日本看護科学会誌
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原著
精神保健福祉における専門職者のネガティブ・ケイパビリティ自己評価尺度の開発
福嶋 美貴
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2026 年 46 巻 p. 593-604

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Abstract

目的:精神保健福祉における専門職者のNC自己評価尺度を開発し信頼性と妥当性を検討する.

方法:文献的統合および,事前に行った質的調査の結果から57項目の質問紙原案を作成した.10施設の看護師,心理士,精神保健福祉士386名に質問紙調査を実施し,信頼性・妥当性を検証した.

結果:253部が回収され,欠損のない241部を分析した.天井効果および床効果は認めず,全項目を削除せず最尤法Promax回転による探索的因子分析を行い,28項目が削除され,29項目2因子が抽出された.第1因子「効率と成果を重視したdoing」,第2因子「観察中心のゆったりとしたbeing」と命名した.全体のCronbach’s α係数は0.875,下位尺度は0.815~0.871であった.

結論:精神保健福祉の専門職者のNC自己評価尺度として信頼性と妥当性を有し,職務姿勢をメタ認知する基礎資料としての活用可能性が示唆された.

Translated Abstract

Purpose: The purpose of this study was to develop a self-assessment scale for negative capability among professionals in mental health and welfare and to examine its reliability and validity.

Method: Based on a literature review and the results of a preliminary qualitative survey, a draft questionnaire consisting of 57 items and scale was developed. A questionnaire survey was conducted among 386 nurses, psychologists, and mental health and welfare workers across 10 facilities to verify its reliability and validity.

Results: A total of 253 questionnaires were returned, and 241 with no missing data were analyzed. Through repeated exploratory factor analysis using maximum likelihood Promax rotation, 28 items were deleted, resulting in 29 items and two factors. The first factor was named “doing, emphasizing efficiency and results,” and the second factor was named “being, centered on observation and relaxation.” The overall Cronbach’s α coefficient was 0.875, and the subscale coefficients ranged from 0.815 to 0.871.

Conclusion: The reliability and validity of the Negative Capability Self-Assessment Scale for mental health and welfare professionals were confirmed, and the possibility of using it as a basic resource for metacognitive understanding of the professional’s work attitude was suggested.

Ⅰ. はじめに

精神医療には一般科にはない特徴があり,不確実性や答えの出ない事態が多く,葛藤保持力が求められる(河合,2002).支援者,患者,家族の間で価値の対立が生じ,解決は容易ではない.支援者は患者の最善を内省し続ける日常を送っているが,問題解決能力を最大限発揮しても不確実性は残る.このような精神科医療の特性からリサーチクエスチョンが生まれ,専門性が構築される過程において,ネガティブ・ケイパビリティ(NC)が求められる.NCは忍耐力を超え,最善を探し求めるプロセスを支える役割を持つ.リカバリー支援においてもNCは同様の役割を果たす.

NCは,イギリスの詩人Keats(1817/1971)が1817年に優れた詩人の能力として初めて言及し.その後.精神分析医Bionが1962年に医療分野に取り入れた.これ以後,精神分析だけでなく,教育や組織心理学,マインドフルネスに影響を与え,特にマインドフルネスは,NCの,自我を手放し,不確実性に対して開かれた姿勢を持つ特性に類似性を見いだしている(Todd, 2015).日本では2017年,帚木の著書,答えの出ない事態に耐える力が注目され,特にコロナ禍以降のVUCA時代において保育や教育の分野で関心が高まっている.しかし,令和6年版の看護学教育モデル・コア・カリキュラム(文部科学省,2024)では,NCに似た概念として省察が挙げられるが,他は見あたらない.看護界では問題解決志向が強く,懐疑心が問題解決能力の低さと見なされがちだが,患者の状況は多様であり,新たな原理や方法を考える必要がある(草野,2017).問題解決志向には,問題を矮小化する,解決が目的となり患者を追い詰めるという2つのリスクがある(帚木,2017).そのリスク回避にNCは必要な能力であると考えられるが,看護領域では認知度が低く,概念としては暗黙知の域にとどまっている.福祉及び心理領域においてもNCという概念は十分に浸透しているとは言い難い.

諸外国の不確実性耐性を主題とする先行研究の知見は,医療者の不確実性耐性は治療関係の形成や意思決定の共有に関与し,患者の健康行動,転帰に影響を及ぼす可能性が示唆されている(Hillen et al., 2017).不確実性耐性が低い医学生は,障害に対する態度スコアが低い(Ogle et al., 2023).尺度開発では,組織のリーダーのNCに着目したもの(Palabiyik et al., 2025)が新しい.類似概念では不確実性不寛容尺度や曖昧さ耐性尺度はいつくか開発され,国内では,曖昧さへの態度尺度(西村,2007)が,近年では,Tolerance of Ambiguity in Medical Students and Doctors (TAMSAD) scale for use in Japan(Fujikawa et al., 2023)がある.この尺度の5因子ある下位尺度の一つを「医学の神秘性を好む」としており注目に値する.臨床看護において『神秘性』をどの程度受け入れる傾向があるのかを検討する意義がある.プレプリントでは,ネガティブ・ケイパビリティ尺度の開発と妥当化(玉木ら,2024)がある.この尺度は,人が誰しも持っているNCの尺度のため,他者存在を尊重しケアする視点では作られてない.さらに修士論文では杉山(2023)が心理臨床におけるNC尺度を開発,4因子構造とし,下位因子の一つを「総合的多様性アプローチ」としている.アプローチとは技法を指すが,NCは元来能力であり,技法では説明が難しいと考える.

