目的:病院の部署単位の看護師の組織学習を測定する日本語版組織学習尺度を作成し,信頼性と妥当性を検証した.
方法:日本語版Organizational Learning Instrument(日本語版OLI)を作成後,看護師を対象に質問紙調査を実施し,尺度の信頼性と妥当性を検証した.回答が得られた279名のデータを分析対象とした.
結果:確認的因子分析の結果,モデル適合度は基準値未満であったが,モデル修正によりモデル適合度が改善し構成概念妥当性が確認された.基準関連妥当性は相関係数が.36~.63であり,妥当性が確認された.Cronbach’s α係数は各下位因子で.70以上であり,内的整合性が確認された.時間的安定性は一部の下位因子の級内相関係数は.40台であったが,概ね妥当性が確認された.
結論:日本語版OLIは,一定の信頼性と妥当性を有することが示された.
Purpose: This study aimed to develop a Japanese version of the Organizational Learning Instrument (OLI) for nurses working in hospital units and to evaluate its reliability and validity.
Methods: The Japanese version of the OLI was developed, and a questionnaire survey was administered to nurses at a university hospital in the Tokyo metropolitan area. Data from 279 respondents were analyzed. Reliability was assessed using Cronbach’s α and intraclass correlation coefficients (ICC), while validity was examined through confirmatory factor analysis (CFA), construct validity, and criterion-related validity.
Results: The initial CFA indicated that the model fit indices did not meet the acceptable criteria. However, after model modification, the model fit improved, supporting construct validity. Criterion-related validity was confirmed, with correlation coefficients ranging from .36 to .63. Cronbach’s α coefficients for all subscales exceeded .70, demonstrating internal consistency. Regarding temporal stability, ICC values were in the .40s for some subscales and ranged from .60 to .73 for others, indicating overall acceptable stability.
Conclusion: The Japanese version of the OLI demonstrated criterion-related validity, internal consistency, and temporal stability. Although construct validity required model modification, the instrument exhibited adequate reliability and validity. This scale may serve as a useful tool for evaluating organizational learning among hospital nurses in Japan.
わが国では,人口構造や疾病構造等の社会や医療を取り巻く環境に大きな変化が生じている.さらに,2020年以降,新興感染症や災害などにより看護の提供体制は変化を余儀なくされている.このようなVUCA(Volatility;変動性,Uncertainty;不確実性,Complexity;複雑性,Ambiguity;曖昧性)時代のなかで,質の高い看護サービスの提供を維持するためには,従来の看護職の個人の能力開発に加えて,組織レベルにおいて複雑な状況に即時的に対応するための組織づくりが喫緊の課題である.その方策の一つとして,組織学習は組織が不確実な状況や環境の変化に対応するために有効とされ,環境の変化に組織全体で適応するための中心的手段である(Argote, 2011;Bingham & Davis, 2012;Crossan et al., 1999).
組織学習の概念は1960年代に誕生し,組織学習への関心は,国外において1990年前後に急速に高まり,その後広く普及している.看護分野では,国外においては2010年以降,経営学分野において発展した組織学習の概念を用いた研究が行われるようになった.Lyman et al.(2019)は,ヘルスケア分野における組織学習研究のレビューをもとに組織学習の定義を整理し,病院における組織学習の概念分析を行った.そして,病院における組織学習を「集合的な知識,認知,行動におけるポジティブな変化のプロセスであり,組織の達成能力を高めるもの」と定義した.また,先行研究では,組織学習による影響や効果について複数報告がされており,組織学習が促進されることにより看護師の組織コミットメントに影響を与えることや(Jeong et al., 2007;Tsai, 2014;Yaghoubi et al., 2010),看護師の自己肯定感(Darban et al., 2020)や職務満足度(Jeong et al., 2007)を高めることが明らかとなっている.現在,組織学習を測定する尺度は複数開発されているが,これらの尺度は,企業を想定として開発されたものが多く,ヘルスケア分野においては発展の途上にある.また,これらの尺度は組織全体を測定する尺度であることから,部署単位の測定には対応していないことが指摘されている(Lyman et al., 2022).先行研究によると病棟などの部署が異なることが臨床およびスタッフの幅広いアウトカムに大きく影響することが示唆されている(Lyman et al., 2022)ことからも,部署単位に特化した尺度が必要である.
この課題に対してLymanらは,部署単位に特化したOrganizational Learning Instrument(以下OLI)を開発した(Lyman et al., 2022;Lyman & Thorum, 2022).Lyman et al.(2019)は,病院における組織学習の文脈的要因,メカニズムおよび成果を特定した.さらに,そのモデルに基づき,病院の看護組織の部署単位に特化したOrganizational Learning Instrument Mechanisms;OLI-MおよびOrganizational Learning Instrument Context;OLI-Cの2種類の尺度を開発した(Lyman et al., 2022;Lyman & Thorum, 2022).OLI-Mは,組織学習のメカニズムを測定する尺度であり,OLI-Cは,組織学習が起こる文脈を測定する尺度である.Lymanらの先行研究は,組織学習論を病院の看護師というコンテクストに合わせて独自のモデルを確立した点,さらに,病院や施設レベルの組織学習ではなく,部署単位の組織学習をとらえることを可能にしている点において,既存の看護分野の組織学習研究において新たな視点を盛り込んでいるといえる.これらの背景より,Lymanらが開発したOLIは,部署の看護師の組織学習が促進される要因を可視化するうえで有用であると考える.
一方で,組織学習は,ある一定の組織文化やパラダイムのもとで相互作用を持ちながら学習が行われる(白石,2009)ことから,文化的背景が影響を及ぼす可能性がある.さらに,日本の病院の看護師を取り巻く文化的背景やコンテクストは,尺度が開発された米国とは異なる可能性があり,わが国の病院の看護師に適応可能な尺度を開発する必要がある.しかしながら,日本の病院の部署単位において測定可能な看護師の組織学習尺度はみられない.以上のことから,病院の部署単位において使用可能な日本語版組織学習尺度を開発することが必要であると考えた.
Lymanらによって作成されたOLIの日本語版尺度を開発し,病院に勤務する看護師を対象にその信頼性と妥当性を検証することを目的とした.
