日本看護科学会誌
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原著
看護師が効果的であると知覚する先輩看護師の指導
―経験年数1年以上5年以下の看護師を対象としたOJTに焦点を当てて―
山田 彩乃岡村 典子
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電子付録

2026 年 46 巻 p. 390-399

詳細
Abstract

目的:病院に就業する経験年数1年以上5年以下の看護師が,効果的であると知覚するOJTとして提供される先輩看護師の指導を解明し,OJTの充実に向けた示唆を得る.

方法:病院に就業する経験年数1年以上5年以下の看護師を対象に,効果的であると知覚する先輩看護師の指導を問う半構造化面接法を用いて調査した.分析は,面接データにBerelson, B.の方法論を参考にした看護教育学における内容分析を適用した方法を用いた.

結果:【看護業務遂行に向け,必要な知識・技術・態度およびそれらを補う内容・方法を伝える】など,経験年数1年以上5年以下の看護師が効果的であると知覚する先輩看護師の指導を表す24カテゴリが形成された.

結論:効果的であると知覚する先輩看護師の指導24種類から導き出した特徴とOJTの構成要素を照合した結果,OJTの充実にはOJTの目的・方法・場所・教授者の4側面に着目する必要性を示唆した.

Translated Abstract

Objective: This study aimed to clarify the guidance provided by senior nurses that is perceived as effective on-the-job training (OJT) by nurses with one to five years of experience working in hospitals and to obtain suggestions for improving OJT.

Methods: Semi-structured interviews were conducted with nurses who had one to five years of experience working in hospitals to investigate the guidance from senior nurses perceived as effective. The interview data were analyzed using content analysis methods in nursing education, based on Berelson, B.’s methodology.

Results: A total of 24 categories were identified, representing senior nurses’ guidance perceived as effective by nurses with one to five years of experience. These categories included [guidance on conveying the knowledge, skills, and attitudes necessary for performing nursing duties, as well as methods and content that supplement these areas].

Conclusion: By comparing the characteristics obtained from the 24 types of senior nurse guidance perceived as effective and the components of OJT, the study suggests that improving OJT requires focusing on four aspects: its objectives, methods, locations, and instructors.

Ⅰ. 緒言

院内教育は,教育が提供される場によりOff-the-Job TrainingとOn-the-Job Training(以下,OJT)に分類され(杉森・舟島,2024),両者は医療機関に就業する看護師にとって重要である.また,看護実践能力は,臨床の場に身を置き,患者やスタッフとの相互行為を通して獲得,向上させる必要があり(西田,2016),看護実践に直結するOJTは,特に重要な位置を占める.

新人看護師への支援体制は既に確立されている(厚生労働省,2014)が,新人期以降,すなわち経験年数1年以上の看護師の支援体制は各医療機関に一任されている.経験年数1年以上の看護師に着目した先行研究(内野ら,2017吉岡ら,2017)は,経験年数1年以上2年以下の看護師が新人時代より先輩看護師から受けられる支援の減少に戸惑い,経験年数5年以下の看護師が経験年数を重ねる毎に難易度が上がる業務を達成できないと知覚していることを解明した.また,経験年数1年以上5年以下の看護師は,Benner(2001/2005)が示す看護実践の習得別レベルの「新人」と「一人前」に該当し,両レベルは「中堅」の移行に向け重要な時期である.さらに,指導を担う看護師に着目した先行研究(服部・舟島,2021佐藤ら,2020)は,指導する看護師が指導に必要な知識と技術の不足,それらを補足する院内教育の欠如等の問題に直面し,指導の目標や方法の不明確さに困難感を抱いていることを解明した.

以上は,中堅レベルの移行に向け重要な時期である経験年数1年以上5年以下の看護師が支援の減少に不安を抱き,指導を担う看護師が自身の指導に自信が持てずに実施していることを示した.しかし,これら看護師への教育,特にOJTに関する研究の存在は確認できなかった.

OJTの対象となる経験年数1年以上5年以下の看護師は,成人学習者である.成人学習者は依存的状態から自己決定性が増大している状態(Knowles, 1980/2015)であり,先輩看護師は自発的,主体的であろうとする経験年数1年以上5年以下の看護師の心理的欲求に応える指導を行う必要がある.また,それは,対象となる看護師が先輩看護師の指導を自己の意向に沿ったもの,すなわち効果的と知覚することが指導の成果である目標の達成度を向上させることを示す.

以上を背景とする本研究は,看護実践能力育成の場であるOJTに着目し,経験年数1年以上5年以下の看護師が効果的と知覚する先輩看護師の指導を解明することを目指す.また,その意義は,先輩看護師が本研究成果を活用することにより,経験年数1年以上5年以下の看護師の理解促進とそれら看護師の知覚を反映した教育を実現し,OJTの充実に向けた示唆を得ることである.