国外では類似尺度にFonagy et al.(2016)が開発したThe Reflective Functioning Questionnaire(RFQ)がある.NCとメンタライジングの概念の質的な異同について検証の価値がある.不確実性耐性の既存の尺度にはIntolerance of Uncertainty(IUS27, IUS12)(Gioia et al., 2015)がある.IUSは心配の尺度と相関が高いが不安や抑うつの尺度との相関は低い(Buhr & Dugas, 2002)こと,否定的な感情を抑制する能力の低下と関連している可能性が報告されている(Shu et al., 2022).

不確実性耐性と曖昧さ耐性,両概念は不確実性によって認知,感情,行動面に影響をもたらす点で同じである.一方,不確実性耐性が未来志向で,予期不安に焦点を当てるのに対し,曖昧さ耐性は,今まさにここにある不安に焦点を当てるという点で異なる.不確実性耐性の低い人は不確実性のある状況下では行動できない(Sebastien et al., 2005).NCは同様の状況下で行動する力を有しながら,あえて行動しないことを選択でき,それを体現できる能力であると分析でき,不確実性耐性は曖昧さ耐性を含む包括的概念であり,NCは不確実性耐性を含むがより,広い概念とみなせる.つまり,既存概念ではNCの一部しか測定できない懸念があった.従って,NCの構成要素を補える尺度が必要となる.

また,日本人は周囲との調和を重んじ対立を回避し曖昧さに留まる傾向があるのに対し,欧米人は個を尊重し衝突も辞さない姿勢がある.NCは対立を回避して考えることをやめる事でも,自由奔放に意見し,他者の声に耳を貸さない事でもない.日米どちらの文化的背景にも依拠しない概念として捉える必要があった.

Bion(1970)は患者と共に生きていく覚悟のある人は不屈でなければならない.そのような精神分析者になりうる人間に導くために選抜する問題に〈負の能力〉の量を査定できる方法を見出せるなら有用であると述べており,この精神分析者を精神保健福祉の専門職者にも理論的に適用可能であると考えられる.また,患者と共に生きていく覚悟とは,敬意を手放さない臨床(斎藤,2025)の実践を意味し,〈負の能力〉すなわちNCをコンピテンシーとして重要視していることがわかる.パターナリズムに逆行しないよう,専門職者は常にこの原点に立ち返る必要がある.

以上のことから,独自のNC測定尺度を検討する必要があるが,精神保健福祉の専門職者に特化した尺度は見当たらない.そこで本研究では,精神保健福祉の専門職者に求められるNCの構成要素を明らかにし,自己評価尺度を開発する.これにより専門職者の職務姿勢をメタ認知する材料となる.また,支援者のリカバリー志向性が高まり,不確実性が付きまとう患者のリカバリーの促進に寄与できる可能性がある.

Ⅱ. 研究目的

本研究の目的は,精神保健福祉の専門職者のNC自己評価尺度を作成し,信頼性と妥当性を検討することである.

Ⅲ. 用語の操作的定義

1. 精神保健福祉の専門職者

社会的リカバリーやパーソナル・リカバリーへの支援を主に担う,精神科病院に勤務する看護師,准看護師,心理士,精神保健福祉士(MHSW)とする.

2. ネガティブ・ケイパビリティ

Reed(2013)のオープンダイアログの実践者に必要な資質,「過度に道具的になることなく存在し,注意を払い立ち止まり制止する能力」を参考に,わからないことで生じる不快感や不安を排除せず持ち,考え続けながら,何もしないでいることを選択し,実際に何もしないでいられる力とした.

Ⅳ. 研究方法

1. アイテムプールの作成

アイテムプールの作成は,文献的統合と質的調査の結果を検討材料とした.文献は,NCの英文献レヴュー(福嶋,2023)および不確実性不寛容や曖昧さ不寛容の既存尺度を参考にした.また,本研究前の質的調査は,倫理的ジレンマを抱える場面では不確実性が際立ち,葛藤のさなかでNCが発揮されていると考え,ビネットを用いたインタビューを実施した.ビネットは,退院後家に帰りたい精神疾患患者と患者への陰性感情を払拭出来ず受け入れを拒む母親という設定とし,患者と母親の意向の相違,母親の陰性感情と純粋な愛情,患者の人権尊重と母親への同情の衝突による看護者の葛藤の3つの変数を含め精神科看護師にインタビューした(福嶋,2024).これらの結果から抽出された精神保健福祉におけるNCの構成要素は,〈不確実性に耐える力〉〈安易に答えを出さずに考え続ける力〉〈何もしないことを選択する力〉〈何もしないでいられる力〉の4つであった.NC概念の構成要素ごとに,14~16のアイテムを考案し,内容重複の1項目を除き全57項目を策定した.なお,質的調査で抽出された態度・能力のコアカテゴリ,「積極的な対処をせず不確実さの中に留まるありよう」のデータを反映させた12項目を含めた.また,逆転項目を17項目含めた.内容的妥当性は看護師1名,社会福祉士2名,介護福祉士1名,医療ワーカー1名で構成される著者が在籍する大学院のゼミ生5名でブレインストーミングを行い,検討した.質問項目と構成概念との整合性,理論的定義との齟齬,意味が通りにくい不明瞭な項目の有無,多職種を対象とするため,特定の職種でしか使われない表現の有無を確認した.回答の選択肢は,非常にあてはまる(6点)~全くあてはまらない(1点)の6件法とした.プレテストは精神看護学および社会福祉学の大学教員8名,MHSW2名,社会福祉士1名,保健師1名に行い,質問項目の妥当性を再検討し,アイテムプールを作成した.

