抄録
本研究の目的は、現在手軽に得られるリアルな写真画像に反リアル加工した画像がもたらす印象変化の把握である。適度な抽象度を持つ反リアル表現画像は私たちの世界を豊かにする画像表現といえる。本研究で用いる刺激画像は高精細フルカラーの画像と5種類の反リアル加工画像である。セマンティック・ディファレンシャル法による印象評価調査の結果、全画像に対してほぼ共通の評価構造があると判断されるため、全刺激画像の評価結果に対する因子分析を行い、導出された2種類の因子における各刺激画像の因子得点を得る。そして因子毎の因子得点に基づいて、クラスタ毎に、各加工方法が与える印象差違の内容を把握する。この内容と各クラスタのオリジナル画像の性質との連関から、オリジナル画像の性質、加工方法、印象変化の間の定性的な関係を示す。