日本看護科学会誌
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原著
終末期がん患者の在宅看取りを実現する多職種統合チームによる在宅緩和ケア実践評価尺度の信頼性・妥当性の検証
吉田 美由紀陶山 啓子
著者情報
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2026 年 46 巻 p. 53-64

詳細
Abstract

目的:多職種統合チームによる在宅緩和ケア実践評価尺度を開発することを目的とした.

方法:多職種へのインタビュー調査結果から,61項目の尺度原案を作成し,全国の在宅医,訪問看護師,介護支援専門員,介護福祉士,薬剤師を対象にWeb調査を実施した.得られたデータを3群に分割し,段階的に探索的因子分析,確認的因子分析を行い,尺度の信頼性・妥当性の検証を行った.

結果:有効回答914件(回収率8.4%)であった.因子分析の結果,尺度は【臨機応変な対応に基づく希望実現】,【予測に基づく苦痛緩和】の2因子(17項目)で構成された.モデル適合度はGFI = .95,AGFI = .93,CFI = .95,RMSEA = .05,McDonald’s ωは.85以上であった.

結論:本尺度の信頼性・妥当性が確認できた.今後,さらなる実用可能性の検証とアウトカムとの関連の検証が求められる.

Translated Abstract

Aim: In this study, we aimed to develop and validate the Interdisciplinary Integrated Team-Based Home Palliative Care Practice Evaluation Scale designed to evaluate palliative care practice quality provided by multidisciplinary integrated teams to support patients with terminal-stage cancer in achieving home death.

Methods: We developed a preliminary scale consisting of 61 items based on qualitative interview data from diverse healthcare professionals engaged in home-based palliative care. We conducted a nationwide web-based survey among home care physicians, visiting nurses, care managers, certified care workers, and pharmacists, dividing the collected data into three subsets for sequential exploratory and confirmatory factor analyses to assess the construct validity and reliability of the scale.

Results: In total, we obtained 914 valid responses (response rate: 8.4%). Our factor analysis identified a two-factor structure [i.e., (1) Timely and Flexible Support for Realizing Patient and Family Wishes and (2) Proactive Pain Relief Based on Prognostic Anticipation] comprising 17 items. The model demonstrated a good fit (GFI = .95, AGFI = .93, CFI = .95, RMSEA = .05), and McDonald’s ω coefficients exceeded 0.85, indicating satisfactory internal consistency.

Conclusion: The Interdisciplinary Integrated Team-Based Home Palliative Care Practice Evaluation Scale demonstrated acceptable reliability and validity. Further investigation would be required to confirm its practical utility and relationship with patient-centered outcomes in home-based palliative care.

Ⅰ. 緒言

がんは,日本人の死因第1位であり(厚生労働省,2019),約6割の患者が自宅での最期を希望している(国立がん研究センターがん対策情報センター,2020).住み慣れた環境での看取りは患者の本質的な希望(安井ら,2004)であるにもかかわらず,自宅での死亡割合は11.8%(e-Stat, 2019)と低く,多くの患者の願いが実現されていない現状がある.

多くの患者が望む在宅看取りを実現するためにケアの質や在宅看取り率を向上させる必要があるが,それには多職種間の良好なコミュニケーションに基づく医療・介護の一体的提供と専門的な緩和ケアが重要になる(橋本ら,2015Morita et al., 2013)と報告されている.一方,医療・介護資源には地域格差(伊藤ら,2014一般社団法人全国訪問看護事業協会,2013菊澤・澤井,2013)が存在することが指摘されており,在宅看取りの実現にも地域差があると推察される.佐直(2010)は,資源の不足と偏在を補完するためには,トランスディシプリナリーチーム・アプローチが重要であると指摘している.これは,各専門職が専門分野を超えて役割を共有し連携する方法(菊地,2000)である.社会資源の乏しい地域など居住する地域に関わらず在宅看取りの実現可能性を高めるには,在宅緩和ケアに関わる多職種の役割や実践内容をチーム全体で共有し,意図的に周囲の職種メンバーで役割を相互補完して課題を解決することが求められる.しかし,現状において,多職種チーム全体で果たすべき役割や在宅緩和ケアの具体的な実践内容を明らかにした先行研究はない(吉田・陶山,2023).地域全体の連携実態(森田・井村,2013)や医療職による緩和ケアの実践(Nakazawa et al., 2010Shimizu et al., 2016Kanno et al., 2019)など緩和ケアに関する評価ツールは多数存在する.しかし,介護・福祉職を含む多職種チーム単位での具体的な協働実践を体系的に評価できる尺度は,これまで開発されていない.

また,実際の過疎地域における多職種の症例検討会や各専門職の振り返りの場では,議論の焦点が定まらず,効果的な実践や課題が十分に整理されないまま終わることが多い.その結果,得られた知見が次の実践に活かされにくく,チームとしての学びやケアの質向上につながりにくいという課題がある.

