2026 年 46 巻 p. 273-285
目的:老人看護専門看護師,精神看護専門看護師,認知症看護認定看護師が認識する,一般病棟における身体拘束最小化のための看護実践方法について,その必要性と実現可能性の観点から明らかにし,明らかにした看護実践方法について妥当性と非同意項目の同意化に向けて検討することを目的とした.
方法:一般病棟で身体拘束最小化経験を有する老人看護専門看護師,精神看護専門看護師,認知症看護認定看護師計37名にデルファイ法を用いた調査を4回実施した.
結果:一般病棟における身体拘束最小化の看護実践方法として必要性74項目,実現可能性57項目で同意した.実現可能性で同意した項目は全て必要性でも同意した.
結論:同意項目は必要性,実現可能性とも一般病棟における身体拘束最小化のための看護実践方法として妥当であった.必要性で同意され,実現可能性で同意しなかった項目は適切な教育を提供するなどして実現できると考えられた.
Objective: The purpose of this study was to clarify nursing practices for minimizing physical restraints in general wards, as recognized by Certified Nurse Specialists in Gerontological Nursing, Certified Nurse Specialists in Psychiatric Mental Health Nursing, and Certified Nurses in Dementia Nursing, from the perspectives of necessity and feasibility, and to examine the consistency of the identified practices with previous studies, as well as to seek consensus on items for which agreement was not initially obtained.
Method: A self-administered questionnaire survey distributed by mail using the Delphi technique was conducted four times. The participants were a total of 37 geriatric nurses, psychiatric nurses, and certified dementia nurses with practical experience in minimizing physical restraints in general wards.
Results: With regard to nursing practices for minimizing physical restraints in general wards, agreement was reached on 74 items regarding necessity and 57 items regarding feasibility. All items that were agreed upon in terms of feasibility were also agreed upon in terms of necessity.
Conclusion: The agreed upon items were appropriate for nursing practices for minimizing physical restraints in general wards in terms of both necessity and feasibility. Items that were agreed upon in terms of necessity, but not in terms of feasibility, were thought to become feasible by means such as providing appropriate education.
医療現場において身体拘束は転倒の予防や点滴自己抜去の予防のために実施されている(Nakanishi et al., 2018).身体拘束は実施された患者の人権を脅かし,患者が否定的感情を抱く(小野ら,2020)だけでなく,様々な弊害が報告されている.実施された患者の生活の質は低下し(Lüdecke et al., 2019),死亡率や院内感染そして転倒による損傷リスクを上昇させ(Evans et al., 2002),せん妄を促進し(茂呂,2011),さらに肺塞栓などの合併症のリスクを生じさせる(日本総合病院精神医学会,2007).また身体拘束を実施した看護師は倫理的葛藤を抱く(横田・中村,2023).さらに,社会的には入院期間を延長する(Evans et al., 2002;Bai et al., 2014).それらの状況を鑑みると,現在,やむを得ない状況下で実施されている身体拘束は,最小化を経て廃止することが望ましい.国外では1990年代から2000年代初頭にかけて身体拘束を最小化する動きがみられ,イギリスやノルウェーでは身体拘束廃止が提唱されている(Bray et al., 2004;Martin & Mathisen, 2005).
わが国では身体拘束廃止には至らず,最小化に取り組まれている.2004年に身体拘束ゼロへの手引きが公開され,医療現場も対象とはしているものの,主に介護現場での身体拘束最小化に取り組まれてきた(厚生労働省,2004).一方で,精神保健福祉法に基づき身体拘束を含む行動制限最小化に取り組まれている精神科分野以外での医療現場には明確な規定がなかった.そのような中,一般病棟では2016年度診療報酬改定で認知症ケア加算が新設され,身体拘束をしている患者への算定では減額されることが明記された.看護実践レベルでは事例・病棟・病院単位で身体拘束に関する最小化を老人看護専門看護師(以下GCNS)(小林,2019;和田,2019),精神看護専門看護師(以下PCNS)(新田,2020;桐山・山本,2016),認知症看護認定看護師(以下DCN)(佐藤・田屋,2020;池内,2020)が報告している.また,複数の専門・認定看護師による先進的な身体拘束最小化のための看護実践が報告されている(桐山,2025;曽田ら,2024;鈴木ら,2022).ただし,それらの報告は,病床数,人員配置,リソースナース数などが異なり,一般化されているとは言い難く,専門的な教育を受けている専門看護師,認定看護師であるが故に実践できるとも捉えられる.そのほかの報告では,身体拘束削減を達成した複数病院の看護管理者への調査で,身体拘束最小化には倫理的文化を醸成する必要性が報告されている(南﨑ら,2022).一方,これまでの報告は先進的な活動を表したものが多く,国内の一般病棟で身体拘束最小化が実現しているとは言い難い.そのような情勢から2024年の診療報酬改定では,身体的拘束の最小化が施設基準とされ,身体拘束最小化に取り組んでいない病院は減算対象とされた.
今後さらに身体拘束を最小化するためには,異なる条件で報告されている看護実践について,専門・認定看護師資格の有無にかかわらず一般病棟で広く活用できる方法に統合する必要がある.また,広く活用してもらうためには,身体拘束最小化のために必要な看護実践方法を統合するのみでは足りない.その方法が臨床看護現場で実現可能かを含めて検討し,より実践してもらいやすくすることが必要である.現状の報告を統合するための手法としてはシステマティックレビューがあるが,前述したように各報告の条件が異なり,統合することは難しい.そこで,本研究で着目するのが,複数の専門家の意見を統合するデルファイ法である.デルファイ法は複数の専門家に意見を求め統合するプロセスを複数回続ける中で,専門家同士の合意を目指す手法である(Polit & Beck, 2008/2010).一般病棟で先進的に活動し,報告している専門家としては,上述した専門・認定看護師があり,それらの資格は身体拘束の対象となる患者をラウンドし専門的なケアを提供する認知症ケア加算や精神科リエゾンチーム加算の算定要件でもある.それらの専門家の意見を統合し,身体拘束最小化のために必要性が高く,かつ実現可能性も高い看護実践方法を見出すことで,一般病棟の看護実践に貢献できると考える.
本研究の目的は一般病棟における身体拘束最小化のための看護実践方法を必要性と実現可能性の観点から明らかにし,その看護実践方法について妥当性と非同意項目の同意化に向けて検討することである.
身体拘束を予防することと実施されている身体拘束を早期解除すること,とした.ただし,スピーチロックについては瞬時の実施であり,早期解除が難しいため,予防のみとした.
