日本看護科学会誌
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原著
医療的ケア児の児童発達支援等の利用に対する母親の認識の構造
林 恵飯田 苗恵反町 真由斎藤 基
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2026 年 46 巻 p. 400-411

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Abstract

目的:医療的ケア児の児童発達支援等の利用に対する母親の認識の構造を明らかにする.

方法:児童発達支援等の利用を経験した医療的ケア児の母親10人に半構造化面接を行い,KJ法で分析した.

結果:母親の認識には,【就学を見据え親子とも負担なく楽しく安全に通える所がいい】【働けるように預け先を探すことが難しい】【簡便な手続きと理解ある相談先が得難い】があった.母親は親子にとって適切な利用先を模索する一方で,働けるよう預け先を探すことや相談手続きに困難さを抱えていた.

結論:児童発達支援等の利用を希望する母親が円滑に利用できる環境を整えるには,在宅生活を支援する看護職が身近な相談者として親子にとって適切な利用先や働けるような支援体制を考慮しながら思いを聴き,母親が相談しやすいよう関係機関と円滑な連携を図る必要性が示唆された.

Translated Abstract

Objective: This study aimed to clarify the structure of mothers’ perceptions regarding the use of child development support services for children requiring medical care.

Methods: Semi-structured interviews were conducted with 10 parents of children requiring medical care who had used child development support services. Results were analyzed using the KJ method.

Results: Mothers’ perceptions included the following [looking for services that are enjoyable, safe and stress-free for both mothers and children, with an eye toward starting school] [finding it difficult to locate services that would allow them to work] and [having difficulty obtaining simple procedures and supportive consultation services]. While mothers were seeking appropriate services for themselves and their children, they experienced difficulties in finding services that would allow them to work and in navigating the necessary consultation procedures.

Conclusion: To create an environment in which mothers who wish to use child development support services can access them smoothly, it was suggested that nurses supporting families at home listen to mothers’ thoughts while considering appropriate services for both mothers and children, as well as support systems that enable mothers to work, and facilitate collaboration between relevant institutions and mothers so that mothers feel comfortable seeking consultation.

Ⅰ. 緒言

わが国では2019年時点で在宅生活を送る医療的ケア児が2万人を超えている(厚生労働省,2021a).こうした医療的ケア児とその家族を社会全体で支えるため,2021年に「医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律」が施行された.法律の目的には,医療的ケア児の健やかな成長を図ることや家族の離職防止があり,就学前の医療的ケア児においては,障害児通所支援や保育所等の社会生活の基盤整備(厚生労働省,2023)が取り組みの一つに挙げられる.保育所等(保育所,幼稚園,認定こども園)および児童発達支援(合わせて以下,児童発達支援等)には,併行利用など多様な利用形態がある.就学前の医療的ケア児がこれらのサービスを活用することで,幼児期に相応しい社会生活を経験することが可能となる.また,在宅での主なケアの担い手は母親であり(みずほ情報総研株式会社,2016厚生労働省,2020),心身の負担が大きい現状が指摘されている(宮﨑ら,2021小嶋ら,2023).医療的ケア児の母親の就労率は,荒木ら(2019)の調査で42.7%と一般女性の就労率と比較しても低い状況にあり,児童発達支援等の利用は母親の心身の健康保持に寄与するとともに,就業継続を支え,離職防止にも繋がると考えられる.したがって,医療的ケア児および母親の双方にとって有益な児童発達支援等が,より利用しやすい環境で整備されることが望ましいと考える.

児童発達支援の利用者数は,2014年度から5年間で3.3倍(厚生労働省,2021c)に増加しているものの,大槻ら(2021)の調査では全国の児童発達支援のみを運営する施設および放課後等デイサービスと児童発達支援の両方を運営する施設133か所のうち,医療的ケア児を受け入れているのは28.9%であった.また,厚生労働省の調査では全国の855市町村のうち保育所等で医療的ケア児を受け入れているのは22.3%(厚生労働省,2021b)と,受け入れ可能な施設は少ない.このような状況では,母親は子どもの健康状態や就労の希望に応じた通所先を自由に選択できず,利用が難しいと考える.

