目的:外来通院中の冠動脈疾患患者の不眠と睡眠衛生との関連を明らかにする.
方法:外来通院中の75歳以下の冠動脈疾患患者を対象に睡眠と睡眠衛生に関する自己記入式質問紙調査を行った.分析は不眠群と非不眠群の比較のためにt検定とχ2検定を行い,睡眠衛生を含む不眠の関連要因は多変量ロジスティック回帰分析を行った.
結果:有効回答は227名,不眠の有症率は48.6%,平均睡眠時間は6.37 ± 1.4時間であった.不眠の関連要因は,不適切な睡眠衛生,睡眠不足の自覚,初発から1年未満の者,胸痛や胸の苦しさによる睡眠困難であった.
結論:冠動脈疾患患者の不眠には,適切な睡眠衛生と疾患特異性を考慮した対応が必要である.外来で可能な不眠に対する睡眠衛生の効果については今後の検証が求められる.
Objective: To determine the association between insomnia and sleep hygiene in outpatients with coronary artery disease.
Methods: Outpatients aged ≤75 years with coronary artery disease completed a questionnaire survey on sleep and sleep hygiene. The responses of patients with insomnia and those without insomnia were compared by t-tests and the χ2 test. The factors associated with insomnia were investigated by multivariate logistic regression analysis.
Results: A total of 227 valid responses were obtained. The prevalence of insomnia was 48.6%, and the mean sleep duration was 6.37 ± 1.4 h. Factors associated with insomnia included poor sleep hygiene, perceived sleep deprivation, a disease duration of <1 year, and difficulty sleeping due to chest pain or chest discomfort.
Conclusion: Appropriate sleep hygiene and disease-specific interventions are necessary for insomnia management in patients with coronary artery disease. Further verification is needed regarding the effectiveness of sleep hygiene interventions for insomnia that can be implemented in outpatient settings.
冠動脈疾患患者における不眠の有症率は約50%と報告されている(Zheng et al., 2023;von Känel et al., 2022).不眠は冠動脈疾患の危険因子であり(Zhang et al., 2024),なかでも発症後にみられる不眠は再発や死亡リスクを高めることが示されている(Frøjd et al., 2022).また,不眠はうつや不安(Zheng et al., 2023),死への恐怖(von Känel et al., 2022)といった心理的苦痛とも関連し,患者の心身両面に悪影響を及ぼしている.
冠動脈疾患を発症し入院した患者は,睡眠の質が低下し(Matsuda et al., 2017),入眠困難や入眠後の覚醒の増加,睡眠時間および睡眠効率が低下する(Madsen et al., 2019).この睡眠の質の低下は発症から1か月では回復せず,6か月にわたり緩やかに回復するものの(Schiza et al., 2010),12か月後で約半数の患者で不眠が持続するという報告もある(von Känel et al., 2022).日本の入院患者を対象とした研究では43.0%が不眠を有しており(Matsuda et al., 2017),外来患者も同様に不眠を有する可能性が高い.さらに,不眠に悩む心不全患者のうち医療機関を受診するのは30%にも満たず(志賀浪ら,2022),冠動脈疾患患者においても適切な治療や支援がなされていない可能性がある.諸外国における研究では,冠動脈疾患患者の不眠に関連する要因として疾患の重症度(Da Costa et al., 2017),Body Mass Index(以下,BMI)が高いこと(Almamari et al., 2019),糖尿病の既往(Szymanski et al., 2014),女性(Kjellsdotter et al., 2020),配偶者なし(Caska et al., 2009),低い教育レベル(Assari et al., 2013)などが報告されている.しかし,日本における冠動脈疾患患者の不眠の関連要因は明らかにされていない.
不眠は,睡眠・覚醒リズムの乱れや不適切な睡眠衛生,睡眠に対する誤った評価などによって慢性化する傾向があるため(岡島,2019),早期の支援が不可欠である.冠動脈疾患患者の睡眠の質を改善するには非薬物学的介入が重要とされ,認知行動療法や睡眠衛生,リラクゼーションなどの方法が提示されている(Park et al., 2024)が研究報告には限りがある.唯一,看護師主導の研究としてJohansson et al.(2014)は,外来通院中の冠動脈疾患患者の不眠に対して,睡眠衛生とリラクゼーションを含めたプログラムを実施し不眠の改善を報告している.しかし,睡眠衛生のみに焦点を当てた研究ではないため,冠動脈疾患患者と睡眠衛生の関連は明確ではない.
不眠に対する介入方法の一つとしての睡眠衛生は,睡眠に関する知識を活用して睡眠に影響する行動や環境を整えることで睡眠の改善や悪化を予防する(日本睡眠学会,2024).つまり睡眠衛生そのものが日常の生活習慣と密接に関連しているため,外来通院中の冠動脈疾患患者の不眠に関するセルフケア行動の改善に有用ではないかと考えている.
看護師が外来で睡眠衛生を活用した支援を行うことで,不眠の改善に貢献し,ひいては疾患の再発予防につながる可能性がある.そこで本研究は,外来通院中の冠動脈疾患患者の不眠と睡眠衛生との関連を明らかにし,不眠に対する看護支援に資することを目的とする.
本研究は,自記式による質問紙調査を用いた横断的記述的研究である.
2. 用語の定義不眠:先行研究(Hbaieb et al., 2025;Riemann et al., 2023)および睡眠障害の対応と治療ガイドライン(内山,2019)を参考に,不眠とは入眠障害,中途覚醒,早期覚醒などによる睡眠維持の障害,熟眠障害ならびにこれらの症状により日中の心身機能に影響を与えている,いずれかの症状がある状態と定義する.ピッツバーグ睡眠質問票(Pittsburgh Sleep Quality Index:以下,PSQI)に基づく申告による結果であり,医学的診断がついているか否かは問わないこととした.
睡眠衛生:睡眠問題の発生や悪化の予防,健康の維持・増進のために,適切な知識に基づいて生活習慣や睡眠習慣,環境を調整すること(日本睡眠学会,2024)とする.