Ⅱ. 研究目的

病院に就業する経験年数1年以上5年以下の看護師(以下,対象看護師)が,効果的であると知覚するOJTとして提供される先輩看護師の指導を明らかにし,その特徴の考察を通してOJTの充実に向けた示唆を得る.

Ⅲ. 用語の概念規定

1. On-the-Job Training(OJT)

文献検討(付録1)の結果,用語「OJT」は,OJTが行われる場所(所属部署内),OJTの目的(熟練技術の修得あるいは実践的能力の獲得),OJTの方法(職務と指導の並進に加え,個別の状況に即した指導),OJTの教授者(上司や先輩)の4要素から構成されることが明らかになった.以上を前提に,OJTを「所属部署内において,先輩看護師が職務に就きながら,対象看護師個々人のレベルに応じ実施する熟練技術の修得あるいは実践的能力の獲得を目指す教育」とする.ここで示す実践的能力は,「専門的・倫理的・法的な実践能力」「臨床実践能力」「リーダーシップとマネジメント能力」「専門性の開発能力」から構成される看護実践能力(日本看護協会,2023)を参考にした.

2. 知覚

知覚とは,感覚材ならびに記憶からの情報を組織し,解釈し,変換する過程であり,環境と人間の相互浸透行為の過程でもある.知覚は,人間の経験に意味を持たせ,その人の現実に関するイメージを描写し,行動に影響を及ぼす(King, 1981/1985)ものである.

3. 効果的な指導

対象看護師が熟練技術の修得あるいは実践的能力の獲得に向け,自発的・主体的に取り組めるように実施する先輩看護師の行動である.またそれは,先輩看護師と対象看護師の相互行為から生じた指導であり,対象看護師自身の行動に影響を与えたものである.そのため,対象看護師が先輩看護師の他者への指導や患者との接し方を見て修得・獲得したものは除外する.

Ⅳ. 研究方法

1. 研究対象者

看護基礎教育課程を修了後すぐに,初めて就職した病院にて新人看護師を経験し,その病院に継続して就業している年月が1年以上5年以下の看護師(病棟の配置転換,病院の看護方式は問わない)とした.

2. データ収集

1) データ収集のための手続き

対象者の探索は,ネットワークサンプリング(Polit & Beck, 2004/2010)を用いた.研究者の友人や知人に,メールや口頭にて研究の趣旨を伝え,候補者の紹介を依頼した.説明を受けることに了承した候補者に,指定された連絡方法を用いて対面もしくはオンラインの希望を確認した.研究協力の説明を書面と口頭にて行い,同意書への署名を協力への同意とした.

質問項目は,対象看護師が効果的であると知覚した先輩看護師の指導に関するデータ,対象看護師のプロフィールとした.対象看護師が効果的であると知覚した先輩看護師の指導に関するデータは,対象看護師が看護師として就業し,1年以降から面接時までに受けた指導とした.また,Berelson, B.の方法論を参考にした看護教育学における内容分析(舟島,2018)に精通した質的研究の専門家と適切性を検討した.内容は,対象者の条件に合致する2名に予備面接を行い,妥当性を確保した.

面接内容はICレコーダーおよびレコーディング機能を用いて音声を録音し,場の雰囲気は面接フォームに記述した.

2) データ収集期間

データ収集期間は,2022年6月から2023年1月であった.データ収集は,データの飽和化(Polit & Beck, 2004/2010)を確認し,終了した.

4. データ分析

データ分析は,面接データにBerelson, B.の方法論を参考にした看護教育学における内容分析を適用した方法(舟島,2023)を用いた.これは,「研究のための問い」と「問いに対する回答文」を決定し,面接データから「問いに対する回答文」に当てはまる箇所を記録単位として抽出,その抽出された記録単位を意味内容の類似性に基づき集約し,それらを表す的確な用語へ置き換えを繰り返し,カテゴリを形成する分析方法である.

分析データは,録音した音声から作成した逐語記録と,面接終了後に場の雰囲気や対象者の特性を記述した面接フォームを対象とした.本研究は,研究のための問いを「病院に就業する対象看護師はOJTとして提供された先輩看護師のどのような指導に効果的であると知覚しているか」,問いに対する回答文を「病院に就業する対象看護師はOJTとして提供された( )という先輩看護師の指導を効果的であると知覚している」とした.記録単位は研究のための問いの回答1つのみを含む文章とし,文脈単位は面接対象者一人ひとりの回答全体とした.

個別分析は,対象者個々の逐語記録から対象者の特性に該当する情報と対象看護師が効果的であると知覚する先輩看護師の指導を表す文章を抽出した.先輩看護師の指導を表す文章の抽出は,対象看護師が効果的であると知覚した,すなわち,本研究の「OJT」「効果的指導」の定義に該当することが確認できたもののみとした.また,抽出した文章は,問いに対する回答文の( )に入るよう表現し,記録単位とした.