2. 看護実践看護職が看護を必要とする人々に働きかける行為であり,看護職の活動の主要な部分をなすもの,とした(日本看護科学学会看護学学術用語検討委員会,n.d.).
3. 必要性一般病棟で身体拘束最小化の看護を実践するにあたりその方法の効果が高いと考えられること,とした.
4. 実現可能性一般病棟で身体拘束最小化の看護を実践するにあたり現実的な観点からその方法を実施することが可能なこと,とした.
デルファイ法による郵送式無記名自記式調査
2. 一般病棟における身体拘束最小化のための看護実践方法案の作成一般病棟における身体拘束最小化の看護実践に関する先行研究(曽田ら,2024;古賀ら,2023;桐山・松下,2022;南﨑ら,2022;山本ら,2022;池内,2020;小林,2020;新田,2020;佐藤,2020;鈴木ら,2022;和田,2019;桐山・山本,2016)および書籍(鈴木・黒川,2020;小藤,2018)と先行研究・書籍の実践を補うためにGCNS,PCNS,DCNらにインタビュー調査を実施し,看護実践方法案の項目を抽出した.抽出した項目について,一般病棟に勤務経験のあるPCNS,DCNと内容的妥当性を検討し45の初回調査項目を準備した.本文中調査項目を項目番号と“項目名”で示した.調査項目は本研究で定義した看護実践(日本看護科学学会看護学学術用語検討委員会,n.d.)にも引用されているSchwirian P. M.(1978)が述べる看護実践能力の6項目を基にリーダーシップ,協働,計画・評価,人間関係・コミュニケーション,専門職的発達の5つに分類した.6項目中,急性期の対応であるクリティカルケアに該当する項目は存在しなかった.なお,協働は教育・協働という項目であったが,本研究で作成した項目には教育的な要素が含まれていなかったため,協働のみを分類名とした.
3. 対象者デルファイ法では対象者にその分野の専門家を選定する必要がある.本研究では一般病棟で勤務し,身体拘束最小化にかかわったことのあるGCNS,PCNS,DCN,各10名,計30名を想定した.当該分野の専門看護師・認定看護師は,身体拘束予防に関連する認知症ケア加算において算定要件を満たす研修を修了している看護師らであり,先行研究でも一般病棟で身体拘束最小化の看護実践を報告していた.人数は看護学分野のデルファイ法に関する文献研究で20名程度でもその結果の有効性が許容されることと,同研究で対象者が18名以上であれば中等度の一致率を示し,90名の場合との大きな差はみられなかったとの報告(藤田ら,2018)を踏まえ,途中辞退を考慮し設定した.
対象者は先行研究で一般病棟において身体拘束最小化活動を報告していた看護師に電話または電子メールで打診の上,所属長の許可を得てから参加してもらった.さらに,同意を得た対象者からの一般病棟で身体拘束最小化の看護を実践し,選定条件に合致する看護師を紹介してもらい,先行研究で活動を報告していた看護師と同様の手順を踏み参加してもらった.なお,研究への同意にあたり,一般病棟で身体拘束最小化の看護を実践していたことを確認した.
4. データ収集期間データ収集期間は2024年10月1日から2025年3月31日であった.
5. 質問項目の評価各調査項目について5段階で必要性(必要:5,やや必要:4,どちらともいえない:3,やや必要でない:2,必要でない:1)と実現可能性(可能:5,やや可能:4,どちらともいえない:3,やや可能でない:2,可能でない:1),変更が必要な調査項目と追加が必要な調査項目を自由記載で回答してもらった.必要性と実現可能性の両方を評価する意図は,身体拘束最小化に必要な看護実践方法を開発したとしても,看護実践現場の実情により実践できなければ身体拘束最小化に貢献できないためである.また,結果で必要性が高く,実現可能性が低い項目については,看護実践現場の改善などで将来的に実現することでより高度な身体拘束最小化を達成できる可能性があるためである.対象者にはリソースナースは所属せず,看護師長級の管理者,副師長・主任級の中間管理者,スタッフナース,看護補助者で構成される一般病棟での看護実践を想定して回答してもらった.また,調査項目中にあるリソースナースは病棟に所属しないで組織横断的に活動する設定とした.デルファイ法に関する先行研究(藤田ら,2018)を参考に,対象者との間で質問紙のやり取りを4回繰り返した.2回目以降の回答には,前回までの集計結果を同封し,確認してもらいながら回答を得た.変更が必要という意見を得た項目は,研究者が取捨選択せず,全項目について次回調査時に新旧の項目を挙げ,どちらが良いかを回答してもらい,51%以上の支持を得た方を次々回以降の項目とした.追加が必要という意見を得た調査項目は,研究者が取捨選択せず,全項目について次回調査時に新規項目であることを明記して追加のうえ,対象者に必要性と実現可能性を回答してもらった.そうすることで,当該の新規項目が必要性・実現可能性ともに同意の基準を満たさない場合に採用されないようにした.なお,4回目の調査は最終回で調査項目の追加・変更はできないため自由記載欄を設けなかった.
6. データ分析方法デルファイ法の同意率計算方法はパーセンテージとした.まず,質問紙の項目ごとに必要性と実現可能性の得点ごとの回答者数を単純集計した.次に,項目ごとに全回答者数を分母,得点が4点及び5点の回答者数の合計を分子として,必要性と実現可能性それぞれのパーセンテージについて小数第三位を四捨五入して第二位まで算出した.パーセンテージは質問紙回収ごとに算出し,Polit & Beck(2008/2010)の基準から最終回である4回目の値が51%以上のものを一般病棟における身体拘束最小化の看護実践方法として必要性・実現可能性の同意が得られたと解釈した.同意の程度に関してはデルファイ法に関する先行研究(加藤・山内,2017)に倣って51から69.99%を低い同意,70から79.99%を中程度の同意,80%以上を高い同意とした.
対象者には研究者が研究テーマ,目的,内容,個人情報の取り扱い,データの保存方法・期間・破棄方法,公表方法について説明し質問を受けた上で,自由意思による同意を得て,同意書に署名を得てから研究を実施した.対象者の経験年数や所属先の属性などは一般病棟の身体拘束最小化に関する報告が少なく,個人特定の懸念があるため,収集しなかった.また,その際,途中辞退は可能であるが,無記名式質問紙調査のため,返送済みの質問紙の取り消しはできない旨も説明した.対象者の研究参加にあたっては所属施設の責任者および所属部門の責任者に文書で説明し,承諾を得た.本研究は名古屋市立大学大学院看護学研究科で倫理審査を受審し,承認を得てから実施した(番号24026-3).