さらに,受入体制が整っている場合であっても,自ら社会と壁を作る(小嶋ら,2023)母親や,他者によるケアの方法が自分の思い通りにいかないため我が子のケアを人に頼めない(宮﨑ら,2021)と感じる母親もいる.医療的ケア児の母親は障害のある子どもを自分で育てなければならないという自責の念や個別性の高い医療的ケアを他者に任せることへの不安から,児童発達支援等の利用を考えていたとしてもためらう場合もあると推察する.

児童発達支援等は医療的ケア児と母親のニーズに応じた利用が重要であると考える.そのため,サービス導入を検討する中で抱える母親の不安や悩みを軽減できるよう支援する必要があると考える.健康課題を有する医療的ケア児のサービス利用については,訪問看護師・保健師・通院先の看護師といった在宅生活を支援する看護職に相談する可能性が高い.したがって,これらの看護職はサービス導入を検討する母親への支援に寄与できると考えられる.

医療的ケア児の母親は療育で疲労(宮﨑ら,2021小嶋ら,2023)が蓄積し,レスパイトケアの必要性を感じている(Sobotka et al., 2019).障害児通所支援事業所の利用により子どもの成長を感じる(伊藤ら,2018)との報告もある.先行研究では母親の負担軽減や子どもの発達促進といった児童発達支援等の効果や必要性に焦点が当てられてきた.一方で,母親が児童発達支援等をなぜ利用しようと考えたのか,利用にあたって何を期待し,どのような不安を感じていたのかといった認識を捉えた報告はない.サービス利用を考える母親への支援の在り方を検討するためには,こうした母親の認識の全体像を理解する必要があると考える.

母親の認識は,児童発達支援等の利用への期待や希望,不安や抵抗感など多様で混沌としていることが予想される.そこで,本研究の目的は,実際に児童発達支援等の利用に至った母親が利用前にどのような認識を持っていたのか,その認識の要素と構造を明らかにする.これにより,医療的ケア児の在宅生活を支援する看護職による児童発達支援等の利用を検討する母親への支援の示唆が得られると考える.

Ⅱ. 用語の定義

1. 医療的ケア児の母親

日常生活及び社会生活を営むために恒常的に人工呼吸器による呼吸管理,喀痰吸引,在宅酸素療法などを受けることが不可欠である児の血縁関係のある母親とする.

2. 認識

認識は対象を一つの統一体として捉えようとするわれわれの意識の活動,あるいはそのような活動によって得られた内容(木田ら,1994)であることから,児童発達支援等の利用をどのように考えたか,感じたか,どのようにしたかったかに関する質問に対して,母親が表現したことの全てとする.

3. 構造

母親が表現したことの全てを構成する要素の相互的関係(新村,2018)性とする.

Ⅲ. 研究方法

1. 研究デザイン

因子探索的研究であり,質的記述的研究デザインとした.

2. 研究対象者の条件と募集方法

研究対象者は,自治体ごとの子育て支援や障害福祉に関する社会資源の違いを考慮して,A県内の6市町村に在住する児童発達支援等の利用経験を有する医療的ケア児の母親とした.なお,多様な認識を得るため,母親の年齢や性別は問わないこととした.また,研究対象者が児童発達支援等の利用に対してどのような認識を持っていたのかを想起しやすいよう,児童発達支援等の利用を開始した時期は,過去5年以内とした.

研究対象者の募集は,研究者が以前の研究で協力を得たA県内の訪問看護ステーション管理者から研究対象者に該当する医療的ケア児の母親の紹介を受けた.その後は,研究対象者からの雪玉式標本抽出法により募集した.また,インターネットで医療的ケア児の受入を行っている児童発達支援等の事業所を検索し,施設管理者へ直接電話をかけ研究概要を説明して研究対象者に該当する医療的ケア児の母親の紹介を受けた.

3. データ収集方法

データ収集は半構造化面接法により,基本属性とインタビューガイドを用いて①児童発達支援等の利用前に利用に対して考えていたこと②利用するまでの過程で感じたこと③どのようにしたかったのかについて自由に語ってもらった.面接は,研究対象者の希望に添って研究対象者の自宅,公共施設,オンライン会議システムのいずれかで,60分程度行った.データの不足や確認を要した場合は,研究対象者の同意を得て,電話で確認を行った.インタビューガイドの内容的妥当性や答えやすさを検討するため,了解の得られた研究対象者1人にパイロットスタディを行った.本調査と同様の倫理的配慮を行い,インタビュー内容に大幅な修正を要しなかったため,本調査のデータとして加えた.