全体分析は,個別分析にて抽出した全記録単位から記録単位一覧表を作成し,表現あるいは意味が完全に一致する記録単位を同一記録単位群として集約し(基礎分析),複数の同一記録単位群を意味の類似性により分類,それらを表す的確な用語へ置き換え,カテゴリを形成した(本分析).本分析は,カテゴリを形成する段階まで3段階に渡って置き換えを行った(付録2).また,カテゴリは,指導の「内容」と「方法」に着目し形成した.

カテゴリの信頼性は,Berelson, B.の方法論を参考にした看護教育学における内容分析(舟島,2018)の実施経験を持つ研究者2名に依頼し,Scott, W. A.の計算式(Scott, 1955)を用いて算出したカテゴリ分類への一致率にて判断した.

5. 倫理的配慮

本研究は,「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針(厚生労働省,2023)」に基づき実施した.対象者に,研究目的と方法,協力への自己決定と撤回による不利益がないこと,プライバシーの保障を書面と口頭にて説明した.また,本研究は,公立大学法人新潟県立看護大学研究倫理審査委員会の承認を得て実施した(承認番号mm022-01).

Ⅴ. 結果

1. 対象者の特性

研究対象者24名の臨床経験年数,修了した看護基礎教育課程,就業病院の特性等,背景は多様であった(表1).また面接は,21名の面接終了後,さらに3名を対象として面接を実施し,得られた回答に性質の異なる新たな回答内容が認められないことを確認した.

表1 対象者の背景

n = 24(%)

項目 項目の種類及び度数
年齢 平均24.1歳(範囲21~27歳/SD = 1.64)
性別 男性 3名 (12.5%) 女性 21名 (87.5%)
臨床経験年数 1年以上2年未満 10名 (41.7%) 3年以上4年未満 1名 (4.2%)
2年以上3年未満 8名 (33.3%) 4年以上5年未満 5名 (20.8%)
修了した看護基礎教育課程 大学 15名 (62.5%) 短期大学(3年制) 1名 (4.2%)
専門学校(3年制) 7名 (29.2%) 高等学校専攻科 1名 (4.2%)
就業病院の所在地域 北海道・東北 2名 (8.3%) 近畿 5名 (20.8%)
関東・甲信 3名 (12.5%) 中国・四国 3名 (12.5%)
北陸・東海 9名 (37.5%) 九州 2名 (8.3%)
就業病院の設置主体 4名 (16.6%) 医療法人 7名 (29.2%)
公的医療機関 13名 (54.2%)
就業病院の病床数 99床以下 1名 (4.2%) 500以上599床以下 4名 (16.6%)
100以上199床以下 2名 (8.3%) 600以上699床以下 6名 (25.0%)
200以上299床以下 4名 (16.6%) 700以上799床以下 2名 (8.3%)
300以上399床以下 0名 (0.0%) 800床以上 1名 (4.2%)
400以上499床以下 4名 (16.6%)
対象看護師の所属する看護単位 混合病棟 9名 (37.5%) 小児科病棟 2名 (8.3%)
内科系病棟 5名 (20.8%) ICU・HCU病棟 2名 (8.3%)
外科系病棟 2名 (8.3%) 外来部門 1名 (4.2%)
精神科病棟 2名 (8.3%) 手術室 1名 (4.2%)

注:%は小数点第2位を四捨五入している

2. 個別分析の結果

24名が捉えた先輩看護師の指導を表す記録単位数は最小7記録単位,最大46記録単位であり,記録単位総数は530記録単位であった.

3. 全体分析の結果

1) 経験年数1年以上5年以下の看護師が効果的であると知覚する先輩看護師の指導

分析対象である530記録単位を意味内容の類似性に基づき分類した結果,対象看護師が効果的であると知覚する先輩看護師の指導を表す24カテゴリが形成された(表2).以下,カテゴリを記録単位数の多い順に論述する.なお,【 】内は各カテゴリ,〈 〉内はカテゴリを形成した記録単位数とそれが記録単位総数に占める割合,「 」内は抽出された記録単位を,結果に用いた「自分」は対象看護師,「自身」は先輩看護師を示す.

