目的:男性勤労者の四肢と下肢の低骨格筋量の現状と身体活動との関連を明らかにする.
方法:Aコホート研究の横断的分析を行った.体組成計で骨格筋量を評価し,1週間あたりの身体活動を調査した.2項ロジスティック回帰分析にて,低骨格筋量指数(skeletal muscle mass index: SMI)と身体活動との関連を評価した.
結果:下肢SMIは50歳代で最も低く,40歳代より有意に低値であった.低SMIは688名中,四肢89名,下肢110名であった.低SMIと有意に関連したのは移動および余暇時の総身体活動量であり,下肢の低SMIに対する調整オッズ比(aOR)は移動0.870(95%CI: 0.800~0.946),余暇0.963(95%CI: 0.941~0.986)で,四肢より強い関連が示された.
結論:地方在住の勤労男性では,下肢SMI評価の意義が示され,移動時および余暇における身体活動量の増加が下肢SMI維持に重要であることが示唆された.
Objective: To clarify the prevalence of low skeletal muscle mass in the extremities and lower limbs and its association with physical activity among male workers living in a rural area of Japan.
Methods: A cross-sectional analysis of the A Cohort Study was conducted. Skeletal muscle mass was assessed using a bioelectrical impedance analyzer, and weekly physical activity was evaluated. Binary logistic regression analysis was performed to examine the association between physical activity and low skeletal muscle mass index (SMI).
Results: SMI in the lower limbs was lowest among participants in their 50s and was significantly lower compared to those in their 40s. Among the 688 subjects analyzed, 89 and 110 had low SMI in the extremities and the lower limbs, respectively. Total physical activity during transportation and leisure time was significantly associated with low SMI. In particular, the adjusted odds ratios for low SMI in the lower limbs were 0.870 (95% CI: 0.800–0.946) for transportation-related physical activity and 0.963 (95% CI: 0.941–0.986) for leisure-time physical activity, indicating stronger associations than those observed for low SMI in the extremities.
Conclusion: These findings confirm the importance of evaluating lower-limb SMI among male workers living in rural areas and suggest that increasing physical activity during transportation and leisure time may help prevent low skeletal muscle mass.
我が国の高齢化率は,令和6年9月20日時点で29.3%に達しており(総務省統計局,2024),30%に迫ろうとしている.それに伴い,社会保障費の増大も見込まれる中,健康寿命の延伸や自立した生活の維持,介護予防といった課題は,もはや個人の問題にとどまらず,社会的なニーズとなっている.これまで生活習慣病予防やメタボリックシンドロームの対策が重点的に進められてきたが,超高齢化の進行に伴い,近年はフレイル(虚弱)やサルコペニアの問題に注目が集まっている.
加齢に伴う身体機能の変化の一つに骨格筋量の減少があり,これはサルコペニアを構成する主要な要素の一つである.骨格筋量の減少は,高齢者の日常生活動作(ADL)能力の低下(Janssen et al., 2002),転倒・骨折リスクの増大(Yu et al., 2014;谷本,2015),およびQOLの低下(Trombetti et al., 2016)を引き起こし,ひいては要介護状態の発生までつながるなど,健康状態と密接に関係している.European Working Group on Sarcopenia in Older People(以下,EWGSOP)は,2010年にサルコペニアの定義を初めて公表し,対象者は65歳以上の高齢者を対象としている.しかし,加齢による骨格筋量の低下は,すでに成人期から始まっている.
例えば,Janssen et al.(2000)は横断研究により,20歳から80歳の間に骨格筋量が約20~30%減少することを明らかにしている.日本人を対象とした研究でも,20歳頃をピークとして下肢の骨格筋量が著明に減少する(谷本ら,2010)ことや,上肢と比べて下肢の減少量幅が大きいことが指摘されている(岩村ら,2015;谷本ら,2010).このように,高齢期に至る前段階である勤労世代からの骨格筋量の推移に注目し,下肢の骨格筋量減少の予防に取り組むことが重要である.サルコペニアの定義が公表されたのち,四肢の骨格筋量指数(skeletal muscle mass index,以下SMI)が指標として広く用いられてきた.しかし勤労世代では,下肢骨格筋量が比較的早期から減少する可能性が指摘されているため,本研究ではこの点に着目し,標準指標である四肢SMIに加えて,下肢SMIを併せて評価し,両者の比較を通して検討する必要があると考える.
次に,加齢による骨格筋量の減少は,運動不足と低栄養に依存することが指摘されている(サルコペニア診療ガイドライン作成委員会,2020a).運動不足の視点から,骨格筋量を維持する方法を検討すると,身体活動の総量や歩数が多いこと,中等度以上の運動習慣をもつことが示されてきた.下方・安藤(2012)は,中高年の日本人を対象にサルコペニアのリスクに関する10年間の観察研究から,総身体活動量,余暇時の身体活動量や歩数が多いほど,骨格筋量を指標としたサルコペニアリスクが低下すると報告している.また,65歳以上の日本人を対象とした5年間の観察研究(Shephard et al., 2013)では,歩数が多いこと,3メッツ以上の強度で運動することが骨格筋量を指標としたサルコペニアリスクを低くすると報告している.日本人の勤労男性については横断研究が1論文(井元ら,2014)のみ報告されており,週3回以上の運動頻度のある者が骨格筋量を指標としたプレサルコペニアと関連することが示されている.
