目的:小児慢性疾病患者の成人移行支援を行う外来看護師による就労支援の内容と課題を明らかにし,看護師による就労支援のあり方へ示唆を得る.
方法:質的記述的研究デザインを用い,外来看護師8名に半構造化面接を実施した.
結果:看護師の就労支援は【患者の発達と理解力に応じた病気説明】,【自己管理移行の推奨】から開始された.さらに【職業準備性の育成】,【就労支援を受けるための相談能力の育成】,【職場への病気説明と調整の促し】があった.就職後は【就労状況の確認と就労継続に向けた調整】等10カテゴリが生成された.課題には【就労支援に関する知識と看護師のスキル不足】の7カテゴリが生成された.
結論:小児期からの疾患理解と自己管理支援,疾患別の身体,心理社会面のアセスメントと就労相談支援の必要性が示唆された.移行期患者が抱える問題に気づき対応できる看護師の育成と成人診療科への支援引き継ぎ体制の強化が急務と考える.
Purpose: This study aimed to organize the content of the employment support that pediatric outpatient nurses provide children with chronic illnesses as they transition to adulthood. Further, it sought to identify the challenges that these nurses face and the appropriate approaches for employment support.
Methods: This study used a qualitative descriptive research design, and semi-structured interviews were conducted with eight nurses.
Results: The employment support provided by nurses was classified into 10 categories. It started with “disease explanations tailored to the patient’s level of understanding and development” and “recommendations for transition to self-management,” followed by “developing occupational readiness,” “training in consultation skills for employment support” and “encouraging patients to explain their illness and request adjustments to their working conditions.” For already employed patients, support included “confirmation of employment status and adjustments for continued employment.” Seven categories of challenges were identified, which were primarily related to “nurses’ insufficient knowledge and skills concerning employment support.”
Conclusion: These findings highlight the importance of fostering disease understanding and self-management from childhood, along with providing disease-specific physical and psychosocial assessments and employment consultation support. There is an urgent need to help nurses recognize and address the issues faced by transition-age patients, as well as enhance the support handover framework for adult care departments.
医療の進歩により小児慢性疾病をもつ患者の生命予後が改善され,小児期医療から個々の患者に相応しい成人期医療への移り変わりである移行期医療が重要な課題とされている.1993年に米国思春期学会は,移行支援プログラムを「思春期の患者が小児科から成人科へ移るときに必要な医学的・心理社会的・教育的・職業的必要性について配慮した多面的な行動計画」と定義し,患者の自立と社会参加とを計画的に支援する必要性を示した(Blum et al., 1993).目標とされる6領域には「自らの身体能力にあった就業形態」が含まれ,具体的な行動計画の作成と実行が求められている(Reiss & Gibson, 2002).日本では,日本小児科学会による小児期発症疾患を有する患者の移行期医療に関する提言以後(横谷ら,2014),米国を参考にした疾患別の移行期診療ガイドや成人移行支援コアガイド(窪田,2020)が作成され,大学病院や小児専門病院の移行期支援外来の設置とともに,小児医療従事者が中心となり,多職種チームによる患者への支援体制の構築が進められている.
就労は社会的自立の重要な要素である.2005年度の成人期の小児慢性特定疾病患者624人を対象とした調査では就労率は66.2%で,非正規雇用が4分の1を占めていた.就労時に病気が問題となった患者が約5割,就職をあきらめたり断られたりする者もいた.一方,非就労者の約5割は就労歴がなく,就労者の約5割は転職を経験しており,多くは不安定な状況で就労している実態が明らかにされた(武井ら,2007).小児慢性疾病をもつ患者の就労上の問題には,就職活動や職場への病気説明の難しさ,病状の悪化,職種や働き方の限定,職務の遂行困難などがある(稲見・武田,2013;Soejima et al., 2020;武井ら,2007).また,高線量の頭蓋照射を受けた小児がん経験者の学習の遅れや知的障害(福井,2017),先天性心疾患による体力的な就労継続の難しさ(檜垣ら,2020),腎疾患患者の活動の制限や職業選択の制限(渡部,2012),1型糖尿病患者(藏重ら,2017)や血友病患者(後藤ら,2014)に対する社会の誤解や偏見,二分脊椎の患者の排泄ケア(塚越ら,2018)など疾患に特徴的な問題が就職や就労に影響を及ぼしている.米国においても,小児がん,糖尿病,てんかん,心臓病をもつ若年成人は疾病をもたない人に比べ大学卒業の割合,就労割合や平均所得が低い(Maslow et al., 2010).小児がん経験者ではフルタイム勤務をしていた人の10年後は健康上の理由で失業するかパートタイム勤務となっていた(Neel et al., 2024)等就労継続困難が報告されている.
