日本看護科学会誌
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総説
周産期うつ病の予防的介入に関する海外研究の動向と課題
紙谷 恵子斎藤 美矢子奥 由佳梨伊東 美佐江
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2026 年 46 巻 p. 424-435

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Abstract

目的:周産期うつ病予防に関する海外論文のレビューを行い,周産期うつ病予防のための有効な介入と課題を検討すること.

方法:データベースCINAHL,MEDLINEを用いて,キーワードは,“pregnancy” or “birth” AND “depression” or “mental health” AND “self-care”で検索し,Garrardのマトリックス方式で分析を行った.

結果:対象文献は17件で,妊娠期に開始する介入と産後に開始する介入に分類された.介入は,対面またはアプリや冊子などによって実施され,概ね効果が得られたものの,継続支援や支援者の人員不足が課題となった.

結論:周産期の女性が抱える心理的問題は,多岐にわたり受診行動につながりにくい傾向がある.表面化しにくい心理的問題を抽出し,適切な支援を提供するためのスクリーニング方法と支援の構築が求められている.

Translated Abstract

Objective: To examine effective interventions and challenges for preventing perinatal depression by reviewing international research papers on the topic.

Methods: Using the CINAHL and MEDLINE databases, a search was conducted with the following keywords: pregnancy OR birth, AND self-care, AND depression OR mental health, AND self-care. An analysis of the results was then conducted using Garrard’s matrix method.

Results: A total of 17 studies were identified and categorized into two groups: interventions initiated during pregnancy and interventions initiated postpartum. These interventions were administered in person via digital tools, such as mobile applications or booklets. While the program has demonstrated a certain degree of effectiveness, challenges regarding ongoing support and the shortage of support staff were identified.

Conclusion: The psychological challenges experienced by mothers during the perinatal period are varied and often do not lead to seeking medical care. There is a need to develop screening methods and support systems to identify less visible psychological problems and provide appropriate assistance.

Ⅰ. 緒言

周産期うつ病は妊娠合併症の中で11.5~15.1%と高頻度に発症する疾患である(徳満ら,2023).周産期においては,妊娠・出産に伴う身体的な変化や育児への責任など,様々な負荷が一度にかかることに加えて,核家族化や地域社会のつながりの希薄化など社会的要因も重なり,多くの妊産婦がメンタルヘルスの問題に直面している.周産期うつ病は,妊娠期の胎児の成長や早産,死産のリスクとともに,出産後,児の認知的,感情的,社会的発達の阻害など様々な影響をもたらすといわれ(佐田ら,2024Grigoriadis et al., 2013),特に,問題視されているのは妊産婦の自殺である.妊産婦死亡の原因別事例数の年次推移によると,2020年以降,妊産婦死亡者数の中では産科的身体疾患よりも自殺が原因で亡くなる女性が多く(関沢,2023),うつ病予防の対策は喫緊の課題となっている.

わが国における周産期に関する施策として,平成29年母子保健法が改正され,母子健康包括支援センターの設置が義務化となり,令和元年の改正では,産後ケア事業実施の努力義務が課された.また「子ども未来戦略方針」においても,産前産後ケアの体制充実や利用者負担の軽減として,妊娠期からの伴走型相談支援や産後ケア,経済支援など(厚生労働省,2023),妊娠期から子育て期までの切れ目ない支援の実現に期待が寄せられている.他にも,診療報酬におけるハイリスク妊産婦連携指導料の算定(厚生労働省,2024)をはじめ,関連学会によるガイドラインへの明記(日本産科婦人科学会,2023)や啓発(厚生労働省,2023)など,近年は周産期メンタルヘルスに関する様々な取り組みがみられるようになった.しかし,周産期うつ病の危険因子は,情緒特性,生活ストレス,人間関係など個別的かつ多岐にわたるため(Lancaster et al., 2010),一律の対応では効果が得られにくく,また,治療においても,抗うつ薬に関しては胎盤・母乳移行の懸念から,うつ症状が出現しても服薬を拒む妊産婦は少なくないなど(清野ら,2014),支援における課題は山積している.

周産期うつ病の予防や治療に関して,海外においては心理教育や運動療法のほか,精神療法として認知行動療法(Cognitive Behavior Therapy:以下CBT)やマインドフルネスなど心理面への介入が予防や軽症例の治療として有効であり,普及が進んでいる(蟹江ら,2021).一方,わが国では論文数こそ増加傾向にあるものの,ほとんどが要因探索に関する報告(鬼頭・森本,2024佐田ら,2024)であり,介入研究は,CBT (西,2024),両親学級の開設(長谷川ら,2020)など数件にとどまり,支援の標準化を図るための情報が不足している.臨床現場で提供できる支援を構築するには,支援内容とその効果に関するデータの蓄積が重要である.したがって本研究では,海外の研究論文をレビューすることによって,周産期うつ病予防に関する課題と有効な介入を検討することとした.

Ⅱ. 用語の定義

・精神療法:精神の健康に関する問題にアプローチする治療法のことであり,カウンセリングをはじめとして,CBT,マインドフルネスなど,種類は多岐にわたる(大野,2007).

・心理教育:精神的な健康に関する知識や情報を提供し,個人が自身の状況や問題について理解を深めることを目的とした教育的アプローチのこと.