健康日本21(第二次)最終評価報告書(厚生労働省健康局健康課,2022)をみると,骨格筋量の減少を予防するための歩数や運動習慣者の割合を増やすための目標が設定されているが,勤労世代ではその目標は達成されていない.実際に,運動習慣者の割合は2010年と比較して有意に低下しており,歩数も2000年から2019年の20年間で有意な減少が認められている.このように身体活動量の低下が課題となる中,2013年に策定された「健康づくりのための身体活動基準(運動基準・運動指針の改定に関する検討会,2013)」では,安静にしている状態よりも多くのエネルギーを消費するすべての動作を「身体活動」と定義し,生活活動と運動の2つに分けられるとしている.生活活動は身体活動の一部であり,労働,家事,通勤・通学など日常生活に伴う活動を指すとされている.身体活動の評価に関する先行研究では,面接によるタイムスタディや運動習慣の調査から総身体活動量を推定する方法(下方・安藤,2012),加速度計付き歩数計を用いて歩数や身体活動強度を評価する方法(Shephard et al., 2013),問診票による運動頻度の確認(井元ら,2014),さらには国際標準化身体活動質問票(International Physical Activity Questionnaire:以下IPAQ)Short版を用いた調査(Seo & Lee, 2022)などが報告されている.しかし,これらの研究は総身体活動量や運動に焦点を当てた分析が中心であり,生活活動が骨格筋量の維持にどのように関与しているかは十分に検討されていない.特に,下肢の骨格筋量との関連については明らかにされていない.これらの背景から,本研究では,まず現時点での勤労世代における身体活動および骨格筋量の実態を把握し,その関連を明らかにする必要があると考えた.
そこで本研究の目的は,横断的観察研究のデザインを採用し,男性勤労者を対象に,年代間でどのように四肢および下肢骨格筋量が相違しているかを確認し,生活活動を含む身体活動と四肢および下肢SMIとの関係を明らかにすることである.これにより,勤労世代からの骨格筋量維持に向けた健康指導に活用できると考える.
本研究は,Aコホートスタディの2017年度調査への協力者を対象とした横断的観察研究である.Aコホートスタディとは,生活習慣病の因子を特定するため2008年から開始された職域コホート研究(製造業・地方公務員・サービス業など多岐に及ぶ)であり,初回参加時のみ年齢制限(20~60歳)を設けているが,継続の参加者には年齢制限を設けていない.このため,勤労世代における低骨格筋量を横断的に評価する本研究では,60歳以上の参加者を除外した.
2017年度調査への男性協力者989人から,60歳以上の者62人,IPAQ未実施者237人,食事調査未実施者1人,未採血者1人を除外した688人を本研究の最終解析対象者とした.
2. 調査方法身体計測,採血,自記式質問紙の調査を実施した.身体計測は,身体組成計(Inbody230,インボディ社)を使用し,体重,体脂肪率,およびBioelectrical Impedance Analysis(BIA法)による骨格筋量(左右の上肢,左右の下肢,体幹)を測定した.採取した血液を用いて,糖尿病の有無を判定する目的で,血糖値,HbA1c(NGSP値)を評価した.自記式の質問紙(既往歴,使用薬剤,喫煙習慣,飲酒習慣,身体活動および食事状況)は,事前に対象者に送付し,調査当日に対面による聴き取りにより記載内容の確認を行った.聴き取りではデータ収集の信頼性を高めるため,身体活動および食事調査の手順書を作成し,聴き取り方法および記録方法を標準化した.また,調査担当者に対して事前説明会を開催し,トレーニングを実施することで,対象者への聴き取り手法を統一した.
3. 身体活動の調査身体活動は,村瀬ら(2002)によって信頼性・妥当性が報告されている国際標準化身体活動質問票(International Physical Activity Questionnaire:以下IPAQ Long Version)日本語版を用い評価した.IPAQは,過去1週間の身体活動について,実施日数・時間および強度を仕事,移動,自宅,余暇の領域ごとに質問する自記式質問紙である.身体活動の強度(メッツ)とは,「強い」と「中等度」に分類されており,その強度(メッツ)は付録のとおりである(付録).なお,最近1週間に行わなかった身体活動や10分間継続しなかった身体活動は,評価の対象外となる.
本研究では,身体活動の強度(メッツ)に1週間あたりの活動時間(時)をかけて,身体活動量(メッツ・時/週)を算出した.身体活動量の算出に使用するデータ処理は,IPAQのデータ処理および解析に関するガイドライン日本語版(International Physical Activity Questionnaire Group, 2005)を参考に実施した.ただし,他の研究でも行われたように1日180分以上の長時間の活動を切り捨てるルールは採用しなかった(Ruescas-Nicolau et al., 2021).本研究では,各領域の身体活動量を検討しているため,全領域データを合計して実施されるデータ切り捨ての適応が難しい.従って,切り捨てる正当な理由がない場合は,1日180分以上実施した身体活動データも含めた.
4. 食事調査食事調査は,半定量式食物摂取頻度調査法である「エクセル栄養君 食物摂取頻度調査新FFQg Ver. 5」(建帛社)を用いて実施した.1日あたりの栄養素摂取量は,日本食品標準成分表2015年版(七訂)(文部科学省科学技術・学術審議会資源調査分科会,2015)を用いて算出し,エネルギー摂取量以外の栄養素摂取量は,密度法を用いて1,000 kcalあたりの摂取量に変換した.食事調査の質問紙に関しては,高橋ら(2001)が連続7日間の記録法による食事量と比較することで妥当性を確認している.