GCNS 15名,PCNS 10名,DCN 12名の合計37名から同意を得た.
2. デルファイ法に基づくやりとり1回目の回収数は34通(回収率91.89%)であった.自由記載では16項目の追加と,2つの調査項目についてそれぞれ2つに分割すべきという意見が示された.分割した方がよいとされたのは“人数の少ない中で身体拘束最小化に取り組んでいるスタッフを看護師長やリソースナースがねぎらう”と“過去であれば身体拘束していたような事例に身体拘束せずに済んだ場合,看護師長やリソースナースがほめる”であり,それぞれ看護師長とリソースナースを分けた方がよいという意見であったため,2回目は1回目と同じ項目と分割した項目(前者の項目番号8と11,後者9と12)を準備し,両方に1回目の同意率を記載した.
2回目の回収数は34通(回収率91.89%)であった.1回目で追加するよう意見を得た16項目(項目番号13,15,21,24,26,31,37,45,46,47,52,65,69,72,76と3回目では削除した1項目)を追加し63項目を調査対象とした.自由記載では10項目追加の意見を得た.また,追加した16項目のうち“身体拘束の同意書を得た後に必要か否か査定を委員会など第三者が行う”のみ必要性の同意率が50%であり,51%を超えなかったため,次回以降の質問項目からは除外した.さらに2回目で分割した項目については両方とも分割する方が51%を超えたため,3回目以降は分割した項目(番号8,9,11,12)を採用した.
3回目の回収数は32通(回収率86.49%)であった.2回目で追加するよう意見を得た10項目(項目番号3,10,14,16,48,54,58,60,68,74)を追加し,72項目を調査対象とした.自由記載では4項目追加の意見を得た.
4回目の回収数は33通(回収率89.19%)であった.3回目で追加するよう意見を得た4項目(項目番号17,25,66,73)を追加し,76項目を調査対象とした(図1).

最終4回目の76項目のうち,必要性で同意を得たのは74項目(高い同意70項目,中等度の同意3項目,低い同意1項目),実現可能性で同意を得たのは57項目(高い同意34項目,中等度の同意9項目,低い同意14項目)であった.実現可能性について同意を得た57項目は全て必要性も同意を得た.必要性・実現可能性ともに同意を得られなかったのは2項目(32“事故を予防するために身体拘束を選択する可能性が高い場合,事前に医療安全管理者-部門に身体拘束最小化を相談する”と33“インシデント-アクシデント発生時,身体拘束を用いて再発生を予防する前に医療安全管理者-部門に身体拘束最小化を相談する”)であった.必要性のみ若しくは必要性と実現可能性で同意を得た項目名,全回の同意率,4回目の同意の程度は表1,表2,表3,表4,表5に示した.なお,表中,同意率が51%未満の数値と4回目で同意しなかった同意の程度は太字で示した.
| 番号 | 内容 | 必要性 | 実現可能性 | |||||||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 1回目 | 2回目 | 3回目 | 4回目 | 1回目 | 2回目 | 3回目 | 4回目 | |||||
| 同意率(%) | 同意の程度 | 同意率(%) | 同意の程度 | |||||||||
| 1 | 身体拘束最小化を病棟目標として設定する | 97.06 | 100.00 | 100.00 | 100.00 | 高 | 73.53 | 87.88 | 96.88 | 90.32 | 高 | |
| 2 | 定期的(毎週・毎月など)に身体拘束数を掲示や配布して明示する | 84.85 | 93.94 | 96.88 | 93.55 | 高 | 48.48 | 66.67 | 81.25 | 77.42 | 中 | |
| 3 | 身体拘束の同意を得るフローについてどのような時に拘束が必要と判断するかを定期的に見直す | ― | ― | 90.63 | 96.77 | 高 | ― | ― | 65.63 | 70.97 | 中 | |
| 4 | 看護師長が身体拘束を行わずに転倒・転落,ルートの自己抜去が生じた際に身体拘束を行わなかったことを責めない | 97.06 | 100.00 | 100.00 | 100.00 | 高 | 73.53 | 72.73 | 80.65 | 87.10 | 高 | |
| 5 | 看護師長が病棟をラウンドする際,身体拘束を最小化できるかをスタッフと検討する | 100.00 | 100.00 | 100.00 | 96.77 | 高 | 52.94 | 63.64 | 68.75 | 58.06 | 低 | |
| 6 | 看護師長が身体拘束最小化を相談する先を看護部や担当する委員会が明示する | 91.18 | 93.94 | 100.00 | 100.00 | 高 | 52.94 | 51.52 | 78.13 | 80.65 | 高 | |
| 7 | 身体拘束最小化をためらう看護師には看護師長などの上位職者やその看護師より経験豊富な看護師がためらう理由や不安の背景を聴く | 91.18 | 96.97 | 96.88 | 100.00 | 高 | 38.24 | 48.48 | 62.50 | 64.52 | 低 | |
| 8 | 人数の少ない中で身体拘束最小化に取り組んでいるスタッフを看護師長などの上位職者や中堅以上の経験豊富な看護師がねぎらう | 100.00 | 100.00 | 100.00 | 100.00 | 高 | 88.24 | 81.82 | 90.63 | 90.32 | 高 | |
| 9 | 過去であれば身体拘束していたような事例に身体拘束せずに済んだ場合,看護師長などの上位職者や中堅以上の経験豊富な看護師がほめる | 94.12 | 96.97 | 100.00 | 100.00 | 高 | 82.35 | 72.73 | 84.38 | 93.55 | 高 | |
| 10 | 身体拘束最小化をためらう看護師にはリソースナースから対象者にとっての最善のケアを考えることができるよう働きかける | ― | ― | 81.25 | 96.77 | 高 | ― | ― | 62.50 | 41.94 | 同意せず | |
| 11 | 人数の少ない中で身体拘束最小化に取り組んでいるスタッフをリソースナースがねぎらう | 100.00 | 96.97 | 93.75 | 100.00 | 高 | 88.24 | 90.91 | 75.00 | 83.87 | 高 | |
| 12 | 過去であれば身体拘束していたような事例に身体拘束せずに済んだ場合,リソースナースがほめる | 94.12 | 96.97 | 96.88 | 100.00 | 高 | 82.35 | 78.79 | 78.13 | 83.87 | 高 | |
| 13 | 身体拘束最小化を病院の目標とし,トップダウンで医師を含む多職種にも周知・教育して多職種で連携しやすい環境を作る | ― | 97.06 | 96.88 | 100.00 | 高 | ― | 64.71 | 68.75 | 67.74 | 低 | |
| 14 | 院内で見守りができる仕組み(院内カフェや院内デイケアなど)をつくる | ― | ― | 90.63 | 100.00 | 高 | ― | ― | 31.25 | 35.48 | 同意せず | |
