日本看護科学会誌
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原著
第1子が1歳時点の夫婦におけるコペアレンティング関係性と育児・心理社会的特徴
柴田 美夢菜松田 妃蘭武石 陽子吉沢 豊予子中村 康香
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2026 年 46 巻 p. 286-295

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Abstract

目的:1歳児を持つ夫婦のコペアレンティング関係性と育児及び心理社会的特徴を明らかにする.

方法:コペアレンティング関係尺度を用いて3クラスターに分類された夫婦86組の夫婦関係満足度,育児自己効力感,育児ストレス,抑うつ,育児の楽しさと大変さ,家事育児分担割合と納得度,育児時間と頻度を比較した.

結果:妻高評価群は夫の家事育児分担割合や育児時間,沐浴の頻度,育児の大変さ,抑うつリスクが高かった(p = .031~<.001).両者高評価群はどちらも育児を楽しみ抑うつリスクが低く,夫の夫婦関係満足度と育児自己効力感が高く,育児ストレスが低かった(p = .040~<.001).夫高評価群は妻の夫婦関係満足度と家事育児分担割合の納得度が低く,育児の大変さ,育児ストレス,抑うつリスクが高かった(p = .012~<.001).

結論:コペアレンティング関係性は3つに分類され,特徴に合わせた支援の必要性が示唆された.

Translated Abstract

Aim: Establishing a coparenting relationship that shares child-rearing responsibilities is crucial for couples. This study used paired data to identify parenting and psychosocial characteristics based on couple coparenting relationships with their first child at one year of age.

Methods: Eighty-six couples were analyzed in three clusters using the Coparenting Relationship Scale (CRS-J). Each cluster was then assessed for the Quality Marital Index (QMI), Parenting Self-efficacy Scale (PSE), Parenting Stress Index (PSI), depression scale, childcare enjoyment and difficulty; housework and childcare sharing ratios and satisfaction; and childcare time and frequency.

Results: The wives’ and husbands’ average ages were 32.7 and 34.3, respectively, with 80.2% of the wives unemployed. Cluster 1 wives had higher CRS-J scores than their husbands; husbands performed a higher share of housework and childcare, and had longer childcare time, higher bathing frequency, greater childcare difficulty, and higher depression risk (p = .031 to <.001). Cluster 2 featured higher CRS-J scores for both partners; both had higher childcare enjoyment and lower depression risk, and husbands scored higher QMI and PSE, and lower PSI (p = .040 to <.001). Cluster 3 husbands scored higher on CRS-J compared to their wives; wives scored lower on QMI and sharing satisfaction, and higher on childcare difficulty, PSI, and depression risk (p = .012 to <.001).

Conclusion: The coparenting relationships were characterized by three. These findings highlight the importance of providing tailored support that addresses specific coparenting relationships.

Ⅰ. はじめに

現代の子育て家庭は71.9%が共働きであり(総務省統計局,2025),86.4%が核家族となっている(厚生労働省,2025).また2021年には,性役割分担に対する伝統的な価値観である「夫は外で働き,妻は家庭を守る」という意見に,未婚の男女80%以上が反対していることが報告されている(国立社会保障・人口問題研究所,2023).男性の育児休業の取得に関して,2023年の取得率は30.1%で前年から13ポイント上昇している(厚生労働省,2024a).さらに18~25歳の男性における育児休業取得希望率は84.3%,同年齢層の男女における配偶者へ取得を希望する割合も88.6%と(厚生労働省,2024b),今後も男性の育児休業の取得が進むと予測される.このように現代では,育児は夫婦で行うものであるという価値観が男女ともに広まっている.

