2026 年 46 巻 p. 954-966
目的:在宅療養児・者と生活するきょうだいの小児期・青年期の体験について知見を整理し,包括的に明らかにする.
方法:スコーピング・レビュー(Arksey & O’Malley)を実施した.国内3つのデータベースを用いて特定された220文献をスクリーニングし,包含基準に適合する文献を採用した.19の対象文献よりきょうだいの体験を抽出し,要約した.
結果:きょうだいの体験は,あらゆる発達段階と家庭内外の体験を含み,5側面へ分類された.〔同胞の存在と関係性〕〔同胞の健康障害とケア〕〔家族と日常生活〕の体験は,嫌悪と労い,喜びと苦悩,不満と感謝といった相反するもので構成され,〔友人関係と社会参加〕〔進路選択と家族の構築〕の体験は,不遇や葛藤,諦めを含んでいた.
結論:きょうだいを支える包括的支援の充足が課題とされ,少なかった医療的ケア児・者のきょうだいを含め,さらなる研究や実践知の蓄積が望まれた.
Purpose: This scoping review aims to organize information about the experiences of siblings who live with home-care patients from childhood to adolescence and to comprehensively synthesize their experiences.
Methods: This scoping review was based on a framework proposed by Arksey & O’Malley (2005). In total, 220 studies were identified using three domestic databases and screened based on the inclusion criteria. Data related to siblings’ experiences were extracted from 19 eligible studies, and categories were derived and summarized.
Results: Siblings’ experiences ranged widely across all developmental stages, both inside and outside the home. These experiences were classified according to five dimensions: 1. the presence and relationships of home-care patients, 2. health problems and care of home-care patients, 3. family and daily life, 4. friendships and social participation, and 5. career choices and family building. Experiences related to the “presence and relationships of home-care patients,” “health problems and care of home-care patients,” and “family and daily life” triggered conflicting emotions such as aversion and appreciation, joy and suffering, and dissatisfaction and gratitude. On the other hand, experiences falling within the “friendships and social participation” and “career choices and family building” dimensions led to feelings of misfortune, conflict, and resignation.
Conclusions: The need to provide comprehensive support for siblings was highlighted, making further research and accumulation of practical knowledge essential, including concerning siblings of patients requiring medical care, who were underrepresented in this review.
世界的に少子化が進むなか,我が国では,2023年にこども家庭庁が発足され,「こどもまんなか」の社会づくりが推進されている.子どもは,未来を支える頼もしい存在でありながらも脆弱性と未熟性を当たり前にもち,守られるべき存在である.しかし,我が国では,子どもの数が減少を続ける一方で,病気や障害をもつ療養児の数は増加している.「令和7年版 障害者白書 全文(内閣府,2025)」によると,身体障害児(18歳未満)が9.9万人,知的障害児(18歳未満)が29.1万人,精神障害者(20歳未満)が65.5万人とされており,令和2年度の報告(内閣府,2020)と比して,すべての区分における大幅な増加が示されている.また一方では,家族の介護や日常生活上の世話を過度に行うヤングケアラーも存在し,小学6年生の6.5%,中学2年生の5.7%,高校2年生の4.1%,大学3年生の6.2%の者が,「家族の世話をしている(いた)」ことを報告している(日本総合研究所,2022;三菱UFJリサーチ&コンサルティング,2019).「こども」といっても,一人ひとりの子どもの像は,発達段階や健康状態,生活環境によって異なり,その時代の社会情勢や捉え方にも影響を受ける.社会のなかで守られるべき子どもの全体像は,変化しつつあるといえるのである.
病気や障害をもつ療養児は,その数の増加に留まらず,病態像も多様化し複雑化している.治療技術やテクノロジーの発達により,かつては救命困難とされていたような身体疾患をもつ病児たちの長期生存率が向上し,病児に関連する概念では「慢性疾患児」や「重症心身障害児」に加えて「医療的ケア児」や「超重症児」といった医療依存度の高い病児をあらわす概念が定着している.また,在宅医療の推進により,病気や障害をもちながら地域社会のなかで暮らす療養児が増加し,ことに「医療的ケア児」においては,在宅療養児の推測値が2万人を超え,気管切開部の管理(37%),在宅酸素療法(31%),人工呼吸器管理(20%)といった複雑なケアも家庭で実施されている(三菱UFJリサーチ&コンサルティング,2025).知的・精神障害では,2022年よりICD-11が施行され,複雑性心的外傷後ストレス症(PTSD)やゲーム行動症といったカテゴリーが診断基準に加わった(World Health Organization, 2024).このように,技術の発達や社会環境の変遷に伴い,現代では新たな病態像・障害が生まれ,療養児たちの病気や障害は多岐に渡って細分化し,従来の像を超越している.加えて,障害者総合支援法(2013年)や改正児童福祉法(2017年),医療的ケア児支援法(2021年)といった,療養児と家族にかかわる法施策の整備が着実に進むなか,療養児とその家族,きょうだいの生活や体験もまた,変化を続けていると考える.それらからは,現代を生きる療養児や家族,きょうだいの全貌を捉え,既存の知識とのギャップや潜在的なニーズを把握し,対処に繋げていくことの必要性が考えられた.
病気や障害をもつ療養児・者とともに生活することは,家族全員の生活や精神状態に大きな影響を及ぼす.その際,大人ならば知識や経験によってある程度の対処が可能であるが,子どもであるきょうだいでは,うまく対応できないこともある(田中,2019).加えて,自立して生活することの難しい子どもの時期は,きょうだいの生活や体験も,家庭環境や家族の養育方針に影響を受けやすい.先行研究では,食物アレルギー児のきょうだいが,友人との交流や外出機会の減少といった社会生活の変化までも経験し(石川ら,2018),在宅重症心身障害児のきょうだいが,【同胞の存在を優先した進路・職業の選択】や【同胞の存在を意識しながらの友だちとの交流】といった対処をしている(土屋・高橋,2023)ことが示されている.また,自閉スペクトラム症児のきょうだいは,『自身の存在に対するゆらぎ』を感じながら,自分と同胞を『まもるための他者への働きかけ』を行っていた(川上,2014).子どもの時期は,心身の成長発達や生活環境の変化が著しい時期であり,病気や障害をもつ療養児だけでなくそのきょうだいも,ライフステージに伴う課題に直面し,特有のニーズを抱えている(笠井,2013).しかし一方で,2~3歳のきょうだいまでもが,同胞の胃瘻からの栄養注入の一部を実施し,親は【きょうだいが医療行為をすることはごく普通である】と捉えている(新井,2023)ことも,報告されている.家族内で協力して療養児・者をケアしていくことは自然なことである一方で,きょうだいは,療養児・者のケアに過度に参加するヤングケアラーともなり得る.病気や障害をもつ療養児・者のきょうだいのその子らしい生き方を支える支援が求められていると考えられる.