そこで,本研究では,終末期がん患者の在宅看取りを実現する多職種統合チームによる在宅緩和ケア実践評価尺度(「Interdisciplinary Integrated Team-Based Home Palliative Care Practice Evaluation Scale」以下,「IT-HPC-PES」とする.)を開発することを目的とした.多職種統合チームによる在宅緩和ケア実践の評価指標に基づきチームの実践を評価することで,地域性や職種構成の違いに左右されることなく,チーム内での課題や役割認識の共有が図れ,ケアの質向上につなげることが期待される.

Ⅱ. 用語の操作的定義

終末期がん患者:がんの治療効果がなく,余命が6ヶ月以内と判断される状態にある患者

在宅看取り:がん患者と家族が自宅で最期まで過ごすことを意思決定してから最期を迎えるまでの生活を支援すること

多職種統合チーム:2種類以上の専門職から成り,各職種の役割をチーム全体で共有し,その役割を計画的に移行・調整しながら一体となってケアを行うチーム

在宅緩和ケア実践:がん患者や家族による在宅看取りの選択の表明をしてから看取りまでの間,在宅看取りの実現に向けて行うケアの実践

Ⅲ. 研究方法

1. 尺度項目プールの作成

終末期がん患者の希望する在宅看取りの実現に向けて,多職種チームによる質の高い在宅緩和ケアの実践内容を明らかにすることを目的に,文献検討(吉田・陶山,2023)を行った.文献検討では,医療職の実践内容が抽出されたが,多職種の実践内容を十分に明らかにするには至らなかった.そこで,医師,訪問看護師,介護支援専門員,介護福祉士,薬剤師,社会福祉士に多職種チームとしての実践内容についてインタビュー調査を実施し,文献検討の結果を統合して実践内容を明確化した.インタビュー対象者は,年間12例以上の終末期がん患者の在宅看取りを経験し,日常的に多職種チームで在宅緩和ケアを実践している専門職とした.調査では,満足度の高い事例をもとに,患者が在宅療養を希望した時点から看取り,遺族ケアに至るまでの経過,チームの実践内容,患者・家族の反応について聴取した.その結果,625の具体的実践を抽出し,質的分析を通じて66項目の尺度案を作成した.質問文の作成にあたっては,がん看護・質的研究・尺度開発に精通した研究者3名が,内容妥当性および多職種が回答しやすい表現かどうかを検討し作成した.

2. 尺度原案の作成

日常的にがん患者と家族の在宅療養支援に携わり,地域の多職種と密接な連携を行っているがん看護専門看護師6名と,質的研究および尺度開発の経験豊富な研究者3名に,「IT-HPC-PES」の質問項目の表面的妥当性,論理的妥当性,網羅性についての意見を聴取し,尺度内容として不適切な5項目の削除と項目表現の修正を行った.修正した61項目を「IT-HPC-PES」原案とした.項目には,Q1からQ61の番号を付した.

3. 調査方法

1) 研究施設および対象者の選定

対象者は,①在宅緩和ケアに携わる専門職(医師,訪問看護師,介護支援専門員,薬剤師,介護福祉士,役職は問わない)である,②がん患者へのサービス提供の依頼を受け,サービス提供開始時から自宅で最期を迎えるまでの間,担当者として継続的に関わった経験が過去1年以内に1例以上あるものとした.調査対象施設は,日本在宅ホスピス協会および日本ホスピス緩和ケア協会のホームページで緩和ケアを提供する診療所等一覧に掲載されている在宅医療機関942施設,厚生労働省の介護事業所・生活関連情報検索ページで,看護体制強化加算Iなどの項目が登録されている訪問看護事業所748件,特定事業所医療介護連携加算の算定を登録している居宅介護支援事業所1,289施設,特定事業所加算Iの算定を登録している訪問介護事業所580施設,一般社団法人全国薬剤師・在宅療養支援連絡会のホームページで麻薬調剤をしている薬局として登録のあった薬局96施設の総計3,655施設を抽出した.

2) データ収集方法と調査期間

2023年9月27日~2023年11月30日に,Microsoft社のFormsを用いた無記名自記式質問調査を実施した.調査依頼は,各職種で抽出した調査対象施設に対して調査依頼文と調査入力フォームのQRコードおよびURLを示した調査説明書,質問の見本を,1施設あたり3部ずつ郵送した.対象者にオンラインで回答を求め,データ送信により研究参加への承諾とみなした.

3) 調査内容

調査内容は,対象者の基本属性と経験,「IT-HPC-PES」原案61項目とした.「IT-HPC-PES」原案の回答は,これまでに終末期がん患者を自宅で看取った事例のうち,患者・家族・在宅緩和ケアチーム全体の満足が一番高かったと考える事例を念頭において,対象者・家族の状況や対象者を担当する多職種チームの実践を振り返ってもらい,「1.全く当てはまらない」から「5.とても当てはまる」の5段階評価で回答を求めた.また,基準関連妥当性を検討するために,Good Death Scale日本語版(児玉ら,2017)(以下,GDS-Jと略す)5項目と緩和ケアに関する地域連携評価尺度(森田・井村,2013)25項目を用いた.GDS-Jは,ケア提供者が看取りにおける緩和ケアの質を評価する尺度であることから,「IT-HPC-PES」との関連があると考えた.回答方法は,尺度原案の項目を回答する際に想起した事例について,GDS-Jであらかじめ設定されている4段階評価で回答を求めた.緩和ケアに関する地域連携評価尺度25項目は,在宅で過ごすがん患者に関わる医療福祉従業者を対象に調査し開発された尺度である.本研究では多職種統合チームが一体的な連携の元に行う在宅緩和ケアの実践を調査することから,「IT-HPC-PES」との関連があると考えた.回答方法は,終末期がん患者への緩和ケアに関する地域連携において,過去1年間を振り返り総合的に評価してもらい「1.そうではない」から「5.とてもそうである」の5段階で回答を求めた.

