日本看護科学会誌
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原著
「看護師の健康と仕事に対する態度尺度」の開発
中村 幸代習田 明裕
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2026 年 46 巻 p. 203-214

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Abstract

目的:「看護師の健康と仕事に対する態度尺度」を開発し,信頼性および妥当性を検証する.

方法:一般病床500床以上の看護師1,847名へ質問紙調査を実施した.46項目の尺度に対して項目分析と因子分析を実施し,Cronbach’ α係数にて信頼性を確認した.妥当性は基準関連妥当性および構成概念妥当性を確認した.

結果:811名から回答が得られ(回収率43.9%),796名(有効回答率43.1%)を分析対象とした.探索的因子分析にて5因子22項目が得られCronbach’s α係数は尺度全体で0.91,下位尺度では0.72~0.86で内的整合性が確認された.組織風土尺度(r = 0.309),援助規範意識尺度(r = 0.226),看護職用職業的アイデンティティ尺度(r = –0.258)で基準関連妥当性が確認された.モデル適合度はGFI = 0.9,AGFI = 0.872,CFI = 0.908,RMSEA = 0.068にて構成概念妥当性が確認された.

結論:5因子22項目が抽出され尺度の信頼性と妥当性が検証された.

Translated Abstract

Aim: This study aimed to develop a scale for nurses’ attitudes towards health and work, and to investigate its reliability and validity.

Methods: A questionnaire survey was conducted on 1,874 nurses working in a hospital with more than 500 general beds. Item and factor analyses were conducted on a 46-item scale. Reliability and validity were confirmed using Cronbach’s alpha coefficient, and criterion-related and construct validity, respectively.

Results: Responses were obtained from 811 nurses (collection rate, 43.9%), and finally, 796 nurses were included in the main research (valid response rate, 43.1%). An exploratory factor analysis yielded a five-factor, 22-item structure. Cronbach’s alpha coefficients was 0.91 for the overall scale and 0.72 to 0.86 for the subscales, confirming internal consistency. Criterion-related validity was confirmed for the “Organizational Climate Scale” (r = 0.309), the “Helping Norms Awareness Scale” (r = 0.226), and the “Professional Identity Scale for Nurses” (r = –0.258).The goodness of fit index of the model was confirmed with GFI = 0.9, AGFI = 0.872, CFI = 0.908, and RMSEA = 0.068.

Conclusions: This study’s results suggest that the22-item with a five-factor structure scale’s validity and reliability were within the permissible range.

Ⅰ. 緒言

「健康」という概念を説明する広く知られた定義として「単に病気や異常がないばかりではなく,身体的・精神的・社会的にも完全な状態にあること」(WHO, 1946)と明示されており,全人的な捉え方がなされている.また,近年では幸福や充実感という意味合いをもつウェルビーイングも健康を構成する要素として理解されてきた.人生100年時代を迎え多様な働き方が社会全般に広がりつつある中で,仕事と健康のバランス保持は労働力の活性化にとどまらずパーソナリティや価値観の形成,さらには自己実現と幸福感をもたらす根底ともうかがえる.実際,仕事と健康の両立には,健康経営やワークライフバランス,ダイバーシティ推進(厚生労働省,2020)の重要性が指摘されている.しかし,治療を受けることや休みを取ることへ十分な理解が得られない状況(内閣府,2019厚生労働省,2020)もあり,健康と仕事の両立が容認されにくい社会文化的な背景も浮き彫りになっている.これは看護師も同様であり,チーム連携を通じて安全かつ質の高い支援を提供する社会的役割から,自己の健康保持は組織の労働遂行能力の維持に重要な要素と言える.

看護師の健康と仕事に関する問題として,職場環境や組織風土,労働上の特性などの影響が考えられる.看護師は他者への気遣いや使命感から自らを犠牲にした献身性を示す特徴があること(Pembroke, 2016Hwang, 2019)や,患者のためなら身を削ることが当然として組織で受け継がれてきたこと(佐藤,2020),病棟の組織風土がバーンアウトを介して離職意図に強い影響を及ぼしていること(塚本・野村,2007)など,経験から培われてきた規範意識や組織文化が健康と仕事の両立への影響として指摘されている.また,過重労働として複数回の体位変換などの作業動作から生じる筋骨格系障害や,医療は生命に直結するという精神的緊張から過度に自らを犠牲にする心理・社会的要因(厚生労働省,2018)も述べられている.さらに,サービスを24時間提供する夜間勤務・交代制勤務が求められる職種や,専門職教育から実践を通して専門性を高めていく代替要員の確保が容易ではない職業背景(厚生労働省,2014)があげられる.この状況に対して中村・習田(2025)は,職場の環境要因や労働上の特性は健康とのバランスを保っていく上での仕事に対する態度へ影響することで働き方を左右する可能性があることを述べている.このことから,看護師が自身の健康を大切にしながら仕事を続けていくためには健康と仕事に対する個人の態度へ着目する必要性があると考える.

