日本看護科学会誌
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原著
新卒看護師の組織社会化尺度の開発
三輪 聖恵森川 由紀
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2026 年 46 巻 p. 485-495

詳細
Abstract

目的:日本の新卒看護師の組織社会化を測定する尺度を開発することを目的とした.

方法:概念分析および質的研究に基づき33項目の質問紙を作成し,全国の300床以上の大学病院20施設935名を対象に質問紙調査を実施した.得られたデータをもとに,尺度の信頼性および妥当性を検証した.

結果:579名より回答を得て,449名を分析対象とした.探索的因子分析により,3因子24項目が得られ,確証的因子分析ではGFI = .980,AGFI = .976,SRMR = .060と良好な適合度を示した.社会人基礎力との相関係数はr = .758,MBI-HSSとの相関係数はr = –.395であった.尺度全体のCronbach’s α係数はα = .934,再テスト法による級内相関係数はr = .695であり信頼性が確認された.

結論:新卒看護師の組織社会化を測定する3因子24項目の尺度を開発し,信頼性および妥当性が確認された.

Translated Abstract

Aim: This study aimed to develop a scale for measuring organizational socialization among newly graduated nurses working in Japanese healthcare settings.

Methods: A preliminary 33-item questionnaire was developed through concept analysis and qualitative research, and was subsequently administered to 935 nurses across 20 consenting university hospitals, each with a bed capacity of more than 300. Finally, the scale’s reliability and validity were evaluated.

Results: Among the responses from 579 participants, those from 449 were analyzed. Exploratory factor analysis yielded a 3-factor, 24-item structure. Confirmatory factor analysis revealed a good model fit (goodness-of-fit index = .980; adjusted goodness-of-fit index = .976; standardized root means square residual = .060). The scale was strongly correlated with basic social competencies (r = .758) and moderately negatively correlated with burnout (Maslach Burnout Inventory-Human Services Survey; r = –.395). The overall Cronbach’s alpha was .934, with r = .695 as the intraclass correlation coefficient for test–retest reliability.

Conclusion: The 3-factor, 24-item scale was fairly reliable and valid in measuring organizational socialization among newly graduated nurses employed in Japan.

Ⅰ. 緒言

近年の医療は,技術の進歩や超高齢化,在宅医療への意向から大きく変化し,医療機関の急性期化は,煩雑な入退院業務,限られた時間内での多重課題への対応など即応能力に加え,高齢患者への観察や生活援助,人権の尊重など適切な看護が求められている(厚生労働省,2004).看護師へのこのような期待とニーズは高く,それは看護基礎教育を終え,初めて臨床現場に立つ新卒看護師であっても例外ではない.

日本看護協会の調査では新卒看護師の離職率は9.9%と上昇している(日本看護協会,2024).また,伏見らは,看護職員の需要が供給を上回ると報告しており(伏見・小林,2019),人材確保と質の担保は喫緊の課題である.看護師の質の向上とニーズへの対応には,初期キャリア形成が重要であり,新卒看護師が職場に適応し,能力を発揮することは,看護師本人および看護組織双方にとって意義がある.

勝原(2005)によれば,新卒看護師は就職後,専門職としての社会化と組織の一員としての社会化を同時に求められるとし,組織社会化の視点から職場適応を検討する必要性を述べている.高橋(1993)によれば,組織社会化とは,社会心理学における社会化の下位概念であり,参入者が組織の規範・価値・行動様式を受け入れ,職務遂行に必要な技能を習得し,職場に適応していく過程である.また,この過程では,リアリティショックをはじめとした多様な課題を達成する.それは個人の学習による行動変容であり組織への「適応」の達成とみなすと述べている.

新卒看護師の職場適応に関する先行研究では,バーンアウト尺度(小野田ら,2012),セルフエフィカシーや抑うつ度(五艘ら,2013),看護職アイデンティティ尺度(三輪ら,2010)が使用されており,組織社会化過程を経た結果として職場適応を多様な側面から測定していた.海外においても組織社会化過程を経て職務態度や離転職に至ると述べられていた(Scott et al., 2008).

