日本看護科学会誌
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総説
現在の日本における「手術室の看護師の役割」の概念分析
山下 奈緒子武智 尚子永田 明
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2025 年 45 巻 p. 624-635

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Abstract

目的:現在の日本の手術医療に対応した手術室の看護師の役割の概念の構成する構造を明らかにする.その後,日本における手術室の看護師の役割を定義することを目的とした.

方法:分析の方法は,Walker & Avantの手法を用いた.辞書,書籍などに掲載されている定義,関連概念との相違を検討後,35文献を対象に属性,先行要件,帰結を抽出した.

結果:属性は『術中看護のための臨床判断』『患者の権利擁護』『術中の安全対策』『安心の提供』が同定された.先行要件及び帰結は各々3項目であった.日本における手術室の看護師の役割は,「術中看護のための臨床判断をおこない,患者の権利擁護を踏まえて術中の安全対策と安心の提供を行う」と定義した.

結論:時代の流れにより変化した日本における手術室の看護師の役割の特徴を明示できた.この概念の構造は日本における手術室の看護師に対する看護実践モデルの開発の資料として活用できる.

Translated Abstract

Objective: This study aimed to investigate the conceptual structure of operating room (OR) nurses’ roles within contemporary surgical care in Japan and to define their role.

Methods: The concept analysis method by Walker and Avant was employed. Definitions and distinctions from related concepts were examined using dictionaries and relevant literature. Attributes, antecedents, and consequences were extracted from 35 published papers.

Results: The attributes identified were “clinical judgment for intraoperative nursing,” “advocacy for patient rights,” “intraoperative safety measures,” and “providing reassurance.” There were three prerequisites and three consequences for each attribute. The role of OR nurses in Japan was defined as “conducting clinical judgment for intraoperative nursing, implementing intraoperative safety measures, and providing reassurance while upholding patient rights.”

Conclusion: This study investigated the characteristics of the role of OR nurses in Japan, highlighting how they have evolved in response to societal and clinical changes. This conceptual framework can be utilized as a reference for developing a nursing practice model for OR nurses in Japan.

Ⅰ. 緒言

日本の手術医療は,高齢化かつ手術適応患者の拡大に伴う手術需要の増加と医療ロボットによる遠隔手術といった手術の高度化・多様化が進んでいる.手術医療は,安全性を高めるために多種多様な医療者による「チーム医療」に変化している.手術室の看護師は手術看護認定看護師,手術看護実践指導看護師などのより専門性の高い人材の育成がされ,医療チームの中で専門性を発揮することが期待されている(山本,2021).また,「医師の働き方改革」の取り組みとして,看護師の周術期特定行為(厚生労働省,2018)や臨床工学技士の手術補助業務(厚生労働省,2020)へタスク・シフト/シェアが導入されている.これらの背景から,手術室の看護師の役割は変化していることが予測される.

近年の日本における手術室の看護師の術前の活動として,術前評価や意思決定の支援などが示されている(日本手術看護学会,2020).術前訪問は,手術室の看護師が病棟に行き手術中の看護問題をアセスメントするために行われていたが,在院日数の短縮により術前評価のタイミングは術前外来へと移行し(山本,2018),術前外来に手術室の看護師が参画して問診,アセスメント,禁煙指導など実施しており(中村・古賀,2021),介入する場や内容が変化している.また,近年は他職種と連携し,コーディネーターの役割を果たすことやチームメンバーが役割遂行できような環境作り(乾ら,2020)が求められるようになった.一方で,手術室の看護師を取り巻く環境は,手術件数の増加に伴う手術室の看護師不足(堀田,2015溝部ら,2021)の状況にあり,期待される活動を熟すには人的・時間的制約という大きな問題が危惧される.これらの日本の手術室の看護師を取り巻く環境は時代とともに変化が生じており,手術室の看護師の役割の構造や定義を見直し,現状に対応した手術室の看護師の役割を明確にする必要がある.

欧米の手術室の看護師の役割に関する研究では,Kalideen(1994)は手術看護コースに登録している手術室看護師15名にインタビューをし,手術室の看護師の役割は全人的ケアの提供,安全な環境の監視と維持,治療的な行動が高水準で実践されることと定義している.それ以降,手術室の看護師の役割の定義に関する報告はされておらず,手術室の看護師の役割の定義は長期にわたり見直されていない.日本の手術室の看護師の役割に関する研究では,経験年数に伴う看護実践能力(吉川,2012福田ら,2021),業務内容(山本ら,2023),術前訪問及び術前外来(松嵜・宮脇,2018山本ら,2018溝部ら,2021),麻酔補助(小林・齋藤,2023)などの看護実践の実態調査とその課題に関する報告が多くみられる.手術室の看護師は,手術看護が周術期看護に発展したことで膨大なケアが含まれたことから手術室の看護師の役割を正確に表現することが困難となっていると指摘されている(McGarvey et al., 2000).日本の手術看護では,看護実践の実態調査とその課題に関する報告は多くみられる一方で,手術室の看護師の役割の定義や役割のモデル構築などの研究が立ち後れている現状がある.