表2 対象看護師が効果的であると知覚する先輩看護師の指導

カテゴリ 記録単位数(%)
1.看護業務遂行に向け,必要な知識・技術・態度およびそれらを補う内容・方法を伝える 102(19.3)
2.看護業務や学習に対する不足および看護業務が難航した原因・疑問に対する要点・解決方法を伝える 71(13.4)
3.未経験の看護業務の実施に先立ち,自分の看護業務の修得状況に応じて,必要な内容・方法を一緒に学習する 40(7.6)
4.実施した看護業務を振り返り,思考の不足を補う機会を作る 36(6.8)
5.看護学生・新人看護師・後輩看護師への具体的な指導方法・関わり方を提案する 31(5.9)
6.未経験の看護技術の実施に先立ち,スタッフと情報共有し,実施に向けた計画・業務調整を行う 24(4.5)
7.業務への不安と難航・失敗内容,役割への負担に自身の経験を踏まえた言葉をかける 22(4.2)
8.業務を抱え込まず,自分および新人看護師を守るために,医療従事者と協働する必要性と重要性を伝える 22(4.2)
9.根拠ある発言と看護業務の成果に対する称賛を伝える 19(3.6)
10.看護業務に対し,質問しやすい雰囲気を作るとともに,自分の思考した内容を聞く時間を作る 18(3.4)
11.看護業務の進捗状況の確認とともに,その代行・補助を行う 18(3.4)
12.自分の能力に合わせて看護業務を主体的に遂行できるよう導く 18(3.4)
13.業務の効率よりも患者の気持ちや安全を第一に考える意義を伝える 17(3.2)
14.チームの一員として身につけてほしい能力・行動・業務を遂行する方法を伝える 15(2.8)
15.リーダーの役割・責任の自覚を伝える 15(2.8)
16.看護師としての責務を果たす行動および謝意を表明する意義を伝える 13(2.5)
17.新人看護師終了の自覚とともに,看護技術の習得を目指し自ら行動する必要性を伝える 12(2.3)
18.リーダー・スタッフ看護師と情報を共有し,業務の難航を見越して補助を要請することを伝える 8(1.5)
19.特定の患者・家族への看護技術を一緒に考える 7(1.3)
20.先輩看護師個々の特徴・対応方法を伝える 6(1.1)
21.患者の観察とアセスメント,難航した業務を一緒に実施する 6(1.1)
22.自分の研修計画・年間目標を一緒に考える 5(0.9)
23.研修の課題に対する自分の考えを整理する 3(0.6)
24.看護技術の確認を自身が一緒にできない場合にスタッフを紹介する 2(0.4)
記録単位総数 530(100.2)

注:%は小数点第2位を四捨五入した合計のため100%にならない

【1.看護業務遂行に向け,必要な知識・技術・態度およびそれらを補う内容・方法を伝える】〈102記録単位:19.3%〉は,「看護基礎教育では学習していない拘束の実施方法を伝える」「患者の経過や医師の記録から情報収集することを伝える」「受け持ち患者の退院調整に必要な用具を伝える」「重症患者の状態を理解するために関連図を書くことを提案する」等から形成された.

【2.看護業務や学習に対する不足および看護業務が難航した原因・疑問に対する要点・解決方法を伝える】〈71記録単位:13.4%〉は,「患者の観察項目の不足している内容を伝える」「実施した学習内容のノートにコメントを書き込む」「点滴静脈注射の滴下速度の調整を上手く実施できない原因を踏まえた対応策を伝える」「実施した手術の直接介助に対する具体的な改善方法を伝える」等から形成された.

【3.未経験の看護業務の実施に先立ち,自分の看護業務の修得状況に応じて,必要な内容・方法を一緒に学習する】〈40記録単位:7.6%〉は,「未経験の手術療法後の管理について学習した内容への追加を提案する」「未経験の看護技術を実施する前に,先輩看護師が実施した技術の見学内容を一緒に振り返る」等から形成された.

【4.実施した看護業務を振り返り,思考の不足を補う機会を作る】〈36記録単位:6.8%〉は,「実施した術前訪問の振り返りを踏まえて不足を補う質問をする」「患者の急変時の対応を踏まえて次回の行動に生かせるように振り返る機会を作る」等から形成された.

【5.看護学生・新人看護師・後輩看護師への具体的な指導方法・関わり方を提案する】〈31記録単位:5.9%〉は,「看護学生に好評だった説明内容を伝える」「優先順位を考えることができる新人看護師への指導として見守るように伝える」「後輩看護師への関わり方を提案する」等から形成された.

【6.未経験の看護技術の実施に先立ち,スタッフと情報共有し,実施に向けた計画・業務調整を行う】〈24記録単位:4.5%〉は,「未経験の看護技術の修得状況を踏まえて実施できるように計画を立てる」「未経験の処置のある患者を受け持てるように他スタッフと業務を調整する」等から形成された.

【7.業務への不安と難航・失敗内容,役割への負担に自身の経験を踏まえた言葉をかける】〈22記録単位:4.2%〉は,「患者対応が上手くいかなかった経験を自身も同様に経験したことの具体例を基に話す」「新人看護師のサポーターとしての負担を確かめる言葉をかける」等から形成された.

