急車を頻回に利用する人としてリストアップされています.Aさんへの支援についてお答え下さい.

Aさん90歳女性. 結婚後,専業主婦として夫を支え,3人の子どもたちを育てている.夫は30年ほど前に癌で他界している.長男と次男はそれぞれ結婚し他県在住で,訪れるのは1年間に数回である. 三男夫婦との3人暮らし.子ども3人の兄弟関係では,長男は発言力があり高圧的な感じを受け,次男は長男に比べ穏やかである.Aさんと同居している三男は,支援者に対しては自分の意見を言うが,他の兄弟には大変気を遣っている印象である.

嫁(三男の妻)は専業主婦で子どもはおらず,三男とAさんの指示に従い家事と介護をしている.Aさんは心不全,狭心症,大動脈弁狭窄症,高血圧症,認知症があり,内服治療している.服薬管理は嫁が行い,適切に服薬できている.呼吸困難,咳,痰がみられ,座位をとって過ごしている時間が多い.介助で立位はとれるが,筋力低下のため移動は車椅子を利用している.要介護4.塩辛いものが好きでカップラーメンはよく食べており,汁まで飲み干す.Aさんが循環器症状により呼吸苦を強く感じた場合や,認知症状のため妄想で家族に暴言を吐いたり,夜間不穏状態になったりする時に,家族では対応できなくなり,救急車を呼ぶことになっていた.特に土日,夜間に苦しくなって呼ぶことが多かった.救急車を呼んで病院受診すると,最初のうちは入院となっていたが,次第に受診しても病院に到着すると家に帰りたがることも多く,病院の医師にも「入院してもやることがない」と言われ,短時間で帰宅するようになった.短時間での帰宅になっても救急車による受診は続いていた.その後,主治医が往診可能なクリニックの医師に代わり,訪問看護師が1週間に3回訪問することになった.在宅酸素療法が開始され,呼吸状態をみながら,2~3リットル/分で調整するよう指示された.

2) 調査手順

本研究では,療養生活を送る在宅高齢者が救急車の頻回利用をしなくなった要因と,そのための支援の調査項目を精錬するために,2段階のデルファイ法により,質問紙調査を行った.デルファイ法での同意率の推奨される範囲は51~70%とされている(Polit & Beck, 2004/2010).研究協力者からコンセンサスが得られたことを示すデルファイ法の同意率は先行研究により幅があるが(永井ら,2021野口ら,2022作田ら,2021),本研究ではより精選された結果を導き出すために同意率を第1回調査では70%,第2回調査では80%とした.

郵送にて調査依頼を行い,第1回調査依頼時に研究協力に同意した場合,データ収集はURLもしくはQRコードを読み取りWebアンケートに回答とした.第2回の調査は,第1回調査に参加した研究協力者のみに郵送で調査依頼を行い,同じくWebアンケートへの回答を求めた.第2回調査の依頼では,第1回調査の結果報告を同封し研究協力者に結果のフィードバックを行った.

3) 調査期間

第1回調査は2023年2月1日から28日,第2回調査は2023年6月1日から30日とした.

5. 分析方法

デルファイ法での質問紙調査は2回実施し,調査の概要については図1に示した.第1回調査では,質問紙の選択項目39項目について同意率を70%として70%未満の項目を削除した.在宅高齢者への支援は4択であったため,◎〇を同意が得られたとした.第2回調査では,第1回調査で削除された項目を外し34項目について合意率を80%とした.第1回調査の自由記述は参考にした.

図1  デルファイ調査の概要

6. 倫理的配慮

見本のアンケート用紙とともに研究依頼書を同封し,Webアンケートへの回答をもって本研究に同意が得られたものとした.研究の趣旨と方法,匿名性の確保,研究結果の公表,研究への協力は自由意思であり,辞退による不利益を被ることがないこと,データ管理と破棄について文書で説明した.本研究は豊橋創造大学研究倫理委員会の承認後に実施した(承認番号:H2022012).

Ⅲ. 結果

研究協力者の概要を表1に,2回のデルファイ法による調査結果を表2に示した.第1回調査自由記述について,質問項目と重複しない主な内容を表3に整理した.

