日本看護科学会誌
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資料
チーム医療教育の実践
―学際的グループワークによる看護1年次生の学び―
徳島 佐由美寺田 美和子宮本 佳子
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2025 年 45 巻 p. 90-98

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Abstract

研究目的チーム医療教育の一環として実施されたオンライン形式と学際的グループワーク形式という異なる教育方法における看護1年次生の協働スキルや専門職理解を含む学びを,年度別の学生レポートをテキストマイニングで分析し,明らかにすることである.

研究方法:テキストマイニングを用いて,年度別のレポートの比較を行い,教育方法の違いによる学生の学びを分析した.

結果:オンライン形式(60名)では「医療」「患者」が,学際的グループワーク形式(44名)では「チーム」「専門職」など協働に関する用語が頻出し,語句の共起と頻度に差異がみられた.

結論:学際的グループワーク形式は,基礎的な学びを実践的に体験し,深める機会を提供するため,1年次生にとってより有益であることが示唆された.

Translated Abstract

Aim: This study aims to clarify the impact of Team-Based Healthcare Education on nursing students’ learning (e.g., collaborative skills and understanding of professional roles) by comparing the online format and interdisciplinary group work format. Text mining was conducted to analyze student reports from different academic years, focusing on differences in learning outcomes due to educational methods.

Methods: Text mining was used to compare student reports from different academic years, analyzing differences in learning outcomes based on educational methods.

Results: Consent was obtained from 60 students for the online format and 44 students for the interdisciplinary group work format. In the online format, terms such as “medical” and “patient” were frequently used, while in the interdisciplinary group work format, collaboration-related terms like, “team” and “professionals” were more common. Differences in the co-occurrence and frequency of terms were observed between the two formats.

Conclusion: The interdisciplinary group work format was suggested to be beneficial for first-year students, as it provided opportunities to practically experience and deepen their foundational learning.

Ⅰ. 緒言

専門職連携教育(Interprofessional Education: IPE)の概念は,1960年代の英国が発祥とされている.その後,各国で医療専門職の教育においてIPEが導入されるようになり,日本では,2000年代から大学教育にIPEを組み込む大学が増えている(埼玉県立大学,2022).その後WHOが,2010年にIPEについて,「インタープロフェッショナル教育は,二人以上の専門家が互いについて学び,互いから学び,共に学ぶことで,効果的な協力を可能にし,健康成果を改善することが行われる」と枠組みを発表した(WHO, 2010).これを契機に医療現場におけるチーム医療の重要性が広く認識されるようになった(厚生労働省,2017Reeves et al., 2016).この認識の広まりに伴って,IPEが医療教育の重要な要素として数多くの教育手法が報告されている(Macías et al., 2020).IPEの目的は,異なる専門職の学生が協力して学ぶことで,チーム医療に必要なスキルと知識を習得することであり,その中でも特に看護師は,チーム医療の中心的役割を担うため,その理念を実践的に学ぶことが重要とされている(遠藤ら,2012Reeves et al., 2016).日本の看護大学生を対象としたIPEの報告では,多職種連携のシミュレーションによって,異なる専門職の役割を理解し,医療現場で求められる協力スキルを身につけていることが示されている(澤本ら,2017).さらに,体験実習においては,役割分担やコミュニケーションスキルを実践的に学ぶ機会が重要視されている(木内,2019).

これらIPE国内外の歴史的変遷と研究報告を基にA大学は,看護学を含む合計7学科の医療系総合大学として,全学科共同の実践的なチーム医療科目を入学直後の1年次から開始している.しかし,2020年以降の新型コロナウイルス感染症(以下,COVID-19)の蔓延に伴い,2022年および2023年において教育方法の変更を余儀なくされた.具体的には,2022年度は,臨地実習施設での実際のチーム医療の場面の動画を撮影し,Learning Management System(以下,LMS)を介したオンライン配信となり,学生は自宅から視聴した(以下,オンライン形式:表1).2023年度も当初,病院施設への臨地実習を計画していたが,COVID-19が収束しておらず再度中止となった.そこで,急遽前年度の課題をふまえて授業内容を他学科と検討し,新たな形式を導入した.具体的には,A大学の特色とする医療施設同等の診療機器の見学演習である.この演習では,学際的な観点から学ぶため全7学科の学生が混成するグループを編成し,各専門職種の特有の機器と実習室の見学および体験を行う演習である(以下,学際的グループワーク形式:表2).

