日本看護科学会誌
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ISSN-L : 0287-5330
原著
長期入院を要するこどものきょうだいに質の高いケアを実現するために必要な要素
―ケア提供者への質的研究―
佐々木 優佳入江 亘金子 太郎新家 一輝菅原 明子塩飽 仁
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2025 年 45 巻 p. 974-983

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Abstract

目的:長期入院を要するこどものきょうだいへの支援にかかわるケア提供者が捉えた質の高いケアを実現するために必要な要素とその障壁を明らかにする.

方法:多職種で支援を実践しているケア提供者に対し半構造化面接を実施し,内容分析法にて質的に分析した.

結果:看護師,チャイルド・ライフ・スペシャリスト,保育士の計13名が参加した.きょうだいへの質の高いケアを実現にするために必要な要素は,支援を先導する組織の存在,病棟や病院の管理者の支援への理解,支援に対するスタッフの意識,多職種で協働すること,支援を提供する体制を整えることなどの11カテゴリで構成された.また,その障壁として,スタッフ側,きょうだい側,家族側の要因が抽出された.

結論:きょうだいへの質の高いケアを実現するために,ケア方略を検討する組織を含めた支援体制の構築と,支援の意義や幅広いきょうだい支援のアプローチに関するスタッフへの啓蒙が求められる.

Translated Abstract

Aims: This study aimed to identify elements necessary to achieve high-quality care for siblings of children with life-threatening illnesses, and the barriers to sibling care practice.

Methods: Semi-structured interviews were conducted with care providers who were providing multidisciplinary support for siblings of children with an illness. The data obtained were categorized thorough content analysis.

Results: Thirteen nurses, Child Life Specialists, and childcare workers participated in the study. High-quality care for siblings of children consisted of 11 categories such as “Organization to lead support for siblings”, “Nursing managers’ understanding of support for siblings”, “Staff attitudes toward support for siblings”, “Multidisciplinary collaboration”, “Development of a system for providing support for siblings.”

Conclusions: In addition to providing direct support for siblings from the early stage, it is important to provide consistent support to families.

Ⅰ. はじめに

こどもが悪性腫瘍などの重篤な疾患に罹患することは,家族へ大きな影響をもたらす.家族,特に親は告知されたこどもの病名に,心理的ショックを受けるだけでなく,こどもの闘病の世話や病棟の規則に沿った生活などが始まり,目まぐるしい状況の変化に適応する努力をする(小代,2021).親だけでなく,きょうだいにも生活の変化(Smith et al., 2018)や,精神的負担をもたらす(Alderfer et al., 2010).さらに,精神的負担は身体症状や行動として顕在化されることがある(名古屋ら,2020).そのため,きょうだいを心理社会的なリスクのある集団として適切な支援を提供すべき存在ととらえ(Gerhardt et al., 2015),きょうだいに対しては,早期からの情報提供や両親と過ごす機会の保障等が推奨されている(Spinetta et al., 1999).

きょうだいへの質の高いケアの実現が求められる一方で,長期入院を要するこどものきょうだいへの支援において,ケアの提供体制の構築は国内外で存在する課題である.カナダできょうだい支援にかかわる専門家らへのインタビュー調査からは,きょうだい支援を提供する上での障壁が医療システム,病院,家族といった複数のレベルで発生していることを示している(Brosnan et al., 2022).国内では,全国の病院でのきょうだい支援の実態調査から,支援の障壁として人材,時間,感染リスク,スペースやスタッフの意識の不足が挙げられている(Niinomi et al., 2022).また,国内の看護師に向けた質的調査からは,きょうだいへの支援の課題として,きょうだいに関する情報の収集や共有のための環境の未整備,きょうだいの様子を捉える難しさ,ケア介入の評価や判断の難しさがあると報告されている(斎藤,2020).さらに藤原らによる熟練看護師へのインタビュー調査では,病院体制や母親への支援の実践が報告されており(藤原,2015),きょうだいへの直接的支援に留まらない幅広い支援の視点の必要性が示されている.

きょうだいへの質の高いケアの実現を図るためには,様々なきょうだいへの支援の実践に多職種で実際的に取り組んでいる集団に焦点を当て,そこで支援に当たる医療者の認識や,彼らが質の高いケアの提供のために必要と考えていることを捉え,実装の課題をいかに克服していくかを考慮していくことが重要である.すなわち,きょうだいへの最善のケアを提供するうえでの臨床上の視点とされる,医療体制やケアのプロセスへのアクセス可能性(Fullerton et al., 2017Gerhardt et al., 2015)への注目である.しかし我々の知る限り,国内におけるこれらの知見は明らかでない.