4) 分析方法

本研究では,有効回答データをグループ①,グループ②,グループ③の3群に分け,各グループのデータを用いて段階的に信頼性と妥当性を検証した.グループの作成方法は,各専門職の比率が同じになるよう職種ごとに無作為に3群に分けたのち,すべての専門職を足し合わせた.グループ間の等質性の確認のため,χ2検定とKruskal-Wallisの検定を行い,グループ間に有意差がない(p > .05)ことを確認した.分析には統計パッケージSPSS Ver.26と共分散構造分析ソフトAMOS Ver.29を用いた.

「IT-HPC-PES」の信頼性・妥当性について,以下の手順で検証した(図1).

図1  分析のステップ

 (1)構成概念妥当性の検証

グループ①のデータで項目分析ののち探索的因子分析を行い,「IT-HPC-PES」モデル①を作成した.

①項目分析

グループ①において,記述統計から,尖度と歪度は±2.0以上(Kunnan, 1998),天井効果,床効果(小塩,2023)を認めた項目を削除した.Good-Poor Analysis(G-P分析)は,当該項目の点数の,上位群25%と下位群25%の2群間で有意差のない項目を除外した.I-T分析は,全項目の得点合計と各項目得点との相関係数0.3以下(Polit et al., 2017)のものを除外し,項目間相関は,0.7以上(Polit et al., 2017)であった項目の組み合わせのうち,いずれか一方を削除した.

②探索的因子分析

グループ①のデータで,項目分析の結果,得られた尺度項目を用い,主因子法,プロマックス回転により探索的因子分析を行った.因子数の決定は,固有値1以上,スクリープロットを確認し,回転後の尺度の解釈可能性の観点から因子数を決定した(小塩,2023).標本妥当性ではKaiser-Meyer-Olkin(以下,KMO)の値が.9以上とした.Bartlettの球面性検定では<.05の有意差を認め,因子分析の前提条件が満たされていることを確認した.また,項目の共通性が.3以下(松尾・中村,2002)の項目,回転後の因子負荷量が.4未満の項目と,複数の因子にまたがって因子負荷量が.3以上を示した項目を除外した.因子分析を複数回実施し,最終的な因子分析の結果を,モデル①とした.

③確認的因子分析

次に,構成概念妥当性の検証のために,モデル①の因子を潜在変数,それに属する項目を観測変数とし,グループ②のデータで,確認的因子分析を行った.モデル適合度指標,重相関係数,因子間の標準化係数,誤差共分散の修正指標を確認し,各項目内容の検討によりモデル修正を行った.モデルの修正は,重相関係数,因子間の標準化係数,誤差共分散の修正指数により,尺度項目の削除を検討した.これらの修正後のモデルを,モデル②とした.モデル適合度の基準値は,GFI > .9,AGFI > .85,GFI > AGFI,CFI > .9,RMSEA < .08(中山,2021)とした.

 (2)交差妥当性の検証

グループ③のデータでモデル②の確認的因子分析を行い,モデル適合度により交差妥当性を確認した.

 (3)最終モデルの構成概念妥当性の検証

グループ①から③を統合した全体データにおいて,最終のモデル②の確認的因子分析を行った.

 (4)基準関連妥当性(併存妥当性)の検証

モデル②の合計得点および各因子の合計得点と,GDS-J合計得点,緩和ケアに関する地域連携評価尺度の合計得点との相関係数を求めた.また,過去2年間の看取り数および在宅緩和ケアチームでの経験年数と,本尺度合計得点との相関係数を算出した.

 (5)信頼性の検証

本研究では,多因子構造の尺度であることから,McDonald’s ω係数も合わせて確認が必要と考え,Cronbach’s α係数とMcDonald’s ω係数の値を算出し,内的整合性の検証を行った.Cronbach’s α係数の基準は,0.7以上(中山,2021)とした.

4. 倫理的配慮

本研究は,愛媛大学大学院医学系研究科看護学専攻研究倫理審査委員会の承認を得て(承認番号:看2023-8)実施した.調査対象者には,研究の目的,方法,協力による利益と不利益,データ管理方法について,文書およびWeb調査画面で説明した.また,回答送信後は,研究協力の同意の撤回はできないことをアンケートの最終回答画面に表示し,同意により回答の送信ボタンを押すよう設定した.

Ⅳ. 結果

1. 回収状況と基本属性(表1

アンケート郵送施設数3,655件,アンケート発送部数10,965部のうち回答数936件(回収率8.4%),有効回答は914件(有効回答率8.3%)であった.