4. データ収集期間

データ収集期間は,2023年7月から2023年11月であった.

5. 分析方法

本研究は,医療的ケア児が児童発達支援等を利用することに対する母親の認識の要素とその構造を明らかにするため,混沌とした問題の構造を捉えることができるKJ法(川喜田,1967, 1970)に基づき分析した.研究対象者の各々の抱える状況から生じる認識を分析するため,研究対象者別に分析を行った.そのうえで,研究対象者別の分析で抽出されたデータを基に統合分析を行った.研究対象者ごとに逐語録から真に言わんとしたエッセンスを書き出した元ラベルを作成した.元ラベルを精読し,本質同士の親近性で元ラベルを集めグループを編成し,グループの意味内容を端的かつ具体的に表現する一行見出しを付けた表札を作成した.グループ編成では,「一匹狼」と呼ぶ一枚のまま残る元ラベルが出てくるが,どこかのグループに無理やり押し込むことはせず,表札同士の類似性によるグループ編成を行い,新たな表札を付ける作業をグループがまとまらなくなるまで繰り返した.研究対象者別の分析における最終段階の表札は,各々の状況が分かる表現とした.統合分析は,研究対象者別の分析により抽出された最終段階の表札を全て集めて元ラベルとし,上記のグループ編成の手順を行った.表札の訴える内容が,意味の上で最もわかりやすい相互関係となる位置に配置し,一段目から順次,最高段階まで各グループを島のように線で囲む島どりを行い,最終段階の表札を要素とした.島(要素)と島(要素)の関連付けは,関係を的確に示す記号を用いて表記し,図解化した.構成する要素の関係性については,順序性を持った適切なストーリーとなるよう文章化(叙述化)した.

6. 分析の信頼性の確保

分析は,川喜田研究所の委託を受けたKJ法の研修機関による研修を受け行った.一連の分析過程は,KJ法の研究指導経験がある共同研究者2人の確認により信頼性を確保した.さらに,研究協力者1人に該当する研究協力者別の分析結果および全体の統合分析結果を提示し,メンバーチェッキングを実施した.

Ⅳ. 倫理的配慮

本研究は,群馬パース大学研究倫理審査委員会の承認(PAZ23-13)を得て実施した.

訪問看護ステーションと児童発達支援等の各施設管理者に文書と口頭で研究概要を説明した.同意が得られた管理者に研究対象者となり得る医療的ケア児の母親への強制力を排除した説明を依頼し,内諾の得られた医療的ケア児の母親の紹介を受けた.改めて研究対象者には,文書と口頭で研究概要を説明し,文書で同意を得た.本研究への参加は,研究対象者の自由意思に基づくものであるため,紹介を受けた管理者には研究対象者が研究参加に応じたのかは報告しなかった.

Ⅴ. 結果

1. 研究対象者の特性(表1

研究対象者はA県内の訪問看護ステーション,児童発達支援事業所等から紹介を受けた10人であった.児童発達支援等の利用開始時における子どもの年齢は1~4歳であり,必要な医療的ケアは胃瘻と経鼻胃管を含めた経管栄養法が6人,在宅酸素療法が4人,気管切開が3人などであった.母親の就業状況は無職者が5人,有職者が5人であった.無職の母親の中には,育児休業中に通所先が見つからず退職した者が2人含まれていた.利用した事業所形態は,児童発達支援センターが2人,児童発達支援事業所が4人,認定こども園が3人,児童発達支援事業所と保育所の併行通園が1人であった.面接時間は,41~117分で,平均59.3分であった.

