2026 年 46 巻 p. 12-23
目的:急性期病院における病棟看護師の脳卒中患者への退院支援実践状況と関連要因を明らかにする.
方法:日本脳卒中学会の一次脳卒中センターコアに認定された病院の脳外科/脳神経内科病棟の看護師719名に対し,病棟看護師の退院支援実践自己評価尺度を含む質問紙調査を実施した.
結果:有効回答180名を分析対象とし,重回帰分析の結果,退院支援カンファレンスの実施(β = .260, p < .001),医師との連携(β = .205, p = .005),教育課程外での退院支援教育受講(β = .185, p = .007),手順書・マニュアルの活用(β = .177, p = .008)の順に関連していた.
結論:脳卒中患者の退院支援を行う病棟看護師では,退院支援カンファレンスの活用,医師との連携,教育課程外での退院支援教育の受講,および手順書・マニュアルの活用があるほど,退院支援実践力が高いことが示された.
Objective: This study aimed to examine the current status of discharge support practices for stroke patients provided by nurses in acute care hospitals and to identify the factors associated with these practices.
Methods: A questionnaire was distributed to 719 nurses working in the neurosurgery or neurology wards of hospitals certified as primary stroke centers by the Japan Stroke Society. The survey included the Discharge Planning of Ward Nurses scale. Statistical analyses were performed using the scale as the dependent variable.
Results: Data from 180 valid responses were analyzed. Multiple regression analyses revealed that the implementation of discharge support conferences (β = .260, p < .001), collaboration with physicians (β = .205, p = .005), participation in discharge support education outside of formal curricula (β = .185, p = .007), and the use of guidelines and manuals (β = .177, p = .008) were significantly associated with better discharge support practice scores.
Conclusion: In acute care hospitals, the discharge support practices of ward nurses for stroke patients were found to be associated with higher levels of practical competence in the following order: use of discharge support conferences, collaboration with physicians, participation in discharge support education outside of formal curricula, and the use of procedural manuals and guidelines.
脳血管疾患(以下,脳卒中)は,脳の血管が詰まる「脳梗塞」と脳の血管が破れる「脳出血」,脳の血管の一部に動脈瘤ができて破裂する「くも膜下出血」に大別される(日本脳卒中学会,2025a).厚生労働省の2020年の患者調査によると,脳卒中の受療率は悪性新生物と同程度で,10万人あたり98人が入院していることが報告されている(厚生労働省,2022a).疾患別の入院期間調査では,脳卒中の平均入院期間は77.4日で,神経系の疾患やアルツハイマー病に次いで長いことが報告されている(厚生労働省,2022b).また,脳卒中発症後1年未満の再発率は11%,5年以内の再発率は26%というデータも報告されている(Flach et al., 2020).さらに,脳卒中は麻痺や言語障害などの障害を引き起こし,Activities of Daily Living(ADL:日常生活動作)やInstrumental Activities of Daily Living(IADL:手段的日常生活動作)の介助を要することが多く,要介護者となる主な原因として認知症に次いで2番目に多いという報告もある(厚生労働省,2022c).このように,脳卒中患者は入院中だけでなく,退院後も課題を抱えることが予測されるため,入院中から退院後の生活を見据えた支援が求められる.しかしながら,厚生労働省の発表によると,本邦の病院(精神・感染症・結核・療養・一般病床を含む)における平均在院日数は,2003年が36.4日(厚生労働省,2004),2013年が30.6日(厚生労働省,2013),2023年が26.2日(厚生労働省,2023)と年々短縮し,特に,急性期病院における脳卒中患者の在院日数はさらに短いとの報告もあるように(本田ら,2018;加藤ら,2019;大久保ら,2024),退院後の生活を見据えた支援がますます困難になると考えられる.そのような中で,脳卒中患者の退院支援に関する看護師の調査では,「家族が高齢である」や「家族の理解不足がある」など患者家族の要因に関する退院支援の課題が挙がっている(脇田ら,2018).以上より,脳卒中患者に対する退院支援の状況は疾患の特殊性に加え,在院日数の短縮や患者家族(介護者)の要因など複数の課題が絡み合い,さらに複雑化していることを示している.
退院支援とは,医療の継続性や退院に伴って新たに生じる心理的・社会的問題の予防や対応のために,入院初期から退院後の生活を見据えた介入のことである(厚生労働省,2022d).その介入の多くに病棟看護師が携わっている.退院支援に関わる病棟看護師は患者・家族との関係性を活かして意向や希望を把握し,合意形成に向けた話し合いの機会を設定することが求められている(中村,2021)ことからも,病棟看護師が患者や家族から得た情報を看護師間で共有することで,効果的な支援が可能になる.また,退院支援には多職種連携の重要性も報告されており(志田ら,2024),多職種が集まる退院カンファレンスなどで患者のニーズに応じた最適なプランを策定することが求められている.加えて,先行研究において質の高い退院支援を受けた患者はQuality of Life(生活の質)が高く,退院後の不安・抑うつ・未解決のニーズが少ないと報告されていることから(Andrew et al., 2018),脳卒中患者に対しても病棟看護師の退院支援実践能力を向上させることが重要となる.特に,脳卒中患者の退院支援においては,脳卒中特有の病態の理解や再発リスクを踏まえた療養指導が不可欠であり,そのため,脳卒中患者の病態や治療に関する深い知識と技術を活用した実践力を有する脳卒中看護認定看護師は,実践的な支援を行う上で重要な資源となる.したがって,病棟看護師が脳卒中看護認定看護師と連携し,専門的視点を取り入れた退院支援を行うことが,より質の高い支援の実現に寄与すると考えられる.