表1 回収状況と基本属性

N = 914

人数 回収率(%) 平均値 標準偏差 中央値 最小値 最大値
全体 914 8.4
有効回答数 医師 67 14.8
訪問看護師 332 14.8
薬剤師 17 5.9
介護支援専門員 430 19.2
介護福祉士 68 3.9
全体 49.9 9.3 50.0 25 77
年齢(歳) 医師 55.1 11.2 57.0 30 77
訪問看護師 47.5 8.7 48.0 25 74
薬剤師 46.5 12.5 48.0 26 72
介護支援専門員 51.6 8.4 51.5 29 75
介護福祉士 47.2 10.3 49.0 25 62
全体 19.3 39.4 10.0 1 522
過去2年間の
担当数(件)
医師 91.0 107.1 35.0 5 522
訪問看護師 21.3 24.6 15.0 1 150
薬剤師 14.0 15.1 8.0 2 50
介護支援専門員 8.6 10.4 5.0 1 120
介護福祉士 7.8 7.1 5.0 1 30
全体 14.7 34.8 5.0 0 380
過去2年間の
自宅看取数(件)
医師 69.6 84.1 28.0 2 380
訪問看護師 14.2 20.4 8.0 0 224
薬剤師 10.9 14.6 4.0 0 50
介護支援専門員 8.1 24.8 3.0 0 296
介護福祉士 5.3 6.5 2.5 0 30
全体 6.8 5.7 5.0 0 30.0
在宅緩和ケアチームの一員の期間(年) 医師 11.0 8.0 10.0 0 28.0
訪問看護師 6.6 5.6 5.0 0 30.0
薬剤師 6.7 4.4 5.0 .4 18.0
介護支援専門員 6.5 5.2 5.0 0 21.7
介護福祉士 5.2 5.5 3.2 0 20.0
全体 14.2 9.9 11.5 .2 50.0
現在の職種の
通算経験年数(年)
医師 25.8 12.4 27.6 .7 50.0
訪問看護師 16.7 10.6 16.5 .2 45.2
薬剤師 15.0 13.7 10.0 .8 49.0
介護支援専門員 10.5 6.5 10.0 .3 24.3
介護福祉士 12.4 7.0 11.0 .8 34.3

有効回答者は,男性188名(21%),女性726名(79%),平均年齢49.9歳であった.職種は,医師67件,訪問看護師332件,薬剤師17件,介護支援専門員430件,介護福祉士68件であった.所在地は,46都道府県全ての地域から回答が得られた.過去2年間に終末期がん患者を主に担当した患者数の平均は19.3件で,そのうち自宅で看取った患者数の平均は14.7件であった.在宅緩和ケアチームの一員として終末期がん患者を初めて担当してから現在までの期間の平均は6.8年,主な職種の通算経験期間の平均は14.2年であった.

2. 因子的妥当性の検証

1) 項目分析

グループ①のデータの尺度項目の尖度+2以上の9項目と,歪度–2以下であった1項目,天井効果を認めた17項目を削除した.床効果はなかった.Kolmogorov-Smirnov検定の有意確率は,全ての項目について<.01であり,非正規分布を示した.I-T相関は,全ての項目において有意(p < .001)であった.G-P分析では,全項目合計点数の上位25%と下位25%のグループのSpearman相関係数を算出し,範囲は.29~.66(p < .001)であった.そのうち相関係数が<.3であった1項目を削除した.項目間相関は,r > .7は認めず,削除項目はなかった.

2) 探索的因子分析

グループ①のデータで,項目分析の結果,得られた尺度項目を用い,主因子法,プロマックス回転で探索的因子分析を行った.因子数の検討では,回転後の尺度の解釈可能性と因子内の項目数を3以上とする観点から因子数を2とした.また,共通性が.3以下の9項目と,回転後の因子負荷量が.4未満の5項目を削除した.複数の因子にまたがって因子負荷量が.3以上を示した項目はなかった.これにより,2因子30項目からなるモデル①を作成した(表2).共通性は.31~.61,累積寄与率は43.8%,因子相関係数は.58,KMOの値は,.94で.9以上であり,Bartlettの球面性検定では,p < .001(χ2 = 4,018.5, df = 435)と有意差があることを確認した.