あらゆる労働分野に共通する健康と仕事に対する態度との関連として,ワーク・エンゲージメント(Schaufeli et al., 2002Schaufeli & Bakker, 2004島津,2015)という仕事への肯定的な心理状態を表す概念が存在し,これは活力,熱意,没頭によって特徴づけられている.一方,その対極にはワーカホリック(Oates, 1971/1972)があり,極端な働き者で,仕事を必要とする度合いが甚だしく過度になっている状態から「仕事中毒」と称され,活動水準は高いが仕事への態度が否定的なものとして解釈される.この仕事への衝動は心身の健康を悪化させる影響が大きい(Schaufeli et al., 2006)ことや,仕事からのプレッシャーによって働いている(働かされているともいえる)人は心身の健康状態が良くない傾向(藤本,2013)が示されている.これは看護師も同じく,専門職としてのやりがいや誇り,責任感などが前向きな動機付けとして仕事を後押しする場合もある.しかし,ワーカホリックのような傾向は健康への影響が懸念され,ストレスなどの心身の不調(Andreassen et al., 2018福澤・冨田,2020上條,2018)やバーンアウト(池田・松枝,2020Ketelaar et al., 2015小林ら,2020),さらには離職(呉竹ら,2013松尾・鈴木,2016田邊・岡村,2011)に至る状況が報告されている.このように,自身の健康と仕事に対してどのように認識しているのかという態度はその後の健康を左右する要素と考える.

態度という概念は「認知的,感情的,行動的」(Rosenberg et al., 1960)要素をもち,①意識的・無意識的な精神状態,②価値観や信念,感情によるもの,③行動または行動の素因との特徴(Altmann, 2008)が説明されている.これらに基づくと,態度は個人の価値観から影響を受け,目的対象をどのように捉えているかによって行動選択の規定因子になりうると推察する.既存研究では,実際の行動やその頻度を問うものではなく,態度対象への賛否を認知的傾向から評価している研究(青木・片山,2016Hojat et al., 2003勝又ら,2017小味ら,2011Shields et al., 2022Takada et al., 2021丹下,1999)が数多く存在する.これは,質問紙において認知的に回答を求めることで現在の状態を安定的に測定できるためと考えられ,認知的傾向によって態度変容を導く上での介入目安として指標が検討されてきたと推察する.また,既存尺度では看護師の健康指標としてストレス(舟島ら,1997亀岡ら,1995東口ら,1998)や蓄積疲労(越河,1991越河・藤井,1987),バーンアウト(田尾,1989)などの側面から作成されてきたが,本研究で着目している「仕事に対する態度」から健康を評価する尺度開発には至っていない.そのため本研究においては,看護師の健康と仕事に対する態度を認知的傾向として評価することで,健康と仕事のバランスを乱す恐れのある行動へ結びつかないよう態度を変容させるきっかけとして指標作成の必要性があると考えた.

以上から本研究では「看護師の健康と仕事に対する態度尺度」の開発を目的とした.これにより,健康と仕事のバランスを乱す恐れのある傾向に気づき,セルフコントロールを図る一指標になると考える.また,健康と仕事に対する態度を客観的に評価することで,職員の健康管理や職場定着に向けた支援介入目安として看護管理上での活用性が期待される.

Ⅱ. 目的

「看護師の健康と仕事に対する態度」を評価する尺度を開発し,信頼性および妥当性を検証する.

Ⅲ. 用語の操作的定義

態度とは,「人や事物・社会問題に対してもつ,一般的で持続的な,肯定的または否定的な感情」(Petty & Cacioppo, 1981)と定義されている.また,Allport(1935)は「行動の準備状態」と定義している.

本研究における看護師の健康と仕事に対する態度は,「看護師が仕事をする上で自身の健康とのバランスに対してもっている傾向であり,その傾向が否定的な場合には健康と仕事のバランスを乱す恐れのある状態」と定義した.

Ⅳ. 研究方法

本研究は,国際的に認知されている評価基準に基づいて多様な測定特性から尺度の信頼性・妥当性を判断する目的でCOSMIN研究デザインチェックリスト(Mokkink et al., 2019Mokkink et al., 2012)(以下,COSMINチェックリスト)に沿って以下の手順で実施した.

1. 尺度原案の作成

「看護師の健康に影響を与える仕事への態度」の概念分析(中村・習田,2025)および面接調査の結果から共通要素を統合して構成概念を設定した.面接調査においては,21名の看護師を対象とした半構造化面接により看護師の仕事と健康に対する認識について質的帰納的分析を実施した.その結果,〈他者への献身性を優先して自分を後回しにする〉,〈自分を見失って仕事に没頭する〉,〈責任の重さと対峙する〉,〈本心を伝えられず感情を抑制する〉,〈自己評価の低さから他者評価に重きを置く〉,〈看護師としての在り方に揺らぎを自覚する〉という6つの構成概念を設定した.質問項目は回答時の負担も考慮しながら1つの構成概念に対して5~10項目程度(村上,2006)で構成されるように作成し,初回は46項目とした.「看護師の健康と仕事に対する態度」を認知的傾向から測定するため,質問項目での表現は全てに「~と思う」という問い方になるように統一した.回答方法は,全くあてはまらない(1点),あてはまらない(2点),あまりあてはまらない(3点),ややあてはまる(4点),あてはまる(5点),非常にあてはまる(6点)の6件法で求め,得点が高いほど健康と仕事のバランスを乱す恐れのある傾向を有していると判断した.