【8.業務を抱え込まず,自分および新人看護師を守るために,医療従事者と協働する必要性と重要性を伝える】〈22記録単位:4.2%〉は,「自分の身を守る行動として医師に報告することを伝える」「新人看護師とペアを組み,混乱した時に他スタッフへ助けを求めて良いことを伝える」「医師,他スタッフ,入退院支援部門のスタッフとコミュニケーションをとる重要性を伝える」等から形成された.

【9.根拠ある発言と看護業務の成果に対する称賛を伝える】〈19記録単位:3.6%〉は,「自身の意見と違っても発言内容に根拠がある時は肯定する」「実施した術前訪問の内容についてできていることを褒める」等から形成された.

【10.看護業務に対し,質問しやすい雰囲気を作るとともに,自分の思考した内容を聞く時間を作る】〈18記録単位:3.4%〉は,「受け持ち患者の退院調整について質問しやすい雰囲気を作る」「業務に対して悩んでいることの話を聞く時間を作る」等から形成された.

【11.看護業務の進捗状況の確認とともに,その代行・補助を行う】〈18記録単位:3.4%〉は,「手伝える業務がないか言葉をかける」「滞っている血糖測定を引き受ける」「リーダー業務を行っている時に業務を補助する」等から形成された.

【12.自分の能力に合わせて看護業務を主体的に遂行できるよう導く】〈18記録単位:3.4%〉は,「自分の特性を踏まえて導く」「人工呼吸療法の管理が必要な患者の対応を次回から主体的に考えられるように導く」等から形成された.

【13.業務の効率よりも患者の気持ちや安全を第一に考える意義を伝える】〈17記録単位:3.2%〉は,「看護師の判断だけでなく食事提供に対する患者の気持ちを確かめることを伝える」「緊急時ブラッドアクセス留置用カテーテルの挿入時に患者へ状況を説明する意義を伝える」等から形成された.

【14.チームの一員として身につけてほしい能力・行動・業務を遂行する方法を伝える】〈15記録単位:2.8%〉は,「チームの一員として身につけてほしい能力を伝える」「自分の担当業務ではない処置の準備に気づいた際には準備することが他スタッフの手助けになると伝える」等から形成された.

【15.リーダーの役割・責任の自覚を伝える】〈15記録単位:2.8%〉は,「リーダー業務を行う時には他スタッフの状況を把握するために言葉をかけるように伝える」「リーダーとしての責任を持つように伝える」等から形成された.

【16.看護師としての責務を果たす行動および謝意を表明する意義を伝える】〈13記録単位:2.5%〉は,「看護師として安全確認を行うことにより給料が支払われると伝える」「謝罪の言葉よりも感謝の言葉を言うように伝える」等から形成された.

【17.新人看護師終了の自覚とともに,看護技術の習得を目指し自ら行動する必要性を伝える】〈12記録単位:2.3%〉は,「新人看護師とは違い未経験の検査を実施したい時に自分から発言しないと他スタッフに気づいてもらえないことを伝える」「新人看護師1年目の終了を自覚しているか確かめる言葉をかける」等から形成された.

【18.リーダー・スタッフ看護師と情報を共有し,業務の難航を見越して補助を要請することを伝える】〈8記録単位:1.5%〉は,「業務の進捗状況を他スタッフと共有するように伝える」「業務が滞る前にリーダー看護師へ助けを求めるよう伝える」等から形成された.

【19.特定の患者・家族への看護技術を一緒に考える】〈7記録単位:1.3%〉は,「人工呼吸療法の管理が必要な患者の薬剤以外の鎮静方法を一緒に考える」「患者の家族を含めた退院調整の関わり方を一緒に考える」等から形成された.

【20.先輩看護師個々の特徴・対応方法を伝える】〈6記録単位:1.1%〉は,「先輩看護師個々の良いところを伝える」「先輩看護師への対応方法としてマニュアルに沿って進めることを伝える」等から形成された.

【21.患者の観察とアセスメント,難航した業務を一緒に実施する】〈6記録単位:1.1%〉は,「人工呼吸療法の管理が必要な患者の鎮静評価を一緒に実施する」「リーダー業務をうまく遂行できなかった時にリーダー業務をもう一度一緒に行う」等から形成された.

【22.自分の研修計画・年間目標を一緒に考える】〈5記録単位:0.9%〉は,「1年間の目標を考える機会を作る」「研修にて受け持ちたい患者を一緒に考える」等から形成された.

【23.研修の課題に対する自分の考えを整理する】〈3記録単位:0.6%〉は,「ケースレポートのテーマに対する自分の考えを,発言内容を踏まえて整理する」等から形成された.