3. 研究対象者研究対象者は,18歳以上から75歳未満の冠動脈疾患を発症し,外来に通院している者とした.また,退院後3か月は精神的に不安定な過程を経過する体験であり,この間に発症前の生活との折り合いをつけ,社会復帰をしていく(河村・稲垣,2015;平良・中村,2012)ため,退院後3か月以上経過した者とした.再発や追加の治療を受けた患者は,初発時よりも短期間での社会復帰が見込まれるため治療後1か月以上経過していれば研究対象とした.研究対象者の除外基準は,疾患による睡眠への影響を除外するため脳血管疾患の既往がある,精神疾患の診断を受け治療中である,透析治療を受けている,認知機能およびコミュニケーションに障害があると判断した者とした.不眠を訴える患者の中には,睡眠呼吸障害,レストレスレッグス症候群,周期性四肢運動障害,うつ病の患者が含まれることがある.これらは,疾患に適した治療が必要となるため,これらの診断が確定している患者は研究対象から除外した.さらに,交代勤務者は就寝・起床時刻が安定せずに交代勤務睡眠障害を生じることがあるため本研究の対象からは除外した.
4. 調査内容調査方法は,無記名の自記式質問紙調査および診療録から身体情報の収集とした.調査は,2施設で実施し,1名につき1回とし,外来の待ち時間を活用して記入してもらった.主治医の許可が得られた候補者に研究者が研究参加への依頼を行い,同意が得られた方を研究対象者とし,質問紙を配布した.質問紙の回収は,待合室に待機している研究者か外来スタッフに手渡しとした.本研究では,使用する質問紙の妥当性を評価するため外来通院中の冠動脈疾患患者4名(69~82歳)に予備調査を実施した.記入に要した時間,質問項目の分かりにくさ・答えにくさがないかを確認し,質問紙のレイアウトの修正を行った.また,75歳以上の高齢者では本人による記入が困難なケースが認められたこと,睡眠の様相が顕著に異なってくることが予測されたため,年齢の上限を設定した.調査は,2021年7月から12月に実施した.
1) 属性不眠の関連要因を検討するため,基本属性として年齢,身長・体重は診療録から調査し,喫煙の有無,飲酒習慣の有無,就労状況,同居者の有無,相談相手の有無,教育背景は質問紙で尋ねた.医学属性として,初発時の主な治療内容(経皮的冠動脈形成術,冠動脈バイパス術,薬物療法),初発からの経過年数,治療回数,併発疾患の有無,悪夢を引き起こす可能性のあるβ遮断薬(内山,2019)の内服状況,不眠はインスリンの感受性と関連している(日本睡眠学会,2024)ためHbA1c値を,貧血症状の易疲労感は(日本鉄バイオサイエンス学会,2024)日中の活動に影響を与える可能性があるためHb値を診療録から調査した.さらに,睡眠に影響する習慣や状況を詳細に把握するために睡眠背景として睡眠不足の自覚,運動習慣,昼寝の習慣,睡眠薬内服の有無を質問紙で調査した.未診断の睡眠呼吸障害の影響を考慮し,いびきの有無,睡眠中に呼吸が停止していると指摘された経験の有無を,夜間の排尿回数が多いほど主観的な睡眠が低下することから(Obayashi et al., 2015)夜間の排尿回数を調査した.
また,先行研究より再発・胸痛が夜間に起きることへの危惧や不安が睡眠に与える影響が明らかになっている(Siebmanns et al., 2020)ため,冠動脈疾患の発症により「心臓のことが心配で睡眠が困難」と現在生じている症状として「胸痛や胸の苦しさで睡眠が困難」について調査した.回答方法は,PSQIに従い困難な頻度がどの程度であったか(なし,1週間に1回未満,1~2回,3回以上)を尋ね,0~3点とした.さらに,液晶画面が放つブルーライトは,メラトニンの分泌を抑制するため就寝直前の慢性的な暴露は睡眠の質を低下させ(Wahl et al., 2019),スマートフォンに依存する傾向があるほど睡眠の質が悪化する(Zhu et al., 2024)ことが報告されている.そのため「就寝前に携帯電話(スマートフォン)を使用」「1日に1時間以上携帯電話(スマートフォン)を使用」の項目を質問紙に追加した.日本の冠動脈疾患の好発年齢である50歳代のスマートフォンの利用時間は64.6分,60歳代では54.1分であった(総務省,2021)ため,1時間以上を目安とした.追加した項目はSleep Hygiene Practices Scale(以下,SHPS)の質問項目に従い「まったくあてはまらない」から「いつもあてはまる」の6段階で問い,それぞれ1~6点とし,得点が高い方が不適切な行動とした.
2) 不眠不眠の評価は,質問紙などで主観的に測定する方法と睡眠ポリグラフ検査などによる客観的な方法がある.本研究では外来で調査を行うため,対象者の負担が少ない質問紙調査とし,PSQIを用いて不眠を判断した.PSQIは,Buysse et al.(1989)によって開発され,過去1か月における睡眠とその質を評価する.PSQIは①睡眠の質,②睡眠時間,③入眠時間,④睡眠効率,⑤睡眠困難,⑥眠剤使用,⑦日中の眠気などによる日常生活への支障の7つの要素(合計18項目)で構成される.質問紙は,就寝時刻,入眠時間,起床時刻,睡眠時間については数字で問い,それ以外に関しては4段階(なし,1週間に1回未満,1~2回,3回以上)の0~3点で,睡眠の質については非常に良いから非常に悪いの0~3点で問う内容になっている.合計0~21点が算出され,得点が高いほど睡眠が障害されていると評価する.PSQIは,様々な国で翻訳され,健常者の不眠のスクリーニングや睡眠障害のモニタリングに用いられ,不眠症状・睡眠の質を測定する研究において最も用いられている(岡島ら,2020).日本語版は土井ら(1998),Doi et al.(2000)によって信頼性・妥当性が確保され,カットオフ値は5.5点が推奨されている.本研究ではPSQI得点が6点以上を不眠がある者と判断することにした.この尺度は,使用許可の申請が不要であり,使用ルールに沿い,尺度開発を行った論文を引用文献に明記した.
