日本看護科学会誌
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原著
集中治療室に勤務する看護師が職業上直面する問題の現状と職務満足度の関係
―東京圏に所在する大学病院集中治療室の看護師を対象とした調査―
中村 有加里上國料 美香亀岡 智美
著者情報
キーワード: ICU看護師, 問題, 職務満足度
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2026 年 46 巻 p. 527-539

詳細
Abstract

目的:東京圏ICU看護師が職業上直面する問題の現状と職務満足度の関係を探索すること

方法:東京圏の大学病院ICU看護師369名に調査票を配布し,有効回答107部(有効回答率29.0%)を記述統計量算出,単変量解析,多変量解析により分析した.

結果:東京圏ICU看護師は,「看護師不足により,負担する役割や夜勤が増えている」という問題に最も直面していた.また,「相談できる上司や先輩看護師などがいない」(β = –.253, p = .004),「他部署の看護師と協調的な関係を築くことが難しい」(β = –.232, p = .003),「希望と異なる部署に配属され,やりがいが感じられない」(β = –.227, p = .003)という問題の直面頻度が高いほど職務満足度が低かった.

結論:ICU看護師が直面する問題の回避・解決に向け,十分な人員確保や心理的安全を担保した環境醸成,教育的支援が重要であると示唆を得た.

Translated Abstract

Objective: This study aimed to examine the current occupational challenges encountered by intensive care unit (ICU) nurses and to investigate their association with job satisfaction in the Tokyo metropolitan area.

Methods: A cross-sectional questionnaire survey was administered to 369 ICU nurses employed at university hospitals in the Tokyo metropolitan area. A total of 107 valid responses were obtained (valid response rate: 29.0%). The data were analyzed using descriptive statistics, univariate analyses, and multiple regression analyses.

Results: The most frequently reported issue was an “increased workload and night shifts due to a shortage of nurses”. Additionally, higher frequencies of experiencing “a lack of approachable supervisors or senior nurses for consultation” (β = –.253, p = .004), “difficulty establishing collaborative relationships with nurses in other departments” (β = –.232, p = .003), and “being assigned to undesired departments, resulting in a diminished sense of purpose” (β = –.227, p = .003) were significantly associated with lower job satisfaction levels.

Conclusion: These findings highlight the importance of ensuring adequate nurse staffing and fostering a supportive work environment where nurses can seek advice and collaborate effectively. Organizational efforts to address these factors may contribute to improved job satisfaction among ICU nurses.

Ⅰ. 緒言

看護師は,職業上様々な問題に直面している.そのうち,人間関係の障壁,看護実践能力への不安などは,看護師が退職を検討する契機となることが指摘されている(夏目,2019中野・岩佐,2019).また,実際に退職した看護師は,それら問題に直面した経験をもっていたことも明らかにされている(高橋ら,2022塚本・舟島,2008).これらは,看護師の直面する職業上の問題が就業継続意思に影響を及ぼす可能性を示唆している.さらに,看護師の就業継続意思は,職務満足度と関係することが明らかとなっている(Sapar & Oducado, 2021長砂・石川,2021).

先行研究は,集中治療室(Intensive Care Unit)に勤務する看護師(以下,ICU看護師)が,患者の生命に直結する行為を行うことへの恐怖や緊張(山本,2017),集中治療やその看護に必要な知識や技術を習得する難しさなど(東尾,2020山本,2017),看護実践上の問題のみならず,物的・人的環境,人間関係など様々な職業上の問題に直面することを明らかにしている.しかし,ICU看護師がこれらの問題にどの程度の頻度で直面しているのか,また,職務満足度とどのように関係しているのか明らかにされていなかった.

大学病院は,高度かつ専門的な医療の提供に加え,教育や研究機能を担う特性をもっている(文部科学省,2013).また,大学病院の約8割が特定機能病院として承認され,高度な医療の提供や医療技術の開発・評価,医療安全体制の整備など,多面的な役割が求められている(厚生労働省,2022).ICU看護師は,患者の複雑な病態の把握や急変対応,医療機器の管理,看護実践能力の向上などが求められている(日本集中治療医学会,2016田口ら,2013).先行研究(Tsai & Chang, 2022Majima et al., 2019)は,ICU看護師が他看護単位に勤務する看護師と比較し,職務満足度が低いことを明らかにしている.これらの環境は,大学病院のICU看護師に高い専門性と責任を求め,それが業務負担や心理的負担の増大となり,職務満足度の低下や離職に繋がっている可能性がある.

さらに,全国の大学病院の約4割が東京圏(国土交通省,2023)に位置づく東京都,神奈川県,埼玉県,千葉県に所在し,これら1都3県は,他県と比較し,看護師の離職率が高い(日本看護協会,2025).この地域特性から,東京圏に所在する大学病院ICU看護師(以下,東京圏ICU看護師)がどのような職業上の問題に直面しているのか明らかにすることは,就業継続支援のために重要である.

先行研究は,看護師が職業上直面する問題と就業継続意思(山本,2017),看護師の就業継続意思と職務満足度(Sapar & Oducado, 2021長砂・石川,2021)の関係をそれぞれ解明しているものの,看護師が職業上直面する問題と職務満足度の関係は,未解明であった.

以上のことから,本研究は,東京圏ICU看護師を対象に,職業上直面する問題の現状と職務満足度の関係を明らかにすることを目的とする.本研究の実施により得られる成果は,東京圏ICU看護師が直面する問題の現状を解明し,その回避と解決,さらには,所属する集中治療室の就業継続に向けた課題を検討するための基礎資料となる.

Ⅱ. 研究目的

東京圏ICU看護師が職業上直面する問題の現状,及び,その職務満足度との関係を明らかにし,所属するICUの就業継続に向けた課題への示唆を得ること.