【24.看護技術の確認を自身が一緒にできない場合にスタッフを紹介する】〈2記録単位:0.4%〉は,「実施した手術の直接介助の振り返りを自身が一緒にできない場合は他スタッフを紹介する」等から形成された.

2) カテゴリの信頼性

看護学研究者2名によるScott, W. A.の計算式を用いて算出したカテゴリ分類の一致率は,両名ともに79.4%であった.

Ⅵ. 考察

1. データの適切性

本研究は,対象者が多様な背景を持つ看護師から構成され,データが飽和化したことを確認した.これは,24名の対象者への面接によって得られたデータが飽和化に至ったことを示した.また,Scott, W. A.の計算式を用いて算出したカテゴリ分類の一致率は70%以上の場合,信頼性を確保していると判断できる(舟島,2018).本研究は,一致率が79.4%であり,カテゴリが信頼性を確保していることを示した.

2. 経験年数1年以上5年以下の看護師が効果的であると知覚するOJTとして提供される先輩看護師の指導の特徴

24カテゴリの記録単位や関係性等を文献と照合,考察した結果,先輩看護師の指導は,6項目の特徴を持つことが推測された.以下,これら特徴を述べる.

第1に着目したのは,【1】【2】の2カテゴリ(計173記録単位)である.これらは,対象看護師の能力向上に向けた知識・技術・態度を伝授しているという先輩看護師の指導であった.またこの2カテゴリは,記録単位総数の32.8%に該当する合計173記録単位から形成された.

平方ら(2018)は,経験年数6年未満の看護師が,表面化されにくい患者・家族のニードを考慮した看護の重要性を説明する,実践の改善に向けた示唆を提示する,根拠に基づき日々実践するケアの方法を説明する等の先輩看護師の指導を看護実践向上につながったと知覚したことを解明した.本研究の結果の【1】【2】は,先行研究と類似した結果となっており,多くの対象看護師が新たな知識・技術・態度や不足している看護実践能力を補うため,先輩看護師から更なる能力獲得に向けた知識・技術・態度の伝授を効果的と知覚し,求めていることを示唆する.

また,【2】の指導は,【1】よりも高次の内容であり,先輩看護師が対象看護師のレディネスを踏まえ,知識を獲得していると判断し,知識と実践を結びつけられるよう,思考を補うOJTを実施していた可能性を示す.Bloomの教育目標分類学は,低次目標があくまで高次目標の必要条件となる特徴を持っており(舟島,2020),【2】の指導は,先輩看護師の指導目標が単に知識の獲得から知識を応用する能力の獲得へと向上し,先輩看護師が対象看護師の学習ニードに合わせた指導を実施していた可能性を示す.

第2に着目したのは,【3】【4】【6】【10】【11】【12】【19】【21】【24】の9カテゴリ(計169記録単位)である.これらは,対象看護師の知識・技術・態度の修得に向け,先輩看護師自らが,対象看護師の学習機会や活動を支援できるよう行動しているという先輩看護師の指導であった.

新人看護師は,新人看護職員研修ガイドライン(以下,ガイドライン)(厚生労働省,2014)に基づき,実践的能力を獲得できるように指導を受ける.このガイドラインが示す実践的能力は,「基本姿勢と態度」「技術的側面」「管理的側面」の3構造に分類される.そのうち「技術的側面」は,全70項目のチェックリストにて構成され,到達時期を40項目が1年以内,30項目が各施設に一任されている.本研究は,対象看護師が支援を求めている看護業務とこのチェックリストの項目が一致するかを調査していないが,【3】【6】を形成した記録単位は対象看護師が未経験であることを述べており,実践的能力を獲得できていない現状を示した.これは,対象看護師が未経験の看護業務に対し,先輩看護師の主体的な支援を効果的と知覚しており,各施設に一任された30項目のみならず,未経験の看護技術の修得に向けた継続的指導の必要性を示唆する.

平方ら(2018)は,前述した結果に加え,①困難な実践の原因とその改善点を一緒に考える,②経験や技術の修得の程度に応じた実践経験の機会を設ける,③困難な実践の最中に緊張を和らげる言葉をかけるという指導を看護実践向上につながったと知覚したことを解明した.また,長岡・亀岡(2014)は,新人看護師が④指導や補助を通して対応しきれない業務の進行を助ける,⑤能力を考慮し業務量や業務内容を調整する,⑥状況を気遣う言葉をかけ支援の必要性を確認する,⑦心情を吐露する機会をつくるという先輩看護師の行動を支持的と知覚したことを解明した.本研究の結果である【12】【19】【21】【24】は,先行研究の①と②の結果と類似しており,対象看護師が先輩看護師と共に看護業務を実施する機会を求めていることを示唆する.また,【11】は,対象者が異なるが先行研究の④と⑤の結果と類似しており,対象看護師が対応しきれない看護業務の代行を求めていることを示唆するとともに,看護実践能力の「リーダーシップとマネジメント能力」の修得を支援する指導であったといえる.さらに,【4】【10】は,対象者が一部異なるが先行研究の③,⑥,⑦と類似しており,対象看護師が先輩看護師から言葉をかけ,対話する機会を求めていることを示唆する.