一方,組織社会化を測定する尺度は国内外ともに少ない.国内では,高橋が段階モデルの検証のために組織社会化尺度を作成したが,内的一貫性の低さが指摘されている(高橋,1994).海外では,Chao et al.(1994)が組織の歴史,言語,政治,人間関係,目標・価値,パフォーマンス熟練度の側面から知識を測定するOrganizational Socialization Scaleを開発したが,対象により因子が成立しないことが報告され(Liang & Hsieh, 2008),看護師対象の研究では3側面のみが使用されていた(Jang & Kim, 2019).また,Taormina(1997)はトレーニング,同僚サポート,理解,将来の展望から構成されるOrganizational Socialization Inventoryを開発したが,この尺度はトレーニングや周囲から提供される支援への認知,理解を測定しており,組織社会化の行動に対する認識を測定するものではなかった.その他,Haueter et al.(2003)が大学生を対象に開発したNewcomer Socialization Questionnaireは,組織,グループ,タスクの各側面の社会化を知識や理解度で個別に測定し,総合得点は算出できない尺度であった.

組織社会化は,組織特有の文化を習得する過程であり(高橋,1993),尺度開発の対象や医療制度,看護提供体制の異なる国外の尺度をそのまま国内の新卒看護師に適用するには限界がある.

新卒看護師自身による行動を振り返る自己評価が可能な尺度があれば,組織社会化の程度を数値的に把握し,自己の振り返りや行動変容に活用できる.

そこで本研究では,わが国の新卒看護師を対象とした「新卒看護師の組織社会化尺度」を開発し,その信頼性と妥当性を検証することを目的とする.

Ⅱ. 研究方法

1. 新卒看護師の組織社会化尺度原案の作成

1) 新卒看護師の組織社会化の定義と仮説の構成概念

新卒看護師の組織社会化を定義しその特徴を検討するため,Walker & Avant(Walker & Avant, 2005/2008)の概念分析の手法を用いた.対象文献検索には,医学中央雑誌web版,CiNiiを使用し「組織社会化」及び,近似の概念として「職場適応」のキーワードで検索を行った.海外文献は,Pub Med,Google scholar,SCOPUSにてOrganizational Socialization,のキーワードで検索した.原著論文,テーマと論文抄録,論文内容を確認し,和文献151件,英語文献49件を分析し,組織社会化を「個人が組織を構成する人々との人間関係を構築しながら,組織の価値観や規範を反映した態度や職務に必要な知識や言語,技術を用いて組織の一員として役割を担った行動ができること」と定義した(三輪,2024).次に,新卒看護師の組織社会化の特徴を明らかにするため,卒後2~4年目の看護師10名を対象にフォーカスグループインタビュー調査を実施し,データを質的帰納的に分析した(三輪,2023).対象は,新卒看護師の時間的拘束や身体的・精神的負担を考慮し,かつ新卒看護師時代の経験を想起可能と判断し2~4年目の看護師とし,定義に照らした具体的行動について尋ねた.その結果,「組織で認められるための態度の獲得」「看護師として仕事をするための能力を獲得する」「看護師チームへの役割を理解し貢献する」「組織言語の理解」「人間関係の理解と構築」の5つのカテゴリーが得られ,これらを新卒看護師の組織社会化の仮説概念とした.

2) 尺度の質問項目の作成

本研究では,新卒看護師の組織社会化を評価する尺度を開発するため,5つの仮説概念を網羅するよう設計した.項目の作成には,フォーカスグループインタビューで得られたコードと,概念分析使用文献のうち新卒看護師の体験の包括的な記述や行動を扱った先行研究(赤塚,2012本田・牛久保,2003水田,2004卯川・細田,2019)を参考にし,80項目を作成した.また,本研究では尺度項目の作成に2年目以上の看護師を対象とした質的研究を使用しているため,1年目の体験に関する情報を補完する目的で先行研究を参考にした.

各項目の語尾は,新卒看護師が自身の行動を肯定的に評価できるよう「~ができる」とし(仲山,2012),項目識別力低下(Suárez-Alvarez et al., 2018)を避けるため,逆転項目は用いなかった.回答形式は6件法リッカート尺度とし,尺度値の表現は織田(1970)を参考に,「非常に」「全く」「どちらかといえば」を採用した.尺度は,中間選択肢を設けず1点を「全くあてはまらない」,6点を「非常にあてはまる」とし,得点が高いほど組織社会化がすすんでいると判断する.

さらに新卒看護師による自己評価として妥当となるように質問文の表現と内容を検討した.臨床経験と新卒看護師の指導経験を有する看護師,および看護学生や看護師を対象とした尺度の開発経験をもつ研究者,計19名から新卒看護師が使用する観点からの意見を聴取し,項目の整理・統合,表現の抽象度や語句の調整を行い,最終的に33項目の尺度となった.