夫婦で育児を行う場合,コペアレンティングという「親同士が子育てについての責任を共有するとともに,親役割を調整・サポートしあうこと」が重要であり,お互いが自分の役割を公平だと了承し,親として尊重し合うことが求められる(Feinberg, 2002Feinberg, 2003中村ら,2021).コペアレンティングが高まることによって,夫婦の親密性の向上,育児の自己効力感の向上や抑うつの減少といった心理社会的側面への良い影響,親役割の公平な調整や温かみのある養育態度による育児,乳児のなだめやすさや長期的な適応などの子どもの成長発達に寄与することが明らかになっている(Feinberg, 2003Feinberg et al., 2009Feinberg et al., 2014Feinberg et al., 2016Solmeyer & Feinberg, 2011).またコペアレンティングの関係性は,夫婦という家族システム論における相互依存的な二者関係をもとに構築される(Hinde & Stevenson-Hinde, 1988).したがって,男女別ではなく夫婦としてのコペアレンティング関係性を捉え,その関係性に基づいた育児および心理社会的な特徴を明らかにすることで,子どもを養育する家族として包括的にとらえた支援が可能となる.

子どもの1歳という時期は身体が発達し歩き始め,離乳食もほぼ完了する.また生後9か月以降に三項関係という,子どもが3つの物事を同時に認識できる能力が確立することでコミュニケーションが活発化すると報告されている(岡本・菅野,2008).この時期に父親が子どもと直接かかわることは,子どもの発達や母親が感じる育児協働感に良い影響があると明らかになっている(加藤ら,2022中山・三枝,2003藤原ら,1997).

以上より本研究では,第1子が1歳時点の夫婦のペアデータを用いて,コペアレンティング関係性とそれに基づく育児および心理社会的特徴を明らかにすることを目的とする.

Ⅱ. 方法

1. 研究デザイン

本研究は「社会実装型コペアレンティング促進プログラムの育児への影響に関する前向き観察研究(UMIN試験ID UMIN000037634)(以下,育児コホート研究)」のデータの一部を利用した,横断的観察研究である.

2. 研究参加者

育児コホート研究(Nakamura et al., 2026)において,妊娠期に夫婦でコペアレンティング促進プログラムを全4回のうち1回以上受講した者である.適格基準は,第1子を迎える夫婦,子どもが1歳時点で同居している夫婦,夫婦ともに日本語の読み書きができる,インターネット環境を有する者とした.除外基準は,研究参加時に夫婦のいずれかに精神疾患がある,研究者が研究への参加継続を不適当と判断した場合とした.

3. 調査方法

対象者は,2019年12月~2023年3月に母子健康手帳交付時に配布された両親学級案内やオンラインイベント情報サイトに掲載されたクラス案内を通じて募集された.育児コホート研究参加時に調査用のwebサイトにて研究説明書(研究目的,概要,方法,参加による利益・不利益など)を読み,内容を承諾した上で,web画面での研究参加ボタンを押し研究参加へ同意した.アンケートは研究参加時(妊娠期),妊娠末期,児出生後3か月,6か月,1年,1.5年,2年,3年時に夫婦それぞれにメールで配信され,対象者はweb上でアンケートに回答した.回答した個人には,研究者より500円相当の謝礼が支払われた.本研究では研究参加時の基礎情報と児出生後1年のデータが,夫婦のペアデータとして揃っていた86組を使用した.

4. 調査内容

コペアレンティングを行うことは,夫婦関係や心理社会的側面,育児,子どもの成長発達に関連している(Feinberg et al., 2009).本研究では,コペアレンティング関係性と育児および心理社会的特徴を明らかにするため,以下の項目における結果を使用した.

1) 日本語版コペアレンティング関係尺度(Japanese version of Coparenting Relationship Scale:CRS-J)(Feinberg et al., 2012武石ら,2017

Feinbergらが開発し武石らによって翻訳され,信頼性と妥当性が検証されている.「育児の合意」「育児による親密性」「子どもの前でのもめ事」「サポート」「阻害」「パートナーの育児の承認」「家事育児の分担」という7つの下位尺度を持ち,一部得点を反転させたうえで,合計得点が高いほどコペアレンティング関係性がよいことを示す.

2) 夫婦関係満足尺度(Quality Marriage Index:QMI)(Norton, 1983諸井,1996

Nortonが開発し諸井によって翻訳され,信頼性と妥当性が検証されている.夫婦関係全体の良さを評価する6項目から成り,合計得点が高いほど夫婦関係に満足していることを示す.