以上の背景を踏まえ,本研究では,療養児・者のきょうだいが育ち,巣立ちゆく小児期・青年期に焦点を当て,在宅療養児・者と生活するきょうだいの体験に関する既存の知見を整理し,きょうだいの体験を包括的に明らかにすることで,今後の課題を明確にすることを目的とする.本スコーピングレビューは,この研究領域における既存の知識の全体像を系統的に整理し,現代社会における研究のギャップを特定するために,実施する.
在宅療養児・者と生活するきょうだいの小児期・青年期の体験に関する既存の知見を整理する.また,きょうだいの体験を包括的に明らかにすることで,今後の研究に繋がる課題や示唆を検討することを目的とする.
・在宅療養児・者:身体的あるいは精神的な病気や障害の診断を受け,その病気や障害をもちながら自宅で生活する者をさす.
・小児期・青年期:健康日本21(厚生労働省,2000)において掲げられる人生の6段階を参考に,本研究では1~25歳の時期と定義する.人が生まれて,育ち(幼年期),学び(少年期),巣立つ(青年期)時期である.
・きょうだいの体験:体験とは,人が出会った印象的な出来事とそのときの心身の状態,身体感覚であり,結果として発達的変化や肯定的,否定的感情など現象が見出されるもの(中木ら,2007)である.本研究では,きょうだいが,日々の生活の中で遭遇する直接的な体験をさし,実際の経験や対処,反応に加え,認識や認知,捉え,受け止めも含むものとする.
本研究では,Arksey & O’Malley(2005)の提唱する方法論的フレームワークに従い,スコーピングレビューを実施した.実施手順の詳細は,PRISMA-ScRの報告ガイドライン(新田,2025)に準拠している.スコーピングレビューの実施に先立ち,全段階を網羅するプロトコルを作成し,プロトコルはUMIN臨床試験へ登録した(登録番号:UMIN000059493).
1. 研究疑問の特定本研究の核心をなす研究疑問は,“わが国において,在宅療養児・者と生活するきょうだいは,小児期・青年期に,どのような(How)体験をしているのか?”というものである.研究疑問を構成する概念を,P(Population):在宅療養児・者のきょうだい,C(Concept):小児期・青年期の体験,C(Context):在宅療養児・者との生活,として設定した.
2. 重要な文献の特定文献検索のデータベースには医学中央雑誌WEB版と最新看護検索Web,CiNii Researchを用いて,検索式はPCCに従い「“きょうだいor同胞” AND “経験or対処or反応or認識or認知or捉えor受け止めor感覚” AND “医療的ケアor疾患or障害or障がいor病児or療養児or療養者” AND “在宅or地域or生活”」として,検索を行った(検索日:2025年4月22日).わが国で生活する在宅療養児・者のきょうだいの体験に焦点をあてるため,文献の言語は日本語に限定した.また,研究疑問に応える幅広い知見を得るために検索対象期間は限定せず,文献種別では包括的で詳細な知見を収集するために会議録,科研研究成果報告書,文献レビューを除外した.対象文献の包含基準は,①在宅療養児・者と生活するきょうだいに関する文献であること,②きょうだい自身の主観的な体験に関する文献であること,③小児期・青年期(1~25歳)の体験について記述された文献であることとし,調査参加時のきょうだいの年齢に制限は設けなかった.除外基準として,①きょうだい自身に病気や障害がある文献,②入院または入所する療養児・者のきょうだいに関する文献,③ターミナル期や死別した在宅療養児・者のきょうだいに関する文献を除外することで,在宅療養児・者とともに生活する中で派生する日常的な体験に限定することとした.
3. 文献の選抜と採用検索された文献に対して2名の研究者が独立してスクリーニングを行い,それぞれの判定を統合して,分析対象文献を決定した.一次スクリーニングでは,検索された文献の表題・抄録を確認して選抜を行い,包含基準に適合しない文献を除外した.また,二次スクリーニングでは,選抜された文献全体を精読し,包含基準・除外基準に従い適格性が確認できたものを分析対象文献として採用した.一次スクリーニングで研究者2名の判断に相違が生じた場合は,次の段階のスクリーニング対象文献に含めて判断し,二次スクリーニングで研究者2名の判断に相違が生じた場合は,研究者の間でコンセンサスが得られるまで討議を繰り返した.
4. データの抽出分析対象文献を繰り返し精読し,在宅療養児・者のきょうだいの小児期・青年期の体験に関する記述を抽出した.また,文献の書誌情報(著者,発行年,文献種別)に加え,抽出した体験の体験者であるきょうだいの属性(年齢,在宅療養児・者との関係性)と人数,体験者の同胞である在宅療養児・者の属性(病気や障害の種類),記述される体験の時期(幼児期,学童期,思春期,青年期)に関する情報を抽出し,マトリクス表を用いて整理した.
5. 結果の収集,要約,報告在宅療養児・者のきょうだいの小児期・青年期の体験について,抽出した記述のまとまりを意味単位に分けてコード化し,類似性に従い集約した.集約したコードを基に抽象度を高めたサブカテゴリーを生成し,サブカテゴリーをさらに集約することでカテゴリーを導出した.導出されたカテゴリーは,性質に従い5つの側面へと分類された.これら一連の分析は,研究者全員で整合性について確認し,分析の妥当性を確保した.最終的に導かれた結論が,本研究の研究疑問に応え,研究目的を満たすことを,研究者全員で確認した.