表1 研究協力者の概要

第1回調査 第2回調査
n = 90 n = 61
n % n %
年齢(歳)
30歳代 12 13.3 6 9.8
40歳代 41 45.6 28 45.9
50歳代 33 36.7 24 39.3
60歳代 4 4.4 3 4.9
救急車を頻繁に呼ぶ在宅高齢者への支援経験の有無
あり 60 66.7 44 72.1
なし 30 33.3 17 27.9
訪問看護経験年数
1~5年 31 34.4 18 29.5
6~10年 24 26.7 17 27.9
11~15年 16 17.8 13 21.3
16~19年 5 5.6 5 8.2
20年以上 14 15.9 8 13.1
表2 デルファイ法による調査結果

項目 番号 質問項目 1回目 2回目
n = 90 n = 61
n(%) n(%)
高齢者が救急車を頻回利用しなくなった要因
1)症状理解と対応ができるようになった 1 酸素投与で症状が軽減し落ち着く経験を重ねた 89(98.8) 60(98.4)
2 様子がおかしい時には血中酸素濃度を家族が測定し確認できるようになった 75(93.3) 54(88.5)
3 Aさんが眠れない時には家族が眠剤の量を調節して投与できている 62(68.9)  
2)医療者を信頼し在宅で病院と同様に必要な医療を受けられることを理解した 4 医師に相談できるようになった 85(94.4) 55(90.2)
5 医師が診察の回数を増やしてくれた 50(55.6)  
6 医師に十分診てもらえている 78(96.7) 53(86.9)
7 訪問看護師が在宅酸素療法を教えてくれた 84(93.3) 59(96.7)
8 訪問看護師は相談すると教えてくれる 88(97.8) 61(100)
9 訪問看護師が薬の作用副作用と検査結果の意味を教えてくれる 79(87.8) 54(88.5)
10 気になることがあれば,いつでも訪問看護師に連絡できる 90(100) 61(100)
3)病院ターミナルから在宅ターミナルへの切り替え 11 介護をしていても家族が自分の時間をもてるようになった 67(74.4) 48(78.7)
12 Aさんも家族も病院にいってもやることは同じと思えるようになった 77(85.6) 50(82.0)
13 家で看取ると兄弟で話ができた 72(80.0) 51(83.6)
14 医師から,Aさんはターミナル期であり,何があってもおかしくないと話があった 65(72.2) 55(90.2)
15 病院の医師から「病院に受診しても仕方がない,来ないように」と言われた 32(35.6)  
16 ターミナル期の医療は病院医療の対象ではないとわかった 33(36.7)  
17 救急車で受診しても問題が解決するわけではないと理解した 70(77.8) 58(95.1)
18 家族が酸素投与することで症状が治まる経験を重ねた 84(93.3) 59(96.7)
在宅高齢者への支援
1)医師と訪問看護師で病状の管理をする 19 症状悪化を見逃さないように医師は往診回数を増やす 37(41.1)  
20 医師が病状を丁寧に説明する 88(97.8) 61(100)
21 医師が在宅酸素療法を導入する 84(93.3) 58(95.1)
22 医師が訪問看護を導入し利尿剤の投与を開始する 66(73.3) 52(85.2)
23 酸素投与について訪問看護師が指導し見守る 85(94.4) 60(98.4)
24 訪問看護師が病状に関することを丁寧に説明する 85(94.4) 56(91.8)
25 医師は「それで大丈夫」と保証する 70(77.8) 49(80.3)
26 訪問看護師は「いい対応をしている」と褒めて認める 78(86.7) 55(90.2)
2)緊急性の高い状態を説明する 27 Aさんにとっての緊急性の高い状態を説明する 83(92.2) 60(98.4)
28 訪問看護師が医師に診てもらった方が良い症状があったら適宜伝える 89(98.9) 59(96.7)
3)いつでも対応する 29 訪問看護ステーションでは緊急連絡加算をとり,いつでも電話連絡できるようにしている 88(97.8) 59(96.7)
30 夜間休日の連絡にも対応する 87(96.7) 59(96.7)
4)療養生活を支援する 31 医師と訪問看護師で症状の管理を行う 90(100) 59(96.7)
32 食事制限(塩分制限)について,減塩の食事の摂り方を具体的に説明する 76(84.4) 49(80.3)
33 食事制限(水分制限)について,日々の水分摂取の工夫を説明する 78(86.7) 51(83.6)
34 服薬管理(薬剤名,投与量,投与回数等)について説明する 88(97.8) 57(93.4)
35 感染予防の必要性と注意すること(手洗いうがい等,家族も感染予防対策を行う)を説明する 86(95.6) 55(90.2)
5)家族が介護で困らないように支援する 36 家族の介護負担を考え社会資源(訪問介護,ディサービス等)の利用をすすめる 88(97.8) 55(90.2)
37 訪問の際,家族では難しい医療処置は手伝う 87(96.7) 55(90.2)
38 医師も家族を気にかけている 87(96.7) 59(96.7)
39 ケアマネジャーに相談し同居していない家族を含めた担当者会議を開催してもらう 67(74.4) 45(73.8)

