目的:地域包括支援センターにおける介護予防ケアマネジメントの対象高齢者(以下,介護予防対象高齢者)を対象に,不眠症状とフレイル,認知機能・抑うつ・社会的フレイルとの関連を明らかにする.
方法:松原市の介護予防対象高齢者365名のうち,訪問調査を実施した265名を分析対象とし,不眠症状を独立変数,フレイルを主要アウトカム,認知機能・抑うつ・社会的フレイルを副次アウトカムとし,ロジスティック回帰分析を行った.
結果:不眠症状はフレイル(OR = 2.89, 95%CI = 1.42~5.88, p = .004)および抑うつ(OR = 4.19, 95%CI = 2.10~8.36, p = .003)と有意に関連していた.認知機能・社会的フレイルとの関連は認められなかった.
結論:介護予防対象高齢者におけるフレイル予防には,不眠症状に着目した支援が有用である可能性が示唆された.
Aim: This study aimed to evaluate the relationship between insomnia and frailty, and to examine its associations with cognitive function, depression, and social frailty among community-dwelling older adults receiving preventive long-term care services at community comprehensive support centers.
Methods: We conducted home visits to 365 community-dwelling older adults receiving preventive long-term care services at the Matsubara City Community Comprehensive Support Center. Data from 265 participants were analyzed using multivariate logistic regression, with insomnia as the independent variable, frailty as the primary outcome, and cognitive function, depression, and social frailty as secondary outcomes.
Results: Insomnia was significantly associated with frailty (odds ratio [OR] = 2.89, 95% confidence interval [CI] = 1.42–5.88, p = .004) and depression (OR = 4.19, 95%CI = 2.10–8.36, p = .003). However, insomnia showed no significant associations with cognitive function or social frailty.
Conclusion: Addressing insomnia symptoms is a crucial component of a comprehensive approach to preventing frailty among community-dwelling older adults receiving preventive long-term care services.
日本は急速な超高齢社会に突入しており,要介護状態に至る前段階である地域在住高齢者に対する早期介入やフレイル予防対策は喫緊の課題である(荒井,2018).フレイルとは,生理的予備能力の低下により,脆弱性が増加し,要介護状態などのリスクが高まる状態である(Clegg et al., 2013).一方,フレイルな状態には適切な介入があれば予防・改善できる可能性が指摘されており(Morley et al., 2013),高齢者の自立に関わる指標である.
介護保険制度では,要支援認定者および基本チェックリストに基づく介護予防・日常生活支援事業対象者が,地域包括支援センターにおいて介護予防ケアマネジメントの対象者(以下,介護予防対象高齢者)となる.これらの介護予防対象高齢者は,加齢や慢性疾患,身体機能の低下により,要介護移行リスクが高い一方で,適切な支援により可逆性の高い集団である(厚生労働省,2022;厚生労働省,n.d.).したがって,介護予防対象高齢者におけるフレイル要因を明らかにすることは,地域における介護予防政策の鍵を握る重要な課題である.
近年,フレイルの要因として,不眠症状が注目されている(Nemoto et al., 2021).高齢者は,加齢により睡眠パターンや概日リズムの変化,メラトニン分泌の減少,心理的ストレス等により睡眠の問題を抱えやすく(Li et al., 2018;厚生労働省,2023),地域在住高齢者の約20%に不眠症状があると報告されている(Nemoto et al., 2021).また,不眠症状は,歩行速度の低下(Buchmann et al., 2016),転倒への恐怖感(Chen et al., 2024),日中の過度な眠気による活動量の低下(Nakakubo et al., 2019)に影響を及ぼし,抑うつ(Bao et al., 2017),認知機能低下(Nakakubo et al., 2017),社会的フレイル(Nakakubo et al., 2019)といったフレイル因子との関連が報告されている.
しかし,これらの先行研究は,自立した地域在住高齢者を対象としており,介護予防マネジメントの対象となる介護予防対象高齢者に焦点をあてた知見は限られている.
したがって本研究では,地域包括支援センターにおける介護予防対象高齢者に着目し,不眠症状とフレイルの関連を検討することを目的とする.さらに,不眠症状と認知機能や抑うつ,社会的フレイルとの関連を検討し,介護予防対象高齢者の今後のフレイル予防対策の基礎資料を提供することを期待する.
本研究は,独立変数を不眠症状,従属変数の主要アウトカムをフレイル,副次アウトカムを認知機能,抑うつ,社会的フレイルとして関連を検討した横断研究である.図1に本研究の解析枠組みを示す.

※注1:各アウトカムを従属変数とし,不眠症状を独立変数とする多変量ロジスティック回帰分析を,各アウトカムを個別のモデルとして実施した.
※注2:各モデルで共通に調整した変数は,年齢,性別,要介護,世帯構成,教育歴,飲酒頻度,カフェイン飲用頻度,過去6カ月以内の転倒経験,過去6カ月以内の入院経験,慢性疾患数,内服薬数,いびきの有無,睡眠時間,睡眠薬内服の有無,日中の過度な眠気の有無である.