内容的妥当性の検討として,関連分野の大学教員4名,臨床看護師4名の計8名を対象に6つの構成概念と質問項目のあてはまりの有無や追加項目の有無を確認した.意味が重複している2項目は1項目へ統合し,一文に2つ以上の意味が含まれることが指摘された2項目は意味ごとに新たに2項目へ分けてそれぞれ修正を加え47項目となった.

表面的妥当性の検討として,関連分野の大学教員2名,臨床看護師3名を対象に質問項目への回答時間や答えやすさを確認し,最終的な尺度原案を47項目版とした.

2. 尺度原案の検討

尺度原案を検討するため予備調査を実施した.80施設中23施設から協力が得られ,755名のうち291名から返送があった(回収率38.5%).欠損データが含まれた8名を除外し,最終的に283名(有効回答率37.5%)を分析対象とした.項目分析にて天井・床効果,項目間相関,I-T相関分析,G-P分析にて削除項目を検討し,探索的因子分析の結果から暫定的に6因子構造が得られた.相関係数が高い1項目を削除とし,質問項目の表現を一部修正した上で46項目とした.

3. 尺度の信頼性・妥当性の検討

1) 研究対象者

一般病床500床以上の病院に在籍する看護師とした.施設の規模が大きいほど在籍看護師数が多く,属性が共通している集団からある程度まとまりのある標本が得られると想定した.また,求められる役割や裁量の違いから健康と仕事に対する態度を構成する背景が異なる可能性から,看護管理者(看護部長,副看護部長,看護師長,副看護師長)は除外した.

2) データ収集方法

研究対象施設は,日本医療機能評価機構および一般社団法人 日本病院会のホームページを参照しながら一般病床500床以上を有する病院機能評価認定病院とした.その際,地域による偏りが生じないように配慮しながら,基本的には各都道府県1施設とし,施設が複数ある都道府県には2施設へ協力を依頼した.その後は研究の可否に応じて目標の配票数に達するまで施設追加を行った.対象施設の看護部長へ調査協力を依頼し,同意が得られた施設の研究対象者へは郵送法による無記名自記式質問紙調査にてデータ収集を行った.また,再テストへの協力の有無を確認し,協力が得られた施設へは1回目の質問紙に加えて2回目の質問紙も併せて同封し,1回目の回答の約2週間後に2回目の質問紙にも回答するように依頼した.1回目と2回目の質問紙には対応番号を付し,データのマッチングを行った.

3) 調査項目

 (1)基本属性

「性別」,「年齢」,「看護教育に関わる最終学歴」,「看護師経験年数」,「雇用形態」,「勤務形態」,「夜勤回数」,「現在自覚している健康状態」,「現在自覚している心身の症状の有無」,「持病の有無」の10項目を設定した.

 (2)看護師の健康と仕事に対する態度尺度原案46項目

予備調査の結果を踏まえ〈他者への献身性を優先して自分を後回しにする〉,〈自分を見失って仕事に没頭する〉,〈責任の重さと対峙する〉,〈本心を伝えられず感情を抑制する〉,〈自己評価の低さから他者評価に重きを置く〉,〈看護師としての在り方に揺らぎを自覚する〉の6つの下位尺度,46項目で構成した.下位尺度は内容的妥当性および表面的妥当性の検証を経て研究者間で議論を重ね,看護管理学の研究者や臨床看護師の背景を持つ看護管理学分野に所属する大学院生が集うゼミで協議し抽出に至った.回答方法は,全くあてはまらない(1点)から,非常にあてはまる(6点)の6件法で回答を求めた.

 (3)組織風土尺度38項目(川瀬ら,2013

〈研究的雰囲気〉,〈師長のリーダーシップ〉,〈看護師の不当な評価〉,〈過酷な業務〉,〈理念に基づく教育〉,〈権威的な人間関係〉,〈話し合いの場の欠如〉,〈スタッフの意欲的態度〉の8下位尺度,38項目から構成される.健康と仕事に対する態度には,組織の雰囲気やスタッフ間で共有されている価値観といった組織風土によって影響を受ける可能性が先行研究において示されていた.特に,〈看護師の不当な評価〉,〈過酷な業務〉,〈権威的な人間関係〉,〈スタッフの意欲的態度〉という4つの下位尺度は,健康と仕事に対する態度との類似性が推察されたことから,基準関連妥当性の評価が可能であると考えた.回答方法は,全くそう思わない(1点),そう思わない(2点),そう思う(3点),強くそう思う(4点)の4件法で求めた.尺度の信頼性および妥当性は尺度開発者により検証されている.