McGarvey et al.(2000)は,進化する周術期医療において手術室の看護師の役割がさらに明確化され検討されない限り将来的な役割開発の根拠として薄弱なものでしかないと懸念しており,看護実践のための理論的基盤を構築するために手術室の看護師の役割のさらなる探求が必要であると提起している.本研究では,周術期看護の発展のために,近年の日本の手術医療に対応した手術室の看護師の役割(以下,手術室看護師の役割)についてあらためて概念分析を行い,それらの概念を構成する構造を明らかにし,手術室看護師の役割について定義することを目的とする.

Ⅱ. 研究方法

1. データ収集方法

現在の日本の手術医療に対応した手術室看護師の役割について定義することが目的であるため,データベースは医学中央雑誌とCiNii ResearchのWeb版を使用し,キーワードは「定義」or「役割」,and「手術室看護師」or「手術室看護」or「周術期看護」とした.Walker & Avant(2011)は,概念が使用される文脈や時代背景を十分に考慮することを推奨しており,概念の意味や使用状況が時代背景や医療環境の変化に応じて変容する可能性が高い.本研究では現状に即した概念の意味を把握するために過去10年の文献を対象とすることとし,発行年を2014年から2024年までと設定した.また,Walker & Avant(2011)は「原著論文の中では概念が実際にどのように測定・操作・解釈されているかが具体的に示されるため,“活きた概念使用”の抽出が可能である.これは,概念の意味範囲や属性,先行要件や帰結を導くうえで信頼性が高い」と報告しており,論文種類を原著論文と限定した.検索の結果,258件の文献が抽出され,そこからタイトルと抄録を読み,重複文献と研究対象者が手術室看護師以外の文献を除外し,91件となった.91件の文献は内容を確認し,そこから手術室看護師以外が研究対象者である文献,研究内容の信頼性の観点から5ページ未満の文献,手術室看護師の役割と関連がない文献を除外し,34件となった.さらに分析の対象文献の本文内で引用されている文献をハンドサーチし,文献の選定条件を確認し,1件の文献を加えて35件の文献を分析対象とした(図1).

図1  論文選定のプロセス

2. 概念分析の方法と手順

本研究は,手術室看護師の役割の先行要件,属性,帰結からなる概念の基礎を明らかにし定義することを目的としている.そのため,概念の構造を明らかにし概念間の類似点や相違点を説明することのできるWalker & Avant(2005/2008)の手法を用いて概念分析を行った.辞典や書籍,先行研究論文などを分析の対象として概念構築の背景を検討したのち,概念の構造を明らかにするため,①関連概念との相違,②概念の属性,③モデル例の提示,④先行要件と帰結を明らかにし,概念の定義を検討した.分析では,対象文献を基に属性,先行要件,帰結についてマトリックス表を作成し整理した.①関連概念の相違の検討のために,あらゆる分野の書籍や辞書,シソーラスなど利用可能な文献を使用し,概念のできるだけ多くの使用方法について明らかにした.次に,②概念の属性を明らかにするために,分析対象文献から手術室看護師の役割について検討した.さらに,③モデル例として,典型例,相反例,境界例の検討を行い,④マトリックス表をもとに先行要件と帰結を明らかにした.

3. 倫理的配慮

全て公開後の文献を用い,引用する場合には出典を明らかにし,著作権を侵害しないことに加え,分析の際は著者の意図を損なわないよう配慮した.

Ⅲ. 結果

1. 概念構築の背景

アメリカと日本における手術室看護師の歴史的変遷について検討した結果,最も古い報告は1862年にクララ・バートンが戦地に赴き麻酔を担当し,外科手術を手伝ったことであった(Hallett, 2010/2014).アメリカでは1889年に手術室看護が最初の看護専門分野となり(Groah, 1983/1987),1969年にAORN(Association of Operating Room Nurses)は「手術室専門の看護は生理学的,心理学的および社会学的な患者のニーズと個々の看護ケアの展開と実施を明らかにし,自然科学および行動科学の知識に基づいた看護行動で,外科的介入の前,中,後の患者の健康と幸福を回復,保持することになる」と定義している(Groah, 1983/1987).その後,1978年にAORNは「手術室看護」ではなく「周手術期看護」という用語を用いて,「周手術期看護」とは「手術室看護婦の役割は患者の外科体験の手術前,中,後期間,専門手術室看護婦の行う看護活動から構成される.手術室看護婦は周手術期の役割をはじめのレベルでは,自分の経験と実行能力によっていると考える.しかし,知識と手技を獲得するにしたがい,高度の実技段階に次第に進歩するものである」と再定義している(Groah, 1983/1987).日本では病棟看護師が手術の介助を兼務していたが,1955年に病院の中央化に伴い手術室専属の看護師が配属され(石橋ら,2016),直接手術介助と間接介助者・患者観察者を行っていた(山本,1962).1980年代,西沢氏は「手術室看護とは手術室において手術を受ける患者の専門看護婦による看護であり,その看護婦は,術前訪問をして情報を得,術中看護の計画を立て,術中にその計画を実施し,術後結果の評価をする,いわゆる周手術期看護であります.つまり,麻酔科医や外科医そのほか関連する人々と協力して,手術室看護婦は,手術の間,正常なコミュニケーションの手段を失っている患者に変わって代弁者となり,患者の擁護者となる立場をとるわけである」と定義している(石橋ら,2016).その後,日本手術看護学会(2020)は「周術期看護」ことばを,「患者,家族が手術を決定したときから,手術室へ入室し,手術の準備から術中,手術を終えて,手術室を退室し,手術侵襲から回復するまでのプロセスに関わる看護とする.手術室看護師は 周術期にある患者に対して,術中を中心として,安全・安心な看護を提供すること」と定義している.