そこで本研究は,多職種で支援を実践している病院の医療者から,長期入院を要するこどものきょうだいへの最善のケアを実現するために必要な要素を明らかにすることを目的とした.加えて,多職種できょうだいへの支援を実践している病院における,支援の障壁の特徴は明らかになっていないことから,これらの病院における長期入院を要するこどものきょうだいへの支援を実践する中での障壁も合わせて明らかにすることとした.

Ⅱ. 研究目的

本研究の目的は,長期入院を要するこどものきょうだいへの質の高いケアの実現のために必要な要素,および長期入院を要するこどものきょうだいへの支援を実践する中での障壁を明らかにすることである.

Ⅲ. 方法

1. 研究デザイン

質的記述的研究

2. 研究対象者

研究対象者は,長期入院を要するこどものきょうだいに対して多職種での支援を実践している看護師やチャイルド・ライフ・スペシャリスト(CLS),こども療養支援士(CCS),ホスピタル・プレイ・スペシャリスト(HPS),保育士などのケア提供者でこどもへの臨床経験が3年以上の者とした.本研究ではケアは看護師によるプロセスに留まらず,きょうだいにとって必要なニーズに応じるためのあらゆる職種からのアプローチを含むものととらえ,きょうだいへの支援にかかわる多職種を対象者に含めた.

3. 調査期間

調査は2022年7月から9月に行った.

4. 調査方法

対象者へのリクルートは機縁法にて行った.この方法は,研究者らがこれまできょうだいへの支援活動や研究に取り組む中で,支援のネットワークが十分にあること,また研究対象者が適格基準に合致しているかを調査前に直接的に確認できること,支援の状況に応じて施設内の適任の専門職にアプローチすることが可能であることから今回の調査に最も合理的なリクルート方法と考えた.機縁法による協力を依頼する前に研究者は,医学中央雑誌刊行会による医中誌Webにて,2010年から2021年の学術集会や学術誌,書籍での病院での長期入院を要するきょうだい支援の実践報告や講演の発表施設をとりまとめた.また,きょうだい児支援取組事例集(三平・新家,2021)を参考に,長期入院を要するこどもが入院し,多職種による支援に取り組んでいることが確認できた12の候補施設を選定した.これらのうち機縁法でのリクルートが可能な10施設の医療者に協力依頼を行い,6施設13名から参加協力を得た.調査は,オンラインまたは対面での半構造化面接により行った.

5. 調査内容

インタビューでは,下記の①~③の項目について,対象者から自由な語りを得た.①コロナパンデミック前も含めた自施設でのきょうだい支援の実践内容,②きょうだいへの支援における障壁と最善のケアを提供するための工夫,必要と考えること,③これまでの支援の経験の具体例について尋ねながら,対象者に自身の考えを自由に話してもらった.

6. 分析方法

分析は内容分析法を用いた(Elo & Kyngäs, 2008).まず録音データから逐語録化されたデータを意味内容が区切れる単位ごとにコード化(「 」で示す)した.次に,コード分類ごとに類似性を比較し,文脈内容を踏まえながらサブカテゴリー([ ]で示す),カテゴリー(【 】で示す)を命名した.そのうえで,抽出されたカテゴリーをドナべディアンモデルを基盤としたCampbell et al.(2000)のケアの質の概念を適用のうえ,構造,プロセスに整理した.整理にあたっては,Campbellらは個人レベルにおける支援の質を,「個人が必要とする医療体制やケアのプロセスにアクセスできるかどうか,また,受けたケアが効果的かどうか」と定義し,構造とプロセス,アウトカムによって規定されるものとしている.構造とは,医療が提供される医療システムを定義する組織的要因(例えば,人員等のケアの質に関わる基準や組織的特徴)のことであり,プロセスとは,実際のケアの提供やそのケアがケア対象者に届くことである.なお,障壁については,構造やプロセスの背景にある最善のケア実現に影響する因子としてとらえたことから,ドナベディアンモデルではなくカテゴリー化として整理した.

カテゴリー抽出結果の確証性とカテゴリー名の妥当性を確保するため,複数の質的研究を経験している小児看護の研究者らおよびきょうだい支援に取り組む看護師1名による複数回の合議を経てコードの分類,カテゴリー名を決定した.

7. 倫理的配慮

本研究は,本研究は東北大学大学院医学系研究科倫理委員会の承認(承認番号:2022-1-152)を得て,参加は自由意志であること,研究参加の撤回と中断の権利の保障,匿名性の保持,結果公表予定を説明し,文書で同意を得た.面接は研究参加者が希望しなおかつプライバシーの保てる場所で,業務の支障とならない時間帯に行った.面接内容は許可を得て録音をした.

