抄録
本研究の目的は, ホスピス外来通院中の, 医学的に根治が困難と診断されたがん患者とともに生きる家族の体験の意味を, 家族の体験の記述を通して明らかにすることである. ホスピス外来通院中の患者の家族に非構成面接を行い, 得られたデータを現象学的アプローチを参考に質的記述的に分析した. 類型化により, 以下の結果が明らかになつた.
ホスピス外来に通院するがん患者の家族は, 患者の病気がもたらした生活の変化に当惑しながら, 病気の症状に太刀打ちできない自らの無力感を抱いており,けられない運命への問いに対して答えを模索していた. また家族は, 患者の病状の急激な悪化に伴い自己判断しなければならないことへの困難性を痛感していた. 将来に見通しのつかない看病をする日々は, 家族に患者との関係性から生じる葛藤と自責の念をもたらすものであつたが, 患者の症状の変化から患者と共に過ごす時間の有限性を悟るとともに, 支えとなつているものの存在を感じることは, 患者を看病し看取るという果たすべき役割を自覚させるものであつた. 同時に, 食の意味は家族にとつて, 患者の命を長らえるものと食べさせる喜びを与えるものとして重要性を増していた. さらに家族は患者とともに生きる時の中で, 患者の看取りを引き受ける覚悟をしはじめていた.