2005 年 25 巻 1 号 p. 49-57
本研究の目的は, がんで家族を亡くした人たちを対象に悲嘆からの回復を支援することを目的として行われている遺族のためのサポートグループにおいて, 「故人の思い出の品を持ってきて語ること」の遺族にとっての意味を考察することである. 11名の対象者の経験が現象学的アプローチによって分析された. 分析の結果, テーマの中心的意味として, [故人との関係や歴史を振り返って語るきっかけとなる], [悲しみを素直に表現できる], [自分の感情をメンバーに共有してもらうことで亡くなった事実を受け入れたり, 明日への勇気に繋がる],[故人の愛情を思い出し, 気持ちが楽になったり, 感謝の気持ちがわく], [故人への役目を果たしたという達成感をもつ], [思い出の品がもつ象徴的意味に気づくことで前向きに生きていく力を得る], [自分にとっての故人の新しい位置が定まったり, 見守られていることを改めて実感する]の7つが抽出された. 以上の結果から, 思い出の品を持ってきて語ることは,【歴史の連続性の実感】【繋がりの連続性の回復】をもたらし, さらに【時間の連続性の回復】に繋がっていくことが示唆された. これらが悲嘆からの回復過程といえる.