Ⅲ. 用語の概念規定

1. 看護師が職業上直面する問題

看護師が職業上直面する問題とは,看護師が職業活動を通し直面する解決すべき事柄であり,しかるべき技術によって客観的に解決することが可能な事柄である.

2. 看護師の職務満足度

看護師の職務満足度とは,従事している職業活動の遂行や経験に対する個人の評価から生じる肯定的な感情の程度である.

Ⅳ. 概念枠組み

看護師が職業上直面する問題と看護師の職務満足度に焦点を当てた研究について文献検討を行い,概念枠組みを構築した.ICU看護師が職業上直面する問題の測定には,「問題診断尺度―スタッフ看護師用―」(服部・舟島,2018),ICU看護師の職務満足度の測定には,「病院に勤務する看護師の職務満足測定尺度」(撫養ら,2014)を用い,職業上直面する問題と職務満足度の関係を探索する.また,その関係探索には,職業上直面する問題と職務満足度に関係する可能性の高い対象者特性の変数を含む.変数は,文献検討から抽出した変数を研究者の臨床経験の知識に基づき,ICU看護師が職業上直面する問題,職務満足度それぞれに関係する可能性を示す変数を選定した.その変数とは,〔学習機会獲得状況〕,〔勤務帯リーダーの経験〕,〔取得資格〕,〔教育背景〕,〔所属ICUの就業継続意思〕,〔看護実践の自己評価の実施〕,〔職場内暴力の経験〕,〔臨床経験年数〕,〔所属ICU経験年数〕である.なお,〔職場内暴力の経験〕は,〔患者からの職場内暴力の経験〕と〔他職員からの職場内暴力の経験〕に分類した.これら10変数,及び,職業上直面する問題と職務満足度との関係を解明することは,ICU看護師が直面する問題の回避と解決,さらには,所属する集中治療室の就業継続に向けた課題の検討を可能にする.

Ⅴ. 研究方法

1. 研究対象者

研究対象者は,東京圏に所在する大学病院ICU,Surgical Intensive Care Unit(以下,SICU),Coronary Care Unit(以下,CCU)のいずれかに勤務しているスタッフ看護師とした.対象者の所属部署をこのようにした理由は,東京圏に所在する大学病院のうち,特定集中治療室管理料1から4のいずれかを取得している所属部署の種類がこれら3種類であったためである.

2. 測定用具

本研究の測定用具には,次の3つの調査票を用いた.

第1は,東京圏ICU看護師が直面する問題の現状を把握するための調査票であり,「問題診断尺度―スタッフ看護師用―」(服部・舟島,2018)の全35項目を用いた.「問題診断尺度―スタッフ看護師用―」は,ICU看護師を含む多様な看護単位に勤務するスタッフ看護師が職業上直面する問題51種類(服部・舟島,2021)を基盤に作成された35質問項目から成る.選択肢は,「いつも直面している(4点)」から「全く直面していない(1点)」の4段階リッカート型である.測定結果は,項目の得点が高いほど看護師がその項目の表す問題に直面する頻度が高いことを示す.

第2は,東京圏ICU看護師の職務満足度を把握するための調査票であり,「病院に勤務する看護師の職務満足測定尺度」(撫養ら,2014)の全28項目を用いた.「病院に勤務する看護師の職務満足測定尺度」は,「仕事に対する肯定的感情」「上司からの適切な支援」「働きやすい労働環境」「職場での自らの存在意義」の4下位尺度から成る.選択肢は,「全くそう思わない(1点)」から「非常にそう思う(5点)」の5段階リッカート型である.各項目得点を合計し,総得点を算出する.測定結果は,総得点が高いほど職務満足度が高いことを示す.

第3は,研究対象者の特性を把握するための項目であり,ICU看護師が職業上直面する問題と職務満足度に関係する可能性のある10変数と対象者の基本的な特性を調査するための9項目を含む.

上述した項目のうち,「問題診断尺度―スタッフ看護師用―」と「病院に勤務する看護師の職務満足測定尺度」は,それぞれ先行研究により信頼性と妥当性を備えていることが確認されている(服部・舟島,2018撫養ら,2014).また,本調査に用いる3つの調査票の妥当性について,内容的側面からの証拠を集めることを目的に,研究者の所属するICUに勤務する看護師に対し,パイロットスタディを実施し,28名(回収率 93.3%)から回答を得,調査票への回答より,対象者が各質問項目に回答できることを確認した.

なお,「問題診断尺度―スタッフ看護師用―」及び「病院に勤務する看護師の職務満足測定尺度」の使用については,開発者から許諾を得た.

3. データ収集

東京圏に該当する東京都,神奈川県,千葉県,埼玉県の1都3県に所在する大学病院のICU46施設のうち,標本数の確保に向け,ICU看護師数の多い施設から順に,看護部長へ研究協力を依頼した.その際,パイロットスタディを行った1施設は,調査結果への影響を考慮し,除外した.その結果,45施設に協力を依頼し,承諾を得た13施設のICU看護師に調査票を配布し,返信用封筒を用いた無記名個別投函による調査票の返送を依頼した.データ収集期間は,2023年7月19日から9月15日までであった.

