抄録
本研究は, 糖尿病とともに生活してきて, 向老期に至るまでの生活史が形作られている透析導入患者の, 生活史の編みなおしに影響する心理的様相について検討することを目的とした. 5名の対象に対して, 半構成的面接法を用いた. その結果, 次のような3つの相反する様相が見出せた. (1)「透析生活は楽しみややりがいを縮小させる・新たな楽しみを見出す」, (2)「透析生活は, 発達する自己の停滞感を抱かせた・新たな役割によって透析を受け入れた」, (3)「無力感, 罪責感による諦め・現実を受け入れ自己一貫性の維持」であった. 患者が生活史の編みなおしをするには, 過去の体験と現在おかれている状況を患者自身がどのように意味づけ, 将来を見通しているかという, 自己の気持ちに気づくことが重要となる. したがって, 生活の編みなおしの視点には, 対象のこれまでの生活史での体験の様相と, これからの見通しへの心理的特性を見極めた看護が求められ, その必要性が示唆された.