第3に着目したのは,【5】【8】【14】【15】【18】【20】の6カテゴリ(計97記録単位)である.これらは,チームの一員としての役割を対象看護師に伝授しているという先輩看護師の指導であった.

﨑山・グレッグ(2018)は,リーダー看護師が仕事を円滑に実施するための準備やメンバーの進行状況を確認する,互いの仕事をフォローし合うことや割り振られた仕事に関わらず臨機応変に対応する,自分の状況を他メンバーに伝えチームで情報を共有する,多職種との連携活動を通してチームワークを学習する,予定外の出来事が起こった時にチームで対応できる等を良いチームワークと捉えていたことを解明した.本研究の結果である【8】【14】【18】【20】は,対象看護師がチームの一員であることを自覚し役割を遂行するための先輩看護師の指導を効果的と知覚しており,先行研究が示す良いチームワークと捉える先輩看護師の行動と類似していることを示唆する.

また,木村・富永(2020)は,メンバーへの教育的関わりとして,リーダー看護師が理解度の確認や根拠の説明を行う時間の確保,経験や価値観が異なるメンバーとのコミュニケーション,短い臨床経験年数や知識不足による自信のなさを困難感として抱くことを解明した.本研究の結果である【5】【15】は,対象看護師がリーダーのみならず,看護学実習や新人・後輩看護師の指導等,与えられた役割に対する具体的行動を伝授する先輩看護師の指導を効果的と知覚しており,先行研究が示す困難感を同様に抱き,それを軽減する指導として効果的であることを示唆する.

第4に着目したのは,【7】【13】の2カテゴリ(計39記録単位)である.これらは,対象看護師に自身の経験と看護観を伝授しているという先輩看護師の指導であった.

畑中・伊藤(2016)は,①経験年数5年以上の看護師が先輩看護師への相談・助言を自分に取り込むことにより看護の考え方を広げる一助となったことを解明した.また,木寺・長井(2018)は,他の看護師の看護に対する語りが,聴き手となった看護師側の看護観や看護実践にどのような影響が生じているかを解明した.その結果,②朝礼時に看護の語りを聴く時間を設け,その語りを聴いた経験年数3年以上6年以下の看護師が,患者の話を聞く時間の重要性や患者のケアの必要性を再認識し,患者に安楽・安心を与えるような態度や環境を作る行動につながったことを解明した.また,語りを聞いた看護師が,看護師としての患者,家族との関わりを考えるきっかけにもなったことも明らかにした.本研究の結果である【7】は,対象者が異なるが先行研究の①の結果と類似しており,先輩看護師の助言が対象看護師の看護観に影響したことを示唆する.また,【13】は,看護を語った看護師を先輩看護師と限定していないが,先行研究②と類似しており,先輩看護師の語りを聴いた対象看護師が自分の看護を考えるきっかけ,すなわち看護観の形成の一助になったことを示唆する.

第5に着目したのは,【16】【17】【22】【23】の4カテゴリ(計33記録単位)である.これらは,対象看護師に自律的行動を自覚するよう促しているという先輩看護師の指導であった.

経験年数1年以上2年以下の看護師を対象とした先行研究は,対象者が責任感と自律心の芽生え,主体的な行動への変化を体験し(内野ら,2017),同期看護師と看護実践の語りを共有することを通して,状況や周囲の様子をよく勘案し,自信を持てないながらも自ら発信する役割を認識している(杉田ら,2018)ことを解明した.これらは,新人期以降の看護師が主体的な行動を自ら取ろうと自覚し始め,周囲の状況を把握し,発信する役割を果たそうとする時期にあることを示す.本研究の結果は,自律的行動を促す先輩看護師の指導を効果的と知覚しているが,主体的な行動を自ら取ろうと自覚しているかは明らかにできていない.しかし,【16】【17】【22】【23】を形成した記録単位は,対象看護師が先行研究の示す主体的な行動や自身の役割を自覚する時期にある一方,その時期への移行期にあり,個々人のレベルに差が生じている可能性を示す.また,これは,先輩看護師が対象看護師個々のレディネスを把握し,個々のレベルに応じた自律的行動の伝授や思考を導く指導を行う必要性を示唆する.

第6に着目したのは,【9】(19記録単位)である.これは,対象看護師の成果を承認・称賛しているという先輩看護師の指導であった.