表1 2022年度 オンライン形式の授業概要

日時 授業形態 テーマ 内容
1回目 7月 講義 ガイダンス ・チーム医療の定義,職種,意義,核となる能力(「コミュニケーション能力」,「倫理的感受性」,「問題解決能力」)
チーム医療 ・本学のIPEカリキュラム
2回目 11月 講義 他職種の役割と特徴 ・7職種(理学療法士,作業療法士,言語聴覚士,臨床検査技士,臨床工学技士,診療放射線技師,鍼灸師,)について調べる視点
・チーム医療におけるコミュニケーション
3~4回目 12月 グループワーク(看護学科のみ7~8人/G) 他職種の役割と特徴から看護師の役割を理解 ・「7職種」についてグループワーク,発表,講評
5~7回目 2月 オンライン動画 A病院のチーム医療 ・A病院のチーム医療のビデオを視聴しチーム医療の実際について学ぶ
評価 3月 レポート課題提出 「チーム医療の重要性について自己の考えを述べよ」
表2 2023年度学際的グループワーク形式の授業概要

日時 授業形態 テーマ 内容
1回目 6月 オンライン動画 IPEとコミュニケーション ・IPEの定義 ・IPEカリキュラム 
・IPEに必要なコミュニケーション
ガイダンス ・目的・課題(本学7学科の専門職について調べる)
2回目 7月 講義・グループワーク(全学科混成7~8人/G) 実習オリエンテーション ・身だしなみの必要についてグループワーク 
・放射線学科(MRI)見学時の留意事項
3~7回目 7月 学内実習(全学科混成7~8人/G) 学内見学実習 ・全7学科の演習を45分ずつ体験する(胃瘻,呼吸音聴取,MRI・レントゲン室見学,頸部エコーなど)
8回目 7月 グループワーク(全学科混成7~8人/G) チーム医療見学実習のまとめ ・「見学実習で学んだこと」「チーム医療の重要性」についてグループワーク,発表,講評
評価 8月 レポート課題提出 「チーム医療の重要性について自己の考えを述べよ」

A大学において他学科混成によるグループワークは,IPE教育において特に重要であると考えられ計画した.この形式では,異なる専門職の学生が協力して学ぶことで,実際の医療現場で求められる多職種連携のスキルを実践的に習得できる.多職種連携は,患者の健康成果を向上させるために不可欠であり,そのための教育は医療従事者の基礎教育において重要な位置を占める.特に,看護学生が他学科の学生と協働することで,異なる視点や知識を共有し,より包括的な医療提供が可能となる.このような教育方法の効果を明らかにするためには,詳細な分析が必要であり,本研究はその一環として実施された.

日本の看護系大学におけるIPEの方法として,伊藤(2023)の6編の文献レビューによると,1編は他大学と連携し,その他は学内の他学科との連携であった.それらは,5編が3,4年次生を対象としている.本研究のように1年生次に7学科連携した学内のIPE教育の報告はみられておらず,本科目に関して学生の学びを検討することは,今後の看護系大学におけるIPEの示唆となる.A大学の『チーム医療』科目では,IPEの理念を教育方法に取り入れ,学生が多職種協働のスキルを実践的に習得することを目指している.本科目の目標の一つは,チーム医療教育を通じて,学生に協力や役割分担の重要性を実感することである.しかし,それぞれの教育方法の学びについては,これまで十分に検討されていない.特に,学際的グループワーク形式は,他学科の学生と協働しながら学ぶことで,医療現場で求められる役割分担や協力の重要性を深く理解する機会を提供する.