2. 信頼性・妥当性の検証

1) 研究対象者および研究対象施設とサンプルサイズ

研究対象者である新卒看護師を「看護基礎教育を修了し,医療機関に就職した看護師経験1年未満の者」と定義し,日本国内の300床以上の大学病院に勤務する新卒看護師を対象とした.除外基準は,看護基礎教育修了後,他の医療機関で看護師として就労経験がある者,実務職種が助産師,就労資格が准看護師,手術室勤務である者とした.

医療機関の選定では,全国医学部長病院長会議会員一覧表(一般社団法人全国医学部長病院長会議,n.d.)をもとに,病院ホームページから病床数を確認し,102病院を選定した.対象施設を大学病院とした理由は,先行研究において組織社会化戦略として,オリエンテーションや,研修が有効であること(Taormina, 1997Bauer & Erdogan, 2012)が指摘されており,小規模施設では新人看護師の採用がない施設や研修体制に人的余裕がないことが指摘されている(上泉ら,2010).また,本研究の調査時期はコロナ禍であり,対象者数の確保が困難と予測されたため,便宜的に300床以上の大学病院に勤務する新卒看護師を対象とした.

サンプルサイズは,日本の看護師国家試験合格者数を約56,000人と見積もり(厚生労働省,2020),有意水準.05,検出力.80,信頼区間95%で算出した結果,必要標本数は380人となった.また,尺度開発では,質問項目数の7~10倍の対象者が推奨され(Mokkink et al., 2019村上,2017),確証的因子分析には200人以上が望ましい(平井,2017)ことから,400人以上と設定した.

2) 調査方法および調査機関

研究対象施設の看護管理者に書類送付の許諾を尋ね,承諾の得られた施設には,研究計画書,質問紙,承諾書を送付し,承諾施設にて自記式質問紙調査を実施した.承諾書は1回限りの調査と再テスト協力の可否を選択できる形式とした.再テスト法は推奨される1週間~1か月の間隔(村上,2017)を踏まえ,初回調査の2週間後に実施した.再テストの照合には生年月日と母親の誕生日を組み合わせた12桁コードを用い,一致したデータのみを使用した.

調査時期は一定程度,組織社会化がすすんでいると考えられる時期とし,2021年2月~3月に再テスト法を含めて実施した.質問紙は留め置き法により回収した.

3) 調査内容

(1) 対象者の属性

対象者の属性として,年齢,性別,看護基礎教育課程,配偶者の有無,配属部署などについて尋ねた.

(2) 新卒看護師の組織社会化尺度原案(33項目)

新卒看護師の組織社会化尺度原案33項目を使用した.回答法は6件法とした.

(3) 基準関連妥当性

基準関連妥当性の検証では,新たに開発した尺度と基準尺度を同時に実施し,相関を確認する必要がある(Streiner et al., 2015/2016).新しい尺度は同一特性を測定していることが前提であり(村上,2017),理論的に相関が予測される場合,外部基準との高い相関は収束的妥当性を示す(清水・荘島,2017).外的基準は妥当性が確立された尺度を用いる必要がある(平井,2017).

本研究では,外的基準として「社会人基礎力」を使用した.同尺度は「前に踏み出す力」「考え抜く力」「チームで働く力」から構成され,職場など多様な人々との協働に必要な基礎的能力とされる.看護師の組織社会化や職場適応を促進し看護実践の基盤となる能力と位置づけられており,信頼性・妥当性も報告されている(北島ら,2011).収束的妥当性の検証にあたり,開発者から使用許可を得た.

一方,関連の弱い構成概念との相関係数を用いて弁別的妥当性を確認する方法がある(堤,2009).本研究では,新卒看護師を対象とした先行研究で負の相関が報告されている(三輪ら,2010)ことや,組織社会化過程を経た結果である職場適応の研究で使用されている(小野田ら,2012)ことからバーンアウト尺度を使用した.使用したMaslach Burnout Inventory-Human Service Survey(Maslach & Jackson, 1981)(以下,MBI-HSS),は「身体的疲弊感」「情緒的疲弊感/非人間化」「個人的達成感」から成り,疲弊感が高く達成感が低いほどバーンアウトの程度が高いとされる.日本語版の信頼性・妥当性も報告されている(北岡(東口),2004).使用にあたっては版権を購入した.