3) 日本語版Center for Epidemiologic Studies Depression Scale(CES-D)(Radloff, 1977島ら,1985

本尺度はうつ病のスクリーニング指標として,世界的に幅広く男女問わず使用される.20項目の合計得点が16点以上となるとうつ病と判定され,本研究では16点以上の場合に抑うつリスク有と評価し,心理社会的特徴の指標として使用した.

4) 育児に対する自己効力感尺度(Parenting Self-efficacy Scale:PSE)(金岡,2011

育児で直面する新しい状況に対し臨機応変に対処できるという確信の程度を測定するために,幼児を持つ母親を対象に開発された.信頼性と妥当性が検証されており,13項目の合計得点が高いほど育児の自己効力感が高いことを示す.本研究では男性に対しても調査を行い,心理社会的特徴の指標として使用した.

5) 育児ストレスインデックスショートフォーム(Parenting Stress Index:PSI)(Abidin, 1995荒木ら,2005

親の育児ストレスに対して,子供の特徴と親自身や周囲の環境という2点から評価している.19の質問項目からなり,得点が高いほど育児ストレスが大きいことを示す.本研究では心理社会的特徴の指標として使用した.

6) 育児に対する感情

育児に対して楽しさや大変さをどの程度感じているのかを1~10点で回答した.(育児は楽しいですか;とても苦痛である~とても楽しい.育児は大変ですか;とても楽~とても大変).本研究では育児の特徴の指標として使用した.

7) 家事育児分担割合とその納得度

回答者とそのパートナーの分担割合の合計が10になるように回答した.また分担割合に対する納得度について,4段階回答のうち「納得している」と回答した場合にのみ納得と評価し,「どちらかといえば納得している」「どちらかといえば納得していない」「納得していない」の場合は納得していないと評価した.本研究では育児の特徴の指標として使用した.

8) 育児の実施状況

平日と休日における1日あたりの育児時間,育児内容とその頻度について回答した.育児内容は,厚生労働省全国家庭動向調査の育児項目及びPreterm Parenting & Self-Efficacy Checklist(Pennell et al., 2012)をもとに,研究者らが11項目を作成した.沐浴,あやしたり一緒に遊ぶ,授乳や食事介助,薬を飲ませたり病院に連れていく,寝かしつけ,ぐずりへの対処,話しかけたり会話をする,着替えという9項目について,「しなかった/機会がなかった」「休日のみ行った」「平日のみ行った」「平日休日通してたまに行った」「平日休日通していつも行った」という5段階で評価した.本研究では育児の特徴の指標として使用した.

9) 子どもの成長発達

コペアレンティング関係性に関連した子どもの成長発達について,身体的成長は体重とカウプ指数から,精神的発達はなだめやすさと睡眠行動から評価した.これらは回答の統一性を得るために妻が回答した.

なだめやすさの測定にはThe Infant Behavior Questionnaire-Revised;IBQ-R(Rothbart, 1981)を参考に「あまり泣かない」「すぐに泣き止む」「泣き止むのに10分以上かかる」「泣き止むのに30分以上かかる」の4件法で構成した.本研究では「泣き止むのに10分以上かかる」「泣き止むのに30分以上かかる」と回答したものを,なだめにくさを感じていると評価した.

睡眠行動に関して,Brief Infant Sleep Questionnaire(Sadeh, 2004)を参考に,夜間覚醒回数,夜間睡眠時間,寝付くまでの時間について回答した.

10)人口統計学的データ

研究参加時には年齢,学歴,家族形態,職種を,子どもが1歳時点には就労の有無,産前教育クラスの出席回数,夫の育児休業取得の有無と取得期間を回答した.育児休業の取得の有無について3段階回答のうち「育休を取得した」「これから取得する予定」と答えた場合に取得と評価し,「取得していない」の場合は取得なしと評価した.また産前教育クラスの出席回数については,育児コホート研究におけるコペアレンティング促進プログラムを含めて妊娠期に両親学級や母親,父親学級などの産前教育クラスに何回参加したかを回答した.