小児慢性疾病をもつ患者は職業準備期に自立できる展望を得にくいまま就職時期を迎える状況があり(春名,2011),就職支援を必要と考えている患者が多いとされる(掛江,2019).成長発達過程に合わせて,子どもの主体性の割合が少しずつ高くなるような親子関係のバランスの調整,就職先への伝え方の相談窓口の提示,体力の問題や合併症に対応できるスキルの獲得,障害者手帳の取得の準備などの多職種による支援が求められている(竹之内,2017).この状況に対する看護師による就労支援として,就職活動時期の疾患理解の再教育や,自己肯定感を持てる働きかけ(野澤・住吉,2019),症状に関する相談・解決方法の提示,就労ニーズの把握,成人移行チェックリストを用いた職業選択に関する相談(落合ら,2017)が報告されている.国際的に,医療者は成人移行支援で就労への移行に取り組み,必要に応じて教育・就労先と患者との間の連絡調整を行う等支援ができる立場である(Farre et al., 2023)と報告がある.
現在,就労支援が行われる場は,成人診療科,小児科,長期フォローアップ外来と施設により異なるが,看護師が情報収集や多職種との調整に重要な役割を果たすと推察される.しかしながら,成人移行支援を行う外来看護師による就労のニーズに応じた看護実践報告は見当たらず,看護師による就労支援の内容や課題は十分に検証されていない.
そこで,本研究の目的は小児慢性疾病患者の成人移行支援を行う外来看護師による就労支援の内容と課題を明らかにし,看護師による就労支援のあり方へ示唆を得ることとした.
研究デザインは質的記述的研究法とした.
2. 用語の定義就労支援:患者自身が身体能力や通院加療を含めた生活にあった就労の計画を立てるために必要な看護介入を示す.身体.認知,心理,家族状況などのアセスメント,働き方や職場への病気説明などの支援,院内外の職種との連携を含める.職業相談,職業紹介に特化しない包括的な支援とした.
成人移行支援:小児期発症慢性疾患患者が成人期に適切で必要な医療を切れ目なく提供されることとその人らしい生活を送ることを目的とした支援である.自己管理・自己決定・ヘルスリテラシー獲得のための支援や就学・就労支援等の自立・自律支援を含む(日本小児科学会).
成人移行支援を行う外来看護師:小児科外来,長期フォローアップ外来,移行期支援外来で成人移行支援を行う看護師
3. 研究参加者研究参加者は小児慢性疾病患者の就労を支援した成人移行支援を行う外来看護師である.適合基準は,1)看護経験年数5年以上,2)就労支援経験が2例以上とした.
4. 調査内容調査内容は,属性および小児慢性疾病患者の成人移行支援を行う外来看護師による就労支援と看護師が捉えた課題とした.
5. データ収集方法本研究では調査協力依頼先として小児慢性疾患患者の成人移行支援を行う小児科外来を有する医療機関を抽出した.①移行期支援外来の設置のある12施設(うち小児がん拠点病院5施設を含む),②長期フォローアップ体制を整備している小児がん拠点病院15施設のうち重複を除く10施設,③日本成人先天性心疾患学会が指定する総合修練施設42施設のうち重複を除く29施設,④地域の中核病院として幅広い小児期疾患を診療する小児科基幹施設189施設のうち重複を除き,小児慢性疾病を診療しているとホームページで確認した上で,各都道府県から抽出できるように30施設を選定した.最終的に計81施設の看護部門の責任者宛に郵送で研究協力を依頼した.12施設から文書で承諾を得た(承諾率14.8%).承諾が得られた施設の移行期支援外来,長期フォローアップ外来,小児科外来に同意説明文書等を郵送しリクルートを行った.異なる施設から9名の参加希望があり,1名は外来における就労支援ではなかったため除外した.同意説明文書を用いて口頭で説明を行い,最終同意を得られた8名の看護師を対象とした.移行期支援外来で就労支援経験のある看護師(著者)1名がインタビューガイドを用いた半構造化面接をZoom®を用いて各1回行い,承諾を得て語りを録音した.調査は2023年8月~12月に行った.
6. 分析方法逐語録を繰り返し読み,調査内容に関連する文脈に添い意味内容が損なわれないよう留意してコードを抽出,類似する内容のコードを統合,比較検討を繰り返しサブカテゴリを抽出した.比較検討,再編を繰り返し抽象度を高めカテゴリを生成した(Uwe, 1995/2011).コード化の過程では疾患に特有の文脈がわかるように要約し,類似するコードがない場合に,1データにつき1コードを作成した.全体の適切性を確認し,研究者間の認識が一致するまで検討を繰り返した.
7. 倫理的配慮本研究は「ヘルシンキ宣言」および「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」を遵守し,東京慈恵会医科大学倫理委員会の承認を得て実施した(承認番号35-068).研究参加の自由と途中撤回,回答の拒否権を保障し,参加者の負担を最小限に務めた.研究参加の有無および語りの内容を所属組織へ報告しないことを保障した.
