日本看護科学会誌
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食物繊維が排便におよぼす影響
石井 智香子東 玲子
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1992 年 12 巻 1 号 p. 16-22

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抄録

健康な成人女性9名を対象にいかなるDF量を含む食事が快適な自然排便を促すかを検討した。 20歳代の女性に必要な栄養所要量 (1900~2000Kcal/日) にDF10g/日,20g/日, 30g/日を調整した3種類の食事 (DF食) を各々5日間に渡って全被験者に摂取させた.いずれのDF食から開始しても良いものとし, 各DF食間には5日以上の日常食を入れさせた.
DF量の増加にともなって排便量は増加し, 特にDF20g/日から30g/日に増すと飛躍的に増加した. 排便回数もDF量の増加につれて回数は増え, 排便のない日が少なくなった. 通常便秘のない被験者はDF20g/日でほぼ1日1回,DF30g/日で1日1~2回の排便があったが, 便秘者ではDF増加によって便通効果はあるものの反応は個々に異なった. 便の硬度はDFの増加に伴って軟化する傾向を示した. また実験期間中の排便にともなう自覚的苦痛としては 「残便感」 「腹部膨満感」 「排便時の肛門部痛」 を認めた. これらの苦痛はDF20g/日で最も少なかったが, DF10g/日と30g/日ではむしろ日常食より訴えが多くなった. 著明に現れた苦痛はDF10g/日と30g/日の 「残便感」 であった. また, DF30g/日で全被験者が食事量の多さが苦痛であると訴えた.
便通改善効果と自覚的苦痛の軽減を考慮すると本実験からは, 快適な自然排便を促すDF量は20g/日が適当であると思われた. しかしDFに対する反応は個人によって異なると考えられるため, 今後, 更に詳細な検討が必要であろう.

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