本研究では,日本語版OLIを作成した後,病院に勤務する看護師を対象に自記式質問紙調査およびオンライン調査を実施し,尺度の信頼性と妥当性を検証した.
1. 用語の定義本研究において組織学習とは,Lyman et al.(2019)の定義をもとに「組織の集合的な知識,認知,行動におけるポジティブな変化のプロセスであり,組織の達成能力を高めるもの」と定義した.
2. Organizational Learning Instrument(OLI)OLIは,Organizational Learning Instrument Mechanisms(以下OLI-M)および,Organizational Learning Instrument Context(以下OLI-C)の2種類の尺度で構成されている.OLI-Mは,①Interaction,②Collective Reflection,③Deliberate Learning,④Retention,⑤Leadershipの5因子を下位概念とする尺度であり,全36項目で構成される.OLI-Cは,①Shared Purpose,②Shared Motivation,③Psychologically Safe Relationships,④Infrastructure,⑤Quality Improvement skills,⑥Experience as a Teamの6因子を下位概念とする尺度であり,全40項目で構成される.これらの両尺度は信頼性と妥当性の確認がされている.両尺度の各項目の回答は,「全くそう思わない」「そう思わない」「そう思う」「強くそう思う」の4件法のリッカートスケールである.得点が高いほど組織学習の程度が高いことを示す.
3. 日本語版組織学習尺度(日本語版OLI)の作成日本語版の作成にあたっては,稲田(2015)による尺度翻訳に関する基本指針を参考に,事前準備,順翻訳,調整,逆翻訳,逆翻訳のレビュー,認知デブリーフィングの手順に沿って作成した.
まず事前準備として,OLIを開発した原版作者に日本語版作成の承諾を得た.原版作者には,同時期に他の研究者が日本語版尺度の作成をしていないことを確認した.OLIは,母国語が日本語であり看護管理学を専門とし,尺度翻訳経験者1名を含む看護学研究者3名で構成される順翻訳チームと医療英語を専門とする職業翻訳家がそれぞれ独立して順翻訳を行った.順翻訳チームを2名以上とした理由は,翻訳者が1名であると,その翻訳者独自のスタイルが多分に反映されてしまうことから,2名以上で翻訳することが推奨されているため(稲田,2015)である.また,順翻訳チームは,原版尺度の使用目的や因子構造を知る研究者で構成した.順翻訳では,事前に尺度の背景や構成概念などを共有することで,原版の意味を損なわず,共通理解が図れるようにした.原版の文化特有の表現や固有名詞がある場合には,原版作者に確認し,概念の意味を損なわないようにしながら日本文化に即した表現に修正した.表面妥当性の確保のため,順翻訳した尺度は,病院で臨床経験が5年以上の看護師5名を対象に認知デブリーフィングとプレテストを行い,回答しにくい質問はないか,概念を正しく表している表現になっているか,回答に要した時間について検証した.さらに,順翻訳チームで翻訳した内容について議論し,誤訳を修正するとともに,翻訳が個人的なスタイルに偏らないように調整を行った.順翻訳作成後,順翻訳作業に携わっていない職業翻訳家2名に順翻訳版を原版の英語へ逆翻訳を依頼した.順翻訳の質を評価するために,原版著者に原版と逆翻訳版を比較してもらい,双方が等価であるか逆翻訳のレビューを行った.乖離がある場合には,順翻訳もしくは逆翻訳のプロセスにおいて問題がないか検討し,問題がある場合には,順翻訳チームで検討し,修正を行った.最後に,逆翻訳の最終版を原版著者に確認してもらい,逆翻訳版と原版を比較して各項目表現が同等の意味を有しているか,各項目の概念に乖離が生じていないかを確認した.乖離がある場合には,原版著者と研究者の2者で認知デブリーフィングを行い,等価性について確認をした.
4. 日本語版OLIの信頼性・妥当性の検証日本語版OLIの信頼性と妥当性を検証するために,病院の看護師を対象とした無記名自記式質問紙調査およびオンライン調査を実施し,横断的研究を行った.なお,本研究では,時間的安定性を確認するために再テスト法を実施した.再テストを実施する間隔は,間隔が短いと前回の回答記憶により回答が影響を受け,間隔が長すぎると個人や組織の状態が変化している可能性があるため,1回目より4週間後とした.
1) 対象者本研究では,首都圏(1都2県)の大学病院4施設を対象とした.原版尺度の検証対象である米国のマグネットホスピタルは日本国内において極めて少ないため,組織特性が近似する大学付属病院を選定した.さらに,再テスト法における追跡率と回答精度の担保を優先し,研究協力が得られる4施設を機縁法で抽出した.対象者は,①常勤の看護師,②当該部署に配属されて2年目以上の者,③看護師経験年数が2年目以上の者,以上のすべての選定基準を満たす看護師とした.対象には,看護管理者も含むこととした.
サンプル数は,COSMIN(Consensus-based Standards for the selection of health Measurement Instruments)チェックリスト(Mokkink et al., 2019)に基づき算出した.サンプル数は,項目数の7倍もしくは100名以上が適切であるとされ,内的整合性においては,必要サンプル数は100名以上とされる.また,因子分析では,項目数の5~10倍のサンプル数が必要であるとされる(Fayers & Machin, 2000/2005).本研究で使用するOLI-Mは全36項目,OLI-Cは全40項目であり,それぞれ独立した尺度であることから,252~360のサンプル数が目安となる.そのため,有効回答数を30%と見込み,質問紙の目標配布数を1,000以上とすることが妥当であると考えた.
2) データ収集期間データ収集は2023年8月17日~9月30日に実施した.うち1施設では,1回目調査を8月17日~31日,2回目調査をその4週間後の9月15日~30日とした.
3) データ収集方法対象となる施設の看護部長へ研究説明書を郵送し,自記式質問紙調査もしくはオンライン調査のいずれか希望する方法を選択してもらった.なお,再テストは,研究協力の同意が得られた1施設の10部署に配布をした.
