東京都では,ヒートアイランド対策に関する取組みのひとつとして遮熱性舗装を施工している.導入当初はMMAを主体とした遮熱材が多く,施工時にこのMMAに由来する遮熱性舗装特有のにおいが現場付近に発生することがあった.そのため繁華街,地下鉄の出入口,住居に隣接した箇所などでの施工では,このにおいの低減が求められるようになった.そこで,遮熱性舗装施工時に発生するにおいの少ない材料を選定するため,室内試験および施工時の臭気測定を行い,臭気評価方法および基準値を設定した.本報では,遮熱性舗装の施工時に発生するにおいの評価方法について検討した事例を紹介する.
シールド工事等において,対象地層が有機分を多く含む条件下では,高濃度の硫化水素ガスやメタンガスを賦存している場合がある.このような施工条件では,シールドの排土方法を排泥管による坑内密閉泥水流体輸送とし,坑内での硫化水素ガス発生を防止するとともに,泥水開放部に存在するガス化した硫化水素の除去や臭気対策を含めた安全性を確保することが求められる.本稿は,泥水を対象とした硫化水素対策としては,前例のない「オゾンを用いた一連の硫化水素処理システム」を適用した事例について解説する.
底泥が堆積した水域は,流量や貯水量を低下させ,船舶航行の妨げとなるばかりでなく,底泥から栄養塩が溶出してアオコ等藍藻類の増殖により汚濁化し,悪臭が発生するため,底泥を浚渫除去することが求められている.有機性底泥は,悪臭物質を生成して浚渫工事中に悪臭を発生させ,取り出された底泥からも悪臭がするため,環境対策や再利用のための工事費用が莫大となり浚渫工事の妨げとなる.そこで,効率的かつ経済的に,浚渫底泥の個液分離処理を行い,工事中はもちろん分離した水や土からも悪臭を防止するMSC工法を考察する.
近年,集合住宅のごみ置場に脱臭装置を設置する事例が増えている.しかし,ごみ置場に設置することを想定した脱臭装置の性能試験法や共通の試験データがないことから,設計手法が確立できていない.さらに,ごみ置場のにおいに関する情報が不足し,においの発生源やにおい成分も明らかになっていない.本調査研究は,ごみ置場における脱臭装置の設計手法の確立を目的として,ごみ置場のにおいの実態調査を踏まえて性能試験方法を考案し,近年,採用されている脱臭装置の性能試験を実施した.試験結果から,一般に採用されているオゾン脱臭装置は,換気による脱臭の補助装置と位置づけることが適当であると考えられた.
従来,煎茶の熱湯浸出液に含まれる香気物質は,gas chromatography-olfactometry (GC-O) を利用したaroma extract dilution analysis (AEDA) から得られるflavor dilution (FD) factorによって評価されている.しかし,この方法は,長時間かつ複雑な分析技術が要求される.本研究では,ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用い,揮発性香気物質を迅速かつ容易に特定する方法の開発を試みた.GPC分画により,香気物質のGC-MSピークは,他のピークから明確に分離され,香気物質の検出が容易になった.また,GPC画分ごとの各物質の香気強度の合計値と,画分の香気強度の測定値との比較から,寄与が大きい香気物質を確認できた.これらの方法により,煎茶の豊な香りには,香気物質のlinalool,β-ionone,trans-geraniol,cis-jasmone,phenylacetaldehyde,2-methoxy-4-vinylphenol,coumarin,4-hydroxy-2,5-dimethyl-3(2H)-furanoneおよびvanillinが含まれる一方,一般に好ましくないとされるtrans-3-hexenoic acidやindoleも含まれていることが判明した.
ヒト尿の腐敗に伴い生成する臭気成分の一つとしてフェノール化合物があるが,これらは排尿直後の尿中においては大部分がグルクロン酸もしくは硫酸が結合した無臭の抱合体として存在することが知られている.今回,腐敗尿中の抱合体をLC-MS/MSにより分析したところ,グルクロン酸抱合体のみが分解していることが確認された.これよりグルクロン酸抱合体の分解抑制により尿臭気の生成を抑制できるものと考え,抱合体分解酵素(β-グルクロニダーゼ)の阻害剤を探索した.香料化合物約200種よりスクリーニングを実施した結果,8-シクロヘキサデセン-1-オンをはじめとする大環状化合物が優れた阻害効果を有し,フェノール化合物等の尿臭気の生成抑制に有効であることを見出した.