5. 分析方法

夫婦のコペアレンティング関係性について,妻と夫のCRS-J得点の組み合わせに対するクラスター分析を行った.その後,育児および心理社会的特徴,子どもの成長発達について,分類されたクラスター間で各変数のKruskal-Wallis検定,カイ2乗検定,Fisher’sの直接確率検定を行った.さらに有意差がみられた項目には,Dunn検定とHolm法,または調整済み残差による残差分析で多重補正を行い比較した.有意水準は0.05未満とし,JASP 0.18.3とSPSS ver. 28を用いた.

6. 倫理的配慮

本研究は東北大学大学院医学系研究科倫理審査委員会の承認を得て行われた.(承認番号2020-1-168)

Ⅲ. 結果

1. 対象者の概要

対象者の概要を表1に示した.育児コホート研究参加時の平均年齢±SDは妻が32.7 ± 4.7歳,夫が34.3 ± 5.4歳であり,男女ともに65人(75.6%)が大学卒以上,妻の職種としては専門職・技術職が24人(36.4%)と最も多かった.子どもが1歳時点で78組(90.7%)が核家族であり,妻の17人(19.8%),夫の81人(94.2%)が就労していた.夫の36人(41.9%)が育児休業を取得し,平均取得期間±SD(か月)は2.2 ± 2.9か月であった.産前教育クラスの平均出席回数±SDは妻が4.9 ± 2.0回,夫が4.0 ± 1.9回であった.子どもは42人(48.8%)が男児であり,カウプ指数は16.6 ± 3.2と標準的な体格であった.

表1 対象者の概要

妻(n = 86) 夫(n = 86)
Mean SD Mean SD
年齢 32.7 4.7 34.3 5.4
CRS-J 4.5 0.8 4.7 0.8
QMI 19.2 4.3 19.8 4.0
PSE 45.3 8.4 45.5 9.1
PSI 41.5 11.5 39.7 10.9
家事育児分担割合 7.1 1.7 3.4 1.7
育児の楽しさ 8.5 1.6 8.8 1.4
育児の大変さ 5.7 2.3 5.7 2.3
平日育児時間(分) 796.6 344.2 177.2 185.3
休日育児時間(分) 825.5 322.5 488.0 278.6
[夫]育休取得期間(か月) 2.2 2.9
産前教育クラス出席回数 4.9 2.0 4.0 1.9
n (%) n (%)
大学卒以上 65 (75.6) 65 (75.6)
核家族 78 (90.7)
1歳時点で就労している 17 (19.8) 81 (94.2)
職種
公務員・法人・団体職員 14 (21.2) 17 (20.7)
専門職・技術職 24 (36.4) 21 (25.6)
事務 10 (15.2) 4 (4.9)
販売員・営業 5 (7.6) 10 (12.2)
生産工程 2 (3.0) 14 (17.1)
分担割合への納得 35 (40.7) 45 (52.3)
抑うつリスク有 26 (30.2) 24 (27.9)
[夫]育休取得あり 36 (41.9)
子ども(n = 86)
Mean SD
体重(g) 8,365.6 1,682.3
カウプ指数 16.6 3.2
夜間覚醒回数 2.6 1.5
夜間睡眠時間(時間) 9.7 1.1
寝付くまでの時間(分) 32.2 20.7
n (%)
男児 42 (48.8)
なだめにくい 7 (8.1)

CRS-J:日本語版コペアレンティング関係尺度,QMI:夫婦関係満足尺度,PSE:育児に対する自己効力感尺度,PSI:育児ストレスインデックスショートフォーム,分担割合への納得:家事育児分担割合へ納得している,抑うつリスク有:CES-D(日本語版Center for Epidemiologic Studies Depression Scale)得点が16点以上

2. 夫婦のコペアレンティング関係性の分類

妻と夫のCRS-J得点の組み合わせに対するクラスター分析の結果,3群に分類されたものを図1に示した.クラスター1は妻のCRS-Jの得点中央値(四分位)が4.9点(4.6~5.0),夫が4.0点(3.6~4.3)の夫婦19組であり,夫よりも妻の方がコペアレンティング関係性の評価が高い群であった.クラスター2は妻が4.9点(4.4~5.3),夫が5.4点(5.1~5.7)の夫婦44組であり,両者ともコペアレンティング関係性の評価が高い,あるいは妻よりも夫の方がコペアレンティング関係性の評価が高く,妻の評価も高い群であった.クラスター3は妻が3.7点(3.3~3.8),夫が4.4点(4.0~4.5)の夫婦23組であり,妻よりも夫の方がコペアレンティング関係性の評価が高いが,妻の評価は低い群であった.