表1 研究対象者の特性

研究
対象者
子どもの年齢
(利用開始時/調査時)
必要な
医療的ケア
母親の就業状況 施設形態
A 4歳/6歳 在宅酸素 児童発達支援事業所
B 1歳/2歳 NPPV(夜間)
胃瘻
在宅酸素
吸引・吸入
児童発達支援事業所
保育所
C 1歳/6歳 経鼻経管栄養
(通所先が見つからず退職)
児童発達支援センター
D 2歳/7歳 胃瘻
気管切開
吸引
児童発達支援センター
E 1歳/5歳 在宅酸素 児童発達支援事業所
F 2歳/6歳 経鼻経管栄養
在宅酸素

(通所先が見つからず退職)
児童発達支援事業所
G 1歳/2歳 経鼻経管栄養
浣腸
児童発達支援事業所
H 1歳/1歳 人工肛門 認定こども園
I 3歳/5歳 気管切開
吸引
認定こども園
J 2歳/6歳 気管切開
胃瘻
認定こども園

※NPPV(non-invasive positive pressure ventilation / 非侵襲的陽圧換気療法)

2. 医療的ケア児の児童発達支援等の利用に対する母親の認識の要素

研究対象者別の分析では3枚ずつの最終表札が抽出され,合計30枚の表札を元ラベルとして統合分析を行った.その結果,【就学を見据え親子とも負担なく楽しく安全に通える所がいい】【働けるように預け先を探すことが難しい】【簡便な手続きと理解ある相談先が得難い】の3つの要素に統合された.各認識の要素について,以下に説明する.

結果の表記は,最終表札を【 】,下位の表札を《 》,元ラベルを〔 〕で示した.語りの例は「 」で示し,斜体で記述した.なお,補足説明は( )内に記述し,語りの最後にある( )のアルファベットは研究対象者を示す.統合プロセスが追えるよう,元ラベルは数字,表札は段階ごとにa),A),I),あ)と符号を付し,叙述の際も同様に記した.図解化は,グループ編成の段階に従いグループを線で囲み,島どりが分かるようプロセスとして示した.

1) 要素1【就学を見据え親子とも負担なく楽しく安全に通える所がいい】(図1

医療的ケア児の母親は,《i)就学前には友達や先生と関わらせたい》や,〔30動ける子だから,遠くの保育園(こども園)でもいいから集団生活をさせたい〕など,《D)就学を見据えて集団生活をさせたい》と望んでいた.集団生活を送るためには,《g)体調が安定してきたのでどこかに通わせたい》のように体調の安定が条件であり,《II)就学を見据えて体調が安定してきたからどこかに通わせたい》と思っていた.しかし,母親には《h)障害の受け止め方によってどこに通わせるか迷う》気持ちがあり,《あ)就学を見据えて通わせたいがどこが良いか迷う》と揺れる気持ちがあった.

図1  医療的ケア児の児童発達支援等の利用に対する母親の認識の要素(要素1)

児童発達支援等の利用先は,《j)見守りがしっかりした保育園がいい》と思っていた.また,《k)感染が怖いので衛生的な所がいい》や〔23)同じダウン症の子が楽しそうで人工肛門や心臓の病気を理解して快く受け入れてくれたことが,入園の決め手だった〕のように《E)体調を崩さず楽しく通える所がいい》という思いがあった.このように,母親は子どもの健康管理と幼児期に相応しい社会生活を考え,《III)健康で安全に楽しく通える所がいい》と希望していた.

医療的ケア児の母親は《l)負担が少なく活動や交流が多い所に通わせたい》と思い,《m)子どもと私が負担無く通えるか相談した》りするなど,実際に通うには《F)親子とも負担は少なく発達を促せる所に通わせたい》と思っていた.このように,医療的ケア児の母親は児童発達支援等の利用について《い)過度な負担なく楽しく安全に通える所がいい》と望んでいた.

医療的ケア児の母親は《あ)就学を見据えて通わせたいがどこが良いか迷う》ところがあり,通所先は《い)過度な負担なく楽しく安全に通える所がいい》と,【就学を見据え親子とも負担なく楽しく安全に通える所がいい】と認識していた.

「…ずっと親と一緒っていうわけにもいかないので,いろんな人と関わって,どんどん成長していってほしいなって…(A)」(要素1-あ)-II)-D)-i)-2より)

「…多少体力とかは変わってきてるんだと思うんですけど,(通える施設を)いっぱい教えてもらうんですけど結局動けない感じはあります.…ちょっと不調な感じがあると怖くなっちゃう.…(D)」(要素1-い)-III)-E)-k)-11より)

2) 要素2【働けるように預け先を探すことが難しい】(図2

医療的ケア児の母親は,《d)仕事や家事ができるように預けやすくして欲しい》や《e)働くためには,9時から17時まで毎日保育園に預けたい》のように《C)仕事復帰や家事ができるように9時から17時で預けたい》と望んでいた.そのため,母親は通所可能な児童発達支援等を探すが,〔18受入を断られると経営のためには仕方ないと思う反面,どうしても仕事復帰したかったので裏切られた気持ちになった〕という経験をしており,《f)仕事したいのに,諦めざるを得ないのが現状なのか》と感じていた.このように,医療的ケア児の母親は【働けるように預け先を探すことが難しい】と認識していた.