4. データ分析

統計解析ソフトウエアIBM SPSS Statistics ver29.0を用いて,調査票を構成する全項目の記述統計量を算出した.本研究における「問題診断尺度―スタッフ看護師用―」と「病院に勤務する看護師の職務満足測定尺度」の適切性を確認するため,各尺度のα係数を算出するとともに,Kolmogorov-Smirnov検定,ヒストグラム,正規Q-Qプロット法を用い,その分布の正規性を確認した.また,職務満足度と就業継続意思の関係を解明するため,一元配置分散分析を用いて単変量解析を行った.次に,就業継続意思を除く対象者特性9変数と職務満足度,ICU看護師が職業上直面する問題35種類,すなわち,「問題診断尺度―スタッフ看護師用―」の35項目と職務満足度の関係探索に向け,対応のないt検定,一元配置分散分析を用いた単変量解析を行った.なお,単変量解析の際,統計学的有意水準は,α = 0.1(石井,2014)とした.単変量解析の結果に基づき,「病院に勤務する看護師の職務満足測定尺度」の総得点と有意な関係を認めた変数をステップワイズ法による重回帰分析に投入した.ステップワイズ法を用いた理由は,適切な重回帰式が作られる可能性が高いためである(対馬,2018).説明変数は,対象者特性と問題診断尺度の項目,目的変数は,職務満足度得点とした.重回帰分析の際の統計学的有意水準は,α = 0.05とした.また,標準回帰係数βは,その値に着目し,相関係数と同様に解釈し,β = 0.2以上を影響ありと判断した(対馬,2018).

5. 倫理的配慮

人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針(厚生労働省,2023)に準拠し,研究対象者に対する倫理的配慮を行うとともに,国立研究開発法人国立国際医療研究センター倫理審査委員会の承認後,実施した(承認番号NCGM-S-004707-00).看護部長と看護師個人には,研究協力依頼状を通し十分な情報開示を行うとともに,自由意思による研究参加と調査票の無記名個別投函を保障した.また,個人情報漏洩の回避に向け,データは,パスワードをかけたUSBに保存,または,鍵付きの保管庫にて保管した.

Ⅵ. 結果

13施設に勤務する369名のICU看護師に調査票を配布し,111名から協力を得た(回収率30.0%).このうち107部を有効回答として分析した(有効回答率29.0%).無効回答となった4部のうち2部は,「問題診断尺度―スタッフ看護師用―」の全質問項目に無回答,1部は,1質問項目以外無回答であった.残る1部は,対象者特性調査紙の全質問項目に無回答であった.

1. 対象者の特性

対象者の年齢は,平均32.9歳(standard deviation,以下SD = 8.8)であった.臨床経験年数は,平均10.2年(SD = 8.0),ICU経験年数は,平均4.5年(SD = 3.8)であった.性別は,女性が89名(83.2%)であった.対象者の所属施設の設置主体は,すべて私立であったものの,最終的に修了した看護学の教育課程,所属ICUの種類,所属ICUの病床数,勤務帯の看護師数,ICUに常駐する医師数,看護提供方式などは,多様であった(表1).

表1 対象者の特性

n = 107(質問紙に回答した全対象者)

項目 項目
年齢 MSD 32.9(8.8) 看護提供方式 n(%)
臨床経験年数 MSD 10.2(8.0) 患者受け持ち方式 45(42.1)
所属ICU経験年数 MSD 4.5(3.8) チームナーシング 37(34.6)
性別 n(%) プライマリナーシング 29(27.1)
女性 89(83.2) モジュール継続型受け持ち方式 17(15.9)
男性 18(16.8) パートナーシップ・ナーシング・システム 14(13.1)
所属施設の設置主体 固定チームナーシング 13(12.1)
私立 107(100.0) 機能別看護方式 2(1.9)
教育背景 その他 4(3.7)
看護系大学院博士課程 0(0.0) 取得資格(複数回答)
看護系大学院修士課程 5(4.7) 保健師 20(18.7)
看護系大学 41(38.3) 認定看護師 7(6.5)
看護系短期大学(3年課程) 9(8.4) 認定看護分野 集中ケア 4(3.7)
看護系短期大学(2年課程) 2(1.9) クリティカルケア 1(0.9)
看護専門学校(3年課程) 43(40.2) 慢性心不全看護 1(0.9)
看護専門学校(2年課程) 3(2.8) 感染管理 1(0.9)
高等学校衛生看護科・専攻科 4(3.7) 専門看護師 4(3.7)
所属ICUの種類(複数回答) 専門看護分野 急性重症患者看護 4(3.7)
ICU(集中治療室) 73(68.2) 特定行為研修の修了状況
ICUの混合病棟 17(15.9) 修了 5(4.7)
CCU(冠動脈疾患集中治療室) 15(14.0) 研修受講中 2(1.9)
SICU(外科系集中治療室) 2(1.9) 未受講 98(91.6)
所属ICUの病床数 MSD 15.1(7.7) 無回答 2(1.9)
勤務帯の看護師数 MSD 勤務帯リーダーの経験
平日の日勤帯 10.0(4.1) 頻繁に担う 44(41.1)
平日の夜勤帯 7.4(3.8) 時々担う 17(15.9)
ICUに常駐する医師数 MSD ほとんど担わない 6(5.6)
平日の日勤帯 2.0(2.1) 全く担わない 40(37.4)
平日の夜勤帯 1.0(0.9) 職場内暴力の経験
学習機会獲得状況 MSD 2.8(2.4) 患者からの暴力やハラスメント
所属ICU就業の継続意思 n(%) よく経験する 8(7.5)
あり 35(32.7) 時々経験する 52(48.6)
どちらともいえない 49(45.8) ほとんど経験しない 32(29.9)
なし 22(20.6) 全く経験しない 15(14.0)
無回答 1(0.9) 他職員からのいじめやハラスメント
看護実践の自己評価の実施 よく経験する 5(4.7)
頻繁に行っている 9(8.4) 時々経験する 30(28.0)
時々行っている 61(57.0) ほとんど経験しない 36(33.6)
ほとんど行っていない 30(28.0) 全く経験しない 36(33.6)
全く行っていない 7(6.5)

注.M = mean(平均値),SD = standard deviation(標準偏差)

2. 対象者の職業上直面する問題の現状

尺度の全項目に回答した対象者102名の問題診断尺度総得点の平均値は,79.1点(SD = 15.7)であった.また,正規性の検定の結果は,総得点が正規分布に従うことを示した(z = .055, p = .053).