回答は先行研究に従い7件法の頻度形式とした(鈴木ら,2004).相関係数算出にはLewistonら(1981)の総合得点算出法(身体的疲弊感の平均点+情緒的疲弊感/非人間化の平均点-個人的達成感の平均点+10)を用い,得点範囲は4~22点で高得点ほどバーンアウトの程度が高いことを示す.新卒看護師を対象とした研究で信頼性が確認されており(糸嶺ら,2015)本研究で使用した.

4) 分析方法

(1) 記述統計

度数分布と記述統計量を算出し,新卒看護師の組織社会化尺度の平均値と標準偏差を求めた.さらに,性別,配偶者の有無,雇用形態,看護基礎教育背景を検討し,各項目の天井効果・床効果の有無を確認した.

(2) 項目分析

新卒看護師の組織社会化尺度が同一の構成概念を測定しているか確認するため,質問項目間の相関係数と各項目得点と合計得点の相関(以下I-T相関)を算出した.合計得点との相関が低い項目は,同一概念を測定していない可能性がある(清水・荘島,2017).一方,他項目と極めて高い相関を示す場合は,尺度構成の有効性が疑問視され(Streiner et al., 2015/2016),相関係数は.30~.70が望ましい(村上,2017)とされるため,I-T相関が.30未満または.70超える項目は削除した.

(3) 妥当性の検証

①標本の妥当性

Kaiser-Meyer-Olkin(以下,KMO)の標本妥当性を用いた.

②構成概念妥当性

探索的因子分析(最尤法,プロマックス回転)を実施した.因子数は,固有値1.0以上を基準とし,スクリープロットを参考に決定した.また,因子負荷量は.40以上,かつ2因子以上に重複していないことを選定基準とした.さらに重みづけのない最小二乗法による確証的因子分析を実施し,適合度を検討したうえで最終モデルを決定した.

③収束的妥当性と弁別的妥当性

収束的妥当性の検証は,新卒看護師の組織社会化尺度の総合得点と社会人基礎力の総合得点を算出し,Pearsonの積率相関係数を算出した.また,弁別的妥当性の検証では,新卒看護師の組織社会化尺度総合得点とMBI-HSSの総合得点を算出し,Pearsonの積率相関係数を算出した.

(4) 信頼性の検証

①内的整合性

内的整合性の検証は,尺度全体および下位概念のCronbach’s α係数を算出した.

②時間的安定性

時間的安定性の検証には,再テスト法を用いた.承諾が得られた大学病院を対象に実施し,級内相関係数を算出した.

すべてのデータの解析には,IBM SPSS Statistics Ver.29.0およびIBN SPSS Amos Ver.29.0を用い,有意水準は5%とした.

5) 倫理的配慮

本研究は,国際医療福祉大学倫理審査委員会による承認(20-Ig-100-3)および東京都立大学荒川キャンパス研究倫理委員会による承認(20076)を得て実施した.

研究対象施設の看護部長に文書にて研究の趣旨,調査内容および権利保護について説明し,研究への協力の可否と対象者の人数を記載した承諾書を返送してもらった.質問紙回収箱は,強制力の及ばない場所に設置を依頼した.研究対象者へは,文書にて研究の趣旨,および権利保護等を記載し説明した.研究への同意は,質問紙調査票冒頭に同意確認欄を設け確認した.

Ⅲ. 結果

1. 研究対象施設

日本全国の300床以上の大学病院102施設に研究協力依頼を行い,20施設から研究協力の同意を得た.再テスト法承諾施設は,7施設であった.各施設の設置主体は,国立大学法人6施設,公立大学法人2施設,私立大学法人12施設であった.研究対象施設の地域は,東北地方4施設,関東地方9施設,中部地方3施設,関西地方1施設,四国地方1施設,九州地方2施設であった.病床数別では,300~500床が7施設,501~800床が10施設,801~1,000床が3施設であった.

2. 回収率と研究対象者の属性

研究協力の得られた大学病院に所属する新卒看護師935名を対象に質問紙を配布し,579名から回答を得た(回収率61.9%).欠損,重複回答,除外基準該当者を除いた449名を分析対象とした(有効回答率53.4%).年齢,性別,勤務形態,配偶者の有無,教育課程と組織社会化尺度原案の合計点の平均値に有意差は認められなかった.