対象文献からのデータの抽出においては,匿名化された情報のみを抽出した.また,結果の収集,要約,報告において,対象文献の著作権や著者の意図が損なわれないよう配慮し,解釈の妥当性を研究者間で確認した.
文献採用のフローを図1に示す.3つのデータベースより合計256件の文献が検索され,そのうち重複文献36件を除外した220件が,スクリーニング対象文献として特定された.一次スクリーニングでは,表題スクリーニングにより170件,抄録スクリーニングにより20件が除外され,二次スクリーニングでは,全文スクリーニングにより11件が除外された.

最終的に採用された分析対象文献は19件であり,研究論文が16件,総説が3件を占め,研究論文の調査手法には,面接法13件,質問紙法3件が含まれた.また,在宅療養児・者の病気や障害の種別は,知的障害6件,発達障害6件,脳障害(重症心身障害を含む)6件,身体障害2件,慢性疾患2件,医療的ケア児2件であった.分析対象文献に含まれたきょうだいの総数は366人であったが,小児期・青年期の体験に関する記述があり本レビューの分析対象として抽出されたきょうだいの人数は130人で,年齢は小学生から50歳代までの者が含まれた.さらに,抽出されたきょうだいの小児期・青年期の体験のうち体験の時期が明確に特定できたものは,幼児期の体験が4件,学童期の体験が8件,思春期の体験が15件,青年期の体験が13件であった(表1).
| No. | 著者 | 発行年 | 論文種 (調査方法) |
在宅療養児・者の 病気や障害 |
分析対象とした きょうだいの |
きょうだいの体験に関する主な記述 《対応するサブカテゴリー》 |
文献に含まれた体験の時期 | ||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 年齢 | 人数 | 幼児期 | 学童期 | 思春期 | 青年期 | ||||||
| 1 | 新妻靖子 ら | 2024 | 研究論文 (面接法) |
先天性心疾患児 | 20歳代 | 1名 | ・大学・就職と時を重ねていくにつれて〈同胞の病気に関する理解が深まり〉,〈母と対等に話せるようになり,自分も一緒に同胞の支援をしていこうと思うようになった〉 《親を手伝い同胞の介護を行う》 |
○ | ○ | ○ | ○ |
| 2 | 土屋沙織 ら | 2023 | 研究論文 (面接法) |
医療的ケア児 | 20~30歳代 | 5名 | ・〈同胞のことで交際を断られてしまう不安があった〉は,「弟がいるから嫌だとか結婚を拒絶されるとか,将来的な不安は小さい頃から感じていたのかなと思います」というように,〔同胞のことで交際を断られても仕方ないと考えていた〕り,〔同胞のことで結婚相手に拒絶されないか心配していた〕. 《パートナーが同胞を受け入れてくれるか不安に思う》 |
○ | ○ | ○ | ○ |
| 3 | 阿部美穂子 | 2023 | 研究論文 (質問紙法) |
身体障害,知的障害 発達障害,重複障害 |
13~25歳 | 48名 | ・同年代のきょうだいが,つながれる場を作ってもらえたら,ぜひ参加してみたい. 《同じ境遇にあるきょうだいとの交流に支えられる》 |
○ | ○ | ||
| 4 | 渡邉照美 | 2023 | 総説 | 知的障害児 | 20歳代 | 2名 | ・小さい時は,姉の世話係みたいにしていれば,親も先生もほめてくれたんで,それがうれしくてやってましたけど,ある程度,大きくなったら,なんで私だけがみたいな. 《介護を担うことで自分の存在価値を見出す》 |
○ | ○ | ○ | ○ |
| 5 | 浅井佳士 | 2022 | 研究論文 (面接法) |
医療的ケア児 | 26~32歳 | 8名 | ・【周囲の人への感謝と同情】の中には,[周囲から哀れみ]があり,【周囲を意識した日常】がみられたが,[支えとなった同じ境遇の人との交流]や[きょうだいの存在を受け入れてくれる友人]など,きょうだい(医療的ケア児)を理解してくれる存在が支えとなっていた 《同胞を受け入れる周囲の対応に安心する》ほか |
(特定できず) | |||
| 6 | 沼口知恵子 ら | 2021 | 研究論文 (面接法) |
重症心身障害児 | 12~19歳 | 11名 | ・きょうだいは,重症児のことを年齢が近いため[一緒に育ってきた普通のきょうだい]であり,[病気のことはあまり深く考えていない]と感じており,自分たちは【普通のきょうだい】であると考えていた. 《きょうだいとしての絆を当たり前にもつ》 |
○ | ○ | ||
| 7 | 山下佳成江 ら | 2018 | 研究論文 (面接法) |
脳疾患 | 20歳代 | 2名 | ・[高校生の時に初めての詳細な情報共有]の場合には,〈在宅療養児と似た境遇の子が亡くなることによる聞きづらさ〉から,[周囲が亡くなっていく環境における情報提供要求の困難]さが挙げられ,結果的には自ら〈在宅療養児の疾患が気に掛かり調べる〉,その後〈説明を受けることで胸の内が晴れた〉と良い方向に落ち着いたが,〈在宅療養児に関する親からの早期の情報提供の要望〉など[情報提供の必要性]が認められた. 《同胞の健康障害について聞きにくい》 |
○ | ○ | ○ | |
| 8 | 藤田由起 ら | 2018 | 研究論文 (面接法) |