5. 骨格筋指数(SMI)と低SMIの分類基準骨格筋量の評価には,アジアサルコペニアワーキンググループの診断基準(サルコペニア診療ガイドライン作成委員会,2020b)を参考に,骨格筋指数(SMI)を用いた.四肢骨格筋量を身長の2乗で除した数値を「四肢SMI」(kg/m2),両下肢骨格筋量を身長の2乗で除した数値を「下肢SMI」(kg/m2)として算出した.
本研究の低SMIの分類基準は,内間ら(2016)の判定方法を参考にした.内間ら(2016)は,日本人男性勤労者の骨格筋量をBIA法により測定し,若年者(20~39歳)のSMIの平均値マイナス1標準偏差(Standard deviation,以下SD)より低い値をサルコペニア予備群と判定している.本研究も同様に,若年対象者(20~39歳)のSMIの平均値マイナス1SDを算出し,低SMIの分類基準(四肢:7.146 kg/m2,下肢:5.367 kg/m2)として用いた.
6. 分析方法対象者の年代別特徴の検討には,一元配置分散分析又はFisherの正確確率検定を用い,多重比較にはBonferroni法を用いた.低SMI状態と身体活動との関連の検討には,ロジスティック回帰分析を使用し,調整オッズ比(以下,aOR)と95%信頼区間(以下,CI)を算出した.
従属変数はSMIの状態(正常:0,低SMI:1),独立変数には,領域(仕事,移動,自宅,余暇)ごとの総身体活動量(1メッツ・時/週単位の連続変数)を投入した.調整因子として,年齢(歳),BMI(kg/m2),現在の喫煙習慣の有無,週1回以上の飲酒習慣の有無,糖尿病の有無,エネルギー摂取量(kcal/日),1,000 kcalあたりのたんぱく質摂取量(g/日)を投入した.糖尿病の有無については,糖尿病診療ガイドライン2024(日本糖尿病学会,2024)を参照し,空腹時血糖値126 mg/dl以上,かつ/又は随時血糖値200 mg/dl以上,かつ/又はHbA1c(NGSP値)6.5%以上,かつ/又は血糖降下薬の使用にて判定した.
詳細解析では,移動時における週1日以上の自転車利用または歩行が四肢又は下肢の低SMIと関連するか検討した.加えて,余暇における運動の強度(4段階:なし,歩行のみ,中等度の運動,強い運動)が低SMIと関連するか検討した.複数の種類の運動を実施した場合,強度の高い方の運動に分類し,「なし」を基準に解析した.また,成人では,1週間あたり4.0メッツ・時/週以上が推奨(健康づくりのための身体活動基準・指針の改訂に関する検討会,2024)されていることから,余暇として行う運動量を3段階(0.1メッツ・時/週未満,0.1~3.9メッツ・時/週,4.0メッツ・時/週以上)に分けて,「0.1メッツ・時/週未満」を基準として低SMIとの関連を検討した.すべての統計処理には,SAS 9.4(SAS Institute)を用い,統計学的有意水準を両側5%とした.
7. 倫理的配慮本研究は,徳島大学病院臨床研究倫理審査委員会(承認番号:662-6)および香川大学医学部倫理委員会(承認番号:平成30-019)の承認を得て実施した.対象者には文書と口頭により,研究の内容,自由意思による研究参加,同意と撤回の保証,研究成果の公表について説明し,同意書への署名にて同意を得た.
対象者の年代別(20代,30代,40代,50代)の身体的特徴および背景を表1に示す.体重,BMI,体脂肪率などは,年代間において有意な差はみとめなかった.一方,身長は,30代172.0 ± 6.2 cmや40代171.8 ± 5.6 cmと比べると,50代が170.2 ± 6.1 cmと最も低かった(vs 30代:p = 0.023,vs 40代:p = 0.033).また,飲酒習慣も50代が63.1%と最も多く,20代の34.7%と比較すると有意差をみとめた(vs 20代:p = 0.004).