 (4)援助規範意識尺度(箱井・高木,1987

〈返済規範〉,〈自己犠牲規範〉,〈交換規範〉,〈弱者救済規範〉の4下位尺度,25項目から構成される.健康と仕事に対する態度には,他者への気遣いや使命感から自らを犠牲にした献身性を示す特徴が言われているように,看護師であればこのように行動して同然だと考える規範意識によって影響を受ける可能性が先行研究において示されていた.特に,〈自己犠牲規範〉,〈弱者救済規範〉は,健康と仕事に対する態度との類似性を推察していたことから基準関連妥当性の評価が可能であると考えた.回答方法は,非常に反対する(1点),反対する(2点),どちらともいえない(3点),賛成する(4点),非常に賛成する(5点)の5件法で求めた.尺度の信頼性および妥当性は尺度開発者により検証されている.

 (5)看護職用職業的アイデンティティ尺度(落合ら,2007

〈看護師選択への自信〉,〈自分の看護観の確立〉,〈看護師として必要とされることへの自負〉,〈社会貢献への志向〉の4下位尺度,20項目から構成される.自己の健康と仕事に対する態度には,看護師としての自己の在り方への価値づけが影響する可能性があると推察した.特に,〈看護師選択への自信〉,〈自分の看護観の確立〉,〈看護師として必要とされることへの自負〉という3つの下位尺度は,健康と仕事に対する態度との類似性から基準関連妥当性の評価が可能であると考えた.回答方法は,まったくあてはまらない(1点),あまりあてはまらない(2点),どちらとも言えない(3点),ややあてはまる(4点),非常にあてはまる(5点)の5件法で求めた.尺度の信頼性および妥当性は尺度開発者により検証されている.

4. 分析方法

分析には,IBM SPSS Ver. 28,Amos28を使用し,統計学的有意水準は5%未満として以下の手順で進めた.

1) 項目分析と項目の除外基準

予備調査において相関係数0.7以上を基準に1項目を削除し,尺度原案を46項目へ修正したため,本調査においても除外すべき項目が含まれていないか再度確認する目的で項目分析を実施した.46項目版の尺度において天井・床効果,項目間相関,I-T分析,G-P分析にて除外が必要な尺度項目を検討した.天井・床効果では,各項目の回答が極端に偏っていないかを確認するため,天井効果は平均値+標準偏差>6,床効果は平均値-標準偏差<1を除外とした.項目間相関では相関係数が高い場合には同様の内容を測定している可能性を考え,r ≧ 0.65を基準とした上で同じ構成概念からの成り立ちの場合はその類似性による影響を踏まえて項目削除を検討した.I-T分析では,各項目と項目の合計得点との相関係数が低い場合には尺度全体の内容を測定できていない可能性があると考え,r < 0.3(Kline, 1986)を基準に項目削除を検討した.G-P分析では,合計得点の中央値を基準に,高得点群(161点以上),低得点群(160点以下)の2群に分けて,Mann-whitneyのU検定を行い,有意差がみられなかった項目を除外対象とした.

2) 信頼性の検討

探索的因子分析により特定した因子の内的整合性を確認するため,各因子のCronbach’s α係数を算出した.また,再テスト法では1回目と2回目の回答に約2週間の間隔を設け,これら調査の測定誤差から尺度の時間的安定性を検討した.

3) 妥当性の検討

最尤法による探索的因子分析にて因子構造を特定したのち,確証的因子分析にて構成概念妥当性を検討した.スクリープロットにて因子数を推定し,項目の取捨選択条件は共通性0.16未満,因子負荷量0.4未満,複数の因子と因子負荷量0.3以上のダブルローディングにあたる項目は含めないこととした.探索的因子分析にて特定した因子構造に基づいて確証的因子分析を行い,モデルの適合度を確認した.モデルの適合度指標には,χ2値,適合度指標(GFI),自由度修正済み適合度指標(AGFI),比較適合度指標(CFI),平均二乗誤差平方根(RMSEA)を用いた.GFIは,一般的に0.9以上であれば説明力のあるパス図と評価され,AGFIやCFIはどちらも値が1に近いほどデータへの当てはまりが良いと判断される(豊田,2007).RMSEAは0.05以下であれば当てはまりが良く,0.1以上であれば当てはまりが良くないと判断される(豊田,2007).また,尺度の併存性を確認するため外部基準を用いて基準関連妥当性を検討し,本尺度の合計得点および下位尺度得点との相関係数を算出した.看護師の健康と仕事に対する態度は,組織風土や看護師としての規範意識,職業的アイデンティティとの関係性があると仮定し,外部基準には《組織風土尺度38項目》,《援助規範意識尺度》,《看護職用職業的アイデンティティ尺度》を設定した.

5. 倫理的配慮

本研究は東京都立大学研究倫理委員会の承認を得て実施した(承認番号21068).研究対象者へは,研究概要,協力は自由意思に基づくため辞退する権利があること,その場合でも不利益は生じないこと,質問紙内の同意欄チェックと返送をもって同意と判断すること,データは匿名化されること,データは厳重管理し研究終了後は速やかに破棄すること,関連学会での発表および投稿時には個人情報に十分配慮することについて書面にて説明した.なお,基準関連妥当性を検討した尺度は開発者の許諾を得て使用した.