| 15 | 転倒しても損傷を負わない床にするなどハード面の整備を病院に依頼する | ― | 97.06 | 100.00 | 100.00 | 高 | ― | 26.47 | 21.88 | 22.58 | 同意せず | |
| 16 | 転倒しても損傷を負わないよう低床ベッド,緩衝マットの整備を病院に依頼する | ― | ― | 96.88 | 100.00 | 高 | ― | ― | 53.13 | 35.48 | 同意せず | |
| 17 | 身体拘束を病院単位で一元管理する | ― | ― | ― | 90.63 | 高 | ― | ― | ― | 65.63 | 低 | |
| 18 | インシデント-アクシデント発生時,個人を叱責しない | 100.00 | 100.00 | 100.00 | 100.00 | 高 | 88.24 | 90.91 | 78.13 | 93.55 | 高 | |
| 19 | インシデント-アクシデント発生時,システム上の不備について焦点化して検討する | 88.24 | 96.97 | 93.75 | 96.77 | 高 | 61.76 | 66.67 | 65.63 | 67.74 | 低 | |
| 20 | インシデント-アクシデント発生時,医師や家族への報告をリーダーナースや看護師長が行い個人への責任追及を避ける | 76.47 | 81.82 | 93.75 | 96.77 | 高 | 55.88 | 45.45 | 53.13 | 61.29 | 低 | |
| 21 | インシデント-アクシデント発生時,個人を責めないことを医師にも依頼する | ― | 94.12 | 100.00 | 100.00 | 高 | ― | 47.06 | 68.75 | 64.52 | 低 | |
| 22 | インシデント-アクシデント報告の際,リーダーナースや看護師長はサポーティブな姿勢を心掛ける | 100.00 | 100.00 | 100.00 | 100.00 | 高 | 76.47 | 81.25 | 96.88 | 87.10 | 高 | |
| 23 | 身体拘束解除後にインシデント-アクシデントが発生した場合,身体拘束を解除したことのみを原因として責任追及しない | 100.00 | 100.00 | 100.00 | 100.00 | 高 | 61.76 | 72.73 | 78.13 | 83.87 | 高 | |
注)同意の程度は4回目の同意率が80%以上を高,70~79.99%を中,51~69.99%を低,51%未満を同意せずとした
| 番号 | 内容 | 必要性 | 実現可能性 | |||||||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 1回目 | 2回目 | 3回目 | 4回目 | 1回目 | 2回目 | 3回目 | 4回目 | |||||
| 同意率(%) | 同意の程度 | 同意率(%) | 同意の程度 | |||||||||
| 24 | 身体拘束開始時,治療や看護の目標について検討し,身体拘束を実施するか否か,実施の場合の解除できる条件を多職種で話し合い記録に残す | ― | 100.00 | 100.00 | 100.00 | 高 | ― | 70.59 | 87.50 | 90.32 | 高 | |
| 25 | 医師が身体拘束の適応と継続について評価し,それに基づいて多職種で解除に向けたカンファレンスを行う | ― | ― | ― | 70.97 | 中 | ― | ― | ― | 26.67 | 同意せず | |
| 26 | 身体拘束に至る可能性が高い場合,事前に医師とアセスメント内容を共有の上検討し,開始する際には医師から直接指示を受ける | ― | 100.00 | 100.00 | 100.00 | 高 | ― | 41.18 | 62.50 | 74.19 | 中 | |
| 27 | 身体拘束の解除とその後のフォローを医師に相談する | 85.29 | 100.00 | 100.00 | 96.77 | 高 | 41.18 | 36.36 | 59.38 | 58.06 | 低 | |
| 28 | 病棟で考案した方法で身体拘束最小化が難しい場合,身体拘束最小化を担当するチームがある場合には,対象者にとっての最善のケアを看護師が主体的かつ早期に相談する | 97.06 | 96.97 | 96.88 | 100.00 | 高 | 76.47 | 75.76 | 87.50 | 80.65 | 高 | |
| 29 | 病棟スタッフのみで対応できる患者の状況かを検討し,難しい場合は他職種や身体拘束最小化を担当するチームに依頼しともに検討する | 100.00 | 100.00 | 100.00 | 100.00 | 高 | 82.35 | 90.91 | 93.75 | 87.10 | 高 | |
| 30 | リハビリ部門に対象者の筋力や関節可動域に応じた安全保持方法を相談する | 97.06 | 96.88 | 93.75 | 96.77 | 高 | 70.59 | 75.00 | 87.50 | 80.65 | 高 | |
| 31 | 対象者のADL拡大のためにリハビリなど多職種で検討する場を持つ | ― | 100.00 | 100.00 | 100.00 | 高 | ― | 82.35 | 90.63 | 100.00 | 高 | |
| 32 | 事故を予防するために身体拘束を選択する可能性が高い場合,事前に医療安全管理者-部門に身体拘束最小化を相談する | 58.82 | 62.50 | 59.38 | 38.71 | 同意せず | 17.65 | 12.12 | 25.00 | 16.13 | 同意せず | |
| 33 | インシデント-アクシデント発生時,身体拘束を用いて再発生を予防する前に医療安全管理者-部門に身体拘束最小化を相談する | 70.59 | 63.64 | 53.13 | 38.71 | 同意せず | 35.29 | 15.15 | 21.88 | 19.35 | 同意せず | |
| 34 | 夜間の覚醒がみられる対象者が良眠できるよう補助者の力などを借りて夕方に足浴を行う | 70.59 | 69.70 | 78.13 | 70.97 | 中 | 14.71 | 12.12 | 6.25 | 16.13 | 同意せず | |
注1)番号は表1からの通番とした 注2)同意の程度は4回目の同意率が80%以上を高,70~79.99%を中,51~69.99%を低,51%未満を同意せずとした
| 番号 | 内容 | 必要性 | 実現可能性 | |||||||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 1回目 | 2回目 | 3回目 | 4回目 | 1回目 | 2回目 | 3回目 | 4回目 | |||||
| 同意率(%) | 同意の程度 | 同意率(%) | 同意の程度 | |||||||||
| 35 | 身体拘束を検討する行動(ルートに触れる,ナースコールを使用しないで歩行など)が見られたときに,その行動の意図や背景,ニーズを検討して看護実践に反映する | 100.00 | 100.00 | 100.00 | 100.00 | 高 | 91.18 | 93.94 | 100.00 | 96.77 | 高 | |