Ⅳ. 結果

1. 研究参加者の概要

研究参加者の概要を表1に示す.性別は男性2名,女性11名で,年齢は20~40代であった.経験年数は6~15年であり,看護師の資格を有している者が7名,保育士およびHPSの資格を有している者が1名,CLSの資格を有している者が5名であった.4施設10名の参加者は,各施設でのきょうだい支援を考える多職種からなる支援チーム等の組織的な支援体制に参画していた.

表1 インタビュー参加者の背景属性

対象者 年齢(歳台) こどもへのケアの
経験年数(年)
職種
20 8 看護師
30 12 CLS
30 13 看護師
30 10 CLS
30 6 看護師
40 10~15 看護師
30 12 看護師
30 12 看護師
40 15 CLS
40 15 CLS
40 15 保育士・HPS
30 9 CLS
40 8 看護師

2. 長期入院を要するこどものきょうだいへの最善のケアの提供を可能にするために必要な要素

分析の結果,構造に関わる要素では,15のサブカテゴリーから構成される5カテゴリーが生成された(表2).また,プロセスに関わる要素では,16のサブカテゴリーから構成される6のカテゴリーが生成された(表3).なお,結果においてスタッフとは職種に関わらないすべての医療者,コメディカルの職員を意味する用語として用いた.また,結果の中で示す支援とは,きょうだいへの支援を指す.

表2 長期入院を要するこどものきょうだいへの最善のケアの提供を可能にするために必要な要素 構造に関わる要素

【カテゴリー】 [サブカテゴリー] 「代表的なデータ」
【支援を先導する組織の存在】 [リーダーの存在] 「①やっぱりその運営していく上では,中心人物っていうのは絶対に必要かなと思います.」「⑧一応組織内でもかなりベテランで保育の方が組織内で横に広く色んな関係者とコミュニケーションを取れるようなポジションにいる.」
[志のあるスタッフの集まり] 「⑥定着させるまではチームが頑張らないとできなかったかな.」
[組織として支援を行える体制があること] 「⑦病院の全体の組織に1行事みたいな形になるとやりやすいのかなと思います.」
【病棟や病院の管理者の支援への理解】 [病院や病棟の管理職からの支援活動への理解] 「①大事な人って言えば,ほんとにもう管理職,師長とか.(支援を)認めてくれる管理職がいるかどうかっていうところはかなり大きい.」
[支援活動が勤務として認められること] 「⑩なるべく(大きなイベントとかは)仕事としてやれている.師長さんの方も看護師さんのシフトもきょうだいのイベントがあったらそれは勤務日にして調整とかもしてくれる.超勤つけてもいいよって,看護師さんにも上の管理者から言われてもいる.」
[活動資金] 「⑤寄付でもらったお金から出しています.」「⑩コストとしてはプラスアルファ.」
【人的資源】 [支援に関わる多職種の存在] 「②看護師さんは絶対必要.心理士さんもやっぱ俯瞰で見てくれるから大事だし,保育士さんいなかったら作りたいもの作れないし,多分外来とかの診察とかではやっぱドクターになるからね,みんなかなと思います.」「⑨イベントに関して言ったら,ほんとに多職種で,それを仕事にできる人がいないと,難しいと思います.」
[支援に一緒に取り組んでくれる医師の存在] 「③重要だなと感じるのは理解のある医師かなと思います.きょうだいに会わせるということの必要性を理解してくれている医師.」「⑫医師側からこの子のきょうだいのことも気になっているからちょっと入ってくれるっていう風に来ることが多いかなと思います.」
[部署を超えて支援の仲間が増えること] 「⑩イベントとかやりたいことに合わせてちょっと他の職種も巻き込んだり.」「⑪もともと有志だったんだけれども,だんだんそれが輪を広げて.」
[支援のための十分な人手があること] 「⑤きょうだい支援のスタッフ,保育士さん,CLSさんとナースで人数はまかなえているかな.」
【物的資源】 [支援ツールの存在] 「⑤デフォルトの説明の時の資料が先生達の中であって.」「⑪NPO団体の冊子をお配りしたり.」
[病院にきょうだいの居場所があること] 「③きょうだいが待機できるような場所を確保して.」「⑩病棟のスタッフがきょうだい用のガチャガチャを持ってきてくれて,ガチャガチャを1回できるっていう風にして.」
【支援に対するスタッフの意識】 [スタッフが支援に関する知識を持つこと] 「⑨イベントを見て感じてもらって,一緒に楽しんでもらう.」「⑪外部講師で3回程度研修会を行いました.」「⑬きょうだいウィークを行うことになって.」
[スタッフがきょうだいではなくその子として捉えること] 「③1回目で名前を聞いたら次会う時は必ず名前で呼んでそのきょうだい自身をきょうだいじゃなくてその子として捉えるみたいな.」
[スタッフが支援を当たり前と捉えること] 「⑤最近は先生達もきょうだいの説明が当たり前になってきた.」「⑤(きょうだい支援チーム立ち上げメンバーの)看護師さんたちが頑張ってくれたおかげで日常できょうだいの話しが出てくる.」
表3 長期入院を要するこどものきょうだいへの最善のケアの提供を可能にするために必要な要素 プロセスに関わる要素