急性期病院看護師を対象とした退院支援に関する調査では,短期間での退院支援の実施や労働環境に伴う実施の困難さ,急性期病院の機能に関連した困難さに加え,患者の高齢化や家族の理解不足といった対象者側の要因が挙げられており,また,看護師自身の退院支援に関する知識や実践能力の不足も困難要因として指摘されている(原・辻,2022).さらに,近年,退院支援の実践能力を自己評価するための尺度として「病棟看護師の退院支援実践自己評価尺度」が開発された(Sakai et al., 2016).この尺度を使用することで,看護師の退院支援の実践状況を定量的に評価できるだけでなく,退院支援に関連する多様な要因を検討することが可能になると考えられる.実際に本尺度を活用した先行研究では,年齢が高い,看護師経験年数が長い,役職者,高齢者の介護経験がある,仕事意欲が高いといった個人属性が退院支援実践の促進因子であることが報告されている(山路ら,2020;竹村ら,2022;青木ら,2023).また,退院支援に関する院内研修の受講歴や退院調整カンファレンスにおける多職種と情報共有,在宅療養後のフィードバック経験といった学習機会や情報提供の機会に加え,退院支援に関する知識や苦手意識,あるいは退院支援の成功体験による達成感があるなど,看護師自身の認識や感情も関連因子として指摘されている(山路ら,2020;竹村ら,2022).さらには,クリニカルパスや電子カルテの導入,自施設独自の退院支援ツールの整備,病院管理者による退院支援活動への理解といった組織的要因も,病棟看護師の退院支援実践を促進する要因として明らかになっている(西山・関井,2019;Adachi et al., 2022).このように,個人要因・学習等の実践経験・組織的要因といった多層的な因子が退院支援実践に影響を与えていることが示されており,退院支援能力の向上には,看護師個人への教育的支援とともに,職場環境やシステム整備の充実が必要であることが示唆される.しかしながら,これらの要因は,地域包括ケア病棟の看護師を対象とした調査,または脳卒中以外の疾患等の退院支援に関する調査の結果に基づいており,急性期病院で脳卒中患者を支援する看護師に焦点を当てた退院支援実践能力に関する研究は見当たらない.以上より,脳卒中の疾患の特徴に加え,在院日数の短縮化や患者家族の複雑な背景下において,病棟看護師が行う退院支援の向上は喫緊の課題といえる.
そこで本研究を通じて,急性期病院における脳卒中患者への退院支援実践状況を把握し,看護師の退院支援実践に関連した要因を抽出することで,脳卒中領域に勤務する病棟看護師に対する退院支援実践の向上のための示唆を得ることが期待される.
急性期病院における脳卒中患者に対する病棟看護師の退院支援実践状況とそれに関連する要因を明らかにすることを目的とした.
本研究は,探索的横断研究である.具体的には,急性期病院における脳卒中患者に対する病棟看護師からデータを収集し,重回帰分析を用いて解析した.目的変数となる脳卒中患者の退院支援を行う病棟看護師の退院支援実践には,「病棟看護師の退院支援実践自己評価尺度(Sakai et al., 2016)」を採用し,説明変数は年齢や性別,看護経験年数等の基本属性と教育受講歴や多職種連携等の退院支援に関する項目の個人的要因に関する内容とした.なお,退院支援に関する手順書・マニュアルの活用や多職種連携については,活用や連携についての個人の認識と捉え,個人要因として整理した.また,先行研究で関連が報告されているクリニカルパスや電子カルテの導入等の組織的要因については調査対象の病院規模をある程度揃えることで統制した(図1).

退院支援:看護学大辞典(永井・田村,2013)を参考に「入院患者が適切な時期に退院し,次の療養場所(自宅または施設)への移行や移行後の生活が円滑にいくようにするための患者および家族に行われる支援全般」とした.
3. 調査方法 1) 研究対象者日本脳卒中学会に一次脳卒中センターコア(日本脳卒中学会,2025b)として認定されている病院(279施設)のうち,病床数が400床以上で,脳卒中看護認定看護師または脳卒中リハビリテーション看護認定看護師(以下,脳卒中看護認定看護師)が在籍している病院(102施設)の脳外科または脳神経内科で勤務する看護師(脳卒中患者に退院支援を実施している看護師)を対象とした.なお,看護師長,脳卒中看護認定看護師,脳外科または脳神経内科での勤務期間が1年未満の看護師は除外した.
2) サンプルサイズ本研究では,対象施設102のうち研究協力に同意が得られる割合を約30%と仮定し,約30施設と見積もった.各施設の対象者候補を約30名と見込み,総対象者数は約900名と算出した.質問紙の回収率は約20%と予測し,最終的な解析対象者数は約180名と見込んだ.本研究は探索的研究であり重回帰分析のサンプルサイズについては,線形重回帰の経験則 N ≥ max(50 + 8m, 104 + m)を参考にした(Green, 1991).本式における N はサンプルサイズ,m はモデルに含める独立変数の数を意味する.計画段階では予測因子m = 15を想定しており,必要例数の目安は170名であった.