| 全体 (n = 688) |
20代 (n = 49) |
30代 (n = 168) |
40代 (n = 276) |
50代 (n = 195) |
年代比較 有意確率(p) |
|
|---|---|---|---|---|---|---|
| 年齢(歳) | 44.0(37.0~50.5) | <0.001 | ||||
| 身長(cm) | 171.4(5.9) | 172.2(5.4) | 172.0(6.2) | 171.8(5.6) | 170.2(6.1)*# | 0.010 |
| 体重(kg) | 71.5(12.4) | 72.1(19.6) | 71.6(12.3) | 72.1(12.1) | 70.3(10.2) | 0.344 |
| BMI(kg/m2) | 24.3(3.8) | 24.3(6.3) | 24.2(3.9) | 24.4(3.6) | 24.2(2.9) | 0.915 |
| 体脂肪率(%) | 24.2(6.5) | 22.3(9.2) | 24.0(7.0) | 24.1(6.2) | 24.8(5.7) | 0.249 |
| 左上肢のSMI(kg/m2) | 1.01(0.14) | 1.02(0.19) | 1.00(0.13) | 1.02(0.14) | 1.00(0.12) | 0.605 |
| 右上肢のSMI(kg/m2) | 1.03(0.14) | 1.05(0.19) | 1.02(0.13) | 1.04(0.14) | 1.02(0.12) | 0.520 |
| 体幹のSMI(kg/m2) | 8.29(0.77) | 8.39(1.10) | 8.26(0.75) | 8.32(0.77) | 8.25(0.69) | 0.632 |
| 左下肢のSMI(kg/m2) | 2.90(0.23) | 2.93(0.29) | 2.91(0.22) | 2.92(0.22) | 2.86(0.22)* | 0.019 |
| 右下肢のSMI(kg/m2) | 2.91(0.23) | 2.95(0.29) | 2.92(0.22) | 2.93(0.23) | 2.87(0.22)* | 0.017 |
| 両下肢のSMI(kg/m2) | 5.81(0.46) | 5.88(0.57) | 5.83(0.44) | 5.85(0.45) | 5.72(0.44)* | 0.017 |
| 四肢のSMI(kg/m2) | 7.85(0.68) | 7.95(0.93) | 7.85(0.65) | 7.90(0.67) | 7.75(0.63) | 0.081 |
| エネルギー摂取量(kcal/日) | 1,827(474) | 1,801(646) | 1,778(433) | 1,865(462) | 1,823(474) | 0.257 |
| 1,000 kcalあたりのたんぱく質摂取量(g/日) | 32.0(5.3) | 32.6(5.5) | 32.5(5.3) | 31.8(5.4) | 31.7(5.0) | 0.379 |
| 喫煙習慣(%) | 33.1 | 36.7 | 33.9 | 36.6 | 26.7 | 0.132 |
| 飲酒習慣(%) | 55.2 | 34.7 | 51.8 | 55.4 | 63.1** | 0.003 |
| 糖尿病(%) | 3.5 | 4.1 | 1.2 | 4.4 | 4.1 | 0.243 |
平均値(SD)または頻度で表示.年齢のみ中央値(25~75パーセンタイル)で表示.
年代別の比較には,一元配置分散分析またはFisherの正確確率検定を行い,その後の多重比較にはBonferroni法を用いた.
* Bonferroni adjusted p value < 0.05: vs. 40代,# Bonferroni adjusted p value < 0.05: vs. 30代,** Bonferroni adjusted p value < 0.005: vs. 20代
SMIについて,上肢,体幹および四肢は,年代間による有意な差はなかった.一方,下肢のみ年代間による有意差を認めた(左下肢p = 0.019,右下肢p = 0.017,両下肢p = 0.017).下肢は50代が左下肢SMI:2.86 ± 0.22 kg/m2,右下肢SMI:2.87 ± 0.22 kg/m2,両下肢SMI:5.72 ± 0.44 kg/m2と最も低く,40代と比べて有意に低くなった(vs 40代:左下肢p = 0.022,右下肢p = 0.021,両下肢p = 0.021).
2. 対象者の身体活動の特徴(表2)1週あたりの活動日数は,乗り物利用(主に自家用車)の中央値7.0日,他の活動項目において中央値が0.0日となった.また,1週間あたりの総身体活動量(メッツ・時/週)の中央値は,仕事・移動・自宅・余暇のどの領域においても0.0メッツ・時/週であった.四つの領域を合計した総身体活動量は13.2メッツ・時/週となり,成人における健康づくりのために推奨されている身体活動量の基準値である23メッツ・時/週(健康づくりのための身体活動基準・指針の改訂に関する検討会,2024)よりも低かった.本調査は10分継続した活動への調査であるが,1週間あたり1日以上従事した割合が高かった活動は,「仕事での中等度活動」33.9%,「移動における歩行」27.9%,「余暇でのウォーキング」26.2%,「仕事中の歩行」25.9%の順番であった.
全体(n = 688)
| IからIV領域の活動 | 1週間あたり日数 | 活動1日以上の人数(%) | ||
|---|---|---|---|---|
| 中央値 | (25~75パーセンタイル) | |||
| 【I仕事での活動】 | ||||
| 強い活動(日数/週) | 0.0 | (0.0~0.0) | 0日 | 577(83.9) |
| 1日以上 | 111(16.1) | |||
| 中等度の活動(日数/週) | 0.0 | (0.0~2.0) | 0日 | 455(66.1) |
| 1日以上 | 233(33.9) | |||
| 歩行(日数/週) | 0.0 | (0.0~1.0) | 0日 | 510(74.1) |
| 1日以上 | 178(25.9) | |||
| 【II移動での活動】 | ||||
| 乗り物(主に自家用車)利用(日数/週) | 7.0 | (7.0~7.0) | 7日未満 | 139(20.2)※ |
| 7日 | 549(79.8) | |||
| 自転車(日数/週) | 0.0 | (0.0~0.0) | 0日 | 606(88.1) |
| 1日以上 | 82(11.9) | |||
| 歩行(日数/週) | 0.0 | (0.0~1.0) | 0日 | 496(72.1) |
| 1日以上 | 192(27.9) | |||
| 【III自宅での活動】 | ||||
| 庭での強い活動(日数/週) | 0.0 | (0.0~0.0) | 0日 | 661(96.1) |
| 1日以上 | 27(3.9) | |||
| 庭での中等度の活動(日数/週) | 0.0 | (0.0~0.0) | 0日 | 612(89.0) |
| 1日以上 | 76(11.0) | |||
| 屋内での中等度の活動(日数/週) | 0.0 | (0.0~0.0) | 0日 | 521(75.7) |
| 1日以上 | 167(24.3) | |||
| 【IV余暇での活動】 | ||||
| ウォーキング(日数/週) | 0.0 | (0.0~1.0) | 0日 | 508(73.8) |
| 1日以上 | 180(26.2) | |||
| 中等度の運動(日数/週) | 0.0 | (0.0~0.0) | 0日 | 596(86.6) |
| 1日以上 | 92(13.4) | |||
| 強い運動(日数/週) | 0.0 | (0.0~0.0) | 0日 | 538(78.2) |
| 1日以上 | 150(21.8) | |||
| 【総身体活動量】 | ||||
| I仕事での総身体活動量(メッツ・時/週) | 0.0 | (0.0~8.0) | ||
| II移動での総身体活動量(メッツ・時/週) | 0.0 | (0.0~1.3) | ||
| III自宅での総身体活動量(メッツ・時/週) | 0.0 | (0.0~1.5) | ||
| IV余暇での総身体活動量(メッツ・時/週) | 0.0 | (0.0~11.7) | ||
| IからIVを合計した総身体活動量(メッツ・時/週) | 13.2 | (2.8~34.7) | ||
ここでの身体活動とは,10分以上の継続する活動のみとし10分未満の活動は含めない.