【カテゴリー】 [サブカテゴリー] 「代表的なデータ」
【多職種で協働すること】 [スタッフ間での支援に関する相談や情報共有] 「⑥月に一回ミーティングをして情報共有をしておく.」「⑪色々な職種からの情報にそれぞれの専門職が持ち寄った情報できちっと見極める.」
[普段からの多職種連携] 「②普段から職種連携というか,カンファとか顔あわせる機会とか,普段の臨床とかでも聞きたいこと,あったら聞いたりはしてた.多分,それがべースになって.」
【支援を提供する体制を整えること】 [支援の導入プロセスをパッケージ化すること] 「⑤入院してしばらくたって病気の説明を先生からする.ご都合よろしいですかっていって連れてこれる週末の日程聞いて.」「⑥一番最初からパッケージで入っていると常にしてもらえる.」
[支援の質が担保されること] 「⑧一応部署内の人に説明手順とか支援の選択肢をマニュアルじゃないけど作って皆に周知した.」「⑪やり方をフローにしたものを,インターフォンに引っかけて誰でもできるように.」
[支援の効果を評価すること] 「⑪(きょうだいの会のアンケートを)分析(連携している保育系の大学の教員に)お願いして,そこから得られた結果から次につなげる.」
【きょうだいとスタッフの関係が築けていること】 [入院後すぐに支援が始まること] 「④最初に聴取する患者さんから書いてもらうやつとかに気にかかる事みたいなとこできょうだいのことっていうことを選ぶところがあって.」「⑦患者情報を入院の時必ず取るのでそこできょうだいさんは入院中どのように過ごしているのかっていうのを必ず話題に出してもらう.」
[きょうだいと直接関わる機会があること] 「⑦全然どのきょうだいか分からなくても病棟の外に一人で座っている子がいたら声をかけれたらかけるようにしています.」
[きょうだいと直接関わる利点と感染リスクが調整されること] 「⑥イベントを週末にやるとか.平日に比べて週末のほうが患者数がちょっと減るんですよね.」「⑩感染管理については,事前に問診票を渡ししたり,問診票を事前にお渡ししといて,当日も診察して.」
[きょうだいと遠方でも繋がれること] 「②オンラインのいいところは,遠方の人も参加できた.」「⑩限定のyoutubeのURLをお渡しして.」
[きょうだいとスタッフが繋がり続けること] 「⑤きょうだいのことを教えてくださいって(きょうだい通信を)毎月渡して,返事をくれるご家庭はくれる.」「⑩節目節目で手紙を書いたりとか,この前あってからどうですかとか.」
【支援を家族と一緒に考えること】 [家族がきょうだいのことについて相談しやすいスタッフの雰囲気があること] 「③日常会話をよくお母さん達としていたり.結構フランク.そういうこともあってお母さん達からは比較的話してもらいやすい.」「⑤面会させたいっていうのをスタッフに言ってくれたりとか,そういう風に面会できるってご家族は知っていたりとか,言えばできるって訳じゃないけど.」
[家族がスタッフをきょうだいの支援者だと捉えること] 「②親御さんも(ワッペンを)見てきょうだいのこと相談したいんですけどって言ってくれたケースもあって.」「⑤やっぱり親御さんにきょうだい支援があるよって伝えていくしかない.」
[スタッフが親との日常の関わりの中で意識的にきょうだいの話題に触れること] 「⑤定期的に最近お姉ちゃんどうです,連絡とってますとか.」「⑬看護師がきょうだいは(いつも)どうやってるんですかっていうような声をかけていく.」
[家族とスタッフで継続的にきょうだいのことを話し合うこと] 「⑤きょうだいに話した後お家に帰って大丈夫でしたかとか,その後気になる事とかお母さんから気になることありますかっていうふうにまずご家族に聞いたりとか.」
【入院中の家族間やきょうだい間で支援の輪が広がること】 [入院中の家族間やきょうだい間で支援の輪が広がること] 「⑥(他のきょうだいが見ていると)あいつもガチャガチャやっているから(自分と同じ状況にある)きょうだいだってわかる.そうするとそれぞれがピアサポートしだす.」「⑨口コミも結構あるから.隣のベッドとか行っていれば,じゃあうちも参加させてみようかしらみたいな.」
【院外に支援者と支援に関する相談や情報共有ができること】 [院外との支援に関する相談や情報共有] 「⑧A病院でのきょうだいの会を見学させてもらったり.」「⑪外の情報を知っておきながら私たちの病院で出来ることを考えていく.情報をやっぱり入れていくことも大事.」

1) ドナベディアンモデルにおいて構造に相当する要素

(1) 【支援を先導する組織の存在】

参加者は,[志のあるスタッフの集まり]からケア提供のあり方を考える組織を形成し,[組織として支援を行える体制があること]で支援を実施しやすくしていた.また,明示的でない場合もあるが,スタッフが集まった組織の[リーダーの存在]により支援活動がより促進されていた.