Ⅲ. 研究方法

1. 検索方法

本研究では周産期うつ病発症前段階の介入に着目しレビューを行うため,周産期うつ病の診断を受けた女性に対する介入と,周産期うつ病を予防するための介入を区別する必要があった.予防の観点では,周産期の女性は医療者や心理専門職と関わる機会が,健診や出産時などに限られることから,自身で心理面を把握し対処するセルフケアが重要であると考えられる.よって,セルフケアを含めた検索キーワードを設定し,関連領域を俯瞰する形で検討を行った.データベースCINAHL,MEDLINEを用いて,検索式は,(“pregnancy” OR “birth”)AND(“depression” OR “mental health”)AND “self-care”のキーワードで検索した.論文の選定は,①妊娠期または産褥期,あるいは妊娠期および産褥期において,周産期うつ病の診断を受けていない女性を対象とした論文であること,②妊婦または産褥婦のセルフケアに焦点を置いた論文であること,③医療者による支援的介入が行われた論文でアウトカムが示されていることを条件とし,期間は,周産期うつ病のスクリーニングに用いる尺度として,Edinburgh Postnatal Depression Scale(以降,EPDS)(Cox et al., 1987)が発表された1987年以降とした.3名の研究者により全プロセスを確認し17論文を分析対象とした.

2. 分析方法

本研究では,マトリックスを用いて体系的に論文の全体像把握や知見の比較を行うGarrardの方式(安部,2025)を採用した.Garrardの方式は,検索過程,文書整理,レビューマトリックスの作成,文献レビューの執筆のプロセスから成る.今回のマトリックス項目は研究の概要(著者・出版年・国・研究デザイン),研究方法(対象・割り当て),支援の内容と時期,評価指標(内容・時期),アウトカムとし,3名の研究者がそれぞれ論文を精読し該当内容を検討・確認した.今回は,介入,研究デザイン,結果の統一性が得られなかったためメタ分析を行わなかった.

Ⅳ. 結果

1. 文献検索の結果

検索条件に従い検索を行い254文献が該当した.一次スクリーニングにて140文献が,さらに二次スクリーニングにて93文献が除外され,抽出された文献を精読した結果,4文献が非該当となり,最終的に17文献が対象となった(図1).

図1  文献検索のプロセス

2. 対象文献の概要:介入の特徴と研究方法

対象文献は,周産期の時期で分類すると,妊娠期の介入が9件,妊娠期から産後にかけての介入が5件,産後の介入が3件であった.介入の種類は,スクリーニング,運動,カウンセリング,CBT,マインドフルネスなどの精神療法,周産期うつ病に関する知識提供や育児スキルに関する心理教育であり,これらの介入は,対面による実施のほか,アプリ,冊子,CDなどのツールを用いて実施されていた.なお,これらは単一プログラムによる実施と複数のプログラムを組み合わせによる実施に分類された.介入対象者の選定もしくはアウトカム指標としては,各種心理測定尺度が用いられており,全対象文献のうち13文献ではEPDSが使用されていた.また,疼痛や身体不快感などの生体情報をアウトカムの評価指標として用いている介入もあった.研究デザインは,10件がランダム化比較試験,7件が非ランダム化比較試験であった.

3. 周産期の時期に応じた介入とアウトカム

1) 妊娠期に開始する介入

周産期うつ病の予防に関して,対象文献のうち14件は妊娠中から介入が開始され,その中で妊娠期のみの介入は9件,産後まで継続的に実施した介入は5件であった.介入の種類は,セルフモニタリング,精神療法または心理教育などの心理的介入,および身体活動を含むものであった.妊娠期から産後にかけて継続された介入では,妊娠期,産後ともに同じプログラムが用いられており,対象者全員に実施されたものと,ハイリスク者または個別対応で実施されるものに分類された.

 (1)妊娠期のみを対象とした介入

妊娠期のみを対象とした研究は,対面プログラム,アプリおよび教材の開発・提供による介入に分類された(表1).