本研究では,このようなIPEに基づく教育が,学生の学びにどのような影響を与えるかを検討することを目的とし,看護学生に焦点を当てている.理由としては,看護職は医療現場でのチーム医療において重要な役割を果たしており,その教育におけるアプローチが直接的な影響を及ぼすと考えた.看護学生は,他の医療専門職との連携を学ぶ上で,実際の医療現場を模したシミュレーションやチーム活動を通じて具体的なスキルと知識を習得する必要がある.このため,オンライン形式と学際的グループワーク形式による看護学生の学びを詳細に分析することは,看護教育の質を向上させるために重要であると考えた.

そこでチーム医療科目における学生の最終レポートを年度別にテキストマイニングにより分析することとした.これにより教育方法の有効性と課題を検討し,看護基礎教育の質向上に寄与することを目指す.テキストマイニングによる分析は,テキストデータに潜んでいる当事者の思いや認識を情報収集するために有益な方法である.さらに質的データを数値データと同等として扱う.そのため,分析者の恣意的な解釈を回避することが可能である(樋口,2021).

Ⅱ. 研究目的

本研究の目的は,チーム医療教育の一環として実施されたオンライン形式と学際的グループワーク形式という異なる教育方法における看護1年次生の協働スキルや専門職理解を含む学びを,年度別の学生レポートをテキストマイニングで分析し,明らかにすることである.

Ⅲ. 方法

1. 研究デザイン

学生のレポートを分析した観察研究

2. 研究対象者

2022年度本科目を履修した看護学科90名

2023年度本科目を履修した看護学科90名

3. 研究方法

チーム医療科目の授業概要

以下に科目と学生の到達目標を示す.

1) 科目目標

(1)医療の実践の場を模擬的に体験することにより,医療職への理解を深める.

(2)自己の目指す専門職の役割や機能を知ると共にチーム医療を構成する様々な専門職の役割・機能について知識を深める.

(3)医療における多職種連携の重要性を知る.

2) 到達目標

(1)科目を通じて医療の全体的な業務や役割について知ることができる.

(2)科目を通じてチーム医療の構成を知り,目指す専門職の役割および責任を自覚することができる.

(3)科目を通じて医療人としての姿勢を養い,学習への意欲向上のきっかけとし,専門的学習に臨む上での自己の考えを述べることができる.

3) 2022年度オンライン形式の概要

1単位 15時間で,合計7回で構成されていた.具体的な授業内容を表1に示す.

4) 学際的グループワーク演習の概要

1単位 15時間で,合計8回で構成されていた.具体的な授業内容を表2に示す.

4. 分析方法

テキストマイニングは,樋口(2021)が開発したKH Coder ver.3を使用し,セミナーを受講した研究者が以下の方法で行った.

(1)頻出語分析は,テキスト内で使用されている語の出現回数をカウントするものであり,1語を2語以上として抽出している場合において強制抽出語句とし,前処理を行った.

(2)出現頻度は多くとも単独では意味を持たない記述を分析対象から除外した.

(3)共起ネットワーク分析は,共起の強い語の関連を検討するため,抽出ネットワークを作成した.設定を最小出現数25,上位語300で抽出した.抽出したサブグラフのテキストを,KWICコンコーダンスで確認し,前後の文脈で意味内容を確認しながら研究者間でネーミングを行った.

(4)対応分析は,オンライン形式と学際的グループワーク形式を外部変数化させて対応分析を行い,教育方法の違いによるレポートの語句についての差異を検討した.

5. 倫理的配慮

本研究は,研究者の所属する森ノ宮医療大学(2022-34,追加2023-105)と天理大学医療学部(医第178号)の倫理審査委員会の承認を得て実施した.学生への研究協力の依頼は,2022年度においては,科目担当者以外の教員が,研究目的,意義,方法,倫理的配慮,研究への参加の任意性,協力しないことによる不利益は生じないこと,および学会等での発表について口頭で説明を行った.2023年度は,LMSを介して説明を行い,同意書の提出を依頼し,署名による同意の確認を行い,学生が提出したレポートを研究分析対象とした.本研究における利益相反は存在しない.