(1)自記式質問紙調査対象部署の看護管理者を通して対象者へ説明書が添付された質問紙を配布し,留め置き法により2週間後に研究者が回収した.再テスト法による1回目と2回目調査の回答が対応できるように施設コードに加え,対象者に誕生日4桁と氏名頭文字1文字を回答に記載してもらった.
(2)オンライン調査対象部署の看護管理者を通じて対象者へオンライン調査に回答フォームにアクセスするためのQRコードが添付された説明書を配布した.回答期間は2週間とし,自記式質問紙調査同様,任意のIDを入力する欄を設けた.
4) 調査項目1回目は,個人属性,日本語版OLI-M,日本語版OLI-C,日本語版組織学習サブプロセス測定尺度の項目を尋ねた.2回目は,個人属性,日本語版OLI-M,日本語版OLI-Cの項目を尋ねた.
5) データの分析方法日本語版OLIは,各項目の度数分布,平均値,標準偏差を算出し,天井効果とフロア効果がないかを確認した.なお,日本語版OLI-Mと日本語版OLI-Cは独立した尺度であるため,確認的因子分析および探索的因子分析,内的整合性の検証は各々で行った.確認的因子分析では,Amos ver.28を用いた.それ以外の分析では,SPSS ver.29を使用した.有意水準は両側5%とした.
(1)基準関連妥当性基準関連妥当性を検証するために,近接している概念である日本語版組織学習サブプロセス測定尺度(石井ら,2020)を使用し,下位因子の相関分析を行った.この尺度は,Flores et al.(2010)の組織学習サブプロセス測定尺度をもとに石井らが日本語版を開発し,信頼性と妥当性が確認されている.「情報獲得」「情報分配」「情報解釈」「情報統合」「組織記憶」の5つの下位概念および23項目で構成される.回答形式は,「全くそう思わない」「そう思わない」「どちらとも言えない」「そう思う」「強くそう思う」の5件法のリッカートスケールである.尺度の使用については,原版著者に使用の承諾を得た.
(2)構成概念妥当性構成概念妥当性の検証では,原版に則り確認的因子分析(CFA)を行い,モデル適合度をGFI(Goodness of Fit Index),AGFI(Adjusted Goodness of Fit Index),CFI(Comparative Fit Index),RMSEA(Root Mean Square Error of Approximation)により評価した.モデル適合度がCFI = .90未満の場合には,探索的因子分析を繰り返して下位概念の因子構造を確認するとともにモデル修正指数に基づき尺度の修正を行った.モデル修正後は,再度確認的因子分析を行い,モデル適合度を確認した.
(3)信頼性内的整合性を確認するために,下位尺度ごとにCronbach’s α係数およびItem-Total相関(I-T相関)を算出した.再テスト法は,1回目および2回目調査の結果を用いて級内相関係数(Intraclass Correlation Coefficient:ICC)を算出した.信頼性の検証には,Koo & Li(2016)のガイドラインに基づき,ICC(1,1)を選択した.これは,自記式質問紙による測定は特定の評価者としてモデルに組み込む必要がなく,一元配置モデルによる絶対一致度を算出することで,尺度の時間的安定性を厳格に評価できるためである.
5. 倫理的配慮本研究は,聖路加国際大学研究倫理審査委員会(承認番号22A-105)および東邦大学看護学部倫理審査委員会(承認番号KN22009)の承認を得て実施した.
首都圏の大学病院4施設33部署1,099名の看護師に調査票を配布し,304名から回収した(回収率:27.7%).そのうち,日本語版OLIの回答に欠損があるものを除外し,分析対象は279名となった(有効回答率:91.7%).2回目の調査は,同意が得られた1施設が対象となり,10部署330名に配布し,49名から回答を得た.そのうち,日本語版OLIの回答に欠損があるものを除外し,分析対象は39名となった.
対象者の属性は表1に示した.性別は女性91.8%,男性8.2%,年代は20歳代が43.0%と最も多く,次いで30歳代が26.2%であった.経験年数平均は11.7年(標準偏差,以下SD 9.1年),部署での経験年数平均は6.3年(SD 5.9年)であった.職位は,非管理職が81.7%と最も多く,次いで主任もしくは相当職が11.8%であった.
N = 279
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n (%) or Means ± SD |
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|---|---|
| 性別 | |
| 女性 | 256(91.8) |
| 男性 | 23(8.2) |
| 年代 | |
| 20歳代 | 120(43.0) |
| 30歳代 | 73(26.2) |
| 40歳代 | 54(19.4) |
| 50歳代 | 31(11.1) |
| 60歳代以上 | 1(0.4) |
| 専門学歴 | |
| 看護系大学 | 156(55.9) |
| 看護師養成3年課程 | 78(28.0) |
| 看護短期大学 | 34(12.2) |
| 大学院修士課程 | 3(1.1) |
| 5年一貫看護師養成課程 | 2(0.7) |
| 大学院博士課程 | 1(0.4) |
| その他 | 5(1.8) |
| 診療科 | |
| 内科外科混合病棟 | 67(24.0) |
| 内科系病棟 | 39(14.0) |
| 外科系病棟 | 21(7.5) |
| 救急・集中治療系部門および病棟 | 45(16.1) |
| 外来(検査室も含む) | 44(15.8) |
| 手術室 | 35(12.5) |
| 小児科系病棟 | 17(6.1) |
| 精神科系病棟 | 9(3.2) |
| その他 | 2(0.7) |
| 職位 | |
| スタッフ(非管理職) | 228(81.7) |
| 主任もしくは相当職 | 33(11.8) |
| 副看護師長もしくは相当職 | 12(4.3) |
| 看護師長もしくは相当職 | 5(1.8) |
| 未回答 | 1(0.4) |
| 看護師経験年数 | 11.7 ± 9.1 |
| 部署での経験年数 | 6.3 ± 5.9 |
日本語版OLI,日本語版組織学習サブプロセス測定尺度は,各項目の度数分布,平均値,標準偏差を算出し,天井効果とフロア効果がないことを確認した.各下位尺度得点の正規性はShapiro-Wilk検定およびKolmogorov-Smirnov検定で確認した.1つの下位尺度を除いてp < .001であり正規性が棄却されたが,Q-Qプロットの視覚的確認では概ね直線に沿っており正規性は保たれていると判断した.なお,日本語版OLIは項目の重複がないかを確認するために,各項目間の相関係数を算出した(付録1,2).
