抄録
糖尿病患者のHRQOLをTime Trade-Off (TTO) 法を用いて評価するために, 外来通院中の患者100名に, TTO法と半構成的面接法を用いて, TTO値とその値を低下させる要因を, 年齢, 身体的症状, 否定的感情, 治療法, HbA1c%から検討した. 患者を生存期間が短くなっても健康な状態で生きたい交換者, 現在の糖尿病の状態のままで生きたい非交換者の2群に分けた時, 次のような結果が得られた. (1) 年齢, 身体的自覚症状, 否定的感情は健康な生存期間との交換要因となったが, 交換者のTTO値に差はなかった. (2) 3大合併症, 治療法, HbA1c%の改善は, 交換要因ではなかった. (3) 合併症は交換要因ではなかったが, 交換者のTTO値を有意に低下させた. (4) 役割期待を含む社会的要因が, 交換・非交換の理由になっていた. 今後, TTO値を低下させる機序について, 患者の役割期待の関係からも検討する必要性が示唆された.