知的障害,発達障害 | 20~40歳代 | 4名 | ・(大学の頃は,意識して家にいたくないというよりは,年齢的に)妹のことより,楽しいことがいっぱいあったというか.したいこととかが外にあったのかな. 《同胞との生活を離れて自由や解放感を得る》 |
○ | ○ | ||
| 9 | 松本理沙 | 2018 | 研究論文 (質問紙法) |
知的障害 | 20歳代前半 | 3名 | ・遺伝による障害でないから,あなたが子どもを産んでも大丈夫と言われ,少しほっとした. 《健康障害をもつ子が生まれてこないか不安に思う》 |
(特定できず) | |||
| 10 | 成田泉 ら | 2016 | 研究論文 (面接法) |
自閉症スペクトラム | 19~20歳 | 3名 | ・感情の中には,【同胞の障害への困惑】がある一方【同胞の障害に対する自然な受け止め】があり,【家族のかかわりへの要望】がある一方,【周りの人々へのかかわりへの満足】があるなど,相反する感情もみられた. 《同胞のもつ健康障害を当たり前に受け止める》ほか |
○ | |||
| 11 | 沖潮満里子 | 2016 | 研究論文(面接法) | 脳性麻痺 | 不明 (20~30歳代) |
1名 | ・「妹はわかっている,普通に近いんだということを周囲にアピールするために,外出すると以前よりもたくさん妹に話しかけたり」し,やりとりをするようになったという. 《同胞が「普通」であることを主張する》 |
○ | ○ | ○ | ○ |
| 12 | 涌水理恵 ら | 2015 | 研究論文(面接法) | 重症心身障害児 | 12~19歳 | 11名 | ・将来的には重症児の世話を自分が担うと考えており,現在家族で行っている重症児の世話を大人になったら自分が引き継ぐと考えているきょうだいや,自分が医師になって重症児をみたいと考えているきょうだい,さらには,お金を稼いで,家で重症児が生活できるよう支援者を雇いたいと考えているきょうだいがいた. 《障害をもつ同胞の介護に責任をもとうとする》 |
○ | ○ | ||
| 13 | 冨永恵美子 ら | 2013 | 研究論文(面接法) | 自閉症スペクトラム | 24~53歳 | 10名 | ・【学校との関係】は,そのほとんどが学童期の言及であり,〈障害児に対する差別意識を感じる〉〈同胞が受け入れられない〉〈きょうだい本人がいじめられる〉などの経験をしていたきょうだいが半数以上おり,きょうだいは学校生活を通して,障害者全般や同胞に対する周囲の否定的な対応に直面していた. 《同胞のことで周囲からいじめや差別を受ける》 |
○ | ○ | ○ | ○ |
| 14 | 川上あずさ | 2013 | 研究論文(面接法) | 自閉症スペクトラム | 12~20歳 | 10名 | ・昔,壁に文字書いてっていうか,絵書いて.昔めっちゃ汚くて,それもなんか最近なくなったし,そんなやんちゃなことは最近はなくなりました〈行動の落ち着き〉 《同胞の変化や発達に気づき受け止める》 |
○ | ○ | ||
| 15 | 土岐邦彦 ら | 2012 | 総説 | 知的障害,発達障害 | 20歳代 | 2名 | ・中学校時代というと自分自身がまだ 未熟で,弟の障がいに対する理解もあんまり深くなかったので,僕はすごくイライラしてしまいました.友だちや知らない人から見られることに対してすごく恥ずかしい思いをして,イライラしたのだと思います. 《同胞のことで向けられる周囲の視線が気になる》ほか |
○ | ○ | ||
| 16 | 原田満里子 ら | 2012 | 研究論文(面接法) | 脳性まひ,知的障害 | 20歳代 | 3名 | ・同胞の世話を自分の将来展望に組み込み,3人姉妹で暮らしていくということも選択肢になるとそれまで感じていたのだが,実は難しいことなのだという現実に直面している. 《描いてきた理想とは異なる現実に直面し悩む》 |
(特定できず) | |||
| 17 | 牧山布美 | 2011 | 研究論文(面接法) | 身体障害 | 50歳代 | 1名 | ・「笛」は,姉が小学生の時に,吹けないのに,吹く格好だけさせられて歩かされたりして,かわいそうだなぁと思ったりしたけど…まぁ,それも姉を思う気持ちにつながっているから,だから障害持ったことで感じられたことがここにでてきてるのかなぁって気がする. 《同胞がおかれる待遇を不憫に思い葛藤する》 |
○ | ○ | ○ | |
| 18 | 向出哉美 ら | 2002 | 総説 | 重症心身障害児 | 小学生, 高校生 |
3名 | ・家庭訪問で同胞のことを気にしたことがあった. 《同胞のことで向けられる周囲の視線が気になる》 |
○ | ○ | ||
| 19 | 斎藤昭彦 | 1994 | 研究論文(質問紙法) | 気管支喘息 | 16~18歳 | 2名 | ・上の兄は,患児が喘息であるために「それを利用し,得をしている」と答えた. 《同胞の存在や健康問題に対する不満を抱く》 |
○ | |||
分析対象文献より抽出した243の在宅療養児・者のきょうだいの小児期・青年期の体験のコードからは,60の《サブカテゴリー》と26の【カテゴリー】が導出され,5の〔側面〕へと分類された.(表2).文中で示される「同胞」は,「きょうだいからみた在宅療養児・者」を指すものとする.