問題診断尺度各項目得点の平均値は,2.3点(SD = 0.5)であった.また,問題診断尺度の各項目の得点が,平均+1SDである2.8点以上の項目は,3項目あり,得点の高い順に,「看護師不足により,負担する役割や夜勤が増えている」(3.0点,SD = 1.0),「看護師間の実践能力や意欲が異なり一定水準の看護の質を維持できない」(2.8点,SD = 0.8),「看護師個々の実践能力や勤務形態の違いにより自分の業務量が増える」(2.8点,SD = 0.9)であった(表2).

表2 「問題診断尺度―スタッフ看護師用―」度数分布

平均値 中央値 SD n
問題診断尺度総得点 79.1 76.0 15.7 102
問題診断尺度1項目あたりの得点 2.3 2.3 0.5 102
各質問項目の得点
1.仕事か家庭のいずれかを優先せざるをえず,もう一方がおろそかになる 2.5 3.0 1.0 107
2.時間内に業務を終えられず,帰宅時間が遅くなる 2.7 3.0 0.8 107
3.自己学習に取り組む時間を確保することが難しい 2.7 3.0 0.9 107
4.必要とされる最新の知識や技術をなかなか修得できない 2.5 2.0 1.0 106
5.臨床経験を重ねているにもかかわらず看護技術が上達しない 2.0 2.0 0.8 107
6.与薬方法や感染対策などの業務変更が頻繁にあり,対応しきれない 2.1 2.0 0.8 107
7.患者やその家族との関係形成に時間がかかる 2.3 2.0 1.0 107
8.医療事故を起こすことへの不安を払拭できないまま看護を提供している 2.3 2.0 1.0 107
9.患者の急変など緊急時の対応に自信がない 2.6 2.0 1.0 107
10.指導に必要な知識や技術が不足したまま後輩看護師を指導している 2.3 2.0 0.9 107
11.相談を受けても同僚や後輩看護師の期待に応えられない 2.3 2.0 0.8 107
12.院内研究や委員会などの担当に伴う課題を克服することが難しい 2.1 2.0 0.9 106
13.異動や転勤により業務を十分に理解できておらず,リーダーシップを発揮できない 1.8 1.0 1.0 107
14.業務上の必要な話し合いが同僚とできない 1.8 2.0 0.8 105
15.部署内のルールを全スタッフに浸透させることが難しい 2.6 2.5 0.9 106
16.業務整理が不十分であり,多様な患者に対応できない 2.4 2.0 0.9 107
17.業務量が多く患者が必要とする看護を提供できない 2.7 3.0 0.8 107
18.看護師間の実践能力や意欲が異なり一定水準の看護の質を維持できない 2.8 3.0 0.8 107
19.看護師個々の実践能力や勤務形態の違いにより自分の業務量が増える 2.8 3.0 0.9 107
20.医療チームメンバーによる失礼な態度を見ても患者や家族を擁護できない 1.9 2.0 0.9 107
21.自分の健康を維持できず,仕事に支障を来している 2.0 2.0 0.9 107
22.疲労が蓄積し,仕事以外のことが何もできない 2.3 2.0 0.9 107
23.職業活動上の目標が見つからない 2.5 2.0 1.0 107
24.委員会活動,後輩看護師指導などにより,看護に専念できない 1.9 2.0 0.9 107
25.高圧的な医療チームメンバーがいるため連携しにくい 2.4 2.0 1.0 107
26.相談できる上司や先輩看護師などがいない 1.8 2.0 0.9 107
27.適正な評価を得られない 2.0 2.0 0.9 107
28.看護師不足により,負担する役割や夜勤が増えている 3.0 3.0 1.0 107
29.他部署の看護師不足が頻繁に生じ,応援に行かされる 2.4 2.0 1.1 107
30.他部署の看護師と協調的な関係を築くことが難しい 2.4 2.0 0.9 107
31.残業手当や休暇を申請しにくい 2.2 2.0 1.1 107
32.機会を得られず取得している資格を活かせない 1.6 1.0 0.9 107
33.希望と異なる部署に配属され,やりがいが感じられない 1.4 1.0 0.8 107
34.勤務時間外の研修に参加する機会が多く自分の時間が少ない 1.8 1.0 1.0 107
35.院内研修と学習ニードが一致しない 2.2 2.0 1.0 107

注.全項目に回答したデータを用いた分析は,n = 102,各項目分析は,各項目の有効回答数を用いたため,nは異なる.

3. 対象者の職務満足度の現状

尺度の全項目に回答した対象者105名の職務満足度尺度総得点(以下,職務満足度得点)の平均値は,83.5点(SD = 15.4)であった.また,正規性の検定の結果は,総得点が正規分布に従うことを示した(z = .087, p = .200).

4. 対象者の職務満足度と所属ICUの就業継続意思の関係

看護師が職業上直面する問題と職務満足度の関係探索に先立ち,対象者の職務満足度と所属ICUの就業継続意思の関係を分析した.その結果,所属ICUの就業継続意思のある者がそうでない者よりも職務満足度が高く,所属ICUの就業継続意思の明確さが職務満足度に関係していることを示した(表3).