3) 調査期間2024年5月1日~5月31日
4) データ収集方法研究対象者が所属する病院(102施設)の看護部長宛に研究説明書,研究同意書を送付した.その後,同意が得られた病院(48施設)に研究対象者用のアンケートフォームのURLおよびQRコードを記載した研究説明書を送付し,研究対象者への配布を依頼した.自由意思に基づき研究対象者から回答を得た.
5) 調査内容 (1)基本属性病院立地地域ブロック,年齢,性別,看護師経験年数,脳外科または脳神経内科病棟(脳卒中患者が入院する病棟)の看護師経験年数,職位(主任もしくは副看護師長,スタッフ),最終学歴(5年一貫教育課程,専門/専修学校/短期大学教育課程,大学教育課程,大学院教育課程),資格(専門看護師,脳卒中以外の認定看護師,診療看護師,有していない)とした.
最終学歴については,「5年一貫教育課程/専門・専修学校・短期大学教育課程」と回答したものを非学士課程修了,「大学教育課程/大学院教育課程」と回答したものを学士課程修了と分類した.
資格については,「専門看護師/脳卒中以外の認定看護師/診療看護師」と回答したものを有していると分類した.
(2)退院支援に関する項目教育課程での退院支援に関する教育受講の有無,教育課程外(過去5年間)での退院支援に関する教育受講の有無,退院支援に関する困難感,医師/脳卒中看護認定看護師/メディカルソーシャルワーカーとの連携の程度,退院支援に関する手順書・マニュアル/退院支援カンファレンスの活用の程度とした.
退院支援に関する困難感については,「大いに困難がある/まあまあ困難がある/あまり困難はない/全く困難はない」の4件法で回答を求め,「大いに困難がある/まあまあ困難がある」と回答したものを困難感あり,「あまり困難はない/全く困難はない」と回答したものを困難感なしと分類した.
医師/脳卒中看護認定看護師/メディカルソーシャルワーカーとの連携の程度については,「あなたは退院支援に関して,必要時に(各職種)と連携できていますか?」という問いに対し,「連携できている/まあまあ連携できている/あまり連携できていない/連携できていない」の4件法で回答を求め,「連携できている/まあまあ連携できている」と回答したものを連携あり,「あまり連携できていない/連携できていない」と回答したものを連携なしと分類した.
退院支援に関する手順書・マニュアル/退院支援カンファレンスの活用の程度については,「活用できている/まあまあ活用できている/あまり活用できていない/活用できていない」の4件法で回答を求め,「活用できている/まあまあ活用できている」と回答したものを活用あり,「あまり活用できていない/活用できていない」と回答したものを活用なしと分類した.
(3)病棟看護師の退院支援実践力病棟看護師の退院支援実践力は,坂井らによって信頼性と妥当性が確認され,開発された病棟看護師の退院支援実践自己評価尺度(Sakai et al., 2016)を用いて測定した.本尺度は4因子24項目から構成され,第1因子「患者・家族からの情報収集」,第2因子「患者・家族への意思決定支援」,第3因子「社会資源の活用」,第4因子「院内外の多職種連携による療養指導」に分類される.各質問項目は6件法のリッカートスケールで「1.全くできていない」~「6.十分できている」でそれぞれ点数化されている.得点範囲は24~144点で,得点が高いほど退院支援実践度の自己評価が高いと評価される.各下位尺度における得点率は,対象者の得点/下位尺度の満点で算出した.なお,尺度全体及び各下位尺度の信頼性・妥当性は確認されている.尺度の使用にあたっては,開発者に連絡し,日本語版の尺度を入手し,使用の許可を得た.
6) 分析方法得られたデータの単純集計を行ったのち,病棟看護師の退院支援実践自己評価尺度を従属変数とし,その他の調査項目を独立変数として統計解析を行った.病棟看護師の退院支援実践自己評価尺度については,尺度全体Cronbach’s α係数を算出し,内的一貫性を確認した.また,Shapiro-Wilkにより正規性検定を行い,正規分布を確認した.退院支援実践に関連する変数を検討するため,各独立変数について単回帰分析を実施し,有意確率が10%未満である変数を選択し,強制投入法による重回帰分析を行った.さらに病棟看護師の退院支援実践自己評価尺度の下位尺度に対しても同様の独立変数を用いて強制投入法による重回帰分析を行った.なお,重回帰分析における残差の仮定は,ヒストグラムおよびQ-Qプロットにて正規性を確認した上でDurbin–Watson比(1.968~2.154)の範囲内で残差の自己相関がないことを確認した.重回帰分析の変数の設定時には,Variance Inflation Factor(以下,VIF)が10以上の項目は除外し,その後VIFは全て10未満(≤1.333)と多重共線性に問題がないことを確認した.全ての解析には,統計解析ソフトIBM SPSS Statistics Ver. 29を用いた.検定の有意水準は5%,信頼区間の信頼係数は95%とした.
7) 倫理的配慮研究対象者に,本研究の目的と概要および倫理的配慮について記載した研究説明書を配布し,その後,研究対象者が研究説明書を確認の上,自由意思に基づきアンケートフォームを開き,Web上での同意ボタンの押下とアンケート回答の送信をもって同意が得られたとみなした.アンケートツールはSSL化されており,24時間の監視体制のセキュリティがあるGoogleフォームを使用し,調査を実施した.また,アンケートは無記名とし,個人が特定されないように配慮した.なお,本研究は,長崎大学大学院医歯薬学総合研究科(保健学系)倫理委員会の承認を得て実施した(許可番号:24020805).