再テスト法では,209名に質問紙を配布し,163名が回答(回収率78.0%)した.白紙回答および欠損のある回答を除き,95名を分析対象とした(有効回答率58.3%).

対象者の属性を表1に示す.

表1 対象者属性

全数(N = 449)
平均値±SD
人数(%)
テスト-再テスト法の調査参加者
有効回答者(n = 95)
平均値±SD
人数(%)
組織社会化尺度原案(33項目) 141.91 ± 15.77 145.83 ± 14.58
組織社会化尺度(24項目) 101.36 ± 11.16 105.68 ± 9.75
年齢 23.27 ± 2.93 23.19 ± 2.23
性別 男性 34(7.57) 5(5.3)
女性 415(92.4) 90(94.7)
勤務形態 常勤 445(99.1) 94(98.9)
非常勤 4(0.9) 1(1.1)
配偶者 あり 10(2.2) 4(4.2)
なし 439(97.8) 91(95.8)
教育課程 5年一貫課程 16(3.6) 4(4.2)
看護専門学校卒 123(27.4) 16(16.8)
看護系短期大学卒 28(6.2) 0
看護系大学卒 270(60.1) 73(76.8)
看護系大学院卒 2(0.4) 2(2.1)
他分野の大学卒 6(1.3) 0
その他 4(0.9) 0

3. 項目分析

新卒看護師の組織社会化尺度33項目について分析した結果,天井効果および床効果は認められなかった.項目間相関とI-T相関により,総合得点との相関係数が.70以上と高い相関を示した6項目を削除した.一方,相関係数が.30未満の項目はなかった.

4. 妥当性の検証

1) 標本妥当性の検証

KMOの標本妥当性は.93であった.

2) 構成概念妥当性の検証

尺度原案33項目のうち,I-T相関が高い6項目を除外し,残る27項目を用いて仮説概念に基づく探索的因子分析を行った.その結果,因子負荷量が.40未満の2項目と複数因子にかかる1項目の計3項目を削除した.続いて24項目を再度分析したところ,第5因子の構成が2項目となったため,仮説概念として設定していた5因子構造を棄却した.

その後,初期固有値とスクリープロットから,因子数を3と規定し,24項目を改めて探索的因子分析を行った(表2).次いで3因子24項目による確証的因子分析を実施したところ,適合度は,Goodness of fit index(以下,GFI)=.980,adjust GFI(以下,AGFI)=.976,standardized root means square residual(以下,SRMR)=.060であった(図1).

表2 新卒看護師の組織社会化尺度の探索的因子分析の結果

n = 499

因子名 番号 質問項目 因子負荷量
第1因子 第2因子 第3因子
Cronbac’s α = 0.868
組織の一員として協働する 20 私は,一緒に働いている医師の性格を把握して対応できる 0.708 –0.049 –0.164
10 私は,先輩看護師の業務の流れを意識しながら,自分の仕事ができる 0.668 –0.125 0.226
11 私は,看護チームメンバーが,円滑に仕事ができるように配慮できる 0.642 –0.167 0.271
21 私は,先輩看護師と自然体で話ができる 0.594 0.208 –0.173
9 私は,他職種の状況に合わせて声をかけることができる 0.578 –0.004 0.085
18 私は,所属している部署内の人間関係を把握して対応できる 0.574 0.172 0.017
8 私は,担当患者の容態について医師に報告できる 0.553 –0.005 0.025
26 私は,先輩看護師に担当患者の状態について自分の考えを言える 0.523 0.218 –0.056
32 私は,担当患者の薬物療法に使われる略語を理解して実施できる 0.443 0.172 0.055
33 私は,医療従事者は使う共通言語を理解して行動できる 0.427 0.173 0.096
Cronbac’s α = 0.884
組織の一員として望ましい態度 22 私は,先輩看護師からのアドバイスを取り入れることができる 0.038 0.823 –0.131
29 私は,仕事をするときに配属部署のルールに従うことができる –0.121 0.749 0.146
30 私は,先輩看護師からの指導されたことを繰り返さないように努力できる –0.078 0.748 0.114
24 私は,分からないことをそのままにせずに,自分で調べることができる 0.219 0.562 –0.098
23 私は,未経験の看護技術を学べるように積極的に意思表示できる 0.292 0.556 –0.081
27 私は,自分の担当患者に対し,責任をもって業務ができる 0.024 0.541 0.217
7 私は,患者の看護についてわからないときには,先輩看護師に確認することができる 0.011 0.519 0.156
6 私は,1人で実施できないケアは先輩看護師にサポートを依頼することができる 0.038 0.474 0.172
Cronbach’s α = 0.860
自立して業務を遂行する 3 私は,日常的な処置やケアは円滑にできる 0.078 –0.102 0.792
4 私は,複数の担当患者の業務スケジュールを組み立てることができる 0.148 –0.089 0.735
2 私は,患者に必要なケアを実施できる –0.190 0.196 0.719
5 私は,必要な内容を看護記録に記載できる –0.046 0.069 0.693
1 私は,担当患者に必要な情報を収集することができる –0.071 0.141 0.610
12 私は,各勤務帯で決められている業務は自立してできる 0.168 0.149 0.442
因子相関 1.000
尺度全体のCronbac’s α = 0.934 0.651 1.000
0.631 0.634 1.000