2. 尺度の信頼性・妥当性の検討

1) 対象者

A地方の4県,10精神科病院に勤務する看護師,准看護師,心理士,MHSWの3職種386名を対象とした.

2) 調査方法

施設の各部門の責任者に調査の説明を行い,対象者へ無記名自記式質問紙,説明文書,返送用封筒をセットし,配布を依頼した.回収方法は個別に研究者へ直接返送とした.調査期間は2024年8月~10月の3ヵ月とした.

3) 調査内容

(1) 対象者の属性

職種,性別,年代,役職の有無,精神科領域での経験年数,リカバリー支援の成功体験の有無とした.

(2) NC自己評価尺度原案

57項目6件法からなる尺度である.本尺度原案は,合計得点を57点~342点の範囲で評価し,得点が高いほど精神保健福祉の専門職者としてNCが高いことを意味する.

(3) Ego-Resiliency尺度(ER89)

畑・小野寺(2013)によって開発された発達のどの段階にも共通して良好な適応を実現するのに重要なパーソナリティ特性を明らかにする尺度である.全くあてはまらない(1点)~非常にあてはまる(4点)の4件法で,1因子14項目からなる.信頼性と妥当性が確認されている.

(4) ストレス反応尺度SRS18の怒り・不機嫌因子6項目

鈴木ら(1997)によって開発された,日常的に経験する心理的ストレス反応の測定が可能であり,かつ簡便に用いられる,不安・抑うつ,怒り・不機嫌,無気力の3因子18項目からなる.信頼性と妥当性は検証されている.NCは答えの出ない状況に積極的に向きあい,思考を深め,新たな知見を得ようとする積極的な姿勢を指す事から無気力や不安・抑うつを含めるとNCとは異なる事項を測定してしまう.そのため,怒り・不機嫌因子6項目を用いた.基準関連妥当性に尺度の一部を用いた前例は存在し,下位因子のみの使用でも妥当である.

4) 分析方法

統計解析には,IBM SPSS statistics27を用い,有意水準は5.0%とした.欠損値のあるケースは分析対象外とした.

(1) 項目分析

天井効果,床効果,項目間相関を確認した.天井効果は平均値+1SDで6点を超える項目,また,床効果は平均値-1SDで1点を下回る項目の有無を確認した.

(2) 妥当性の検証

構成概念妥当性を検証は,57項目の探索的因子分析(最尤法,Promax回転)を実施した.Kaiser-Myer-Olkin(KMO)の標本妥当性の測定とBartlettの球面性検定を行い,因子分析に適合しているかを確認した.固有値を1.0以上とし因子負荷量が0.4未満の項目は取り除いていった.ただし,質的データの分析結果から作成した項目は0.4未満でも採用した.基準関連妥当性はSRS18の怒り・不機嫌因子得点およびER89得点でNCスコアを4群に分け一元配置分散分析で検討した.

(3) 信頼性の検証

Kolmogorov-Smirnovの検定で尺度得点の正規性を確認し,各因子のCronbach’s α係数とSpearman-Brownの係数を算出し,内的整合性の確認を行った.信頼性係数の基準は0.8以上とした.

3. 倫理的配慮

本研究は日本福祉大学大学院「人を対象とする研究」に関する倫理審査委員会の承認を受けて実施した(承認番号22-019).対象者には研究の目的と方法,研究協力は自由意思であり,参加の場合でも個人情報は保護されること,結果は論文としてまとめ,学会等で公表することを口頭と文書で説明した.

V. 結果

1. 対象者の概要

回収された質問紙は252部(回収率65%)で,分析対象は欠損値のない241部(有効回答率62.4%)とした.表1に示した通り,職種は看護師・准看護師が207名(85.9%)と多く,MHSW25名(10.4%),公認・臨床心理士が9名(3.7%)であった.年代では40代が最多で78名(32.4%),全職種の精神科領域の平均経験年数は15.7 ± 10.0年,役職者は77名(31.9%),リカバリー支援の成功体験のある者は61名(25.3%)であった.KMOの標本妥当性の測定は0.860,Bartlettの球面性検定はP < 0.001であり,因子分析に適合していた.

表1 対象者の概要

N = 241

項目 NC低群78人
(92~113点)
NC中郡83人
(114~126点)
NC高群80人
(127~150点)
小計 χ2 p
性別 43 48 51 142
35 34 29 98 3.513 0.476
答えたくない 1 0 0 1
年代 20代 15 9 3 27
30代 15 20 20 55
40代 23 27 28 78 9.389 0.276
50代 22 21 24 67
60代 4 5 5 14
職種 看護師・准看護師 70 70 67 207
精神保健福祉士 8 9 8 25 0.721 0.653
公認・臨床心理士 1 3 5 9
役職 あり 23 21 33 77 4.991 0.082
なし 56 61 47 164
リカバリー支援の成功体験 あり 13 23 24 61
なし 22 14 19 54 9.029 0.172
どちらとも言えない 44 44 37 125
経験月数±SD 180ヵ月±136 196ヵ月±116 189ヵ月±103 1.523 0.467

2. 項目分析

表2-12-2に示した通り,平均値が高い項目は順に5,22,26,低い項目は49,10,35であった.天井効果,床効果項および項目間相関で相関係数0.7以上のペアはいずれも認められなかった.このことから,57項目すべてを活かした.また,表2-12-2には全体得点の有効性の確認のため因子分析後残った29項目のI-T相関を示した.質的調査のデータを活かした10,40,57および24以外の25項目は0.364~0.643であった.