Ⅴ. 結果

1. 対象者の属性(表1

110施設中34施設が対象となり,そのうち19施設から再テスト法へも協力が得られた.質問紙は1,847名のうち811名から返送があり(回収率43.9%),796名(有効回答率43.1%)を分析対象とした.再テスト用の質問紙は1,332名に配布し439名からの返送があり(回収率33.0%),421名(有効回答率31.6%)を分析対象とした.対象者は女性(92.7%)が多く,年齢は20~40代でそれぞれ約3割ずつであった.現在の健康状態では89.6%が健康であることを自覚しているなか,38.9%は何らかの症状を自覚しており,26.6%は持病を有していた.

表1 対象者の属性

 N = 796

項目 内容 度数 %
性別 男性 58 7.3
女性 738 92.7
年齢 20代 266 33.4
30代 234 29.4
40代 196 24.6
50代 93 11.7
60代 5 0.6
無回答 2 0.3
看護教育に関わる最終学歴 専門学校 395 49.6
短期大学 70 8.8
大学 291 36.6
大学院(修士課程) 20 2.5
その他 19 2.4
無回答 1 0.1
看護師経験年数 1~5年 195 24.5
6~10年 168 21.1
11~15年 131 16.4
16~20年 110 13.8
21~25年 89 11.2
26~30年 62 7.8
31年以上 41 5.2
雇用形態 正規雇用(フルタイム) 735 92.3
正規雇用(短時間正職員) 49 6.2
正規雇用以外(パート・嘱託など) 11 1.4
その他 1 0.1
勤務形態 交代制勤務(2交代) 502 63.1
交代制勤務(3交代) 149 18.7
日勤専従 130 16.3
夜勤専従 2 0.3
その他 11 1.4
無回答 2 0.3
夜勤回数 0回 131 16.5
1~2回 65 8.2
3~4回 181 22.7
5~6回 252 31.7
7~8回 70 8.8
9~10回 78 9.8
11回以上 18 2.3
無回答 1 0.1
現在自覚している健康状態 非常に健康である 88 11.1
まあ健康である 625 78.5
あまり健康でない 77 9.7
健康でない 3 0.4
無回答 3 0.4
現在自覚している心身の症状の有無 なし 490 61.6
あり 304 38.2
無回答 2 0.3
持病の有無 なし 581 73.0
あり 212 26.6
無回答 3 0.4

2. 項目分析

天井効果では判断基準には及ばなかったものの,非常に高い値(5.90)を示した1項目を削除対象とした.床効果では1項目が判断基準には及ばなかったものの,非常に低い値(1.08)を示していたことから該当として判断した.項目間相関では相関係数0.7以上を示す組み合わせが1組あったが,異なる構成概念からの成り立ちであることを考慮して削除はせず因子分析に含めることとした.また,相関係数0.65以上を示す組み合わせが5組あったが,同じ構成概念から構成されたという共通性や予備調査でも同様にやや強い相関係数を示していたこと,表現の類似性があることを考慮して3項目を削除対象とした.I-T相関では,項目間の相関係数が0.3を下回った1項目を削除対象とした.G-P分析では《看護師の健康と仕事に対する態度尺度》46項目版の合計得点の中央値を基準に,高得点群(159点以上),低得点群(158点以下)の2群に分けて,Mann-whitneyのU検定を行い,全項目においてP < 0.05で有意差がみられたため項目の削除対象はなかった.

3. 探索的因子分析と因子の命名(表2

46項目版の尺度のうち,項目分析で該当した6項目を除外した40項目に対して探索的因子分析を行い,各因子構造と構成概念との解釈可能性を検討した.因子数の決定には固有値1以上であること,スクリープロットでのスクリー基準を参考に2因子構造から7因子構造において一般化した最小二乗法,最尤法,主因子法のそれぞれで因子分析を行った.項目の取捨選択条件は,共通性0.16未満,因子負荷量0.4未満,ダブルローディング(因子負荷量0.3以上)は含めないこととした.最終的に最尤法による5因子22項目からなる尺度を作成し,各因子を以下の理由から命名した.

第1因子は,生命を左右する仕事という責任の重さや不安から,自らの判断や行動に自信が持てずに心身の負担を感じる状態を示した内容であり,〈意思をもった行動への迷い〉と命名した.第2因子は,仕事をすることへ意味が見出せず,看護師としての在り方への戸惑いを抱くほど心身を消耗した状態を示した内容であり,〈看護師としての在り方への戸惑い〉と命名した.第3因子は,上司や同僚など周囲から自身がどのように思われているのかという評価を気にかけるあまりに負担を感じる状態を示した内容であり,〈周囲からの評価への気がかり〉と命名した.第4因子は,看護の仕事に対する責任や誇りを優先し,健康に支障があっても自身を後回しにする状態を示した内容であり,〈自分自身は後回し〉と命名した.第5因子は,周囲への迷惑を考えると本心では辛くても自身の警告を無視して我慢し続ける状態を示した内容であり,〈本心を抑えた我慢〉と命名した.