表2 モデル①の因子負荷量と因子相関行列および共通性

N = 305

項目 因子 共通性
1 2
Q39.看取りまでのケアにかかる費用について,患者と家族が納得できるように説明をした .73 –.23 .39
Q29.チームメンバーの自宅看取りに対する不安を,お互いに解消した .70 –.06 .45
Q13.患者と家族の変化するニーズとチームのケアの方針が一致しているかモニタリングした .70 –.02 .48
Q32.事業所や医療機関の得意なケアをもとに,患者や家族の状態に最も応えられるチームを組んだ .66 –.13 .36
Q35.患者や家族の希望にもとづき,ケアの費用を最小限にできる制度の活用をサポートした .65 .03 .44
Q58.患者と家族の変化する状況に合わせてチームメンバーを追加した .65 –.18 .31
Q49.患者と家族の最新かつ詳細情報を,チーム全体で逐一共有した .65 .00 .42
Q46.家族の仕事や趣味などを継続できるように,医療・介護サービスの内容やスケジュールを調整した .62 .03 .40
Q60.チームメンバーの各職種の専門性に応じて,患者と家族の情報を伝わりやすい表現に変えて提供した .61 –.04 .34
Q56.人生の最期をどう生きたいのか,何を求めているのかという患者の本心を,あらゆる会話の内容から把握した .58 .09 .41
Q28.残された時間の中で,患者と家族がお互いにしてあげたいと思っていることができるように,患者と家族を仲介した .57 .13 .42
Q16.看取りケア開始の早い段階から,最期までの過ごし方について,患者と家族の希望をチーム全員で合意した .57 .04 .42
Q38.思い通りの日常生活が自分でできなくなっている患者の,日常のささやかな望みを実現した .55 .04 .34
Q34.想定外のトラブルが発生した時は,直ちにチームメンバーが集まって対応した .55 .04 .33
Q44.身体的苦痛症状の出現やそれによって生じる問題を予測した上で,チーム内で事前に対応策を共有した .55 .16 .43
Q24.最期までの過ごし方についての思いが行き違う患者と家族に対して,その思いを共有する場を設けた .55 .13 .40
Q11.患者や家族の死の受け入れの程度をモニタリングした .54 .13 .38
Q8. ケアに必要とされる知識や技術を,その都度チームで学習した .53 .06 .32
Q17.あらゆる方法を検討し,患者がやりたいことを残された時間の中で実現した .52 .06 .32
Q42.介護への自信を失って挫けそうになっている家族に,訪問日以外にも電話などで介護の様子を聞いて,肯定的な言葉をかけた .50 .13 .34
Q23.介護で後回しになっている家族の通院,受診が可能になるように,医療・介護サービスの内容やスケジュールを調整した .48 .16 .35
Q50.同居していない家族を含めた家族介護力を常時モニタリングして,在宅療養生活が継続できなくなる危険性を判断した .47 .15 .33
Q36.医療者がそばにいなくても,患者の苦痛症状を即時に緩和するための知識や技術を家族に教えた –.07 .82 .60
Q61.麻薬の使用控えにつながる患者と家族の不安を予測した上で,その人に合った効果的な麻薬の使用方法を説明した –.14 .78 .5
Q55.訪問がない間に必要な医療処置の知識や技術を,家族の状況に合わせて教えた –.07 .75 .51
Q26.患者のADLが低下するごとに,患者の余命を予測して家族に説明した .01 .70 .50
Q30.患者の望みに沿った薬の使い方をした .02 .69 .49
Q19.がんの身体的苦痛(疼痛・吐き気・呼吸困難など)の悪化を予測した上で,薬剤や投与ルートを事前に準備した .06 .62 .43
Q45.患者の食欲や表情,言動の変化から患者の余命を予測した .05 .54 .33
Q33.別のチームメンバーが担うケアを代行して,必要なケアを実施した .17 .45 .32
因子相関行列  
第1因子
.58
累積寄与率(%) 35.2 43.8

因子抽出法:主因子法

回転法:Kaiserの正規化を伴うプロマックス法

Kaiser-Meyer-Olkin(以下,KMO)=.94 Bartlettの球面性検定(χ2 = 4,018.5, df = 435, p < .001)

a.3回の反復で回転が収束

3) 確認的因子分析

グループ①のデータを用いた探索的因子分析で抽出された因子を潜在変数,それに属する項目を観測変数とした尺度モデルを作成し,グループ②のデータで確認的因子分析を行った.χ2(404) = 1,105.15,p < .001,モデル適合度指標は,GFI = .78,AGFI = .75,GFI > AGFI,CFI = .82,RMSEA = .08であり,大きく基準を満たしていなかったため,モデルの修正を行うこととした.

パスの標準化係数は,.44~.8の範囲であった.重相関係数(共通性)は,.02~.64の範囲であり,.3以下の6項目を削除することとした.

確認的因子分析では,項目間の誤差共分散がないことを前提に分析し,誤差共分散の修正指数20(四捨五入)を超える7ペアの項目のうち13項目の削除を行った.項目数の削除は,尺度の希薄化を招くとされている(南風原,2002)ため,項目の意味内容が削除されることで,多職種統合チームによる在宅緩和ケアの実践内容として重要な側面の質問が抜け落ちないかどうかを慎重に検討して削除を判断し,2因子17項目からなるモデル②(表3)を生成した.モデル②の確認的因子分析の結果,因子間相関係数は,.75,パスの標準化係数は,.52~.82,重相関係数の平方の範囲は,.27~.67であった.χ2(118) = 247.24,p < .001,モデル適合度の指標は,GFI = .91,AGFI = .89,GFI > AGFI,CFI = .94,RMSEA = .06を示し,基準を満たした.