表1 妊娠期の女性を対象にした介入研究の概要

No. 著者/年/国 研究デザイン 対象者 支援形式 介入の概略 評価指標 アウトカム
主な内容 介入時期or期間 評価時期
1 Agampodi et al.(2023)
スリランカ
前向きコホート研究 妊娠初期のハイリスク女性:78名 対面支援 スクリーニングと面接の実施,必要に応じた介入
介入:教材提供,専門ケア,家族支援要請,経済支援
・EPDS(カットオフ値:9/10)
・WHOメンタルギャップツールに基づく面接
・病院監視システムデータ
・自傷行為経験者は15名,自殺念慮者は13名,自殺者は0名だった,・自傷行為の懸念がある22名中9名に電話面接を実施した,・専門医を紹介したが半数以下しか応じなかった
スクリーニング
心理教育
EPDSハイスコアor自傷行為の経験者に対し,妊娠15~20週の間に実施 妊娠初期,妊娠中期,妊娠後期
2 Koniak-Griffin(1994)
アメリカ
RCT メキシコ系米国人14~20歳で妊娠中期までの女性:58名(介入群35名,対照群23名) 対面支援 インストラクターによるエアロビクス
(1)10分間のウォームアップ,(2)30分間の軽い運動,(3)15分間の体操,(4)ウォームダウン
・CES-D:うつ病尺度
・SEI:自己肯定感尺度
・身体不快チェックリスト
・CES-Dスコアは両群の有意差なかった,・SEIスコアは介入群が対照群よりも有意に向上した,・身体不快:介入群は有意に不快症状が少なかった
エアロビクス 6週間の間に週に2回実施 実施前,実施後
3 Pan et al.(2023)
タイ
RCT 妊娠13~28週,20歳以上のハイリスク女性:102名(介入群51名,対照群51名) 対面支援 マインドフルネスの指導とセッションの実施 ・EPDS(カットオフ値:12/13)
・PRT:妊娠関連思考アンケート
・PSS:ストレス認知尺度
・PBQ:ボンディング尺度
・EPDSスコアは介入群は対象群よりも有意に低かった,・PSSスコアは介入群は対照群よりも有意に低下した,・PBQは介入群は対照群よりも効果があるが有意ではなかった
精神療法 産前8週間の間に毎週2時間実施 介入前,妊娠36週,産後2か月,4か月
4 Mao et al.(2012)
中国
RCT 経過が順調な初産婦:240名(介入群120名,対照群120名) 対面支援 (1)産科医によるセルフマネジメントに関する教育①セルフマネジメントと中国式出産文化の理解,②問題解決法,コミュニケーション,③リラクゼーション,認知再構築,④自信向上
(2)グループセッション,個人カウンセリング
・PHQ-9(Patient Health Questionnaire)
・EPDS(カットオフ値:10/11)
・DSM-IV-TR:精神障害の診断と統計マニュアル
・半構造化面接
・PHQ-9スコアは介入群は対照群よりも有意に低かった,・出産後6週のEPDSスコアは介入群が対照群よりも有意に低かった,・出産後6週目のSCIDは介入群の2.7%(113名中3名)がうつと診断され,対照群の9.3(108名中10名)がうつと診断された
精神療法 毎週1回(90分/回)を4回実施 ・PHQ-9:実施前後,EPDS:産後6週
5 Barber & Masters-Awatere(2022)
ニュージーランド
単群前後比較デザイン 妊娠期の女性:88名 教材:アプリ アプリの開発・提供
1:自己理解とスクリーニング,2:行動を促すアクティビティ,3:コミュニケーションツール,4:情報提供
・EPDS(カットオフ値の記述なし)
・ストレス尺度(DASS-21):不安・抑うつ
・インタビュー(使用頻度,満足度,推奨度)
・EPDSスコアは介入により低下したが有意ではなかった,・DASSスコアは介入により有意に低下した,・アプリの使用頻度は36%は使用なし,48%が1~2回,16%が数回であり,妊娠後期は67%が使用していなかった,・大多数がアプリに満足したが推奨意向は1/3だった
スクリーニング
心理教育
妊娠24週未満でアプリを使用開始し12週間継続 ・アンケート:初回,妊娠24週,36週
・グループインタビュー:妊娠24週,36週
6 Bryant et al.(2023)
アメリカ
前後比較デザイン 非白人の妊娠28週の女性:87名 教材:アプリ アプリによる知識,情報の提供
(1)産後の身体変化,(2)メンタルヘルスの管理,(3)生活上の問題への対処,(4)社会との関わりの支援,(5)心身不調時の医療へのアクセス
・ツールの使用状況
・EPDS(カットオフ値:9/10)
・CD-RISC 10:レジリエンス
・STAI:不安測定尺度
・MOS:社会的支援
・COVIT-19メンタルヘルス影響尺度:COVIT 19の影響
・レジリエンスは介入により有意な改善があった,・EPDS,とSTAIのスコアは改善傾向だが有意な変化はなかった,・MOSスコアは有意な変化はなかった,高収入者は心理的回復が有意に高かった,・STAIは収入が低い女性のスコアが高かった,・利便性は使いやすい(96%),対象に寄り添っている(94%),・活用性が高い(76%),推奨度が高い(99%)であった
心理教育 アプリ提供から1か月間実施 使用開始後2週,3週
7 Zhang et al.(2022)
中国
RCT 妊娠12~20週のハイリスク女性:160名(介入群80名,対照群80名) 教材:アプリ アプリの開発・提供,解説動画視聴
(1)マインドフルネスの紹介(2)意識的な気づきの促し(3)現状の認識(4)内観し困難を受け入れる(5)幸せを受け入れる(6)マインドフルネスの技法
・EPDS(カットオフ値:9/10)
・GADー7:不安
・新生児の糞便中の腸内細菌
・EPDSスコアは抑うつと不安は介入群が有意に低かった,・不安尺度の不安は介入群が有意に低下した,・腸内細菌のα多様性指標は差はなく,ビフィズス菌とブラウチア菌は増加した
精神療法 自由に使用してもらう(10~30分/回) ・母親:妊娠期,出産当日,産後1日
・新生児:産後48時間目の糞便
8 Davis et al.(2023)
フィンランド
RCT 妊娠18~28週の白人で学位を取得し経済的に安定した女性:84名 教材:アプリ ・EPDSスコア高群へのカウンセリング,・心理教育,瞑想の実施,・3群に割り当てたプログラム(1)マインドフルネス26名(2)愛情-思いやりの訓練28名(3)漸進的筋弛緩法30名 ・EPDS:カウンセリング対象者の選定に使用(カットオフ値:12/13)
・介入の障壁,効果,有効性,機能性の評価
・カウンセリング対象者は84名中37名だった,・プログラム参加者84名中17名が辞退した,・プログラムに対する回答は(1)自分の時間が持て良い睡眠を得た(2)疲労感が生じた(3)知識を売ることができた(4)時間を要し継続が困難だった(5)気持ちが安定した(6)自分を客観視できた
精神療法 8週間実施し,その間,心理教育と瞑想を1回/週実施 ・アンケート:介入前,介入中,介入後
・インタビュー:介入後1~3 か月後
9 Gedde-Dahl & Fors(2012)
ノルウェー
RCT 妊娠32週目~出産までの女性:58名(介入群29名,対照群29名) 教材:CD CDの開発と使用(1)リラクゼーション:深呼吸法や筋弛緩法など(2)イメージ法:良い出産イメージを抱く練習 ・STAI
・BDI:抑うつBecks Depression Inventory
・ESAS:Well-being,・VAS:陣痛,
・生体データ(分娩記録,心拍,血圧)
・STAIスコアに両群の差はなかった,・BDIスコアに両群の差はなかった,・ESASスコアは介入群の方が有意に改善した,・痛みは介入群が軽減傾向,有意差は無かった
精神療法 妊娠32週で渡して出産まで使用してもらう 産前,分娩時,産後1日