研究対象となった48施設に所属する研究対象者719名のうち,看護師183名(回収率25.5%)から回答が得られ,同意しないと回答した1名及び所属年数の基準を満たしていない2名を除いた180名(有効回答率25.0%)を分析対象とした.
研究対象者の平均年齢±標準偏差は33.5 ± 8.0歳で,脳卒中領域看護経験年数±標準偏差は6.0 ± 4.3年であった.最終学歴は,専門/専修学校/短期大学教育課程89名(49.4%),大学教育課程80名(44.4%)の順で多かった(表1).
| 項目 | 人数 | % | |
|---|---|---|---|
| 病院立地地域ブロック | 東北 | 6 | 3.3 |
| 関東 | 64 | 35.6 | |
| 中部 | 32 | 17.8 | |
| 近畿 | 20 | 11.1 | |
| 中国・四国 | 25 | 13.9 | |
| 九州 | 33 | 18.3 | |
| 性別 | 女性 | 159 | 88.3 |
| 男性 | 21 | 11.7 | |
| 職位 | スタッフ | 156 | 86.7 |
| 主任/副看護師長 | 24 | 13.3 | |
| 最終学歴 | 5年一貫教育課程 | 10 | 5.6 |
| 専門/専修学校/短期大学教育課程 | 89 | 49.4 | |
| 大学教育課程 | 80 | 44.4 | |
| 大学院教育課程 | 1 | 0.6 | |
| 専門・認定・診療看護師の資格 | 有している | 10 | 5.6 |
| 有していない | 170 | 94.4 | |
| 平均±標準偏差 | |||
| 年齢 | 33.5 ± 8.0 | ||
| 看護師経験年数 | 11.2 ± 7.5 | ||
| 脳卒中看護経験年数 | 6.0 ± 4.3 | ||
退院支援に関する項目については,教育課程内外で約半数の看護師が退院支援に関する教育を受講していた.脳卒中患者への退院支援に対して困難感があるものは161名(89.4%)であった.多職種連携については,医師との連携あり143名(79.4%),脳卒中看護認定看護師との連携あり52名(28.9%),メディカルソーシャルワーカーとの連携あり170名(94.4%)であった.退院支援に関する手順書・マニュアルの活用あり66名(36.7%),退院支援カンファレンスの活用あり140名(77.8%)であった(表2).
| 項目 | 人数 | % | |
|---|---|---|---|
| 教育課程での退院支援教育受講の有無 | あり | 96 | 53.3 |
| なし | 84 | 46.7 | |
| 教育課程外(過去5年間)での退院支援教育受講の有無 | あり | 87 | 48.3 |
| なし | 93 | 51.7 | |
| 退院支援困難感 | 大いに困難がある | 25 | 13.9 |
| まあまあ困難がある | 136 | 75.5 | |
| あまりない困難はない | 19 | 10.6 | |
| 全く困難はない | 0 | 0 | |
| 医師との連携 | 連携できている | 26 | 14.4 |
| まあまあ連携できている | 117 | 65.0 | |
| あまり連携できていない | 35 | 19.5 | |
| 連携できていない | 2 | 1.1 | |
| 脳卒中看護認定看護師との連携 | 連携できている | 18 | 10.0 |
| まあまあ連携できている | 34 | 18.9 | |
| あまり連携できていない | 65 | 36.1 | |
| 連携できていない | 63 | 35.0 | |
| メディカルソーシャルワーカーとの連携 | 連携できている | 73 | 40.5 |
| まあまあ連携できている | 97 | 53.9 | |
| あまり連携できていない | 10 | 5.6 | |
| 連携できていない | 0 | 0 | |
| 手順書・マニュアルの活用 | 活用できている | 12 | 6.7 |
| まあまあ活用できている | 54 | 30.0 | |
| あまり活用できていない | 77 | 42.8 | |
| 活用できていない | 37 | 20.5 | |
| 退院支援カンファレンスの活用 | 活用できている | 44 | 24.5 |
| まあまあ活用できている | 96 | 53.3 | |
| あまり活用できていない | 37 | 20.5 | |
| 活用できていない | 3 | 1.7 |
病棟看護師の退院支援実践自己評価尺度の結果を表3に示す.尺度全体のCronbach’s α係数は.95,平均点±標準偏差は91.2 ± 18.2点であった.各下位尺度のCronbach’s α係数は第1因子(患者・家族からの情報収集).90,第2因子(患者・家族への意思決定支援).92,第3因子(社会資源の活用).89,第4因子(院内外の多職種連携による療養指導).88であった.さらに,各下位尺度の平均点±標準偏差(得点率%)は,第1因子22.1 ± 4.0点(73.7%),第2因子28.1 ± 6.0点(66.9%),第3因子12.0 ± 4.3点(50.0%),第4因子29.0 ± 7.2点(60.4%)であった.