Ⅳ. 結果

1. 対象者の概要

オンライン形式:2022年度履修生90名のうち同意を得られた学生60名(同意率65.9%).

学際的グループワーク形式:2023年度履修生90名のうち同意を得られた学生44名(同意率48.9%).

2. 学生のレポート頻出語と共起ネットワーク

各教育手法におけるレポートからの総抽出語は,オンライン形式が47,520使用語数18,786,重なり語数2,193使用語数1,819であった.頻出語は,「医療」,「患者」「考える」であり,学際的グループワーク形式が.レポートからの総抽出語数42,040使用語数17,013,異なり語数,2,107使用語数1,758であった.頻出語は,「医療」,「患者」,「チーム」であった(表3

表3 オンライン形式・学際的グループワーク形式における頻出語(上位10語)

オンライン形式頻出語(上位10) 学際的グループワーク形式頻出語(上位10)
抽出語 出現回数 抽出語 出現回数
医療 1,057 医療 891
患者 799 患者 535
考える 429 チーム 475
職種 405 考える 313
看護 353 治療 247
行う 254 行う 210
専門 254 職種 203
重要 169 専門 174
治療 165 看護 172
理解 157 重要 163

共起ネットワークの結果,オンライン形式は,6つのサブグラフが形成された.円と円を結ぶ線は,それぞれ語が関連していることを示す.同じグループで分類された語は,関連性の強いサブグラフとして示される.図の円の大きさはそれぞれの語の頻出回数が多さを示す.語を結ぶ線は,実践が破線より関係性が強いことを示す.これらのサブグラフについて研究者間で意見が一致するまで検討を繰り返し,各サブグラフのネーミングを行った.

以下ネーミングを【 】で示す.

導き出された各サブグラフにおけるネーミングは,【01意見交換のために専門的な知識を習得】【02家族と過ごす退院後の生活を想定】【03様々な視点から医師と協同】【04各専門職種の相互理解のもと成立】【05安全で質の高い医療の提供が可能】【06医療従事者の負担が減少】であった(図1).

図1  オンライン形式の共起ネットワーク分析

学際的グループワーク形式は,共起ネットワークの結果7つのサブブラフが形成された.【01 適切な治療に必要な各専門職の役割】【02他職種について学ぶことで自分の専門性を考察】【03多職種の役割理解の重要性】【04専門職間における信頼関係の必要性】【05他職種の専門性を理解しチームをつなぐ看護師の役割】【06情報共有を通じた専門職間連携の質的向上】【07専門性の発揮による病気の早期発見】であった(図2).

図2  学際的グループワーク形式の共起ネットワーク分析

3. 教育方法別の対応分析

年度ごとの学生の学びを表す語の特徴を解析するために年度を外部変数とした対応分析を行った(図3).図3の各軸は,データの分散を最大限に説明する方向を示す.第1軸(横軸)は最も多くの分散を説明し,第2軸(縦軸)はそれに次ぐ分散を示す.

図3  年度別の対応分析

グラフの0から離れている語ほど,それぞれの群に特徴的に用いられている語である.具体的には,原点(0, 0)から見て,右上に位置する語群は,2023年度の学際的グループワーク形式の学生が多く使用した語であり,これらの語は協働学習やグループディスカッションに関連する.一方,左下に位置する語群は,2022年度のオンライン形式の学生が多く使用した語であり,これらの語は個別学習やオンラインリソースの利用に関連している.

Ⅴ. 考察

本研究の目的は,チーム医療教育の一環として実施されたオンライン形式と学際的グループワーク形式という異なる教育方法における看護学生の学びについて,年度別の学生レポートをテキストマイニングで分析し,明らかにすることである.学生の最終課題レポートをKH Coderを用いて教育方法別に分析した.以下では,両教育方法の特徴と到達目標への影響,教育設計に関して考察する.