8名の参加者へのインタビュー時間は最長83分,最短55分で平均67分であった.属性及び就労支援の概要を表1に示す.
| 小児看護経験 | 移行支援経験 | 保有資格 | 所属 | 就労支援した患者の疾患 | 就労支援した患者の人数 | 就労支援開始時期 | 連携職種 機関 | |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| A | 29年 | 8年 | ケアマネージャー | 小児病院 移行期支援外来 |
先天性心疾患全般 | 移行期患者全員 | 中学生以上,20歳代前半 | 医師,看護師, 難病相談支援センター |
| B | 30年 | 14年 (移行期支援外来は5年) |
小児病院 移行期支援外来 |
先天性心疾患全般, 神経因性膀胱, 1型糖尿病,腸疾患 |
移行期患者全員 | 高校生以上,転職希望時 | 医師,看護師, ソーシャルワーカー, ハローワーク, 障害サポートマネージャー |
|
| C | 18年 | 3年 (移行期支援外来は7カ月) |
小児病院 移行期支援外来 |
神経筋疾患,てんかん,二分脊椎,発達障害 | 5名 | 中学生以上,20歳代前半 | 医師,看護師, ソーシャルワーカー |
|
| D | 38年 | 1年5カ月 | 小児病院 移行期支援外来 |
ネフローゼ症候群, てんかん |
4~5名 | 15歳以上,20歳代後半 | 医師,看護師, ソーシャルワーカー, 難病相談支援センター |
|
| E | 17年 | 4年 | 小児看護専門看護師 | 小児病院 移行期支援外来 |
二分脊椎,胆道閉鎖症,尿崩症,先天性心疾患,1型糖尿病,小児がん | 5名 | 高校生以上 | 医師,看護師,薬剤師, 移行期医療支援センター |
| F | 21年 | 10年 | 小児がん相談員, 小児がん認定看護師, がんゲノムコーディネーター等 |
総合病院 長期フォローアップ外来 |
小児がん全般 | 12名 | 中学生以上,20歳代 | 医師,看護師,がん相談員, ハローワーク, 産業保健センター, がんライフアドバイザー, 訪問看護・リハビリ, 保健師 |
| G | 24年 | 13年 | 移植コーディネーター | 総合病院 小児科外来 |
慢性腎不全 | 12名 | 高校生以上,転職希望時 | 医師,看護師, ソーシャルワーカー, 障害者職業センター |
| H | 27年 | 15年 | 小児看護専門看護師 | 大学病院 小児科外来 |
腎疾患全般 | 2名 | 高校生以上,社会人 | 医師,看護師, ソーシャルワーカー, ハローワーク |
看護師の語りから就労支援には,就労に向けた準備と就労継続の段階に分けた支援があった.分析から生成された159コードから42サブカテゴリ,10カテゴリについて説明する.以下本文中の【 】はカテゴリ,〈 〉はサブカテゴリ,斜体は看護師の語り,内容の補足説明は( )で示す.
| カテゴリ | サブカテゴリ |
|---|---|
| 患者の発達と理解力に応じた病気説明 | 幼児期から病気と治療の目的を理解できる言葉で説明する |
| 重症感を与えないよう思春期の心理に配慮した病気説明を行う | |
| 自己管理移行の推奨 | チェックリストなどを用いて病気理解や自己管理の達成度を子どもと親に確認する |
| 子ども自身が病気を理解する必要性を親に伝える | |
| 子どもの自己管理能力獲得に向けて親に協力を依頼する | |
| 職業準備性の育成 | 自己管理ができるよう幼児期から子どもと親への支援を開始する |
| 体力低下と機能障害の回復のためリハビリを調整する | |
| 病態とともに受診や検査の必要性を患者に説明する | |
| 自己管理と身体への影響の説明を医師や薬剤師に依頼する | |
| 自己管理不足の患者の認知機能評価を医師に相談し対策を考える | |
| 高校中退を希望している患者に卒業を勧める | |
| 疾患治療により長期欠席した患者に社会参加を勧める | |
| ひきこもりや不登校の子どもと親に社会参加を勧める | |
| 疾患治療によるリスクを捉え,認知機能評価の受診を患者に提案する | |
| 進路希望と身体特性に適した就労の調整 | 将来の夢,目標,就きたい職業について意思を確認する |
| 病気をもちながら就ける職業と希望の職業に就く方法を患者と医師と共に考える | |
| 就職が決まらない理由を患者と共に考える | |
| 病気を高校教諭に伝えた上で進路面談ができているかを確認する | |
| 病状を悪化させない就労形態や仕事内容を勧める | |
| 障害者手帳が取得できる患者に障害者雇用の選択肢を提示する | |
| 在宅勤務の選択肢を提示する | |