RCT: Randomized Controlled Trial, CBT: Cognitive behavioral Therapy, EPDS: Edinburgh Postnatal Depression Scale

対面プログラムによる介入は4件行われ,スクリーニングにカウンセリングや心理教育が組み合わされたプログラム(Agampodi et al., 2023),エアロビクス(Koniak-Griffin, 1994),マインドフルネス(Pan et al., 2023),リラクゼーションとCBTの組み合わせ(Mao et al., 2012)が実施された.Agampodiらの研究では,妊娠初期でEPDSが高値を示すハイリスク群の対象者に対し,継続的にスクリーニングを実施しながらカウンセリングや心理教育,専門家の紹介が行われた.スクリーニングでは特に自傷行為の意図に焦点を当てた観察が重視されたが,自傷の懸念を抱える妊婦のうち専門家のコンサルテーションにつながったのは半数以下と,表面化しにくい心理的問題に対するケアの困難さが示された.Koniakらの研究では,インストラクターによる有酸素運動やリラクゼーションが,週に2回6週間にわたって実施された.その結果,介入群と非介入群との間にうつ病尺度(Center for Epidemiologic Studies Depression Scale: CES-D)のスコアの差はなかったが,自己効力感尺度(Self-Esteem Inventory: SEI)のスコアと身体の不快症状は有意に改善した.Panらの研究では,EPDSが10点以上のハイリスク妊婦に対してマインドフルネス,陣痛への対処法や育児法の指導が週に6回,8週間にわたり実施された.その結果,介入群と非介入群との間で産後のボンディング尺度(Postpartum Bonding Questionnaire: PBQ)のスコアに差はなかったが,EPDSとストレス認知尺度(Perceived Stress Scale-10: PSS-10)のスコアは,介入群の方が有意に低く,効果が認められた.Maoらの研究では,介入群にはセルフマネジメントのセッション,リラクゼーションとCBTがグループトレーニングやセッションの形で行われた.その結果,介入群は非介入群と比較して,うつ状態を示すPatient Health Questionnaire(PHQ-9)のスコアと,出産後6週間後のEPDSスコアが低下し効果が認められた.

アプリを用いた介入は4件であり,CBT(Barber & Masters-Awatere, 2022),心理教育(Bryant et al., 2023),マインドフルネス(Zhang et al., 2022Davis et al., 2023)がそれぞれ単一のプログラムとして実施された.Barberらの介入では,提供したアプリの構成要素として,自己理解および行動を促すコンテンツ,パートナーや助産師とのコミュニケーション技法や家族計画のための情報提供,心理的問題に対応するオンライン資源の紹介が含まれた.その結果,EPDSの有意な改善は認められなかったものの,抑うつ・不安・ストレスを測定する尺度(Depression Anxiety Stress Scales-21: DASS-21)のスコアは,介入前よりも有意に改善した.使いやすさに関しては,対象者の大多数がアプリに対して満足したと回答したものの,使用頻度は介入当初の約半数から妊娠後期は約3割に減少していた.利用しなくなった理由としては,多忙,不要感,多すぎる情報などが挙げられた.Bryantらの介入では非白人を対象にメンタルヘルスの管理に加え,コミュニケーションスキルに関する教育がなされた.その結果,EPDSおよび不安測定尺度(State-Trait Anxiety Inventory: STAI)のスコアには有意な改善が認められなかったものの,レジリエンスは向上した.Zhangらの介入では,EPDSスコアが9点以上のハイリスク妊婦を対象に,マインドフルネスとCBTが組み込まれたアプリが提供された.介入の検証は,EPDS,不安尺度(Generalized Anxiety Disorder-7: GAD-7)と共に,新生児の糞便中の腸内細菌数によって行われた.その結果,介入群は非介入群よりもEPDSスコアとGAD-7のスコアが有意に低下した.新生児の腸内細菌は,ストレスと関連が深いとされるビフィズス菌やブラウチア菌など特定の細菌数の増加が認められ,母親のストレス上昇に伴う児への影響が示唆された.Davisらの介入では,3種類の精神療法のアプリを開発し,3群のハイリスク者にそれぞれ実施された.その結果,全体を通して肯定的な回答が得られたものの,対象者の約半数が多忙や身体健康上の問題から辞退し,比較検討が困難となり,プログラムの再設計の必要性があると判断された.

教材を用いた介入は1件実施され,アクティビティを掲載したCD(Gedde-Dahl & Fors, 2012)の開発・提供が行われた.呼吸法や筋弛緩法とともに出産時のリラクゼーションにCDを用いて実施した結果,介入群と非介入群の間に,STAIとうつ病調査票(Beck Depression Inventory: BDI)のスコアに有意な差は認められなかったが,産後1日目のwell-beingスコアでは介入による有意な改善が認められた.

 (2)妊娠期から産後にかけて行う介入

妊娠期から産後にかけて実施された介入の形式は,対面プログラムとアプリまたは教材の開発・提供の2種類に分類された(表2).