| 平均(点) | 標準偏差 | |||||
|---|---|---|---|---|---|---|
| 全体 | 91.2 | 18.2 | 平均(点) (得点率) |
標準偏差 | ||
| 第1因子 患者・家族からの情報収集 |
設問1 | 患者の入院前の生活状況(ADL,認知レベル,住環境等)について情報収集する | 4.5 | 0.9 | 22.1(73.7) | 4.0 |
| 設問2 | 患者の疾患,進行度,予後について情報収集する | 4.5 | 1.0 | |||
| 設問3 | 患者のADL状況,認知・理解能力について情報収集する | 4.7 | 0.9 | |||
| 設問4 | 家族構成と関係性,キーパーソン(インフォーマルも含む)について情報収集する | 4.5 | 1.0 | |||
| 設問5 | 患者の社会背景(生活史,職業,信条,趣味等)について情報収集する | 3.9 | 1.0 | |||
| 第2因子 患者・家族への意思決定支援 |
設問6 | 患者・家族が退院に向けてどのような思いを抱き,今後どのように過ごしたいのか意向を把握する | 4.3 | 1.0 | 28.1(66.9) | 6.0 |
| 設問7 | 患者・家族の理解度に合わせて医師からの病状説明の場を設定する | 4.1 | 1.1 | |||
| 設問8 | 患者のADLより,今後の生活で起こりうる課題について検討する | 4.2 | 1.0 | |||
| 設問9 | 患者・家族の思いを医師と共有して,今後の方向性を話し合う | 3.9 | 1.0 | |||
| 設問10 | 病状に伴い,今後起こりうる生活上の変化について患者・家族へ説明する | 3.9 | 1.0 | |||
| 設問11 | 現在の病院機能と役割について患者・家族へ説明する | 3.8 | 1.2 | |||
| 設問12 | 患者・家族・医療者間で今後の方向性の意思・意向にズレが生じていないか確認する | 4.0 | 1.0 | |||
| 第3因子 社会資源の活用 |
設問13 | 患者の在住する地方自治体には在宅療養を支えるためにどのようなサービスがあるのか把握する | 3.2 | 1.2 | 12.0(50.0) | 4.3 |
| 設問14 | 介護保険の対象者,申請方法,サービス内容について患者・家族へ説明する | 3.3 | 1.3 | |||
| 設問15 | 往診や訪問看護の対象者と利用方法について必要時に患者・家族へ説明する | 3.0 | 1.3 | |||
| 設問16 | 生活保護制度による医療費の負担割合について必要時に患者・家族へ説明する | 2.5 | 1.2 | |||
| 第4因子 院内外の多職種連携による療養指導 |
設問17 | 患者・家族へ病棟スタッフが統一した内容で医療処置を指導する | 4.0 | 1.1 | 29.0(60.4) | 7.2 |
| 設問18 | 点滴の管理や内服管理方法について医師や薬剤師と連携して患者・家族が対応可能となるよう簡素化する | 3.8 | 1.2 | |||
| 設問19 | 退院後の環境を想定したADL動作についてリハビリスタッフと連携して患者・家族に指導する | 4.0 | 1.0 | |||
| 設問20 | 栄養士やNSTに在宅での食事方法や栄養について相談する | 3.5 | 1.2 | |||
| 設問21 | 退院調整部門と協働して,患者の生活に合わせた医療処置の方法をアレンジする | 3.4 | 1.2 | |||
| 設問22 | 在宅生活で起こりうる異常や緊急時の対応を患者・家族が理解できているか確認する | 3.4 | 1.3 | |||
| 設問23 | 退院前カンファレンスで在宅生活の課題についてケアマネージャーや往診医,訪問看護師,ヘルパー,保健師へ申し送る | 3.6 | 1.4 | |||
| 設問24 | 在宅療養の準備をする(医療材料購入について情報提供,関係医療機関との調整等) | 3.2 | 1.3 | |||
単回帰分析の結果,看護師経験年数(p = .049),脳卒中看護経験年数(p = .003),教育課程外での退院支援教育受講の有無(p < .001),退院支援困難感(p = .049),医師との連携(p < .001),メディカルソーシャルワーカーとの連携(p = .009),退院支援に関する手順書・マニュアルの活用(p < .001),退院支援カンファレンスの活用(p < .001)に関連がみられた(表4).
| 変数 | 標準化変数(β) | t値 | P |
|---|---|---|---|
| 年齢 | .133 | 1.787 | .076 |
| 性別(基準:男性) | .350 | 0.474 | .636 |
| 職位(基準:スタッフ) | .014 | 0.183 | .855 |
| 看護師経験年数 | .147 | 1.979 | .049* |
| 脳卒中看護経験年数 | .220 | 3.008 | .003** |
| 最終学歴(基準:非学士課程修了) | –.046 | –0.618 | .537 |
| 資格(専門看護師・認定看護師・診療看護師)(基準:有していない) | .076 | 1.02 | .309 |
| 教育課程での退院支援教育受講(基準:なし) | .045 | 0.597 | .551 |
| 教育課程外(過去5年間)での退院支援教育受講(基準:なし) | .285 | 3.963 | <.001*** |
| 退院支援困難感(基準:困難感なし) | –.147 | –1.979 | .049* |
| 医師との連携(基準:連携なし) | .397 | 5.766 | <.001*** |
| 脳卒中看護認定看護師との連携(基準:連携なし) | .059 | 0.782 | .435 |
| メディカルソーシャルワーカーとの連携(基準:連携なし) | .194 | 2.637 | .009** |
| 手順書・マニュアルの活用(基準:活用なし) | .340 | 4.822 | <.001*** |
| 退院支援カンファレンスの活用(基準:活用なし) | .424 | 6.239 | <.001*** |
単回帰分析(強制投入法による投入)*;p < .05,**;p < .01,***;p < .001
ダミー変数は「基準=0」「比較群=1」と設定した.標準化変数の正負は,比較群が基準に比べて従属変数に与える方向を示す.