表3  対象者の所属ICU就業の継続意思と職務満足度尺度総得点の関係

n = 104(所属ICU就業の継続意思と職務満足度尺度の全項目に回答した対象者)

5. 看護師が職業上直面する問題と職務満足度の関係

ICU看護師が職業上直面する問題と職務満足度の関係探索に向け,対象者特性と対象者の職務満足度総得点の単変量解析(表4),続いて対象者の問題診断尺度35項目の各項目得点と職務満足度総得点の単変量解析(表5)をそれぞれ行い,職務満足度総得点と関係を認めた28変数を重回帰分析(ステップワイズ法)に投入した.その結果,対象者特性の「看護実践の自己評価の実施」(β = .234, p = .006)が職務満足度総得点と有意な正の相関を認め,職業上直面する問題の「相談できる上司や先輩看護師などがいない」(β = –.253, p = .004),「他部署の看護師と協調的な関係を築くことが難しい」(β = –.232, p = .003),「希望と異なる部署に配属され,やりがいが感じられない」(β = –.227, p = .003)が職務満足度総得点と有意な負の相関を認めた.これは,看護実践の自己評価を実施している者ほど職務満足度が高く,相談できる上司や先輩看護師などがいない,他部署の看護師と協調的な関係を築くことが難しい,希望と異なる部署に配属され,やりがいが感じられないという問題への直面頻度が高い者ほど,職務満足度が低いことを示した.重回帰式の調整済みR2は,.480,VIFは,1.066から1.436であり,多重共線性が認められないことを確認した(表6).

表4 対象者の特性と職務満足度尺度総得点の関係(単変量解析)

対象者特性 n MSD 統計量
臨床経験年数a 105 10.2(8.0) rs  = –.003 p = .975
所属ICU経験年数a 104 4.5(3.8) rs  = .178 p = .070
学習機会獲得状況a 105 2.8(2.4) rs  = .129 p = .189
勤務帯リーダーの経験の有無b あり 60 86.42(15.27) p = .022
なし 45 79.53(14.76)
患者からの職場内暴力の経験b あり 59 82.90(15.49) p = .670
なし 46 84.20(15.35)
他職員からの職場内暴力の経験b あり 34 75.47(15.27) p = <.001
なし 71 87.30(13.97)
看護実践の自己評価の実施c F = 5.282 p = .002
頻繁に行っている 9 98.78(17.14)
時々行っている 59 84.19(14.28)
ほとんど行っていない 30 80.00(14.03)
全く行っていない 7 72.57(15.00)
取得資格c F = 1.083 p = .343
認定看護師あり 7 89.71(21.25)
専門看護師あり 4 90.25(19.38)
なし 94 82.71(14.75)
教育背景c 修士課程 5 84.80(20.74) F = 0.715 p = .639
大学 40 82.80(12.57)
短期大学(3年課程) 9 83.44(14.25)
短期大学(2年課程) 2 65.50(14.85)
専門学校(3年課程) 43 84.51(17.69)
専門学校(2年課程) 2 75.50(4.95)
高等学校衛生看護科・専攻科 4 90.25(14.57)

注.a Spearmanの順位相関係数,b対応のないt検定,c 一元配置分散分析,勤務帯リーダーの経験と職場内暴力の経験は,経験頻度の差異ではなく,当該役割や出来事の経験自体の有無が職務満足度に与える影響を評価することであったため,「頻繁」「よく」「時々」と回答した者を「あり」群,「ほとんど」「全く」と回答した者を「なし」の2群に再分類して,職務満足度得点を比較した.なお,分類方法による結果への影響を確認するため,これらの変数を4群のまま用いた解析も実施し,結果の頑健性を確認した.一方,看護実践の自己評価の実施は,習慣的行動として実施頻度の違いが職務満足度に影響を及ぼす可能性が想定されるため,頻度情報を保持した4群分類のまま解析した.

表5 問題診断尺度各質問項目得点と職務満足度尺度総得点の関係(単変量解析)

「問題診断尺度―スタッフ看護師用―」各項目 rs p(両側) n
1.仕事か家庭のいずれかを優先せざるをえず,もう一方がおろそかになる –.086 .383 105
2.時間内に業務を終えられず,帰宅時間が遅くなる –.075 .448 105
3.自己学習に取り組む時間を確保することが難しい –.045 .647 105
4.必要とされる最新の知識や技術をなかなか修得できない –.093 .347 104
5.臨床経験を重ねているにもかかわらず看護技術が上達しない –.060 .543 105
6.与薬方法や感染対策などの業務変更が頻繁にあり,対応しきれない –.103 .296 105
7.患者やその家族との関係形成に時間がかかる –.143 .146 105
8.医療事故を起こすことへの不安を払拭できないまま看護を提供している –.288*** .003 105
9.患者の急変など緊急時の対応に自信がない –.250** .010 105
10.指導に必要な知識や技術が不足したまま後輩看護師を指導している –.354*** <.001 105
11.相談を受けても同僚や後輩看護師の期待に応えられない –.288*** .003 105
12.院内研究や委員会などの担当に伴う課題を克服することが難しい –.223** .023 104
13.異動や転勤により業務を十分に理解できておらず,リーダーシップを発揮できない –.369*** <.001 105
14.業務上の必要な話し合いが同僚とできない –.302*** .002 104
15.部署内のルールを全スタッフに浸透させることが難しい –.207** .035 104
16.業務整理が不十分であり,多様な患者に対応できない –.382*** <.001 105
17.業務量が多く患者が必要とする看護を提供できない –.155 .115 105
18.看護師間の実践能力や意欲が異なり一定水準の看護の質を維持できない –.266*** .006 105
19.看護師個々の実践能力や勤務形態の違いにより自分の業務量が増える –.157 .109 105
20.医療チームメンバーによる失礼な態度を見ても患者や家族を擁護できない –.294*** .002 105
21.自分の健康を維持できず,仕事に支障を来している –.280*** .004 105
22.疲労が蓄積し,仕事以外のことが何もできない –.227** .020 105
23.職業活動上の目標が見つからない –.360*** <.001 105
24.委員会活動,後輩看護師指導などにより,看護に専念できない –.108 .274 105
25.高圧的な医療チームメンバーがいるため連携しにくい –.337*** <.001 105
26.相談できる上司や先輩看護師などがいない –.489*** <.001 105
27.適正な評価を得られない –.362*** <.001 105
28.看護師不足により,負担する役割や夜勤が増えている –.171* .081 105
29.他部署の看護師不足が頻繁に生じ,応援に行かされる –.070 .477 105
30.他部署の看護師と協調的な関係を築くことが難しい –.349*** <.001 105
31.残業手当や休暇を申請しにくい –.285*** .003 105
32.機会を得られず取得している資格を活かせない –.181* .065 105
33.希望と異なる部署に配属され,やりがいが感じられない –.248** .011 105
34.勤務時間外の研修に参加する機会が多く自分の時間が少ない –.186* .057 105
35.院内研修と学習ニードが一致しない –.223** .022 105