(2) 【病棟や病院の管理者の支援への理解】

参加者は,支援の重要性について[病院や病棟の管理職からの支援活動への理解]を得ることが重要と考え,[支援活動が勤務として認められること]が必要と捉えていた.「コストはプラスアルファで(あるが考える)」というように[活動資金]があることで活動の幅が広がっていた.

(3) 【人的資源】

支援では,[支援のための十分な人手があること]に加えて,[支援に関わる多職種の存在]や[支援に一緒に取り組んでくれる医師の存在]があり,放射線科や栄養科,薬剤部など[部署を超えて支援の仲間が増えること]でさらに多職種での取り組みに繋がると捉えていた.

(4) 【物的資源】

支援を行う上で「デフォルトの説明資料が先生(医師)達の中である」,NPO団体が作成した資料を用いたりするなど[支援ツールの存在]があった.また,参加者は,[病院にきょうだいの居場所があること]を重視し,きょうだいが安心して過ごすことが出来る場所を設けていた.

(5) 【支援に対するスタッフの意識】

参加者は,きょうだいに関するイベントや勉強会,新人研修,支援に関する情報の掲示によって[スタッフが支援に関する知識を持つこと],きょうだいの名前を大切にし[スタッフがきょうだいではなくその子として捉えること]を可能にしていた.また,支援を継続していくことで病院や病棟でも[スタッフが支援を当たり前と捉えること]を図っていた.

2) ドナベディアンモデルにおいてプロセスに相当する要素

(1) 【多職種で協働すること】

参加者は時間と場所を確保し,定期的に[スタッフ間での支援に関する相談や情報共有]を行っていた.また,きょうだいへの支援に限らない[普段からの多職種連携]があることが,きょうだいへの支援を実践するための土台になっていると考えていた.

(2) 【支援を提供する体制を整えること】

参加者は,[支援の導入プロセスをパッケージ化]し,どのスタッフがかかわっても[支援の質が担保される]よう,一貫して支援が提供される体制づくりを進めていた.また,[支援の効果を評価すること]で現在のケアの改善を図っていた.

(3) 【きょうだいとスタッフの関係が築けていること】

参加者は,[入院後すぐに支援が始まること],[きょうだいと直接関わる機会があること]が必要だと考え,きょうだいと直接関わるために,[きょうだいと直接関わる利点と感染リスクが調整されていること],[きょうだいと遠方でも繋がれること]できょうだいとの関係の構築を図っていた.また,[きょうだいとスタッフが繋がり続けること]は,いざという時の支援に繋げるためにも重要であると考えていた.

(4) 【支援を家族と一緒に考えること】

「日常会話をよくお母さん達とする」であったり,「面会の希望をスタッフに言ったり,面会できると家族が知れるように」のように,[家族がきょうだいのことについて相談しやすいスタッフの雰囲気があること]で参加者は家族のニーズに気づくことが出来ていた.また,バッジ等を用いて支援者であることを可視化したり,保護者に伝えていったりすることで[家族がスタッフをきょうだいの支援者だと捉えること]を働きかけ,家族もスタッフにニーズを伝えることが出来ていた.関係作りだけでなく,[スタッフが親との日常のかかわりの中で意識的にきょうだいの話題に触れること]や[家族とスタッフで継続的にきょうだいのことを話し合うこと]を行うことできょうだいに間接的に支援を届けていた.

(5) 【入院中の家族間やきょうだい間で支援の輪が広がること】

「病院を訪れた他のきょうだいもガチャガチャやっているから(自分と同じ状況にある)きょうだいとわかる」や「口コミできょうだいのイベントが広まる」のように[入院中の家族間やきょうだい間で支援の輪が広がること]も意識していた.

(6) 【院外に支援者と支援に関する相談や情報共有ができること】

参加者は,「(病院の)外の(きょうだい支援の)情報を知り院内で出来ることを考える」とし,[院外との支援に関する相談や情報共有]を行っていた.