図1  クラスター分析によるコペアレンティング関係性の分類

1 妻高評価群(夫より妻の方が得点が高い):n = 19,2 夫婦高評価群(夫婦ともに得点が高い):n = 44,3 夫高評価群(妻より夫の方が得点が高い):n = 23

CRS-J:日本語版コペアレンティング関係尺度

各クラスターの特徴から,クラスター1は妻高評価群,クラスター2は夫婦高評価群,クラスター3は夫高評価群とする.

3. コペアレンティング関係性に基づく育児および心理社会的特徴

妻高評価群,夫婦高評価群,夫高評価群の3群比較において有意差が認められたものを,妻の結果を表2に,夫の結果を表3に,子どもの結果を表4に示した.

表2 妻における群間の比較

1 妻高評価群(n = 19) 2 夫婦高評価群(n = 44) 3 夫高評価群(n = 23) p 多重比較
Median IQR Median IQR Median IQR
CRS-J 4.9 4.6~5.0 4.9 4.4~5.3 3.7 3.3~3.8 <.001b 1, 2 > 3
QMI 22.0 18.5~23.0 21.5 18.0~24.0 15.0 13.0~18.0 <.001b 1, 2 > 3
PSE 45.0 42.5~50.0 47.0 41.8~54.3 44.0 39.5~46.0 .085a
PSI 41.0 34.0~46.0 35.5 28.8~44.0 48.0 45.0~58.0 <.001b 3 > 1, 2
家事育児分担割合 7.0 6.0~7.5 7.0 7.0~8.0 8.0 6.0~8.0 .200a
育児の楽しさ 9.0 7.5~10.0 9.0 8.0~10.0 8.0 7.0~9.5 .040b 2 > 3
育児の大変さ 5.0 3.5~7.5 5.0 3.0~7.0 7.0 6.0~8.0 .012b 3 > 2
平日育児時間(分) 720.0 495.0~960.0 720.0 600.0~960.0 720.0 630.0~990.0 .879a
休日育児時間(分) 720.0 600.0~960.0 750.0 600.0~960.0 720.0 600.0~990.0 .909a
n (%) n (%) n (%)
分担割合への納得 11 (57.9) 22 (50.0) 2 (8.7) .001d 1, 2 > 3
抑うつリスク有 5 (26.3) 7 (15.9) 14 (60.9) <.001c 3 > 1 > 2

CRS-J:日本語版コペアレンティング関係尺度,QMI:夫婦関係満足尺度,PSE:育児に対する自己効力感尺度,PSI:育児ストレスインデックスショートフォーム,分担割合への納得:家事育児分担割合へ納得している,抑うつリスク有:CES-D(日本語版Center for Epidemiologic Studies Depression Scale)得点が16点以上.

a:Kruskal-Wallis検定,b:Kruskal-Walls検定後にDunn検定とHolm法による補正,c:カイ2乗検定と残差分析,d:Fisher’sの直接確率検定と残差分析