| 36 | ルートの自己抜去など治療継続にかかわって身体拘束を検討する場合は治療を優先すべき時か否かについて検討して看護実践に反映する | 97.06 | 100.00 | 96.88 | 100.00 | 高 | 76.47 | 90.91 | 96.88 | 100.00 | 高 | |
| 37 | 看護記録類が対象者の視点で述べられているかを確認する | ― | 88.24 | 93.75 | 93.55 | 高 | ― | 44.12 | 50.00 | 41.94 | 同意せず | |
| 38 | 対象者のニーズを検討しそれを満たす行動を考えて看護実践に反映する | 100.00 | 100.00 | 100.00 | 100.00 | 高 | 67.65 | 54.55 | 71.88 | 87.10 | 高 | |
| 39 | 前日同じ質問をしてその返答の比較から会話の成立具合を確認し,覚醒度を確認し看護実践に反映する | 79.41 | 90.91 | 84.38 | 80.65 | 高 | 55.88 | 33.33 | 46.88 | 61.29 | 低 | |
| 40 | 身体拘束を実施することで本当に事故が予防できるかを検討して看護実践に反映する | 100.00 | 100.00 | 100.00 | 96.77 | 高 | 61.76 | 66.67 | 68.75 | 70.97 | 中 | |
| 41 | 身体拘束を継続することによる対象者の身体への影響(筋力低下,関節可動域の減少など)を検討して看護実践に反映する | 100.00 | 100.00 | 100.00 | 100.00 | 高 | 64.71 | 69.70 | 75.00 | 83.87 | 高 | |
| 42 | 身体拘束を継続することによる対象者の心理への影響(せん妄の助長,意欲の低下など)を検討して看護実践に反映する | 100.00 | 100.00 | 100.00 | 100.00 | 高 | 63.64 | 57.58 | 78.13 | 80.65 | 高 | |
| 43 | 対象者への注意喚起方法が有効か(文字の読めない人に張り紙をしていないかなど)を検討して看護実践に反映する | 94.12 | 100.00 | 100.00 | 100.00 | 高 | 66.67 | 63.64 | 90.63 | 100.00 | 高 | |
| 44 | 対象者を安全が守ることが難しい人としてのみ捉えず,人柄や趣味,関心事などについて検討して看護実践に反映する | 97.06 | 100.00 | 100.00 | 100.00 | 高 | 52.94 | 51.52 | 65.63 | 70.97 | 中 | |
| 45 | 離床センサーを設置し対象者の動き出しを把握しやすくしつつ,必要以上の行動把握に配慮する | ― | 70.59 | 96.88 | 100.00 | 高 | ― | 76.47 | 81.25 | 93.55 | 高 | |
| 46 | 拘束時間を記録し可視化する | ― | 91.18 | 93.75 | 96.77 | 高 | ― | 69.70 | 87.50 | 87.10 | 高 | |
| 47 | 身体拘束解除後に事故が起きた場合,解除したことの関連を検討し,解除したこと以外の要因も考え対策を実践に反映する | ― | 97.06 | 100.00 | 100.00 | 高 | ― | 55.88 | 75.00 | 83.87 | 高 | |
| 48 | 入院前のADLからオーバーテーブルの配置やその上に置くものを選定し,対象者自身が端坐位になったり飲み物を飲めるようにして対象者のニードを満たす | ― | ― | 90.63 | 100.00 | 高 | ― | ― | 75.00 | 90.32 | 高 | |
| 49 | 朝の申し送りで夜勤帯の勤務者と身体拘束解除について検討する | 79.41 | 90.91 | 87.50 | 90.32 | 高 | 52.94 | 57.58 | 65.63 | 46.88 | 同意せず | |
| 50 | 夜間の覚醒がみられる対象者に昼夜のリズムがつけられるようレクリエーションがある場合は参加を促す | 88.24 | 96.88 | 100.00 | 100.00 | 高 | 30.30 | 42.42 | 56.25 | 54.84 | 低 | |
| 51 | 夜間の覚醒がみられる対象者に昼夜のリズムがつけられるよう院内で見守りができる仕組み(院内カフェや院内デイケアなど)がある場合は参加を促す | 73.53 | 87.88 | 100.00 | 100.00 | 高 | 8.82 | 21.21 | 50.00 | 50.00 | 同意せず | |
| 52 | 日中の覚醒を保持するため食事や歩行などADLの維持を意図した実践を行う | ― | 100.00 | 100.00 | 100.00 | 高 | ― | 72.73 | 87.50 | 90.32 | 高 | |
| 53 | 身体拘束最小化カンファレンスでは身体拘束の三要件を満たしているかを検討する | 97.06 | 100.00 | 96.88 | 96.77 | 高 | 88.24 | 90.91 | 87.50 | 90.32 | 高 | |
| 54 | 身体拘束を実施した場合の二次障害についてカンファレンスで検討し記録に残す | ― | ― | 100.00 | 100.00 | 高 | ― | ― | 81.25 | 96.77 | 高 | |
注1)番号は表1からの通番とした 注2)同意の程度は4回目の同意率が80%以上を高,70~79.99%を中,51~69.99%を低,51%未満を同意せずとした
| 番号 | 内容 | 必要性 | 実現可能性 | |||||||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 1回目 | 2回目 | 3回目 | 4回目 | 1回目 | 2回目 | 3回目 | 4回目 | |||||
| 同意率(%) | 同意の程度 | 同意率(%) | 同意の程度 | |||||||||
| 55 | 日中対象者とかかわる時間を増やすためベッドサイドで記録を行う | 82.35 | 87.88 | 93.75 | 93.55 | 高 | 61.76 | 81.82 | 84.38 | 77.42 | 中 | |
| 56 | 身体拘束同意書に医療事故発生と身体拘束によるリスク・苦痛の両方を明記し,取得者が説明する | 97.06 | 100.00 | 100.00 | 96.77 | 高 | 73.53 | 78.79 | 81.25 | 93.33 | 高 | |
| 57 | 身体拘束最小化カンファレンスでは対象者に参加してもらい,病床環境や薬剤選択などをともに検討する | 79.41 | 72.73 | 78.13 | 74.19 | 中 | 32.35 | 15.15 | 25.00 | 12.90 | 同意せず | |
| 58 | 身体拘束最小化カンファレンスを対象者のベッドサイドで行い,ともに対象者の状態や病床環境を確認して身体拘束しない方法を検討する | ― | ― | 93.75 | 93.55 | 高 | ― | ― | 56.25 | 41.94 | 同意せず | |
| 59 | 対象者の家族や本人をよく知る人に身体拘束最小化カンファレンスに加わってもらい共に検討する | 61.76 | 75.00 | 78.13 | 67.74 | 低 | 11.76 | 3.03 | 9.38 | 16.13 | 同意せず | |