3. 構成概念妥当性の検証 1) 確認的因子分析日本語版OLIの構成概念妥当性を検証するために,確認的因子分析を行った.日本語版OLI-Mでは,原版の因子構造に基づき5因子36項目において,確認的因子分析を行った.モデル適合度は,χ2 = 1,787.347(d/f = 584, p < .001),CFI = .823,GFI = .734,AGFI = .697,RMSEA = .086であった.日本語版OLI-Cでは,原版の因子構造に基づき6因子40項目において,確認的因子分析を行った.モデル適合度は,χ2 = 2,141.465(d/f = 725, p < .001),CFI = .823,GFI = .699,AGFI = .659,RMSEA = .084であった.
2) 探索的因子分析確認的因子分析の結果をもとに,さらに尺度の構成概念を検討するために,探索的因子分析を行った.
(1)日本語版OLI-Mの探索的因子分析初回の因子分析(最尤法・プロマックス回転)では,原版をもとに5因子構造で分析したところ,【チームでのリフレクション】因子が2項目のみとなった.スクリープロットの値からも因子数を減らす必要があると考え,4因子構造で2回目の因子分析を行った.その結果,M5「この部署は院内の他部署と連携している」とM20「私の部署では,メンバーが何か役に立つことを学んだら,それを他のメンバーと共有している」の2項目が因子負荷量.30以下となったため,M5およびM20の2項目を削除し,3回目の因子分析を行った.最終的な因子パターンおよび各下位因子のCronbach’s α係数を表2に示す.
N = 279
| 因子負荷量 | Cronbach’s α α = 0.96 |
||||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 因子名 | 項目 | 1 | 2 | 3 | 4 | ||
| リーダーシップ | M34 | この部署の個人または複数の人は,チームメンバーが部署の改善に取り組むべきであるという意欲や期待を感じさせることに貢献している | 0.89 | 0.00 | 0.07 | –0.08 | 0.94 |
| M35 | この部署の個人または複数の人は,部署の改善のための変化をリードすることに貢献している | 0.82 | 0.09 | 0.04 | –0.10 | ||
| M30 | この部署の個人または複数の人は,部署の改善を行うためにチームメンバーのモチベーションを高めている | 0.79 | 0.00 | –0.01 | 0.09 | ||
| M36 | この部署の個人または複数の人は,この部署で行われた改善を長期的に持続させることに貢献している | 0.79 | 0.17 | –0.11 | –0.04 | ||
| M31 | この部署の個人または複数の人は,部署を改善するためにチームメンバーをエンパワーしている *エンパワー:チームメンバーからの承認・励まし・尊重 |
0.77 | –0.24 | 0.16 | 0.17 | ||
| M32 | この部署の個人または複数の人は,改善を促進するためにチームメンバー間での協働関係の構築に貢献している | 0.75 | 0.01 | 0.03 | 0.09 | ||
| M33 | この部署の個人または複数の人は,改善を促進するために複数分野の専門家からなるチームのメンバー間での協働関係の構築に貢献している | 0.63 | 0.15 | 0.12 | –0.04 | ||
| M29 | この部署の個人または複数の人は,改善を促進する風土の醸成に貢献している | 0.60 | 0.14 | –0.11 | 0.20 | ||
| 意図的な学習 | M18 | 私の部署では,チームメンバーは部署で達成した成功から学ぶためのプロセスに参画している | 0.08 | 0.93 | 0.05 | –0.22 | 0.91 |
| M17 | 私の部署では,チームメンバーは部署で生じた問題から学ぶためのプロセスに参画している | 0.14 | 0.84 | –0.12 | –0.02 | ||
| M16 | 私の部署では,チームメンバーは部署を改善する方法を積極的に探し求めている | 0.20 | 0.68 | –0.06 | –0.04 | ||
| M11 | 私の部署では,部署の成功を発展させる方法を話しあうための正式なミーティングが定期的に開催されている | –0.18 | 0.62 | 0.10 | 0.11 | ||
| M15 | 私の部署では,大規模な変更をする前に小規模な範囲でテストを行っている | 0.08 | 0.61 | –0.03 | 0.03 | ||
| M22 | 私の部署では,チームメンバーが部署のパフォーマンスを向上させる方法として対人関係スキルを練習することがよくある(例:ロールプレイの活用) | 0.16 | 0.59 | 0.03 | –0.05 | ||
| M13 | 私の部署では,チームメンバーの意見が部署のパフォーマンスを向上する手段として収集されている | 0.01 | 0.57 | 0.17 | 0.11 | ||
| M21 | 私の部署では,チームメンバーが部署のパフォーマンスを向上させる方法としてシミュレーションをよく用いている | 0.13 | 0.53 | 0.05 | 0.03 | ||
| M12 | 私の部署では,部署のネガティブな結果を改善する方法を話しあうための正式なミーティングが定期的に開催されている | –0.20 | 0.52 | –0.03 | 0.39 | ||
| M19 | 私の部署では,チームメンバーは部署のパフォーマンスを改善するアイデアとして外部の情報資源を利用している(例:学会,職能団体,論文,他の病院の部署) | 0.11 | 0.48 | 0.09 | 0.05 | ||