3. 長期入院を要するこどものきょうだいへの支援を実践する中での障壁

分析の結果,19のコードから10のカテゴリーが生成され,障壁の要素はスタッフ側,きょうだい側,家族側の3つの要因に分類された(表4).スタッフ側の要因は【多職種での集まりにくさ】,【業務の忙しさ】,【ケアを継続していくための人材確保】,【支援のあとのきょうだいへのフォローの難しさ】で構成された.きょうだい側の要因は【低年齢あるいは中学生以上のきょうだい】,【病院と家の距離の遠さ】で構成された.家族側の要因は【入院しているこどもに集中せざるを得ないこと】,【支援に対する遠慮があること】,【支援のニーズをもっていないこと】,【長期的に入院中のこどもに付き添っている場合に詳細なきょうだいの生活がわからないこと】で構成された.

表4 長期入院を要するこどものきょうだいへの支援を実践する中での障壁

要因 【カテゴリー】 「代表的なデータ」
スタッフ 【多職種での集まりにくさ】 「①強いて言えばミーティングに集まりにくい.」
【業務の忙しさ】 「⑩どうしてもきょうだいさんが来れるのって,土日なんですけど,(土日は)人手が少ないので割と病棟が忙しく,きょうだいさんがロビーに来てるところに会いに行く時間がなかなか取れない.」
【ケアを継続していくための人材確保】 「⑨看護師さんたちは入れ替わっていくし,スタッフっていうか看護師さんだけじゃないですけど,どのスタッフも入れ替わったりするから,やっぱり続けていくっていうのは難しい.」
【支援のあとのきょうだいへのフォローの難しさ】 「⑤きょうだいの支援を通してっていうアンケートは取っていない.きょうだいが入院していてこの支援が良かったと思うとか逆にこういう支援があったら良かったのにってお父さんお母さんとかが思うきょうだい支援が知れたらなって最近思ってます.」「⑬リアルタイムの反応もなんですけど,確認がなかなか難しくて.保護者の方を通してとかでしか確認できなかったりする.あと,そのフォローができない.どうしても家族の方にお任せするような形になっているかなっていうのはちょっと気がかりではある.」
きょうだい 【低年齢あるいは中学生以上のきょうだい】 「⑤もう大学生ですとか中高生のお兄さんお姉さんですって言うと大丈夫とお母さんがなっているかもしれないですけど.まぁ元気ですとかお兄ちゃんなんか元気らしいよとかその程度の情報.」「⑤月齢がちっちゃいとか赤ちゃんだったりとかだとあんまり情報が入ってこないかな.」
【病院と家の距離の遠さ】 「②1番は距離かな,会えなかったりとか,距離とか遠方から来る方が多いので.」「⑫直接会えない人も,皆ちょっと遠いので.」
家族 【入院しているこどもに集中せざるを得ないこと】 「④入院最初とかだと家族がとにかく患者さんの方とか治療のこと,これからのことっていうところに目が向くと思うので,そのタイミングでやっぱきょうだいのほうもみた方がいいよって言うのはなかなか言いにくい部分もある.」
【支援に対する遠慮があること】 「②めちゃくちゃ遠慮するお母さんも時々いるので,わりとこう1人で頑張ってきた,とかいう自負があったりとか,やっぱり性格でこう色んな人に声かけれる人となんとか自分でギリギリまで頑張りたいっていう方がいらっしゃる中で,じゃあ何がベストなんだろうって.」
【支援のニーズをもっていないこと】 「④話を聞く限りこっちとしてはきょうだいのことちょっと心配な様子だけど家族がそこまで気にかけていないような困っていないような様子な時にどうしてあげたらいいのかなっていう思うことはあります.」
【長期的に入院中のこどもに付き添っている場合に詳細なきょうだいの生活がわからないこと】 「④情報を得るのがお母さんとか付き添っている家族からしか得られないからそこにもしかしたら何かしらのフィルターがかかっているというか,付き添っているお母さんと常に見ている他の家族との多分認識として差が出てくるだろうしその辺りは正確にどういう状況なのかなって把握するのはやっぱり気をつかう.」

Ⅴ. 考察

本研究では,さまざまな障壁が存在するなかでも多職種で支援に取り組んでいる医療者に焦点を当てたことで,質の高いケアの提供をどのように実現できるのかについて,実践知に基づく多角的な視点が抽出されたと考える.

考察では,先行研究と比較して明らかになった4点についてそれぞれ述べる.1点目は支援を多職種と家族で考える,2点目はケアを提供する体制,3点目はきょうだいと早期から継続して繋がり続ける,4点目は長期入院を要するこどものきょうだいへの支援の障壁である.以下に詳述する.

1. 支援を多職種と家族で考える

本研究で抽出されたきょうだいへの最善のケアの提供に必要な要素の【支援を家族と一緒に考えること】や,支援の障壁の【入院しているこどもに集中せざるを得ないこと】,【支援に対する遠慮があること】,【支援のニーズをもっていないこと】のように,家族の存在を重視した内容が含まれていた.支援を考えるうえで,きょうだいの様子を聞いたり,きょうだいへの情報提供について考えたりするという観点からも,家族とのかかわりは欠かせないことが明らかになった.

