日本看護科学会誌
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小児一般病棟入院児の尿中サイトメガロウィルス排泄状況と外部環境下でのウィルスの生残率について
斉藤 ゆみ吉沢 花子橋爪 壮
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1986 年 6 巻 1 号 p. 38-43

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抄録

本研究はサイトメガロウィルス (以下CMV) を尿中, 咽頭より高濃度 (50% Tissue culture infectious dose 104.3以上) に排泄していた先天性CMV感染症の一症例が契機となって, 小児科一般病棟におけるCMVの院内感染発生の可能性を考察することを目的に千葉大学病院小児科一般病棟の尿中CMV排泄患者の頻度と排泄量, およびCMVの外部環境下での不活化の経過を検討したものである.
先の先天性CMV感染症と診断された児, 及び彼の同室患児10名と, その隣室の11名の患児尿からCMVの分離を行なった結果, 小児一般病棟において, 28% (6/21) 前後の患児が尿中にCMVを排泄しており, このうち3名は103TCID50/ml以上のCMVを排泄していた.
またCMVの不活化実験では, 室温における尿中でのCMVは5日を経てもまだその10%弱が生残し, ガラス面上に滴下した場合では24時間経過後にその90%以上が生残していた.
以上の我々の得た感染源としてのCMV排泄患児の頻度と排泄量, およびCMVの外部環境下における不活化の結果から, 小児一般病棟内において, CMVの水平感染は十分に起こりうることが示唆され, この点から排尿の処理方法や尿で汚染された器具の消毒, 医療従事者の手洗などに対する注意深い配慮が, 院内における水平感染防止に必要であると考えられた.

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