3) 睡眠衛生睡眠衛生は,SHPSで調査した.SHPSは,Yang et al.(2010)によって,先行文献やガイドラインの知見を用いて作成された4つの下位尺度(合計30項目)からなる睡眠衛生の実践の程度を問う尺度である.各下位尺度は,第I因子が睡眠スケジュールとタイミング,第II因子が覚醒関連行動,第III因子が食事・飲酒行動,第IV因子が睡眠環境で構成される.第I因子の具体的な内容は,就寝・起床時刻が不定期かどうか,昼寝,光といった体内時計のリズムに影響を与える行動が含まれる.第II因子は,寝床で睡眠を妨害する行動や思考である.第III因子は就寝前の飲料,食事に関することでカフェインやアルコール,ニコチンの摂取である.第IV因子は寝室の環境や温度・湿度・音,寝具に関する内容で構成されている.各項目は「まったくあてはまらない」から「いつもあてはまる」の6段階で評価し,1~6点で総合得点が高いほど不適切な睡眠衛生と評価する.日本語版の信頼性と妥当性はHara et al.(2021)によって確保されている.使用に当たっては,開発者および知的所有権を持つ者の許可を得た.
5. 分析方法PSQIは総合得点を算出し,PSQI得点が6点以上を不眠群,5点以下を非不眠群として2群に分けた.冠動脈疾患患者の不眠の実態を把握するため睡眠時間,寝床に入り入眠するまでの時間を表す睡眠潜時,寝床にいた時間に対する睡眠時間の割合である睡眠効率については平均を算出し,対象者の多様性を明示するために範囲を併記した.SHPSは下位尺度および総合得点を算出した.追加した質問項目は各尺度とは別に項目毎に得点を算出した.基本属性,医学属性,睡眠背景について記述統計を行い,不眠の有無による属性の違いを明らかにするためにχ2検定,Fisherの正確確率検定を行った.2群のPSQIとSHPSの得点,追加した質問項目の胸痛の影響と携帯電話(スマートフォン)の使用における違いはt検定,不眠と睡眠衛生の関係を確認するためPearsonの相関係数を算出した.次いで,χ2検定で有意差が認められた場合,各列内のカテゴリ間で比率の差を検証するため,Bonferroni補正を適用したペアワイズZ検定を実施した.有意水準は5%未満とした.
さらに,冠動脈疾患患者の不眠の関連要因を把握するために不眠を目的変数とし,単変量解析の結果で有意水準5%未満の変数を説明変数とし,多変量解析として二項ロジスティック回帰分析の強制投入法を行った.不眠のリスクに関するOdds Ratio(以下,OR)および95% Confidence Interval(以下,95%CI)を算出した.加えて,多重共線性を回避するためにVariance Inflation Factor(以下,VIF)を確認した.すべての検定において両側検定を用い,有意水準は5%未満とした.分析には,SPSS statistics ver.29(IBM Corporation, Tokyo)を使用した.
研究対象者に対して,研究者が文書を用いて口頭で研究目的や趣旨,研究への協力は自由意思に基づくこと,途中で辞退することも可能であることを説明した.質問紙の冒頭に研究への同意について確認する事項を設けた.なお,本研究は沖縄県立看護大学研究倫理審査委員会の承認(承認番号:21001)および調査実施施設の倫理審査委員会の承認(承認番号:R03R007, R03R012)を受け,実施した.
調査期間中に,研究対象の選定基準を満たした外来患者は251名であり,238名から同意が得られた.そのうち,回答中に診察に呼ばれ途中辞退した者が1名,夜勤従事者が5名,他院で睡眠呼吸障害の治療・透析を開始した者が2名,回答の欠損があった者3名を除いた227名(有効回答率95.8%)を分析対象とした.
1. 冠動脈疾患患者の不眠の実態PSQIの結果から不眠の状況を表1に示す.平均睡眠時間は6.37 ± 1.4時間(範囲:2~10),睡眠潜時の平均は26.44 ± 32.5分(範囲:0~240),睡眠効率は88.81 ± 19.1%(範囲:30~175)であった.PSQI得点は,6.19 ± 3.5点(範囲:1~18)であり,不眠群は9.0 ± 2.8点で108名(48.6%),非不眠群は3.61 ± 1.2点で119名(52.4%)であった.不眠群の睡眠時間は5.52 ± 1.2時間,非不眠群は7.14 ± 1.1時間であった.PSQIの7つすべての要素において不眠群は非不眠群よりPSQI得点が有意に高かった(p < .001).
| 調査内容および項目 | 全体 n = 227 |
非不眠群a n = 119(52.4%) |
不眠群a n = 108(48.6%) |
p値† |
|---|---|---|---|---|
| Mean ± SD | Mean ± SD | Mean ± SD | ||
| PSQI得点 | 6.19 ± 3.5 | 3.61 ± 1.2 | 9.0 ± 2.8 | <.001 |
| 睡眠時間(時間) | 6.37 ± 1.4 | 7.14 ± 1.1 | 5.52 ± 1.2 | <.001 |
| 睡眠潜時(分) | 26.44 ± 32.5 | 14.18 ± 9.9 | 39.94 ± 42.1 | <.001 |
| 睡眠効率(%) | 88.81 ± 19.1 | 97.37 ± 12.1 | 79.38 ± 20.8 | <.001 |
| C1.睡眠の質 | 1.35 ± 0.6 | 1.00 ± 0.4 | 1.74 ± 0.6 | <.001 |
| C2.入眠時間 | 1.09 ± 1.0 | 0.56 ± 0.7 | 1.67 ± 1.0 | <.001 |
| C3.睡眠時間 | 1.35 ± 1.0 | 0.79 ± 0.8 | 1.96 ± 0.8 | <.001 |
| C4.睡眠効率 | 0.59 ± 1.0 | 0.07 ± 0.3 | 1.18 ± 1.2 | <.001 |
| C5.睡眠困難 | 1.11 ± 0.4 | 0.97 ± 0.3 | 1.28 ± 0.5 | <.001 |
| C6.眠剤の使用 | 0.24 ± 0.8 | 0.00 ± 0.0 | 0.50 ± 1.1 | <.001 |
| C7.日中覚醒困難 | 0.46 ± 0.7 | 0.24 ± 0.5 | 0.71 ± 0.8 | <.001 |
Mean:平均 SD(standard deviation):標準偏差
a PSQI:Pittsburgh Sleep Quality Index(ピッツバーグ睡眠評価票)により,5点以下を非不眠群,6点以上を不眠群とした.