※活動1日以上の人数(%)は,乗り物利用のみ7日または7日未満とする.
メッツとは,身体活動の強さで,安静時の何倍に相当するか表す単位である.
身体活動量(メッツ・時/週)とは,身体活動の強度(メッツ)に1週間あたりの実施時間(時)をかけて算出した.
合計した総身体活動量とは,IからIVの総身体活動量を合計したものである.
対象者の中で,四肢の低SMIは89名(12.9%),下肢の低SMIは110名(16.0%)であった.四肢および下肢の低SMIの有無と総身体活動量メッツ・時/週)との関連を検討するため,領域(仕事,移動,自宅,余暇)ごとにロジスティック回帰分析を行った(表3).四領域の中で,四肢の低SMI有無と関連を認めた領域は,移動と余暇であった.年齢,BMI,喫煙習慣の有無,飲酒習慣の有無,糖尿病の有無,エネルギー摂取量,1,000 kcalあたりのたんぱく質摂取量により多変量調整した移動における総身体活動量のaORは,0.912(95%CI: 0.841~0.989, p = 0.026),余暇における総身体活動量のaORは,0.966(95%CI: 0.941~0.991, p = 0.008)であった.一方,下肢における低SMIの検討では,四肢と同様,移動と余暇の領域で低SMIの有無と関連を認めた.下肢における総身体活動量1メッツ・時/週上昇あたりのaORは,移動0.870(95%CI: 0.800~0.946, p = 0.001),余暇0.963(95%CI: 0.941~0.986, p = 0.001)と四肢よりも低い値を示した.
| 1週間あたりの総身体活動量 | 四肢の低SMI | 下肢の低SMI | |||
|---|---|---|---|---|---|
| 調整オッズ比 (95%信頼区間) |
有意確率(p) | 調整オッズ比 (95%信頼区間) |
有意確率(p) | ||
| I仕事での総身体活動量(メッツ・時/週) | 0.997(0.988~1.005) | 0.428 | 1.000(0.993~1.007) | 0.950 | |
| II移動での総身体活動量(メッツ・時/週) | 0.912(0.841~0.989) | 0.026 | 0.870(0.800~0.946) | 0.001 | |
| III自宅での総身体活動量(メッツ・時/週) | 0.974(0.922~1.029) | 0.355 | 0.958(0.904~1.016) | 0.150 | |
| IV余暇での総身体活動量(メッツ・時/週) | 0.966(0.941~0.991) | 0.008 | 0.963(0.941~0.986) | 0.001 | |
ロジスティック回帰分析による低SMIに対する総身体活動量1メッツ・時/週上昇あたりの調整オッズ比を示す.従属変数はSMIの状態(正常:0,低SMI:1).低SMIとは若年対象者(20~39歳)のSMIの平均値マイナス1SD(四肢:7.14 kg/m2,下肢:5.36 kg/m2)未満と定義する.調整因子:年齢(歳),BMI(kg/m2),喫煙の有無,飲酒の有無,糖尿病の有無,エネルギー摂取量(kcal/日),1,000 kcalあたりのたんぱく質摂取量(g/日)
さらに移動と余暇について詳細な検討結果を表4と表5に示す.まず移動手段について,1週間あたりの自転車利用および歩行の有無と低SMIとの関連をみた(表4).四肢の低SMIに対する「自転車利用あり」のaORは,0.264(95%CI: 0.095~0.730, p = 0.010)であり,「自転車利用なし」と比べると有意に低値を示した.加えて,下肢の低SMIの検討では,「自転車利用あり」のaORは0.251(95%CI: 0.102~0.621, p = 0.003)と四肢よりも低値を示した.その上,歩行の有無については,四肢では有意差を認めなかったが,下肢の低SMIでは,「歩行あり」のaORが0.505(95%CI: 0.283~0.901, p = 0.021)と有意に低値であった.