| 家族の介助役割や福祉用具の利用を調整する | |
| 知的障害がある患者の職業適性評価と支援の依頼 | 社会適応と認知機能の評価の必要性を医療者カンファレンスで検討する |
| ソーシャルワーカーや自治体の支援担当者に,知的障害がある患者の就労支援を依頼する | |
| 就労支援を受けるための相談能力の育成 | 就労相談窓口での患者本人による相談を促す |
| 就労相談窓口紹介後の経過を確認する | |
| 職場への病気説明と調整の促し | 職場への説明を望まない患者の思いを受け止める |
| 職場への説明内容を助言し共に考える | |
| 職場への説明内容とタイミングについて患者から医師への相談を促す | |
| 疾患治療と自己管理の必要性に関する職場への説明を推奨する | |
| 緊急時対応の内容を職場に説明し協力を得ることを促す | |
| 就労状況の確認と就労継続に向けた調整 | 問診票を用いて就労の困りごとなどの相談内容を拾い上げる |
| 仕事内容により生じた身体的負担と職場環境について医療者へ相談するよう患者に伝える | |
| 就職後に自己管理が困難になった患者と職場に応じた改善方法を考える | |
| 人間関係が原因で出社困難になった患者を心理支援に紹介する | |
| 体調が原因で就労継続が困難な患者をソーシャルワーカーやハローワークに紹介する | |
| 障害福祉サービス事業所や障害者雇用での就労状況とやりたい仕事内容を確認する | |
| 発達障害のある患者の転職希望に対して就労相談窓口を紹介する | |
| 就労相談のできるピアサポートの調整 | 同じ病気をもち就労している患者を紹介する |
| 患者会を開催して患者同士が就労経験を話す場をつくる | |
| 医療者間の情報共有とタイムリーな就労支援の実施 | 患者が抱える問題を成人診療科と共有し,移行の準備を進める |
| 受診時の支援の必要性を医療者間で共有し,タイムリーに介入を行う |
看護師は,患者が進路職業を選択する前提として自身の病気理解の必要性を重視しており,〈幼児期から病気と治療の目的を理解できる言葉で説明する〉,〈重症感を与えないよう思春期の心理に配慮した病気説明を行う〉のように発達段階に応じた説明内容を考えていた.
(2) 【自己管理移行の推奨】看護師は学童期から移行支援の〈チェックリストなどを用いて病気理解や自己管理の達成度を子どもと親に確認する〉ことや,〈子ども自身が病気を理解する必要性を親に伝える〉ことを将来の就労や自立に向けた準備として必要と考えていた.また,成人移行期の患者では親が疾患管理を継続している場合があり,看護師は,〈子どもの自己管理能力獲得に向けて親に協力を依頼する〉ことで,親の心理に配慮しながら移行の必要性に対する認識を高めていた.
お母さんがなかなか心配で口も出す手も出す感じだったので,そこへの協力をお願いするのと,それがお母さんの喪失感にならないように,お母さんはお母さんで半年後の一人暮らしに向けて手伝ってもらう,具体的には自炊のメニューですかね.(中略)自己管理しながら決めた仕事をやれるように両方支援した.
(3) 【職業準備性の育成】病気の自己管理不足の状態では就労は難しいため,看護師は〈自己管理ができるよう幼児期から子どもと親への支援を開始(する)〉しており,中学生,高校生の成人移行期の患者には,〈病態とともに受診や検査の必要性を患者に説明する〉,〈自己管理と身体への影響の説明を医師や薬剤師に依頼する〉のように就労後の自己管理を見通した理解を患者に促していた.
脳腫瘍治療後の晩期合併症の患者の場合に,看護師は生活リズムを形成し,対人技能を向上させるために〈体力低下と機能障害の回復のためリハビリを調整する〉,〈疾患治療により長期欠席した患者に社会参加を勧める〉,〈疾患治療によるリスクを捉え,認知機能評価の受診を患者に提案する〉という多職種と連携した支援を行っていた.
耳聞こえてなかったし,学校にもなかなか行けてなかったので,もともとお友達っていうのもすごく少なくて,学校行っても保健室にいるみたいな感じだったみたいなんですけど,放課後デイに行って(中略)直接就労には関係ないかもしれないんですけど,そこの社会性を育てるみたいなところでそういう場を作って.
脳腫瘍の方ってIQがどうとか,お仕事した時にやっぱりできない分野,苦手な分野とか得意な分野とかがすごく違ってくる.例えば記憶がすごい苦手だったらどんな風にメモを取ったらいいよとか.作業スピードがすごく遅いとか仕事配慮してもらったらいいよ,とかアドバイスしてくれる発達の先生の外来があるので,仕事するにあたって長所と短所1回診てもらったらみたいな形で小児がんの先生がお話しされて,行ってみますということになりました.