表3 多職種統合チームによる在宅緩和ケア実践評価尺度

第1因子【臨機応変な対応に基づく希望実現】
Q56.人生の最期をどう生きたいのか,何を求めているのかという患者の本心を,あらゆる会話の内容から把握した
Q38.思い通りの日常生活が自分でできなくなっている患者の,日常のささやかな望みを実現した
Q28.残された時間の中で,患者と家族がお互いにしてあげたいと思っていることができるように,患者と家族を仲介した
Q42.介護への自信を失って挫けそうになっている家族に,訪問日以外にも電話などで介護の様子を聞いて,肯定的な言葉をかけた
Q11.患者や家族の死の受け入れの程度をモニタリングした
Q29.チームメンバーの自宅看取りに対する不安を,お互いに解消した
Q60.チームメンバーの各職種の専門性に応じて,患者と家族の情報を伝わりやすい表現に変えて提供した
Q44.身体的苦痛症状の出現やそれによって生じる問題を予測した上で,チーム内で事前に対応策を共有した
Q34.想定外のトラブルが発生した時は,直ちにチームメンバーが集まって対応した
Q49.患者と家族の最新かつ詳細情報を,チーム全体で逐一共有した
Q8. ケアに必要とされる知識や技術を,その都度チームで学習した
Q35.患者や家族の希望にもとづき,ケアの費用を最小限にできる制度の活用をサポートした
第2因子【予測に基づく苦痛緩和】
Q55.訪問がない間に必要な医療処置の知識や技術を,家族の状況に合わせて教えた
Q36.医療者がそばにいなくても,患者の苦痛症状を即時に緩和するための知識や技術を家族に教えた
Q61.麻薬の使用控えにつながる患者と家族の不安を予測した上で,その人に合った効果的な麻薬の使用方法を説明した
Q26.患者のADLが低下するごとに,患者の余命を予測して家族に説明した
Q45.患者の食欲や表情,言動の変化から患者の余命を予測した

4) 交差妥当性の検証

グループ③のデータでモデル②の確認的因子分析の結果,因子間相関係数は,.66,パスの標準化係数の範囲は,.47~.79,重相関係数の平方の範囲は,.22~.63であった.χ2(118) = 256.37,p < .001,モデル適合度の指標は,GFI = .91,AGFI = .88,GFI > AGFI,CFI = .92,RMSEA = .06を示した.

5) 全体のデータによるモデル検証

グループ①から③までを全て足し合わせた全体のデータにおいて,モデル②の確認的因子分析を行った.因子間相関係数は,.67,パスの標準化係数の範囲は,.54~.76,重相関係数の平方(共通性)の範囲は,.29~.58,累積寄与率は47.9%であった.項目間相関は,.23~.58(平均.34),χ2(118) = 414.9,p < .001,モデル適合度は,GFI = .95,AGFI = .93,GFI > AGFI,CFI = .95,RMSEA = .05を示した(図2).

図2  全体データ(N = 914)におけるモデル②の確認的因子分析のパス図

3. 基準関連妥当性(併存妥当性)の検証

「IT-HPC-PES」の合計得点および各因子と,GDS-J合計得点,緩和ケアに関する地域連携評価尺度とのSpearmanの順位相関係数を算出した.GDS-J合計得点と「IT-HPC-PES」合計得点とのSpearmanの順位相関係数は,.27(p < .001),第1因子は.28(p < .001),第2因子は.21(p < .001)であった.緩和ケアにおける地域連携評価尺度と本尺度合計得点とのSpearman順位相関係数はr = .49(p < .001),第1因子はr = .55(p < .001),第2因子はr = .29(p < .001)であった(表4).また,過去2年間の担当数と本尺度とのSpearman順位相関係数は,.33(p < .001),過去2年間の自宅看取り数とのSpearman順位相関係数は,.33(p < .001)であった.

表4 基準関連妥当性(併存妥当性)の検証

項目 尺度合計 因子1合計 因子2合計
Spearman相関係数 Spearman相関係数 Spearman相関係数
GDS-J合計得点 .27** .28** .21**
緩和ケアに関する地域連携評価尺度合計得点 .49** .55** .29**

**は,有意確率<.01を示す.

4. 信頼性の検証

グループ①~③を合わせた全体データにおいて,モデル②のCronbach’s α係数とMcDonald’s ω係数を算出した.その結果,第1因子はα = .87,ω = .87,第2因子はα = .85,ω = .85,尺度全体ではα = .89,ω = .89,であった.

5. 因子の命名

「IT-HPC-PES」の2つの因子に含まれる項目内容から,第1因子を【臨機応変な対応に基づく希望実現】,第2因子を【予測に基づく苦痛緩和】と命名した(表3).

6. 職種ごとの尺度合計得点

「IT-HPC-PES」の合計得点は,全体では平均66.2点(SD ± 9.9),医師の平均は70.9点(SD ± 10.1),看護師の平均は69.9点(SD ± 8),薬剤師の平均は62.9点(SD ± 10.4),介護支援専門員の平均は63.9点(SD ± 9.2),介護福祉士の平均は58.4点(SD ± 13.1)であった.

Ⅴ. 考察

本研究では,多職種へのインタビュー結果の質的分析から抽出した在宅緩和ケアの実践内容61項目を用いて因子分析を行い,2因子17項目からなる「IT-HPC-PES」を開発した.

1. 標本の妥当性

本研究のアンケートの回答者数は,依頼文郵送数に対して8.4%であり,職種別回収率は,3.9~19.2%と低かったが,総数914件の有効回答が得られた.分析に必要とされるサンプルサイズは,項目数の5倍以上(佐藤・土谷,2018)であることから,本研究のサンプルサイズは適正であったと考える.