これまでも,親ときょうだいの関わりの促進がきょうだいの情緒面や生活上の適応,病気の理解の深まりに役立つと示唆(Michell et al., 2021橋本・藤田,2019)されており,支援を考える上ではスタッフがきょうだいへの直接の支援を考えるだけでなく,家族と共に考えていくことが重要であるとされている.さらに,日本でのきょうだいへの支援として最も行われていたのは保護者へのアプローチであり(Niinomi et al., 2022),本調査でも,参加者らは支援を家族と一緒に考え,きょうだいに間接的に支援を届けており,先行研究と同様であることが明らかになった.

しかし,家族の視点から考えてみると,入院しているこどもに保護者の心配が向くといった,【入院しているこどもに集中せざるを得ないこと】や【支援に対する遠慮があること】,「家族がそこまで気にかけていない,あるいは困っていないような様子」など,保護者が【支援のニーズをもっていないこと】がある場合には,支援に障壁が生じることが分かった.

これまでも家族の視点の研究では,きょうだいの診断後少なくとも最初の数か月は,病気のこどもに関心やエネルギーが集中し,両親はそれ以外の事柄に配慮することが難しいこともある(岡ら,2020)ということや,「きょうだいも大切だが今は入院中のこどもが優先」という複雑な思いを抱えている(福井ら,2016)ということが分かっている.さらに,きょうだいの生活の変化に対する懸念は入院後早い段階から語られた(名古屋ら,2020)ことから,入院直後,親はきょうだいのことを懸念しつつもきょうだいに目を向けることが難しい状況にあるといえる.

したがって,きょうだいへの支援を開始するためには,早期からの親の負担を軽減することが重要であり,スタッフは,親とのパートナーシップのもと,家族の状況をアセスメントし介入のタイミングを計ったり,きょうだいへの支援を長期入院を要するこどもへのケアと包括して行うなど,きょうだいだけでなく,保護者への支援の提供を図っていく必要がある.

2. ケアを提供する体制

本研究で抽出されたきょうだいへの質の高いケアの実現のために必要な要素には,【支援を先導する組織の存在】,【病棟や病院の管理者の支援への理解】,【院外の支援者と支援に関する相談や情報共有ができること】といったケアを提供する医療体制を整備しようとする働きかけが含まれていた.特に【支援を先導する組織の存在】は,きょうだいへの最善のケアの提供を考え,病棟や病院全体に働きかけ,支援を広げる重要な役割を果たしていた.

国内の病院の実態調査では,きょうだいと入院患者の面会については,過半数,もしくは半数以上で制限があること(Niinomi et al., 2022)や感染防止の観点から,幼いきょうだいは入院している病棟に入ることができない現状が報告され(石川ら,2012),感染リスクは,きょうだいへの直接的なケアの障壁となっている.本研究の参加者は【病棟や病院の管理者の支援への理解】が必要であると語っており,これには管理者がきょうだい支援における効果とその障壁を理解していることが大切であると考えられる.

さらに,支援を実施していくうえで参加者は,【院外の支援者と支援に関する相談や情報共有ができること】で支援を改善し,質を高めていた.支援提供にはさまざまな障壁があるが,自施設以外の病院での支援を知ったり相談する機会があったりすることは,具体的なケアのアプローチを考えるうえで役立つと考えられ,こうした活動のさらなる促進が支援の障壁を超えてきょうだいにケアを届けるうえで重要となりうる.

3. きょうだいと早期から継続して繋がり続ける

本研究できょうだいへの最善のケアの提供のために必要な要素として抽出された【きょうだいとスタッフの関係が築けていること】から,入院直後から支援を開始し,きょうだいとの繋がりを保ち続けていることが分かった.

これまでも,看護者は,入院時の家族アセスメントとして,きょうだいの有無のみでなく,きょうだいの年齢や発達段階,祖父母の状況などからどのような養育形態を取ることが可能かを把握することが重要(水野ら,2002)と言われている.本調査でも,参加者は入院時の家族構成や長期入院を要するこどもの情報を得るタイミングで,きょうだいについて情報を把握することから支援を開始していたが,先行研究に加えて,家事の負担の有無など生活の変化についても情報を収集していることが明らかになった.これまでに,金子ら(2022)は,こどもに対して直接的なケアを行うだけでなく,情報が十分に与えられること,家族の中でオープンなコミュニケーションが取れることなどもケアに含まれると述べている.長期入院を要するこどもに関する説明に留まらず,きょうだいの家族内の役割や生活の変化を含めた様々な情報について家族間でのコミュニケーションが取れているかを考慮し,状況に応じて関係性を橋渡しすることが必要である.実際に看護師は,きょうだいを見かけたら声を掛けるなど限られた直接関わる機会の中で関係作りを図っており,きょうだいも医療者と会う機会を肯定的に捉えている(Prchal & Landolt, 2012)とされ,小さな繋がりの機会を大切にすることが継続した支援に重要と考える.