表2-1 精神保健福祉の専門職者のNC尺度のアイテムプールの項目分析および29項目版のI-T相関

29項目

平均値 標準偏差 天井効果 床効果 I-T相関
NC1 わからないことも多い新しいことでも,さほど抵抗なく受け入れることができる 4.00 0.97 4.97 3.03
NC2 確信が持てないことがある時に,状況の好転を待つ事は苦痛である 3.53 1.02 4.55 2.51
NC3 今,ある不安をうまくコントロールすることができる 3.84 0.95 4.80 2.89
NC4 支援の成果がでない時に,白か黒か,答えをどちらかに決めることのリスクを認識している 4.27 0.93 5.20 3.34
NC5 時間が解決してくれることもあるので,待ってみることも一つの方法である 4.86 0.81 5.67 4.05
NC6 倫理的ジレンマを抱えて悩み続けることができる 4.12 1.03 5.15 3.09
NC7 曖昧な状況への対処を避け,関わらなくていいように距離をとってしまいがちである 3.42 0.92 4.34 2.50
NC9 必要な情報をすべて持っていなくても不安になることはない 3.45 1.17 4.62 2.28
NC10 わからない状態が続くと不安になったり,不快な感情が生まれることが多い 3.23 1.02 4.34 2.21 .253
NC11 確信が持てないことがあるということは,優秀ではないことと同じである 4.46 1.15 5.61 3.31 .620
NC12 答えを出さずに保留にすることは良くないことである 4.17 1.19 5.36 2.98 .541
NC13 倫理的ジレンマのさなかで抱える葛藤や精神的苦痛に強いほうである 3.62 0.97 4.59 2.65
NC14 すぐに解決したくなる気持ちを手放すことができない 3.79 1.02 4.81 2.77 .520
NC15 最善策が見つからない時,他に方法はないか別の視点で考える 4.42 0.80 5.23 3.62
NC16 仕事を離れても,ケアの場面を頭の中で再構成し,これで良かったのか考える 4.10 1.10 5.20 3.00
NC17 対象者の能力を一度見定めると,その見方が変わることはない 4.09 0.82 4.91 3.27 .442
NC18 結論がいつまでも出ない状態を嫌い,早めに決着を図る 3.82 0.93 4.75 2.89 .555
NC19 対象者は変わっていくことができるので,対象者の限界を安易に決めることはない 4.27 0.88 5.15 3.39 .473
NC20 わからないと思っても,わからなさを自分の中に留めながら考え続ける 3.90 0.95 4.85 2.95
NC21 最善策が見つからない時,落としどころを決めず,他の可能性を残しておくことが重要である 4.37 0.84 5.21 3.53 .457
NC22 他の可能性を考えることは時間の無駄である 4.91 1.02 5.93 3.89
NC23 確立されていない未知の支援方法であっても,対象者に適合する可能性を検討するべきである 4.37 0.93 5.30 3.44
NC24 物事の解決にはスピード感を持って取り組むようにしている 3.39 1.02 4.41 2.37 .278
NC25 問題を解決させることが重要なので,必ず答えを出すようにしている 3.99 0.93 4.92 3.06 .514
NC26 答えのない問題はなく,すべて解決できる 4.98 0.89 5.87 4.09 .561
NC27 解決を急いでショートカットしてでも,答えが欲しいと思う 4.52 1.09 5.61 3.43 .618
NC28 主体性を取り戻す事を意味するリカバリー支援では,むしろ無理して答えを出さない方がいい 4.06 0.88 4.94 3.18
NC29 問題を一人で抱え込むと客観視できず,他の可能性を見つけられない 3.98 1.16 5.14 2.82