回答者の職種の内訳は,医師67件,訪問看護師332件,薬剤師17件,介護支援専門員430件,介護福祉士68件であった.訪問看護師と介護支援専門員の回答数が多く,薬剤師の回答数が特に少なかった.職種間の回答数の差はあったが,すべての職種の回答データが得られていること,データ収集において多職種チームとしての実践について回答を求めていることから,多職種の在宅緩和ケアの実践を反映した妥当なデータであったと考える.

本研究の対象者の経験については,職種の経験は平均14.2年,終末期がん患者の在宅緩和ケアの経験は平均6.8年であり,1年間あたり平均約10件を担当しそのうち7件を自宅で最期を看取った経験のある対象者であった.実際に自宅で最期を看取った経験のある多職種の回答が反映された結果であり,適切な対象者のデータによって尺度開発が行えたと考える.

2. 「IT-HPC-PES」の信頼性と妥当性

「IT-HPC-PES」最終モデルの確認的因子分析の結果,χ2検定の結果は有意差を認め,モデルとデータ間に統計的な不一致が認められたが,サンプルサイズが300と十分であることから,χ2検定は敏感に反応したと考えられる.そのほかのモデル適合度の指標(GFI, AGFI, CFI, RMSEA)の4つがすべて基準を満たしており,因子構造はデータに適合していると評価した.基準関連妥当性の検証において,GDS-J合計得点,緩和ケアに関する地域連携評価尺度の合計得点と,本尺度の合計得点とのSpearman順位相関係数を求めた.GDS-Jとの相関係数は.27と有意な弱い相関を認めたことから,本尺度で示した実践が,「よい死」というアウトカムに少なからず貢献していたと考えられる.また,緩和ケアに関する地域連携評価尺度との相関係数は.49と有意な中程度の正の相関を認めた.本尺度は,多職種統合チームによる在宅緩和ケア実践を評価するものであることから,本尺度との関連が示されることは重要であり,地域連携の良さとの関連が示された.また,過去2年間に終末期がん患者を主に担当した患者数や過去2年間の在宅看取り数との相関は,.33と正の中程度の相関を認めたことから,終末期がん患者の在宅看取りの経験との関連が示された.一方,今回の調査では,再テストが行えておらず,安定性の検証が行えていないが,交差妥当性を確認でき,一般化可能性が示せた.これらの検証の結果から,終末期がん患者の望む在宅看取りを実現する「IT-HPC-PES」の信頼性と妥当性が確保されたと考える.

3. 尺度開発過程

本尺度は,2因子構造であり,因子1には,12項目と多くの項目を含み,尺度項目の項目間相関は.23~.58で,平均は.34であった.項目数が多いことの影響は,冗長性の高い項目が多く含まれることや,解釈が困難となること,一貫性が失われることが懸念される.Briggs & Cheek(1986)は,内的一貫性と妥当性のバランスについて,項目が適度に関連しつつ冗長性を避けるために,平均項目間相関の範囲が.15~.50であることを推奨していることから,冗長性の問題はないと判断できた.また,因子の解釈をするにあたり,これらの項目に共通する実践の特徴を検討した結果,患者の急速な病状の悪化にともない変化する患者と家族の状況に,多職種チームの実践もその変化に随時適合させて希望を把握し実現する様子が読み取れ,解釈可能と判断した.また,Cronbach’s αの値も.7以上.9未満であったことから,一貫性の問題はないと判断した.

一方,探索的因子分析の結果得られた尺度モデルで確認的因子分析を行った結果,モデル適合度の基準を満たさず,多数の項目を削除する結果となった.この背景には,職種間での質問内容の解釈や意味の捉え方に相違が生じ,それが誤差となり分析結果に影響した可能性があるのではないかと考える.また,在宅緩和ケアの実践は,ケア内容の意味を理解した実践が求められる.そのため,解釈の相違を減らすために,それらを項目に表現したことで質問表現がやや複雑となっていたことも影響したと考えられる.

分析では,できる限り実際のデータとモデルとの一致性を高め,誤差変数の影響のないモデルの構築をするため,確認的因子分析において,誤差共分散の値が高い項目の削除を行った.項目間の誤差共分散を許容することで,尺度項目を残すことも検討したが,理論的な妥当性の低下や,モデルの複雑さを招くため,項目を削除する方針でモデル修正を行った.ただし,項目数の削除は,尺度の希薄化を招くとされている(南風原,2002)ため,分析結果の数値だけでなく,多職種チームによる在宅緩和ケアの実践内容として重要な側面の質問が抜け落ちないかどうかを慎重に検討して削除した.探索的因子分析の結果では30項目あった尺度項目が17項目に減少したが,最終的なモデルは,下位の尺度項目によって適切に解釈可能であり,交差妥当性の検証においても,良好なモデル適合度を得られたことから,多職種が本尺度を用いて在宅緩和ケアの実践を評価することは可能と考える.