1. 両教育方法の特徴と学生の学び

両教育方法に頻出していた語句として,「医療」と「患者」はどちらも上位1,2位にカウントされた.その後も「職種」など同様の語句が上位にみられており,学生の学びの傾向としては同等であると考える.しかし,語句と語句のつながりを表す共起ネットワーク図において差異を確認した.オンライン形式では,上位語句が中央に頻出の大きさを示す大きな円の周囲に均等に少ない頻出を示す小さな円を抽出していた.関連としてバランスの良い共起図が描かれていたのに対し,学際的グループワーク形式では,円の大きさは全体的に均等で,中央に集中した共起図が描かれた.これはレポートの頻出語句と関連のある語も概ね均等であったためであると読み取れる.この現象は,対応分析図でも確認できており,オンライン形式と比較すると学際的グループワーク形式のレポート語句は,中央に集中しており特徴的な語句がみられていない.また,学際的グループワーク形式の語句には,「治療」「療法」「技師」などの専門的な語句がみられているが,オンライン形式でみられていた「情報」,「共有」,「理解」という対象理解を視点に含んだ語は共起されなかった.Lockeman et al.(2017)は,教室環境において,1年生次の早期からIPEを教授することの重要性を報告しており,本科目における2023年度の取組と類似している.しかし,教育方法をオンライン形式から学際的グループワーク形式へ変更したことにより学生の自由な発想が減少したとも捉えることができた.これは,他大学でも同様の取り組みが行われており,平田ら(2023)は,チーム医療演習において学生へオンラインフィールドワークを実践し,その報告でも看護師の役割に関する記述がなかったと報告している.これは,学生が演習中に得た学びや経験をどのように解釈し,表現するかが個々に異なっているためである.教育者は,学生の多様な視点や理解を尊重しつつ,フィードバックを通じて学びの深まりを促すことが重要であると考えた.

そして,共起ネットワークにおけるサブグラフごとのネーミングには,学生が科目を受講してチーム医療に対する学びが表現されている.オンライン形式において,6つのサブグラフが形成されたことは,学生が多角的に医療問題を捉え,専門的な知識の習得や他職種との協働を意識していることを反映していると考える.特に「意見交換のために専門的な知識を習得」や「医療従事者の負担が減少」といったサブグラフからは,オンライン学習の中で専門知識の重要性が強調されていることが読み取れる.

一方,学際的グループワーク形式においては,7つのサブグラフが形成され,特に「適切な治療に必要な各専門職の役割」や「他職種の専門性を理解しチームをつなぐ看護師の役割」といったネーミングから,学生がチーム医療の重要性を理解し,協力関係を築くことに重点を置いていることがわかる.このことは,他学科生とのグループワークによる直接的な対話や情報共有が,専門職の役割の理解において大きな効果を得ていることを示唆している.以上から,オンライン形式では専門知識の習得に重点が置かれ,学際的グループワーク形式では,職種間の信頼関係や情報共有の重要性が明らかになった.

2. 到達目標の達成状況

本科目の到達目標として設定された(1)「職種間の協働理解」,(2)「専門職の役割の理解」,(3)「患者中心のケアの重要性」に基づき,教育方法別に分析を行った.今回の教育方法は,2022年度生は学内LMSを活用したオンライン動画を学生が個々に視聴する「オンライン形式」と,2023年度生は「学際的グループワーク形式」という他学科の混成グループで多職種を学ぶグループ活動という形式であった.その結果,オンライン形式を受講した学生のレポートには,患者に関する語句が多く,学際的グループワーク形式を受講した学生のレポートには専門職の理解に関する語句が多かった.このことから,主にオンライン形式では,科目目標(3)を,学際的グループワーク形式では,科目目標(1)(2)を到達することに繋がったと考える.また,その他の到達目標に関する語句も出現しており,両教育方法ともに概ね科目目標は到達することができたと考える.IPEの授業設計において,Buring et al.(2009)は,非公式な体験が学生の専門分野でのコミュニケーション能力や自信を高めるが,体系化された公式な体験が初学者にとってより有益であると述べている.この報告は,学際的グループワーク形式の結果に類似しており,本研究における学際的グループワーク形式は,他学科の学生とのグループ活動を通じて基本的な科目目標が達成されたと考える.どちらの教育方法も目標を達成していたが,学際的グループワーク形式は,本科目目標(1)医療の実践の場を模擬的に体験することにより,医療職への理解を深める.(2)自己の目指す専門職の役割や機能を知ると共にチーム医療を構成する様々な専門職の役割・機能について知識を深める.にあたる基礎的な学びを実践的に体験し,深める機会を提供するため,1年次生にとって特に有益であることが示唆された.