※NC8は欠番

表2-2 精神保健福祉の専門職者のNC尺度のアイテムプールの項目分析および29項目のI-T相関

29項目

平均値 標準偏差 天井効果 床効果 I-T相関
NC30 対象者の潜在能力を引き出すには,あえて支援者が何もしないことも方法である 4.08 0.83 4.91 3.25 .381
NC31 積極策をとらずに,経過を見ることもケアである 4.52 0.71 5.23 3.81 .513
NC32 実践する事で問題は解決する 3.42 0.81 4.23 2.61
NC33 何もしないという選択は,何もできないことを示すことと同じである 4.64 0.95 5.59 3.69 .597
NC34 対象者の回復のプロセスで,支援者が余計な手出しをしないことの意味がわかる 4.23 0.91 5.14 3.32
NC35 支援計画に,積極的な介入に関する具体策を入れることが問題解決に有効である 3.24 0.85 4.09 2.39
NC36 対象者が自分の力で困難を乗り越えようとしている時でも,心配になり手出しをせずに見ていることができない 4.29 0.97 5.26 3.32 .568
NC37 対象者を見守るというケアを,しばしば選択する 4.38 0.80 5.18 3.58 .504
NC38 問題解決や回復への支援をしすぎる事の,弊害を知っている. 4.43 0.87 5.30 3.56
NC39 あえて何もしないという方法を選択することは,なかなかできない 3.91 1.07 4.98 2.84
NC40 対象者を見守ることが最善だと考えた時,見守る事への反対意見があっても迷わず選択できる 3.63 0.88 4.51 2.75 .238
NC41 何もしないことは,仕事をしていないに等しい 4.67 1.11 5.78 3.56 .612
NC42 特別なことをするより,共に過ごす時間を増やすことが効果的である 4.21 0.88 5.09 3.33 .378
NC43 問題を解決できる力だけが,専門職者としての価値である. 4.65 1.03 5.68 3.62 .643
NC44 私はすぐに何かすることで満足している 3.98 1.02 5.00 2.96 .541
NC45 時間が解決してくれることもあるので,何もしないことも良いことだ 4.20 0.78 4.98 3.42 .366
NC46 対象者に関心を寄せながら観察をすることで,患者の変化に気づくようにしている 4.52 0.78 5.30 3.74
NC47 対象者の可能性を信じて,余計な手出しをしないようにしている 4.04 0.77 4.81 3.27 .427
NC48 ケースによっては,その人らしさをなくさないためにできるだけ介入しないようにしている 4.02 0.78 4.80 3.24 .458
NC49 見守ることは相手の自己変容の力を試すことと同じ意味だと考えている 3.14 0.81 3.95 2.33
NC50 余計な手出しをしないでいることは,対象者に暖かな関心を寄せ観察することだ 4.13 0.79 4.92 3.34 .364
NC51 患者の代わりに何かをすることは,患者の成長の機会を奪うので代行はしないようにしている 3.57 0.85 4.42 2.72
NC52 自分と異なる性質を持ち理解が難しい患者とでも共に居ることができる 3.85 0.83 4.68 3.02
NC53 対象者と共に居る時間を積み重ねるように意識している 4.21 0.70 4.91 3.51
NC54 何もできないことと,支援者が対象者の成長を考え,あえて余計な手出しをしないことの違いがわかる 4.40 0.71 5.11 3.69
NC55 対象者に関心を寄せ観察している時間帯こそ,対象者のことをよく考えるようにしている 4.25 0.76 5.01 3.49 .405
NC56 何もしないでいることに罪の意識を持ってしまい,動いてしまう 4.06 0.97 5.03 3.09 .541
NC57 対象者ないし周りの環境が変わるきっかけを待つようにしている 3.83 0.74 4.57 3.09 .235
NC58 短期決戦で結果を出そうとせずに,じっくり構えるようにしている 4.16 0.77 4.93 3.39

3. 妥当性の検証

構成概念妥当性の検証では,探索的因子分析を行った.その結果を表3に示す.初回の因子分析で1因子構造ではないことを確認している.スクリープロットで4因子構造を仮定したが,因子数は固定せず因子負荷量が0.4未満の項目を除外しPromax回転をかける手続きを繰り返した.ただし,現象の本質に関わるような項目である場合は,統計的には望ましくなくても残した方が良い(萱間,2007)ため,質的調査の結果で得られたコードを活かし「わからない状態が続くと不安になったり不快な感情が生まれることが多い」(項目10),「対象者は変わっていくことができるので,限界を安易に決めることはない」(項目19)と,「最善策が見つからないとき,落としどころを決めず他の可能性を残しておくことが重要だ」(項目21),「対象者を見守ることが最善だと考えた時,見守ることへの反対意見があっても迷わず選択できる」(項目40)の4項目は,0.4未満であったが除外しなかった.27項目が除外された時点で,2因子,30項目に収束されたが,第2因子の信頼性係数が.80未満だったため,項目合計統計量の項目が除外された場合のα係数を参照し,「見守ることは相手の自己変容の力を試すことと同じだと考えている」(項目49)を除外し最終的に2因子29項目となった.第1因子は,問題解決能力や即時性やスピード感を重視し直接的な実践つまり,doingに関する内容であり,しかも逆転項目が多く集結した.そのため,『効率と成果を重視したdoing』と命名した.第2因子は患者の成長を待つ,あるいは患者の持つリソースに対し信頼する姿勢・態度である.このことから『観察中心のゆったりとしたBeing』と命名した.本尺度は信頼性係数が全体で.875と高く,29項目のI-T相関では,質的調査のデータを活かした10,40,57および24を除く25項目は0.364~0.643であったことから全体得点の有効性は概ね認められた.サンプル数が241と少ないため因子間相関は高くなりやすいが,本研究では0.379でありこの分野だと妥当であり,高めとは考えない.併存的妥当性では表4に示した通り,本尺度の合計得点とSRS18の怒り・不機嫌因子では弱い負の相関(r = –.263)が,また,ER89とは弱い正の相関(r = .157)が示され,関連性が認められた.基準関連妥当性の検証では29項目版のNCスコアを4群に分け,平均値を算出した.そのうえで,各群のER89とSRS18の怒り・不機嫌の平均値を算出し,群間で差があるかを一元配置分散分析で検討した.その結果,SRS18の怒り・不機嫌はNCの低群と高群のみならず中低群と高群においても有意差が認められた(P < 0.005)(表5).また,ER89はNC合計スコアでは有意差が認められなかったが,NC第2因子では低群と高群(P < 0.001),中高群と高群(P < 0.005)で有意差が認められた(表6).