注.rs = Spearmanの順位相関係数,* p < .10,** p < .05,*** p < .01

表6 対象者特性,及び,ICU看護師が職業上直面する問題と職務満足度の関係

n = 101

変数 標準偏回帰係数 t 95%信頼区間
下限 上限
看護実践の自己評価の実施頻度 .234* 2.811 1.490 8.652
指導に必要な知識や技術が不足したまま後輩看護師を指導している –.153** –1.852 –5.260 .183
業務上の必要な話し合いが同僚とできない –.171** –2.034 –6.924 –.084
相談できる上司や先輩看護師などがいない –.253* –2.925 –7.282 –1.393
他部署の看護師と協調的な関係を築くことが難しい –.232* –3.062 –6.409 –1.367
希望と異なる部署に配属され,やりがいが感じられない –.227* –3.049 –7.651 –1.616

R2 = .511,調整済みR2 = .480,F = 16.360 **

注.*p < .01,**p < .001

説明変数として,対象者特性の4変数である「勤務帯リーダーの経験の有無」,「他職員からの職場内暴力の経験の有無」,「看護実践の自己評価の実施」,「所属ICU経験年数」,問題診断尺度の24項目である「医療事故を起こすことへの不安を払拭できないまま看護を提供している」,「患者の急変など緊急時の対応に自信がない」,「指導に必要な知識や技術が不足したまま後輩看護師を指導している」,「相談を受けても同僚や後輩看護師の期待に応えられない」,「院内研究や委員会などの担当に伴う課題を克服することが難しい」,「異動や転勤により業務を十分に理解できておらず,リーダーシップを発揮できない」,「業務上の必要な話し合いが同僚とできない」,「部署内のルールを全スタッフに浸透させることが難しい」,「業務整理が不十分であり,多様な患者に対応できない」,「看護師間の実践能力や意欲が異なり一定水準の看護の質を維持できない」,「医療チームメンバーによる失礼な態度を見ても患者や家族を擁護できない」,「自分の健康を維持できず,仕事に支障を来している」,「疲労が蓄積し,仕事以外のことが何もできない」,「職業活動上の目標が見つからない」,「高圧的な医療チームメンバーがいるため連携しにくい」,「相談できる上司や先輩看護師などがいない」,「適正な評価を得られない」,「看護師不足により,負担する役割や夜勤が増えている」,「他部署の看護師と協調的な関係を築くことが難しい」,「残業手当や休暇を申請しにくい」,「機会を得られず取得している資格を活かせない」,「希望と異なる部署に配属され,やりがいが感じられない」,「勤務時間外の研修に参加する機会が多く自分の時間が少ない」,「院内研修と学習ニードが一致しない」を投入した.

Ⅶ. 考察

本研究の新規性は,東京圏ICU看護師を対象に職業上直面しやすい問題を量的に明らかにするとともに職業上直面する問題と職務満足度の関係を明らかにした点にある.本研究から得られた結果を考察する.

1. 本研究データの特徴

本研究は,東京圏に所在する大学病院45施設の看護部長に研究協力を依頼し,承諾を得た13施設のICU看護師369名に調査票を配布した.その結果,東京圏ICU看護師107名からデータを得た.ICUの種類,その病床数,勤務帯の看護師数,ICUに常駐する医師数,看護提供方式は,様々であり,本研究の対象となったICU看護師が就業する施設の環境は,多様であった.

さらに,対象者の性別は,女性と男性を含み,年齢は,21歳から56歳,臨床経験年数は,0.3年から29.4年,所属ICU経験年数は,0.3年から18.3年まで幅広く分布した.加えて,対象者の教育背景,勤務帯リーダーの経験頻度,看護実践の自己評価の実施頻度,職場内暴力の経験頻度も様々であった.

また,本研究の結果は,対象者の獲得した問題診断尺度の総得点と職務満足度尺度の総得点が正規分布を示した.これは,本研究のデータが平均値を中心に偏りなく収集できていることを示唆する.

以上は,本研究のデータが次の2点の特徴を備えていることを示す.第1に本研究のデータは,ばらつきのある多様な標本から収集できており,関係探索研究に求められる標本の多様さ(Diers, 1979/1984)という条件を充足している.第2に,収集したデータは,東京圏ICU看護師の多様な実態を幅広く捉えている可能性が高い.

2. 東京圏ICU看護師の職業上直面する問題の現状

本研究の結果は,対象者の獲得した問題診断尺度総得点の平均値が,79.1点であることを示した.この得点は,問題診断尺度の開発者が調査した全国の多様な看護単位に所属する看護師565名が獲得した同尺度総得点の平均値79.2点と近似する.本研究は,当初,ICU看護師の置かれている状況からICU看護師は,全国の看護師と比較し,多くの問題に直面し,問題診断尺度総得点は,全国の看護師よりも高い得点になると予想していた.しかし,本研究の結果は,東京圏ICU看護師と全国の看護師の問題診断尺度総得点の平均値が近似していたことを示した.この結果の背景には,東京圏の大学病院における設備面・教育支援体制などが一定水準に整備され,問題への対処機会が相対的に確保されていることが影響している可能性があり,それにより,全国の看護師と同程度の問題直面状況であったことが考えられる.