| 側面 | カテゴリー | 含まれた体験の時期 | サブカテゴリー(文献No.) | |||
|---|---|---|---|---|---|---|
| 幼児期 | 学童期 | 思春期 | 青年期 | |||
| *同胞の存在と関係性 | きょうだいである同胞*を当たり前に受け入れる | ○ | ○ | ○ | ○ | きょうだいとしての絆を当たり前にもつ(4, 6, 14) |
| きょうだいとして関わり共に生活する(8, 11, 13) | ||||||
| 同胞*のもつ健康障害を当たり前に受け止める(6, 10, 13, 18) | ||||||
| 同胞*からの支えや好意を実感する(5, 6, 8, 13) | ||||||
| 同胞*との関わりや距離感に難しさを感じる | ○ | ○ | ○ | ○ | 同胞*との相互的な交流がもちにくい(2, 5) | |
| 同胞*との相互的な関係が築きにくい(13, 14) | ||||||
| 同胞*からの非難や嫉妬を受ける(8) | ||||||
| 両価的な思いから罪悪感を感じる(3, 4, 10) | ||||||
| 同胞*の存在や健康問題に対する不満を抱く(4, 5, 6, 13, 19) | ||||||
| 同胞*との交流が減り,疎ましいと感じる | ○ | ○ | 生活の広がりとともに同胞*との距離が離れる(13) | |||
| 同胞*と接することを疎ましく感じる(8, 13, 16, 17) | ||||||
| 同胞*を世話すべき対象として客観視する | ○ | ○ | ○ | 同胞*のことを客観的に捉える(13) | ||
| 世話すべき対象として同胞*を思いやる(1, 2, 3, 6, 14) | ||||||
| *同胞の健康障害とケア | 同胞*が固有にもつ健康障害を認識する | ○ | 自分とは異なる同胞*の健康障害を認識する(5, 11, 13, 14, 16) | |||
| 同胞*の健康障害について理解が不足し対処できない | ○ | ○ | ○ | ○ | 同胞*の健康障害について理解していない(1, 7, 9, 15) | |
| 同胞*が呈する症状に対峙し困惑する(2, 6, 10, 13, 14) | ||||||
| 同胞*の健康障害について聞きにくい(7, 9) | ||||||
| 同胞*の健康障害を理解し期待や覚悟が生まれる | ○ | ○ | ○ | 同胞*の健康障害について説明を受け理解する(1, 7, 13) | ||
| 同胞*の健康障害が軽快することを望む(6) | ||||||
| 同胞*の変化や発達に気づき受け止める(11, 14) | ||||||
| 自分の体調や生活を調整しながら同胞*の介護を行う | ○ | ○ | ○ | ○ | 親を手伝い同胞*の介護を行う(1, 2, 5, 11, 12, 13, 18) | |
| 身体的負担を感じながら介護役割を果たす(16) | ||||||
| 同胞*の世話を通じて自分なりの存在理由を見出す | ○ | ○ | 介護を担うことで自分の存在価値を見出す(2, 4) | |||
| 同胞*の世話を自分の役割として受け止める(4, 5, 6, 16) | ||||||
| 同胞*の将来の介護を自分の問題として考える | 特定できず | 健康障害をもつ同胞*の将来について悩む(3, 6, 10) | ||||
| 障害をもつ同胞*の介護に責任をもとうとする(4, 5, 12, 15) | ||||||
| 家族と日常生活 | 同胞*中心の待遇や生活を余儀なくされる | ○ | ○ | ○ | ○ | 家族からの待遇が同胞*とは異なることを実感する(1, 2, 4, 5, 10) |
| 同胞*を優先した生活を余儀なくされる(2, 5, 13) | ||||||
| 自分の本音を親に理解してもらうのが難しい | ○ | ○ | ○ | ○ | 要望に応えられない母親へ不満を募らせる(1, 3, 5, 13) | |
| 思いや体験を親に打ち明けることが難しい(3, 13) | ||||||
| 母親からの期待を一方的に受ける(5, 13) | ||||||
| 同胞*がいることの不利益に配慮され生活する | ○ | ○ | ○ | ○ | 同胞*がいることの制限や不公平がなく過ごす(4, 13) | |
| 同胞*不在時の娯楽や団欒を楽しむ(2, 5) | ||||||
| 同胞*や自分,家族を支える親へ感謝し助力する | ○ | ○ | ○ | ○ | 育児やケアを行う母親に感謝する(1, 2, 5, 6, 10, 13) | |
| 育児やケアを行う母親の労を心配する(3, 5, 6, 12) | ||||||
| 育児やケアを行ってきた親を介護する(13) | ||||||
| 家族全体を支える父親の役割を理解する(5, 12, 13, 18) | ||||||
| 親以外の家族員の支援を望み感謝する | ○ | ○ | ○ | 親以外の家族員の手伝いを望む(12) | ||
| 親に代わり支えてくれた祖父母に感謝する(5, 6, 13) | ||||||
| 年老いた祖母への介護負担を心配する(6) | ||||||
| 友人関係と社会参加 | 同胞*に対する周囲の理解や受容に安心する | ○ | ○ | ○ | ○ | 同胞*のことを周囲に伝えて理解を促す(2, 5, 8, 13) |
| 同胞*を受け入れる周囲の対応に安心する(5, 10, 13) | ||||||
| 同胞*に対する周囲の理解不足や差別に苦しむ | ○ | ○ | ○ | ○ | 同胞*のことで周囲からいじめや差別を受ける(4, 11, 13, 15, 17) | |
| 同胞*のことで周囲から哀れみや相談を受ける(4, 5, 8) | ||||||
| 同胞*の障害に対する周囲の受け止めが気になる | ○ | ○ | ○ | ○ | 同胞*のことは友達であっても話しづらい(2, 3, 5, 8, 13, 18) | |
| 同胞*のことで向けられる周囲の視線が気になる(5, 15, 18) | ||||||
| 同胞*が受ける不利益な待遇へ対処しようとする | ○ | ○ | 同胞*が「普通」であることを主張する(11) | |||
| 同胞*がおかれる待遇を不憫に思い葛藤する(8, 15, 17) | ||||||
| 同じ境遇にある人との交流に支えられる | 特定できず | 同じ境遇にあるきょうだいとの交流に支えられる(3, 5, 16) | ||||
| 介護の協力者や社会との交流を求める | ○ | 家族外の人や社会との交流を絶やさない(2) | ||||
| 同胞*の介護を行う協力者の存在を期待する(3, 5, 11, 12) | ||||||
| ケア提供者により高い技術や知識を期待する(3, 5, 6) | ||||||
| 進路選択と家族の構築 | 同胞*がいることによる結婚への影響を懸念する | ○ | パートナーが同胞*を受け入れてくれるか不安に思う(2, 3, 10) | |||
| わが子の気持ちや健康状態について懸念する | 特定できず | 健康障害をもつ子が生まれてこないか不安に思う(2, 5, 9) | ||||
| 自分の子が同胞*に対してどのように感じるか不安に思う(2) | ||||||
| 同胞*を意識して進路や住まいを決定する | ○ | ○ | 同胞*の存在を前提にして進路を決定する(2, 7, 16) | |||
| 同胞*の介護を優先して住む場所を決定する(2, 16) | ||||||
| 自分の進路や生活を同胞*ぬきで選択する | ○ | ○ | 両親に支えられ自分の意思で進路を決定する(2, 11, 15) | |||
| 同胞*に依らない自分の将来について考える(6, 10) | ||||||
| 同胞*との生活を離れて自由や解放感を得る(4, 8) | ||||||
| 理想どおりにいかない現実に直面する | 特定できず | 描いてきた理想とは異なる現実に直面し悩む(2, 16) | ||||
*同胞:きょうだいからみた在宅療養児・者
〔同胞の存在と関係性〕
〔同胞の存在と関係性〕は,きょうだいと同胞との二者関係において生じる体験である.きょうだいは,物心ついたころから,同胞には障害がありそれが当たり前(沼口ら,2021)と感じ,在宅療養児・者の存在を自然に受け止めて(川上,2013)一緒に遊び(冨永・松永,2013),【きょうだいである同胞を当たり前に受け入れ(る)】ていた.しかし一方,重症心身障害児のきょうだいでは,治療や制限のために交流が限られ(土屋・高橋,2023)《同胞との相互的な交流がもちにくい》ことや,自閉症児のきょうだいでは,コミュニケーションがとりにくい(冨永・松永,2013)ために《同胞との相互的な関係が築きにくい》ことがあり,【同胞との関わりや距離感に難しさを感じ(る)】ていた.学童期・思春期になると,きょうだい自身の世界が広がり(冨永・松永,2013),同胞と話すことが面倒くさくなって(原田・能智,2012),【同胞との交流が減り,疎ましいと感じる】一方で,同胞を気にかける気持ちが芽生え(新妻・藤岡,2024),大人の目線で同胞を見つめ(冨永・松永,2013),【同胞を世話すべき対象として客観視する】ようになっていた.