※注3:本図は解析上の変数配置を示したものであり,因果関係を示すものではない.
1)AIS-J:アテネ不眠症尺度日本語版.5.5点以上を不眠症状ありとした.
2)改訂版J-CHS:5項目中3点以上でフレイルとした.
3)RDST-J:認知症スクリーニング検査.7点以下を認知機能低下とした.
4)GDS5:高齢者抑うつ尺度短縮版.2点以上を抑うつ傾向ありとした.
5)社会的フレイル:SF5(Makizakoらが開発した社会的フレイルの定義).2点以上を社会的フレイルとした.
6)JESS:日本語版日中眠気指数.11点以上を日中の過度な眠気ありとした.
介護予防対象高齢者
介護保険制度に基づく要支援認定者および基本チェックリストによる介護予防・日常生活支援事業対象者であり,地域包括支援センターにおいて介護予防ケアマネジメントをうけている65歳以上の高齢者とする.
3. 対象者本研究の調査対象者は,松原市の地域包括支援センター2施設でケアマネジメントをうける介護予防対象高齢者368名(100%)とした.調査地域とした自治体は,2024年6月現在,人口11.6万人,高齢化率30.1%である(松原市,2024a).介護予防ケアマネジメントの対象者の選定は,厚生労働省の標準的な枠組みに準拠しており(松原市,2023),第一号被保険者の要介護(要支援)認定率は25.1%,要支援認定者のうち要支援1 19.0%,要支援2 10.6%である(独立行政法人福祉医療機構,2024).介護予防ケアマネジメント対象者の構成は,大阪府や全国の介護別構成比と比較して,類似している(松原市,2024b;独立行政法人福祉医療機構,2024).
調査対象者368名(100%)のうち,調査票の読みとりが困難な者15名,コミュニケーションが困難な者14名,要介護移行や入院した者10名,計39名(10.6%)を除外し,本調査協力に同意が得られた者は265名(72%)であった.調査票に欠損値がなく,訪問調査を完了した265名(72%)を分析対象者とした(付録1).
4. 研究方法および調査期間2024年6月1日から同年8月31日に,松原市地域包括支援センターに所属する専門職(社会福祉士,介護福祉士,看護師,主任介護支援専門員)または研究者が,調査票を用いた訪問調査を実施した.
5. 調査項目 1) 基本属性対象者の基本属性は,年齢,性別,要介護度(事業対象者,要支援1・2),婚姻状況,世帯構成,教育歴,併存する慢性疾患(高血圧,糖尿病,心疾患,腎疾患,慢性呼吸不全,脳血管疾患,関節炎,骨粗鬆症,その他),喫煙歴,飲酒頻度,カフェインの飲用頻度,過去6ヶ月間の転倒経験・回数,過去6ヶ月間の入院経験・期間を調査票に沿って質問し,把握した.
内服薬の数と種類,睡眠薬内服の頻度については,対象者の処方薬やお薬手帳などを参考に聞き取り,把握した.
2) 睡眠の程度睡眠障害の程度を判断する指標として,先行研究に基づき(Lu et al., 2024;Sun et al., 2023;Nemoto et al., 2021;Chen et al., 2022;Nakakubo et al., 2021),睡眠時間,いびきの有無,睡眠時無呼吸症候群の指摘経験の有無,睡眠薬の内服の有無,日中の過度な眠気の程度を把握した.
睡眠時間は,「最近1週間で最も多かった就寝時間(寝床に入る時間),入眠時間,覚醒時間,起床時間(寝床から起きる時間)を教えてください」と質問し,入眠時間と覚醒時間の時間の差を計算し,算出した.睡眠時間は,Pourmotabbed et al.(2020)の睡眠時間分類を参考に,6時間未満,6時間以上~8時間未満,8時間以上の3群に分類した.
いびきの有無は,「家族や知人等に指摘されたことはありますか」,睡眠時無呼吸症候群については,「家族や知人等に指摘されたまたは医師から診断されたことはありますか」と質問し把握した.
日中の過度な眠気の程度は,エプスワース眠気尺度(ESS: Epworth sleepiness scale)(Johns, 1991)の日本語版である日本語版エプスワース眠気尺度(JESS: Japanese version of the Epworth Sleepiness Scale)を使用した(Takegami et al., 2009).JESS得点は8項目(各0~3点)の合計得点(0~24点)で表され,11点以上をカットオフとすることが推奨されており,11点以上を日中の過度な眠気ありと判定した(Takegami et al., 2009).
3) 独立変数:不眠症状独立変数は不眠症状とし,アテネ不眠症尺度(AIS: Athens Insomnia Scale)(Soldatos et al., 2000)の日本語版であるアテネ不眠尺度日本語版(AIS-J: Japanese version of the Athens Insomnia Scale)を使用した(Okajima et al., 2013).AIS-J得点は,8項目(0~3点)の合計得点(0~24点)で表され,合計得点が5.5点をカットオフとすることが推奨されており(Okajima et al., 2013),5.5点以上を不眠症状ありと判定した.
