日本看護科学会誌
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24 巻, 3 号
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  • 足立 久子
    2004 年24 巻3 号 p. 3-11
    発行日: 2004/09/15
    公開日: 2012/10/29
    ジャーナル フリー
    糖尿病患者のHRQOLをTime Trade-Off (TTO) 法を用いて評価するために, 外来通院中の患者100名に, TTO法と半構成的面接法を用いて, TTO値とその値を低下させる要因を, 年齢, 身体的症状, 否定的感情, 治療法, HbA1c%から検討した. 患者を生存期間が短くなっても健康な状態で生きたい交換者, 現在の糖尿病の状態のままで生きたい非交換者の2群に分けた時, 次のような結果が得られた. (1) 年齢, 身体的自覚症状, 否定的感情は健康な生存期間との交換要因となったが, 交換者のTTO値に差はなかった. (2) 3大合併症, 治療法, HbA1c%の改善は, 交換要因ではなかった. (3) 合併症は交換要因ではなかったが, 交換者のTTO値を有意に低下させた. (4) 役割期待を含む社会的要因が, 交換・非交換の理由になっていた. 今後, TTO値を低下させる機序について, 患者の役割期待の関係からも検討する必要性が示唆された.
  • 農村地域におけるエスノグラフィーから
    大森 純子
    2004 年24 巻3 号 p. 12-20
    発行日: 2004/09/15
    公開日: 2012/10/29
    ジャーナル フリー
    特定の農村地域に居住する高齢者にとっての健康の意味と行動パターンから彼らの捉える健康について記述することを目的に, エスノグラフィーを用い, S市内の通称1村に住む高齢者13名を含む23名の研究参加者への半構成的インタビューを中心にデータを収集し, 分析した.
    I村の高齢者の捉える健康とは『自分への誇りをもち続けられること』であった. 高齢者は【老化による身体の衰え】,【農業の機械化による役割の喪失】,【家族の一員としての立場の喪失】という抗えない現実の中で,【自身で何でもできる自分】,【農業を続けられる自分】,【家族の役に立つ自分】という自分への誇りをもち続けようと努力していた. その手段として,【働くこと】は誇りをもち続ける手立てであり,【仲間との結びつき】は誇りを支える心の拠りどころであった. そして, 状況に応じて自分への誇りを相互に補完させながら健康である自分を確認することができていた.
    高齢者自身の主体的な健康増進に向けた支援として, 従来の枠組みに囚われずに高齢者を総合的に理解し, 誇りと手段を支持することの重要性が示唆された.
  • 緒方 久美子, 佐藤 禮子
    2004 年24 巻3 号 p. 21-29
    発行日: 2004/09/15
    公開日: 2012/10/29
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, ICUに緊急入室した患者の家族員が表す情緒的反応を明らかにし, 家族員が状況に適切に対応できるための看護援助のあり方を検討することである. ICUに緊急入室した患者の家族員8名を対象に, 情緒的反応に関する内容について半構成的面接と参加観察による調査を行い,質的帰納的に分析し, 以下を明らかにした.
    ICU緊急入室患者の家族員の情緒的反応は,【先の見通しが立たない】,【医療者を信頼する】,【支えられている】,【負担に感じる】,【患者を守りたい】など, 17の主題にまとめられた. さらに, その意味の性質から,『回復の期待』,『医療への信頼』,『独りではない自分』,『課せられている自己』,『家族の絆』の5つの情緒的反応の本質が抽出された.
    家族員が状況に適切に対応できるための看護援助のあり方は, 家族員が回復の期待を持ち続けることができる援助, 家族員が医療への信頼を実感できる援助, 家族員が周囲の支援を効果的に使うことができる援助, 家族員が看病を長期的視野に入れることができる援助である.
  • 立岡 弓子
    2004 年24 巻3 号 p. 30-38
    発行日: 2004/09/15
    公開日: 2012/10/29
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, 出産ストレスが初乳中S-IgA濃度の個人差に及ぼす影響について, 精神神経免疫学の知見を基盤とし, Lazarusらのストレスシステム理論・認知評価理論から関連検証することである. また, 生体内ストレス反応経路の知見からストレス関連ホルモンを測定し, 初乳中S-IgA濃度が出産ストレスを反映する物質であるかを客観的に評価した. 対象は, 初産・経産婦を含めた62名の母親である. パス解析から, Lazarusらの理論に基づく心理社会的要因では,「対処行動」が初乳免疫に与える影響要因であること, 身体的ストレッサーである分娩所要時間が, 副腎系cortisolを介する初乳中S-IgA濃度への間接的効果であること, 分娩後60分cortisol濃度・CgA濃度が初乳中S-IgA濃度と強い因果関係があることが示された. したがって, 初乳中S-IgA濃度は,出産ストレスを反映する免疫物質であることが明らかとなり, この知見は, 科学的根拠に基づく免疫学的視点から, 助産師の早期授乳計画への新しいアプローチとなることが示された.
  • 野川 道子
    2004 年24 巻3 号 p. 39-48
    発行日: 2004/09/15
    公開日: 2012/10/29
    ジャーナル フリー
    本研究の目的はMishel Uncertainty in Illness Scale-Community Form (MUIS-C) 日本語版の信頼性と妥当性を検討することである. MUIS-Cは慢性疾患患者または家族の不確かさを測定する用具として開発された尺度であることより, 調査は外来通院中の自己免疫疾患患者と2型糖尿病患者の協力を得て行った.
    信頼性のうち内的整合性に関してはCronbach's α係数が0.82~0.88, 折半法のSpearman-Brownは0.71~0.86であり, 十分な内的整合性が確認された. しかし, 糖尿病患者を対象とした再テスト法ではr=0.61であり, 0.7の基準をやや下回る結果であった.