| M14 | 私の部署では,チームメンバーは部署のパフォーマンスを改善する手段として定期的なトレーニングを受けている(例:勉強会,研修会) | 0.11 | 0.42 | 0.05 | 0.18 | ||
| M06 | この部署は院外の団体と連携している | –0.21 | 0.39 | 0.25 | 0.15 | ||
| チームでの相互リフレクション | M04 | 私の部署では,チームメンバーが互いに異なる視点を交換することがよくある | –0.02 | 0.04 | 0.87 | –0.12 | 0.90 |
| M03 | 私の部署では,チームメンバーが部署の改善のためのアイデアを交換することがよくある | 0.04 | 0.02 | 0.79 | –0.01 | ||
| M01 | 私の部署では,チームメンバーが他のメンバーと知識の交換をすることがよくある | 0.06 | –0.09 | 0.75 | 0.06 | ||
| M02 | 私の部署では,必要に応じてチームメンバー同士で助言をしあうことがよくある | 0.01 | –0.12 | 0.68 | 0.20 | ||
| M08 | 私の部署では,チームメンバーは仕事の経験から学ぶために話しあうことがよくある | 0.09 | 0.06 | 0.67 | 0.01 | ||
| M09 | 私の部署では,チームメンバーは部署の成功から学んだことを話しあうことがよくある | 0.00 | 0.28 | 0.60 | –0.10 | ||
| M07 | 私の部署では,チームメンバーは互いにコーチングまたはメンタリングを行うことがよくある *メンタリング:対話による気づきと助言によって自発的な成長を支援すること |
0.28 | 0.09 | 0.46 | –0.08 | ||
| M10 | 私の部署では,チームメンバーは部署のネガティブな結果から学んだことを話しあうことがよくある | –0.13 | 0.21 | 0.37 | 0.27 | ||
| 保持 | M26 | 私の部署では,エビデンスに基づいたガイドラインが部署の方針・実践・手順に組み込まれている | –0.04 | 0.09 | 0.00 | 0.72 | 0.80 |
| M27 | 私の部署では,経験を積んだチームメンバーが部署のオリエンテーションを受ける新入職者に重要な情報を伝えている | 0.19 | –0.16 | 0.06 | 0.65 | ||
| M25 | 私の部署では,チームメンバーはエラーやインシデントについての重要な情報を報告している | 0.04 | –0.04 | 0.06 | 0.64 | ||
| M23 | 私の部署では,新たな医療機器を導入するときに,チームメンバーは患者ケアに組み入れる前にその機器を使用して練習をすることがよくある | 0.08 | 0.19 | –0.07 | 0.38 | ||
| M28 | 私の部署では,視覚的なディスプレイがスタッフの重要な情報の記憶を助けるために使われている(例:掲示板,電子掲示板) | 0.26 | 0.24 | –0.18 | 0.34 | ||
| M24 | 私の部署では,新しい臨床手順を導入するときに,チームメンバーは患者ケアに組み入れる前にその手順の練習をすることがよくある | 0.09 | 0.29 | 0.03 | 0.30 | ||
因子抽出法:最尤法
回転法:Kaiserの正規化を伴うプロマックス法
原版の因子構造と比較すると,第1因子の【リーダーシップ】は,原版と同様の項目が集約された.第3因子には,【相互作用】と【チームでのリフレクション】の下位概念の項目が含まれたため,第3因子を新たに【チームでの相互リフレクション】と命名した.第2因子の【意図的な学習】と第4因子の【保持】は,おおむね原版と同様の項目であったが,第2因子の【意図的な学習】には,【チームでのリフレクション】の項目であるM11「私の部署では,部署の成功を発展させる方法を話しあうための正式なミーティングが定期的に開催されている」とM12「私の部署では,部署のネガティブな結果を改善する方法を話しあうための正式なミーティングが定期的に開催されている」の2項目,【相互作用】のM06「この部署は院外の団体と連携している」の1項目が含まれていた.第4因子の【保持】には,【意図的な学習】の項目である,M23「私の部署では,新たな医療機器を導入するときに,チームメンバーは患者ケアに組み入れる前にその機器を使用して練習をすることがよくある」とM24「私の部署では,新しい臨床手順を導入するときに,チームメンバーは患者ケアに組み入れる前にその手順の練習をすることがよくある」の2項目が含まれた.M24は,因子負荷量が0.3以下であったが,M24を削除して因子分析を行ったところ,因子負荷量が低下する項目が3項目に増加したため,M24は削除せず残すこととした.探索的因子分析により4因子構造34項目へ修正した後の各下位因子のCronbach’s α係数は,α = .80以上であった.
(2)日本語版OLI-Cの探索的因子分析初回の因子分析(主因子法・プロマックス回転)では,原版をもとに6因子構造で因子分析行った.その結果,C07「この部署では,チームメンバーが部署を改善するためのインセンティブがある」,C19「この部署では,チームメンバーが重要な問題について話しあうための適切な場所がある」,C27「この部署では,チームメンバーが互いに情報共有するための定期的なミーティングが設けられている」,C28「この部署では,部署で起きたインシデントを振り返るための正式なプロセスが設けられている」の4項目において因子負荷量が0.3以下となった.2回目は,これらの4項目を削除して因子分析を行った.最終的な因子パターンおよび各下位因子のCronbach’s α係数を表3に示す.