第1回調査は同意率を70%とした.70%未満はセルを塗りつぶした.

第2回調査は同意率を80%とした.80%未満はセルを塗りつぶした.

表3 第1回調査自由記述の抜粋

高齢者が救急車を頻回利用しなくなった要因
1 訪問看護師と医師が連絡を取ることで安心できる
2 医師と訪問看護師が身近な存在になり,支援してくれるという思いを持つ
3 緊急時の対応で症状が軽減する経験を重ねた
4 専門家と話し合いながら今後について決められること(在宅での丁寧なACPの実施)
5 治療の限界について医師から説明を受ける
在宅高齢者への支援
1 療養者の今後の体調変化と対応方法について説明する
2 三男だけではなく長男,次男へ医師から病状,治療方針を説明する
3 「何かあったらどうしよう」の「何か」を話し合い説明する
4 緊急性が高い状態を記載したものを渡して説明する
5 詳細すぎる病状の説明は混乱を招くので,家族の様子をみながら病状の説明をする
6 症状変化対応のフローを作成し,家族がそれに沿って対応した上で困った場合に連絡するよう説明する
7 終末期であると食事制限,塩分制限はあまり必要ないかもしれないが,そのことは本人・家族の拠り所となっていることもある
8 家族の理解力などに応じて,Aさんの今後の病状変化の予測を伝え心の準備ができるように支援する

1. 第1回調査

2023年2月に調査を実施した.全国の訪問看護ステーションの看護師1,000名に研究協力を依頼し90名から回答を得,アンケート回収率は9.0%であった.回答者は全員女性であり,救急車を頻繁に呼ぶ高齢者への支援経験ありは60名(66.7%)であった.年齢は40歳代41名(45.6%),50歳代33名(36.7%)の順に多かった.訪問看護経験年数は,1~5年が31名(34.4%),6~10年24名(26.7%),11~15年16名(17.8%)であった.

在宅高齢者が救急車の頻回利用をしなくなった要因18の選択項目で同意率70%以上は14項目であった.在宅高齢者への支援21の選択項目で同意率70%以上は20項目であった.

2. 第2回調査

2023年6月に調査を実施した.第1回調査の研究協力者90名に調査協力を郵送で依頼し,61名からWebアンケートに回答を得,回収率は67.8%であった.

在宅高齢者が救急車の頻回利用をしなくなった要因14項目で同意率が80%以上は13項目であった.「訪問看護師は相談すると教えてくれる」「気になることがあれば,いつでも訪問看護師に連絡できる」は同意率が100%であった.在宅高齢者への支援20項目で同意率が80%以上は19項目であった.「医師が病状を丁寧に説明する」は同意率が100%,「酸素投与について訪問看護師が指導し見守る」「Aさんにとっての緊急性の高い状態を説明する」は同意率が98.4%と高かった.

3. 自由記述について

第1回調査では,8の項目それぞれにさらに考えられることを自由記述で回答を求め複数の回答を得た.高齢者が救急車の頻回利用をしなくなった要因には「訪問看護師と医師が連絡をとることで安心できる」「緊急時の対応で症状が軽減する経験を重ねた」などである.在宅高齢者への支援では「緊急性が高い状態を記載したものを渡し説明する」「症状変化対応のフローを作成し,家族がそれに沿って対応した上で困った場合には連絡するよう説明する」などである.

Ⅳ. 考察

1. 在宅高齢者の救急車頻繁利用減少の要因

在宅高齢者が救急車の頻回用をしなくなった要因について,18項目から13項目に精選されたが,大項目の3つは支持された.要因は,症状理解と対応ができるようになったこと,医療者を信頼し在宅で病院と同様に必要な医療を受けられることを理解したこと,病院ターミナルから在宅ターミナルへの切り替えであった.信頼できる医療者の支援を受け,高齢者自身の症状理解と対応ができるようになると,在宅ターミナルも可能と思えるようになり,多少の症状変化も高齢者・家族で対応し救急車を呼ばなくなると考えられた.