表3 夫における群間の比較

1 妻高評価群(n = 19) 2 夫婦高評価群(n = 44) 3 夫高評価群(n = 23) p 多重比較
Median IQR Median IQR Median IQR
CRS-J 4.0 3.6~4.3 5.4 5.1~5.7 4.4 4.0~4.5 <.001b 2 > 1, 3
QMI 18.0 15.0~18.5 24.0 21.0~24.0 17.0 16.0~18.0 <.001b 2 > 1, 3
PSE 41.0 35.5~47.5 48.5 43.0~54.0 45.0 36.5~48.5 .001b 2 > 1
PSI 48.0 43.0~58.0 32.0 28.0~38.3 44.0 38.5~49.0 <.001b 1, 3 > 2
家事育児分担割合 4.0 3.0~5.0 3.0 2.0~4.0 3.0 2.0~3.0 .002b 1 > 2, 3
育児の楽しさ 8.0 7.0~10.0 10.0 9.0~10.0 8.0 8.0~9.0 <.001b 2 > 1, 3
育児の大変さ 7.0 6.0~8.5 5.0 4.0~7.0 5.0 4.0~7.0 .031b 1 > 2
平日育児時間(分) 180.0 120.0~270.0 105.0 60.0~180.0 120.0 45.0~150.0 .018b 1 > 2, 3
休日育児時間(分) 600.0 390.0~720.0 480.0 300.0~600.0 300.0 210.0~495.0 .005b 1 > 3
育休取得期間(か月) 2.0 0.6~6.0 0.8 0.5~3.0 1.0 0.5~1.0 .491a
産前教育クラスの出席回数 5.0 4.0~5.0 3.5 3.0~4.3 3.0 3.0~4.0 .002b 1 > 2, 3
n (%) n (%) n (%)
分担割合への納得 8 (42.1) 26 (59.1) 11 (47.8) .409c
抑うつリスク有 12 (63.2) 4 (9.1) 8 (34.8) <.001d 1 > 3 > 2
沐浴の頻度
平日休日いつも 11 (57.9) 10 (22.7) 5 (21.7) .022d 1 > 2, 3
平日休日たまに 7 (36.8) 20 (45.5) 6 (26.1)
休日のみ 1 (5.3) 10 (22.7) 8 (34.8)
しなかった 0 (0.0) 4 (9.1) 4 (17.4)
育休取得あり 8 (42.1) 21 (47.7) 7 (30.4) .373c

CRS-J:日本語版コペアレンティング関係尺度,QMI:夫婦関係満足尺度,PSE:育児に対する自己効力感尺度,PSI:育児ストレスインデックスショートフォーム,分担割合への納得:家事育児分担割合へ納得している,抑うつリスク有:CES-D(日本語版Center for Epidemiologic Studies Depression Scale)得点が16点以上.

a:Kruskal-Wallis検定,b:Kruskal-Walls検定後にDunn検定とHolm法による補正,c:カイ2乗検定と残差分析,d:Fisher’sの直接確率検定と残差分析

表4 子どもにおける群間の比較

1 妻高評価群(n = 19) 2 夫婦高評価群(n = 44) 3 夫高評価群(n = 23) p
Median IQR Median IQR Median IQR
体重 8,450.0 8,055.0~9,240.0 8,530.0 8,026.3~9,102.5 8,410.0 8,172.5~8,990.0 .991a
カウプ指数 17.0 16.1~18.4 17.2 15.8~17.8 17.2 16.6~17.3 .774a
夜間覚醒回数 2.0 2.0~3.5 2.0 2.0~3.0 2.0 2.0~3.0 .975a
夜間睡眠時間(時間) 9.0 9.0~10.0 10.0 9.0~10.0 10.0 9.0~10.0 .739a
寝付くまでの時間(分) 30.0 17.5~35.0 30.0 20.0~40.0 30.0 20.0~42.5 .905a
n (%) n (%) n (%)
男児 8 (42.1) 22 (50.0) 12 (52.2) .790c
なだめにくい 1 (5.3) 4 (9.1) 2 (8.7) 1.000d

なだめにくい:子どもが泣き止むのに10分以上かかる

a:Kruskal-Wallis検定,c:カイ2乗検定と残差分析,d:Fisher’sの直接確率検定と残差分析

妻において,夫婦高評価群では育児の楽しさの得点が夫高評価群より有意に高く(p = .040),抑うつリスク有の割合が他の2群と比べて有意に低かった(p < .001).夫高評価群ではQMIの得点と家事育児分担割合に納得している割合が他の2群より有意に低く(p < .001, p = .001),育児の大変さの得点が夫婦高評価群より有意に高く(p = .012),PSIの得点と抑うつリスク有の割合が他の2群より有意に高かった(p < .001, p < .001).妻の家事育児分担割合や育児時間には3群間で有意な差は認められなかった.