「手術室看護師の役割」については,AORNにより「患者を中心として周手術期のプロセスに沿った看護を展開すること」と提唱され(井上,2003),Kalideen(1994)は「全人的ケアの提供,安全な環境の監視と維持,治療的な行動が高水準で実践されること」と定義している.日本では,日本手術看護学会手術看護基準・手順委員会(2017)が手術看護基準のなかに「手術室看護師の役割は手術期における患者の安全を守り,手術が円滑に遂行できるように専門的知識と技術を提供することにある」と示している.また,ミルズ(2024)は「手術室看護師の継承すべき役割は安全な手術を提供するために,術前・術中・術後の過程において,麻酔・疾患・術式の理解,適切なコミュニケーションやアセスメント能力を持って,手術を受ける患者に対して術中の看護を提供し,術後への情報提供を行うと共に術中看護の評価をすることである」と述べている.

2. 関連概念との相違

手術室看護師の役割について文献検討すると,「役割」の代用語として「機能」や「専門性」という用語が用いられていた.

一般的な「役割」という用語の意味は,割り当てられた役目や任務とある(見坊ら,2022).心理学における役割は,生体が働く仕組みや生物の生理・機能の意味と社会化の過程を経て特定個人に対して適切な状況下でそれを自覚的に遂行することを要求するような一定の役回りを意味する(中島ら,2018).社会学における役割は,それぞれの地位にふさわしい振る舞いのパターンを意味する(中島ら,2018).役割の概念は特定の外面的な行動を形式的に支持することもあれば,規範的に期待される行動,特定の地位と整合的な行動などを表すこともあり,任務,職務,使命,責務,タスク,仕事,業務,地位,立場と同じ意味をもつことがある.一方で,タスク,仕事,業務は,さまざまな仕事や業務などの集団によりひとつの役割をなすことから役割の下位概念といえる.

「機能」という用語の意味は,物のはたらき,その後に連関し合って全体を構成している各因子が有する固有な役割,その役割を果たすこととある(新村,2008).組織における機能は,組織目標の達成とそれ自体に求められることを意味する(富永,1980).機能は作用と言い換えることができ,人間や動物や機械や集団などに広く使用される.機能の概念の中に役割という言葉が示されており,役割とはある主体に割り当てられた役目それ自体であり,機能とは割り当てられた役目を果たすための具体的な働きを意味する(藤田,2017).このことから,機能は役割を内包した用語といえる.

「専門性」という用語の意味は,ある分野において深い知識や経験が求められること,関わりがあることやその度合いを意味し,専門職がもつべき資質や態度を表すことがある(Weblio辞典,2011).「看護師の専門性」とは有資格者による業務の代替不能性であり,組織における在り方そのものに代替不能性が重なるという特徴をもっているため(久米・久米,2012),個人やチームや組織のレベルで用いられる.佐藤ら(2004)は,「手術看護の専門性」とは患者を中心に展開される看護のことをいい,専門的知識に裏付けられた行動,チームの一員でかつ調整役,マネジメントの特徴があると述べている.看護における専門性は看護に必要な知識や技術や態度等を持ち合わせている状態のことをいい,それは看護の提供という役割を果たすために用いられることから,専門性は役割に内包される用語と考えられる.

3. 概念の属性(attributes)

日本の手術室看護師の役割を内包する35件の文献を分析した.手術室看護師の役割の属性として,『術中看護のための臨床判断』,『患者の権利擁護』,『術中の安全対策』,『安心の提供』の4つが抽出された(表1).