図2  医療的ケア児の児童発達支援等の利用に対する母親の認識の要素(要素2)

「…見学,いいです,来てくださいって言ったとこは,(通える所があって)やったあ!あったあ!とか思うと,次の日(電話が)かかってきてちょっと園長先生と相談したら,やっぱりって断られることも2回か3回ぐらいあり,結局ほんとに全滅.…仕事もできないし,…もう正直どうしよう.どうしようしか頭になかったかな.(E)」(要素2-C)-d)-15より)

「頭の中では,多分仕事を今までどおり復帰をするのは難しいだろうって,多分理解はしていたんだと思います.…だけど,やっぱり諦められない部分もきっと多分あって.やっぱそれは,子どもも大事だし子どもも好きだけど,仕事も好きで仕事ももっとやりたいって思ってたから,….(C)」(要素2-f)-9より)

3) 要素3【簡便な手続きと理解ある相談先が得難い】(図3

医療的ケア児の母親は《a)日々のケアやきょうだいの世話で忙しく相談しづらい》と感じ,〔13在宅酸素だけだから,もっと預け先や相談先は分かりやすく簡単な手続きにしてほしい〕など,《A)療育に追われ相談や手続きが難しい》と感じていた.相談や手続きの過程では,《b)子どもが適した場なのか不安で問い合わせには勇気がいる》ことや,〔28気管切開だけで元気なのに入園はどこも拒否的で,訪問看護師や保健師に相談したけど情報収集から周りへの説明や準備までいつも私がしなきゃならないのが大変〕と感じており,《B)拒否されるかもしれない問い合わせから手続きまで母親がやるのは負担だ》と思っていた.さらに,母親は《c)相談では子どもの可能性を決めつけられたくない》と感じており,《I)相談手続きでは不必要に傷つけられたり負担を背負わされたくない》と思っていた.このように,医療的ケア児の母親は【簡便な手続きと理解ある相談先が得難い】と認識していた.

図3  医療的ケア児の児童発達支援等の利用に対する母親の認識の要素(要素3)

「…相談支援員さんっつうんですか,そういう人たちに連絡を取って面談みたいのをして,この事業計画書じゃないけどそういうのを立てて,出来上がったのを読んで,はんこを押してっていう,その流れがちょっと面倒くさいというか,正直.行きたいと思ったところに行って,見学して,向こうの人がいいですよって言ったら行けるぐらい簡単じゃないと,ちょっとね.…(E)」(要素3-A)-13より)

「躊躇してた,やっぱもし電話して受け入れてもらえないとか,いや,ちょっと駄目ですとか,…医療的ケア受け入れているって言ったけど,どのくらいまでの子を受け入れてくれてるのかまでは分かんないから,うちはちょっと駄目だよなんて言われたらどうしようとかそういう面.…(I)」(要素3-I)-B)-b)-26より)

「…ずっと様子を見て話して理解して知ってくださる人が話しするならもちろん分かるんですけど,…事情を知らないのに見た目の判断だけで,その場の状況だけでいろいろああですね,こうですねって言われるのは,やっぱすごくストレスでしたね.…親が一番センシティブに考えているところを,他人にそう簡単に知られてたまるもんかっていうそういう気持ちがあったので,…(G)」(要素3-I)-c)-20より)

3. 認識の要素の相互的関係性(図4

統合分析で得られた認識の3要素は,以下の関係性であった.母親は,【就学を見据え親子とも負担なく楽しく安全に通える所がいい】と就学を見据え児童発達支援等を利用したいと考えるが,子どもの健康管理および障害の程度を考慮し,親子にとって適切な利用先を模索していた.一方で,仕事や家事のために預けたいと希望しても受け入れてもらえず,【働けるように預け先を探すことが難しい】と捉えていた.さらに,療育中の相談手続きは心身ともに負担であり,【簡便な手続きと理解ある相談先が得難い】と捉えていた.したがって,母親の認識は【就学を見据え親子とも負担なく楽しく安全に通える所がいい】と適切な利用先を迷いながら探す一方,【働けるように預け先を探すことが難しい】および【簡便な手続きと理解ある相談先が得難い】という困難さを抱えている関係性であった.

