2022 年 53 巻 3 号 p. 170-176
嗅覚・味覚障害は新型コロナウイルス感染症に特徴的な症状であるが,その発生頻度ならびに病態はウイルス株の変異により変化を遂げている.嗅覚障害の発生には,嗅上皮に存在するSARS-CoV2のスパイク蛋白の受容体であるアンギオテンシン変換酵素2が関与している.嗅覚障害の多くは数週で改善するが,数か月以上にわたり症状が遷延する症例も存在し,そのような症例では異嗅症が患者を悩ませる.嗅覚障害が遷延する症例では,障害が嗅神経細胞まで及び,感冒後嗅覚障害と同様の嗅神経性嗅覚障害となることが推測される.