4) 主要アウトカム:フレイル主要アウトカムはフレイルとし,Fried et al.(2001)のPhenotype model(表現型モデル)に準じた改訂版J-CHS(The revised Japanese version of the Cardiovascular Health Study Index)を使用した(Satake & Arai, 2020;Satake et al., 2017).評価項目は,体重減少,握力の低下(筋力の減少),疲労感,歩行速度の低下(下肢筋力の低下),身体活動の低下(運動習慣)の5項目を推奨している.
改訂版J-CHSの歩行速度の測定において,Time Up-and-Go(TUG)テストが推奨されているが(岩本,2014),対象者宅で3mの空間確保が難しいため,代替テストとして妥当性が検証されている「起立・立位バランステスト」を実施した(乙黒ら,2012;岩本,2014).「起立・立位バランステスト」は,3つの課題で構成され,第1課題(椅子からの立ち上がり動作),第2課題(両足をそろえた立位保持15秒),第3課題(片脚起立保持3秒)を実施した.「起立・立位バランステスト」の3課題において,「指示課題不可もしくは体幹動揺性あり」のいずれかを満たす者を「下肢筋力低下あり」と判定した(乙黒ら,2012;岩本,2014).
フレイルの評価は,全5項目のうち,3項目以上該当する者はフレイル,1~2項目該当する者はプレフレイル,いずれも該当しない者はロバストと判定した(Satake & Arai, 2020;Satake et al., 2017).なお,本研究では「ロバストおよびプレフレイル」と,「フレイル」の2群に分けて分析した.
5) 副次アウトカム副次アウトカムは,認知機能,抑うつ,社会的フレイルとした.
(1) 認知機能認知機能は,認知症スクリーニング検査(RDST: Rapid Dementia screening Test)(Kalbe et al., 2003)の日本語版である認知症スクリーニング検査日本語版(RDST-J:Rapid Dementia screening Test日本語版)を使用した(酒井ら,2006).RDST-J全体の評価点は0~12点で表され,カットオフ値は7/8点で妥当性が高いとされており,7点以下を認知機能低下ありと判定した(酒井ら,2006).
(2) 抑うつ抑うつは,高齢者抑うつ尺度(GDS: Geriatric Depression Scale)の短縮版であるGDS5(Hoyl et al., 1999)の日本語訳を使用した(町田ら,2002).本尺度は合計5項目5点のうち,2点以上を抑うつ傾向ありと判定した(Hoyl et al., 1999;町田ら,2002).
(3) 社会的フレイル社会的フレイルは,Makizakoらが社会的フレイルを定義した5項目を使用した(Makizako et al., 2015).Makizakoらの質問項目は,対象者に分かりやすい簡易な質問で構成され,2年後のJ-CHSで判別するフレイル発生リスクとの関連が報告されている(Makizako et al., 2015).5項目の合計5点のうち,2点以上を社会的フレイルと判定した(Makizako et al., 2015).
6. 分析方法分析は,まず,対象集団の特徴を把握するために,基本属性及び調査項目を単純集計した.そして,独立変数(不眠症状)と基本属性,調査項目について,連続変数はt検定またはWilcoxon検定,質的変数はχ2検定またはFisherの正確確率検定にて検討した.また,独立変数(不眠症状)と主要アウトカム(フレイル)および副次アウトカム(認知機能,抑うつ,社会的フレイル)の2変量分析については,χ2検定にて検討した.
次に,独立変数(不眠症状)と主要アウトカム(フレイル)および副次アウトカム(認知機能,抑うつ,社会的フレイル)の関連を検討するために,単変量ロジスティック回帰分析を実施し,オッズ比(OR: Odds Ratio)および95%信頼区間(95%CI: 95% Confidence Interval)を算出した.さらに,主要アウトカムに影響を与える可能性のある変数は,臨床経験および先行研究を基に選定し,AICに基づくステップワイズ法でモデルを構築し,多重共線性および交互作用を確認した.各説明変数間の多重共線性については,VIF(Variance Inflation Factor)を確認し,すべての変数が10.0未満であることを確認した.
多変量ロジスティック回帰分析では,調整変数として年齢,性別,要介護度,世帯構成,教育歴,飲酒頻度,カフェインの飲用頻度,過去6ヶ月以内の転倒経験,過去6ヶ月以内の入院経験,慢性疾患の数,内服数,睡眠薬内服の有無,いびきの有無,睡眠時間,日中の過度な眠気の有無を含め,オッズ比(OR)および95%信頼区間(95%CI)を算出した.統計解析には,統計ソフトR version4.4.0を使用し,統計的有意水準は5%未満とした.
7. 倫理的配慮本研究では,地域包括支援センターの管理者が対象者を選定し,リストを作成・管理した.研究内容は専門職が書面で説明し,同意を得た対象者に対して日程調整のうえ,研究者または専門職が訪問調査を実施した.調査前に書面同意を取得し,同意撤回の可能性についても説明した.調査の統一性を保つため,研究開始前に専門職へ倫理的配慮や調査方法を説明し,一貫した手順で実施した.データは無記名で収集し,個人情報の匿名化を徹底した.本研究は,大阪公立大学大学院看護学研究科倫理審査委員会の承認を得て実施した(承認番号2023-58).