夫において,妻高評価群では家事育児分担割合と沐浴を平日休日通していつも行った人の割合,産前教育クラスの出席回数が他の2群と比べて有意に多かった(p = .002, p = .022, p = .002).また平日の育児時間が他の2群と比べて有意に長く(p = .018),休日の育児時間も夫高評価群より有意に長かった(p = .005).さらにPSEの得点が夫婦高評価群より有意に低く(p = .001),育児の大変さの得点が夫婦高評価群より有意に高く(p = .031),抑うつリスク有の割合が他の2群と比べて有意に高かった(p < .001).夫婦高評価群ではQMIと育児の楽しさの得点が他の2群と比べて有意に高く(p < .001, p < .001),PSEの得点が妻高評価群よりも有意に高く(p = .001),PSIの得点と抑うつリスク有の割合が他の2群と比べて有意に低かった(p < .001, p < .001).

子どもにおいては,体重やカウプ指数,なだめやすさ,睡眠行動に3群間で有意な差は認められなかった.

Ⅳ. 考察

第1子が1歳時点の夫婦のコペアレンティング関係性を,妻と夫のCRS-J得点に基づきクラスター分析を行った結果,3群に分類された.以下それぞれの群の特徴について考察する.

1. 妻高評価群の夫婦の特徴

妻高評価群は,夫より妻の方がコペアレンティング関係性の評価が高かった.夫は家事育児分担割合や沐浴を平日休日いつも行った人の割合,産前教育クラスの出席回数が有意に多く,平日と休日の育児時間も有意に長かったことから,積極的に育児に取り組む様子が認められた.先行研究では家事育児を行う頻度が高い父親における関連要因として,両親学級や父親学級への参加が報告されている(高瀬・荒木田,2022).また,育児に積極的な夫の姿勢に対し,妻は夫の育児役割や分担に対する意識の高さを感じやすいとともに(新田・桂田,2021田中,2014田中,2017),夫が子どもと直接かかわることで妻は育児協働感を感じやすいと報告されている(中山・三枝,2003藤原ら,1997).特に沐浴の結果に関しては,夫が毎日沐浴を行うことで子どもと直接かかわる時間が確保されていたとともに,妻もその時間の存在を認識しやすかったと推測される.これらのことから,妻におけるコペアレンティング関係性の評価が高まったと考えられる.

一方で夫は,育児に積極的に取り組むなかで,抑うつリスクを抱える割合が高かった.育児に積極的な父親は自分の体調よりも父親役割を優先しやすく,抑うつ傾向になりやすい可能性が示唆されており(高木・小崎,2021安野ら,2023),同様の知見を得た.加えて本研究では,夫が育児の大変さを感じ育児の自己効力感が低いという特徴が明らかになった.先行研究によれば,父親は育児時間が短いと育児の自信が育たないと報告されているが(佐藤ら,2022),本研究では,育児時間が長いにもかかわらず育児の自己効力感が低いという矛盾が認められた.男性は,伝統的な固定概念として「タフであるべき」という考えを持ち,それにより感情表出や他者への援助要請行動をしない特性があると報告されている(Chen et al., 2023Seidler et al., 2016).つまり,男性も家事育児を積極的に取り組むなかで大変さを感じ,それを一人で抱え込みやすいことで育児の自己効力感が高まらなかった可能性が推測される.

2. 夫婦高評価群の夫婦の特徴

夫婦高評価群は,妻と夫ともにコペアレンティング関係性の評価が高く,両者とも育児の楽しさの得点が有意に高く,抑うつリスク有の割合が有意に低かった.また夫の夫婦関係満足度と育児の自己効力感の得点が有意に高く,育児ストレスの得点が有意に低かった.先行研究では,妻が夫の育児を評価する際には育児行動だけではなく情緒的なサポートや共同意思決定の程度が関連していると報告されている(加藤ら,2022Garcia et al., 2022).また,夫が妻からの良い評価を認識することで育児の自己効力感につながることが明らかになっている(福丸,2016).したがってこの群の夫婦は,互いに親役割を調整・サポートしあうための効果的なコミュニケーションを実現していると推測され,両者とも育児を楽しいと思えることや低い抑うつリスクにつながったと示唆される.