因子抽出法:最尤法回転法:kaiserの正規化を伴うプロマックス回転

図1  新卒看護師の組織社会化尺度の確証的因子分析の結果

GFI = 0.98 AGFI = 0.976 SRMR = 0.060

第1因子は,組織の一員としての役割を理解,人間関係の構築,組織言語を活用,チームへの貢献を含む概念であるため,【組織の一員として協働する】とした.第2因子は,看護師としての姿勢や,看護組織で認められる態度を含む概念であるため,【組織の一員として望ましい態度】とした.第3因子は看護師として業務を自立して行うことを示す概念であるため,【自立して業務を遂行する】とした.

3) 収束的妥当性の検証と弁別的妥当性の検証

新卒看護師の組織社会化尺度24項目の合計得点と,社会人基礎力およびMBI-HSSの総合得点を用いた.新卒看護師の組織社会化尺度と社会人基礎力との相関は,r = .758(p < .01),MBI-HSSとの相関は,r = –.395(p < .01)であった(表3).

表3 新卒看護師の組織社会化尺度(24項目)と社会人基礎力およびMBI-HSSとの相関

n = 499

新卒看護師の
組織社会化尺度
社会人基礎力36項目 アクション シンキング チームワーク
r = 0.758** r = 0.719** r = 0.606** r = 0.718**
MBI-HSS 身体的疲弊感 情緒的疲弊感/非人間化 個人的達成感
r = –0.395 r = –0.286** r = –0.183** r = 0.434**

** p < 0.01

4) 信頼性の検証

内的整合性の検証では,新卒看護師の組織社会化尺度24項目のCronbach’s α係数を算出した.その結果,24項目のCronbach’s α係数は,α = .934であった.【組織の一員として協働する】10項目は,α = .868,【組織の一員として望ましい態度】8項目は,α = .884,【自立して業務を遂行する】6項目は,α = .860であった.

時間的安定性の検証では,再テスト法にて得られた新卒看護師の組織社会化尺度24項目の級内相関係数は,r = .695(95%信頼区間.575~.786)であった.

Ⅳ. 考察

1. 新卒看護師の組織社会化尺度原案の作成

本研究では,組織社会化に関する先行研究をふまえて概念分析を行い,概念モデルおよび定義を作成した.また,質的研究結果をもとに新卒看護師の組織社会化の特徴から尺度原案を作成した.質的研究には10名が参加しており,これは測定尺度の開発・評価に関する国際的な指針であるConsensus-based Standards for the selection of health Measurement Instruments(以下COSMIN)チェックリストで示される質的研究の基準(7名以上)を満たしている(Mokkink et al., 2019)ため,尺度作成プロセスはCOSMINの推奨に沿うと判断した.

表面妥当性の確保にあたり,新卒看護師の指導経験を有する看護師および看護師を対象とした尺度開発経験者から意見を聴取した.一方,新卒看護師本人への聴取は,COVID-19流行下のため負担を考慮し見送った.村上(2017)は,表面妥当性は本来の妥当性とは無関係と指摘し,平井(2017)も1980年以降の妥当性分類には取り上げられていないとしている.これらを踏まえると,新卒看護師の指導者からの意見を反映している本研究の表面妥当性は,一定程度確保されたと考える.