また看護師は,学生の時から〈ひきこもりや不登校の子どもと親に社会参加を勧める〉支援をしていた.
まず規則正しい生活で午前中どこかに行くとか(働くことに)必要なスキルを教えてもらうこともあるだろうし,準備を整えるところがあるから行ってみたらどうですかって窓口は紹介したんですけど.電話して今の事情を話して支援を受けるのってひきこもっていた中学1年生で止まっている方には難しいだろうなと思いました.
(4) 【進路希望と身体特性に適した就労の調整】看護師は,〈将来の夢,目標,就きたい職業について意思を確認する〉,〈病気をもちながら就ける職業と希望の職業に就く方法を患者と医師と共に考える〉等,患者の進路相談に応じていた.
どんな職業に就きたいですかっていうところでお話を聞いて,今の病気を抱えながらもその職業に就労することができるかっていうところを一緒に考えたり,先生と話し合いをしてもらったりっていうことをしていくんです.
看護師は,〈病状を悪化させない就労形態や仕事内容を勧める〉,〈障害者手帳が取得できる患者に障害者雇用の選択肢を提示する〉等,患者による適した就労の選択を支援していた.
ちょっと先の時間軸で生活上どういう注意が必要かを先生に話してもらった時に,重たい荷物とか肉体労働とか,あと夜勤がある仕事とか.不規則勤務は疲労が溜まるので肝臓が疲れてくるのでやめた方がいいっていう話があったので.就労の時に夜勤がある職業に進む可能性があるのかとか,事前に確認をしたりしました.
合併症しんどいタイプの人が自分で見つけた一般企業に就職して全然ダメだったとかいうのが結構あるので,障害者手帳を持ってるんだったらそのルートでいきましょうかと.
(5) 【知的障害がある患者の職業適性評価と支援の依頼】患者の知的能力に適した就労選択の支援のために看護師は,〈社会適応と認知機能の評価の必要性を医療者カンファレンスで検討(する)〉しており.〈ソーシャルワーカーや自治体の支援担当者に,知的障害がある患者の就労支援を依頼する〉と就労困難を予測した多職種への相談があった.
(6) 【就労支援を受けるための相談能力の育成】看護師は,〈就労相談窓口での患者本人による相談を促(す〉)し,〈就労相談窓口紹介後の経過を確認する〉と,自身で相談することを重視し患者の相談状況を見守っていた.
(7) 【職場への病気説明と調整の促し】患者が職場への病気説明を迷う場合があり,看護師は〈職場への説明内容を助言し共に考え(る)〉,〈疾患治療と自己管理の必要性に関する職場への説明を推奨(する)〉していた.
自分の管理をちゃんとすることが仕事をする上で大事だよということだったり,それを周りの人に上司とか同僚に伝えるべきことなのか,そこまでいらないのか,自分で困ることがないように考えて決めましょうみたいなことを言います.
2) 就労継続のための支援 (1) 【就労状況の確認と就労継続に向けた調整】看護師は,〈仕事内容により生じた身体的負担と職場環境について医療者へ相談するよう患者に伝える〉のように,患者の就労状況を確認していた.
社会人の子たちには続いているかっていうのと,今何が負担かっていうのと,職場の人とはどうかとかみんな仕事のことは聞きます.それが困ってる時に助けてくれる人だっていうふうな認識はただ聞いてるだけだとないので,その時にこういう資源があるから困るときはちょっと言ってねとかとは説明はするようにはしてるんです.
看護師は,〈就職後に自己管理が困難になった患者と職場に応じた改善方法を考える〉,〈体調が原因で就労継続が困難な患者をソーシャルワーカーやハローワークに紹介する〉など,就労と自己管理の両立に向けた患者教育や就労相談窓口への紹介を行っていた.
(2) 【就労相談のできるピアサポートの調整】看護師は,感染対策や周囲への対応などの経験を共有できるピアサポートが役立つと考え,〈同じ病気をもち就労している患者を紹介する〉ことや〈患者会を開催して患者同士が就労経験を話す場をつくる〉調整をしていた.
(3) 【医療者間の情報共有とタイムリーな就労支援の実施】看護師は,成人診療科と小児科の医師と看護師によるカンファレンスなどの〈患者が抱える問題を成人診療科と共有し,移行の準備を進める〉支援や,〈受診時の支援の必要性を医療者間で共有し,タイムリーに介入を行(う)〉っていた.