表1 現在の日本の手術室看護師の役割における属性

属性 文献
術中看護のための臨床判断 術前訪問・外来による情報把握やアセスメント 三澤ら,2014)(松浦・亀岡,2015)(岡田ら,2015)(住田・太田,2015)(堀ら,2016)(石橋,2016)(石森,2016)(須藤,2016)(竹村ら,2016)(日永田ら,2017)(三淵ら,2017)(松嵜・宮脇,2018)(福田・中村,2019)(伊藤,2019)(小川,2019)(姫野,2020)(乾ら,2020)(石橋,2020)(中山ら,2020)(土屋ら,2020)(足利ら,2021)(溝部ら,2021)(古島,2022)(三淵・青井,2022)(中村・白鳥,2022)(加藤・長戸,2023)(小林・齋藤,2023)(内田・城丸,2023)(山本ら,2023)(安東・石川,2024)(ミルズ,2024
術後訪問による評価 石井,2015)(住田・太田,2015)(竹村ら,2016)(小川,2019)(乾ら,2020)(山本ら,2023)(ミルズ,2024
術後の振り返り 三澤ら,2014)(坂本,2015)(住田・太田,2015)(福田・中村,2019)(乾ら,2020
患者の全体像を立体的に捉える 住田・太田,2015)(竹村ら,2016
患者の権利擁護 患者の擁護者としての行動・患者の代弁者 三澤ら,2014)(福田・中村,2019)(姫野,2020)(中村・白鳥,2022)(安東・石川,2024
患者と家族が望むケアの提供 坂本,2015)(石橋,2016)(竹村ら,2016)(小川,2019)(姫野,2020)(三淵・青井,2022)(山本ら,2023)(安東・石川,2024)(ミルズ,2024
患者の立場に立った関わり 住田・太田,2015)(福田・中村,2019)(古島,2022)(三淵・青井,2022)(安東・石川,2024
術中の安全対策 インシデントの予防 ・体内異物残存防止対策 堀ら,2016)(山本ら,2023)(ミルズ,2024
・医療事故防止 松本・菅原,2014)(堀ら,2016
・転倒予防 松本・菅原,2014
術中合併症の予防 ・体位固定の管理 松本・菅原,2014)(堀ら,2016)(姫野,2020)(乾ら,2020)(三淵・青井,2022)(山本ら,2023)(安東・石川,2024
・体温管理 松本・菅原,2014)(小川,2019)(山本ら,2023)(安東・石川,2024
・感染予防対策 松本・菅原,2014)(住田・太田,2015)(石橋,2020)(ミルズ,2024
安心の提供 患者の緊張・不安の軽減/ケアリングの実践 松本・菅原,2014)(三澤ら,2014)(石井,2015)(竹村ら,2016)(福田・中村,2019)(伊藤,2019)(小川,2019)(姫野,2020)(乾ら,2020)(足利ら,2021)(古島,2022)(三淵・青井,2022)(加藤・長戸,2023)(山本ら,2023)(安東・石川,2024)(ミルズ,2024
術前オリエンテーションの実施 三澤ら,2014)(石橋,2016)(石森,2016)(松嵜・宮脇,2018)(福田・中村,2019)(伊藤,2019)(小川,2019)(姫野,2020)(溝部ら,2021)(中村・白鳥,2022)(加藤・長戸,2023)(山本ら,2023)(安東・石川,2024)(ミルズ,2024
家族の緊張・不安の軽減 三澤ら,2014)(姫野,2020)(三淵・青井,2022)(山本ら,2023
家族への術中訪問による情報提供 松本・菅原,2014)(福田・中村,2019

『術中看護のための臨床判断』として,術前訪問・外来による情報把握やアセスメント,術後訪問による評価,術後の振り返り,患者の全体像を立体的に捉えるの4つの項目が明らかになった.『患者の権利擁護』として,患者の擁護者としての行動・患者の代弁者,患者と家族が望むケアの提供,患者の立場に立った関わりの3つの項目が明らかになった.なお,患者の代弁者・擁護者は『患者の権利擁護』に包括される用語であり,本研究では患者と家族が望むケアや患者の立場に立った関わりも抽出されたことから『患者の権利擁護』と命名した.『術中の安全対策』として,インシデントの予防,術中合併症の予防の2つの項目が明らかになった.『安心の提供』として,患者の緊張・不安の軽減/ケアリングの実践,術前オリエンテーションの実施,家族の緊張・不安の軽減,家族への術中訪問による情報提供の4つの項目が明らかになった.

4. モデル例の提示

モデル例として,著者が創作した典型例,相反例,境界例を以下に示す.

1) 典型例:属性をすべて含む手術室看護師の活動を示す.

手術室看護師のXは,60代女性Aさんが受ける頸椎後方除圧固定術の外回り看護師となった. 術前訪問で,手術室入室から退室までの説明を行った.Aさんが術後の痛みについての不安を訴えたため,術後疼痛の管理は確実に行われることを説明した.疾患の特性から,上肢の運動状態,感覚機能の状態を確認した.さらに手術体位が腹臥位のため,胸部や腸骨部の皮膚の状態を確認し,最後にリラックスできるような音楽を流して欲しいという希望を確認した.手術当日,Aさんが希望する音楽を手術室内に流し,受け入れ準備を行った.手術台に横になってもらった後は,これからAさんに行われることを丁寧に説明した.麻酔導入・挿管介助を行うと,膀胱留置カテーテルを挿入した.胸部から大腿まで掛け物をかけて必要以上の露出を避けた.医師と協力しながら,Aさんを腹臥位にした.その際も,不要な露出を避けるように掛け物をかけた.体圧がかかる部分には,皮膚のトラブルを予防するための除圧処置を行った.さらに術前訪問の結果をもとに,良肢位に調整して固定した.その後,保温目的で掛け物と温風式加温装置のブランケットもかけた.医師らとともにタイムアウトの確認をして手術が開始された.Xは,術中にAさんの末梢の冷感を確認すると,温風式加温装置で温風を送った.手術が終了し,皮膚の状態を確認した.抜管されるとAさんに喀痰と深呼吸を促した.手術室退室間際に,再度皮膚の状態を確認し,前胸部に発赤がみられた.上肢の感覚機能の状態も確認した.病棟看護師に,それらを引き継いだ.Xは,手術の数日後に術後訪問を行い,前胸部に生じた発赤の消失,上肢の運動状態,感覚機能の状態を確認した.最後に,Aさんにねぎらいの言葉をかけて退室した.