3. 夫高評価群の夫婦の特徴

夫高評価群は,妻より夫の方がコペアレンティング関係性の評価が高かった.妻は夫婦関係満足度の得点と家事育児分担割合に納得している割合が有意に低く,育児の大変さや育児ストレスの得点,抑うつリスク有の割合が有意に高かった.先行研究では育児行動に対するパートナーへの期待とパートナー自身の認識にギャップが生じると育児協働感が低下し,夫婦関係満足度の低下や育児ストレスにつながることが指摘されている(新田・桂田,2021田中,2014田中,2017).本研究の対象者は妊娠期にコペアレンティング促進プログラムを受講しており,夫婦で協働して行う育児に高い意欲と期待を抱いていたと推測される.また夫のコペアレンティング関係性の評価が妻より高いことについて,日本社会における望ましい父親像に関する潜在的なバイアスが夫の過大評価につながる可能性が示唆されている(Terui et al., 2021).したがって夫高評価群の妻は,夫に対する期待と現実の認識にギャップを感じ,コペアレンティング関係性や家事育児分担割合への納得度,夫婦関係満足度の低評価となり,高い育児ストレスや抑うつリスクにつながったと推測される.

4. 臨床への示唆

夫婦という二者関係に基づくコペアレンティング関係性に関して,夫婦高評価群では効果的なコミュニケーションによって抑うつリスクの低さやポジティブな育児体験に繋がっている可能性が示唆された.そのため妻高評価群と夫高評価群のような夫婦には共通して,互いを親として尊重し日々の育児について話し合うことを促進するコミュニケーション支援が重要であると示唆される.本研究結果を踏まえると,落ち込んでいる様子がないか互いに気にかけ,育児の大変さについて話したり聞いたりする時間の確保を提案するといった支援が考えられる.加えてそれぞれの特徴に応じて,妻高評価群の夫には一人で悩みを抱え込まないような父親同士の交流の機会を増やすこと,夫高評価群には互いにパートナーに対する要求を具体的かつ肯定的に伝えることや,夫から妻への感謝の言葉を促進する支援(青木,2019佐藤,2008)が望まれる.夫婦間でギャップを経験したとしても1つずつ解消し折り合いをつけながら親として尊重し合えるように,そして育児の大変さよりも楽しさを感じられる育児体験が増えるように目指していくことが期待される.

5. 限界

本研究の限界として,対象者の集団に偏りによる一般化への課題があげられる.対象者の75.6%が大学卒以上で教育水準が高く,また妊娠期にコペアレンティングを促進するプログラムの参加を希望し介入を受けていることから,はじめから協働育児への理解や関心が高い集団であった可能性がある.それにより,育児および心理社会的特徴への過大評価につながっている可能性がある.しかし本研究は,近年父親の育児関与に対する意識が高まるなかで夫婦のペアデータを用いた研究結果であり,貴重な資料となりうる.

また横断研究のため結果の因果関係は明らかにできないとともに,主観的評価の項目には社会的な望ましさに関するバイアスが存在している可能性がある.

Ⅴ. 結論

第1子が1歳時点における夫婦のコペアレンティング関係性は3つに分けられた.それに基づく育児および心理社会的特徴として,1つ目に,妻の方がコペアレンティング関係性の評価が高く,夫は積極的に育児を行う一方で,夫が育児の大変さを感じ抑うつリスクを抱える夫婦と,2つ目に,妻と夫ともにコペアレンティング関係性の評価が高く,育児を楽しんでいる夫婦と,3つ目に,夫の方がコペアレンティング関係性の評価が高い一方で,妻は育児の大変さを感じ抑うつリスクを抱える夫婦が認められた.それぞれの特徴に合わせた夫婦のコミュニケーション支援の必要性が示唆された.

付記:本論文の一部は,第44回看護科学学会学術集会にて発表した.

謝辞:ご協力いただきました全国の第1子を迎えたご夫婦に心より感謝申し上げます.本研究はJSPS科研費 JP20H03993,JP23K20348の助成を受けて実施した.

利益相反:本研究における利益相反は存在しない.

著者資格:MS,KM,YNが中心となり研究全体の構想およびデザインへ貢献し,MS,YNがデータ収集,分析および解釈を行った.MSが草稿を作成し,著者全員が草稿の示唆および研究プロセス全体への助言を行った.著者全員は最終原稿を読み,承認した.

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