3. 看護基礎教育への示唆

今回の報告では,1大学の看護学科の1年生次を分析対象としている.A大学では,IPEを1年次から取り入れ,早期からスムーズな専門職教育への導入を試みているが,チーム医療科目において2022年度から教育方法を変更が続いた.学生のレポートには,学びの差異が顕著に表れているが,両教育方法とも科目の目標は到達していたと考える.どちらの形式も利点があったと考えられ,Henrikson & Baliram(2023)の調査によると多くの大学院学生は,自分に合った学習スタイルを選ぶことで,エンゲージメントが向上し,学びの効果も高まると報告している.しかし,対象を大学1年次生と限定した教育方法を検討すると,基礎的な目標を多くの学生が到達できるよう設計する必要がある.その点においては,学際的グループワーク形式のような公式な意見交換を実施できる教育方法が有益であると考えた.さらに最近の調査報告では,自己決定理論を通じて学生の動機付けとオンライン学習エンゲージメントの関連が示されている(Ojo et al., 2024).この研究は,学生が自らの学びをコントロールできる環境が,学びの質を向上させることを示しており,本研究結果と一致している.

今後の本チーム医療科目の継続では,学生の学びをさらに深化するためには,具体的な演習・実習内容やフィードバックの質が学びに与える影響を考慮する必要がある.また,異なる教育方法による学びの質を定量的に評価する手法を導入することで,より包括的な理解を促進できる.さらに,学生が自由に表現できる環境を整備することも,学生の学びを促進するために重要であることが明らかになった.

4. 研究の限界と今後の課題

本研究の限界は,2022年度2023年度の時点での実施のため,分析対象となった学生のサンプル数が看護学科の学生のみであることと,学生への説明方法が異なったため,両年度においてもサンプル数に偏りがある.また,具体的な学びを評価するためには,より長期的な追跡調査が必要であることが考えられる.さらに,各教育方法による学びを比較する際に,他大学との比較調査が必要であった.本研究の結果を踏まえ,A大学ではオンライン形式と学際的グループワーク形式の統合を進めるための具体的な施策を検討中である.具体的には,ハイブリッド形式の授業や,オンラインツールを活用したグループワークの導入などが挙げられる.今後の課題として,より多くの学科の学生を対象にし,異なる教育方法を検討していく.

Ⅵ. 結論

チーム医療科目における教育方法によって学生レポートに使用される語句の共起と頻度に差異がみられた.本研究では,オンライン形式が多角的な視点による情報共有に寄与し,学際的グループワーク形式が職種間の協力や役割理解の深化に有効であることが示された.特に学際的グループワーク形式は,基礎的な学びを実践的に体験し,深める機会を提供することから,1年次生にとってより有益であることが示唆された.

付記:本稿は,オンライン形式の結果を27th East of Nursing Scholars,学際的グループワーク形式の結果を44回日本看護科学学会学術集会,28th East of Nursing Scholarsにおいて段階的に報告したものを加筆し作成した.

謝辞:本研究にご協力いただきました学生の皆様,オンライン形式の動画撮影にご協力賜りました病院関係者の皆様に御礼申し上げます.またデータ収集ならびにデータ分析に助言いただいた森ノ宮医療大学,市後昌代講師,元森ノ宮医療大学の樋口優子助教に感謝申し上げます.

利益相反:本研究における利益相反は存在しない.

著者資格:徳島は,研究の着想およびデザインに貢献,データ分析,論文全体の作成;寺田は,データ収集と分析,論文への示唆および研究プロセス全体への助言;宮本は,データ収集と論文への示唆.すべての著者は原稿の最終版を確認し,承認した.

文献
 
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