におい・かおり環境学会誌
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認知的要因がにおいの知覚と順応過程に及ぼす影響
坂井 信之小早川 達斉藤 幸子
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2004 年 35 巻 1 号 p. 22-25

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抄録
本実験は、においに関する情報の提示がにおい知覚にどのような影響を及ぼすかということを調べる目的で行った。本実験への参加者は最初に実験で使用されるにおい物質 (アネトール) に関する説明を受けた。このとき、ポジティブ群の参加者は、アネトールの持つ良い内容 (スパイスとして用いられている、アロマセラピーに効果がある、など) の教示を受け、ネガティブ群の参加者はアネトールの持つ危険情報 (殺虫効果を持つ、致死量が測定されているなど) に関する教示を受けた。その後、アネトールのにおいを嗅ぎ、快不快評定を行った。また、それからアネトールのにおいに対する順応への教示の効果を調べるために、アネトールのにおいを20分間連続して嗅ぎ、その間リアルタイムに強度評定を行った。その結果、ネガティブ群の参加者は、ポジティブ群の参加者に比べて、アネトールのにおいをより不快に感じること、強度評定値の変化パターンからより順応しにくくなることなどがわかった。5分ごとのにおい強度評定値自体には、教示の内容の効果はみられなかった。これらのことから、においに対する順応や快不快評定値は、そのにおいに対する情報の操作、すなわち高次認知機能の影響を受けることが明らかとなった。この現象は、においに対する順応や快不快評定において個人差が大きいことを説明する一要因であると考えられる。
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© 2004 (社)におい・かおり環境協会
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