2. 対象者の特徴

本研究の対象者は関東地方が最も多く,医系大学病院の分布においても関東地方が最多であり全国的傾向(文部科学省,2024)を反映していたと考えられる.しかし,次いで多い関西地方が1施設となり偏りが見られた.また,本研究の対象者の所属機関は全国の大学病院数(文部科学省,2024)と比較すると,私立大学病院が多く,地域および設置主体の偏りが対象者の経験や回答傾向に影響した可能性がある.また,対象者の男女比は全国の看護師を対象とした調査(厚生労働省,2025)と概ね一致し,性別による影響は小さいと考えられる.

3. 新卒看護師の組織社会化尺度の構成概念

新卒看護師の組織社会化尺度の仮説概念では,5因子33項目を設定した.I-T相関の結果,相関係数が.70を超える6項目については,他の質問の言い換えに過ぎず,尺度の幅を狭める(小塩,2024)可能性がある.したがって,削除は妥当であると考えられる.また,探索的因子分析の結果,5因子構造では,第5因子が2項目のみとなり概念代表性の不足と判断し(豊田,2012),5因子構造を棄却,最終的に3因子24項目を採用した.

第1因子【組織の一員として協働する】の項目は,尺度原案下位概念である「看護師として仕事をするための能力を獲得する」2項目,「看護師チームにおける役割を理解して貢献する」2項目,「人間関係の理解と構築」3項目,「組織で認められる態度」1項目,「組織言語の理解」2項目の計10項目で構成された.これらは,新卒看護師が臨床で先輩看護師や多職種の業務を把握しながら任された業務を遂行しつつ,チームの一員として役割を果たそうとする行動を示している.組織社会化には職業的(技術的)側面と組織(文化的)側面が併存し,混ざり合って存在することが報告されており(町支,2013),重要な貢献メンバーとして認められること(Katz, 1980)や,業務上の言語習得が含まれる(竹内・竹内,2009).これらから,本因子は新卒看護師の組織社会化を構成する概念として妥当であると考えられる.

第2因子【組織の一員として望ましい態度】の項目は,尺度原案下位概念から「組織で認められる態度の獲得」2項目,「看護師として仕事をするための能力の獲得」2項目,「人間関係の構築」1項目の計8項目で構成された.これらは,先輩看護師の助言を受け入れる姿勢,疑問点の確認や必要時の支援要請といった行動を示している.水田(2004)は,新卒看護師のリアリティショックからの回復過程において,「仕事と自己の価値観の調和」が重要な要素であると示している.また,組織内で認められる態度の獲得が組織社会化の重要な要素と述べている(Katz, 1980高橋,1993佐々木,2006).これらを踏まえると,第2因子は組織での価値観と自己の価値観を統合し組織の一員としてふるまうことを示す概念として妥当と考えられる.

第3因子【自立して業務を遂行する】は,尺度原案下位概念の「看護師として仕事をするための能力を獲得する」5項目,「看護師チームへの役割を理解し貢献する」1項目の計6項目で構成された.組織社会化過程では,上司や同僚の期待を自覚し,組織への貢献を示すことが求められる(Katz, 1980).また,新卒看護師は困難な状況でもやり遂げようとする行動(森ら,2004)が見られ,ケアや技術を成し遂げる成功体験が重要とされている(中納・青山,2007).これらを踏まえると新卒看護師の組織社会化において「自立して業務を遂行する」という概念は妥当と考える.

また,本尺度の3因子は,海外で開発されたChaoらの尺度(Chao et al., 1994)や,Taorminaの尺度(Taormina, 1994),Haueterら(Haueter et al., 2003)の尺度と人間関係の理解や業務遂行など一部概念が重なることから,組織社会化の主要な概念をとらえていると考えられる.一方で,これらの先行研究の尺度が大学生や一般就労者等を対象に知識や環境への満足を中心に測定するのに対し,本尺度は,新卒看護師を対象に臨床における役割や態度,自立した実践行動に関する認識を測定している点に独自性があると考える.

以上より,新卒看護師の組織社会化尺度における因子は,尺度の定義に沿った構成概念と考える.

4. 新卒看護師の組織社会化尺度の妥当性

KMOの標本妥当性の結果から因子抽出およびサンプリングの妥当性が確保された.