† t検定,有意水準はp < .05とした.
研究対象者の基本属性を表2に示す.平均年齢は64.5 ± 7.3歳,男性が176名(77.5%),肥満度はBMI ≧ 25が119名(52.5%),現在喫煙している者は40名(17.6%),飲酒の習慣があるものは88名(38.8%)であった.就労している者は133名(58.6%),単身者は51名(22.5%)であった.困ったことを相談できる相手がいる者は223名(98.2%),学歴は高等学校を卒業している者が最も多く100名(44.0%)であった.不眠の有無によって基本属性に有意な差は認められなかった.
| 調査内容および項目 | 全体 n = 227 |
非不眠群a n = 119(52.4%) |
不眠群a n = 108(48.6%) |
p値† | |
|---|---|---|---|---|---|
| n(%) | n(%) | n(%) | |||
| 年齢 | Mean ± SD | 64.5 ± 7.3 | 64.7 ± 7.1 | 64.2 ± 7.6 | .639 |
| 50歳未満 | 8(3.5) | 2(1.7) | 6(5.6) | .341 | |
| 50~59歳 | 45(19.8) | 26(21.8) | 19(17.6) | ||
| 60~69歳 | 111(48.9) | 56(47.1) | 55(50.9) | ||
| 70歳以上 | 63(27.8) | 35(29.4) | 28(25.9) | ||
| 性別 | |||||
| 男性 | 176(77.5) | 95(79.8) | 81(75.0) | .384 | |
| 女性 | 51(22.5) | 24(20.2) | 27(25.0) | ||
| Body Mass Index(BMI) | |||||
| やせ(<18.5) | 1(0.4) | 1(0.8) | 0(0.0) | .372 | |
| 標準 | 107(47.1) | 52(43.7) | 55(50.0) | ||
| 肥満(≧25) | 119(52.5) | 66(55.5) | 53(49.1) | ||
| 喫煙 | |||||
| あり | 40(17.6) | 17(14.3) | 23(21.3) | .166 | |
| なし | 187(82.4) | 102(85.7) | 85(78.7) | ||
| 飲酒 | |||||
| あり | 88(38.8) | 46(38.7) | 42(38.9) | .971 | |
| なし | 139(61.2) | 73(61.3) | 66(61.1) | ||
| 就労 | |||||
| あり | 133(58.6) | 71(59.7) | 62(57.4) | .730 | |
| なし | 94(41.4) | 48(40.3) | 46(42.6) | ||
| 同居 | |||||
| 同居している | 176(77.5) | 92(77.3) | 84(77.8) | .933 | |
| 単身である | 51(22.5) | 27(22.7) | 24(22.2) | ||
| 相談する相手 | |||||
| 相談する相手がいる | 223(98.2) | 117(98.3) | 106(98.1) | .922 | |
| 相談する相手はいない | 4(1.8) | 2(1.7) | 2(1.9) | ||
| 最終学歴 | |||||
| 中学校 | 47(20.7) | 22(18.5) | 25(23.1) | .565 | |
| 高等学校 | 100(44.0) | 50(42.0) | 50(46.3) | ||
| 専門学校 | 19(8.4) | 11(9.2) | 8(7.4) | ||
| 短期大学 | 10(4.4) | 7(5.9) | 3(2.8) | ||
| 大学 | 46(20.3) | 25(21.0) | 21(19.5) | ||
| 大学院 | 5(2.2) | 4(3.4) | 1(0.9) | ||
Mean:平均 SD(standard deviation):標準偏差
a Pittsburgh Sleep Quality Index(ピッツバーグ睡眠評価票)により,5点以下を非不眠群,6点以上を不眠群とした.
† χ2検定,有意水準はp < .05とした.
研究対象者の医学属性を表3に示す.冠動脈疾患の治療は,経皮的冠動脈形成術が189名(83.3%)と大部分を占めた.初発からの経過年数の平均は6.1 ± 6.5年であり,発症から1年以上5年未満が115名(50.6%)と多かった.冠動脈疾患の治療回数は,1回以下が最も多く158名(69.6%)であった.半数以上の研究対象者が併発していたのは,脂質異常症143名(63.0%),高血圧症126名(55.5%),糖尿病119名(52.2%)であった.悪夢を引き起こす要因として指摘されているβ遮断薬の内服をしていたのは116名(51.6%)であった.HbA1cが合併症予防の指標値である7.0%より超えていた者は53名(47.3%),Hbの基準値未満は18名(13.5%)であった.初発からの経過年数では,1年未満の者において不眠が有意に多かった(p = .032).