〔同胞の健康障害とケア〕
〔同胞の健康障害とケア〕は,同胞のもつ健康障害の症状管理やケアにおいて生じるきょうだいの体験である.きょうだいは,幼児の頃より,同胞に対する違和感(冨永・松永,2013)をもち,自分とも友人のきょうだいとも異なる同胞(浅井,2022)として,【同胞が固有にもつ健康障害を認識(する)】していた.しかし,きょうだい自身が未熟であり同胞の障害に対する理解があまり深くない(土岐ら,2012)ことで,同胞の症状が悪化する様子に対しても見守る(土屋・高橋,2023)しかできないことや,同胞の行動に対して困惑する(冨永・松永,2013)など,知りたいことも聞くことができず(松本,2018;山下ら,2018),【同胞の健康障害について理解が不足し対処できない】でいた.同胞の病気に関する説明を受け,理解が深まる(新妻・藤岡,2024)ことで,同胞の変化に対する肯定的な受け止めができ(川上,2013),同胞の障害がなくなることへの願いをもつ(沼口ら,2021)など,【同胞の健康障害を理解し期待や覚悟が生まれる】ことに繋がっていた.きょうだいは,いつしか親の介護姿を見て同胞の介護を行い(土屋・高橋,2023),母親をサポートするように同胞の世話をしていた(涌水ら,2015)が,介護を行う自分の生と障害を抱える同胞の生の間で揺らぎ(原田・能智,2012),【自分の体調や生活を調整しながら同胞の介護を行(う)】っていた.学童期・思春期には,同胞の世話をすることで,両親や先生より褒められることがうれしく(渡邉,2023),【同胞の世話を通じて自分なりの存在理由を見出(す)】しており,青年期になると,将来の同胞の介護を担うことへの責任(浅井,2022)や同胞の将来への不安(沼口ら,2021;成田・水内,2016)を抱えて【同胞の将来の介護を自分の問題として考え(る)】ていた.
〔家族と日常生活〕
〔家族と日常生活〕は,同胞を含めた家族との生活において生じるきょうだいの体験である.きょうだいは,同胞中心で自分ばかりが叱られた(土屋・高橋,2023)経験や,後回しにされることへの嫌悪感(浅井,2022)を抱えて,《家族からの待遇が同胞とは異なることを実感し(する)》ていた.制限された生活や親の負担に配慮した接し方(浅井,2022)を重ねる中で,同胞の予定や体調を優先することが染みつき(土屋・高橋,2023),【同胞中心の待遇や生活を余儀なくされ(る)】ていた.そして,母親が同胞の対応で余裕がない(冨永・松永,2013)ことや,一方的な親の期待を受ける(浅井,2022)こと,自分の気持ちを抑圧しなければならない(冨永・松永,2013)ことで,【自分の本音を親に理解してもらうのが難しい】と感じていた.しかし,その中でも,きょうだい自身の意思を尊重してもらえる(冨永・松永,2013)ことや過度な世話役割の回避(冨永・松永,2013),同胞がいない時の両親との自由な時間(土屋・高橋,2023)は,【同胞がいることの不利益に配慮され生活する】ことの実感に繋がっていた.さらには,母親への感謝の念(新妻・藤岡,2024)や,父親は家族全体を支える重要な存在であるという認識(浅井,2022)をもつことで,【同胞や自分,家族を支える親へ感謝し助力する】ようになっていた.きょうだいは,祖父母や他のきょうだいなど《親以外の家族員の手伝いを望む》と同時に,母の代わりにそばにいてくれた祖父母へ感謝(浅井,2022)しており,【親以外の家族員の支援を望み感謝(する)】していた.