注1)番号は表1からの通番とした 注2)同意の程度は4回目の同意率が80%以上を高,70~79.99%を中,51~69.99%を低,51%未満を同意せずとした
| 番号 | 内容 | 必要性 | 実現可能性 | |||||||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 1回目 | 2回目 | 3回目 | 4回目 | 1回目 | 2回目 | 3回目 | 4回目 | |||||
| 同意率(%) | 同意の程度 | 同意率(%) | 同意の程度 | |||||||||
| 60 | 模範となるスタッフやリンクナースを育成する | ― | ― | 100.00 | 100.00 | 高 | ― | ― | 78.13 | 77.42 | 中 | |
| 61 | 身体拘束最小化カンファレンスで看護師が身体拘束を実施することへの葛藤を表出する場を作る | 88.24 | 96.88 | 100.00 | 100.00 | 高 | 47.06 | 59.38 | 71.88 | 67.74 | 低 | |
| 62 | 身体拘束を行うことで増加する看護師の負担について検討する | 85.29 | 100.00 | 96.88 | 96.77 | 高 | 61.76 | 63.64 | 75.00 | 67.74 | 低 | |
| 63 | 身体拘束最小化カンファレンスでは身体拘束が何日続いているかも話し合う | 93.94 | 93.94 | 93.75 | 96.77 | 高 | 76.47 | 75.76 | 81.25 | 83.87 | 高 | |
| 64 | 身体拘束最小化カンファレンスではACP(アドバンスドケアプランニング)の視点を取り入れる | 85.29 | 93.94 | 87.50 | 90.32 | 高 | 29.41 | 39.39 | 40.63 | 35.48 | 同意せず | |
| 65 | 身体拘束実施のルーティン化を予防するためにも定期的(毎週・毎月など)に身体拘束に至った事例の振り返りや再検討を行う | ― | 97.06 | 96.77 | 96.77 | 高 | ― | 50.00 | 59.38 | 45.16 | 同意せず | |
| 66 | 身体拘束を減らしてもインシデント・アクシデントが増えていないなどデータで確認しフィードバックする | ― | ― | ― | 100.00 | 高 | ― | ― | ― | 65.63 | 低 | |
| 67 | 近しい状況の病院・病棟で身体拘束を解除できたり,予防できた事例についての研修会に参加する | 100.00 | 100.00 | 100.00 | 96.77 | 高 | 61.76 | 46.88 | 40.63 | 25.81 | 同意せず | |
| 68 | 近しい状況の病院・病棟で身体拘束を解除できたり,予防できた事例を参考にしてカンファレンスで検討する | ― | ― | 93.75 | 93.55 | 高 | ― | ― | 59.38 | 29.03 | 同意せず | |
| 69 | 病棟毎の身体拘束実施率や実施に至った背景を開示し,他の病棟と比較しながら自分の病棟を振り返る | ― | 88.24 | 87.50 | 90.32 | 高 | ― | 58.82 | 62.50 | 48.39 | 同意せず | |
| 70 | 認知症患者の立場に立てるような手記を読んだり動画を視聴するなど自分の身に置き換える体験をする | 85.29 | 87.88 | 100.00 | 100.00 | 高 | 50.00 | 42.42 | 54.84 | 51.61 | 低 | |
| 71 | せん妄と認知症の違いやケア,チェックリストを使用した評価方法についての研修会に参加する | 100.00 | 100.00 | 96.88 | 100.00 | 高 | 85.29 | 78.79 | 93.75 | 86.67 | 高 | |
| 72 | 身体拘束最小化に特化した研修会(概論,病院の指針,最新の知見,三要件の解釈方法)に参加する | ― | 100.00 | 100.00 | 96.77 | 高 | ― | 73.53 | 84.38 | 70.97 | 中 | |
| 73 | スピーチロックが身体拘束に該当することをスタッフに説明する | ― | ― | ― | 100.00 | 高 | ― | ― | ― | 96.88 | 高 | |
| 74 | 身体拘束を体験する | ― | ― | 96.88 | 93.55 | 高 | ― | ― | 81.25 | 77.42 | 中 | |
| 75 | 看護倫理についての研修会に参加する | 100.00 | 96.97 | 100.00 | 100.00 | 高 | 88.24 | 84.85 | 90.63 | 83.87 | 高 | |
| 76 | 転倒リスクや,せん妄リスクなどを有する薬剤に関する研修会に参加する | ― | 100.00 | 96.88 | 100.00 | 高 | ― | 61.76 | 90.63 | 93.55 | 高 | |
注1)番号は表1からの通番とした 注2)同意の程度は4回目の同意率が80%以上を高,70~79.99%を中,51~69.99%を低,51%未満を同意せずとした
本研究の対象者である専門看護師,認定看護師は5年以上の臨床経験と3年以上の専門分野の経験を有し,それぞれに指定された専門教育課程を修了の上,試験を経て認定されている.また,本研究への参加時,資格認定後に一般病棟において身体拘束最小化の看護実践を経験していることを確認している.以上より,対象者として妥当であると考えられる.また,一般病棟における身体拘束最小化のための看護実践を必要性と実現可能性の双方から検討した先行研究はなく,その点で新規性を有する.以下,分類ごとに考察する.
1) リーダーシップ本分類では,8“人数の少ない中で身体拘束最小化に取り組んでいるスタッフを看護師長などの上位職者や中堅以上の経験豊富な看護師がねぎらう”といったスタッフナースを肯定する働きかけに同意が得られた.心理的安全性が確保された組織は高い成果を上げることができる(Edmonson, 2019/2021).わが国の看護師はリスク回避への意識が高いため(佐藤,2023),ほめられることや肯定されることでスタッフナースは身体拘束を回避しやすくなる.そのため上位職者等によるスタッフナースへの肯定的なフィードバックに同意を得られたことは妥当と考えられる.また,20“インシデント-アクシデント発生時,医師や家族への報告をリーダーナースや看護師長が行い個人への責任追及を避ける”に代表されるように,事故発生時の看護師個人への責任追及を回避する項目(項目番号18,19,21,22,23)に同意が得られていた.身体拘束は転倒・転落予防など医療事故予防のために実施され(桐山・松下,2019),インシデントを懸念する看護師は身体拘束を実施する傾向にあり,身体拘束に安心を感じている(山本ら,2022).看護師個人への責任追及を避けることに同意が得られたのは妥当と考える.インシデントやアクシデントと身体拘束の関係は前述の先行研究で明らかにされているが,身体拘束最小化のために管理的立場にある者が医師や家族に報告するという具体的レベルは示されておらず,新規所見と考えられる.
