人間の嗅覚による悪臭の測定方法で利用されている三点比較法では,人による嗅力の差異に起因する臭気指数の測定値への影響が懸念される.また,まぐれ当たりによる偶然の的中が3分の1の確率で生ずることによる影響も考慮する必要がある.さらに,環境試料および排出口試料により臭気指数の算出手順が異なり,同じデータであっても臭気指数の算出値が異なる.そこで本研究では,環境試料および排出口試料の臭気指数の算出手順に従い,嗅力分布および偶然の的中による臭気指数の平均および標準偏差への影響を計算し比較した.その結果,環境試料における臭気指数の算出で用いる正解率について現行の0.58は適切な値と言い切れない可能性が示された.また,排出口試料の算出手順で得られる臭気指数の値は,環境試料の算出手順で得られる臭気指数の値より変動が小さくなることが示された.