2016 年 47 巻 3 号 p. 222-229
ヒト尿の腐敗に伴い生成する臭気成分の一つとしてフェノール化合物があるが,これらは排尿直後の尿中においては大部分がグルクロン酸もしくは硫酸が結合した無臭の抱合体として存在することが知られている.今回,腐敗尿中の抱合体をLC-MS/MSにより分析したところ,グルクロン酸抱合体のみが分解していることが確認された.これよりグルクロン酸抱合体の分解抑制により尿臭気の生成を抑制できるものと考え,抱合体分解酵素(β-グルクロニダーゼ)の阻害剤を探索した.香料化合物約200種よりスクリーニングを実施した結果,8-シクロヘキサデセン-1-オンをはじめとする大環状化合物が優れた阻害効果を有し,フェノール化合物等の尿臭気の生成抑制に有効であることを見出した.