表2 妊娠期から産後の女性を対象にした介入研究の概要

No. 著者/年/国 研究デザイン 対象者 支援形式 介入の概略 評価指標 アウトカム
主な内容 介入時期or期間 評価時期
1 Öztoprak et al.(2023)
トルコ
RCT 初産婦かつ産前~産後3か月の女性:61名(介入群31名,対照群30名) 対面支援 家庭訪問,電話,SNSを計画的に組み合わせたカウンセリングの実施 ・セルフケアパワースケール
・MPQoL-1:産後の生活の質尺度
・PSAS:産後不安尺度
・EPDS(カットオフ値:12/13)
・身体症状尺度
・セルフケアは両群共に改善し介入群の方がより改善した,・MPQOL-1は両群共に改善し介入群の方がより改善した,・PSASは両群共に改善し介入群の方がより改善した,・EPDSは両群共に改善し介入群の方がより改善した,・身体症状は両群共に改善し介入群の方がより改善した
カウンセリング 妊娠中~産後3か月 産後10日,3か月
2 Kao et al.(2015)
アメリカ
RCT 妊娠20~35週の公的支援を受けているハイリスクの女性:92名(介入群47名,対照群45名) 対面支援 ROSEプログラムの実施
(1)グループセッション①うつ徴候の知識共有②ストレス管理スキルの習得③出産に関連する対人関係葛藤の認識④対人葛藤解決スキルの強化
(2)個別セッション①セッション内容の復習②予想される気分変化と対人関係上の困難
・EPDS(カットオフ値の記述なし)
・母乳育児の開始有無
・母乳育児の継続日数
・母乳育児は介入群の方が母乳育児を継続できていた,・EPDS:産後2週間のEPDSスコアは,母乳育児の開始と相関なく母乳育児期間も相関なかった
心理教育 グループセッションは週に1回60分を4回実施
個別セッションは産後50分間実施
妊娠中(セッション後)
産後2週,3か月
3 Corey et al.(2019)
アメリカ
前向きコホート研究 政府から経済支援を受けている入院中の15~43歳の妊産婦214名(実施件数:産前97件,産後223件) 対面支援 (1)認定音楽療法士によるセッション
(2)音楽療法①伝統的子守唄の生演奏②即興音楽③音楽CDの提供
(3)ガイド付きエクササイズ・資料提供①ストレス管理②育児の個別指導
・自由記述
・満足度
・リラックス感覚
・赤ちゃんとつながっている感覚
・この経験で何が一番よかったか
・概ね満足度が高かった,・リラクゼーションや赤ちゃんとのつながりに効果があった,・医療者やスタッフからの評価も高かった,・母親の精神的,感情的,身体的状態への効果があった,・新生児に対する音楽の癒し効果はあるとの回答が多かった
音楽療法 週に半日(3.5時間) 実施直後
4 McKellar et al.(2023)
オーストラリア
順次的混合研究 妊娠中または産後12か月未満の女性14名 教材:アプリ アプリの開発・提供
(1)メンタルウェルビーイングに関する内容①Connected ②Conf ident ③Cheerful ④Contented ⑤Capable
(2)早期警告システム①状態低下時の警告,専門家支援の推奨,
(3)well-beingを促すアクティビティ
・Webアンケート
受容性,利便性,操作性,適切性,有用性,満足度
1.集計結果・受容性は80%が満足した,・使い易さは55%が肯定的な回答をした,・有用性は78%が肯定的な回答をした
2.自由記述・パーソナライズはデザイン色,アバターが使えるのが良い,・ネットワークは気分が落ち込んだときの相談先は役立つ,・介入の適否は個別性が高いので注意が必要,・日記は幸福度が低い場合,日記を書くことが推奨される,・追跡の必要性は長期間の健康の追跡が必要
セルフモニタリング 時期,期間は特定無し
妊婦2名,初産婦5名
・特定日に一斉に調査した
5 Edward et al.(2019)
オーストラリア
RCT 妊娠後期の女性:47名とその夫,パートナー:31名 教材:冊子 妊婦への知識・情報の提供
・うつの知識,EPDSの採点方法,スコア高値時の受診
パートナーへの知識・情報の提供
・周産期と父親のうつの知識,EPDSの採点方法と対応法の説明
・EPDS(カットオフ値の記述なし)
・K10:ケスラー心理的苦痛尺度
・MSSS:マタニティ社会的支援尺度
・EPDSスコアは両群の差は無し,1年後は介入群が有意に低かった,・K10スコアに両群の差はなかった,・MSSSスコアに両群の差はなかった
セルフモニタリング 産前~産後12か月まで 介入前,産前,産後12か月後

RCT: Randomized Controlled Trial, EPDS: Edinburgh Postnatal Depression Scale

対面プログラムに関する文献は3件あり,カウンセリング(Öztoprak et al., 2023),心理教育(Kao et al., 2015),音楽療法と心理教育を組み合わせたプログラム(Corey et al., 2019)が実施された.Öztoprakらの研究では,産前に行う出産準備をはじめ,産後3か月まで定期的な家庭訪問や電話によるカウンセリングが行われ,母親のセルフケアが向上し,不安やうつ症状,身体症状も改善した.Kaoらの研究では,公的支援を受けているハイリスク者に対するCBTとして,ストレスの管理や人間関係のスキルを獲得するセッションが行われ,評価指標として母乳継続状況の観察と,EPDSの測定が行われた.その結果,母乳継続を促進する効果は示されたものの,EPDSスコアの有意な改善は認められなかった.Coreyらの研究では,貧困層が多くを占める病院に入院している産前,産後の女性に音楽の生演奏に加えストレス管理や母子のコミュニケーションについての教育が行われ,支援に対する満足,精神的安定の促進が確認された.

冊子教材やアプリの開発・提供に関する文献は2件あり,ツールには,セルフモニタリングに関する指導(McKellar et al., 2023),心理教育(Edward et al., 2019)が含まれた.McKellarらは,アプリに感情を評価するスケールを搭載し,妊娠期から産後にかけての日記やマインドフルネスが提案された.その結果,対象者のほとんどがアプリの機能に満足しており,メンタルヘルスの変化を監視するデバイスとして有用であることが確認された.アプリの利便性は,半数の対象者は肯定的な評価をしたが,個々の状況によって向き不向きがあるほか,対象者個人のデバイスとの互換性で問題を生じることや費用が課題として残った.Edwardらの研究では,妊婦とパートナーそれぞれに対して,EPDS,心理尺度(Kessler10: K10)を用いたセルフモニタリング法と,周産期うつ病に関する知識やEPDSハイスコア時の対応として専門家の受診方法を掲載した冊子が配付された.その結果,専門家へのアクセスなど社会的資源に関する知識は双方ともに獲得できていたが,心理状態に関して,妊婦は調査前後共に高いうつ状態にあることが明らかとなり,冊子提供による症状の有意な改善は認められなかった.

