抄録
本研究は, 10歳以上の学童を対象に作成した 4 領域 40 項目で構成された自記式調査票「気管支喘息をもつ学童の QOL 調査票 Ver. 1 (JSCA-QOL Ver. 1)」の信頼性, 妥当性および因子構造を確認し, 質問項目の精選, QOL の構成概念について検討することを目的とした. 愛知県・岐阜県下 11 病院小児科外来に通院中の気管支喘息の学童( 10 歳~18 歳)で, 本人と保護者から同意が得られた 159 名を対象に調査し, 有効回答総数は 142 ( 89.3%)であった.
その結果は以下の通りであった.
1. 40 項目の調査票全体,「身体」「社会」「感情」の 3 カテゴリーにおいては Cronbach's α 0.6以上を示したが,「家族」は 0.44 で低く十分な内的整合性は得られなかった.
2. 反復再現性 (有効回答 98 名)は, 全カテゴリーの級内相関係数が 0.6 以上と高く, 安定性が確認できた.
3. 40 項目の因子分析では累積寄与率が低く, 因子負荷量 0.4 未満の 15 項目を除いて 25 項目で再度因子分析 (主因子法, バリマックス回転) を行なった. その結果 5 因子が抽出され, 累積寄与率は 48.6%であった. 喘息学童の QOL の構成概念として「日常生活の変化」「生活充実感」「発作誘発」「活動制限」「家族のサポート」の 5 因子が確認された. 今後は「家族サポート」項目, 総括スケールの追加等の修正について再検討し, より精度の高い QOL 調査票を開発する必要がある.