2013 年 10 巻 1 号 p. 37-45
ひきこもり問題と自閉症スペクトラム障害(広汎性発達障害)との関連性は以前から指摘されてきたことである。本稿では,まず,青年期ひきこもりケースの精神医学的診断と,自閉症スペクトラム障害を背景とするひきこもりケースの特性について述べる。 次に,これらのケースに対する精神療法的アプローチとして,メンタライゼーションmentalization に焦 点付けた方法論について論じてみたい。また,ひきこもりのリスクをもつ子どもへの治療・支援について検討するために,青年期においてひきこもりを生じているケースの特徴について検討した結果,自閉症特性の目立ちにくい受身的・内向的なタイプに留意すべきであることが明らかになった。また,青年期・成人期において激しい家庭内暴力など介入困難な状況に陥るケースがあることを踏まえ,その典型的な精神病理と家族状況,児童・思春期における精神科医療のあり方と,より早期の予防的早期介入に関する視点を示した。