3. 小児慢性疾病患者の成人移行支援を行う外来看護師が捉えた就労支援の課題(表3)就労支援の課題は,44コードから16サブカテゴリに分類され7カテゴリが抽出された.
| カテゴリー | サブカテゴリー |
|---|---|
| 患者に職業適性の理解を促す難しさ | 認知機能評価の必要性の判断の難しさ |
| 小児期から自己の能力理解を促す難しさ | |
| 子どもの適性に合った進路を考えるための親への教育不足 | |
| 自己管理移行の難しさ | 移行期の患者に自己管理の理解と実施を促す難しさ |
| 患者と医療者間の意見調整の難しさ | 病気説明に対する意見の相違による職場への説明の難しさ |
| 就労相談を望まない患者への介入の難しさ | |
| 患者の希望と医療者からの提案の調整の難しさ | |
| ピアサポートの不足 | 就労の助言を得るピアサポートの場の不足 |
| 就労支援に関する知識と看護師のスキル不足 | 成人期の経過と就労状況を見据えた助言の難しさ |
| 就労選択に関する患者の発言に対する返答の難しさ | |
| 成人移行支援に関する看護師の知識不足 | |
| 他職種の就労支援に関する看護師の知識不足 | |
| 成人移行期における就労支援の不明瞭さ | 成人移行期における看護師の介入の程度を見極める難しさ |
| 成人移行期の就労支援における看護師の役割の不明確さ | |
| 移行支援に対する医療者間の認識の相違 | 移行支援を行う場とマンパワーの不足 |
| 小児科と成人診療科との成人移行支援に対する認識の違い |
看護師は〈認知機能評価の必要性の判断の難しさ〉や〈子どもの適性に合った進路を考えるための親への教育不足〉があると捉えていた.
分かってもらいにくいのが高次脳機能障害の方で.会話がすごく上手なんですね.忘れちゃうから,お客さんとの話も全然噛み合わないとか,仕事うまくいかなくて.私たちが気づかなかったというのがすごい反省点としてありますね.
(2) 【自己管理移行の難しさ】看護師は,社会経験が少なく就労のイメージをもたない患者へ〈移行期の患者に自己管理の理解と実施を促す難しさ〉を感じていた.
ひきこもりの状態が長かった(中略)生活のイメージがつかないみたいで,就労する前の体の準備としてデスモプレシンを使って体調を整えるって思ってからアルバイトしてほしいと主治医も私も思ってたけど,アルバイト決まるまではそんな(薬を正しく使用しない)生活でも全然困らないからいいですって.
(3) 【患者と医療者間の意見調整の難しさ】看護師は,〈病気説明に対する意見の相違による職場への説明の難しさ〉,〈就労相談を望まない患者への介入の難しさ〉に直面し,支援が滞る状況を経験していた.
今まで学校の友達にストマがあることは言ってないって.大学の進路担当の先生に秘密にしろ,就職するまでって言われていて,そういうふうに言われることもあるんだなと思いました.言っといた方がいいんじゃないかな,伝えても減点にはならないよっていう話を主治医とその方に何回かしましたけど,態度は変わらなかったですね.
(4) 【ピアサポートの不足】看護師は,〈就労の助言を得るピアサポートの場の不足〉があり家族会の実施が必要と考えていた.
2) 就労支援に関する知識と経験の乏しさ (1) 【就労支援に関する知識と看護師のスキル不足】日々の支援において,〈成人期の経過と就労状況を見据えた助言の難しさ〉や〈他職種の就労支援に関する看護師の知識不足〉等が課題とされていた.
ちょっと無理したらね,悪くなって命にも関わるかもしれんよとはなかなか.元気に過ごしてるって言ったら40,50代ぐらいまでって感じなので,本当だったらそこまでを言った方がいいのかとか,今ちょっと議論してます.
(2) 【成人移行期における就労支援の不明瞭さ】就労支援において,〈成人移行期における看護師の介入の程度を見極める難しさ〉等,看護師が支援の程度を模索する現状があった.
まる投げではなく,自分でやっていくのよっていう投げ方をできるようにするのが就労支援なのか,もうちょっと何か手を差し伸べた方がいいのかわからない.
(3) 【移行支援に対する医療者間の認識の相違】〈移行支援を行う場とマンパワーの不足〉と〈小児科と成人診療科との成人移行支援に対する認識の違い〉が課題とされた.
慢性疾患の方が大きくなっていらっしゃったらどういうことに困っていて,どういう看護支援が必要かっていう視点なんてちょっと持って受け入れてもらえているのかなというのが,サマリーを送っても成人側からのリアクションって本当ないですし,(中略)温度差があるところが難しいなと思います.