2) 産後に開始する介入

産後を対象にした文献では,対面もしくはWebによるカウンセリングが実施された(Schmied et al., 2009Shorey et al., 2015Huang et al., 2021)(表3).

表3 産後の女性を対象にした介入研究の概要

No. 著者/年/国 研究デザイン 対象者 支援形式 介入の概略 評価指標 アウトカム
主な内容 介入時期or期間 評価時期
1 Schmied et al.(2009)
オーストラリア
前後比較研究 入院中の出産直後~産後2~3日の女性(介入前145名,介入後148名) 対面支援 カウンセリング
相談内容:新生児ケア/母乳育児/育児相談 
・自由記述
 産後の助産ケアの質
 母親の健康
 母乳育児の結果
 育児の自己効力感
・ケアの質,母乳育児の成果,母親の自己効力感:前後で有意差はなかった,・母乳分泌不足,腰痛,異常出血,尿失禁を経験した女性は,介入後に良いケアやアドバイスを受けたと感じる傾向があった,・疲労感:介入後に訴える女性は少なかった
カウンセリング 出産直後~産後2,3日まで,平日の8~13時に実施 産後2~4週
2 Shorey et al.(2015)
シンガポール
質的研究 初産婦かつ産後6週までの女性:18名 対面支援 1.助産師による産後の家庭訪問と冊子提供,内容は新生児・母親のケアと家族関係について
2.フォローアップ電話
・半構造化面接 ・産後初期は否定的感情,授乳の困難,支援不足に直面していた
1.効果①新生児ケアの自信と支援希求が高まり,精神的健康が改善した②新生児とセルフケア,新生児ケアに関する知識向上に有効だった
2.課題①家庭訪問の時期の検討と回数の限界②電話によるフォローアップ延長の必要性③Webベースの心理教育のニーズ増加④教育冊子の情報不足
カウンセリング 家庭訪問:産後5~14日に90分間
フォローアップ電話:産後6週までに1回/週×3
プログラム終了後,産後9週
3 Huang et al.(2021)
中国
RCT 初産婦かつ出産~産後3か月の女性:36名(介入群18名,対照群18名) Webによる支援 Webによる支援プログラム
①育児教育②育児,家族,専門家とのコミュニケーション③専門家の相談,母親交流④児の成長と発達に関する評価ツール⑤電話またはメールによるリマインダー
・EPDS(カットオフ値の記述なし)
・PSSS:中国語版社会支援尺度
・精神的自己効力感:SICS
・SICS,EPDS,PSSSはベースラインで両群の有意差はなかった,・SICSはT1の時点で,介入群は対照群よりも高かった,・EPDS:介入群は対照群よりもT1およびT2で有意に低くなった,情緒安定と支援希求に有効でありうつ症状も緩和された
カウンセリング 産後3か月間,毎週電話またはメールを送る 介入前,介入直後,介入3か月

RCT: Randomized Controlled Trial, EPDS: Edinburgh Postnatal Depression Scale

Schmiedの研究では,病棟に子育てルームを開設し,訓練を受けたスタッフによるカウンセリングが行われ,介入前後の母乳育児の状況および心理状態の比較が行われた.その結果,介入により母乳分泌不足や産後の身体症状を訴える母親の満足度は向上したが,母乳育児の促進や母親の自己効力感に変化は見られなかった.また,スタッフの人員確保が難しく,カウンセリングの時間が一人当たり10分程度しか確保できなかった.Shoreyらの研究では,助産師が産後5~14日以内に,1回90分の家庭訪問を行い,新生児ケアや産後の家族関係を含む保健指導が実施された.加えて,産後6週間までに3回電話によるカウンセリングも実施された.その結果,母親の新生児ケアへの自信や援助希求が高まり,精神的健康が改善した.Huangらの研究では,通常ケアの家庭訪問に加え,自己効力感とコミュニケーションスキルの向上,育児スキルの獲得を目的としたWebによる教育とカウンセリングが行われ(Huang et al., 2021)た.Webプログラムは,自己効力感尺度(Self-efficacy in Infant Care Scale: SICS)や産後社会支援希求尺度(Postpartum Social Support Scale: PSSS)の向上と,EPDSスコアの改善をもたらした.

Ⅴ. 考察

1. 妊娠期における介入の特徴と課題

今回のレビューにおける,妊娠期に開始された介入プログラムは,セルフモニタリングを含む心理教育のほか,認知的,身体的に直接働きかけるものまで様々な仕様が施されていた.