4. 信頼性の検証

尺度全体のCronbach’s α係数は0.91であり,下位尺度では0.86~0.72であった(表2).時間的安定性の検証では再テスト法による尺度全体の合計得点の相関係数は0.77,下位尺度の相関係数は0.78~0.60の間で示された.

表2 「看護師の健康と仕事に対する態度尺度」探索的因子分析

 N = 796

因子名 項目 因子負荷量 Chronbach’ α
1 2 3 4 5
意思をもった
行動への迷い
38 上手く対応できないのではないかという仕事への恐怖心があると思う 0.86 –0.16 0.13 0.04 –0.03 0.86 0.91
40 問題解決するために,自ら進んで主張することができていないように思う 0.81 0.07 –0.09 –0.09 0.03
39 主体的な判断が持てる仕事が出来ていないと思う 0.78 0.16 –0.09 –0.06 0.01
24 看護師としての自分の技術や能力に対して自信がないと思う 0.57 0.18 0.11 –0.04 –0.06
35 怒られるのは自分が悪いからとしか考えられずに自分を責めてしまう方だと思う 0.45 0.01 0.26 0.13 –0.01
30 共に働くスタッフの変化に気づけないほど,周りの状況が見えていないように思う 0.41 0.22 –0.04 0.03 0.03
4 医療事故を起こすのではないかという強い緊張があるように思う 0.40 –0.06 –0.03 0.25 0.02
看護師としての在り方への
戸惑い
15 看護師としての専門性を発揮した仕事ができていないと思う –0.20 0.88 0.07 0.00 –0.03 0.83
21 仕事に対して意味を見出すことができていないと思う 0.07 0.69 –0.14 –0.04 0.12
27 看護師としての自分の担う役割が曖昧であると思う 0.18 0.62 –0.02 0.00 –0.10
33 自分が満足いくような仕事ができていないと思う 0.22 0.55 0.05 –0.05 0.04
19 職場内で自分の存在を認めてもらえていないように思う 0.15 0.48 0.04 0.15 –0.09
周囲からの
評価への
気がかり
14 自分は,上司からの評価を常に気にしてしまう方だと思う –0.08 –0.02 0.94 –0.03 –0.01 0.84
45 自分は,共に働くスタッフからの評価を常に気にしてしまう方だと思う 0.08 –0.06 0.83 –0.10 0.00
16 自分は,上司からの期待に応えられていないとプレッシャーを感じる方だと思う 0.06 0.18 0.61 0.02 0.03
自分自身は
後回し
5 看護師は,自分の健康よりも患者を最優先することが求められる立場であると思う –0.01 0.01 –0.05 0.89 –0.05 0.72
1 看護師は,自分の健康に支障があっても仕方がないと考えて援助を行うものだと思う –0.09 0.00 –0.01 0.70 –0.03
3 患者よりも自分のことを優先しようという考えはないと思う 0.08 –0.04 –0.10 0.52 0.01
22 看護師は,患者に対して自分の利益はかえりみず尽くすものであると思う 0.05 0.08 0.05 0.41 0.08
本心を抑えた我慢 12 迷惑を考えると,薬で誤魔化せる症状なら仕事を休みたいとは言えないと思う 0.02 –0.01 –0.07 –0.06 0.96 0.78
13 組織のためなら多少無理があっても責任感をもって取り組むべきだと思う –0.12 –0.08 0.19 0.16 0.51
10 体調が悪くても頑張り続けなければならないプレッシャーがあるように思う 0.09 0.09 0.04 0.20 0.49

注.因子抽出法:最尤法,回転法:プロマックス法

5. 妥当性の検証

1) 構成概念妥当性の検討

5因子22項目版の確証的因子分析(図1)によってモデル適合度を確認した結果,χ2 = 930.980,P = 0.000,GFI = 0.9,AGFI = 0.872,CFI = 0.908,RMSEA = 0.068であった.

図1  「看護師の健康と仕事に対する態度尺度」22項目版の確証的因子分析

2) 基準関連妥当性の検討(表3

本尺度と《組織風土尺度38項目》(r = 0.309),《援助規範意識尺度》(r = 0.226)は弱い正の相関を認め,《看護職用職業的アイデンティティ尺度》(r = –0.258)では弱い負の相関を認めた.