| 四肢 | 下肢 | |||||||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 正常SMIの 人数(n = 599) |
低SMIの 人数(n = 89) |
調整オッズ比 (95%信頼区間) |
有意確率 (p) |
正常SMIの 人数(n = 578) |
低SMIの 人数(n = 110) |
調整オッズ比 (95%信頼区間) |
有意確率 (p) |
|||
| 自転車利用 (1日以上/週) |
なし | 523 | 83 | ref | 503 | 103 | ref | |||
| あり | 76 | 6 | 0.264(0.095~0.730) | 0.010 | 75 | 7 | 0.251(0.102~0.621) | 0.003 | ||
| 歩行 (1日以上/週) |
なし | 430 | 66 | ref | 409 | 87 | ref | |||
| あり | 169 | 23 | 0.786(0.423~1.460) | 0.445 | 169 | 23 | 0.505(0.283~0.901) | 0.021 | ||
ロジスティック回帰分析.従属変数はSMIの状態(正常:0,低SMI:1).低SMIとは若年対象者(20~39歳)のSMIの平均値マイナス1SD(四肢:7.14 kg/m2,下肢:5.36 kg/m2)未満と定義する.調整因子:年齢(歳),BMI(kg/m2),喫煙の有無,飲酒の有無,糖尿病の有無,エネルギー摂取量(kcal/日),1,000 kcalあたりのたんぱく質摂取量(g/日)
| 四肢 | 下肢 | ||||||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 正常SMIの 人数(n = 599) |
低SMIの 人数(n = 89) |
調整オッズ比 (95%信頼区間) |
有意確率(p) | 正常SMIの 人数(n = 578) |
低SMIの 人数(n = 110) |
調整オッズ比 (95%信頼区間) |
有意確率(p) | ||
| 運動の強度 | |||||||||
| なし | 293 | 59 | ref | 279 | 73 | ref | |||
| 歩行のみ | 101 | 18 | 0.782(0.359~1.702) | 0.182 | 100 | 19 | 0.551(0.270~1.124) | 0.827 | |
| 中等度の運動 | 62 | 5 | 0.456(0.152~1.373) | 0.758 | 58 | 9 | 0.752(0.309~1.832) | 0.272 | |
| 強い運動 | 143 | 7 | 0.204(0.081~0.510) | 0.009 | 141 | 9 | 0.175(0.078~0.392) | <0.001 | |
| 1週間あたり運動量 | |||||||||
| 0.1メッツ・時/週未満 | 293 | 59 | ref | 279 | 73 | ref | |||
| 0.1~3.9メッツ・時/週 | 62 | 15 | 0.875(0.372~2.062) | 0.259 | 62 | 15 | 0.610(0.274~1.360) | 0.802 | |
| 4.0メッツ・時/週以上 | 244 | 15 | 0.294(0.145~0.595) | 0.002 | 237 | 22 | 0.305(0.167~0.557) | 0.003 | |
ロジスティック回帰分析.従属変数はSMIの状態(正常:0,低SMI:1).
低SMIとは若年対象者(20~39歳)のSMIの平均値マイナス1SD(四肢:7.14 kg/m2,下肢:5.367 kg/m2)未満と定義する.
調整因子:年齢(歳),BMI(kg/m2),喫煙の有無,飲酒の有無,糖尿病の有無,エネルギー摂取量(kcal/日),1,000 kcalあたりのたんぱく質摂取量(g/日)
次に余暇について,「運動なし」を基準に,運動強度(歩行のみ,中等度運動,強い運動)と低SMIとの関連をみた(表5).四肢および下肢の低SMIに対する歩行や中等度運動のaORは,有意でなかった.一方,強い運動のaORは,四肢と下肢のどちらも有意に低かった.特に,下肢のaORは,0.175(95%CI: 0.078~0.392, p < 0.001)であり,四肢のaOR 0.204(95%CI: 0.081~0.510, p = 0.009)よりも低値を示した.
最後に,健康づくりのため毎週4メッツ・時の運動を推奨されていることから,余暇として行う運動量(メッツ・時/週)を,3段階(0.1メッツ・時/週未満,0.1~3.9メッツ・時/週,4.0メッツ・時/週以上)に分類し,低SMIとの関連を分析した(表5).余暇として行う運動量が「4.0メッツ・時/週以上」のaORは,運動量「0.1メッツ・時/週未満」と比べ,低SMIと有意な関連を示した[四肢:aOR 0.294(95%CI: 0.145~0.595, p = 0.002),下肢:aOR 0.305(95%CI: 0.167~0.557, p = 0.003)].
本研究では,勤労世代の男性を対象に,仕事,移動,自宅,余暇ごとの総身体活動量(メッツ・時/週)と低SMIとの関連を検討した結果,移動および余暇時における総身体活動量で有意な関連が認められた.特に,下肢の低SMIに対する総身体活動量1メッツ・時/週上昇あたりのaORは,移動0.870,余暇0.963であり,移動における総身体活動量の上昇の方が下肢の低SMIに対して,より強い関連性を示した.