加齢に伴う身体的変化では,からだの恒常性維持が十分に機能しなくなるため,少しの環境変化等でも影響は大きい.本研究では心不全の高齢女性の事例を設定しての調査結果であり,さまざまな要因により心不全は憎悪し,症状が出現しやすいため,救急車を利用することに繋がっていた.そのため医療者の支援による安心感は大きいと考えられる.相談できる医師に診てもらえ,訪問看護師がいつでも対応してくれ,気になることは教えてくれることで少しの症状変化には対応できるようになったと考えられる.

Mishel & Braden(1988)の「病気の不確かさモデル」では,不確かさは,認知能力,構造提供因子,刺激因子に影響を受けて認知され,構造提供因子は,信頼できる専門家,ソーシャルサポート,教育レベルからなる.本研究結果では,「医師に相談できるようになる」「訪問看護師が薬の作用副作用と検査結果の意味を教えてくれる」「気になることがあれば,いつでも訪問看護師に連絡できる」など,信頼できる医療の専門家から支援されていることが病気の不確かさを軽減していたと考えられた.またMishel & Braden(1988)は,病気の症状が予測できない,一定しない時に不確かさが生じ,症状が疾患と結びつけられないときには,高レベルの不確かさを生じさせると述べている.つまり理解できない状態が不安に繋がるのだが,自分の病気と症状が理解できると,漠然とした不安が軽減すると考えられた.

在宅高齢者が医療者に求めるものは,13の下位項目「医師に相談できるようになった」「気になることがあれば,いつでも訪問看護師に相談できる」等が支持されたように,気軽に相談できるような関係と考えられた.急性期の病院では,患者にとって医療者は非常に忙しそうで,声をかけにくい状況もあると思われる.医師からの治療の説明場面でも,患者が十分理解しているか分からないとの報告(山内ら,2023)もあり,質問できない状況も多いと考えられる.医療者への信頼関係構築には,本音が言える医療者との出会いが影響すると報告(松元,2019)されているが,相談しやすい関係が信頼関係を築くと考えられる.宇野澤・鶴若(2023)は,患者は医師に対して専門家ではなく温かい人間性や,温かい雰囲気を持っていること,横柄な態度をしないこと,共感的であることなどの態度に重きを持つと述べている.在宅高齢者は,支援者である医師,訪問看護師が,医療の専門家であることに加え,豊かな人間性が感じられると信頼し,関係を築くと考えられた.

在宅ケアでは生活の場で一定の時間関わり,話の幅も広がり関係を築きやすい.そのような関係の中で相談しやすい対象になり,信頼できる専門家として受け入れられていると考えた.

病院ターミナルから在宅ターミナルへの切り替えについては,本研究の事例が90歳であったことが影響していると考えられた.2023年の平均寿命は男性81.09歳,女性87.14歳であり(厚生労働省,2024),内閣府(2014)の調査では「支えられるべき高齢者」の年齢は75歳以上と考える意見が多かった.現在の高齢者は「若返り」現象がみられており,64~75歳では心身の健康は保たれており,活発な社会活動が可能な人が大多数を占めている(日本老年学会・日本老年医学会,2017).秋山(2006)は,75~84歳と,85歳以上は様子を異にしており,85歳以上では,疾病による変化に加え,老化に伴う身体機能の低下により回復不能な状態の結果,死に至ることが多いと述べている.病院ターミナルから在宅ターミナルへの切り替えについては,平均寿命以上の年齢であり,老化に伴う身体機能の低下が回復不能な状態になりうると予測できる年齢の場合に限定されると考えた.

2. 在宅高齢者の療養生活継続への支援

在宅高齢者への支援については,21項目から20項目に精選されたが,ほとんどの項目が支持され,在宅高齢者が救急車の頻回利用をしなくなった要因を踏まえると,緊急性の高い状態を説明し,いつでも対応することが支援として必須と考えた.