本研究の獲得した問題診断尺度各項目の得点が,平均+1SDである2.8点以上の項目は,「看護師不足により,負担する役割や夜勤が増えている」(3.0点,SD = 1.0),「看護師間の実践能力や意欲が異なり一定水準の看護の質を維持できない」(2.8点,SD = 0.8),「看護師個々の実践能力や勤務形態の違いにより自分の業務量が増える」(2.8点,SD = 0.9)であった.これは,東京圏ICU看護師がこれら3種類の問題に直面しやすいことを示す.また,東京圏ICU看護師と比較し,全国の看護師が直面しやすい問題の上位3項目は,「時間内に業務を終えられず,帰宅時間が遅くなる」,「自己学習に取り組む時間を確保することが難しい」,「看護師不足により,負担する役割や夜勤が増えている」(服部・舟島,2018)であった.

以上の結果は,東京圏ICU看護師による問題への直面状況が全国の看護師のそれと同等であるものの,直面する問題の内容は,差異がみられた.全国の看護師は,業務量や時間的制約に関する問題に直面しやすいことに対し,東京圏ICU看護師は,看護師間の能力差や勤務形態の違いによる業務負担の不均衡など,チーム内の構造的問題に直面しやすいことが明らかになった.

3. 東京圏に所在する大学病院ICU看護師の職務満足度と看護師の特性,及び,職業上直面する問題の関係

本研究は,東京圏ICU看護師の職務満足度と就業継続意思の関係を分析した.結果は,所属ICUの就業継続意思のある者がそうでない者よりも職務満足度が高いことを示した.これは,就業継続意思と職務満足度の関係を探索した先行研究(加藤ら,2022長砂・石川,2021)の結果と合致し,ICU看護師の職務満足度の高さが所属ICUの就業継続意思に関係すること,すなわち,ICU看護師の職務満足度の向上がその就業継続に寄与することを示唆する.一般に,看護師にとって就業を継続し,臨床経験年数を重ねることは,質の高い看護実践をできるようになるために不可欠である(Yamamoto et al., 2021笹谷,2019).これは,ICU看護師の職務満足度を高めることがその就業継続,ひいては,ICUに入室する人々に提供される看護実践の質の向上に繋がる可能性を示唆する.しかし,ICU看護師の5割が離職意思を持っていることを示す先行研究(Zahara et al., 2019)も存在し,この状況の改善に向けては,東京圏ICU看護師の職務満足度向上が重要であることを確認できる.

次に,東京圏ICU看護師が職業上直面する問題と職務満足度の関係を探索するため,対象者特性と職務満足度の単変量解析,続いて,ICU看護師が職業上直面する問題35種類,すなわち,問題診断尺度の35項目と職務満足度の単変量解析をそれぞれ行い,関係を認めた変数を重回帰分析に投入した.その結果,対象者特性の「看護実践の自己評価の実施」とICU看護師が職業上直面する問題のうち,「相談できる上司や先輩看護師などがいない」,「他部署の看護師と協調的な関係を築くことが難しい」,「希望と異なる部署に配属され,やりがいが感じられない」の3種類が職務満足度得点と関係していた.

以上は,これら3種類の問題への直面回避や解決,看護実践の自己評価の実施が東京圏ICU看護師の職務満足度の向上,さらには,所属ICUの就業継続に繋がる可能性を示唆する.

4. 東京圏ICU看護師の職務満足度の向上,就業継続推進に向けた課題

本研究は,東京圏ICU看護師の直面頻度の高い3種類の問題を明らかにした.東京圏ICU看護師の直面頻度の高かった「看護師不足により,負担する役割や夜勤が増えている」,「看護師間の実践能力や意欲が異なり一定水準の看護の質を維持できない」,「看護師個々の実践能力や勤務形態の違いにより自分の業務量が増える」という問題は,東京圏ICUという高負荷・高専門性の環境における看護実践の複雑性を反映している.そのため,看護師間の能力の差を縮小し,チームとして均質な看護の質を維持できるよう,看護師個人は,看護実践能力の向上に努めると共に,組織は,教育的に支援する必要性を示唆する.

本研究は,東京圏ICU看護師の就業環境について,概ね病床数の半数程度の看護師が勤務している現状を示した.これは,東京圏に所在する大学病院の多くのICUが患者2人に対して,看護師1人を配置していることを意味する.ICUに入室する症例のうち,5割は,緊急入室などであり,その主な疾患は,ウイルス性肺炎やうっ血性心不全などが含まれる(JIPAD日本ICU患者データベース,2021).これらの疾患を有する患者は,人工呼吸器や補助循環装置などの生命維持装置を装着していることや薬剤などの補助によって生命を維持している場合が多く(道又,2015),そのような患者にはより濃密な集中管理を要する.そのため,日本集中治療医学会(2022)は,ICUにおける看護師の配置について,患者1人から1.5人に対し,看護師1人以上の配置を推奨している.厚生労働省(2007)は,ICUにおける看護師の配置を患者2人に対し,看護師1人以上を常時配置することとしており,東京圏に所在する大学病院ICUの看護師配置が,厚生労働省の基準を満たしているものの,日本集中治療医学会の推奨する基準を下回っていることを示す.ICUにおける看護師の適切な人員配置は,患者に提供される看護の質に直結する(Rodrigues et al., 2016).これは,東京圏ICU看護師がより濃密な集中管理を要する患者へ質の高い看護を提供するために,十分な人員確保が必要であるにも関わらず,それが不十分である現状を示す.これは,東京圏特有の医療需要の高さと人員確保の難しさを反映している可能性がある.このような構造的な人員不足は,看護師の業務量増加を招き,職務満足度低下の一因となっている可能性がある.そのため,東京圏という医療需要集中地域におけるICU看護師の職務満足度向上には,人的資源の確保と業務負担の適正化が不可欠である.