1. 骨格筋量の加齢による変化について日本人を対象にBIA法によって骨格筋量を測定した先行研究と比較する.谷本ら(2010)は,上肢の骨格筋量は50から60歳頃まで横ばいで推移し,下肢の骨格筋量は20歳代から減少すると報告している.また高橋ら(2016)は,上肢は40歳以降に減少に転じ,下肢は30歳を超えると減少すると報告している.岩村ら(2015)は,上肢は39歳まで増加しその後減少,下肢は35歳まで増加後に減少したことを報告している.一方,本研究の結果では,上肢は20代から50代にかけて大きな変化が見られず,年代間に有意な差は認められなかった.対照的に,下肢は40代まで横ばいで推移し,50代で最も低くなり,40代と比較して有意に低値を示した.これらの結果から,下肢の骨格筋量の減少が働く世代(勤労世代)から始まることや,骨格筋量の減少には部位ごとに差があること,すなわち,下肢は上肢よりも早く減少する傾向にあることが,先行研究と一致する知見として確認された.骨格筋量の変化は部位ごとに異なることは明らかであるが,骨格筋量が減少に転じる時期については,本研究を含め,先行研究で一致した見解が得られていない.この理由として,骨格筋量の減少に関わるメカニズムが複雑であり,神経学的衰退,ホルモンの変化,炎症経路の活性化,活動の低下,慢性疾患,脂肪浸潤,栄養不良など,複数の要因が影響しているとされる(Walston, 2012).そのため,対象とする集団の地域的・社会的特性も結果に影響を与える可能性がある.本研究は横断調査であるため,骨格筋量の減少が開始される時期を直接的に特定することができないが,男性勤労者において,下肢の骨格筋量の低下を予防するためには,少なくても中年期(50代)よりも前の段階から対策を講じる必要がある.さらに,勤労世代における骨格筋量減少のスクリーニング指標として,下肢のSMIを用いることの可能性が示唆される.
2. 身体活動と低SMIとの関連サルコペニア診療ガイドライン(サルコペニア診療ガイドライン作成委員会,2020c)では,骨格筋量が必須項目とされており,さらに筋力または身体機能のいずれかが低下している場合にサルコペニアと診断することを推奨されている.近年では,骨格筋量だけでなく,握力や歩行速度などの指標によりサルコペニアのリスクを評価した研究が増加しているが,そのほとんどが中高年の地域在住者を対象としたものである.本研究は20歳から59歳までの勤労者を対象としており,勤労者における生活スタイルと骨格筋量の関連を明確に分析した研究は,日本国内では非常に限られている(井元ら,2014).そこで考察では,地域の中高年者を対象とし,SMIを用いてサルコペニアのリスクと身体活動との関連を直接的に分析した先行研究を取り上げ,比較する.
まず,日本人の中高年の男女を対象(平均57.8歳)とした縦断研究(下方・安藤,2012)では,四肢SMIによりサルコペニアと判定し,加速度計付き歩数計により身体活動量を評価している.その結果,総身体活動量,余暇での身体活動量,歩数が多いほどサルコペニアリスクが低下することが報告されている.次に,65歳以上の日本人を対象とした縦断研究(Shephard et al., 2013)では,四肢SMIによるサルコペニアを判定し,歩数計により1日当たりの歩数および身体活動の強度を記録している.1日7,000から8,000歩以上の活動量を有する群や,3メッツ以上の強度で運動している群が,骨格筋量の減少リスクが低いことが明らかとなっている.また,井元ら(2014)は,本研究と同様に勤労男性を対象とし,四肢SMIによりプレサルコペニアを判定した結果,プレサルコペニアは週3回以上の運動を行っている者の割合が有意に低いことを示している.本研究の対象は成人期の勤労者であるが,四肢SMIが余暇における高強度の運動と関連することを指摘した先行研究(井元ら,2014;Shephard et al., 2013;下方・安藤,2012)を支持する結果が得られた.さらに本研究では四肢SMIに加え,下肢SMIについても高強度の運動と関連を示すことができた.
次に,移動に関して,1週間あたり1日以上,10分以上の自転車を利用することが,四肢及び下肢の両方の低SMIと関連していた.この自転車利用の影響力は,四肢よりも下肢の低SMIで強かった.生活活動として位置づけられる移動手段の中で,自転車の利用が四肢および下肢の低SMIと関連することを示したのは,本研究が日本で初めてである.加えて,本研究では,1週間あたり1日以上,10分以上の歩行を行うことが,下肢の低SMIのみに関連していることも示唆された.移動時の歩行が下肢の低SMIのみと有意な関連を認め,更に自転車利用においても四肢よりも下肢で強い影響力を示したことより,下肢の骨格筋量は全身の骨格筋量(SMI)よりも早期に低下し始める可能性が推察される.本研究は横断的検討であるため,因果関係を推定することはできないが,下肢骨格筋量低下の抑制の糸口として,余暇だけでなく移動時における総身体活動量の増加が役立つ可能性が期待される.
本研究の対象者は,通勤時に自家用車を利用する者が96%を占める,公共交通機関の利便性が高くない地方在住の勤労者であった.このように自家用車にかわる通勤手段が得にくい地域においても,1週間に1日でも10分間の自転車通勤を取り入れることや,隙間時間を活用して10分の歩行を行うなど,生活の中に身体活動を取り入れるための生活指導の必要性が示唆された.また,本研究結果は,健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023(健康づくりのための身体活動基準・指針の改訂に関する検討会,2024)のアクティブガイドで推奨されているプラス10を支持するものである.