表3 精神保健福祉の専門職者のNC自己評価尺度の探索的因子分析

抽出因子
構成要素 質問No. 質問項目 全体α = 0.875 第一因子 第二因子
第一因子:効率と成果を重視したdoing α = 0.871
2 NC18(R) 結論がいつまでも出ない状態を嫌い,早めに決着を図る 0.672 –0.123
2 NC27(R) 解決を急いでショートカットしてでも,答えが欲しいと思う 0.664 –0.014
2 NC25(R) 問題を解決させることが重要なので,必ず答えを出すようにしている 0.632 –0.132
3 NC43(R) 問題を解決できる力だけが,専門職者としての価値である 0.608 0.119
4 NC44(R) 私はすぐに何かすることで満足している 0.596 –0.057
2 NC26(R) 答えのない問題はなく,すべて解決できる 0.593 0.028
1 NC14(R) すぐに解決したくなる気持ちを手放すことができない 0.589 –0.093
1 NC11(R) 確信が持てないことがあるということは,優秀でないことと同じである 0.567 0.061
3 NC33(R) 何もしないという選択は,何もできないことを示すことと同じだ 0.555 0.118
1 NC12(R) 答えを出さずに保留にすることは良くないことである 0.541 –0.009
4 NC56(R) 何もしないでいることに罪の意識を持ってしまい,動いてしまう 0.509 0.048
3 NC41(R) 何もしないことは,仕事をしていないに等しい 0.502 0.192
3 NC36(R) 対象者が自分の力で困難を乗り越えようとしている時でも,心配になり手出しをせずに見ていることができない 0.493 0.142
2 NC24(R) 物事の解決にはスピード感を持って取り組むようにしている 0.477 –0.311
2 NC17(R) 対象者の能力を一度見定めると,その見方が変わることはない 0.453 0.010
1 NC10(R) わからない状態が続くと不安になったり,不快な感情が生まれることが多い 0.314 –0.203
2 NC19 対象者は変わっていくことができるので,対象者の限界を安易に決めることはない 0.296 0.268
第二因子:観察中心のゆったりとしたbeing α = 0.815
4 NC47 対象者の可能性を信じて,余計な手出しをしないようにしている –0.086 0.689
4 NC50 余計な手出しをしないでいることは,対象者に暖かな関心を寄せ観察することだ –0.133 0.674
4 NC48 ケースによっては,その人らしさをなくさないためにできるだけ介入しないようにしている 0.004 0.607
3 NC31 積極策をとらずに,経過を見ることもケアである 0.112 0.594
4 NC45 時間が解決してくれることもあるので,何もしないことも良いことだ –0.039 0.543
3 NC42 特別なことをするより,共に過ごす時間を増やすことが効果的だ –0.037 0.524
4 NC55 対象者に関心を寄せ観察している時間帯こそ,対象者のことをよく考えるようにしている 0.017 0.518
3 NC30 対象者の潜在能力を引き出すには,あえて支援者が何もしないことも方法だ 0.001 0.518
3 NC37 対象者を見守るというケアをしばしば選択する 0.207 0.425
4 NC57 対象者ないし周りの環境が変わるきっかけを待つようにしている –0.097 0.401
3 NC40 対象者を見守ることが最善だと考えたとき,見守ることへの反対意見があっても迷わず選択できる –0.107 0.395
2 NC21 最善策が見つからない時,落としどころを決めず,他の可能性を残しておくことが重要だ 0.172 0.391
抽出後の累積因子寄与率% 21.320 30.560
第1因子 1.000 0.379
第2因子 0.379 1.000

因子抽出法:最尤法

回転法:Kaiserの正規化を伴うプロマックス法(R)=リバース項目 太字は質的分析の結果から作成した項目

構成要素1:不確実性に耐える力,構成要素2:安易に答えを出さずに考え続ける力

構成要素3:何もしないことを選択する力,構成要素4:何もしないでいられる力

表4 NC自己評価尺度とエゴ・レジリエンシー尺度およびSRS18「怒り・不機嫌」因子との相関

N = 241

SRS18
「怒り・不機嫌」
エゴ・レジリエンシー合計 NC第1因子合計 NC第2因子合計 NC合計
SRS18「怒り・不機嫌」 1 .200** –.277** –.113 –.263**
エゴ・レジリエンシー合計 .200** 1 .054 –.265** .157*
NC第1因子合計 –.277** .054 1 .320** .912**
NC第2因子合計 –.133 –.265** .320** 1 .680**
NC合計 –.263** .157* .680** .912** 1

* p < .05 ** p < .01

表5 NC合計スコアとSRS18「怒り・不機嫌」因子の平均値の群間比較

尺度 NC29項目合計スコア4群 n 平均値 F 多重比較 P
SRS 低群(92~111点) 64 5.4 ± 3.5
怒り・不機嫌 中低群(112~119点) 58 4.4 ± 4.4 4.97 2 < 4 .018
中高群(120~130点) 64 3.3 ± 3.1 1 < 4 .002
高群(131~150点) 55 2.4 ± 3.3

Tukey法 p < 0.05

表6 NC第2因子合計スコアとEgo・Resiliency尺度の平均値の群間比較

尺度 NC29項目第2因子スコア4群 n 平均値 F 多重比較 P
低群(33~46点) 69 33.6 ± 5.4
エゴ・レジリエンシー 中低群(47~49点) 52 34.5 ± 5.1 7.425 1 < 4 <.001
中高群(50~52点) 56 36.0 ± 5.3 3 < 4 .030
高群(53~71点) 64 37.8 ± 4.8

Gemes-Howell p < 0.05

4. 信頼性の検討

最終的に2因子,29項目となり,Spearman-Brownの信頼性係数は0.875であり29項目全体のCronbach’s α係数は0.875,下位尺度ごとのα係数は0.815~0.871であった.

Ⅵ. 考察

1. 精神保健福祉の専門職者によるNCの構成概念妥当性

本尺度は精神保健福祉の専門職者によるNCの構成要素に基づくならば,4因子になることが想定できた.しかし,探索的因子分析により,抽出された因子は,質的研究の分析結果と文献的統合によって得られた概念と類似しておりほぼ同様の結果を示していた.表3に各質問項目と構成要素との対応を示した.因子負荷量と信頼性係数は十分であった.これらの結果から,本尺度は一定の構成概念妥当性を有している可能性が示唆された.しかし,各因子の寄与率は,第1因子で21.32%,第2因子9.24%,累積で総計約30%に留まった.因子寄与率が低かった要因として質問項目の抽象度や冗長性が影響した可能性が考えられ,追加的検証が必要である.今回は,累積寄与率よりもNC概念を表す質問項目における解釈優位性を重視して作成した.本尺度が測定している構成概念には,NC以外の要素含まれている可能性がある.検証を重ねて,より累積寄与率の高い尺度へ洗練させていく必要がある.