一方で【病院と家の距離の遠さ】は,きょうだいと直接繋がることの障壁となっていた.しかしこうした中でも,きょうだいに向けて定期的にお便りを発行したり,遠隔からでも参加できるイベントを開催するなど,参加者は様々な方法により間接的にきょうだいと繋がり続ける工夫に取り組んでいた.直接的な支援だけでなく,間接的な支援も含めて継続して繋がり続けることがきょうだいのニーズを捉えるために重要であると考える.

4. 長期入院を要するこどものきょうだいへの支援の障壁

本研究で抽出された支援の障壁は,スタッフ,きょうだい,家族の要因に分類された.先行研究(Brosnan et al., 2022)と同様に,本調査でも家族や病院内における体制の課題は見られたが,社会制度のような医療システムに関する障壁は抽出されなかった.きょうだい支援に対する社会支援制度が日本ではほとんどないことから医療サービスにきょうだい支援が包含されるという考え方が途上にあると窺えた.現在国内では,ヤングケアラーに対する施策が注目されており(厚生労働省,2022),きょうだい支援の社会制度上のあり方を医療者からも提案していく必要がある.

また,本調査では,【ケアを継続していくための人材確保】のカテゴリーとして,病院においてケア提供者の部署異動があるため,支援に対して高い意識を持つ同じスタッフで実施出来ないという障壁が抽出された.これまでに,国内における病院での支援の実態からは,支援の障壁として人材,時間,感染リスク,スペースやスタッフの意識の不足が挙げられている(Niinomi et al., 2022).一方で本調査では,これらの要素は質の高いケアを実現するために必要であり,参加者らの施設では支援を促進することに繋がっていた.人的資源が限られる場合でも,きょうだい支援の提供について議論したり,スタッフの意識を高めるための教育や啓発を実施することは,日々の当たり前とされるケアの基盤となりうると考える.

一方で,今回はどのようにして参加者が多職種での支援の提供体制を構築したのかについては明らかにできなかった.今後これらの過程が明らかになることでケアの質を高めるためのより具体的なアプローチの実装が期待される.

Ⅵ. 研究の限界と臨床への示唆

本研究は,全国の病院のうち一部の施設での調査であり,職種の限られる施設にそのまま知見を適用するには限界がある.多職種で協働することは最善のケア提供に寄与すると考えられた一方で,職種特有の役割は抽出されなかった.したがって,ケアに関わる職種が限られている場合においても,情報を共有したり意見を出し合ったりしていくことが重要になると考える.

また,全国において多職種で支援に取り組んでいる施設は存在する.したがって,今後はより多くの施設からの様々なアプローチのあり方を検討する必要がある.

本研究では支援のアクセス可能性に注目したが,支援に取り組む医療者が支援を通してきょうだいのアウトカムをどのようにとらえているかは明らかにできなかった.きょうだいのアウトカムを測定できるツールは限られている(Long et al., 2021)ことからも,今後の知見の蓄積が期待される.

Ⅶ. 結論

本研究では,国内の6施設において,多職種できょうだいへの支援に実際的に取り組んでいる医療者13名にインタビューを行った.

ドナべディアンモデルに基づきまとめた結果から,長期入院を要するこどものきょうだいへの最善のケアの提供を可能にするために必要な要素として【支援を先導する組織の存在】,【病棟や病院の管理者の支援への理解】といった5つのカテゴリーの構造に関する要素と【きょうだいとスタッフの関係が築けていること】,【支援を家族と一緒に考えること】といった6つのカテゴリーのケアプロセスに関する要素が明らかになった.

また,長期入院を要するこどものきょうだいへのケアを実践する中での障壁では,10のカテゴリーが明らかになった.

きょうだいへの最善のケアを提供するために,早期からのきょうだいへの直接的な支援だけでなく,家族を含めた支援を継続して行っていく必要がある.

付記:本論文の内容の一部は,第43回日本看護科学学会学術集会で発表した.

謝辞:調査の実施にあたりご協力いただきました協力者の皆様,インタビューにご協力いただきましたスタッフの皆様に,心より感謝申し上げます.

利益相反:本研究における利益相反は存在しない.

著者資格:佐々木および入江は研究の着想およびデザイン,分析の実施,草稿の作成に貢献;金子および新家は研究デザイン,分析の実施,原稿への示唆および研究プロセス全体への助言に貢献,および草稿の作成;菅原および塩飽は原稿への示唆および研究プロセス全体への助言に貢献した.すべての著者は最終原稿を読み,承認した.

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