2) 相反例:属性が全く含まれない手術室看護師の活動を示す.

手術室看護師のYは,翌日胃がんで胃全摘術を受ける50代の男性Bさんの外回り看護師を担当することとなった.当日,Yは準備に追われていたため,Bさんに対して名乗ることもなく,目を合わせずに簡単な挨拶だけをして,無言で手術室へ案内した.Bさんが緊張した面持ちであったが,Yはその様子に気づくことなく,流れ作業のように手術台に横になるように指示し,体位固定を進めた.体位を調整する際には,露出に配慮せず,衣類や掛物を最小限しか使用しなかったため,患者の身体が必要以上に露出した状態となった.さらに,術前の皮膚保護の確認や保温の配慮を行わないまま,医師の指示に従ってカテーテル挿入や体位保持を行った.タイムアウトの確認にも形式的に関わるのみで,他職種との情報共有も不十分であった.術後,Bさんが覚醒した際には麻酔科医が声をかけていたためYは声をかけなかった.病棟看護師への申し送りは簡略化され,皮膚状態や術中の対応についての説明は省略された.

3) 境界例:属性の『患者の権利擁護』が含まれない手術室看護師の活動を示す.

Zは,肺がんの40代女性Cさんが受ける胸腔鏡下肺葉切除術の外回り看護師の役割となった.術前訪問で,手術室入室から退室までの説明を行った.Cさんが術後の痛みについての不安を訴えたために,術後疼痛の管理は確実に行われることを説明した.体位が側臥位のために,上肢の可動域,大転子部の皮膚の状態を確認した.最後に,リラックスできるような音楽を流して欲しいという希望を確認した.手術当日,Cさんが希望する音楽を手術室内に流し,受け入れ準備を行った.手術台に横になってもらった後は,これからCさんに行われることを丁寧に説明した.麻酔導入・挿管介助を行った.その後,膀胱留置カテーテルを挿入し,医師と協力しながらCさんを側臥位にした.その際,掛け物がかけられず身体の露出がみられた.体圧がかかる部分には除圧処置を行い,皮膚のトラブルの予防を行った.さらに術前訪問の結果をもとに良肢位に調整して固定し,保温目的で掛け物と温風式加温装置のブランケットをかけた. 医師とともに,タイムアウトの確認をして手術が開始された.Zは,術中にCさんの手足に触れ冷たくなっていることを確認すると,温風式加温装置のブランケットと本体を接続して温風を送った.手術が終了し,大転子部の皮膚の状態を確認した.抜管されるとCさんに喀痰と深呼吸を促した.病棟看護師にそれらを引き継いだ.Zは,手術の数日後に術後訪問を行い,大転子部の皮膚の状態を確認した.最後に,Cさんにねぎらいの言葉をかけて退室した.

5. 先行要件と帰結

1) 先行要件(antecedents)

先行要件は3つに分類された(表2).『看護師自身』に関する先行要件として,個人のスキルの向上,自己成長・キャリア形成,手術室看護師に必要な素質,災害や医療事故に対する備えの4つの項目が明らかになった.『医療チーム』に関する先行要件として,多部署・多職種との連携の1つの項目が明らかになった.『組織』に関する先行要件として,手術器械・物品等の管理,手術室運営の2つの項目が明らかになった.