死亡前最低1ヶ月在宅医療・看護サービスを利用していた高齢者では,死亡月にほとんど救急外来を受診していなかったとの米国の報告がある(Smith et al., 2012).日本とは医療制度が異なるが,在宅医療・看護サービスは救急車利用を減らすことに繋がっている.療養生活を送る高齢者では疾患の根治困難に加え,加齢自体が回避困難であり少しの症状変化も死が身近であり不安が増強すると思われる.救急外来受診後帰宅する患者に対し,救急看護認定看護師は,症状の悪化や異常についての次回受診のタイミング,予測・出現し得る症状の対処方法等の説明等を行う(山口・瀬戸,2019).医療者からの緊急性の高い状態の説明に高齢者自身が納得できると,症状変化が漠然とした不安に繋がらず,落ち着いて行動できると考えられる.

また,いつでも対応する医師・訪問看護師の支援は,安心感につながっている.介護保険での緊急時訪問看護加算を91.7%,医療保険での24時間対応体制加算を91.1%の訪問看護ステーションが届け出ており(公益財団法人日本看護協会,2023),多くがいつでも対応できる体制をとっている.また必要に応じて往診等の対応ができる在宅療養支援診療所がある.24時間対応体制は,在宅高齢者にとって大きな安心に繋がると考えられる.

救急安心センター事業(#7119),選定療養費の徴収などにより緊急性の低い救急搬送利用への減少に効果が報告されているが,高齢者による#7119の相談割合は高くはなく(総務省消防庁,2024b),選定療養費の徴収率も成人の方が高い(松阪市,2024茨城県,2025).対策はとられており,緊急性が低い救急搬送への一定の効果がみられているものの,緊急性が低いにも関わらず救急車を呼ぶ高齢者の状況については着目されていない.本研究により高齢者が救急車を頻回に呼ばなくてもよいと思える認識と対処,そのための支援について明らかにすることができた.救急車を頻回利用しなくてもよいことは,安定した療養生活の継続であり,高齢者のQOLの維持向上に繋がると考える.

3. 本研究の限界と今後の課題

在宅高齢者の救急車頻繁利用減少の要因と療養生活継続への有効な支援について,訪問看護師を研究協力者に意見を求めた研究であり,研究協力者には職種の偏りがある.有効な支援については,他の支援者の意見もふまえ検討する必要がある.また本研究では,焦点を絞るために事例を用いたが,心不全高齢者の支援内容に範囲が限定され,研究目的と質問紙の項目作成プロセスの一貫性に欠けたことは否めない.高齢者の救急車頻繁利用減少については疾病や状態の違いによっては,さらに新たな知見が得られると考えられる.

今後は,在宅高齢者の救急車頻繁利用減少の要因と療養生活継続への支援について,多くの関係職種を対象として調査を行い検討することが課題である.

Ⅴ. 結論

緊急性が低い救急車利用へはさまざまな対策により効果が報告されている.本研究では救急車を頻回利用していた高齢者への医療職の支援に焦点をあて,緊急性が低い救急車利用への対策を明らかにした.高齢者が頻回に救急車を利用する理由を踏まえ,高齢者が救急車の頻繁利用をしなくても良い要因としては高齢者の認識に焦点をあて,そのための支援については医師と訪問看護師の支援のありように焦点をあて明らかにした.

在宅高齢者が救急車の頻回利用をしなくなった要因は,症状理解と対応ができるようになったこと,必要な在宅医療を受けられること,病院ターミナルから在宅ターミナルへの切り替えであった.そのためには,緊急性の高い状態を説明し,いつでも対応する支援が必要であった.なお,病院ターミナルから在宅ターミナルへの切り替えは,平均寿命以上の年齢であり,老化に伴う身体機能の低下が回復不能な状態になりうると予測できる年齢の場合に限定されると考えた.

付記:本論文の内容の一部は,第28回日本在宅ケア学会学術集会において発表した.

謝辞:本研究にご協力いただきました皆様に深く感謝申し上げます.本研究は,JSPS科研費20K11142の助成を受けたものです.

利益相反:本研究における利益相反は存在しない.

著者資格:HMは研究の着想・計画,データ収集・分析,論文執筆まで研究全体のプロセスを行った.HOとSKは,計画,データ収集・分析,論文執筆に関する研究全体への助言を行った.著者全員が最終原稿を読み承認した.

文献
 
© 2025 公益社団法人日本看護科学学会
feedback
Top