セルフモニタリングに関しては,妊婦が自身の心理面の変化への気づきや適切な対応を促すために,日常生活に取り入れやすいアプリや冊子を開発し提供されていた.これらのツールには,専門家への紹介情報など,診断・治療につながる仕組みが設計されており,冊子は,利用率,満足度ともに高く,アプリの活用によってEPDSスコアの改善も認められた.周産期うつ病の50%は妊娠中に発症しているといわれ(Tokumitsu et al., 2020),その中で,セルフモニタリングは,セルフケアの一環として,自らを客観視する重要な手段と位置づけられている(服部ら,2010).しかしながら,日常の中で自らの徴候に気づくことは容易ではなく,周産期うつ病に罹患した女性に対する調査において,自身のうつ病の発症に気づかないまま進行する実態が明らかになっている(高橋,2018).さらに,メンタルヘルスに問題を抱える妊産婦は自ら支援を求めない傾向にあること(日下部,2022)も報告されており,この特性は,周産期うつ病の予防および支援の障壁となっている.スクリーニングに関しては,ハイリスク妊産婦に関するガイドラインにおいてEPDSの活用が推奨されており(日本産科婦人科学会,2023),多くの保健・医療施設において,日本語版EPDSが自記式質問票として導入されている.しかしながら,実際には,陽性的中率の低さが問題となっており,不必要な診療あるいは治療の遅れにつながる可能性が指摘されている(笠井,2021).さらに,妊娠期のうつ病の有病割合は,産後うつ病割合よりも有意に高いにもかかわらず(徳満ら,2023),EPDSの得点のみでは推測が困難であるとの指摘もあり(湯舟,2015),ハイリスク者として特定されないグレーゾーンの存在が懸念される.一般的に行われる保健所などにおけるスクリーニングは,普段とは異なる環境下で実施されるため,回答者の日常的な心理状態を正確に反映しにくく,本来必要とする支援につながらない可能性がある.その点,アプリや冊子などツールの活用は,妊婦の日常生活の中で用いる客観的指標としてセルフモニタリングが容易となり,スクリーニングの精度向上に寄与すると考えられ,今後の開発が期待される.スクリーニング後の支援に関しては,今回,自傷行為が懸念される妊婦が継続的なスクリーニングを受けても,専門家の支援につながった人が半数以下との報告もあった(Agampodi et al., 2023).一般的に,心身症状が出現してから受診するまでに半年から一年要し(荒井,2005),その要因は,家事などによる時間的余裕のなさや精神疾患に対するスティグマが挙げられている(塚崎ら,2021).専門家による適切な支援へのアクセスが阻害されることは,症状の遷延化や重症化に進展する可能性があるため,妊婦が自らの心理的異変に気付くだけでなく,専門的ケアを受けることへの障壁を除くための対策も併せて講じる必要がある.

心理教育および精神療法に関する研究は,10件中9件がRCTまたは前後比較によって評価され,心理面への効果が確認された.介入の形式はアプリ,教材,対面に分類され,対面による介入では概ね効果がみられ,アプリの提供では,中断者が課題となった.プログラムの内容に関しては,一般的にうつ病に関する心理的介入は,診断後の薬物療法を補完する治療として実施されるのに対し,対象文献では,確定診断前のハイリスク女性を対象に,予防を目的として行われていた.さらに,介入は,ハイリスク群だけでなく,低所得層の女性や,知識階級層の女性など,特定の社会的層を対象としているものも多く,支援の効率化が進められていることが示された.周産期のメンタルヘルスにおいては,すべての妊産婦を対象にしたポピュレーションアプローチの重要性が言われる一方,ハイリスクの妊産婦には早期の情報共有と個別の対応が必要である(相良,2024).その点において,支援の確実性を高める目的で,近年は対面での支援に加えて,アクセスのしやすさ,匿名性の確保,コスト面など利便性に優れたWebプログラムの需要が高まっている.今回のレビューでは,アプリの開発と提供に関する検証が行われており,EPDSスコアの有意な改善が認められた.わが国においても,アプリによる認知行動療法の報告があり,周産期うつ病予防に有効である可能性が示唆されている(西,2024).周産期における心理的支援は,対象者個々の状態に応じた柔軟な対応が必要とされる一方,多忙な臨床状況を踏まえると,対面で実施する支援以外の方略が求められていると考えられ,この点においてデジタル技術では,複数の種類を用意することが可能である.しかしながら,今回のレビューでは,アプリの提供だけでは,セルフケアの継続が困難になりやすいといった課題も明らかになったため,利便性,操作性などツールの活用度の向上について検討することが必要である.

身体活動としては,リラクゼーション,ヨガ,などの身体活動が検証されており,うつ症状の有意な低減を認め,有益な支援であることが示された.国内外におけるメタ解析において,周産期うつ病の有病率は,妊娠後期にかけて有意に増加し,出産直前がピークとなることが確認され(徳満ら,2023),妊娠中からの介入の重要性が示唆されている.薬物の副作用に対する不安から治療を拒むケースも見られる中,身体活動は,ホルモンの分泌調整(武田・内田,2013),自己効力感の向上などを通じ,心理的安定をもたらす点において期待される療法である.一方で,母体や胎児の状態は時間の経過と個々の状況で異なるため活動性が高いプログラムには慎重さを要することも課題である.今回,妊婦のエアロビクスに関する報告では,妊娠期の身体特性を考慮しウォームアップから運動,クールダウンまで安全性を重視したメニューが組まれ,なおかつ専門のインストラクターによって実施されていた(Koniak-Griffin, 1994).わが国においても妊娠期の運動に関して安全管理基準が定められ(三宅ら,2010),実施可能な条件を提示すると共に,メディカルチェックを受けながら,適切なプログラムで行うことが推奨されている.以上のように,身体活動では,心理面に対する有効性と共に安全性をも考慮した介入が必要であり,個々の妊婦の健康状態やリスク要因を踏まえた適切な運動指導の確立が求められる.特に専門家による評価を通じて,安全性を確保しながら,心理的安定を促進する身体活動の実施が重要である.

