抄録
海辺環境における磯の香りに注目し, アメニティ要素の一つとして評価を試みるとともに, 従来の知見との比較・検討を行った. まず海岸現地調査を行った結果, 潮位が高くなると臭気強度が低下し, 照度が上昇すると特に干潮時において臭気強度がやや大きくなる傾向が認められた. また, 干潮時, 満潮時ともに照度が上昇すると快適性が向上する傾向にあった. 次に海藻静置実験を行った結果, 海水ありと比較して海水なしの条件で臭気強度が大きくなり, 明条件においては快適性が高くなる傾向にあった. 上記の結果には, 従来の報告にあるように, 潮汐による潮間帯の露出面積の変化や光の存在による生物活動の活性化が関与していると考えられた. さらに住民意識調査を行った結果, 多くの人々が磯の香りを認識したうえで, それを快適で必要であると感じていることが明らかになった. また, においの強度および許容度が住民意識の形成に関与していると考えられた.