対象者全体の基本属性および不眠症状による特徴を表1に示す.
n = 265
| 項目 | カテゴリ 単位 |
全体1) | 不眠症状2) | p値 | |
|---|---|---|---|---|---|
| 不眠症状なし | 不眠症状あり | ||||
| 265(100) | 198(100) | 67(100) | .663 | ||
| 基本属性 | |||||
| 年齢 | 年齢(SD) | 82.5(5.8) | 82.6(5.9) | 82.2(5.7) | .663 |
| 性別 | 男性 | 60(22.6) | 46(23.2) | 14(20.9) | .739 |
| 女性 | 205(77.4) | 152(76.8) | 53(79.1) | ||
| 介護度 | 事業対象者 | 38(14.3) | 34(17.2) | 4(6.0) | .007 |
| 要支援1 | 147(55.5) | 113(57.1) | 34(50.7) | ||
| 要支援2 | 80(30.2) | 51(25.8) | 29(43.3) | ||
| 世帯構成 | 一人暮らし | 138(52.1) | 95(48.0) | 43(64.2) | .031 |
| その他 | 127(47.9) | 103(52.0) | 24(35.8) | ||
| 教育歴 | 中学以下 | 94(35.5) | 68(34.3) | 26(38.8) | .608 |
| 高校以上 | 171(64.5) | 130(65.7) | 41(61.2) | ||
| 喫煙歴 | 吸わない | 223(84.2) | 164(82.8) | 58(86.6) | .810 |
| 飲酒頻度 | 飲まない | 197(74.3) | 143(72.2) | 54(80.6) | .232 |
| カフェイン | 飲まない | 27(10.2) | 21(10.6) | 6(9.0) | .879 |
| 転倒経験 | あり | 81(30.6) | 51(25.8) | 30(44.8) | .006 |
| 入院経験 | あり | 25(9.4) | 16(8.1) | 9(13.4) | .292 |
| 慢性疾患数 | 個[IQR] | 2.00 [1.00, 3.00] |
2.00 [1.00, 3.00] |
2.00 [1.00, 3.00] |
.170 |
| 内服薬 | あり | 255(96.2) | 189(95.5) | 66(98.5) | .460 |
| 内服薬数 | 個(SD) | 6.1(3.2) | 5.8(3.1) | 7.0(3.4) | .008 |
| 睡眠障害の程度 | |||||
| いびき | あり | 114(43.0) | 80(40.4) | 34(50.7) | .182 |
| 無呼吸 | あり | 13(4.9) | 8(4.0) | 5(7.5) | .427 |
| 睡眠時間 | 6時間未満 | 56(21.1) | 35(17.7) | 21(31.3) | .020 |
| 6時間~8時間未満 | 132(49.8) | 108(54.5) | 24(35.8) | ||
| 8時間以上 | 77(29.0) | 55(27.8) | 22(32.8) | ||
| 睡眠薬内服 | あり | 81(30.6) | 59(29.8) | 22(32.8) | .754 |
| 日中の過度な眠気3) | あり | 13(4.9) | 5(2.5) | 8(11.9) | .005 |
1)( )内の数字はn(%)又は平均(SD)又は中央値[IQR]を示す.名義変数はχ2検定またはFisherの正確確率検定,連続変数はt検定またはWilcoxon検定を行った.
2)不眠症状は,AIS-J(アテネ不眠症尺度日本語版)を使用し,5.5点以上を不眠症状ありとした
3)日中の過度な眠気は,JESS(日本語版日中眠気指数)を使用し,11点以上を日中の過度な眠気ありとした
基本属性において,対象者全体265名(100%)の平均年齢(標準偏差)は82.5(5.8)歳,性別は男性が60名(22.6%),女性205名(77.4%),事業対象者が38名(14.3%),要支援1の者が147名(55.5%),要支援2の者が80名(30.2%)であった.世帯構成は一人暮らしの者が138名(52.1%),教育歴は高校以上の者が171名(64.5%),喫煙歴は吸わない者が223名(84.2%),飲酒は飲まない者が197名(74.3%),カフェインは飲まない者が27名(10.2%),6カ月以内の転倒経験ありの者は81名(30.6%),6カ月以内の入院経験ありの者は25名(9.4%),慢性疾患数の中央値(四分位範囲)は2(1~3)種類,内服薬ありは225名(96.2%),内服薬数の平均(標準偏差)は6.1(3.2)種類であった.
2) 対象者の睡眠障害の程度睡眠障害の程度については,対象者265名(100%)のうち,いびきありの者が114名(43%),無呼吸の者が13名(4.9%),睡眠時間は6時間未満の者が56名(21.1%),6時間以上8時間未満の者が132名(49.8%),8時間以上の者が77名(29.0%),睡眠薬を内服している者は81名(30.6%),日中の過度な眠気ありの者が13名(4.9%)であった(表1).