単回帰分析の結果において,有意確率が10%未満であった変数を用いて強制投入法により重回帰分析を行った.その際にVIF 10以上であった看護師経験年数を除外し,再度強制投入法による重回帰分析を行った.重回帰分析の結果,調整済みR2は.312を示し,退院支援の実践には,退院支援カンファレンスの活用(β = .260, p < .001),医師との連携(β = .205, p = .005),教育課程外での退院支援教育受講の有無(β = .185, p = .007),退院支援に関する手順書・マニュアルの活用(β = .177, p = .008)の順に関連が示された.また,各下位尺度に対する重回帰分析の結果,第1因子については,医師との連携(β = .215, p = .007),教育課程外での退院支援教育受講の有無(β = .171, p = .023),退院支援に関する手順書・マニュアルの活用(β = .162, p = .028)の順に関連が示された.第2因子については,退院支援カンファレンスの活用(β = .260, p < .001),医師との連携(β = .224, p = .003),教育課程外での退院支援教育受講の有無(β = .150, p = .032),退院支援に関する手順書・マニュアルの活用(β = .137, p = .046)の順に関連が示された.第3因子については,退院支援カンファレンスの活用(β = .200, p = .015),退院支援に関する手順書・マニュアルの活用(β = .189, p = .013)の順に関連が示された.第4因子については,退院支援カンファレンスの活用(β = .267, p < .001),医師との連携(β = .189, p = .010),教育課程外での退院支援教育受講の有無(β = .188, p = .006)の順に関連が示された(表5).
| 変数 | 全体 | 第1因子 家族からの情報収集 |
第2因子 患者・家族への 意思決定支援 |
第3因子 社会資源の活用 |
第4因子 院内外の多職種連携 |
|||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 標準化係数(β) | P | 標準化係数(β) | P | 標準化係数(β) | P | 標準化係数(β) | P | 標準化係数(β) | P | |
| 退院支援カンファレンスの活用(基準:活用なし) | .260 | <.001*** | .101 | .202 | .260 | <.001*** | .200 | .015* | .267 | <.001*** |
| 医師との連携(基準:連携なし) | .205 | .005** | .215 | .007** | .224 | .003** | .506 | .613 | .189 | .010* |
| 教育課程外(過去5年間)での退院支援教育受講(基準:なし) | .185 | .007** | .171 | .023* | .150 | .032* | .100 | .192 | .188 | .006** |
| 手順書・マニュアルの活用(基準:活用なし) | .177 | .008** | .162 | .028* | .137 | .046* | .189 | .013* | .130 | .054 |
| 脳卒中看護経験年数 | .089 | .201 | .067 | .383 | .087 | .224 | .032 | .686 | .096 | .170 |
| 退院支援困難感(基準:困難感なし) | –.074 | .246 | –.064 | .365 | –.113 | .088 | –.037 | .605 | –.036 | .576 |
| 年齢 | .032 | .657 | .034 | .662 | –.021 | .772 | .029 | .723 | .061 | .394 |
| メディカルソーシャルワーカーとの連携(基準:連携なし) | .018 | .784 | –.044 | .555 | –.017 | .801 | .046 | .546 | .058 | .394 |
| R2 | .343 | .197 | .302 | .152 | .327 | |||||
| 自由度調整済みR2 | .312 | .160 | .270 | .113 | .295 | |||||
重回帰分析(強制投入法による投入):単回帰分析でp < .10の変数を投入した *;p < .05,**;p < .01,***;p < .001
投入した因子:年齢,脳卒中看護経験年数,教育課程外(過去5年間)での退院支援教育受講,退院支援困難感,医師との連携,メディカルソーシャルワーカーとの連携,手順書・マニュアルの活用,退院支援カンファレンスの活用ダミー変数は「基準=0」「比較群=1」と設定した.標準化変数の正負は,比較群が基準に比べて従属変数に与える方向を示す.
本調査における急性期病院の脳卒中病棟看護師の退院支援実践自己評価尺度の平均得点は91.2 ± 18.2点であった.これは,尺度開発の際の調査対象者の平均得点90.89 ± 18.22点(Sakai et al., 2016)や急性期・慢性期病院における病棟看護師の平均得点90.1 ± 15.5点(西山・関井,2019)と比較しても,大きな差は見られなかった.一方で,東海北陸地方の地域包括ケア病棟の看護師を対象とした調査における平均得点100.31 ± 14.61点(竹村ら,2022)や関東地方の地域包括ケア病棟の看護師を対象とした調査における平均得点100.49 ± 14.42点(青木ら,2023)に比べて,本調査の得点はやや低い傾向にあった.また,本調査において最も得点率が低かった下位尺度「社会資源の活用」は50.0%であり,地域包括ケア病棟に勤務する看護師の得点率(竹村ら,2022;青木ら,2023)より約10%低い得点率であった.井上の調査において,急性期病院看護師の社会資源の知識不足が課題として示されており(井上,2015),本研究対象の看護師にも同様の知識不足の影響があった可能性が考えられる.さらに,本調査と地域包括ケア病棟の得点の差異は病院機能の特徴によるものと考える.脳卒中発症直後の治療は救命が最優先であり,患者の状態安定化が主な役割となるため,退院療養に向けた指導に十分な時間を確保することが難しいと報告されている(Siskaningrum et al., 2023).これに対し,地域包括ケア病棟は急性期治療を経過した患者や在宅で療養を行っている患者などを受け入れ,患者の在宅復帰支援を行う機能を有しており,地域包括ケアシステムを支える重要な役割を担っている(厚生労働省,2021).また,地域包括ケア病棟では在院日数が最大60日まで算定されること(厚生労働省,2021)から,退院指導に費やす時間を確保できると予想される.さらに,地域包括ケア病棟には入退院支援及び地域連携業務を担う部門を設置することの施設条件があり,メディカルソーシャルワーカー等の入退院支援部門のスタッフと協力することで,患者や家族のニーズに沿った介護保険サービス等の社会資源を含む退院支援計画の策定が可能になることなどの特徴が影響したと考える.