表3 「看護師の健康と仕事に対する態度尺度」との基準関連妥当性

組織風土尺度38項目 援助規範意識尺度 看護職用職業的アイデンティティ尺度
尺度合計 研究的雰囲気 師長のリーダーシップ 看護師の不当な評価 過酷な業務 理念に基づく教育 権威的な人間関係 話し合いの場の欠如 スタッフの意欲的態度 尺度合計 返済規範意識 自己犠牲規範意識 交換規範意識 弱者救済規範意識 尺度合計 看護師選択への自信 自分の看護観の確立 看護師としての自負 社会貢献への志向
「看護師の健康と仕事に対する態度尺度」合計 .309** –0.02 –0.21 .308** .386** –.087* .346** .168** –.266** .226** .161** .112** .157** .185** –.258** –.229** –.318** –.248** –0.06
第1因子:意思をもった行動への迷い .225** –0.02 –.141** .206** .300** –.072* .228** .079* –.177** .205** .137** .145** .091* .143** –.355** –.302** –.417** –.324** –.129**
第2因子:看護師としての在り方への戸惑い .222** –.079* –.301** .322** .329** –.196** .407** .220** –.375** .153** .092** .160** .130** 0.02 –.402** –.374** –.431** –.338** –.186**
第3因子:周囲からの評価への気がかり .214** 0.01 –.083* .144** .209** 0.04 .142** 0.07 –0.03 .137** .081* 0.02 .133** .179** –0.04 –0.04 –.096** –.084* 0.06
第4因子:自分自身は後回し .193** 0.03 –.089* .167** .216** –0.01 .196** .093** –.157** .176** .131** 0.05 .105** .186** –0.01 0.00 –0.04 –0.05 .074*
第5因子:本心を抑えた我慢 .278** –0.07 –.189** .302** .368** –0.04 .292** .199** –.220** .130** .117** 0.04 .124** .123** –.075* –.075* –.081* –.080* –0.02

注.Spearmanの順位相関係数

注.* P < 0.05 ** P < 0.01

Ⅵ. 考察

1. 対象者属性の特徴

母集団は一般病床500床以上の病院勤務看護師であり,50代では看護管理者を除外した影響はあったものの20~40代の各年齢層では我が国の就業者割合とほぼ同等であり,母集団を代表した標本であったと考える.また,現在自覚している健康状態では健康を自覚している割合が高いことから,持病があっても症状対処がなされている,もしくは生活に支障をきたす病状ではない可能性が考えられる.持病があってもいかに管理しながら仕事に結び付けるかによって健康への認識に違いが出るのではないかと推察する.

2. 尺度の信頼性・妥当性の検討

予備調査では仮説の構成概念を6因子としたが,本調査では5因子構造に集約された.具体的には構成概念3〈責任の重さと対峙する〉に類似した因子は生成されず,仕事に対して責任の重さを感じるという要素は他の因子との共通要素として分かれた可能性があると考える.以下の信頼性・妥当性の検討に基づいて5因子構造に集約された場合でも説明可能であると判断し採用した.

まず,尺度の信頼性検討には内的整合性の確認としてCronbach’s α係数,測定誤差の確認として再テスト法に基づいて検討した.5因子構造22項目の尺度全体のCronbach’s α係数は0.91,各因子のCronbach’s α係数は0.72~0.86で0.7以上を保つことが出来ており尺度の内的整合性が確認された.また再テスト法では,尺度全体および各因子間の相関関係が示されたことから,時間的安定性も担保されたと考える.

妥当性として,構成概念妥当性,基準関連妥当性を検討した.構成概念妥当性では,適合度指標においてGFI = 0.9,AGFI = 0.872,CFI = 0.908,RMSEA = 0.068という結果を示した.RMSEAにおいて0.05以上を示していたことは課題として残ったものの0.1以上を示してはおらず,その他の適合度指標の値および探索的因子分析の過程から総合的に評価すると5因子構造の尺度はモデル適合していると判断した.基準関連妥当性では,《組織風土尺度38項目》と《援助規範意識尺度》の合計点数と全ての下位尺度において弱い正の相関を示しており,健康と仕事に対する態度には,組織風土や援助規範意識の要素が含まれていたと考える.また,《看護職用職業的アイデンティティ尺度》の合計得点および第1因子,第2因子,第5因子において弱い負の相関を示しており,健康と仕事においてバランスを乱す恐れのある者は看護師としての職業的アイデンティティが低い傾向にあることが示された.以上から,基準関連妥当性も検証されたと考える.

3. 「看護師の健康と仕事に対する態度尺度」の構成要素

5因子のそれぞれが「看護師の健康と仕事に対する態度」のどの側面を評価しているのか考察した.

医療において看護師は人々の生命の尊さから常に緊張感をもって対峙することが求められる.恐れも緊張感もなく過信に背中を押されただけでは行動の軽率さを生む危険があり,適度な緊張感は医療において持ち合わせる必要がある態度と言える.しかし質問項目には,自信のなさや主体的な行動がとれないなど自尊感情の低さが示されていた.鶴田・前田(2016)は,中堅前期看護師の自己イメージにおいて,自分の未熟さや自信のなさを認識できていることは新たな事象に取り組む際の慎重さや緻密さにつながり,自己教育を促進させる要素になり得ると述べている.本研究でも第1因子【意思をもった行動への迷い】に含まれている自己評価や主体性の低さは同様の性質を持つと考えるが,これが顕著な場合には自己の健康を蔑ろにする恐れが評価される因子と考える.

第2因子【看護師としての在り方への戸惑い】は,看護師としてのワーク・エンゲージメントの実現に支障を与える恐れがあるものの,一方ではキャリア発達を促す上で先を見据えた行動の準備段階として必要な態度と考える.この点は,看護師の職業的アイデンティティの形成とリアリティショックによる揺らぎ(池田・松枝,2020)が健康と仕事との向き合いを妨げる恐れが示される因子と考える.