塚本・舟島(2008)は,経験年数1年以上3年未満の看護師が,新人時代に得た肯定的評価から,自信や成長,発達を実感し就業継続できたことを,大川ら(2004)は,新人看護師のできたことを認める,褒める,任せる,言いたいことを聞くという先輩看護師の行動が新人看護師の自信と意欲向上につながったことを解明した.本研究の結果である【9】は,先行研究とは対象が異なるが類似しており,対象看護師ができていることを認める,褒めるという指導を効果的と知覚していることを示唆する.

また,対象看護師は,先輩看護師が自身の意見と異なる場合に肯定することを効果的と知覚していた.これは,大川ら(2004)が示す新人看護師の言いたいことを聞く先輩看護師の行動の中に,肯定する行動が含まれている可能性を示す.これは,先輩看護師が対象看護師の自発的,主体的であろうとする心理的欲求に応える行動であり,成人学習者である対象看護師の求める指導であることを示唆する.

3. OJTの充実に向けた示唆

本項では,前項にて考察した先輩看護師の指導の特徴6項目とOJTの概念規定に用いた構成要素を照合し,構成要素の視点からOJTの充実に向けて考察する.

第1に,OJTの目的である熟練技術の修得あるいは実践的能力の獲得を目指す教育に着目した.前項に示した特徴6項目のうち,第5の特徴は熟練技術の修得,第1,第2,第3の特徴は実践的能力の獲得である.これら特徴からOJTの目的を充実させるためには,先輩看護師が対象看護師の経験や学習のプロセス,レディネスを聴取し,今ある学習ニードを把握する必要性を示唆する.また,第2の特徴は,先輩看護師が未経験の看護技術修得に向け,対象看護師の現在の修得状況のみならず,看護単位の配置転換後もガイドラインのチェックリストを活用することにより継続的指導を実施できる可能性を示す.

第2に,OJTの方法である職務と指導の並進に加え,個別の状況に即した指導に着目した.前項に示した特徴6項目のうち,第1,第3,第5の特徴は伝授すること,第2,第4の特徴は直接的な支援を行うこと,第6の特徴は承認・称賛することである.これら特徴からOJTの方法を充実させるためには,先輩看護師が対象看護師個々人の状況に合わせた指導方法の選択,すなわちOJTの目的を踏まえた教材や方法を検討し,実施する必要性を示唆する.

第3に,OJTの教授者である先輩看護師に着目した.先輩看護師は,前項に示した特徴全6項目を実施する指導者として,自発的・主体的であろうとする対象看護師の心理的欲求に応える指導の実施を求められる.King(1981/1985)は,相互行為を「人間と環境,ならびに人間と人間の間の知覚とコミュニケーションのプロセスであると定義し,目標をめざす言語的もしくは非言語的行動という形で示される」としている.これは,教授者の能力を向上させるために,先輩看護師が対象看護師の心理的欲求に応える指導の実施に向け,目標達成に向けたコミュニケーションを充実するよう,相互行為を意識する必要性を示唆する.

第4に,OJTが行われる場所である所属部署内に着目した.第1から第3までの考察を通して,OJTの充実に向けて,OJTの「教授者」が「目的」を踏まえて「方法」を検討し,実施する必要性を示した.これは,先輩看護師が対象看護師を理解しようとする姿勢を持ち,対象看護師と対話する時間を確保し,一緒に方法を検討することができる場として所属部署内の環境を整備する必要性を示唆する.

4. 研究の限界と今後の課題

本研究は,対象看護師を所属部署や経年別に細分化してデータ収集・分析を行っていない.対象者の特性を踏まえた分析の実施は,更なるOJTにおける指導の充実に向けた今後の課題である.

Ⅶ. 結論

1.本研究は,対象看護師が効果的であると知覚する先輩看護師の指導を表す24カテゴリを解明し,考察を通して,先輩看護師の指導の特徴6項目を見出した.

2.本研究は,先輩看護師が,対象看護師の学習ニードを把握すること,対象看護師個々人の状況に即した指導方法を選択すること,対象看護師との相互行為を意識すること,対象看護師と一緒に方法を検討する場を作ることを実施することにより,OJTの充実につながるという示唆を得た.

付記:本研究は,新潟県立看護大学大学院看護学研究科修士論文に加筆・修正したものである.また,本研究の一部は,第33回日本看護教育学学会学術集会において発表した.

謝辞:本研究にご協力いただきましたすべての皆様に深く感謝申し上げます.

利益相反:本研究における利益相反は存在しない.

著者資格:山田は,研究の着想・計画,データ収集・分析,結果,考察,論文作成まで,研究全体に貢献した.岡村は,計画,データ分析,結果,考察,論文作成に関する研究プロセス全体の助言を行った.著者全員が最終原稿を読み,承認した.

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