図4  認識の要素の相互的関係性

Ⅵ. 考察

児童発達支援等の利用に対する医療的ケア児の母親の認識は,3つの要素に統合された.【就学を見据え親子とも負担なく楽しく安全に通える所がいい】は,親子にとって適切な利用先を模索する中での希望を示している.一方で,【働けるように預け先を探すことが難しい】と【簡便な手続きと理解ある相談先が得難い】は,困難さを示していた.本研究対象者であるサービス利用に至った母親の認識からは,利用までの過程において様々な困難があった状況が窺えた.そのため,母親の中には利用したいという思いがあっても就労の希望が叶わない現実や相談手続きの困難さから,断念してしまう場合もあると考えられる.

児童発達支援等を利用したいと考える母親が円滑に利用できる環境を整えるためには,看護職としてどのような支援が可能なのかを認識の背景にある母親の状況とともに考察する.

1. 利用先を模索する背景と支援の可能性

医療的ケア児の母親は,児童発達支援等の利用に対して【就学を見据え親子とも負担なく楽しく安全に通える所がいい】と捉えていた.就学を見据えた集団生活への期待を抱きながらも,〔11どこかに通わせたいけど,感染症や体調を崩すのは怖い〕〔14 発達のため子ども同士で触れあわせたいけど,安全面の不安もあるからすぐ駆けつけられる所がいい〕と子どもの健康管理への懸念から負担を軽減した利用を望んでいた.医療的ケア児は医療依存度が高いため急変しやすく,母親は日々の体調変化への対応が大変である(小嶋ら,2023).集団生活による他者との交流は,感染症罹患などによる重症化リスクが高まる可能性があるため,母親は通所利用を慎重に検討していたと考える.そのため,母親は子どもの発達促進と健康リスク回避との間で葛藤しながら,すぐに駆けつけられる体制も考慮し,親子にとって最適な通所環境を模索していたと考えられる.

母親の葛藤には,もうひとつ《h)障害の受け止め方によってどこに通わせるか迷う》のように,母親自身の障害の受け止め方も影響している.本研究結果では〔7 障害児だと受入れられず保育園に通わせたかったけど,児童発達支援に通って子どもの笑顔や情緒の安定を感じて前向きになれた〕のように,利用前には障害児だと認めたくなかった気持ちがある一方で,児童発達支援の利用を決断した母親がいた.この母親の決断には,周囲の子どもと比較した時に我が子の障害を受け入れる辛さを感じつつもその子自身の個性を尊重した通所の在り方を重視する姿勢があったと考えられる.

本研究対象者は児童発達支援等の利用を経験した母親であったにもかかわらず,健康リスクの高い子どもを預けることや障害のある子どもを通わせることへの葛藤を抱き,利用に踏み切れない状況があった.したがって,医療的ケア児の母親の中には利用したいという気持ちがあっても,利用に至らない場合もあると推察される.本研究対象者らが児童発達支援等の利用に至った背景には,〔6元気な子の家族を目にすると辛く,何も出来ない子どもを通わせていいのかモヤモヤして,相談や見学による後押しが救いになった〕のように,母親の思いを利用へ繋げる他者の後押しがあった.医療的ケア児の母親が直面する困難感には,身近な人に頼りたいのに頼れないことや気持ちや体験を共有できない孤独感(小嶋ら,2023)がある.そのため,児童発達支援等に通わせたいと思いつつも悩んでいる母親への支援では,相談者の存在が重要であると考える.訪問看護師や通院先の看護師といった看護職は,日常的に医療的ケア児に関わる支援者として相談支援を担える立場にある.訪問看護師が医療的ケア児の児童発達支援等の利用開始に向けて行う看護実践には,育児や子どもの発達促進に向け,母親の悩みや希望を受け止め話し合う(林ら,2023)ことがある.このように在宅生活を送る医療的ケア児を支える看護職は,児童発達支援等の利用が子どもの発達促進に有益であっても,健康課題や障害を抱える我が子を他者に預けることに葛藤が生じる可能性を考慮し,母親が一人で悩まないよう積極的に気持ちを受け止める姿勢が求められると考える.そのうえで,母親の行動を見守り必要時には共に検討することが望ましいと考える.