尺度構造の検証では,探索的因子分析で得られた3因子24項目に対し確証的因子分析を行った.本研究は重みづけのない最小二乗法を用いたため,適合度指標としてRoot Mean Square Error of Approximation(以下,RMSEA)ではなくSRMRを採用した.GFIとAGFIは1に近く.90以上でモデルのあてはまりが良いとされ(平井,2017),SRMRもRMSEAと同様にモデルの適合度に使用でき(Hu & Bentler, 1999),.08までが許容範囲である(中山,2017).これらのことから,新卒看護師の組織社会化尺度のモデル適合度は概ね良好と考える.

本尺度の収束的妥当性検証には,社会人基礎力を外的基準とした.社会人基礎力は,組織社会化を促進する要因とされ(北島ら,2011),新卒看護師の組織社会化とも理論的関連がある.また,同一特性を測定する尺度間の相関は通常.40~.80に収まるとされている(Streiner et al., 2015/2016).本尺度24項目の相関係数はこの範囲にあり,収束的妥当性が検証された.

弁別的妥当性の検証では,職場適応の先行研究で使用されてきたMBI-HSSを用いた.弁別的妥当性は,理論的関連性が低い構成概念との相関が低いことで評価される(堤,2009).本研究では,新卒看護師の組織社会化尺度とMBI-HSSとの間には弱い負の相関が認められ,高い相互相関は認められず,弁別的妥当性が支持された.

5. 新卒看護師の組織社会化尺度の信頼性

内的整合性については,新卒看護師の組織社会化尺度全体及び下位尺度のCronbach’s α係数がいずれも.80以上であり,基準を十分に満たしている(Streiner et al., 2015/2016)ことから,内的整合性が確保されたと判断した.

Katz(1980)は,組織社会化は時間とともに進行する過程であると述べている.桑原ら(1993)は,時間的安定性の評価において,級内相関係数が.70以上であれば「Fair」,.60以上を「possible」と解釈できるとしている.本研究では,2週間程度の期間における学習効果は限定的であり,得られた級内相関係数は基準を満たしていたため,時間的安定性が確認された.

6. 新卒看護師の組織社会化尺度の有用性

新卒看護師の組織社会化尺度は3因子構造24項目からなる自記式尺度である.本尺度では,得点が高いほど組織社会化された行動ができることを示し,新卒看護師自身が組織社会化の程度を数値化し把握できる点に有用性がある.本尺度を活用することで,新卒看護師は自身の成長過程を客観的に評価し,組織社会化過程における強みや自己課題の把握につながる.

7. 本研究の限界と今後の課題

本研究では,概念分析から導いた組織社会化の概念モデルを基に臨床経験2~4年目の看護師を対象とした質的研究を通じて仮説モデルと尺度原案を作成した.そのため,組織社会化の途上にある新卒看護師の体験は直接反映されていない.また,調査時期を入職後11~12か月後に設定したことやCOVID-19流行下での調査が質問紙の負担や回収率など研究全体に影響した可能性がある.本研究の対象は日本の大学病院に所属する新卒看護師であり,尺度の適用範囲は国内に限定される.

今後の課題は,全国の大学病院以外の医療機関に勤務する新卒看護師を対象に調査を行い,尺度の精度を高める必要がある.

Ⅴ. 結論

本研究では,新卒看護師自身が,自分の組織社会化の程度を自己評価できる「新卒看護師の組織社会化尺度」を開発した.本尺度は,「組織の一員として協働する」「組織の一員として望ましい態度」「自立して業務を遂行する」の3因子24項目で構成され,信頼性および妥当性が確認された.

付記:本研究は,国際医療福祉大学大学院に提出した博士論文の一部を加筆・修正したものである.

謝辞:本研究の遂行にあたり,新型コロナウィルス感染症への対応で多忙を極める状況にも関わらず,調査にご理解とご協力を賜りました大学病院に勤務する新卒看護師の皆様,ならびに看護管理者をはじめとする関係者の皆様に,心より感謝申し上げます.

また,本研究に対して国際医療福祉大学大学院の鈴木英子教授には多大なるご指導とご助言を賜り,心より御礼申し上げます.あわせて,鈴木ゼミの皆様には温かいご支援と貴重なご意見をいただき,深く感謝申し上げます.

利益相反:本研究における利益相反は存在しない.

著者資格:本研究において三輪聖恵は研究の着想,研究計画の立案,データ収集,分析およびその解釈,ならびに論文執筆の全過程を担当した.森川由紀は,統計分析およびその解釈に関する助言を行い,論文の加筆修正を担当した.すべての著者は本論文の最終原稿を確認し,内容に同意の上,承認している.

文献
 
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