〔友人関係と社会参加〕
〔友人関係と社会参加〕は,家族外の仲間や支援者,地域社会との繋がりの中で生じるきょうだいの体験である.きょうだいは,同胞の存在を受け入れてくれる友人(浅井,2022)や,いじめや偏見に対応してくれる先生(冨永・松永,2013),理解のある近隣住民(冨永・松永,2013)に出会い,接する中で,【同胞に対する周囲の理解や受容に安心(する)】を感じていた.しかし反対に,同胞と一緒にいることでいじめられた(牧山,2011)経験や,同級生からのからかい(沖潮,2016),周囲からの哀れみ(浅井,2022),障害児に対する差別意識(冨永・松永,2013)を経験する中で,【同胞に対する周囲の理解不足や差別に苦し(む)】んでいた.きょうだいには,友だちによって同胞のことを話すか否かの迷いがあり(土屋・高橋,2023),《同胞のことは友達であっても話しづらい》と感じており,加えて,きょうだいの存在を隠したい(浅井,2022)という思いを抱きながら【同胞の障害に対する周囲の受け止めが気にな(る)】っていた.「妹は普通」とアピールし続け(沖潮,2016),【同胞が受ける不利益な待遇へ対処しようと(する)】していたが,なんとかしてあげたいと思うけど何もできないという葛藤(土岐ら,2012)を抱えていた.きょうだいは,同じ境遇にあるきょうだい同士のつながりの場を希求し(阿部,2023),同じ境遇にあるきょうだいの考えについて知りたがる(阿部,2023)など,【同じ境遇にある人との交流に支えられ(る)】ていた.青年期のきょうだいでは,人や社会と触れ合う機会を多くもつかかわり(土屋・高橋,2023)に加え,ケアの協力者(浅井,2022)や相談先(阿部,2023)を望み,【介護の協力者や社会との交流を求め(る)】ていた.
〔進路選択と家族の構築〕
〔進路選択と家族の構築〕は,自分自身の生き方を選択し新しい家族を築く中で生じるきょうだいの体験である.きょうだいは,交際相手に同胞のことを認めてもらえるかの不安(土屋・高橋,2023)や,結婚相手への要望(成田・水内,2016)を抱えて,【同胞がいることによる結婚への影響を懸念(する)】していた.また,理解のあるパートナーを見つけて結婚した後でも,親になることへの抵抗感(浅井,2022)や成長したわが子が同胞に対して偏見をもつことへの不安(土屋・高橋,2023)を抱え,【わが子の気持ちや健康状態について懸念(する)】していた.きょうだいは,進路選択を迫られる場面でも,同胞の生命と家族を最優先に考えて(土屋・高橋,2023)おり,自分と同胞を切り離して人生を歩んでゆく方向には踏み出せず(原田・能智,2012),同胞の世話を優先して住む場所を選択する(土屋・高橋,2023)など,【同胞を意識して進路や住まいを決定(する)】していた.そのときに,きょうだいの背中を押してくれた両親の存在(土岐ら,2012)があることで,同胞とは別の自分自身の将来について考える(沼口ら,2021)ことができ,楽しいこと・やりたいことを外で見つけて(藤田ら,2018),【自分の進路や生活を同胞ぬきで選択する】ことに繋がっていた.きょうだいは,同胞を支える職種と自分の適性の間で悩み(土屋・高橋,2023),ずっと考えていた選択肢が実は難しいことだったのだという現実を目の当たりにしながら(原田・能智,2012),【理想どおりにいかない現実に直面(する)】していた.
本研究を通じて対象文献より抽出された,在宅療養児・者と生活するきょうだいの体験は,幼児期から青年期までのあらゆる発達段階を含み,5つの側面へと集約された.
〔同胞の存在と関係性〕〔同胞の健康障害とケア〕〔家族と日常生活〕では,きょうだいは,病気や障害をもつ同胞を当たり前に受け入れながらも,成長過程の中で《同胞と接することを疎ましく感じ(る)》,《世話すべき対象として同胞を思いやる》という嫌悪と労りの感情を体験していた.また,物心ついたころより同胞が固有にもつ健康障害を認識して,学童・思春期には親の姿や周囲の反応より《介護を担うことで自分の存在価値を見出す》も,青年期には《健康障害をもつ同胞の将来について悩む》といった喜びと苦悩を体験していた.同胞中心の生活や家族関係の中では,《要望に応えられない母親へ不満を募らせ(る)》ながらも《育児やケアを行う母親に感謝する》ような不満と感謝を抱いており,これら在宅療養児・者のきょうだいの家庭内の体験は,相反するもので構成され,成長過程の中でも揺らいでいた.家族システム理論(鈴木ら,2019)に示されるように,家族内において,病気や障害をもつ家族員の存在がその他の家族員へ,さらには家族全体へ大きな影響を及ぼすことは,言うまでもない.その中でも家族が,医療・行政機関からの援助や情報,社会的資源を十分に活用して工夫しながら家族員の健全な生活を支えている場合,ケアや介護による過度の負担・支障が生じないように家族全体で役割分担や情緒的交流,コミュニケーションを活発に図れている場合は,健全な家族として捉えることができる(鈴木ら,2019).しかしながら,対象文献の中では,両親より褒められることが嬉しくて同胞の世話を行うきょうだい(渡邉,2023)だけでなく,必然的に関わらざるを得ない環境におかれて恐怖を抱えながら医療的ケアを行うきょうだい(山下ら,2018)も含まれていた.また,祖父母による支えや援助を受けて感謝を抱くきょうだい(浅井,2022;川上,2013)もあれば,母親と自分以外の家族がケアに向き合おうとせず負担を感じるきょうだい(山下ら,2018)もあり,きょうだいが関与する同胞のケアは,見まもりや医療的ケア,日常生活の介護など,個によって異なっていた.それらから,在宅療養児・者のきょうだいの体験は,在宅療養児・者の病気や障害,周囲の関わり,生活環境によっても異なることが考えられ,きょうだいの体験について,当事者である彼らの目線から捉え,彼らの成長過程にあわせて柔軟に支援していくことの重要性が示された.在宅療養児・者の特性や家族形態,生活状況,地域環境が多様化する現代社会において,療養児・者のきょうだいと関わる大人たちが,きょうだい自身の抱える思いや体験,生活に目を向け,助けを求めるサインに気づいていくこと,きょうだいが思いを表出できる機会を提供し,家庭内役割の調整や家庭外支援の希求といった彼らのニーズに応えていくことは,きょうだいの健全な成長発達を支援する上で,やはり重要と考える.