3) 不眠症状からみた対象者の基本属性および睡眠障害の程度の特徴不眠症状の得点範囲は0~24点で,最小値は0点,最大値は16点であった.平均点(標準偏差)は3.9(3.6)点,中央値(四分位範囲)3(1~5)点であった.AIS-Jの尺度指標に基づき,5.5点をカットオフ値とし,5.5点未満を不眠症状なし(198名,74.7%),5.5点以上を不眠症状あり(67名,25.3%)と判定した.
不眠症状による対象の特徴を表1に示す.対象者の基本属性のうち,不眠症状のある者は不眠症状のない者に比べ,要介護度において要支援2の者の割合(不眠症状あり43.3%,不眠症状なし25.8%,p = .007),世帯構成において一人暮らしの割合(不眠症状あり64.2%,不眠症状なし48.0%,p = .031),6カ月以内の転倒経験がある者の割合(不眠症状あり44.8%,不眠症状なし25.8%,p = .006),内服薬数の平均個数(標準偏差)(不眠症状あり7.0(3.4)個,不眠症状なし5.8(3.1)個,p = .008)が有意に多かった.
また,対象者の睡眠障害の程度のうち,不眠症状のある者は不眠症状のない者に比べ,睡眠時間の短い者の割合(不眠症状あり31.3%,不眠症状なし17.7%,p = .020)と長い者の割合(不眠症状あり32.8%,不眠症状なし27.8%,p = .020),日中の過度な眠気のある者の割合(不眠症状あり11.9%,不眠症状なし2.5%,p = .005)が有意に多かった(表1).
2. 対象者におけるフレイルおよび認知機能,抑うつ,社会的フレイルの特徴対象者におけるフレイルおよび認知機能,抑うつ,社会的フレイルの特徴を表2に示す.対象者全体265名(100%)のうち,ロバストとプレフレイルの者が194名(72.8%),フレイルの者が71名(27.2%)であった.対象者全体265名(100%)で,体重減少ありの者が40名(15.9%),握力測定(筋力の減少あり)の者が110名(43.7%),疲労感ありの者が74名(29.3%),下肢筋力低下ありの者が182名(72.2%),運動習慣なしの者が49名(19.4%)であった.
n = 265
| 項目 | カテゴリ | 全体1) | 不眠症状2) | p値 | |
|---|---|---|---|---|---|
| 不眠症状なし | 不眠症状あり | ||||
| 265(100) | 198(100) | 67(100) | .663 | ||
| フレイル分類3) | ロバスト・プレフレイル | 194(72.8) | 159(80.3) | 35(52.2) | <.001 |
| フレイル | 71(27.2) | 39(19.7) | 32(47.8) | ||
| フレイル各項目 | 体重減少あり | 40(15.9) | 28(14.1) | 15(22.4) | .127 |
| 握力測定(筋力の減少あり) | 110(43.7) | 81(40.9) | 35(52.2) | .118 | |
| 疲労感あり | 74(29.3) | 42(21.2) | 38(56.7) | <.001 | |
| 下肢筋力低下あり4) | 182(72.2) | 141(71.2) | 53(79.1) | .264 | |
| 運動習慣なし | 49(19.4) | 38(19.2) | 20(29.9) | .087 | |
| 認知機能5) | 認知機能低下あり | 64(24.2) | 49(24.7) | 15(22.4) | .744 |
| 抑うつ6) | 抑うつ傾向あり | 117(44.2) | 68(34.3) | 49(73.1) | <.001 |
| 社会的フレイル7) | 社会的フレイルあり | 177(66.8) | 122(61.6) | 55(82.1) | .002 |
1)( )内の数字はn(%)を示す.検定はχ2検定を行った.
2)不眠症状は,AIS-J(アテネ不眠症尺度日本語版)を使用し,5.5点以上を不眠症状ありとした.
3)フレイル分類(0~5点)は,改訂版J-CHS(改訂版日本語版Cardiovascular Health Study Index)に基づいて,フレイル各項目の該当を1点とし,0点ロバスト,1~2点プレフレイル,3点以上フレイルと分類した.
4)「下肢筋力低下」は,「起立・立位バランステスト」に基づいて実施し,分類した.
5)認知機能は,RDST-J(Rapid Dementia screening Test日本語版,認知症スクリーニング検査)を使用し,7点以下を認知機能低下とした.
6)抑うつは,GDS5(Geriatric Depression Scale短縮版日本語訳)を使用し,2点以上と抑うつ傾向ありとした.
7)社会的フレイルは,SF5(Makizatoらが開発した社会的フレイルの定義)を使用し,2点以上を社会的フレイルありとした.
また,対象者全体265名(100%)のうち,認知機能低下ありの者は64名(24.2%),抑うつ傾向ありの者は117名(44.2%),社会的フレイルありの者は177名(66.8%)であった(表2).
不眠症状からみたフレイルの特徴(表2)は,不眠症状のある者はない者に比べて,フレイルである割合(不眠症状あり47.8%,不眠症状なし19.7%,p < .001)が有意に高かった.不眠症状のある者はない者に比べて,疲労感がある者の割合(不眠症状あり56.7%,不眠症状なし21.2%,p < .001)が有意に高かった.