2) 協働本分類では,身体拘束最小化チームやリハビリ部門との連携(項目番号28,29,30,31)については必要性,実現可能性ともに同意を得られた.2024年度の診療報酬改定で身体拘束最小化に関するチーム設置が求められ,先行研究では多職種連携の中で理学療法士や作業療法士に働きかけたと報告されており(坂井,2024),同意は妥当であると考える.ただし,リハビリ部門との連携内容は先行研究で具体的に示されておらず,筋力や関節可動域に応じた安全方法を相談するといった具体的内容は新規所見である.一方,医師との連携(項目番号25)については身体拘束適応と継続の評価を行ってもらうことについて実現可能性は同意せず,解除とその後のフォローの相談(項目番号27)についての実現可能性同意率は4回のなかで上下し,最終的に58.06%と低い同意であり,対象者らの迷いを伺える.看護師は身体拘束の際,転倒やルートの自己抜去などの医療事故予防を意図している(南部・松木,2025).看護師はインシデントで転倒やチューブトラブルを多く報告するのに対し,医師は合併症や医原性疾患を多く報告している(小久保ら,2021).医療事故の捉え方の違いが,看護師-医師間の連携のしづらさとなり,対象者らの判断に揺らぎを生じ,結果的に実現可能性の同意に至らなかったと考えられる.
3) 計画・評価本分類では,35“身体拘束を検討する行動(ルートに触れる,ナースコールを使用しないで歩行など)が見られたときに,その行動の意図や背景,ニーズを検討して看護実践に反映する”や39“前日同じ質問をしてその返答の比較から会話の成立具合を確認し,覚醒度を確認し看護実践に反映する”といった随時的なアセスメントについて同意を得られた.さらに,44“対象者を安全が守ることが難しい人としてのみ捉えず,人柄や趣味,関心事などについて検討して看護実践に反映する”といった患者の個別性のアセスメントに同意を得た.患者の個別性に基づいてケアを提供し身体拘束を回避できることは報告されている(桐山,2025;牧野・加藤,2019).標準型医療であるクリニカルパス使用割合は入院患者の46.9%で,平均在院日数が短いほど使用されていた(日本クリニカルパス学会,2024).在院日数短縮が進められ,個別性に基づく看護が実践されづらい現状の中,意図的に対象者を随時かつ深くアセスメントする項目が同意に至ったのは妥当と考えられる.
次に52“日中の覚醒を保持するため食事や歩行などADLの維持を意図した実践を行う”に代表されるように昼夜のバランス維持を目的とした項目(項目番号50,51)で必要性を同意していた.先行研究でも昼夜のバランス維持は身体拘束最小化に効果的である(池内,2020;小林,2019).夜間に身体拘束を実施する背景には,夜勤はスタッフの数が少なく危険行動に素早く気づけないという懸念や(南部・松木,2025),身体拘束をしないと次の勤務帯の看護師に迷惑をかけると思う文化がある(髙谷,2025;山本ら,2022).睡眠確保により,看護師は身体拘束を回避しやすくなるため,昼夜のバランス維持に関連した項目の同意は妥当であると考える.一方で,院内デイケアや院内カフェの設置といった新しいシステムの導入(項目番号51)については実現可能性について回を重ねるごとに同意率は上昇したものの,最終回は50.00%で同意には至らなかった.一方で院内デイケアよりは開催しやすいレクリエーション(項目番号50)も回を重ねるごとに実現可能性同意率は上昇し,最終的に54.84%と同意に至った.厚生労働省(2023)によると看護職員の有効求人倍率は他職種よりも高く,マンパワーの不足が顕著である.実現可能性の観点では,臨床に所属する対象者らが現実に即してマンパワーを要するか否かを判断基準とした可能性が考えられ,新しいシステム導入に実現可能性の同意が得られなかったことも妥当と考えられる.
4) 人間関係・コミュニケーション本分類では,56“身体拘束同意書に医療事故発生と身体拘束によるリスク・苦痛の両方を明記し,取得者が説明する”の項目で必要性,実現可能性とも同意していた.説明の必要性は日本看護倫理学会の身体拘束予防ガイドライン(2015)にも明記されているため,同意は妥当であると考える.一方で,カンファレンスに関連する項目の中で,57“身体拘束最小化カンファレンスでは対象者に参加してもらい,病床環境や薬剤選択などをともに検討する”や58“身体拘束最小化カンファレンスを対象者のベッドサイドで行い,ともに対象者の状態や病床環境を確認して身体拘束しない方法を検討する”などの実現可能性は同意しなかった.当該の項目はパーソン・センタード・ケアに関連する内容であった.わが国ではスペシャリストはパーソン・センタード・ケアを目指した看護実践をしているものの,看護管理者やスタッフはそうではないことが報告されていた(鈴木ら,2020).当該2項目の実現可能性の同意率は,4回(後者は2回)で上下の変動を認め,最終的に前者は12.90%,後者は41.94%であった.対象者らは当該項目についてその必要性について認識しつつも,看護実践現場の看護師の特徴をふまえその実現可能性を判断しかねたと考えられる.ただし,身体拘束最小化にあたり,患者やその家族の参画を得ることは先行研究では報告されておらず,新規所見であると考えられる.
5) 専門職的発達本分類では,せん妄状態への薬剤使用(項目番号76),チェックリスト使用に関する研修会参加(項目番号71)について必要性,実現可能性ともに高い同意を得ていた.せん妄対策は身体拘束最小化に有効であり(茂呂,2011),関連項目の同意は妥当であると考える.一方,研修に関して67“近しい状況の病院・病棟で身体拘束を解除できたり,予防できた事例についての研修会に参加する”の実現可能性同意率は回を経るごとに下がり,最終的には25.81%で同意しなかった.せん妄や認知症,看護倫理の研修会は一般的で,広く開催されている.それに比べ,近しい状況の病院・病棟に関する研修会は個別性が高く開催は限られている.対象者らは当該研修会への参加は有効と判断したものの,開催頻度などを考慮して実現可能性についての同意をためらった可能性が考えられる.他には74“身体拘束を体験する”は必要性で高い同意であり,実現可能性は中等度の同意であった.入院・外来医療等における実態調査(厚生労働省,2025a)でも身体的拘束の疑似体験の実施率(17.1%)は身体拘束最小化チームの設置(72.9%)などと比較して低く,実現可能性についての同意は現実に照らして妥当と考える.