本研究において,患者が進路職業を選択する成人移行期よりも以前の小児期から,看護師は,【患者の発達と理解力に応じた病気説明】,【自己管理移行の推奨】に示されるような,病気の理解と自己管理能力の獲得が就労の基盤であると認識していた.子どもには発達段階に応じた親から子へのセルフケア移行が求められる(高谷・中野,2007).本研究の参加者は小児科経験年数が長く,成人移行支援に小児看護の視点を用いて,早期から子ども自身の病気理解と自己管理移行を始めていた.就職や就労継続は,慢性疾患を正しく理解し受容する力のもとで到達可能であり(檜垣ら,2020),体調管理が欠かせず,体調不良時は受診を早める必要がある(春名,2019).看護師は小児科入院治療中から将来の就労を見据え,退院後の外来治療,成人移行期を通した,就労へ段階的な病気説明と自己管理移行の支援を開始する必要性が示唆された.
また,小児慢性疾病では,疾患治療の影響により体力低下した患者や学校生活での社会経験が少ない患者がいることから,多職種と連携した【職業準備性の育成】が必要と考えていた.個人に職業生活を始めるために必要な条件が用意されている状態を職業準備性という(独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構,2024).職業準備性の向上には疾病障害の理解と健康維持などの健康管理,基本的な生活リズムなどの日常生活管理,コミュニケーションや協調性などの対人技能,報告連絡相談や規則の遵守などの基本的労働習慣の形成が含まれる(檜垣ら,2020).本研究では【自己管理移行の推奨】が行われる一方で,【自己管理移行の難しさ】が課題とされた.入院治療中や教育を受けている段階から就労を視点に置いた教育や心理的支援を受けるべきといわれ(新平,2016),患者の成長発達過程を通して,教育の専門家,理学療法士,心理士等と協働し,患者が社会生活のイメージを持ち,健康管理の必要性を理解して自己管理に取り組むなどの職業準備性を高める支援が求められる.
2. 患者の希望と心身の状態に応じた進路選択と就職の支援移行期医療のタイムラインでは12歳頃から患者家族と方針を共有し23歳頃までに成人診療への移行を目安にしている(Got Transition, 2014).進学や職業の検討にはキャリア発達や自己実現の観点をもつ必要がある(春名,2011)が,疾患の症状,障害,医療的ケア,体力,認知機能,入院や通院の頻度は職業選択を制限する(武井ら,2007).小児慢性疾病をもつ患者においては本人の希望と,重労働や不規則勤務を避ける等の病状悪化の予防を考慮した就労選択の調整が必要とされ,看護師は,患者が12歳頃から【進路希望と身体特性に適した就労の調整】を始めていた.さらに,就労には疾患治療や就労制限を他者へ説明するスキルが必要と考え,【就労支援を受けるための相談能力の育成】や【職場への病気説明と調整の促し】をしていた.自分の意思や権利を表明しコミュニケーションをとる力は成人期の患者に必要な行動目標であり(石﨑,2023),患者教育には,他者に説明を行う方法を盛り込む必要がある(佐藤ら,2017b).
その一方で,職場等への相談に対する【患者と医療者間の意見調整の難しさ】が課題とされた.就労中の小児がん経験者への調査で職場に病気を説明しない理由は,病気の偏見から採用に不利になるとの心配,合併症がなく職場での配慮がいらない,特別扱いされたくない等があり,あえて自分に不利になる情報を伝えない選択があった(福井,2017).職場の理解や支援を得られなければ自己管理に支障が生じるリスクがある.しかしながら,社会の小児慢性疾病の認知度は低いため,企業は雇用にあたり必要な配慮を知りたいという報告がある(檜垣ら,2021).職場への伝え方を相談できる窓口を患者に示しておくことが必要であり(竹之内,2017),伝える際には,できないことや就労上の配慮事項を補う強みを提案できることが望ましいとされる(国立がん研究センターがん対策情報センターがんサバイバーシップ支援部,2020).看護師には,症状や医療的ケアの就労への影響,受診頻度,入院治療の可能性,就労環境を考慮し,患者が伝えるべき情報を整理する役割があると考えられた.
本研究では,就労支援において認知機能評価が必要な患者がいる状況が明らかにされた.小児がん患者では放射線照射や化学療法後の認知機能障害のリスクが指摘され仲間関係,情緒面で困難を感じていたとの報告(温井ら,2021;佐藤ら,2021)があり,認知機能の継続的な評価が早期介入につながる(佐藤ら,2017a).重症先天性心疾患では,乳幼児期には運動・言葉の発達の遅れ,学童期以降には社会性の発達の遅れが報告され(中込ら,2021)持続する低酸素血症が発達に影響し,成長発達のフォローアップの継続と療育的介入が必須とされる(鈴木ら,2020).このような疾患治療の影響による認知機能障害のリスクを予測した看護師は,作業適性や作業速度等の職業適性を把握した上での就労選択につながるように認知機能評価の受診を患者に提案するという【職業準備性の育成】を実施していた.IQ70~84の境界域知能とされるケースでは年長になるまで学業や行動上の問題が明らかとならない場合が多い(西ヶ野・田中,2023).小児の発達専門医や心理士への発達や認知機能評価と早期介入や継続的なフォローアップとともに,家族が相談できる窓口があることが望ましい.