不眠症状のある者はない者に比べて,抑うつ傾向である者の割合(不眠症状あり73.1%,不眠症状なし34.3%,p < .001),社会的フレイルである者の割合(不眠症状あり82.1%,不眠症状なし61.6%,p = .002)が有意に高かった.
3. 不眠症状とフレイルの関連不眠症状と主要アウトカムであるフレイルの関連(表3)を検討するために,単変量ロジスティック回帰分析を行った結果,不眠症状のある者はない者に比べて,フレイルのオッズ比が有意に高かった(OR = 3.73, 95%CI = 2.06~6.75, p < .001).また,対象者の年齢,性別,要介護度,世帯構成,教育歴,飲酒頻度,カフェインの飲用頻度,6カ月以内の転倒経験,6カ月以内の入院経験,慢性疾患数,内服薬数,睡眠薬内服の有無,いびきの有無,睡眠時間,日中の過度な眠気の有無で調整した多変量ロジスティック回帰分析を行った結果,不眠症状のある者はない者に比べて,フレイルのオッズ比が有意に高かった(OR = 2.89, 95%CI = 1.42~5.88, p = .004)(表3).各調整変数の回帰分析結果については,付録2に示す.
| 調整なし1) | 調整あり2) | ||||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| OR | (95%CI) | p値 | OR | (95%CI) | p値 | ||
| 不眠症状3) | |||||||
| 不眠症状なし(n = 198) | 1.00 | 1.00 | |||||
| 不眠症状あり(n = 67) | 3.73 | (2.06~6.75) | <.001 | 2.89 | (1.42~5.88) | .004 | |
OR:オッズ比,95%CI:95%信頼区間,p値:有意差 p < 0.05
1)単変量ロジスティック回帰分析を実施した.
2)年齢(連続変数),性別,介護度(要支援1,要支援2,事業対象者),世帯構成(一人暮らし,それ以外),教育歴(中学以下,高校以上),飲酒頻度(飲まない,飲む),カフェイン(飲まない,飲む),6カ月以内の転倒経験の有無,6カ月以内の入院経験の有無,内服薬数(6個未満,6個以上),睡眠薬内服の有無,いびきの有無,睡眠時間(6時間未満,6時間以上8時間未満,8時間以上),日中の過度な眠気の有無で調整し,多変量ロジスティック回帰分析を実施した.
3)不眠症状は,AIS-J(アテネ不眠症尺度日本語版)を使用し,5.5点以上を不眠症状ありとした.
不眠症状と副次アウトカムである認知機能,抑うつ,社会的フレイルとの関連を表4に示す.単変量ロジスティック回帰分析を行った結果,不眠症状のある者はない者に比べて,認知機能(OR = 1.06, 95%CI = 0.48~2.37, p = .887)は有意な関連がみとめられなかったが,抑うつ(OR = 5.20, 95%CI = 2.81~9.62, p < .001),社会的フレイル(OR = 2.86, 95%CI = 1.44~5.68, p < .001)のオッズ比が有意に高かった(表4).また,主要アウトカムと同様に,調整変数を投入した多変量ロジスティック回帰分析を行った結果,不眠症状のある者はない者に比べて,抑うつのオッズ比が有意に高かった(OR = 4.19, 95%CI = 2.10~8.36, p = .003)(表4).一方で,認知機能(OR = 1.06, 95%CI = 0.48~2.17, p = .887),社会的フレイル(OR = 2.08, 95%CI = 0.86~5.05, p = .117)については,有意な関連は認められなかった(表4).
| 認知機能1) | 抑うつ2) | 社会的フレイル3) | |||||||||||||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 調整なし4) | 調整あり5) | 調整なし | 調整あり | 調整なし | 調整あり | ||||||||||||
| OR(95%CI) | p値 | OR(95%CI) | p値 | OR(95%CI) | p値 | OR(95%CI) | p値 | OR(95%CI) | p値 | OR(95%CI) | p値 | ||||||
| 不眠症状6) | |||||||||||||||||
| 不眠症状なし | 1.00 | 1.00 | 1.00 | 1.00 | 1.00 | 1.00 | |||||||||||
| 不眠症状あり | 0.88(0.45~1.70) | .697 | 1.06(0.48~2.37) | .887 | 5.20(2.81~9.62) | <.001 | 4.19(2.10~8.36) | .003 | 2.86(1.44~5.68) | <.001 | 2.08(0.86~5.05) | .117 | |||||
OR(95%CI):オッズ比(95%信頼区間) p値:有意差 p < 0.05
1)認知機能は,RDST-J(迅速認知症スクリ~ニング検査日本語版)を使用し,7点以下を認知機能低下とした.
2)抑うつは,GDS5(Geriatric Depression Scale短縮版日本語訳)において2点以上を抑うつ傾向ありとした.
3)社会的フレイルは,SF5(Makizatoらが開発した社会的フレイルの定義)において2点以上を社会的フレイルありとした.
4)単変量ロジスティック回帰分析を実施した.