| 調査内容および項目 | 全体 n = 227 |
非不眠群a n = 119(52.4%) |
不眠群a n = 108(48.6%) |
p値† | ||
|---|---|---|---|---|---|---|
| n(%) | n(%) | n(%) | ||||
| 治療方法 | ||||||
| 経皮的冠動脈形成術 | 189(83.3) | 97(81.5) | 92(85.2) | .760 | ||
| 冠動脈バイパス術 | 26(11.4) | 15(12.6) | 11(10.2) | |||
| 薬物療法のみ | 12(5.3) | 7(5.9) | 5(4.6) | |||
| 初発からの経過年数 Mean ± SD | 6.1 ± 6.5 | 6.6±6.6 | 5.5±6.3 | .210 | ||
| 1年未満 | 12(5.3) | 2(1.7) | 10(9.3)b | .032 | ||
| 1年以上5年未満 | 115(50.6) | 58(48.7) | 57(52.8) | |||
| 5年以上10年未満 | 46(20.3) | 25(21.0) | 21(19.4) | |||
| 10年以上 | 54(23.8) | 34(28.6) | 20(18.5) | |||
| 治療回数(経皮的冠動脈形成術・冠動脈バイパス術) | ||||||
| 1回以下 | 158(69.6) | 84(70.6) | 74(68.8) | .735 | ||
| 2回以上 | 69(30.4) | 35(29.4) | 34(31.2) | |||
| 疾患の併発(複数回答) | ||||||
| 循環器系 | 高血圧症 | 126(55.5) | 67(56.3) | 59(54.6) | .800 | |
| 不整脈 | 36(15.7) | 21(17.6) | 15(13.9) | .439 | ||
| 心不全 | 22(9.7) | 12(10.1) | 10( 9.3) | .834 | ||
| 弁疾患 | 12(5.3) | 7(5.9) | 5( 4.6) | .674 | ||
| 心肺停止 | 8(3.5) | 3(2.5) | 5( 4.6) | .390 | ||
| その他 | 脂質異常症 | 143(63.0) | 72(60.5) | 71(65.7) | .414 | |
| 糖尿病 | 119(52.2) | 59(49.6) | 60(55.6) | .368 | ||
| 慢性腎臓病 | 29(12.8) | 15(12.6) | 14(13.0) | .936 | ||
| がん | 13(5.7) | 6(5.0) | 7( 6.5) | .641 | ||
| 喘息 | 12(5.3) | 5(4.2) | 7( 6.5) | .443 | ||
| リウマチ | 4(1.8) | 3(2.5) | 1( 0.9) | .362 | ||
| β遮断薬の内服c | ||||||
| 内服している | 116(51.6) | 59(49.6) | 57(53.8) | .270 | ||
| 内服していない | 109(48.4) | 60(50.4) | 49(46.2) | |||
| HbA1c値d | ||||||
| 基準値未満 | 58(52.7) | 31(58.5) | 27(46.6) | .208 | ||
| 基準値以上 | 53(47.3) | 22(41.5) | 31(53.4) | |||
| Hb値e | ||||||
| 基準値未満 | 18(13.5) | 10(15.2) | 8(11.9) | .588 | ||
| 基準値以上 | 115(86.5) | 56(84.8) | 59(88.1) | |||
Mean:平均 SD(standard deviation):標準偏差
a PSQI:Pittsburgh Sleep Quality Index(ピッツバーグ睡眠評価票)により,5点以下を非不眠群,6点以上を不眠群とした.
b Bonferroni補正を適用したZ検定により1年未満のみ非不眠群と不眠群においてp < .05で有意な差があった.
c n = 225
d HbA1c値は糖尿病標準診療マニュアルによる合併症予防のための治療目標7.0%を基準とした,n = 111.
e Hb値は日本臨床検査専門会が示す貧血の目安である成人男性13 g/dLを基準とした,n = 133.
† χ2検定.有意水準はp < .05とした.
研究対象者の睡眠背景を表4に示す.睡眠不足の自覚がある者は88名(38.8%)であった.運動習慣のある者が119名(52.4%),昼寝の習慣がある者は80名(35.2%)であり,平均時間は38.66 ± 30.4分,30分以内は52名(65%)であった.睡眠薬の定期的な内服をしている者は19名(8.4%)であった.夜間排尿3回以上が42名(18.5%)であった.
| 調査内容および項目 | 全体 n = 227 |
非不眠群a n = 119(52.4%) |
不眠群a n = 108(48.6%) |
p値† | ||
|---|---|---|---|---|---|---|
| n(%) | n(%) | n(%) | ||||
| 睡眠不足の自覚の有無 | ||||||
| あり | 88(38.8) | 14(11.8) | 74(68.5) | <.001 | ||
| なし | 139(61.2) | 105(88.2) | 34(31.5) | |||
| 運動習慣の有無 | ||||||
| ありb | 119(52.4) | 69(58.0) | 50(46.3) | .078 | ||
| ウォーキング・ジョギング | 75(65.8) | |||||
| 体操・ストレッチ・筋力トレーニング | 12(10.6) | |||||
| 自転車(エアロバイク含む) | 11(9.6) | |||||
| ゴルフ・テニスなどのスポーツ | 11(9.6) | |||||
| 農作業 | 5(4.4) | |||||
| なし | 108(47.6) | 50(42.0) | 58(53.7) | |||
| 昼寝の習慣の有無 | ||||||
| あり | 80(35.2) | 49(41.2) | 31(28.7) | .049 | ||
| なし | 147(64.8) | 70(58.8) | 77(71.3) | |||
| 睡眠薬の定期的な内服の有無 | ||||||
| あり | 19(8.4) | 0(0.0) | 19(17.6) | <.001‡ | ||
| なし | 208(91.6) | 119(100.0) | 89(82.4) | |||
| 大きないびきの有無 | ||||||
| あり | 93(41.0) | 44(37.0) | 49(45.4) | .199 | ||
| なし | 134(59.0) | 75(63.0) | 59(54.6) | |||
| 睡眠中に呼吸が停止していると指摘された経験の有無 | ||||||
| あり | 57(25.1) | 26(21.8) | 31(28.7) | .234 | ||
| なし | 170(74.9) | 93(78.2) | 77(71.3) | |||
| 夜間排尿の回数 | ||||||
| 3回未満 | 185(81.5) | 104(87.4) | 81(75.0) | .016 | ||
| 3回以上 | 42(18.5) | 15(12.6) | 27(25.0) | |||
| 調査内容および項目 | 全体 (n = 227) |
非不眠群a n = 119(52.4%) |
不眠群a n = 108(48.6%) |
p値§ |
|---|---|---|---|---|
| Mean ± SD | Mean ± SD | Mean ± SD | ||
| PSQIと共に調査した項目c | ||||
| 胸痛や胸の苦しさで睡眠が困難 | 1.09 ± 0.3 | 1.03 ± 0.2 | 1.16 ± 0.4 | <.001 |
| 心臓のことが心配で睡眠が困難 | 1.19 ± 0.4 | 1.09 ± 0.3 | 1.29 ± 0.5 | <.001 |
| SHPSと共に調査した項目d | ||||
| 就寝前に携帯電話(スマートフォン)を使用 | 2.12 ± 1.6 | 1.89 ± 1.4 | 2.37 ± 1.8 | .025 |
| 1日に1時間以上携帯電話(スマートフォン)を使用 | 2.23 ± 1.7 | 2.11 ± 1.5 | 2.36 ± 1.9 | .265 |
Mean:平均 SD(standard deviation):標準偏差
a PSQI:Pittsburgh Sleep Quality Index(ピッツバーグ睡眠評価票)により,5点以下を非不眠群,6点以上を不眠群とした.