また,〔友人関係と社会参加〕〔進路選択と家族の構築〕では,本レビューの分析対象となったきょうだいの多くが,友人や地域住民との交流,異性との交際,結婚において,差別や不遇,葛藤,諦めを体験しており,きょうだいの対人関係は在宅療養児・者の存在に影響を受けていた.加えて進路選択の場面においても,自身の意思を優先するか否かに関わらず,多くのきょうだいが在宅療養児・者の存在を意識していた.青年期のきょうだいの選択や意思決定には,在宅療養児・者とともに生活した長年の体験が深く影響しており(渡邉,2023),いずれの選択も尊重され,支えられるべきものである.しかし一方で,在宅療養児・者とともに暮らす長年の生活のなかで,きょうだいが直面する困難を軽減し,きょうだいが自由に決定できる選択肢の幅を拡げていくことは,重要と考える.社会参加や進路選択,家族構築が迫られる時期にとどまらず,幼少期から積み重なるきょうだいの体験を支援することが必須であり(土屋・高橋,2023),きょうだいの自由や選択,子どもらしい体験を支えることのできる養育環境の保障や,病気や障害の有無に関わらず人々の多様なあり方を尊重できるインクルーシブの促進,きょうだいや家族とともに在宅療養児・者の生活を支援することのできる医療・社会福祉体制の充足が求められる.
2. 在宅療養児・者と生活するきょうだいの小児期・青年期の研究動向と課題本研究において抽出された対象文献は19件であり,文献の発行年は,2010年代以降のものが17件(89%)を占めた.また,在宅療養児・者の病気や障害の種別は,知的障害,発達障害,脳障害がそれぞれ6件(32%)の文献に含まれ,身体障害,慢性疾患,医療的ケア児はそれぞれ2件(11%)にとどまった.それらは,「令和7年版 障害者白書 全文(内閣府,2025)」において報告されるわが国の障害児の構造に類似しており,身体障害に比して知的障害や精神障害(発達障害を含む)を有する者の割合が高く,きょうだい支援のニーズが高くなっているとも捉えられる.また,在宅療養児・者の中でも医療依存度の高い医療的ケア児のきょうだいに関する文献が少なく,2022年以降の2件にとどまっていた背景には,医療的ケア児支援法制定(2021年)による概念の明確化や,対象とするきょうだいの年齢層が影響していた可能性が推測され,今後さらなる実態の解明が求められる.
在宅療養児・者のきょうだいは,病気や障害をもつ療養児・者とは異なり,医療機関や福祉サービス,行政機関からの支援の手が届きにくい.一方で,きょうだいの居場所となりうる教育機関であっても,在宅療養児・者のきょうだいの困りごとに気づき,それらの全てを支援することには,限界があると考える.近年では,ヤングケアラー支援の整備が急速に進み,①早期発見 ②相談支援 ③家事育児支援 ④介護サービスの提供 の4つの支援策(青木・滝沢,2022)を主軸に,周囲の気づきを適切に繋げ,多職種・多機関が連携し,活用しやすい支援を拡充していくこと(内田・原田,2023)が重要視されている.しかし,在宅療養児・者のきょうだいについては,きょうだい同士の自然な交流と助け合い,ケアとの間に明瞭な区別はつけづらく,体験の意味づけや境界が個別に異なるなかで,ヤングケアラーとして捉えるべきか否かの慎重な判断を要する.在宅療養児・者のきょうだいをどのように捉えて支援していくのか,彼らに対する支援の整備には,さらなる研究や実践知の蓄積が必要と考える.
3. 本研究の限界と課題本研究では,スコーピングレビューを行い,在宅療養児・者と生活するきょうだいの体験について,包括的な理解を導出した.対象文献から抽出されたきょうだいの体験には,あらゆる発達段階と家庭内外の広範にわたる体験が含まれ,それらを系統的に整理することで,彼らの体験を網羅的に導出できたと考える.一方で,本研究では,いくつかの限界を抱えている.文献採用の過程において,文献検索データベースと文献種別を限定したことは,採用されうる文献の範囲を狭めた可能性がある.また,きょうだいの体験として主観的な体験に焦点を当てたことで,幼少のきょうだいが対象には含まれにくく,本研究の結果のみできょうだいの体験のすべてを明らかにすることには限界がある.しかし,本研究では,在宅療養児・者のきょうだいの目線から捉えた実体験を明らかにし,殊に〔同胞の健康障害とケア〕〔家族と日常生活〕の側面においては,看護職として対処すべき重要な課題が導かれた.在宅療養児・者のきょうだいの体験は,成長過程の中でも揺らぎ,ケアに関与する背景は個によって異なっていた.それらからは,在宅療養児・者のケアに関わる看護職が,きょうだいと在宅療養児・者,家族を包括して捉え,家族内外の能力を見極めて,必要な支援を提供していくことが求められている.加えて,きょうだいと在宅療養児・者,家族はいずれも発達途上にあり,生活の変化に伴い生じる家族の役割調整やセルフケア機能を高める支援には,病院看護,訪問看護,地域保健が連携した包括的かつ縦断的な支援が必要と考える.さらなる研究を重ね,きょうだいと在宅療養児・者,家族の健全な生活を支える包括的支援について追究していくことが,今後の課題である.
本研究では,スコーピングレビューを通じて,在宅療養児・者と生活するきょうだいの小児期・青年期の体験について知見を整理し,包括的な理解を得ることを目的とした.19件の対象文献より導かれたきょうだいの体験は,5側面へと集約された.〔同胞の存在と関係性〕〔同胞の健康障害とケア〕〔家族と日常生活〕におけるきょうだいの体験は,嫌悪と労り,不満と感謝,喜びと苦悩といった,相反するもので構成され,それらは成長過程の中でも揺らぎを生じていた.一方で,〔友人関係と社会参加〕〔進路選択と家族の構築〕におけるきょうだいの体験は,不遇や葛藤,諦めを含み,在宅療養児・者の存在に影響を受けていた.本研究では少なかった医療的ケア児・者のきょうだいを含め,在宅療養児・者のきょうだいの実態・支援については,さらなる研究や実践知の蓄積が望まれる.
付記:本論文の一部は,第45回日本看護科学学会学術集会において,発表した.
利益相反:本研究における利益相反は存在しない.
著者資格:中水流は研究の着想およびデザイン,データ収集,分析に貢献し,草稿を作成;湯本は研究の着想およびデザイン,データ収集,分析に貢献し,原稿へ助言;中村は原稿および研究プロセス全体への助言を行った.すべての著者が最終原稿を読み,承認した.