なお,自家用車の利用日数が中央値7.0日であることからも明らかなように,1週間に10分以上歩行する日が「0日」である者は7割を超えていた.このような集団特性が,本研究における結果に影響を与えた可能性が考えられる.今後は,通勤時の歩行機会が多い都市部での検討が望まれる.
横断研究において,高強度の運動が骨格筋量にどのように影響を及ぼすのかというメカニズムまで明らかにすることはできない.しかし,介入研究のレビュー(Voulgaridou et al., 2023)によれば,レジスタンス運動がサテライト細胞の増殖を促進し,それによって筋肥大を引き起こすメカニズムが示されている(Verdijk et al., 2009).このことは高強度の運動が加齢に伴う骨格筋量の減少を弱める可能性があることを示唆している.本研究においても,四肢および下肢の骨格筋量の両方において,余暇に高強度の運動を行っている場合に,低SMIとの関連が認められた.この結果は,強度が高い運動のほうが骨格筋サイズを維持しやすいことが背景にあると推察される.
また,余暇において4メッツ・時/週の運動を行っている場合に,低SMIとの関連が認められたことは,我が国で推奨されている余暇における身体活動基準(4メッツ・時/週)の科学的根拠の一端を支持するものであると考えられる.4メッツ・時/週とは,例えば1週間に1回60分の運動を行う,あるいは毎日10分ずつ4メッツ強度の運動を6日間実施するなどの例があり,早歩き(速歩)などもこれに含まれる.一方で,本研究では,余暇のときのウォーキングは低SMIと関連が認められなかった.これは,4メッツ・時/週の運動と低SMIとの関連が認められたことと矛盾しているように見える.この矛盾の原因としては,本研究においてウォーキングの実施有無のみを評価し,強度別(呼吸が乱れる速さ5.0メッツ,息が弾む速さ3.3メッツ,ゆっくり2.5メッツ)で分類・分析していなかったことが,結果に影響した可能性がある.したがって,今後はウォーキングの強度別による詳細な解析を追加し,運動の質に着目した検討が必要である.
本研究は,勤労世代における身体活動と骨格筋量の現状および関連を把握するうえで有用な基礎的知見を提供したといえる.強みは,一つ目に,四肢のみでなく下肢のSMIの指標を用いたことである.二つ目にIPAQ-Long版を用いたことにより,対象者の身体活動を要素に分けて分析できたことである.三つ目に,アンケート調査に伴う情報を収集するときに生じるバイアスを少なくしたことである.手順書を作成することによって標準化を図り,対象者への聴き取り手法を統一した.加えて対面により回答を確認することによって,記載箇所の間違い,記載した活動の重複,記入漏れなどを減少させることができた.
一方,研究の限界もある.一つ目に,地方の一県のみの協力企業・団体を対象としているため,地方で暮らす日本人男性を代表したものではなく,結果の一般化可能性に限界がある.加えて,都市部と地方では生活習慣の違いがあるため,他県においてもさらなる研究が必要となる.二つ目に横断研究であるため,観察された関連性の因果関係を特定することはできず,因果の逆転を排除することができない.今後は縦断的データを収集し,身体活動と下肢骨格筋量との因果関係を検証することが課題である.三つ目に,本研究では女性参加者が少ないため,性差に関して検討できていない.今後,女性勤労者のデータを蓄積することで,骨格筋量の減少と性差の影響を検討することが課題である.四つ目に,IPAQの180分切り捨てルールを採用しなかったことが,結果に影響した可能性がある.今後,IPAQ-Long版の各領域別の詳細なデータ切り捨てプロトコルが明示された場合は,更なる検証が必要である.
A県内の事業所に勤務する男性を対象に,骨格筋量および身体活動を評価し,四肢および下肢のSMIと身体活動の関連を横断的に検討した.その結果,下肢SMIのみが年代により有意に低下し,50歳代で最も低値を示した.また,四肢および下肢の低SMIはいずれも移動時および余暇時における身体活動量と有意に関連していたが,とりわけ下肢の低SMIとの関連が強かった.以上より,地方で暮らす男性勤労者においては,下肢SMIを評価する意義が示されるとともに,移動時および余暇における身体活動量を増やすことの重要性が示唆された.
付記:本論文の一部は,第10回日本健康運動看護学会学術集会において発表した.
謝辞:論文をまとめるにあたり,調査にご参加された事業所および協力者の皆様,徳島大学先端酵素学研究所の松久宗英教授,糖尿病対策センターの皆様,身体計測や運動調査を担当された看護師の皆様に心より感謝申し上げます.本コホートスタディは徳島県からの助成およびJSPS科研費のJP16K09785(MF),JP15K19229(AH),JP24K13465(AH)の助成を受けて行った.
利益相反:本研究における利益相反は存在しない.
著者資格:TIは,論文の着想および研究デザイン,運動データの収集・分析,草稿の作成,論文執筆まで,全プロセスに貢献した.ENは,運動データの収集・分析および草稿の作成に貢献した.TOは,調査に参加し,運動データの収集・分析に貢献した.MNおよびTSは,栄養に関する部分の構想・デザイン,データ取得,分析・解釈を担当し,当該部分の執筆を行った.MFおよびAHは,コホートスタディの責任者および実施責任者として,データ管理,研究プロセスへの助言,データ分析,論文執筆までの全過程に貢献した.すべての著者は,原稿への示唆および研究プロセス全体への助言を行い,最終原稿を確認し承認した.