2. 働くことをめぐる葛藤と支援の可能性

医療的ケア児の母親は,【働けるように預け先を探すことが難しい】と感じていた.母親の思いには,〔15 生活のためには仕事しなきゃならないのに,保育園は全部断られてどうしたらいいのか分からない〕〔9 子どもは大事だけど仕事復帰は諦めたくないから,我慢した子育て優先じゃなく保育園に預けられるようにして欲しい〕と,就労は家計の支えと自己実現の側面があると考えられる.山本ら(2025)は,医療的ケア児を育てながら就労している母親は,仕事は社会との接点として大事な意味があると実感しており,同時に母親の代わりはいないと就労開始後も児の責任を負うことに変わりがないと感じていることを明らかにしている.本研究対象者の中には,児童発達支援等を利用できても希望通りの利用でなかった場合には《f)仕事したいのに,諦めざるを得ないのが現状なのか》と,母親が引き受けるしかない現状に諦めを感じ,自身の責任において仕事を辞める選択をする場合があった.国内外を問わずに子どもの医療的ケアや障害を理由に母親が転職や離職を経験している状況がある(Looman et al., 2009荒木ら,2019).就労している障害児の母親は,就労していない障害児の母親に比べて精神的に健康であり(Bourke-Taylor et al., 2011),希望通りの就労状態かどうかが母親の精神的健康度に影響を与えることが報告されている(松澤・江尻,2019).医療的ケア児の母親が就労を諦めて子育てを優先せざるを得ない状況は,母親の社会的孤立や精神的疲弊を深刻化させる可能性がある.そのため,母親が自身の人生も大切にしながら子育てに向き合えるような支援が求められると考える.

さらに,就労は生活を維持するうえで重要な手段である.厚生労働省の調査(2020)では,母親が仕事を辞めなければならなかったことで「家計が圧迫され将来にとても不安を感じる」と意見があった.本研究結果では,「(児童発達支援は)どうしても見てもらえる時間が10時から3時っていうところで,そこから預けて働けるかっていうとなかなか働けなくて…」との語りがあり,児童発達支援の利用時間ではフルタイム就労が困難である状況が窺えた.母親のフルタイム就労を実現するためには,保育園の利用や複数施設での看護師共同配置など,長時間利用できる解決策を模索する必要があると考える.

母親の就労を支えるためには児童発達支援等の活用方法を含め,就労を可能にする体制構築について多職種連携のもとで検討することが望ましいと考える.本研究対象者の中には,〔28 気管切開だけで元気なのに入園はどこも拒否的で,訪問看護師や保健師に相談したけど情報収集から周りへの説明や準備までいつも私がしなきゃならないのが大変〕という捉え方があり,母親が支援体制の調整を担わなければならないことに苦労していた.医療的ケア児を取り巻く社会資源は充足しているとは言い難く,就労支援の体制構築は容易ではないため,母親が調整することは難しい.看護師はプライマリヘルスケアにおいて医療や社会福祉の専門家およびサービスをつなぐケア調整を行う役割がある(Marlène et al., 2021).そのため,医療的ケア児の在宅生活においては,日頃から関わる訪問看護師や保健師といった看護職が重要であると考える.母親が調整に疲弊しないよう,状況を適宜確認しながら必要時には積極的介入を行い,関係者と協働して体制構築をはかることが重要であると考える.