表2 現在の日本の手術室看護師の役割における先行要件

先行要件 文献
看護師自身に関する先行要件
個人のスキルの向上 専門的な知識と技術の獲得,麻酔・術式・手術の特徴を理解すること 三澤ら,2014)(松浦・亀岡,2015)(岡田ら,2015)(住田・太田,2015)(日永田ら,2017)(福田・中村,2019)(乾ら,2020)(石橋,2020)(三淵・青井,2022)(加藤・長戸,2023)(内田・城丸,2023)(安東・石川,2024
研修や学習会への参加 岩崎ら,2019)(中山ら,2020)(土屋ら,2020)(小林・齋藤,2023
麻酔科医と一緒に対応できるアセスメント力 乾ら,2020)(安東・石川,2024
先輩の指導 松浦・亀岡,2015)(福田・中村,2019
自己成長・キャリア形成 経験 三澤ら,2014)(堀ら,2016)(竹村ら,2016)(乾ら,2020)(石橋,2020)(ミルズ,2024
キャリア形成・キャリアアップ 竹村ら,2016)(石橋,2020
認定制度 石橋,2020)(ミルズ,2024
失敗体験 竹村ら,2016)(加藤・長戸,2023
成功体験 竹村ら,2016)(三淵・青井,2022
自己研鑽 住田・太田,2015)(石森,2016
手術室看護師に必要な素質 代弁者になることの意識・患者を全人的に捉えること 三澤ら,2014)(石井,2015)(中村・白鳥,2022
麻酔下の倫理的な問題を意識すること 安東・石川,2024
術野の流れを保とうとすること 竹村ら,2016)(福田・中村,2019)(古島,2022)(加藤・長戸,2023
使命感 三澤ら,2014)(坂本,2015)(福田・中村,2019
責任感 坂本,2015)(石橋,2020)(三淵・青井,2022
コミュニケーションスキル 乾ら,2020)(石橋,2020)(ミルズ,2024
専門職としての姿勢 住田・太田,2015)(中村・白鳥,2022)(ミルズ,2024
患者への関心 石井,2015)(住田・太田,2015)(福田・中村,2019
判断力 堀ら,2016)(乾ら,2020
モチベーション 日永田ら,2017)(溝部ら,2021
先を読む力 竹村ら,2016)(乾ら,2020
災害や医療事故に対する備え 防災意識 岩崎ら,2019)(土屋ら,2020
発生する可能性のある問題の予測 乾ら,2020)(ミルズ,2024
事故例の振り返りから安全管理を学習すること 安東・石川,2024
医療チームに関する先行要件
多部署・多職種との連携 医師と連携,特殊事例の情報共有 三澤ら,2014)(松浦・亀岡,2015)(日永田ら,2017)(溝部ら,2021
病棟看護師との連携,情報共有 三澤ら,2014)(石井,2015)(松嵜・宮脇,2018)(姫野,2020)(足利ら,2021
外来・病棟・手術室の看護師・他領域の認定看護師との連携 松嵜・宮脇,2018)(溝部ら,2021
手術室看護師間での情報共有 岡田ら,2015)(乾ら,2020
他職種との連携 石橋,2020)(中山ら,2020)(溝部ら,2021)(三淵・青井,2022)(加藤・長戸,2023
医師・他職種とコミュニケーションをとること 松浦・亀岡,2015)(日永田ら,2017)(安東・石川,2024
医師や薬剤師に働きかけること 乾ら,2020
術操作や医師の特性の理解 堀ら,2016)(福田・中村,2019)(乾ら,2020)(古島,2022)(安東・石川,2024
術野や状況をみて先を読むマネジメント 竹村ら,2016)(古島,2022)(ミルズ,2024
麻酔補助 石橋,2020)(小林・齋藤,2023)(山本ら,2023
組織に関する先行要件
手術器械・物品等の管理 手術器材や資材の準備や管理 松本・菅原,2014)(岡田ら,2015)(堀ら,2016)(日永田ら,2017)(福田・中村,2019)(古島,2022)(山本ら,2023)(ミルズ,2024
手術進行に合わせた物品・環境管理 岡田ら,2015)(堀ら,2016)(福田・中村,2019)(古島,2022)(山本ら,2023
薬剤の準備や管理 竹村ら,2016)(足利ら,2021)(山本ら,2023
手術室運営 人材育成 岡田ら,2015)(堀ら,2016)(竹村ら,2016)(日永田ら,2017)(松嵜・宮脇,2018)(中山ら,2020)(溝部ら,2021)(加藤・長戸,2023)(安東・石川,2024
マニュアル化 堀ら,2016)(溝部ら,2021)(山本ら,2023
待遇の充実 松浦・亀岡,2015)(須藤,2016)(竹村ら,2016)(石橋,2020)(内田・城丸,2023)(ミルズ,2024

2) 帰結(consequences)

帰結は3つに分類された(表3).『患者』に関するアウトカムとして,患者がリラックスして前向きに手術を受けられること,患者からの感謝の言葉やフィードバックがあること,術中合併症が起こらないこと,安全・安楽が保証されること,患者と家族が退院後の生活に対する準備ができること,家族のもとに患者を無事に帰すことの6つの項目が明らかになった.『看護』に関するアウトカムとして,看護スタッフの成長とやりがい,無事に終わった達成感があること,看護の質の維持と向上の3つの項目が明らかになった.『医療チーム』に関するアウトカムとして,手術がスムーズに早く終わること,手術室内のチーム力を発揮すること,インシデントレポートが少ないことの3つの項目が明らかになった.