また,疾患の違いによる退院支援実践でみたところ,山路らの終末期がん患者の退院支援に関する調査(山路ら,2020)において,平均得点は97.8 ± 14.3点と本調査より高く,特に第4因子(院内外の多職種連携による療養指導)で得点率に約20%の差があった.脳卒中患者は,麻痺や言語障害などの障害の特殊性に加え,疾患の転帰が多岐にわたるため,多職種連携による退院支援の検討に時間を要すると考える.一方で,終末期がん患者は,入退院支援加算1の「悪性腫瘍,認知症又は誤嚥性肺炎等の急性呼吸器感染症のいずれかであること」や「退院後に医療処置(胃瘻等の経管栄養法を含む.)が必要なこと」などの対象であり,在宅療養の支援が重視されることで,院内外の多職種連携による療養指導の得点に影響した可能性が考えられる.
2. 病棟看護師の退院支援実践に関連する要因重回帰分析の結果,退院支援実践には退院支援カンファレンスの活用や医師との連携といった多職種連携の項目が関連していることが明らかになった.また,それらの項目は,下位尺度の第2因子(患者・家族への意思決定支援)および第4因子(院内外の多職種連携による療養指導)の関連要因であった.退院支援カンファレンスは,患者の退院に向けた支援やケア計画を多職種で協議し,患者の退院準備を円滑に進めるための重要な役割を果たしている.患者の状態や退院後のケア計画を共有することで,退院後のケアの質の向上を図るための具体的な対応を検討できる機会を提供するものである(全国国民健康保険診療施設協議会,2013).特に,急性期病院における脳卒中患者の退院支援においては,在院日数が短い中で,退院後の再発予防などの療養指導を含むケア計画立案が必要となるため,早期からの院内外の多職種との連携が重要となる.先行研究においては,カンファレンス開催回数や退院前カンファレンスの参加経験が,退院支援実践に関連する要因であることが示されている(山本・百瀬,2018;有田・後藤,2021).また,看護師と医師との良好な関係性も退院支援実践を促進する要因として報告されている(金城ら,2021).さらに,内田らによる脳卒中患者の家族との合意形成支援の調査では,家族への合意形成に影響を与える要因として「カンファレンスの実施」や「医師説明時の同席」が挙げられており,多職種が患者と家族の状況を共有し,そこから適切な看護へとつなげることの重要性が強調されている(内田・青木,2021).以上のことから,退院支援カンファレンスの活用や医師との連携は,病棟看護師の療養指導を含む具体的な退院支援の立案や家族との合意形成を促進し,結果として退院支援実践につながった可能性が考えられる.さらに,看護師が多職種カンファレンスを積極的に運営することにより,看護師の実践力が強化されることが報告されている(出原・篠田,2021)ことからも,今後の看護師の退院支援カンファレンスへの主体的な関与は,より質の高い退院支援実践の実現につながると期待される.一方で,本研究では多職種連携の要素として,医師との連携に加えて脳卒中看護認定看護師やメディカルソーシャルワーカーとの連携を検討したが,病棟看護師の退院支援実践との有意な関連は認められなかった.脳卒中患者の退院支援においては,脳卒中看護に特化した知識を有する脳卒中看護認定看護師との連携は重要であると考えられるが,本研究でその連携が病棟看護師の退院支援実践と関連を示さなかった.その背景には,研究対象者の約7割が脳卒中看護認定看護師との連携が「できていない」または「あまりできていない」と回答しており,脳卒中患者の退院支援における連携体制が十分に整備されていないことが影響している可能性がある.また,メディカルソーシャルワーカーとの連携に関しては,単回帰分析では連携があるほど退院支援実践尺度の得点は高くなる結果であったが,重回帰分析では関連がみられなかった.これは,メディカルソーシャルワーカーが退院支援カンファレンスに参加する頻度の高い職種であることから,退院支援カンファレンスの活用との交絡の影響を受けた可能性が考えられる.
教育課程外での退院支援教育受講が看護師の退院支援実践に関連することが確認された.また,下位尺度の第1因子(患者・家族からの情報収集),第2因子(患者・家族への意思決定支援)および第3因子(社会資源の活用)の関連要因であった.坂井が行った退院支援に関する研修会前後の縦断的研究において,研修受講後に病棟看護師の退院支援実践自己評価尺度のほぼ全ての項目で有意な上昇が見られた(坂井,2015).また,近藤らの調査において,退院支援教育の受講経験がある病棟看護師は,在宅生活を見据えた情報把握,調整・指導,社会資源の活用など,退院支援行動を積極的に行っていたことが報告されている(近藤ら,2021).このことから,本調査においても研修会や勉強会への参加によって,家族・患者からの情報収集や社会資源の活用といった退院支援行動につながったと考えられる.