3. 相談手続きに繋がる困難性と支援の可能性

本研究結果の母親は,相談手続きに踏み出しにくい状況があり,円滑な利用に繋がりにくいことから,【簡便な手続きと理解ある相談先が得難い】と捉えていた.母親は《a)日々のケアやきょうだいの世話で忙しく相談しづらい》と感じていた.厚生労働省(2020)の実態調査では,20歳未満の医療的ケア児者の家族843件のうち55.9%が子どもの支援に関することで何度も行政窓口や事業所に足を運ぶと回答している.このことから,日々のケアと子育ての合間に度重なる相談に出向くことが,母親にとって相当な負担となっていると考えられる.また,本研究結果では〔22初めてのことだし入院やきょうだいの世話もあるので,市役所の人も保健師さんみたいに色々教えてほしい〕と,役所では求める具体的な助言や情報提供に繋がっていなかった.先行研究では,本研究結果と同様に役所での相談は具体的なサービス情報を得られず困難を感じることがあると報告されている(宮﨑ら,2021成田ら,2023).2021年には,「医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律」第14条において医療的ケア児支援センターが規定された.医療的ケア児支援センターは,医療的ケア児等からの様々な相談をまずしっかりと受け止めた上で,関係機関と連携して総合的に対応することが期待され(厚生労働省,2021d)ている.同センターを適切に活用できれば,忙しい母親の相談手続きの負担軽減に繋がると考える.医療的ケア児支援センターは,2023年9月時点で全国46都道府県に設置され広報活動が行われている(大川,2023).在宅生活を支援する看護職は,医療的ケア児の母親が適切に医療的ケア児支援センターへ繋がることができるよう支援する必要があると考える.

さらに,母親には手続き上の負担に加え,相談そのものに対する心理的負担があった.例えば,〔8 保育園に入れたいが問い合わせは勇気がいり気軽に相談できなくて,インターネットで検索するしかない〕にみられるように,問い合わせても受け入れを断られる可能性への懸念が心理的負担となっていたと考えられる.医療的ケア児の母親は,子どもの障害に向き合う過程や命の危機に直面する機会など精神的疲弊を繰り返している.そのため,問い合わせの段階で拒否されることにより再び失望を経験することへの恐怖が強いと推察される.また,〔20何も知らないので相談はするけど,事情をよく知らない人に子どもの可能性を決めつけられたくない〕と,信頼関係を構築していない相手にプライバシーに関わる情報を開示し,サービス利用を判断されることへの抵抗感も示されていた.在宅生活を支援する看護職は普段の医療的ケア児や母親の様子を知る良き理解者である.したがって,母親が医療的ケア児支援センターに安心して繋がれるよう,母親が関係機関に相談する状況を見守りながら,必要時は適切な情報提供や話し合いに参加するなどの支援を担うことが重要であると考える.

以上,母親は親子にとって適切な利用先を模索する一方で,働けるよう預け先を探すことや相談手続きに困難さを抱えていた.在宅生活を支援する看護職が身近な相談者として,親子にとって適切な利用先や働けるような支援体制を考慮しながら思いを聴き,母親が相談しやすいよう関係機関との円滑な連携を図る必要性が示唆された.

Ⅶ. 研究の限界と今後の課題

本研究における研究対象者が児童発達支援等の利用を開始した時期は,インタビューから過去5年以内であったため,ほとんどが「医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律」の施行以前であった.現在は,医療的ケア児支援センターの設置などが進んでいるため,現状を反映しきれていない可能性がある.さらに,今回はA県内の6市町村に在住する医療的ケア児の母親からデータ収集を行うことができたが,父親のデータ収集は行っていない.今後は,新法施行後の現状や他の地域や父親など,さらに幅広い状況を加味した認識の違いについても調査し,医療的ケア児が児童発達支援等を利用しやすくするための支援を検討する必要がある.

Ⅷ. 結論

児童発達支援等の利用に対する医療的ケア児の母親の認識には,【就学を見据え親子とも負担なく楽しく安全に通える所がいい】【働けるように預け先を探すことが難しい】【簡便な手続きと理解ある相談先が得難い】の3要素があった.サービス利用を希望する母親が円滑に利用できる環境を整えるには,在宅生活を支援する看護職が身近な相談者として母親の思いを聴き,関係機関との円滑な連携を図る必要性が示唆された.

付記:本論文の内容の一部は,第44回日本看護科学学会学術集会において発表した.

謝辞:調査に快くご協力いただきましたお母様方ならびにリクルートにご協力をいただきました管理者の皆様に,心より感謝申し上げます.本研究は,公益財団法人日本訪問看護財団「2023年度訪問看護・在宅ケア等研究助成」を受けて実施した.

利益相反:本研究における利益相反は存在しない.

著者資格:HMは研究の着想,デザイン,データ収集,データ分析,原稿の作成など全過程を実施した.IMは研究の着想,デザイン,データ分析,原稿の作成に貢献した.SMの二人はデータ分析,原稿の作成に貢献した.すべての著者は最終原稿を読み,承認した.

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