組織で協働しながら仕事をする上では,時に周囲からの評価を意識しながら自身の行動の舵取りをしていく慎重さが協調性を保つ必要な要素と言える.しかし周囲の評価を必要以上に気にすることで,思ったことを主張できず自らの権利を脅かす恐れも想像される.鈴木ら(2003)は,アサーティブな自己表現では人間関係から生じるストレスの蓄積が少なくバーンアウトしにくいことを述べており,第3因子【周囲からの評価への気がかり】は,周囲の目を気にして自己表現できない態度が健康をなおざりにする傾向として示される因子であることが示唆された.

職業倫理に即した行動として看護師は時に自身よりも他者を優先すべき状況もあるが,安易に自己を後回しにする態度は自らの尊厳を脅かす行動にも通じる.この点は看護師の自己犠牲(中村,2023a)として他者も自己も共生していく社会の実現には自身の尊厳も守るための倫理的姿勢とかけ離れた選択を招く恐れがある.第4因子【自分自身は後回し】は,自己尊重を軽視する認識として仕事と健康のバランスを欠く行動選択が示される因子であると考える.

就業継続において,時には我慢を乗り越えながら仕事に携わることもあり,特に感情労働が求められる職種においては,感情・欲求の抑制が求められる場面も少なくはない.松本(2017)は,職場における本音の抑制と個人が置かれている環境要因との関連を述べている.質問項目には組織への迷惑を考えれば自らに我慢を強いるという意味合いが含まれていることから,第5因子【本心を抑えた我慢】は我慢強さが度を超すことで不調があっても見て見ぬふりをして健康を妨げる恐れが示される因子と考える.

4. 尺度の活用可能性

看護師は他者の健康の保持増進支援を企てる立場にも関わらず,自己の健康を後回しにしてでも奉仕や献身の姿勢を持つことが求められるべき姿として行動規範とされてきた風潮がある.しかし,他者のみならず自己の健康も適切にケアすることこそが,安全で質が担保された援助提供の基盤にあり,その点について健康と仕事に対する価値観を捉え直す機会が必要であると考える.本尺度は日常的には意識する機会の少ない「健康と仕事の位置づけ」への自己の認識を可視化し,行動を見直すきっかけを提供し得る指標として活用が期待される.

また,本尺度は得点が高いほど健康と仕事のバランスを乱す傾向が評価される指標である.看護師長の役割遂行上の困難感として職場の人間関係や関係性の調整(吉川ら,2012後藤・川島,2010Kath et al., 2013)が挙げられており,中村(2023b)は健康に関わる問題への支援介入目安の不確かさによって看護師長が戸惑う様相を示している.本尺度は,健康との仕事のバランスを乱す恐れのある傾向を客観的に評価することが可能であり,職員の健康管理や職場定着に向けた人材管理の一助として看護管理上での活用が期待されると考える.

5. 研究の限界と今後の課題

「看護師の健康と仕事に対する態度」は,時代背景や社会状況によって変遷していく流動的な概念であると推察する.調査はCOVID-19の5類移行前に実施したものであり,特徴的な表現はなかったものの,今後は社会状況に伴って活用性を再確認する必要がある.また回収率は43.9%と決して高い値ではなく,設問数の多さや看護師の健康と仕事のバランスに着目した真新しい概念であったことが回答への複雑さを生んだ可能性は否めない.

今後の課題として,尺度の活用可能な属性の範囲を検証することである.さらなる適用可能な属性の幅を広げるため,病院の施設規模を小規模・中規模病院にした場合や病院以外で就業している看護師とした場合,看護基礎教育における学生を対象とした場合でも同様の信頼性や妥当性を担保できる尺度であるのか検証していく必要性がある.

Ⅶ. 結論

〈意思をもった行動への迷い〉,〈看護師としての在り方への戸惑い〉,〈周囲からの評価への気がかり〉,〈自分自身は後回し〉,〈本心を抑えた我慢〉の5因子22項目からなる「看護師の健康と仕事に対する態度尺度」を開発し,信頼性・妥当性が確認された.本尺度は,看護師の健康と仕事に対する態度を客観的に評価可能な指標であり,看護師が自己の認知的傾向に気づく機会の提供となることや,職員の健康管理や職場定着に向けた支援介入目安として看護管理上での活用が期待される.

謝辞:本研究に関してご協力いただきました研究対象施設の看護管理者の皆様ならびに看護師の皆様に深く感謝いたします.また,本研究はJSPS科研費22K10662の助成を受け実施したものである.

利益相反:本研究における利益相反は存在しない.

著者資格:SNは研究プロセスすべてを主導し執筆した.ASは原稿への示唆および研究プロセス全体への助言を行った.両著者共に最終原稿を読み承認した.

付記:本研究は,東京都立大学大学院人間健康科学研究科へ提出した博士論文の一部を加筆修正したものである.また,本研究の一部は,第43回日本看護科学学会学術集会において発表した.

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