N = 279
| 因子負荷量 | Cronbach’s α α = 0.96 |
||||||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 因子名 | 項目 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | ||
| チームとしての経験とスキル | C38 | この部署のチームメンバーは,多くの困難な患者の状況において一緒に協力し合ってきた | 0.73 | 0.28 | 0.10 | –0.08 | 0.05 | –0.23 | 0.93 |
| C32 | この部署のチームメンバーは,エラーを報告するための手順に従うスキルがある | 0.70 | –0.02 | –0.01 | –0.14 | 0.13 | 0.22 | ||
| C37 | この部署のチームメンバーは,チームとして一緒に仕事をした豊富な経験がある | 0.69 | 0.07 | 0.14 | 0.02 | –0.05 | –0.12 | ||
| C33 | この部署のチームメンバーは,問題が生じた時に問題の根本的な原因を特定するスキルがある | 0.66 | –0.05 | –0.11 | 0.05 | 0.06 | 0.35 | ||
| C34 | この部署のチームメンバーは,問題が生じた時に一時しのぎではなく長期的な解決策を見出すスキルがある | 0.64 | –0.11 | –0.02 | 0.18 | 0.01 | 0.23 | ||
| C39 | この部署のチームメンバーは,専門的な知識・経験が求められる患者ケア*の提供のために一緒に仕事をした豊富な経験がある *専門的な知識・経験が求められる患者ケア:集中治療室,手術室などでの患者ケア |
0.64 | 0.08 | –0.02 | 0.09 | –0.08 | 0.02 | ||
| C30 | この部署のチームメンバーは,エラーを特定するスキルがある | 0.61 | –0.05 | –0.05 | –0.09 | –0.12 | 0.52 | ||
| C36 | この部署のチームメンバーは,複数分野の専門家からなるチーム(例:緩和ケアチーム,NST)のメンバーと協働するスキルがある | 0.59 | –0.09 | 0.12 | 0.08 | 0.20 | –0.16 | ||
| C29 | この部署のチームメンバーは,問題解決のために協働するスキルがある | 0.50 | 0.07 | –0.14 | 0.03 | –0.02 | 0.37 | ||
| C40 | この部署のチームメンバーは,チームとして一緒にトレーニングを受けた豊富な経験がある | 0.49 | 0.15 | 0.04 | 0.04 | –0.08 | 0.17 | ||
| C35 | この部署のチームメンバーは,必要な時に率直に発言するスキルがある | 0.41 | 0.28 | 0.13 | 0.05 | 0.01 | –0.03 | ||
| C31 | この部署のチームメンバーは,部署のパフォーマンスの傾向を特定するためのデータを分析するスキルがある | 0.33 | –0.03 | –0.06 | 0.06 | –0.09 | 0.68 | ||
| 部署内の心理的に安全な関係性 | C12 | この部署では,チームメンバーは互いに尊重し合い,仲間との関係を築いている | 0.16 | 0.88 | –0.08 | –0.06 | 0.03 | –0.16 | 0.93 |
| C17 | この部署では,チームメンバーは互いに協力関係を築くことに安心感をもっている | 0.04 | 0.88 | –0.04 | –0.15 | 0.03 | 0.07 | ||
| C16 | この部署では,チームメンバーが部署を改善するための意見を気軽に言えると感じている | –0.07 | 0.84 | 0.03 | –0.08 | 0.00 | 0.15 | ||
| C13 | この部署では,チームメンバーは専門職として互いに良い関係を築いている | 0.15 | 0.83 | –0.05 | –0.04 | 0.08 | –0.15 | ||
| C15 | この部署では,チームメンバーが安心して部署の課題や困難について提起できる | 0.01 | 0.79 | 0.01 | 0.00 | –0.09 | 0.10 | ||
| C14 | この部署では,チームメンバーが患者ケアについて取り組むべき問題を安心して議論できる | 0.25 | 0.69 | 0.01 | 0.02 | –0.09 | –0.05 | ||
| 学習活動の基盤 | C21 | この部署では,チームメンバーがアイデアや情報を効果的に共有できるテクノロジーを利用できる(例:電子メール,Googleドライブ,Microsoft Teams,Slackなど) | –0.05 | –0.03 | 0.85 | 0.00 | –0.07 | 0.09 | 0.86 |
| C22 | この部署のリーダーにはスタッフと重要な情報を共有するための効果的な手段がある(例:掲示板,ポスター,チラシ,電子メール,コンピューターのポップアップメッセージなど) | 0.01 | –0.05 | 0.79 | –0.03 | 0.02 | 0.15 | ||
| C23 | この部署には重要な情報にアクセスするための手段が備えられている(例:議事録の共有,情報共有ファイル,院内・学内サイトなど) | 0.21 | –0.03 | 0.72 | 0.03 | –0.07 | 0.01 | ||
| C24 | この部署にはスタッフの意見やフィードバックを収集する効果的な方法がある(例:意見箱,Googleフォーム,Microsoft formsなど) | –0.10 | 0.02 | 0.68 | 0.09 | 0.03 | 0.17 | ||
| C20 | この部署には,定期的なミーティングを開催するための特定の場所がある(例:スタッフラウンジ,カンファレンスルーム) | 0.13 | –0.01 | 0.55 | –0.01 | 0.02 | –0.08 | ||
| 目的とモチベーションの共有 | C02 | この部署では,チームメンバーが部署の改善について目的を共有している | 0.08 | –0.15 | –0.02 | 1.02 | 0.05 | –0.09 | 0.92 |
| C01 | この部署では,チームメンバーが部署の改善目標を共有している | 0.10 | –0.07 | 0.06 | 0.88 | –0.04 | –0.09 | ||
| C03 | この部署では,チームメンバーが部署を改善するための共通のビジョンを持っている | 0.03 | 0.02 | –0.04 | 0.81 | 0.05 | 0.00 | ||
| C05 | この部署では,チームメンバーが部署の改善に取り組むことが支援されていると感じている | –0.13 | 0.40 | 0.03 | 0.49 | –0.03 | 0.14 | ||
| C04 | この部署では,チームメンバーは自分たちの意見が尊重されていると感じている | –0.14 | 0.43 | 0.00 | 0.47 | 0.00 | 0.09 | ||
| C06 | この部署では,チームメンバーは部署を改善するためにエンパワー*されていると感じている *エンパワー:チームメンバーからの承認・励まし・尊重 |
–0.07 | 0.55 | 0.08 | 0.35 | –0.03 | 0.03 | ||
| 他組織との心理的に安全な関係性 | C10 | この部署は,他施設の部署と良好な関係にある | 0.00 | 0.05 | –0.08 | –0.01 | 0.90 | 0.02 | 0.81 |