そして,退院支援に関する手順書・マニュアルの活用が退院支援実践に関連することが確認された.また,第1因子(患者・家族からの情報収集)や第2因子(患者・家族への意思決定支援),第3因子(社会資源の活用)の関連因子であった.退院支援に関する手順書やマニュアルは,患者が医療機関から在宅へ円滑に移行できるよう,具体的な指示や行動指針を提供している.病棟看護師がこれらのツールを活用することにより,退院支援に必要な情報の収集や患者・家族の意向確認,社会資源の情報提供など,必要な項目を統一的に実施することができる.小﨑らの研究では,家族への看護実践と標準化されたマニュアルの有無との関連が報告されている(小﨑・中村,2022).脳卒中患者は,言語障害などのコミュニケーション上の問題から患者本人から適切な情報を収集することが困難な場合が考えられるが,本調査の対象者は,マニュアルを活用することで,患者や家族からの情報収集や患者・家族への意思決定支援,社会資源の活用の提案につながり,退院支援実践を促進する要因であったと考えられる.さらに,退院支援に関する手順書やマニュアルは評価と改善の指標ともなり得るため,それらを活用することが今後の退院支援実践の向上につながると考える.
3. 脳卒中患者の退院支援の課題解決に向けての示唆脳卒中ケアユニットに勤務する認定看護師や専門看護師の資格を有している看護師は,患者の身体的変化の認識に関する実践スコアが高いことも示されており,経験や高度な教育が実践の質向上に寄与することが示唆されている(Hisaka et al., 2021).これらの知見は,看護師の退院支援においても,脳卒中看護認定看護師との連携が実践の質を高める要因となり得ることを支持している.脳卒中看護認定看護師には,重篤化回避のためのモニタリングとケア,早期離床と生活の再構築に向けた支援,在宅での生活を視野に入れたケアマネジメントと意思決定支援,身体所見から病態を判断し,抗けいれん剤,抗精神病薬,抗不安薬の臨時投与に関する知識・技術が求められる(日本看護協会,2025).また,認定看護師の目的には実践に加え,看護師に対する指導や相談も含まれている.本調査では,脳卒中看護認定看護師との連携は病棟看護師の退院支援実践との関連は明らかではなかった.しかし,退院支援で困難感を感じている看護師は9割近くに達しているにも関わらず,約7割が「脳卒中看護認定看護師との連携ができていない」という状況であった.今後は,認定看護師との連携が進むことで,病棟看護師の看護実践の質が向上するとともに,退院支援の困難感が軽減され,脳卒中患者に対する退院支援実践を支える一助となることが期待される.
本研究の限界として,調査対象施設は47都道府県中27都府県にわたるものの,有効回答者数が180名と少なかったため,調査結果の一般化には限界がある.退院支援実践に関連する要因としては様々な要因があると考えられるが,組織的要因(クリニカルパスの導入,退院支援活動に関する病院管理者の理解等)や看護師の退院支援に関わる知識,退院支援の重要性の認識,退院支援への関心などの項目が調査できていないため,退院支援実践に関連する要因の抽出の際の限界と考える.そして今回の重要な点として,退院支援の実践状況及び病棟看護師の退院支援実践力を評価する指標に病棟看護師の退院支援実践自己評価尺度を用いたが,本尺度はあくまで退院支援実践に関する認識を自己評価したものであり,実際の退院支援の実施状況とは異なる可能性がある.また,脳卒中患者の退院先については調査しておらず,所属施設の自宅退院と転院の割合の違いによる影響の違いが見られた可能性も考えられる.さらに,研究対象施設を脳卒中看護師が在籍する施設として調査を実施したが,脳卒中看護認定看護師の所属部署や病院での役割については聞き取れていないため,脳卒中看護認定看護師との連携に関する解釈にも限界がある.
本研究において,急性期病院における脳卒中患者に対する退院支援を実践する病棟看護師では,退院支援カンファレンスの活用がある,医師との連携がある,教育課程外での退院支援教育受講がある,手順書・マニュアルの活用があるといった順で,退院支援実践力が高いことが明らかとなった.これらの結果から,看護師の退院支援実践力を高めるためには,カンファレンスや手順書・マニュアル等の整備,多職種間の協力体制の強化,および研修会受講の促進が重要であることが示唆された.
付記:本論文は長崎大学大学院医歯薬学総合研究科に提出した修士論文に加筆・修正したものである.なお,本稿の一部は,第44回日本看護科学学会学術集会において発表した.
謝辞:本調査にご協力いただきました研究対象者の皆様に心よりお礼申し上げます.
利益相反:本研究における利益相反は存在しない.
著者資格:筆頭著者HDは,研究の着想,研究デザイン,調査実施,統計解析および論文執筆まで研究全体のプロセスを中心に行った.KYは研究の着想,研究デザイン,調査実施,統計解析および論文執筆等の研究全体の助言を行った.MT,YO,YIは研究のデザイン,分析解釈および論文執筆への助言を行った.すべての著者は最終原稿を承認した.