4. 「IT-HPC-PES」の特徴

本研究で開発した「IT-HPC-PES」は,在宅緩和ケアにおける多職種統合チームの協働的実践を包括的に評価できる点に特徴がある.既存の評価尺度には,訪問看護師の実践を評価する緩和ケア実践尺度(Shimizu et al., 2016)(疼痛緩和や患者・家族中心のケア,医師・ケアマネジャー・ヘルパーとの調整などの内容を含む6因子からなる尺度)や,ケアマネジャーの実践を評価するEOLCM尺度(End-of-life care management scale)(Kaneda et al., 2022)(予測的・迅速なケア計画や在宅看取りの準備性を高める家族支援の内容を含む4因子からなる尺度)があるが,これらはいずれも個人の専門的実践を対象としている.一方,本尺度は多職種チーム全体の協働実践を対象としており,終末期がん患者の在宅緩和ケアの実践内容に焦点を当てている点において,独自性があると考える.

第1因子【臨機応変な対応に基づく希望実現】は,患者・家族の希望の変化に即応する柔軟な支援を評価する.下位項目の「希望の把握と実現」,「変化への即応」,「家族への肯定的声かけ」,「制度活用による費用軽減」の内容は,在宅緩和ケアにおける機動的チームケア(小野,2018)と在宅での尊厳ある生の実現(小野,2018),家族の安心感の醸成(山口・柳原,2008)や経済的支援(Delgado et al., 2016)の重要性と関連していた.

第2因子【予測に基づく苦痛緩和】は,医療者不在の在宅環境で,症状や余命の予測に基づき苦痛を未然に防ぐ先手の対応を評価する.苦痛緩和は医療職中心の実践であると捉えられやすい(古瀬,2017)が,多職種チーム全体の実践として評価するという新たな視点を提供する.下位項目の「家族の対応力向上」や「麻薬使用への不安軽減」,「予後理解の支援」の内容は,苦痛緩和における麻薬使用への納得感(水野・佐藤,2003)や家族への教育的支援(福井・川越,2004),予後理解(福井ら,2018伊藤・田髙,2021小沼ら,2022)の重要性を示すものであった.

これらのことから,第1因子,第2因子は,在宅緩和ケアの実践において,先行研究で重要と指摘されている内容が反映されたものであった.

5. 職種別得点からみた本尺度の特徴

本尺度の職種別合計得点平均では,医師の得点が一番高く,次いで訪問看護師,介護支援専門員,薬剤師,介護福祉士の順であった.この結果から,医師や看護師が中心的に役割を担っていることが伺えた.このように,本尺度の得点構造から多職種チームにおける各職種の役割や他職種との協働の実態を把握することが可能となることから,多職種協働の促進にも役立てられると考える.

6. 「IT-HPC-PES」の活用可能性

本尺度は,臨床での実践評価に加え,多職種連携の評価にも活用できる.個人の使用では,チーム内での自身の実践状況を客観的に把握でき,得点の低い項目は情報共有や役割調整の必要性を示唆し,ケア改善の契機となる.チーム全体で用いる場合は,評価を通じて役割認識が共有され,ケアの最適化につながる.具体的な活用場面としては,チームメンバー各個人の日常的な実践の振り返りや,多職種が出席する症例検討会での活用が想定される.さらに,評価結果の個人間・チーム間比較や総得点の変化を確認することで,在宅緩和ケアにおける協働実践の質を評価することができる.これにより,本尺度は連携強化とケアの質向上に寄与する有用な評価ツールとなり得ると考える.

7. 研究の限界と今後の課題

本研究の限界として,第一に,薬剤師の回答が他職種に比べて少なかったことが挙げられる.今後は薬剤師の回答数を増やし,データを蓄積することで,薬剤師の役割や他職種との協働の実態をより正確に把握し,尺度の妥当性を高める必要がある.第二に,本尺度の安定性の検証が行えていないため,同一集団での複数回調査による信頼性の検証が求められる.さらに,今後は本尺度を用いた介入研究により実用可能性を確認するとともに,終末期がん患者や家族の希望する在宅看取りに貢献しているかどうかを検証するため,患者・家族・遺族によるアウトカム評価との関連を明らかにし,尺度の妥当性と有用性をさらに高めることが必要である.

Ⅵ. 結論

本研究により,第1因子【臨機応変な対応に基づく希望実現】12項目,第2因子【予測に基づく苦痛緩和】5項目の2因子17項目からなる「IT-HPC-PES」を開発した.本尺度の信頼性・妥当性が確認された.

付記:本研究は,愛媛大学大学院医学系研究科看護学専攻に提出した博士論文の一部に加筆・修正を加えたものである.

謝辞:本研究の実施にあたり,ご協力いただいた全国の多職種の方々に心より感謝いたします.

日本学術振興会の科学研究費助成事業(基盤研究C:23K10259)の助成を受けて実施した.

We would like to thank Editage (www.editage.jp) for English language editing.

利益相反:本研究における利益相反は存在しない.

著者資格:吉田および陶山は,研究デザインの構想およびデザインに貢献した.吉田はデータ収集と分析,原稿作成の研究プロセス全体に貢献した.陶山は原稿への示唆および研究プロセス全体への助言を行った.すべての著者は最終原稿を読み,承認した.

文献
 
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