研修会以外では,66“身体拘束を減らしてもインシデント・アクシデントが増えていないなどデータで確認しフィードバックする”という数値データに基づく項目で同意した.身体拘束を最小化しても転倒(小橋川・田中,2018;Sze et al., 2012;Evans et al., 2002)や医療事故(佐藤,2020;髙橋ら,2019)は増加しないが,身体拘束は医療事故予防を目的に実施されている(桐山・松下,2019).身体拘束と医療事故の関係はさらなる啓蒙が必要であり,同意は妥当と考えられる.加えて64“身体拘束最小化カンファレンスではACP(アドバンスドケアプランニング)の視点を取り入れる”が必要性で同意した.一般病棟で身体拘束を受ける患者は高齢者が多く(桐山・松下,2019),その治療について判断をゆだねられた家族が葛藤しているため(青木,2014),本項目への同意は妥当と考える.なお,身体拘束最小化の看護実践にACPの視点を加えた報告はなく,新規所見と考えられる.
2. 一般病棟において必要性は同意したが実現可能性は同意しなかった身体拘束最小化のための看護実践方法の実現可能性同意化に向けた検討本研究は身体拘束最小化のための看護実践方法についてその必要性と実現可能性の両方を考案したことに先行研究にはない新規性を有すると考える.本研究では17項目(項目番号10,14,15,16,25,34,37,49,51,57,58,59,64,65,67,68,69)で必要性は同意したものの実現可能性が同意しなかった.当該17項目の看護実践方法を現場で実現することにより,より高度な身体拘束最小化を実現できると考えられるため,その方策について考察する.17項目はいくつかの内容に分類可能である.まず37“看護記録類が対象者の視点で述べられているかを確認する”や57“身体拘束最小化カンファレンスでは対象者に参加してもらい,病床環境や薬剤選択などをともに検討する”,64“身体拘束最小化カンファレンスではACP(アドバンスドケアプランニング)の視点を取り入れる”は,患者に参画してもらい,その意向を尊重した看護を実践することである.桐山・松下(2019)の調査では一般病棟で身体拘束を受けている患者の44.0%は認知症を有していたと報告されている.認知症は見当識障害があり,その意思決定支援には判断が迷いがちである.看護師は認知症患者の意思決定の難しさを感じている(伊藤・篠崎,2022).しかし,認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定支援ガイドラインでは,認知症を発症していてもその時の意思を尊重してかかわる必要性が指摘されている(厚生労働省,2025b).今後意思決定支援ガイドラインに準じた教育を提供し,認知症の有無にかかわらず当事者の意見を取り入れつつより善いケアを検討することが有効と考えられる.
次に25“医師が身体拘束の適応と継続について評価し,それに基づいて多職種で解除に向けたカンファレンスを行う”の医師との連携である.前述したように,医師と看護師はインシデントに関する認識が異なる(小久保ら,2021).単純に身体拘束の適応について検討する前に,身体拘束を必要とする理由であるインシデントの捉え方を共有することで検討しやすくなると考える.
さらに67“近しい状況の病院・病棟で身体拘束を解除できたり,予防できた事例についての研修会に参加する”や68“近しい状況の病院・病棟で身体拘束を解除できたり,予防できた事例を参考にしてカンファレンスで検討する”は,他院や他病棟との比較である.診療科や急性度,看護師配置などが病院・病棟毎に異なるため,他病院・病棟との比較は難しいかもしれない.ただし,他病院の活動に刺激を受けて身体拘束最小化活動を始めたという報告もある(桐山,2025).他院への訪問は難しくとも,看護管理者が学術集会や外部主催の研修会への参加機会を提供し,スタッフナースの倫理的感受性を刺激することは有用と考えられる.南﨑ら(2022)も看護管理者が研修機会を設けるなどして身体拘束実施を検討するためのベースとなる看護観・倫理観を涵養することが身体拘束最小化に有効と報告している.
加えて49“朝の申し送りで夜勤帯の勤務者と身体拘束解除について検討する”や34“夜間の覚醒がみられる対象者が良眠できるよう補助者の力などを借りて夕方に足浴を行う”など既存のシステムに新しいイベントを組み込む内容の実現を検討する.夜勤帯-日勤帯勤務者のカンファレンス(小林,2019),足浴(池内,2020)ともに身体拘束最小化に一定の効果が報告されている.業務調整し,病棟のシステムに組み込むと効果的と考える.業務調整について,2024年度の診療報酬改定で身体的拘束最小化のために看護補助体制充実加算が補強されているため,看護師のみではなく補助者の力を借りることも可能である.
3. 本研究の限界と今後の発展本研究の限界として,対象者である専門看護師と認定看護師はその教育課程と日本看護協会が定める役割が異なるため,その差が結果に影響した可能性が考えられる.また,看護師経験年数や職位などの背景をデータ収集していないため,対象者の習熟度を高く設定することでより発展した実践方法を検討できる可能性がある.さらに,本研究の結果ではドラッグロックおよびスピーチロックに関連する項目(項目番号39,73,76)は少なかった.身体拘束にドラッグロックやスピーチロックが含まれることを十分に定義していなかったため,その影響が考えられる.今後の発展としては,本研究で同意を得た看護実践方法に基づき介入研究を行うことで,確実に身体拘束最小化に効果を示すかを判断することができると考える.
一般病棟における身体拘束最小化の看護実践方法として,必要性の高い項目74項目,実現可能性の高い項目57項目で専門家集団の同意を得た.実現可能性で同意を得た全項目は必要性でも同意を得ていた.必要性で同意した項目は先行研究と比較しても妥当な内容であった.必要性で同意され,実現可能性で得られなかった項目は,看護師-医師間の医療事故への認識を修正したり,適切な教育を提供したりすることで実現できる可能性が考察された.
謝辞:本研究にご協力いただきました専門看護師,認定看護師の皆様に深く感謝申し上げます.本研究は科研費(21K17366)の助成を受けて実施した.
利益相反:本研究における利益相反は存在しない.