b 運動習慣があると回答した119名のうち実施内容の記載があった者,n = 114.
c 研究者がPSQIと共に調査した項目,各項目0~3点.
d 研究者がSHPSと共に調査した項目,各項目1~6点.
† χ2検定,有意水準はp < .05とした.
‡ Fisherの正確確率検定,有意水準はp < .05とした.
§ t検定,有意水準はp < .05とした.
不眠の有無と有意な差があったのは,睡眠不足の自覚の有無(p < .001),昼寝の習慣の有無(p = .049),睡眠薬の定期的な内服の有無(p < .001),夜間排尿の回数(p = .016)であった.睡眠不足の自覚がある者は不眠群に多く,昼寝の習慣がある者は非不眠群の者が多かった.睡眠薬の定期的な内服をしている者は不眠群であり,非不眠群で睡眠薬を内服している者はいなかった.夜間排尿の回数が3回以上の者は不眠群が多かった.
また,胸痛や胸の苦しさで睡眠が困難(p < .001),心臓のことが心配で睡眠が困難(p < .001)では不眠群の点数が有意に高かった.「就寝前に携帯電話(スマートフォン)を使用している」は不眠群で点数が有意に高く(p = .025),スマートフォンを1日1時間以上使用しているかどうかについては2群間で有意な差はなかった.
5. 睡眠衛生の実施状況と不眠の有無による比較SHPSの結果から睡眠衛生の実施状況と不眠の有無との比較を表5に示す.SHPSの平均得点は62.21 ± 16.3点,不眠群は68.41 ± 16.2点,非不眠群は56.59 ± 14.3点であり,有意な差があった(p < .001).SHPSの下位尺度で関連がみられたのは,第I因子 睡眠スケジュールとタイミング(p < .001),第II因子 覚醒関連行動(p < .001),第IV因子 睡眠環境(p = .006)であった.また,PSQI得点とSHPS得点は有意な正の相関を示した(r = 0.47, p < .001).
| 調査内容および項目(得点範囲) | 全体 n = 227 |
非不眠群a n = 119 (52.4%) |
不眠群a n = 108 (48.6%) |
p値† |
|---|---|---|---|---|
| Mean ± SD | Mean ± SD | Mean ± SD | ||
| SHPS得点b(30~120) | 62.21 ± 16.3 | 56.59 ± 14.3 | 68.41 ± 16.2 | <.001 |
| 第I因子:睡眠スケジュールとタイミング(7~42) | 16.96 ± 6.0 | 15.18 ± 5.3 | 18.93 ± 6.1 | <.001 |
| 第II因子:覚醒関連行動(9~54) | 18.53 ± 6.3 | 16.06 ± 4.9 | 21.26 ± 6.7 | <.001 |
| 第III因子:食事・飲酒行動(6~36) | 12.61 ± 4.7 | 12.15 ± 4.6 | 13.12 ± 4.8 | .125 |
| 第IV因子:睡眠環境(8~48) | 14.10 ± 5.3 | 13.19 ± 4.7 | 15.10 ± 5.6 | .006 |
Mean:平均 SD(standard deviation):標準偏差
a PSQI:Pittsburgh Sleep Quality Index(ピッツバーグ睡眠評価票)により,5点以下を非不眠群,6点以上を不眠群とした.
b SHPS:Sleep Hygiene Practices Scaleは,睡眠衛生の側面を4つの要素で査定する質問紙である.質問項目に対し1~6点であり,総合得点が高いほど睡眠衛生が不適切となる.
† t検定,有意水準はp < .05とした.
不眠を目的変数とし,「発症からの経過年数」,「睡眠不足の自覚」,「昼寝の習慣」,「夜間排尿の回数」,「胸痛や胸の苦しさで睡眠が困難」,「心臓のことが心配で睡眠が困難」,「SHPS得点」,「就寝前に携帯電話(スマートフォン)を使用」を説明変数として投入した二項ロジスティック回帰分析の結果を表6に示す.ただし,睡眠薬に関しては非不眠群の者で内服している者がいなかったため回帰分析では変数から除外した.関連が見られた要因は,初発からの経過年数が1年未満(OR: 7.619, 95%CI: 1.013~57.299, p = .049),睡眠不足の自覚(OR: 13.638, 95%CI: 6.212~29.941, p = <.001),胸痛や胸の苦しさで睡眠が困難(OR: 6.064, 95%CI: 1.159~31.726, p = .033),SHPS得点(OR: 1.028, 95%CI: 1.003~1.052, p = .025)であった.