2. 産後における介入の特徴と課題

産後の介入には,妊娠期から継続して実施されたものも含まれ,対面またはWebによるカウンセリング,心理教育や精神療法が行われていた.特に,産後のみを対象とした介入では,妊娠期の介入とは焦点が異なり,周産期うつ病に関する項目は設定されず,育児に特化した内容が中心となっていた.産後の母親の生活の質(Quality of life: QOL)に影響を及ぼす要因は,育児に加え,人間関係,仕事,家庭生活と多岐にわたる(野原・中田,2017).心理的安定のためには,育児に関する自己効力感や母親としての自覚の高まり(野原,2015),母親としての不安の軽減が重要であるとされている(武田,2024).したがって,産後の母親への介入では,育児を中心とした支援を軸に,母親としての自信を高めることが,心理的安定と生活の質の向上に寄与すると考えられる.

カウンセリングの方法について,教育冊子を併用することで,育児に関する知識向上と心理的安定に効果がみられた.また,Webプログラムを活用した介入では,支援者不足を補填し,個別化された支援が可能となり,その結果,EPDSスコアにおいて有意な低減が認められた(Huang et al., 2021).一方,入院中の子育てルームで行われたカウンセリングでは,助産師の確保が困難であることも影響し,母親の自己効力感には有意な効果が認められなかった(Schmied et al., 2009).近年,支援者不足が課題となる中で,個々の事情に応じた対応の必要性が高まっており,母親の心理的支援の提供方法について模索が続けられている.特に,わが国では,メンタルヘルス支援に関する医療機関の連携強化,対象者の拡充,利用者負担の軽減など,利便性の向上を目的とした見直しが進められ,国による産後ケア事業が制度化された(子ども家庭庁,2023).産後ケアでは,母体の身体機能や精神状態に応じて,宿泊または通所形の専門家による心理的ケアやカウンセリングなどが実施されている.しかしながら,全国調査によると,半数の市町村が「事業者の確保」および「精神疾患への対応」を課題として挙げており(井指・濱松,2020),支援の定着に時間を要している.今回のレビューでは,人員不足や個別対応における課題の補完として,Webプログラムや教材の導入によって効果を得ていた.今後は,産後の母親が直面する状況に対し,支援が行きわたるための包括的な体制の構築が求められている.

3. スクリーニングおよび介入評価におけるEPDS使用の普及と課題

本レビューでは,17文献中11文献においてEPDSが対象者の選定や介入の評価に用いられていた.EPDSは本来,産後うつ病のスクリーニングを目的として開発された尺度であり,産後1か月での使用においてその信頼性・妥当性が確認されている(岡野ら,1996).しかし,今回対象とした文献では,妊娠期女性の抑うつの評価にも使用されており,カットオフ値は9/10もしくは12/13と研究間で統一されていなかった.また,EPDSスコアの変化を介入の評価に用いるなど,本来の目的とは異なる使用がなされていた.妊娠期の女性へのEPDSの適用については,近年,国内外において産後の女性に限らず妊婦のスクリーニングにも用いられており(日本産婦人科医会,2017),そのカットオフ値についても研究間によって見解が異なる(Tanuma-Takahashi et al., 2022Usuda et al., 2017).抑うつ症状への早期支援の観点から,妊娠期においてはカットオフ値を低めの設定にすることが望ましいとする指摘もあるが(Tanuma-Takahashi et al., 2022)現状では妊婦への適用に関して,その精度や妥当性が確立されているとは言い難い.一方で,各国で周産期うつ病予防の取り組みが進む中,妊娠期の抑うつは産後うつ病の重要なリスク因子であり,妊娠期から産後まで同一の尺度を用いて評価する意義は大きい.現状の臨床において,妊娠期から産後までの周産期うつ病に関する症状を一貫して評価できる尺度が限られる中,EPDSは妊婦にも比較的適用しやすい簡便な尺度であることが,その普及の一因となっていると考えられる.今後は,EPDSの適用範囲および活用方法に関するさらなる検証が課題であるとともに,臨床におけるスクリーニング指標の開発が期待される.

Ⅵ. 研究の限界

本研究では,周産期うつ病予防を目的とした介入研究の中で,セルフケアを基本とした文献を抽出しレビューを行った.その結果,有効と考えられる介入の方向性を検討することができた.一方で,介入の種類や評価指標の統一性が得られず,各介入の有効性についてエビデンスをもって説明するには至らなかった.臨床において対象者に適切な支援を提供するためには,より確実性の高い介入が求められる.今回,周産期うつ病予防のための介入の傾向を把握できたことから,今後は,既存の知見を系統的に整理統合し,有効な介入について検討していくことが必要であると考える.

Ⅶ. 結語

周産期うつ病の予防的介入に関する文献レビューを行った.分析の結果,妊娠期のみの介入,妊娠期から産後にかけての介入,産後のみの介入に分類され,対面,アプリ,Webによって実施されていた.具体的に,妊娠期にはスクリーニング,心理面への介入,身体活動など多岐にわたるプログラムが開発され,産後は主にカウンセリングが行われていた.介入の効果は各プログラムによって異なり,課題も残った.特に対面においては,継続的なスクリーニングで,ハイリスク者の脱落が明らかとなり,カウンセリングでは,専門家の人員確保が困難であった.周産期うつ病は様々な要因が背景として存在するため,個々の対応を必要とする.限られた資源を有効に活用するためには,従来のアプローチを見直し,スクリーニングから介入まで,継続かつ実施可能な介入方法の検討が望まれる.

付記:本論文の一部は,2024年27th East Asian Forum of Nursing Scholarsにおいて発表した.

謝辞:本研究は,JSPS科研費23K27900の助成を受けたものである.

利益相反:本研究における利益相反は存在しない.

著者資格:KKは研究の着想およびデザイン,データ収集と分析,論文作成までの研究全体のプロセスに貢献した.MI,MSはデザイン,データ収集と分析,論文作成までの助言を行った.YOはデータ分析,論文への助言を行った.すべての著者は最終原稿を読み,承認した.

文献
 
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