日本看護科学会誌
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語りにみる入院高齢者のスピリチュアルニーズ
小楠 範子
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2004 年 24 巻 2 号 p. 71-79

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抄録

本研究の目的は, 人生の回想を含む自由な語りの中から見出された入院中の高齢者のスピリチュアルニーズを記述することである. スピリチュアルニーズはその個人の生と密接に関連している. そのため, 個別事例を質的に記述する研究方法を選択した. 本稿では5名の研究参加者のうち, 93歳の女性Aさんの語りに焦点を当てた. Aさんとは約5カ月関わり, その間, 非槁成的面接を16回行った. 面接で語られた内容を繰り返し読み, スピリチュアルニーズを表していると思われる文脈を抽出し, ストーリーを構成した.
語りからは,<生きる意味を見出したい><今, 生きている実感を味わいたい><来世での再会のためにゆるしを願いたい>がスピリチュアルニーズとして見出された. 加齢とともに失うものが多い高齢者にとって, 食や排泄といった日常の当たり前ともいえる生活場面で味わう“生きている実感”は, たとえ一瞬でもその人の生を生き生きと支えるものであった. 見出されたスピリチュアルニーズをもとに, 高齢者看護においては, 回想を含む語りを傾聴することの重要性とともに, 日常生活ケアの重要性が示唆された.

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