| 独立変数 | β | OR(95%CI) | p |
|---|---|---|---|
| 初発からの経過年数a | |||
| 1年未満 | 2.031 | 7.619(1.013~57.299) | .049 |
| 5年未満 | .652 | 1.920(0.810~4.552) | .138 |
| 10年未満 | .482 | 1.620(0.567~4.626) | .368 |
| 10年以上 | Reference | Reference | |
| 睡眠不足の自覚b | 2.613 | 13.638(6.212~29.941) | <.001 |
| 昼寝の習慣c | .660 | 1.935(0.908~4.124) | .087 |
| 夜間排尿の回数d | .104 | 1.110(0.427~2.881) | .831 |
| 胸痛や胸の苦しさで睡眠が困難e | 1.802 | 6.064(1.159~31.726) | .033 |
| 心臓のことが心配で睡眠が困難e | –.039 | 0.962(0.319~2.895) | .944 |
| SHPS得点f | .027 | 1.028(1.003~1.052) | .025 |
| 就寝前に携帯電話(スマートフォン)を使用g | –.044 | 0.957(0.758~1.209) | .712 |
| χ2値Model Chi-Square | <.001 | ||
| Hosmer & Lemeshowの検定 | .530 | ||
| 判別的中率(%) | 78.9 | ||
| Nagelkerke R2 | .500 | ||
| VIF | 1.022~1.477 | ||
二項ロジスティック回帰分析:強制投入法 β:偏回帰係数 OR:Odds Ratio 95%CI:95% Confidence Interval VIF:Variance Infation Factor
a 発症からの経過年数(1年未満:1,5年未満:2,10年未満:3,10年以上:4)
b 睡眠不足の自覚(なし:1,あり:2)
c 昼寝の習慣(なし:1,あり:2)
d 夜間の排尿回数(3回以下:1,3回以上:2)
e 追加して調査した項目,0~3点,1点増加毎
f SHPS:Sleep Hygiene Practices Scaleは,睡眠衛生の側面を4つの要素で査定する質問紙である.質問項目に対し1~6点であり,総合得点が高いほど睡眠衛生が不適切となる.1点増加毎
g 追加して調査した項目,1~6点,1点増加毎
本研究の結果,外来通院中の冠動脈疾患患者の約半数が不眠であり,不眠の者は不適切な睡眠衛生との関連がみられた.そのほか不眠に関連していたのは初発から1年未満の者,睡眠不足の自覚,胸痛や胸の苦しさであった.冠動脈疾患患者の不眠と睡眠衛生との関連について考察し,看護支援を検討する.
1. 冠動脈疾患患者の不眠の特徴冠動脈疾患患者の不眠は45~57.6%に見られ(Zheng et al., 2023;Frøjd et al., 2022;von Känel et al., 2022),心筋梗塞患者を対象にした調査ではPSQI得点は6.95 ± 2.82と報告されている(Almamari et al., 2019).これらは国外の調査結果であるが,本研究においても外来通院中の患者の不眠の有症率とPSQI得点は同程度であった.外来通院中の約半数の冠動脈疾患患者は不眠を有しており,再発のリスクが上昇することが懸念されるため,不眠の改善に向けた看護支援が必要である.
また,本研究では先行研究で不眠の関連要因として報告されていた性別やBMIなどの基本属性,併発疾患などとの関連はみられなかった.関連があったのは,「初発から1年未満」「胸痛や胸の苦しさで睡眠が困難」であり,冠動脈疾患の経過や症状が不眠に影響していると考える.冠動脈疾患は,突然発症し,胸痛や胸部圧迫感,冷や汗といった特徴的な症状を呈し,救急搬送や緊急で冠動脈バイパス術や経皮的冠動脈形成術を行い,入院となるなど患者を取り巻く環境は目まぐるしく変化するという特徴を持つ.冠動脈疾患を発症した後,16%の者が退院後にPTSDの可能性があり,PTSD症状が高いほど半年後の睡眠時間が短く,睡眠時間が短いと半年後のPTSD症状が高いことが指摘されている(Cornelius et al., 2024).さらに冠動脈疾患患者は,体験した胸痛が再度起きるのではないかという不安を持ち(Ito & Kamata, 2011),胸痛は睡眠パターンに影響しており(Cross et al., 2010),胸痛の体験は睡眠薬を飲まないと眠れないほどと指摘されている(迫田,2017).したがって初発からの経過年数が浅い患者に不眠が多かったのは,発症に伴う影響が強く関与していたためと考える.
冠動脈疾患発症後の胸痛は,再発や冠攣縮性狭心症などの可能性があり(日本循環器学会ら,2023;日本循環器学会ら,2019),適切な受診,治療へ繋げる必要がある.一方で胸痛で救急外来を受診する患者のうち急性冠症候群と診断されるのは約15%であり,多くは心臓に問題はなく生命の危険性は低いと報告されている(Al-Zaiti et al., 2019).したがって,冠動脈疾患患者の不眠に影響を与える胸痛は病態と心理面の両方が関与していると考えられ,その両方が入眠を困難にし睡眠潜時を延長させる,もしくは途中覚醒を促すこととなり睡眠の質に影響を及ぼしていると推測される.冠動脈疾患患者の不眠を支援するためには,胸痛や冠動脈疾患発症の体験と疾患特有の症状である胸痛を踏まえた支援が必要である.
さらに,睡眠の量だけでなく主観的な睡眠の質の評価が悪いと冠動脈疾患の発症リスクを高める(Kwok et al., 2018)と報告されており,本研究で不眠と睡眠不足の自覚の有無に関連があったことから,睡眠不足の自覚をスクリーニングに活用することが可能と考える.しかし,主観的な睡眠評価と客観的な睡眠評価が必ずしも一致しないこと,客観的に重度な睡眠不足である者は睡眠時間を過大評価し,主観的な不眠を訴えるが客観的に不眠がない者は睡眠時間を過小評価していることが指摘されている(Masaki et al., 2025).本研究においても睡眠不足の自覚がある者の11.8%はPSQI得点が低く,自覚はないがPSQI得点の高い者が不眠の31.5%を占めた.そのため,睡眠の重要性を認識できるよう冠動脈疾患患者に対して,睡眠衛生教育を行うことが重要である.適切な睡眠時間や睡眠が冠動脈疾患に与える影響について患者が理解することにより過小・過大評価の予防にもなると考える.
これらから,冠動脈疾患患者の半数が不眠を有しており,疾患による症状や体験から影響を受けているため,外来でスクリーニングを行い,症状に応じた支援を展開する必要がある.