表3 現在の日本の手術室看護師の役割における帰結

帰結 文献
患者に関するアウトカム
患者がリラックスして前向きに手術を受けられること 三澤ら,2014)(福田・中村,2019)(伊藤,2019)(姫野,2020)(乾ら,2020)(三淵・青井,2022)(安東・石川,2024
患者からの感謝の言葉やフィードバックがあること 竹村ら,2016)(松嵜・宮脇,2018)(福田・中村,2019)(小川,2019)(内田・城丸,2023)(安東・石川,2024)(ミルズ,2024
術中合併症が起こらないこと 坂本,2015)(乾ら,2020)(足利ら,2021)(三淵・青井,2022)(加藤・長戸,2023)(安東・石川,2024
安全・安楽が保証されること 三澤ら,2014)(住田・太田,2015)(松嵜・宮脇,2018)(福田・中村,2019)(乾ら,2020)(安東・石川,2024
患者と家族が退院後の生活に対する準備ができること 石井,2015)(福田・中村,2019)(姫野,2020
家族のもとに患者を無事に帰すこと 石井,2015)(福田・中村,2019)(姫野,2020
看護に関するアウトカム
看護スタッフの成長とやりがい 竹村ら,2016)(福田・中村,2019)(溝部ら,2021
無事に終わった達成感があること 坂本,2015)(福田・中村,2019)(内田・城丸,2023
看護の質の維持と向上 石橋,2020)(三淵・青井,2022
医療チームに関するアウトカム
手術がスムーズに早く終わること 住田・太田,2015)(堀ら,2016)(日永田ら,2017)(福田・中村,2019)(乾ら,2020)(足利ら,2021)(三淵・青井,2022)(加藤・長戸,2023)(安東・石川,2024
手術室内のチーム力を発揮すること 松本・菅原,2014)(乾ら,2020
インシデントレポートが少ないこと ミルズ,2024

6. 概念の定義

現在の日本における手術室の看護師の役割は,「術中看護のための臨床判断をおこない,患者の権利擁護を踏まえ術中の安全対策と安心の提供を行う」と定義した(図2).

図2  現在の日本における「手術室の看護師の役割」の概念モデル

Ⅳ. 考察

1. 現在の日本における「手術室の看護師の役割」の特徴

現在の日本における「手術室の看護師の役割」は4つの属性が抽出され,「術中看護のための臨床判断をおこない,患者の権利擁護を踏まえ術中の安全対策と安心の提供を行う」と定義された.

つまり,手術室看護師の役割は,術中の看護実践のために術前に患者のアセスメントを行い,患者の擁護者または代弁者として関わりながら患者と家族の緊張や不安を軽減する援助と術中合併症やインシデントを予防し安全に手術を進行する援助を行う.そして,手術後に実践した看護の評価や振り返る行為であった.前述のAORN(1978年)や日本手術看護学会(2020年)が示す周術期看護の定義では,術前,術中,術後の患者に関与することが示されていた.しかし,本研究の結果では,術前訪問や術後訪問などの手術室看護師の活動は,術中看護に必要なアセスメントや術中看護の評価に焦点をあてた活動であることが確認された.これは,石橋ら(2016)がとりあげた1980年代に西沢が示した手術室看護の定義に非常に近い内容であった.また,手術室看護師の術中看護には器械出し業務と外回り業務があり,外回り看護師の役割は「術前情報から患者の心身の状態を把握し,体温管理,手術体位による皮膚・神経障害の予防などを行う」とある(日本手術看護学会手術看護基準・手順委員会,2017).本研究の手術室看護師の役割の定義は,外回り業務の看護実践であることが示された.これは,分析対象の文献の中で器械出し業務のみに焦点をあてた文献が1件(古島,2022)であったことと,手術室看護師の看護実践に焦点をあてた文献においても外回り業務に関する内容が多かったことから,外回り業務の看護実践が中核的役割として示されたと考える.加えて,近年のタスク・シフト/シェアの推奨に伴い,外科医や臨床工学技士が器械出し業務を行う施設がみられている(山本ら,2023).また,欧米では看護師の資格のないスクラブテクニシャンが器械出し業務を専門に行っている(伊勢ら,2010).これらのことから,器械出し業務は他職種が代替できる役割と考えられる.一方で外回り業務は,患者の言語的および非言語的な反応に対応することが周術期看護の特徴であり(Mitchell, 2010),他職種による代替が利かない役割と考える.

属性の『術中の安全対策』は,手術室看護師の主軸の役割といえる.手術や麻酔は患者の命に直結するため(大西ら,2009),患者の心身の状態は変化しやすい.日本手術看護学会手術看護基準・手順委員会(2017)ミルズ(2024)の定義においても「安全の提供」が示されている.1999年に発生した複数の医療事故の背景などを踏まえ(石川,2021),医療安全対策の強化は求められている.近年,手術医療は高度化・複雑化しており,『術中の安全対策』は更なる質の向上が必要な役割といえる.『術中看護のための臨床判断』は,手術室看護師が手術を受ける患者を人として捉え(住田・太田,2015竹村ら,2016ミルズ,2024),累積した経験と手術看護のエビデンスを活かし,思考と判断をしながら看護実践することを示している.手術室看護師は,術式やマニュアルに即した看護過程を展開しているのではなく,患者の反応を解釈し,行動しながら個別性のある実践を行っている(土藏,2009).『患者の権利擁護』と『安心の提供』は,患者と家族を対象にした心理的支援と倫理的行動が確認された.これらは近年の定義に明示されておらず,手術室看護師の役割のあらたな概念といえる.心理的支援を行う看護師の存在自体が治療効果をもたらす(Mitchell, 2010).さらに,手術室では全身麻酔に伴い意識のない患者との関わりが多く(吉川,2012),周術期の診療における問題の多くは権利擁護が関係していると報告されている(Boyle, 2005).また,周術期の患者擁護者は周術期看護師の専門的役割と報告されている(Sundqvist et al., 2016).