3. 就労継続のための支援の必要性就労中の患者に対し,看護師は【就労状況の確認と就労継続に向けた調整】や【就労相談のできるピアサポートの調整】をしていた.医療者は,小児慢性疾病患者が就労継続困難になる要因を継続的にアセスメントし適切な支援に繋げる必要がある(田崎ら,2019).就労中の成人がん患者への医療者の支援には,病状,治療計画,副作用の説明,医療情報は文書にして渡すこと,仕事と両立しやすい治療スケジュールづくり,必要に応じて職場関係者との連携や患者の職場や自宅に近い医療機関と連携可能と伝えること等が報告され,これらの支援は小児慢性疾病患者に対しても応用可能である(荒木・高橋,2017).
また,成人期医療では,長期の療養に伴う就労と治療の両立等に関する相談支援を継続するために難病相談支援センター等との連携が推奨されている(厚生労働省,2023).本研究からも,就労で生じた問題の情報収集と就労支援の専門機関との連携が不可欠である.
4. タイムリーな就労支援の実施と課題参加者は17~38年の小児看護経験があり,子どもの身体と心理社会面の成長発達についての知識と経験が豊富な看護師が成人移行支援を実践していた.米国(Blum et al., 1993)を参考にした成人移行期支援ガイドブックが作成され(思春期看護研究会,2009),看護師による成人移行支援が始まった時期から実践されてきた専門性の高い支援が明らかにされた.その一方で,施設ごとに移行期支援外来の有無,対象疾患や年齢の幅,支援内容に違いがみられた.就労支援の課題には【成人移行期における就労支援の不明瞭さ】【就労支援に関する知識と看護師のスキル不足】があり,看護師が就労支援の難しさを捉えている状況が明らかとなった.また【ピアサポートの不足】が課題と捉えられていた.海外では,慢性疾患をもつ高校生と大学生向けのグループ指導プログラム修了後の就労成果が報告され(Maslow et al., 2013),ピアサポートやライフスキルを学ぶ環境を提供する有用性が報告されている.成人移行支援に診療報酬がなく移行期支援外来設置も少ないため,看護師には,小児科と成人診療科を含めた専門性の高い役割が求められる.移行期患者が抱える問題に気づき対応できる看護師の育成とタイムリーな介入のためのマンパワー確保(Suris & Akre, 2015;田﨑ら,2015),および成人診療科への支援引き継ぎ体制の強化が急務である.
本研究の結果は,成人移行支援体制の構築段階にある多様な疾患の患者を対象とした看護師の視点から語られた支援であり,メンバーチェッキングを実施していない点で結果の妥当性に限界がある.本研究における就労支援の対象患者は通常学級や高等教育機関に通う者,不登校,学業修了後の就労困難な患者であり,特別支援学校における就労支援は語られなかった.今後は疾患を限定した患者対象の調査を行い,成長発達過程で生じる問題を予防する就労支援の具体的検討が必要である.また,適切な支援に繋ぐ難しさが課題とされたことから,病院外の就労相談における支援や医療との連携に関する要望の調査を行い,顔の見える連携体制の構築に示唆を得たい.
小児慢性疾病患者の成人移行支援を行う外来看護師による就労支援に,患者の自立と社会参加に必要な要素を理解する看護師が携わっており,小児期から患者の理解力に応じた段階的な病気説明,自己管理への移行支援を開始していた.さらに,職業準備性の育成や患者の進路希望と身体特性に適した就労の調整,就労支援を受けるための相談能力の育成,職場への病気説明と調整の促し等の支援が実施されていた.患者の就労状況を把握し,就労により生じた課題に対して就労継続に向けた調整やピアサポートの調整を継続していた.小児科と成人診療科が連携した就労支援の仕組みづくりと就労支援のスキルをもつ看護師の配置,医療機関と就労支援の専門機関との連携の強化が急務と考える.
謝辞:本研究にご協力いただきました研究参加者の皆様へ御礼申し上げます.
著者資格:SNは研究計画立案,データ収集,分析,論文作成全般を行った.MNは研究計画立案,分析,結果,考察を共同で行い,論文に加筆,修正を加えた.KTは研究計画立案,分析,論文への示唆および研究プロセス全体への助言を行った.すべての著者は最終原稿を読み承認した.
利益相反:本研究における利益相反は存在しない.
付記:本研究は,東京慈恵会医科大学大学院医学研究科看護学専攻博士前期課程に提出した修士論文に加筆・修正を加えたものであり,内容の一部を第44回日本看護科学学会(2024年12月,熊本)において発表した.