第1因子の『効率と成果を重視したdoing』は,17項目からなり逆転項目が集結しているが.4つすべての構成要素の項目を網羅し,NCの概念を捉えられている.回答スタイルの違いから集結したのではないと考えられる.NCとは真逆のポジティブ・ケイパビリティである問題解決能力をあえて問う設問を考案し,得点をリバースさせることでNCを測定することを意図した.問題解決は,看護実践に必要な要素として位置づけられ(Eisenhauer & Gumdrop, 1990)ており,この能力を信条とする専門職者も少なくないと考える.しかし,NCは拙速に答えを出すことを回避し,不確実性の中に留まる能力である.逆転項目は,自分自身の考えや感情を再評価させるきっかけとなり,より深い自己認識を促しNCの構成概念に対する理解が促進される可能性がある.逆転項目が正しく理解される限り,構成概念との整合性は保たれる.また,質的調査の分析結果から抽出した項目10および19以外は因子負荷量が0.45以上と高く,第1因子のα係数も0.875であり,内的一貫性は高かったがNCのみに特異的であるかは今後の検証を要する.

第1因子には,〈不確実性に耐える力〉の要素のアイテムプールから「わからない状態が続くと不安になったり,不快な感情が生まれることが多い」,「すぐに解決したくなる気持ちを手放すことができない」など4項目が抽出された.〈安易に落としどころを決めず考え続ける力〉からは正転項目である「対象者は変わっていくことができるので,対象者の限界を安易に決めることはない」のほか,「対象者の能力を一度見定めると,その見方が変わることはない」「解決を急いでショートカットしてでも答えが欲しいと思う」のように,考え続けることを簡略化し,行動へと急ぐ姿勢を示す逆転項目が抽出された.〈何もしないことを選択する力〉は「対象者が自分の力で困難を乗り越えようとしている時でも心配になり手出しをせずに見ていることができない」,「何もしないことは,仕事をしていないに等しい」など4項目が抽出された.枝廣(2023)は,NCの定義を「全力を傾注した何もしないこと」と述べている.つまり,すべき対応をしないことや無関心から引き起こされるネグレクトと同義ではない.全力とは,対象者への肯定的関心,そして惜しみない愛情を持ち注意深く観ることを全力で遂行している状態とみなせる.何もしないことを選び出すことも時にはやらねばならない.NCの態度を持ち,患者を注意深く観察することで,介入が必要な時期や必要性を直感的に把握できる(Brown, 2014).以上の理論的検討から,患者の最善の探索する過程においてNCが重要な役割を果たす可能性が示唆された.

〈何もしないでいられる力〉からは「私はすぐに何かすることで満足している」「何もしないでいることに罪の意識をもって動いてしまう」の2つが抽出された.動くことをやめられない様相を表し,逆転項目である.

第2因子は『観察中心のゆったりとしたbeing』12項目からなり,すべて正転項目である.逆転項目は,回答者の特性や反応スタイルを反映しているため,集まりやすい(脇田,2023).本研究でも第1因子17項目のうち16項目の逆転項目が第1因子に集まったことから,第2因子は正転項目のみとなった可能性がある.質的分析の結果から抽出したNC19は正転項目として第1因子に入ったが,因子負荷量が近似値であり第2因子に入っても筋違いではない.当該項目の前半部分『対象者は変わっていくことができるので』は,成果志向的解釈とも読める一方で,後半部分の『限界を安易に決めることはない』というのは観察中心でわかることである.Doingは意味する範囲が広いがBeingは,共に在る,思いを馳せるという現象に焦点化されることも正転項目が集まった理由であると考えられた.

〈安易に答えを出さずに考える続ける力〉から「最善策が見つからないとき,落としどころを決めず,他の可能性を残しておくことが重要だ」の1項目,〈何もしないことを選択する力〉から「対象者の潜在能力を引き出すには,あえて支援者が何もしないことも方法だ」「対象者を見守るというケアをしばしば選択する」「対象者を見守ることが最善だと考えたとき,見守ることへの反対意見があっても迷わず選択できる」など5項目,〈何もしないでいられる力〉から「対象者に関心を寄せ観察している時間帯こそ,対象者のことをよく考えるようにしている」「余計な手出しをしないでいることは,対象者に暖かな関心を寄せ観察することだ」「対象者ないし周りの環境が変わるきかっけを待つようにしている」など6項目が抽出された.また,質的研究の分析結果から作成した4項目が含まれた.介入ありきではなく,対象者にとっての最善を立ち止まって考えた結果,共に在る姿勢を自然に実践できるかを問う項目が多く抽出された.共に在ることの大きな意義は安心感の提供という意義を有すると主張されている(吉浜,2011).不安の少ない環境に置かれることで患者は精神的危機の緩和につながる可能性がある.看護師を含む専門職者の存在は患者にとって環境要素(川口,2019)になる.共に在ることを実践するにはNCの態度が必須要素であると考えられた.また,「対象者ないし周りの環境が変わるきっかけを待つようにしている」は,膠着した時の心構えを示しており,待つという受動的な態度が,逆に患者が自らのペースで変化するためのスペースを提供することに繋がると考えられた.待つ間は従来の枠組みにとらわれず,予想外に対処する自由な構え(中井,2004)を持ち,絶え間なく対象者への肯定的関心が注がれ,観察が続行される.支援者の直接的な介入とは異なる時間的・状況的要因が作用する側面がある可能性が示唆された.