5)年齢(連続変数),性別,介護度(要支援1,要支援2,事業対象者),世帯構成(一人暮らし,それ以外),教育歴(中学以下,高校以上),飲酒頻度(飲まない,飲む)カフェイン(飲まない,飲む),6カ月以内の転倒経験の有無,6カ月以内の入院経験の有無,内服薬数(6個未満,6個以上),睡眠薬内服の有無,いびきの有無,睡眠時間(6時間未満,6時間以上8時間未満,8時間以上),日中の過度な眠気の有無で調整し,多変量ロジスティック回帰分析を実施した.
6)不眠症状は,AIS-J(アテネ不眠症尺度日本語版)を使用し,5.5点以上を不眠症状ありとした.
本研究では,松原市における地域包括支援センターの介護予防対象高齢者を対象とした訪問調査を実施し,介護予防対象高齢者の不眠症状とフレイルとの関連,および認知機能,抑うつ,社会的フレイルとの関連を検討した.その結果を以下の通り考察する.
1. 対象者の特徴本研究における介護予防対象高齢者265名(100%)は,平均年齢82.5(SD5.8)歳,一人暮らしの者52.1%,2つ以上の慢性疾患ありの者173名(65.2%),下肢筋力低下ありの者182名(72.2%),社会的フレイルである者177名(66.8%)であり,複数の健康課題を抱えている特徴があった.これらのことから,地域在住の自立した高齢者と比較して,フレイルへの移行リスクが高いことが考えられる.
また,不眠症状がある者は67名(25.3%)であり,先行研究(Ancoli-Israel, 2000;Buchmann et al., 2016;Li et al., 2018;Nemoto et al., 2021;Wen et al., 2023)とほぼ同程度の割合であったが,フレイルである者は71名(27.2%)であり,先行研究における地域在住の自立高齢者のフレイル状態の者の割合約10~20%と比較し(Theou et al., 2015;Watanabe et al., 2022;Wen et al., 2023),フレイル状態である者の割合は多かった.
2. 不眠症状とフレイルの関連本研究では,対象者のフレイルに対する不眠症状のオッズ比が有意に高いことが示された(OR = 2.89, 95%CI = 1.42~5.88, p = .004).この結果から,不眠症状が他の因子から独立してフレイルに関連する重要な要因であることが確認された.また,本研究の対象者である介護予防対象高齢者においても,約25%が不眠症状を抱えていた.
先行研究によると,加齢による高齢者の睡眠の特徴は,浅いレム睡眠が増加(Li et al., 2018),概日リズムの変化や認知機能低下に係るメラトニン分泌の変化,頻尿などによる早期覚醒や中途覚醒(Li et al., 2018),慢性疾患や死別・独居などの心理的ストレスが睡眠障害や不眠症状を引き起こす(Li et al., 2018)と報告されている.本研究対象者においても,加齢や慢性疾患,下肢筋力低下などによる活動量の低下が不眠症状に影響を及ぼしている可能性が示唆された.
また,活動量の低下は,エネルギー消費量の減少を引き起こし,食欲低下や栄養不足を通じて筋肉量の減少を招き(Buchmann et al., 2016),フレイルサイクルを加速させるとの報告もある(Fried et al., 2001).本研究では,介護予防対象高齢者において不眠症状のある者は,フレイル,社会的フレイル,抑うつの有症率が有意に高い傾向を示しており,これらの複合的要因がフレイル進行に影響を与えている可能性が示唆された.
以上より,介護予防高齢者のフレイル予防においては,身体的・栄養的アプローチに加え,不眠症状へのアプローチも併せて行うことが,より効果的な支援に繋がる可能性があると考える.
3. 不眠症状と抑うつ,認知機能,社会的フレイルの関連 1) 不眠症状と抑うつの関連本研究では,対象者の抑うつに対する不眠症状のオッズ比が有意に高かった(OR = 4.19, 95%CI = 2.10~8.36, p = .003).この結果は,高齢者における不眠症状と抑うつの関連を指摘した先行研究(Hussenoeder et al., 2021;Liu et al., 2018)と一致している.
不眠症状と抑うつの生理学的なメカニズムは明らかになっていないが,不眠症状による概日リズムの乱れや日中の倦怠感による生活の質の低下(Hussenoeder et al., 2021),不眠症状によるストレス感受性の増加や否定的な感情などの心理的ストレスが抑うつ傾向を助長する可能性が示唆されている(Hussenoeder et al., 2021;Liu et al., 2018).また,不眠症状による日中の過度な眠気や集中力の低下は,社会的な活動や参加を妨げ(Nakakubo et al., 2019),孤独や孤立感を生み出し,抑うつのリスクを高めることが推察される.
本研究でも,不眠症状がある者は不眠症状がない者に比べて,社会的フレイル,抑うつ傾向である割合が有意に高かった.不眠症状は,生活リズムの低下や生活の質の低下を引き起こすだけではなく,社会活動量を低下させ,高齢者の精神面,身体面へ影響を及ぼす(Tang et al., 2021;Zhang et al., 2024).