先行要件として『看護師自身』,『医療チーム』,『組織』が示された.医療事故の要因には個人要因と組織要因があり(相僕,2012),手術医療における質と安全の向上にはノンテクニカルスキルを中心としたチーム医療の推進が不可欠である(谷口・渡谷,2024).これらの先行要件は,医療安全の観点から抽出されたと考える.『看護師自身』では,災害や医療事故に対する備え(岩崎ら,2019土屋ら,2020乾ら,2020安東・石川,2024ミルズ,2024)があらたに確認された.これは,2011年に初めて平日の通常業務時間内に起きた東日本大震災(岩崎ら,2019土屋ら,2020)を契機に防災意識が高まっているといえる.また,『看護師自身』では,責任感や先を読む力などの手術室看護師に必要な素質も確認された.手術室看護師は手術時間を短縮させ患者の負担を最小限に留まるように(栗本ら,2022)看護実践しており,手術室看護師に必要な素質は手術室看護師の特徴といえる.『医療チーム』では,多部署・多職種との連携が抽出された.手術室看護師は,手術に携わるチームにおいて円滑に手術が進行するようにマネジメントをしていた(竹村ら,2016古島,2022ミルズ,2024).また,術前または術後の医療チーム活動として情報共有を行っており(三澤ら,2014石井,2015松嵜・宮脇,2018姫野,2020足利ら,2021),ミルズ(2024)の示す「術後への情報提供」と類似していた.術前または術後の医療チーム活動における手術室看護師の役割は,術中の患者の状態について多部署や多職種に情報を提供する活動であった.また,手術に携わるチームは外科医や麻酔科医といった医師と手術室看護師との連携であったが,近年は薬剤師や放射線技師(谷口・渡谷,2024)などとも連携しており,時代の流れとともに「他職種」から「多職種」に変化しているといえる.『組織』は,手術器械・物品等の管理が抽出された.手術器械・物品等の管理は,円滑に手術を進行するための準備として『術中の安全対策』に関連した概念と考える.

帰結として『患者』,『看護』,『医療チーム』に関するアウトカムが示された.先行研究では,術前外来のアウトカムとして手術中止件数,手術延期件数,平均術前在院日数,消化器外科術後SSI(Surgical site infection)サーベイランスが報告されている(中村ら,2022).また,心臓手術における手術室での看護介入のアウトカムとして有害事象の減少,入院期間の短縮,術中出血量の減少,ICUの在院日数の減少,手術時間の短縮が報告されている(Shi et al., 2024).本研究の帰結では,これらの報告と同様に『患者』の術中合併症が起こらないことや『医療チーム』の手術がスムーズに早く終わることなど,手術室看護師の主軸の役割である『術中の安全対策』に対する指標が抽出されたといえる.また,『患者』の安全・安楽が保証されることとリラックスして前向きに手術を受けられることは,『患者の権利擁護』や『安心の提供』に対する指標が抽出されたといえる.『看護』は,手術室看護師が自己の成長や手術看護の専門性・独自性に価値を見出しており(福元,2024),看護師自身が知覚できる指標として示されたと推測する.

2. 現在の日本における「手術室の看護師の役割」の概念モデルの活用可能性

現在の日本における「手術室の看護師の役割」の概念は,災害や医療事故などの歴史的背景と人材育成制度や「チーム医療」の普及,タスク・シフト/シェアの伸展などの時代の流れにより,外回り業務の専門性が際立つ内容であった.本研究で明らかになった概念は,手術室の看護師として看護師が主体となり実践する役割が厳選され,行動レベルで具体的に示された.手術が高度化・多様化している現在の医療に対応した手術室看護師の役割の概念は,手術室看護師の手術看護実践モデルの開発の資料になり,今後の手術室看護師の専門職としてのアイデンティティの確立や人材育成に寄与すると考える.また,手術室看護師の看護実践を評価する尺度開発への発展も期待できると考える.

3. 研究の課題

本研究は文献的アプローチであるため,手術室の看護師の看護実践の実態が過不足なく示されているかの検討が必要である.今後は,質的及び量的アプローチによる検証を行い,本概念を洗練したいと考える.

Ⅴ. 結論

現在の日本における「手術室の看護師の役割」を構成する要素が確認され,以下のことが明らかになった.

1.属性は,『術中看護のための臨床判断』,『患者の権利擁護』,『術中の安全対策』,『安心の提供』の4つであった.

2.先行要件は,『看護師自身』,『医療チーム』,『組織』に関することの3つであった.

3.帰結は,『患者』,『看護』,『医療チーム』に関するアウトカムの3つであった.

4.現在の日本における「手術室の看護師の役割」は,「術中看護のための臨床判断をおこない,患者の権利擁護を踏まえ術中の安全対策と安心の提供を行う」と定義された.

付記:本研究の一部を第45回日本看護科学学会学術集会において発表した.

利益相反:本研究における利益相反は存在しない.

著者資格:NY,NT,ANは研究の着想及びデザインに貢献した.NY,NTはデータ収集,NY,NT,ANは分析,考察,論文作成に関与した.すべての著者は最終原稿を読み,承認した.

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