2. 冠動脈疾患患者の不眠と睡眠衛生冠動脈疾患患者のPSQI得点とSHPS得点は正の相関を示し,睡眠の質が悪いほど睡眠衛生が不適切であった.SHPSの下位尺度の分析では,睡眠スケジュールとタイミング,覚醒関連行動,睡眠環境は有意に関連しており,食事・飲酒行動は関連が見られなかった.睡眠スケジュールとタイミングでは,就寝・起床時刻を一定にし,規則正しい生活リズムが求められる.睡眠不足を感じ,不足を補うために就寝時刻を早めると起床時刻が前倒しになってしまい不規則な生活リズムとなる.特に冠動脈疾患の好発年齢である50歳代からは就寝時刻の前倒しが起きやすく,中途覚醒の回数が増えるなど睡眠の変化が生じてくる時期(田ヶ谷ら,2020)でもある.そのため,安易に就寝・起床時刻をずらさないよう,睡眠衛生教育が必要である.
覚醒関連行動では,寝床や寝室の環境が眠れるという意識を維持し,その関連を弱める行動を回避することが求められる.眠れずに寝床に居続けることは不眠と寝床が関連付けられ,寝床に行くと目が冴えるという状況を作り出すため推奨されていない(日本睡眠学会教育委員会,2020).寝床に着いたら入眠できる習慣を整えられることが望ましい.そのため,今日は眠れるのかと考え事をすることやテレビ・ラジオなどの刺激も回避する必要がある.睡眠に対する不安や能動的・双方向的なスクリーンタイムは脳へ刺激が加わり,眠気を消失させてしまい(Hale & Guan, 2015),睡眠潜時を増加させる.睡眠潜時が増加することにより,眠れないという意識を助長し,さらに睡眠潜時が増えるという悪循環に陥る.そのため,眠れない時は30分を目安として寝床から離れるなど睡眠潜時を延長させない対応を教育しておくことも効果的と考える.
睡眠環境は,室温や湿度,照明が含まれ,これらは知識の獲得により患者が取り組めることが多い内容だと考える.住宅環境や家族の状況などにより改善が難しい状況もあるため,患者ができることから取り組めるよう情報提供を行っていく必要がある.
3. 看護支援への示唆本研究の結果より,冠動脈疾患患者の不眠に対して睡眠衛生を改善していく看護支援の必要性が明確となった.具体的には,外来における不眠のスクリーニングと睡眠衛生教育の実施が重要である.スクリーニングには,睡眠不足の自覚を活用し,必要な患者に対して睡眠を評価する質問票と睡眠衛生に関する情報収集を行い,適切な診断や治療へ繋がるよう支援することが望ましい.睡眠を評価する尺度には,質を評価するPSQIや位相・量・質を測定する3次元型睡眠尺度などが用いられる(岩根ら,2025)が,外来患者全員に対して実施するには外来スタッフの負担が大きいと推測する.我が国の外来診療は必要最小限の看護師数で行っている状況が多いため現実的ではない.特に,不眠と関連のあった初発から1年未満の者,胸痛等で睡眠困難が生じている者は不眠になるリスクが高い者として対応する必要がある.さらに,不眠の者に対してはSHPSなどの質問票を用いて睡眠衛生に関して間違った認識や行動がないか,適切に実施されない背景などを患者との対話から明らかにし,不適切な睡眠衛生を修正できるよう支援していく必要がある.そのため,睡眠に対する関心を高め,正しい知識を普及させるためには,入院中から睡眠衛生教育を受けられる体制の整備が望ましい.また,睡眠衛生教育を実施できる看護師の育成も重要である.
4. 研究の限界1つ目に本研究は,横断的研究であるため不眠の評価をしているが一時点での調査であり,長期的な睡眠を反映したものではない.2つ目に,冠動脈疾患の重症度は経過年数の違いにより収集することが困難であり分析することができなかった.今後は初発から長期的に睡眠状況の変化と疾患の重症度の影響を明らかにする必要がある.3つ目に,睡眠は不安やうつにより影響を受けるが本研究では研究対象者の回答への負担を考慮し,不安・うつを評価する調査は実施していない.そのため,冠動脈疾患患者の不眠と心理状態との関連は検証できていない.また,本研究の調査期間はCovid-19が蔓延していた時期であり,研究対象者の睡眠と心理状態に影響をもたらした可能性がある.外来の看護師配置の少ない状況の中で,心理状態を含めどのように不眠の患者を抽出し,適切な支援を行うことができるのかを検討していく必要がある.
外来通院中の冠動脈疾患患者の約半数が不眠を有し,不眠には睡眠衛生,睡眠不足の自覚,初発から1年未満の者,胸痛や胸の苦しさによる睡眠困難の4つが関連していた.不眠と睡眠不足の自覚は関連があり,外来において不眠のスクリーニングとして活用できる可能性がある.さらに,初発から1年未満の者,胸痛・苦しさで睡眠が困難な者は不眠になるリスクが高い者として対応し,睡眠や睡眠衛生を評価する尺度を活用して患者の不眠の程度や睡眠衛生の特徴を把握し,対応していく必要がある.冠動脈疾患患者に対する睡眠衛生教育では,胸痛・発症の体験に配慮したうえで就寝・起床時刻などの乱れや睡眠を妨げる行為,睡眠環境に対して支援していくことが必要である.
付記:本稿は,沖縄県立看護大学大学院保健看護学研究科に提出した博士論文の一部に加筆・修正を加えたものであり,また,一部を第43回日本看護科学学会学術集会において発表した.
謝辞:本研究の実施にあたり,研究の趣旨にご賛同いただき,ご協力くださいました研究対象者の皆様に心より御礼申し上げます.また,研究フィールドの使用にご協力いただきました各施設の看護部長様,ならびに外来スタッフの皆様に深く感謝申し上げます.本研究は,山路ふみ子専門看護教育研究助成基金,沖縄県看護学術振興財団より助成を受けて実施した.
利益相反:本研究における利益相反は存在しない.
著者資格:YTは研究の着想,データ収集,分析,原稿の執筆までの研究全体を行った.MKは研究プロセス全体への助言を行った.すべての著者は最終原稿を読み,承認した.