従来,煎茶の熱湯浸出液に含まれる香気物質は,gas chromatography-olfactometry (GC-O) を利用したaroma extract dilution analysis (AEDA) から得られるflavor dilution (FD) factorによって評価されている.しかし,この方法は,長時間かつ複雑な分析技術が要求される.本研究では,ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用い,揮発性香気物質を迅速かつ容易に特定する方法の開発を試みた.GPC分画により,香気物質のGC-MSピークは,他のピークから明確に分離され,香気物質の検出が容易になった.また,GPC画分ごとの各物質の香気強度の合計値と,画分の香気強度の測定値との比較から,寄与が大きい香気物質を確認できた.これらの方法により,煎茶の豊な香りには,香気物質のlinalool,β-ionone,trans-geraniol,cis-jasmone,phenylacetaldehyde,2-methoxy-4-vinylphenol,coumarin,4-hydroxy-2,5-dimethyl-3(2H)-furanoneおよびvanillinが含まれる一方,一般に好ましくないとされるtrans-3-hexenoic acidやindoleも含まれていることが判明した.
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