以上のように因子分析の結果では2因子となったが,内容としては考案した4つの構成要素,〈不確実性に耐える力〉〈安易に答えを出さずに考え続ける力〉〈何もしないことを選択する力〉〈何もしないでいられる力〉は2因子の中に包含されており,ほぼ同じと考えられた.尺度の総得点の範囲は29~174点であり,得点が高いほど精神保健福祉の専門職者としてNCが高いと解釈できる.

2. 併存妥当性・基準関連妥当性の検証

本研究では現象の本質にかかわる内容でありながら因子負荷量が0.4に満たなかった項目が2項目ある.「わからない状態が続くと不安になったり不快な感情が生まれることが多い」(項目10)は,不確実性に耐える力の項目であるが,わからない状態という表現が不確実性の高い状態とは捉えなかった可能性があると考えられた.「対象者を見守ることが最善だと考えたとき,見守ることへの反対意見があっても迷わず選択できる」(項目40)は,「見守る」が何もしないに含まれるとすると対象者に関心を寄せず,観察もせず,経過も見ない場合の何もしないとは意味が異なるので,両者の区別がしにくかった可能性が考えられた.

NCを測定できる既存の尺度が存在しないため,ER89およびSRS18の下位因子怒り・不機嫌との相関係数を算出した他,NC合計スコアを低群,中低群,中高群,高群の4群に分けER89の得点とで群間の平均値の差を一元配置分散分析にて併存妥当性を検討した.Ego-Resiliencyは,重篤な逆境の経験の前提にかかわらず自我制御を必要に応じて弾力的に柔軟に行える『個人の性格特性』である(奥上ら,2018).NCは「意見はこうだ」と言わずに誰かと一緒に過ごす力(谷川ら,2023)であり,自我の抑制はBeingの看護には欠かせない要素であることがわかる.

相関係数の算出では,NC合計スコアは,ER89とは弱いながらも正の相関(r = .157)が認められ,両概念の関連可能性が示唆された.なお,NC第1因子とは相関がなかった理由として,第1因子には自我抑制を必要に応じて弾力的に柔軟に行うのではなく,むしろ自我を発露して問題解決の方向性を持つ質問項目が多かったことが考えられた.SRS18の怒り・不機嫌因子とは弱い負の相関(r = –.263)が認められ,NCが高いほど,ストレスをコントロールでき,怒り・不機嫌といった不適応行動が抑制されることが示唆された.怒りは,縦の関係を強化し,相手を支配したい気持ち(野田,2017)を満たそうとする欲望が根底にあるが,第2因子の項目はケアする人とされる人という枠組みを外した役割を固定しない関係性において,静観が中心をなすケアである.第2因子と関連が認められなかった背景には,構成概念の差異が影響している可能性がある.

一元配置分散分析で検討した結果,ER89とNCの第2因子では低群と高群,中高群と高群に有意差が認められた.第2因子得点が高い群はER得点も高い傾向を示し,Being志向とEgo-Resiliencyとの関連があることを示唆する.SRS18の怒り・不機嫌因子の得点でも,NC低群と高群,中低群と高群で有意差があり,不確実性不寛容尺度得点が否定的な感情抑制能力と関連する(Shu et al., 2022)先行研究を支持する結果となった.

以上の結果から,本尺度は外的基準との関連が認められ,妥当性が示されたと言える.

3. 精神保健福祉の専門職者のNC尺度の活用方法について

本尺度の活用で職務態度をメタ認知できるほか,患者を尊重できているかの指標となる.第1因子の得点が低いと問題解決志向が強いことを認識でき.リスクを考慮して意識を変えることが可能になる.また,第2因子の得点が高いと患者に信頼を寄せ,敬意を手放していないことを確認できる.また,看護管理者がメンバーの成長や成功を最優先に支援し,その結果組織全体を導くサーバントリーダーシップに活かせる.また,スーパーバイザーが,対人援助上で苦境に立つスーパーバイジーへの支援に活かす等の応用も期待できる.さらに,リカバリー志向性を高める継続教育での研修の際の活用も有効である.

4. 本研究の限界と課題

本調査は,ID対応表を用いない横断調査であり調査対象者へのアクセスが難しく再検査法を実施していない.従って尺度の安定性を確認できておらずその検証範囲が限定的である.また,看護職と他職種のN数に大差がある.パーソナル・リカバリーと臨床的リカバリーとの一定の相関関係や,社会的リカバリーとの関連性が指摘されている(Leendertse et al., 2021)ことから,職種間比較のために,他職種から広くデータを収集する必要がある.

Ⅶ. 結論

精神保健福祉の専門職者によるNC自己評価尺度は「効率と成果を重視したdoing」,「観察中心のゆったりとしたbeing」の2因子29項目から構成されていた.本調査結果の範囲において一定の信頼性および妥当性が確認された.

付記:本研究の一部は,第35回日本精神保健看護学会学術集会・総会で発表した.

謝辞:本研究の実施に当たり,ご協力いただきました精神科病院の看護管理者,専門職者,ゼミ生,プレテスト協力者,査読者の先生方,および研究をご指導下さった日本福祉大学大学院の斉藤雅茂教授に深謝致します.

利益相反:本研究における利益相反は存在しない.

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