| C11 | この部署は,他の団体(職能団体*や顧問)と良好な関係にある *職能団体の例:公益社団法人日本看護協会など |
–0.01 | –0.08 | –0.02 | 0.03 | 0.66 | 0.23 | ||
| C09 | この部署は,院内の他部署と良好な関係にある | 0.10 | 0.02 | 0.09 | 0.08 | 0.62 | –0.07 | ||
| 資源 | C25 | この部署には部署の改善を行うための財源がある | –0.05 | 0.08 | 0.34 | –0.17 | 0.09 | 0.59 | 0.79 |
| C26 | この部署には部署の改善を行うための十分な人員が配置されている | –0.01 | –0.05 | 0.22 | –0.07 | 0.14 | 0.53 | ||
| C08 | この部署では,チームメンバーは部署の改善に取り組むことを楽しんでいる | –0.06 | 0.32 | –0.13 | 0.16 | 0.16 | 0.35 | ||
| C18 | この部署では,チームメンバーが対処が必要な問題の議論をするための時間がある | –0.04 | 0.27 | 0.12 | 0.03 | 0.17 | 0.31 | ||
因子抽出法:主因子法
回転法:Kaiserの正規化を伴うプロマックス法
第1因子には,【チームとしての経験】と【質改善のスキル】の下位概念の項目が一つの因子に集約されたため,第1因子を新たに【チームとしての経験とスキル】と命名した.【心理的に安全な関係性】の項目は,第2因子と第5因子に分散された.第2因子の項目の内容をみると,C12「この部署では,チームメンバーは互いに尊重し合い,仲間との関係を築いている」など,部署内の心理的安全性に関する項目であったため,第2因子を新たに【部署内の心理的に安全な関係性】と命名した.第5因子は,C10「この部署は,他施設の部署と良好な関係にある」など,部署外の心理的安全性に関する項目であったため,第5因子を新たに【他組織との心理的に安全な関係性】と命名した.第3因子【学習活動の基盤】は,おおむね原版と同様の項目であったが,【学習活動の基盤】のうち3項目(C18・C25・C26)が第6因子となった.第6因子は,C25「この部署には部署の改善を行うための財源がある」,C26「この部署には部署の改善を行うための十分な人員が配置されている」など,人員や財源などの組織の資源に関する項目が集約されたため,新たに【資源】と命名した.C31「この部署のチームメンバーは,部署のパフォーマンスの傾向を特定するためのデータを分析するスキルがある」は,第6因子が最も高い因子負荷量を示していたが,第1因子においても0.33の因子負荷量を示した.C31は,スキルの内容に関する項目であり,第1因子を説明する項目とするほうが適切であると考え,第1因子とした.第4因子は,【目的の共有】と【モチベーションの共有】の項目が集約されたため,新たに【目的とモチベーションの共有】と命名した.探索的因子分析により6因子構造36項目へ修正した後の各下位因子のCronbach’s α係数は,α = .70以上であった.
(3)モデル修正後のモデル適合度モデル修正後に再度確認的因子分析を行った結果,日本語版OLI-Mのモデル適合度は,χ2 = 1,141.591(d/f = 513, p < .001),CFI = .903,GFI = .797,AGFI = .765,RMSEA = .066であった(図1).日本語版OLI-Cのモデル適合度は,χ2 = 1,277.731(d/f = 570, p < .001),CFI = .903,GFI = .790,AGFI = .755,RMSEA = .067であった(図2).


日本語版OLIと日本語版組織学習サブプロセス測定尺度との下位尺度の相関係数は,日本語版OLI-Mはr = .38~.63,日本語版OLI-Cはr = .36~.63であり,有意な正の相関を示した.尺度全体の相関係数は,日本語版OLI-Mはr = .69,日本語版OLI-Cはr = .66(p < .001)であった(表4).
N = 279
| 情報獲得 | 情報分配 | 情報解釈 | 情報統合 | 情報記憶 | 日本語版組織学習 サブプロセス測定尺度 |
||
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 日本語版OLI-M | 相互作用 | .41** | .46** | .53** | .53** | .43** | .69*** |
| チームでのリフレクション | .40** | .50** | .49** | .54** | .38** | ||
| 意図的な学習 | .52** | .59** | .58** | .63** | .48** | ||
| 保持 | .43** | .51** | .57** | .49** | .55** | ||
| リーダーシップ | .49** | .53** | .57** | .59** | .48** | ||
| 日本語版OLI-C | 目的の共有 | .38** | .42** | .43** | .48** | .37** | .66*** |
| モチベーションの共有 | .36** | .45** | .48** | .55** | .39** | ||
| 心理的に安全な関係性 | .45** | .50** | .56** | .56** | .45** | ||
| 学習活動の基盤 | .45** | .51** | .58** | .63** | .52** | ||
| 質改善のスキル | .44** | .53** | .61** | .57** | .48** | ||
| チームとしての経験 | .39** | .47** | .52** | .53** | .37** |
**. p < .01 ***. p < .001
各項目のI-T相関は,日本語版OLI-Mは,【相互作用】では.50~.74,【チームでのリフレクション】では.59~.62,【意図的な学習】では.47~78,【保持】では.46~.63,【リーダーシップ】では.76~.86であった.日本語版OLI-Cでは,【目的の共有】では.79~.90,【モチベーションの共有】では.65~.77,【心理的に安全な関係性】では.48~.76,【学習活動の基盤】では.53~.70,【質改善のスキル】では.55~.83,【チームとしての経験】では.70~.74であった.尺度全体のCronbach’s α係数については,日本語版OLI-M・日本語版OLI-Cともにα = .96であった.また,各下位尺度のCronbach’s α係数は,日本語版OLI-Mではα = .76~.94,日本語版OLI-Cではα = .87~.92であった.
6. 時間的安定性の検証再テスト法による信頼性を確認するため,ICC(1,1)を算出した.日本語版OLI-Mでは【相互作用】r = .60,【チームでのリフレクション】r = .68,【意図的な学習】r = .61,【保持】r = .45,【リーダーシップ】r = .63であった.日本語版OLI-Cでは,【目的の共有】r = .49,【モチベーションの共有】r = .42,【心理的に安全な関係性】r = .73,【学習活動の基盤】r = .62,【質改善のスキル】r = .63,【チームとしての経験】r = .45であった(すべてp < .01).尺度全体では,日本語版OLI-Mはr = .72,日本語版OLI-Cはr = .80であった(p < .001).
尺度の作成においては,病院の看護管理者,看護管理学および看護教育学分野の研究者でディスカッションを行い,繰り返し認知デブリーフィングを行った.また,日本語版OLIは,臨床経験のある看護師を対象に認知デブリーフィングとプレテストを行うことにより,内容妥当性と表面妥当性は確保できたと考えられる.