    妥当性についてみると, 回答はそれぞれの疾患の臨床的特徴を反映したものであり臨床的妥当性は確保された. 併存的妥当性についてはMUIS-CとPAIDとの相関係数が0.41であり, 一定程度確保された. 構成概念妥当性についてはMishelの不確かさの概念モデルに照らして, 適応に対応すると考えられる主観的QOLを従属変数として重回帰分析を行ったところ, 不確かさ, 病状の不安定さ, ソーシャルサポートが関連していることが示された.
    以上の結果より, MUIS-C日本語版は今後洗練する必要があるが, 臨床での使用基準を満たしていると考えられる.
  • 幼児と母親の相互作用に注目して
    小野 智美
    2004 年24 巻3 号 p. 49-59
    発行日: 2004/09/15
    公開日: 2012/10/29
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, 日帰り手術に向けて取り組む過程における幼児の自律性とその構造を, 幼児と母親の相互作用を通して探求することである. 下腹部の疾患のため日帰り手術を受ける3~6歳の40名の幼児の母親を対象に, 手術当日に半構造的質問紙を用いた面接調査を行い, 内容分析によって要素とその関係性を探索した. 日帰り手術に向けて取り組む過程における幼児の自律性は, 9つの要素:〈関心〉〈疑問〉〈受容〉〈拒否〉〈再現〉〈交渉〉〈探索〉〈警戒〉〈主導〉を包含する,3つのカテゴリー:{健康問題や治療への関与}{治療に対する自由な意思表示}{自分で規定し方向づける過程}によって構成されていた. また, 幼児は4つの自己のあり方:【状況期待に乗せられる】【状況期待に乗れない】【状況期待に乗る】【状況期待に乗せる】を表わし, 親の2つのケア:[やる気や好奇心の拡大][安心や自信の拡大]を得ることで自己のあり方を変化させながら, 日帰り手術に向けて自律性を向上させていた.
  • 「リスクイメージ」と「リスク認知への影響因子」に関する情報抽出
    三橋 睦子
    2004 年24 巻3 号 p. 60-71
    発行日: 2004/09/15
    公開日: 2012/10/29
    ジャーナル フリー
    感染症リスク認知の新しい試みとして, 26のリスク事象(感染症13, その他13)に対するイメージ, および, 知識度と清潔意識を調査し, 恐ろしさ因子軸と未知性因子軸からなるリスク認知地図の作成を試みた. 感染症の知識や体験のリスク認知への影響を明らかにするため, 調査対象を次の5つの対象者グループとした. (1) 集団感染症の体験と知識があるN 病院看護師群51名, (2) 集団感染症の体験があり知識のないS 大学生群53名, (3) 感染症の体験はなく知識があるK病院看護師群50名, (4) 体験はないが若干の感染症の知識を有するK 看護大学生群50名, (5) 感染症の知識も体験もないF 大学生・社会人群111名である.
    その結果, 13の感染症リスク項目は, 感染症以外の13のリスク項目と分離することなく混在して付置していた. 全般的に感染症の因子(リスク認知)得点の平均値が高かった対象者グループは, 集団感染症の体験がある第(2) グループで, 逆に全般的に平均値が低かったのは, 集団感染症の体験と知識がある第(1) グループであった.
  • 妊娠初期から出産後1カ月までの縦断的研究
    佐藤 里織
    2004 年24 巻3 号 p. 72-80
    発行日: 2004/09/15
    公開日: 2012/10/29
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, 妊娠期間の中でどの時期における母親の胎児に対する attachment が新生児に対する attachment に対して影響力をもつかを明らかにし, その背景の要因を探ることであった. 83名の初妊婦を対象に, 妊娠初期・中期・後期の3期と出産後1カ月の合計4回にわたり縦断的に調査を行った. その結果, 以下のことが明になった.
    1) 妊娠3期における母親の胎児に対する attachment の中で, 後期における母親の胎児に対する attachment が, 新生児に対する attachment に対して影響力があった.
    2) 後期の Prenatal Attachment Inventory (PAI) 得点の high 群と low 群とを比較した時, 後期の胎児に対する attachment が高い人ほど, 妊娠生活において夫の協力が得られ, 結婚に対する肯定感情が高く, 中期以降は, 胎動に対する喜びや赤ちゃんのことを考える頻度が高かった. 後期においては, 出産に向けて意欲的に取り組む傾向があった.
    すなわち, 後期における母親の胎児に対する attachment が, 出産後の母親とわが子との関わりに重要となり, 妊娠期の医療者としての関わりにおいて, 後期における保健指導の重要性が示唆された.
  • 石久保 雪江, 岩田 浩子, 野澤 明子
    2004 年24 巻3 号 p. 81-87
    発行日: 2004/09/15
    公開日: 2012/10/29
    ジャーナル フリー
    本研究は, 日本看護協会の認定看護師制度により, ある特定の看護分野において熟練した看護技術と知識を有することが認められた認定看護師275名を対象に, 認定看護師自身が臨床における専門的実践能力をどのように認識し評価しているのか, さらに専門的実践能力の構造について明確にすることを目的とする. 調査は, 2001年6月~9月の期間に郵送調査にて質問紙調査を実施し, 33.3%(87人)の回答を得た. 分析した結果, 以下の知見が得られた.
    認定看護師の専門的実践能力の自己評価は, 専門的な知識と技術に基づいた臨床実践を最も高く評価していることが明らかとなった. しかし看護実践の改善・開発のための研究活動は最も低く評価していた.
    認定看護師自身が捉えている専門的実践能力の構造は, <熟練した臨床実践> <コラボレーション> <看護実践の改善・開発> <コンサルテーション> <倫理的ジレンマへの対応とその解決>の5因子で構成されていることが明らかとなった.
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