また,本研究は,東京圏ICU看護師の職務満足度に関係する職業上の問題3種類を明らかにした.そのうち,「相談できる上司や先輩看護師などがいない」という問題は,看護師が職業上関わる人々との関係構築に難渋するために生じる.先行研究は,看護師の職務満足度の低下が離職や退職をもたらしやすいことを明らかにしている(Cynthia et al., 2022Hu et al., 2022).看護師が自身の伝えたいことが相手に伝わらず,上司や同僚との対人関係に難渋していること(神宮寺・岩永,2021)や新人看護師の退職理由の1つが上司や同僚との関係であることも明らかになっている(日本看護協会,2023).これらは,看護師個々のコミュニケーション能力の向上が職場の関係構築と職務満足度の向上に重要であることを示唆する.この問題への直面回避,解決に向け,看護師個人は,上司や先輩看護師と積極的な相互行為を図れるようコミュニケーション能力を向上させることが重要であり,それら看護師を支援する者は,看護師が相談しやすい心理的安全性を担保した環境醸成を行うことが重要である.

次に,「他部署の看護師と協調的な関係を築くことが難しい」という問題は,ICU看護師が他部署の看護師との相互行為が難渋するために生じる.ICU看護師が他部署の看護師と連携することの難しさを感じていることを明らかにした研究(山本,2017)は,本研究の結果を支持する.また,先行研究は,ICU看護師がICUに入室していた患者を一般病棟へ引き継ぐ際に,情報共有の難しさを感じていることを明らかにしている(林・綱島,2023Bunkenborg et al., 2017).これらのことから,看護師間の連携が困難となる要因の一つに,人員配置や提供している医療内容が部署ごとに異なること,また,他部署での看護実践を経験する機会が少ないことによる相互理解の不足があると推測される.しかし,本研究は,「他部署に出向き看護実践を行った経験」などの要因を測定していないため,連携が困難となる具体的な要因を特定するには至っていない.そのため,今後は,ICU看護師が「他部署の看護師と協調的な関係を築くことが難しい」と感じる要因を明らかにすることを課題とする.

最後に,「希望と異なる部署に配属され,やりがいが感じられない」という問題は,ICUに配属された看護師がその配属を希望していなかったために生じる.看護師自身の希望に基づく部署異動は,全部署異動の約半数であることが明らかにされており(五十嵐ら,2015),中井ら(2014)は,希望と異なる部署に配属された看護師がそうでない者よりも強い疲労を感じていることを明らかにしている.また,ICUに配属となった看護師が医療機器の管理などに戸惑い,新しく求められる知識や技術の獲得が難しいと感じていることも明らかにされている(長山ら,2011).その一方,今までの看護実践の経験が活かされたと認識した看護師が部署異動を肯定的に感じることが明らかになっている(松本ら,2015).長山ら(2011)は,ICUに異動した看護師が異動後6ヶ月を経過すると,異動直後に困難と感じた事象がほとんどなくなることを明らかにしている.しかし,本研究の対象者は,概ね6ヶ月以上のICU経験を有しているにもかかわらず,この問題に直面していた.これは,配属後一定期間を経過しても,ICU特有の重症度の高い患者対応や高度技術の習得への負担感などが持続しているためと考えられる.そのため,時間の経過に任せるのではなく,ICU看護に必要な学習機会を設けることや定期的に面談を行うことなど,継続的な教育的・心理的支援の体制構築が求められる.また,今後は,どのような特性の看護師が「希望と異なる部署に配属され,やりがいが感じられない」という問題に直面しやすいのか明らかにすることを課題とする.

5. 本研究の限界

本研究は,東京圏ICU看護師の職業上直面する問題と職務満足度の関係を探索するために必要となる多様な対象者からデータを得ることができた.しかし,東京圏ICU看護師の母集団は,2,135名(厚生労働省,2021)であり,一般化するために必要な標本数は,325であった.しかし,本研究の標本数は,107であるため母集団に対する標本数が少なかった.そのため,得られた結果を東京圏のICU看護師に一般化することには,限界がある.また,他地域との比較を行っていないため,東京圏特有の結果であるのか検証することはできていない.ICU看護師が職業上直面する問題の現状,その職務満足度との関係に関わる普遍的な成果を得るためには,今後,対象者の選定などを考慮し,データ収集を重ねる必要がある.

Ⅷ. 結論

東京圏ICU看護師は,「看護師不足により,負担する役割や夜勤が増えている」,「看護師間の実践能力や意欲が異なり一定水準の看護の質を維持できない」,「看護師個々の実践能力や勤務形態の違いにより自分の業務量が増える」という問題への直面頻度が高く,「相談できる上司や先輩看護師などがいない」,「他部署の看護師と協調的な関係を築くことが難しい」,「希望と異なる部署に配属され,やりがいが感じられない」という問題に直面している者ほど職務満足度が低かった.また,東京圏ICU看護師の所属ICUの就業継続意思は,職務満足度と関係していた.これら東京圏ICU看護師の問題への直面回避と解決,就業継続に向け,人的資源の確保や心理的安全を担保した環境を醸成すること,継続的な教育・心理的支援が重要であると示唆を得た.

付記:本論文は,国立看護大学校研究課程部及び学位授与機構に提出した修士論文を加筆,修正したものである.なお,本稿の一部は,第44回日本看護科学学会学術集会にて発表を行った.

謝辞:本研究にご協力くださいました東京圏に所在する大学病院の看護部長,集中治療室に勤務する看護師の皆様に深謝申し上げます.

利益相反:本研究に関して,開示すべき利益相反は存在しない.

著者資格:筆頭著者YNは,研究の着想からデータ収集,統計解析,論文執筆まで研究の全過程を行った.MKは,統計解析,論文執筆等の助言を行い,TKは,研究の着想およびデザイン,論文執筆等の研究全体の助言を行った.

文献
 
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