したがって,介護予防対象高齢者のフレイル予防対策においては,不眠症状と抑うつ症状に着目し,心理面,社会面,身体面を包括的にアプローチすることで,生活の質の向上や社会的孤立の改善が期待されるとともに,フレイル発生リスクの低減に寄与する可能性が示唆される.
2) 不眠症状と認知機能の関連不眠症状と認知機能の有意な関連は認められなかった(OR = 1.06, 95%CI = 0.48~2.17, p = .887).本研究の対象者は要介護認定に至っておらず,日常生活をおおむね自立している高齢者であるため,認知機能に大きなばらつきがなかった可能性がある.このように背景が類似した高齢者であったことが,不眠症状による差の検出ができなかった要因と考える.
3) 不眠症状と社会的フレイルの関連不眠症状と社会的フレイルの関連においては,オッズ比の95%信頼区間が広く(OR = 2.08, 95%CI = 0.86~5.05, p = .117),有意な関連は認められなかった.この結果は,本研究の対象者が265名と限られていたことに加え,他の交絡因子の影響を反映している可能性がある.
本研究の対象者は,加齢,独居,2つ以上の慢性疾患の罹患,下肢筋力の低下といった特徴を有しており,社会的フレイルには,不眠症状だけでなく,身体的要因や居住環境,孤立感等,多様な因子が影響している可能性がある.先行研究においても,身体的フレイルや独居,活動範囲の狭小化,抑うつ傾向などが社会的フレイルに影響することが報告されており(Makizako et al., 2015),本研究における結果の不確実性にも,こうした多因子的要因が影響した可能性が考えられる.
4. 本研究の強み本研究では,不眠症状がフレイルや抑うつに関連する因子であることが明らかになった.特に,介護予防対象高齢者における不眠症状の実態を明らかにし,不眠症状がフレイルや抑うつと関連していることを示したことは,重要な示唆を与える結果である.
また,介護予防対象高齢者のフレイル予防には,不眠症状に着目した心理面,社会面,身体面への包括的なアプローチが有効である可能性が示唆された.
5. 本研究の限界と今後の課題本研究の限界として,以下の点が挙げられる.第一に,調査項目の不眠症状は,主観的評価に基づいており,実際の睡眠状況と異なる可能性がある.今後はアクティグラフなど客観的な測定装置を活用し,正確な睡眠データを収集することが必要と考える.第二に,本研究の調査は6月から8月の夏季に実施しており,季節的要因が睡眠状況に影響を与えた可能性がある.今後は通年でのデータ収集を行い,季節変動を考慮した検討が必要である.第三に,対象者の選定では,同意が得られなかった対象者の実態は把握できておらず,データに選択バイアスが生じている可能性がある.研究への参加に同意しなかった高齢者は,健康状態の不良や認知機能・身体機能の低下,社会的交流が苦手である者の可能性が考えられ,本研究で観察された不眠症状およびフレイルの有病率は,実際の介護予防対象高齢者集団よりもやや低い結果となった可能性がある.また,本研究は松原市の調査研究であり,自治体により介護予防対象者の選定基準が異なるため,結果の一般化には限界がある.第四に,本研究は横断調査であり,不眠症状とフレイル,不眠症状と抑うつの因果関係を明確にすることはできない.今後は,縦断的調査により因果関係を明らかにすることが,今後のフレイル予防対策の検討に有用と考える.
このような限界はあるが,本研究は訪問調査による聞き取りおよび測定調査であり,地域包括支援センターの調査として調査対象者の72%の調査を実施できたことにより,一定の代表性を維持したデータを提供した点は本研究の強みと考えられる.
以上のことから,介護予防対象高齢者のフレイル予防において,不眠症状の改善とともに抑うつ傾向に対する支援やケアを提供することにより,フレイル発生のリスクを低減させる可能性があると考えられる.また,不眠症状改善を中心とした介護予防プログラムが地域包括ケアシステムの中に普及することで,高齢者全体の健康寿命延伸に寄与することが期待できる.
本研究は,松原市における地域包括支援センターの介護予防対象高齢者を対象に,不眠症状とフレイル,および不眠症状と認知機能,抑うつ,社会的フレイルとの関連を検討した.その結果,介護予防対象高齢者において,不眠症状のある者はない者に比べて,フレイルおよび抑うつ傾向が有意に高いことが明らかになった.介護予防対象高齢者のフレイル予防には,不眠症状や抑うつに注目した包括的なアプローチが,フレイル発生のリスクの低減に寄与する可能性が示唆された.
付記:本研究は,大阪公立大学大学院看護学研究科に提出した修士論文に加筆・修正を加えたものである.
謝辞:本研究の実施にあたり,ご協力いただきました対象者の皆様,松原市地域包括支援センター徳洲会,松原市地域包括支援センタ―社会福祉協議会の管理者様,専門職の皆様ならびに関係者の皆様に心より御礼申し上げます.
利益相反:本研究における利益相反は存在しない.
著者資格:筆頭著者SYは研究の着想および,研究デザインと実施,分析,論文執筆の全てを行った.KAは原稿への示唆および研究プロセス全体への助言を行った.すべての著者は最終原稿を確認し,承認した.