2) 構成概念妥当性モデル適合度はCFI ≧ .90,RMSEA ≦ .08の値が妥当であるとされる(Vandenberg & Lance, 2000).一方で,本研究においては,日本語版OLI-MではCFI = .823,RMSEA = .086,日本語版OLI-CではCFI = .823,RMSEA = .084と十分な値は得られず,モデル修正を行う必要があった.モデル修正を行った結果,日本語版OLI-MではCFI = .903,RMSEA = .066,日本語版OLI-CではCFI = .903,RMSEA = .067とモデル適合度の改善がみられた.モデル適合度が基準値を満たさなかった理由として,項目の内容が多義的であり,一部表現の解釈が困難であった可能性が考えられる.例えば,探索的因子分析で因子負荷量が.30未満であった,日本語版OLI-C「C07_この部署では,チームメンバーが部署を改善するためのインセンティブがある」は,「インセンティブ」という表現に対して「良いケアを提供することへの内発的な充実感,上司や同僚からの評価・金銭的な報酬など」という補足説明を加えていたが,補足が多義的であり,解釈が困難であった可能性がある.また「C19_この部署では,チームメンバーが重要な問題について話しあうための適切な場所がある」は,「場所」という表現が,話し合いの機会のことを指すのか,物理的な空間のことを指すのか,回答者によって解釈が異なったことが考えられる.原版の下位概念である【心理的に安全な関係性】は,日本語版OLI-Mにおいては【部署内の心理的に安全な関係性】と【他組織との心理的に安全な関係性】という2つの異なる下位概念となった.日本の看護師の文化的価値観に関する先行研究によると,看護師においても日本の文化特有である内集団と外集団を「ウチ」と「ソト」と捉える価値観が存在しており,自分のグループの「ウチ」の人とグループの「ソト」の人に対しては,自己主張の態度が異なるという.また,関係性が確立していない「外部の人」であるスタッフとは話しにくいことが示されている(Omura et al., 2018).このような日本の看護師の文化的価値観が,心理的に安全な関係性においては「部署内」と「他部署」で異なる下位概念となる要因である可能性が考えられた.
3) 基準関連妥当性基準関連妥当性の検証するために,日本語版OLIと日本語版組織学習サブプロセス測定尺度との下位尺度の相関係数を確認した結果,すべての下位尺度において中程度の有意な正の相関を示した.このことより,基準関連妥当性が示された.
2. 信頼性 1) 内的整合性内的整合性では,日本語版OLI-Mおよび日本語版OLI-Cの尺度全体のCronbach’s α係数はともに.90以上であった.また,各下位尺度のCronbach’s α係数は,日本語版OLI-Mではα = .76~.94,日本語版OLI-Cではα = .87~.92であった.モデル修正後においても,日本語版OLI-M・日本語版OLI-Cのすべての下位尺度のCronbach’s α係数は一般的な基準となる.70以上(Terwee et al., 2007)を上回っていたことから,十分な内的整合性が得られたことが示された.
2) 時間的安定性時間的安定性は,ICCの値は.50未満が不良,.50以上.75未満は中程度,.75以上.90未満は良好である(Koo & Li, 2016).本研究のICCは,日本語版OLI-Mでは【相互作用】,【チームでのリフレクション】,【意図的な学習】,【リーダーシップ】,日本語版OLI-Cでは【心理的に安全な関係性】,【学習活動の基盤】,【質改善のスキル】が.60~.73であり,概ね基準値以上であった.一方で,日本語版OLI-Mでは【保持】,日本語版OLI-Cでは【目的の共有】,【モチベーションの共有】,【チームとしての経験】が.40台であり,基準を満たさなかった.この理由として,分析対象数が少なかったことや調査時期が夏季休暇時期であったことにより通常の人員配置やチームメンバーの構成が一時的に変更したことが影響したと考えられた.チームの構成要素は,学習活動に影響を与えることが示唆されていることから,部署内のチームメンバーの変更により,一時的に得点が変化した可能性がある.
3. 研究の限界と今後の課題研究の限界として,本研究では機縁法で選定した首都圏の大学病院4施設の看護師のみを対象としたことから地域や対象に偏りがあり,一般化可能性には限界がある.全国の施設を無作為抽出し施設の選定を行うとともに,施設の病床数の範囲を拡大し,さらなる検証を行う必要がある.再テスト法による信頼性の検証は1施設(n = 39)のみで実施したため,当該施設の特性を反映している可能性がある.また,一部の下位尺度ではICCが0.4台と比較的低値を示したことから,今後は複数施設での再検証および該当下位尺度の内容検討を行うことが課題である.
以上のような課題を残しているが,本研究において日本語版OLIの一定の信頼性と妥当性を示すことができた.本尺度の活用によって,病院の部署レベルの組織学習の状態が可視化でき,客観的に評価することが可能となる.これらの客観的指標は,医療が高度化・複雑化する状況下において,質の高いケアを持続的に提供するために看護管理者が部署のマネジメントの方策を検討する際の有用な指標になると考える.
本研究では,日本語版OLIを作成し,その信頼性と妥当性を検証した.日本語版OLIの基準関連妥当性および内的妥当性,時間的安定性については,一定の妥当性と信頼性が確認された.構成概念妥当性は,モデル修正によりモデル適合度の改善がみられたことから,わが国の病院に勤務する看護師を対象に活用可能であることが示唆された.
付記:本研究は,2025年度聖路加国際大学大学院に提出した博士論文の一部を加筆修正したものである.本論文は,第28回日本看護管理学会学術集会において発表した内容を加筆した.
謝辞:本研究実施にあたり調査にご協力いただきました病院の看護管理者の皆様,対象者の皆様,統計解析に関して多くのご指導を賜りました聖路加国際大学大学院准教授米倉佑貴先生,そしてOrganizational Learning Instrumentの使用許可をくださいましたBret Lyman教授に心より感謝申し上げます.本研究は一般社団法人日本私立看護系大学協会若手研究者研究助成を受けて実施しました.
利益相反:本研究における利益相反は存在しない.
著者資格:渡邉奈穂は,研究デザイン,日本語版尺度の作成,原著者との認知デブリーフィング,データ収集,分析,分析解釈,原稿作成までの研究全体のプロセスに貢献した.大山裕美子は,日本語版尺度の作成,分析解釈,データ収集に貢献した.小山田恭子は,研究デザイン,日本語版尺度の作成,分析解釈に貢献をした.すべての著者は,最終原稿を読み,承認した.